JP3757598B2 - L−リボースの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、L−リボースの生産方法に関し、より詳細には微生物を用いてL−リブロースを異性化して、L−リボースを生産する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、非天然型の糖類は医薬及び農薬の中間原料として注目されている。リボースに関しては天然型のD体はDNAの構成糖としては勿論、種々のビタミンや補酵素の構成糖として全生物界に豊富に分布しているにもかかわらず、非天然型のL体はほとんど供給の目処が立っていないのが現状である。現在知られているL−リボースの主な生産方法としては、L−アラビノースを原料としたコバルト触媒による合成法が挙げられる。一方、微生物を用いてL−リボースを生産する方法としてはアシネトバクター カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus )DL−28株の産出する酵素がL−リブロースを異性化し、L−リボースを生産することが唯一報告されている(Journal of Fermentation and Bioengineering Vol.81,No.6,493-497.1996 )。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
実際に従来の方法を用いて工業的規模でL−リボースの生産を行う場合、種々の問題点が生じる。つまり合成法では原料のL−アラビノースが高価であり、コバルト触媒も非常に高価であると同時に反応収率も決して満足のいくものではなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の問題を解決すべく鋭意検討した結果、セルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物がL−リブロースを異性化し、L−リボースを生産する能力を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、L−リブロースを異性化してL−リボースを生産する能力を有するセルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物の菌体および/または該菌体処理物をL−リブロースに作用させることを特徴とするL−リボースの製造方法に存し、更には、セルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物がセルロモナス ゲリダ(Cellulomonas gelida))、セルロモナス ビアゾテア(Cellulomonas biazotea)またはセルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)に属する微生物であることに存する。
【0005】
本発明で使用するセルロモナス(Cellulomonas)に属する微生物としては、L−リブロースを異性化してL−リボースを生産する能力を有する微生物であれば、特に限定されないが、好ましくは、セルロモナス ゲリダ(Cellulomonas gelida)、セルロモナス ビアゾテア(Cellulomonas biazotea)またはセルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)の種に属する微生物が挙げられる。尚、上記微生物は、変異株、あるいは細胞融合もしくは遺伝子組み換え法などの遺伝的手法により誘導される組み換え株などいずれの株であってもよい。本微生物は異性化によりL−リボース以外にL−アラビノースを副生する場合があるが、例えば、紫外線照射やN−メチル−N′−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)処理、エチルメタンスルホネート(EMS)処理、亜硝酸処理、アクリジン処理等通常知られた方法により、L−リボースの生産比率がよく、逆にL−アラビノースの生産性の低い変異株を所得することは有効である。またさらに同様の変異処理により、培養時にL−リブロースあるいはL−リボースによる酵素の誘導を行わなくとも十分な活性を生じる変異株を取得することも、L−リボース生産性向上に大変有効である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する微生物としては、セルロモナス ゲリダ(Cellulomonas gelida)に属する微生物としてJCM1490が、セルロモナス ビアゾテア(Cellulomonas biazotea)に属する微生物としてATCC486が、セルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)に属する微生物としてATCC482等が挙げられる。また上記微生物は、細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝学的手法により誘導される組換え株などのいずれの株であってもよい。
【0007】
本発明の製造方法においては、上記微生物を1種あるいは2種以上が用いられる。
また、本発明の製造方法においては、上記微生物の菌体および/または菌体処理物が用いられる。具体的には、上記微生物を培養して得られた菌体をそのまま、あるいは培養して得られた菌体を公知の手法で処理したもの、即ち、アセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、トルエン処理など菌体を物理的または酵素的に破砕したもの等の菌体処理物を用いることができる。また、これらの菌体または菌体処理物から、L−リブロースに作用し、L−リボースを生産する能力を有する酵素画分を粗製物あるいは精製物として取り出して用いることも可能である。さらには、このようにして得られた菌体、菌体処理物、酵素画分等をポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等の担体に固定化したもの等を用いることも可能である。そこで本明細書において、「菌体および/または該菌体処理物」の用語は、上述の菌体、菌体処理物、酵素画分、およびそれらの固定化物全てを含有する概念として用いられる。
【0008】
次に、本発明の製造方法について具体的に説明する。
本発明の製造方法において微生物は定法通り培養される。つまり、炭素源としては本微生物が資化しうるグルコースなどの炭水化物、グリセロールなどのアルコール類、有機酸など、好ましくはグルコース、グリセロール、スクロース等が、更に好ましくはスクロースが用いられる。またこれらの炭素源は培養中に必要に応じて1種類あるいは複数種類適宜加えることができる。さらにこの培地には本微生物が資化しうる窒素源が含まれる。窒素源としては、アミノ酸類、酵母エキス、大豆ペプチド、大豆粉末、コーンスティープリカー、NZアミン、トリプトース、ペプトン、ポリペプトン、肉エキス、魚肉エキスその他の有機窒素源、あるいは硝酸ナトリウム、その他の無機窒素源、好ましくは、酵母エキスや大豆ペプチド、ポリペプトンが適宜使用される。上述の炭素源、窒素源のほかに、無機イオンやビタミン類を必要に応じ添加することは有効である。無機イオンとしては、リン酸イオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、モリブデンイオンその他が用いられる。ビタミン類としては、チアミン、イノシトール、パントテン酸、ニコチン酸アミドなどが挙げられる。また、上述のスクロースその他の炭素源、窒素源、無機イオン、ビタミン類は、必要に応じて培養中の適当な時点で追補添加してもよい。
【0009】
培養は好気的条件下で行う。本発明において、イソメラーゼを高活性に発現させるには十分な通気を行うことが重要である。
培養温度は20〜37℃、好ましくは27〜32℃で、12時間から48時間行う。
培養により得られた菌体は、そのままで、あるいは遠心分離等の公知の方法で集菌して異性化反応に供する。またこの菌体は、そのまま、あるいはトルエン処理、リゾチーム処理、超音波破砕等の公知の方法で、物理的あるいは酵素的に菌体を破砕して、異性化反応に供する。また、L−リブロース液に菌体とトルエンを加えてもよい。好ましくは、培養終了液から菌体を濃縮分離しトルエン処理を行って後、異性化反応に供する。本異性化反応は可逆反応であり、イソメラーゼ活性の1ユニットは1分当たり1マイクロモルのL−リボースを異性化してL−リブロースを生産しうる酵素量とする。
【0010】
異性化反応は、pH4〜9.5、好ましくはpH8.5〜9.0に調整したL−リブロース水溶液に上記菌体をリブロース1g当たり、2ユニット以上、好ましくは6ユニット以上になるように添加し、温度20℃〜40℃、好ましくは、27℃〜32℃で行う。反応が進行するにつれ、反応液のpHが低下するため、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液にてpHを9.0付近に制御することが好ましい。用いた菌体の量により、反応は数秒から数日でL−リボースとL−リブロースが平衡に達して終了する。生成したL−リボースは反応終了液から公知の方法により分離精製できる。即ち、反応終了後まず微生物菌体を遠心分離等の既存の方法で除去する。除菌に先立ち、培養終了液に熱を加え、酵素失活および澱下げを行ってもよい。さらに除菌前または除菌後に炭酸飽充を行うことはその後の精製に大変有効である。除菌された液はL−リボース以外にL−リブロースや場合によりL−アラビノース等の2、3の糖質や菌体や培地由来の物質が含まれる。これらは通常の方法、即ちクロマトグラフィーや晶析技術を用いることで除去できる。工業的には、イオン交換樹脂を用いた疑似移動相型クロマトグラフィーにより分離することも可能である。分離精製の工程においては、必要に応じて脱塩、脱色など、通常の糖の精製における操作を加えることもできる。
【0011】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、その要旨を越えない限り本発明の技術分野における通常の変更をすることができる。
実施例1
a)使用微生物
【0012】
【表1】
菌株A Cellulomonas gelida JCM1490
菌株B Cellulomonas biazotea ATCC486
菌株C Cellulomonas flavigena ATCC482
【0013】
b)培養方法
スクロース 2.0g/L、酵母エキス 5.0g/L、大豆ペプチド 5.0g/L、NaCl 5g/L、K2 HPO4 3g/L、KH2 PO4 1g/L、L−リボース15g/L(pH7.0)よりなる培地を20mLづつ200mL容量のバッフルフラスコに分注し、上記a)記載の菌株A〜Cをそれぞれ接種した。これらのバッフル付きフラスコを160rpmで回転する振とう培養機にセットし、30℃で18時間培養をを行った。
【0014】
c)異性化反応方法
上記b)記載の培養にて得られた培養終了液を各々遠心分離し、集菌した。各菌体ペレットにグリシン−塩酸緩衝液(50mM・pH9.0)を2mLづつ加え均一に懸濁した後、トルエンを60μLづつ加え、15分間激しく混合した。このように調整したトルエン処理菌体を10g/LのL−リブロース液5mLに加え、均一になるよう緩やかに攪拌しつつ30℃で15時間反応を行った。途中、1N NaOHによってpH9.0に制御した。
【0015】
d)L−リボースの生産確認
上記c)記載の反応終了液を各々遠心分離し、微生物菌体を除去した。得られた上清に含まれるL−リボース含量を高速液体クロマトグラフィーにより下記の条件で測定した。L−リボースの保持時間は下記分析条件において、24.0分である。
【0016】
【表2】
d)結果
各菌株の生産結果は次表に示す通りである。
【0017】
【表3】
【0018】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、微生物を用いてL−リブロースを異性化し、L−リボースを生産することができる。
Claims (3)
- L−リブロースを異性化してL−リボースを生産する能力を有するセルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物の菌体および/または該菌体処理物をL−リブロースに作用させることを特徴とするL−リボースの製造方法。
- セルロモナス(Cellulomonas)属に属する微生物がセルロモナス ゲリダ(Cellulomonas gelida)、セルロモナス ビアゾテア(Cellulomonas biazotea)またはセルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)の種に属する微生物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
- セルロモナス ゲリダ(Cellulomonas gelida)に属する微生物がJCM1490であり、セルロモナス ビアゾテア(Cellulomonas biazotea)に属する微生物がATCC486、セルロモナス フラビゲナ(Cellulomonas flavigena)に属する微生物がATCC482であることを特徴とする請求項2記載の方法。
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