JP3757316B2 - Fpc用コネクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一般にFPC、FFCなどと呼ばれている平形柔軟ケーブル(この明細書でもこれらを代表して単に「FPC」という。)を接続する為のFPC用コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、このようなFPC用コネクタの場合、絶縁性のプラスチックで成形したハウジングと、薄金属板を打ち抜いて形成された端子と、端子のコンタクト片とFPCの接点を所定の接圧(当接圧)で加圧係合させる為の加圧部材とを備えている。この加圧部材も絶縁性のプラスチックで成形される。ハウジングには、内部にFPC受入空洞が設けられ、これと連通する開口部が挿入端および挿入端側上部に形成されて、FPCをFPC受入空洞へ挿入端から挿入できるようにしている。端子は複数とされ、所定のピッチの横並びでハウジングに装着される。各端子にはコンタクト片が設けられ、端子をハウジングに装着するとコンタクト片がFPC受入空洞に片持梁状となって臨むようにしている。
【0003】
加圧部材は、ハウジングに形成した開口部に設けられ、FPC受入空洞にFPCを挿入可能とする第1の位置と、挿入されたFPCの接点と端子のコンタクト片に形成されたコンタクト部を所定の接圧で加圧係合させる第2の位置の間で姿勢変化が可能にされる。この加圧部材は、カム部や加圧突部が設けられて、加圧部材の姿勢変化によって、カム部や加圧突部が、挿入されているFPCをコンタクト片に向けて押圧付勢するようにしている。
【0004】
加圧部材の姿勢変化は、通常、加圧部材を回動軸の回りで回動させることによって行われ、この為、加圧部材とハウジングの間や、加圧部材と端子に設けた支持ビームの間で、一方に回動軸を設け、他方に軸受部を設けて互いに係合させている。
【0005】
図18−20は、特開2000−48886号公報で開示されているFPC用コネクタである。図において、300がハウジングであり、301が加圧部材である。このFPC用コネクタでは、図19に表れているように、加圧部材301に回動軸302が設けられ、ハウジング300側に設けられた軸受部(図示されていない)に支持されて、加圧部材301が図20の第1の位置と図18、19の第2の位置の間で回動できるようにサレテイル。図20に表れているように、加圧部材301にはカム部303が設けられて、端子304の支持ビーム305と係合させてあり、加圧部材301を第2の位置に回動させると、カム部303がFPCをコンタクト片306側に押圧付勢するようにしている。
【0006】
また、図21、22は、実用新案登録第2580074号公報で開示されているFPC用コネクタである。このFPC用コネクタのハウジング400に形成した半円状の軸受部401に、加圧部材402の回動軸403を係合させて、加圧部材402が回動軸403の回りで回動できるようにされている。この場合更に、端子404の支持ビーム405に回動支持部406が形成されて、加圧部材402に凹入形成された断面円弧状の回動溝部407と係合させている。加圧部材402には加圧突部408が設けられ、加圧部材402を図22の第1の位置から矢示409の方向に約90度回動させて第2の位置へと姿勢を変化させると、加圧突部408がFPC410を端子404のコンタクト片411へ向けて押圧付勢するようにしている。
【0007】
更に、図23、24は、特許第2892945号公報で開示されているFPC用コネクタである。このFPC用コネクタも加圧部材500の両端面に設けた回動軸501をハウジング502側の軸受部(図示されていない)に係合させて、加圧部材500が回動できるようにされている。また、図24に示されているように、加圧部材500には更に別の回動軸503が設けられ、端子504の支持ビーム505に形成した円弧状の回動支持部506と係合させている。加圧部材500には加圧突部507も設けられている。加圧部材500を図24の鎖線で示された第1の位置から矢示の方向へ回動させて実線で示された中間位置を経て第2の位置まで回動軸501、503の回りで回動させると、加圧突部507がFPC508を端子504のコンタクト片509に向けて押圧付勢するようにしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のFPC用コネクタでは、加圧部材とハウジングおよび/または端子を回動軸と軸受部で係合させて、加圧部材を回動軸の回りで回動させて前記第1の位置と第2の位置の間で姿勢変化をするようにしていた。この為、回動軸と軸受部は隙間の無い嵌合状態で係合させる必要があり、各部品の製造および組立の管理を難しくしていた。回動軸と軸受部の工作精度には限界があり、通常の製造誤差(5/100mm程度)はやむを得ないとしても、回動軸と軸受部の嵌合状態が、隙間のあるいわゆるガタガタの状態では、加圧部材によってFPCを端子のコンタクト片へ向けて適正に押圧することが難しく、接続用コネクタとしての性能が十分に得られないものであった。
【0009】
また、加圧部材を回動によって姿勢変化させてFPCの接続を行う従来のFPC用コネクタには、接続完了時のクリック感を得ることが難しく、FPCが正しく接続されたか否かの認識性が乏しいという問題もあった。加えて、正しく接続ができても、FPCの引き回し等によって加圧部材が接続時と反対の方向へ簡単に回動するので、接続の信頼性が損なわれるという問題点もあった。このクリック感や加圧部材の意に反する回動の防止の為に、加圧部材に設けられる前記カム部や加圧突部が、加圧部材の第2の位置では、FPCを押圧する力の最大の位置を越えた位置まで回動するように構成することが行われているが、十分なクリック感は得られていなかったし、確実な回動防止はできていなかった。
【0010】
この発明は以上のような問題点に鑑みてなされたもので、製造上の管理が容易で、しかも、操作上の認識性および接続の信頼性の高いFPC用コネクタを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記の目的のもとになされたこの発明は、ハウジング(20)と、複数の端子(60A、60B、260A、260B)と、加圧部材(40)とを備え、加圧部材(40)に設けた断面が略長方形のカム部(46)を用いて、ハウジング(20)のFPC受入空洞(23)に挿入されたFPC(80)の接点と端子(60A、60B、260A、260B)のコンタクト片(64、65、264、265)に形成したコンタクト部(64a、65a、264a、265a)を加圧係合させるようにしたFPC用コネクタ(10、200)において、
前記加圧部材(40)は、断面が略長方形のカム部(46)に加えてピン部(47)を備えており、前記カム部(46)が前記端子(60A、260A)の前記ハウジング(20)の上側壁(21)の下側に接するようにして、上側壁(21)に沿って延びて、先端部がFPC受入空洞(23)に臨んでいる上腕(62、262)の先端部下側縁に係合し、前記ピン部(47)が前記端子(60B、260B)の前記ハウジング(20)の上側壁(21)の下側に接するようにして、上側壁(21)に沿って延びて、先端部がFPC受入空洞(23)に臨んでいる上腕(68、268)の先端部に形成された、前縁(74a)、円弧下縁(74b)、傾斜下縁(74c)、後縁(74d)で画成される上方開放切欠部(74)と遊合しており、
前記加圧部材(40)が、FPC受入空洞(23)にFPC(80)の挿入を受け入れる第1の位置からFPC(80)の接点と前記コンタクト部(64a、65a、264a、265a)を加圧係合させる第2の位置へ姿勢変化する時、
前記カム部(46)は、前記第1の位置においてその長辺の面(46b)と前記上腕(62、262)の先端部下側縁が係合し、第1の位置から第2の位置への変化の際にはその角部(46C)が前記上腕(62、262)の先端部下側縁に移動しながら係合し、前記第2の位置においてはその短辺の面(46a)と前記上腕(62、262)の先端部下側縁が係合し、
前記ピン部(47)は、前記第1の位置において前記上方開放切欠部(74)の前記傾斜下縁(74c)と係合する位置にあり、第1の位置から第2の位置への変化の際には前記傾斜下縁(74c)を下るように移動して上方開放切欠部(74)の前記円弧下縁(74b)および前記前縁(74a)と係合する位置に移り、第2の位置においては前記円弧下縁(74b)から離れて前記前縁(74a)と係合する位置にあり、
前記加圧部材(40)が端子(60A、60B、260A、260B)のコンタクト片(64、65、264、265)から受ける反力が、前記カム部(46)の前記角部(46c)とこれに対向する角部を結ぶ対角線が垂直方向に向いた時に最大となるように構成されていることを特徴とするFPC用コネクタである。尚、符号は添付の図に示した符号である。
【0012】
【作用】
このように構成されたこの発明のFPC用コネクタは、加圧部材とハウジングや端子の間に、回転軸と軸受部を設けない構成であるので、この点での製造管理の困難性を解消することができる。
FPCの接続に際し、加圧部材を第1の位置から第2の位置に姿勢変化させる時、加圧部材に設けた断面を略長方形としたカム部は、その長辺側の面が端子の上腕の下側縁に係合した状態から、この長辺側の面に角部を挟んで隣り合う短辺側の面が係合する状態へと転がるように変位して、長辺および短辺の向きを変化させ、FPCの接点と端子のコンタクト部の間に必要な接圧が得られるようにする。端子の上腕の下側縁と係合するカム部が、このように一つの面から角部を挟んで隣り合う面へと係合する面を変化させることで、係合面が変化する際に操作者にクリック感を与え、また、加圧部材の意に反する姿勢変化を防止する。上記のようにカム部の向きが変化する時、加圧部材に設けたピン部は、端子の上腕の上方開放切欠部の中で、比較的自由にその位置を移動させ得るが、上腕の先端方向である前方への移動は、上方開放切欠部を画成している前縁で制限される。即ち、上方開放切欠部の前縁がピン部の前方移動の限界を構成して、加圧部材が脱落するのを防止する。即ちこの様に構成したことにより、加圧部材はカムの回転により上下及び左右方向の比較的大きな変位を伴うが、その変位は適切な範囲内に保たれ、良好な加圧部材の開閉が保証され信頼性の高いFPC用コネクタとすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を添付の図を参照して説明する。
【0014】
図1は、図2および図3〜図5に示したような外観をした実施形態のFPC用コネクタ10の断面図を表している。このFPC用コネクタ10は、絶縁性のプラスチックを成形したハウジング20および加圧部材40と、薄金属板を打ち抜いた2種類の端子60A、60Bとを備えている。図1は、2種類の端子60A、60Bのそれぞれに沿って示した断面図であり、FPC80が接続された状態で示されている。
【0015】
ハウジング20は、図1に表れているように、上側壁21と下側壁22を有し、これらの間にFPC受入空洞23を画成している。FPC受入空洞23は、図1において左側である前端に形成された開口部24と連通し、この前端を挿入端25としてFPC80をFPC受入空洞23に挿入できるようにしている。また、この挿入端25側の上部にもFPC受入空洞23に連通する開口部26が形成されるように、前記上側壁21は下側壁22に比べて短くされている。この開口部26は、加圧部材40と端子60A、60Bとを係合させる目的で形成されている。
【0016】
ハウジング20に2種類の端子60A、60Bがハウジング20の長手方向(図3の左右方向)に所定のピッチの横並びで交互に装着されている。図示した実施形態では、第1の端子たる60Aが、図3で左側から数えて偶数番目の極(偶数極)となり、第2の端子たる60Bが奇数番目の極(奇数極)となるようにしている。
【0017】
図1を参照して各端子60A、60Bの形状を説明すると、偶数極の端子60Aは、ハウジング20の後端27側から装着できるように形成され、ハウジング20の上側壁21と下側壁22の間に配置される基板部61の上部に、上側壁21の下側に沿って上側壁21の下側に接するようにして延びる上腕62が設けられている。この上腕62は、上側壁21の前縁を越えて前記開口部26の近くまで突出する長さを有している。そして、上腕62の基部下縁からクランク形状のスプリングビーム63が垂下し、このスプリングビーム63から長いコンタクト片64と短いコンタクト片65で二股状としたコンタクトが延び、端子60Aをハウジング20に装着した時、各コンタクト片64、65が前記FPC受入空洞23に臨むようにしてある。基板部61の後縁下部からは半田テイル66が斜め下方に延びている。
【0018】
奇数極の端子60Bは、ハウジング20の挿入端25側から装着できるように形成されている。ハウジング20の下側壁22に沿って延びる下腕67と、ハウジング20の上側壁21に沿って上側壁21の下側に接するようにして延びる上腕68が連結ビーム69で連結されて略横U字状に形成されている。下腕67がハウジング20の前後方向の幅に比べて長いのに対して、上腕68は先端部が上側壁21の前縁を越えて開口部26の近くに突出する長さとされている。上腕68の基部下縁から、偶数極の端子60Aと同様に、スプリングビーム70が垂下し、そして、スプリングビーム70から長いコンタクト片71と短いコンタクト片72を備えたコンタクトが延びている。このコンタクトもハウジング20のFPC受入空洞23に臨むようにしてある。前記下腕67の前端下縁には半田テイル73が設けられている。
【0019】
偶数極の端子60Aのコンタクトと、奇数極の端子60Bのコンタクトは、互いに同じレベルで交互に並んでFPC受入空洞23に臨むようになっている。長いコンタクト片64、71の先端上縁にはコンタクト部64a、71aがそれぞれ突出形成してあり、FPC80の下面に設けられる接点(図示せず)と対向できるようにしてある。また、短いコンタクト片65、72の先端下縁にも、コンタクト部65a、72aが突出形成してあり、FPC80の上面に設けられる接点(図示せず)と対向できるようにしてある。長いコンタクト片64、71に形成したコンタクト部64a、71aは、FPC受入空洞23内で千鳥状に配置されるようにしてある。短いコンタクト片65、72に形成したコンタクト部65a、72aも同様で、千鳥状に配置されるようにしてある。
【0020】
加圧部材40は、ハウジング20の上側壁21を略覆う大きさの方形板状の本体部41の前縁から係合部42が下方に向って弧状に連続していると共に、本体部41の両側に側板部43が垂下している。本体部41、係合部42、側板部43は一体となっている。係合部42がハウジング20の上側壁21の前方に形成した開口部26を通してFPC受入空洞23の中に突入して、端子60A、60Bの各上腕62、68と係合させてある。この係合の為に、偶数極の端子60Aの上腕62に対応させて窓孔44が貫通して形成され、窓孔44を通して上腕62が前方に延びるようにしてある。また、奇数極の端子60Bの上腕68に対応させて収容溝45が形成され、収容溝45の中に上腕68が延びるようにしてある。
【0021】
偶数極の端子60Aと加圧部材40の係合は、端子60Aの上腕62の先端部下側縁と、加圧部材40の係合部42に形成した窓孔44の下側に隣接させて設けた断面を略長方形としたカム部46で形成されている。即ち、カム部46の短辺の面46aや長辺の面46b或は角部46cが上腕62の先端部下側縁に係合するようにしている。奇数極の端子60Bと加圧部材40の係合は、端子60Bの上腕68の先端部に形成した上方開放切欠部74と、加圧部材40の係合部42に形成した収容溝45に横設したピン部47で形成されている。ピン部47を上方開放切欠部74の中に収容して係合させてある。上方開放切欠部74の前後方向の幅はピン部47の径に比べて大きくされて、ピン部47と上方開放切欠部74は遊合状態で係合しており、ピン部47は上方開放切欠部74の中で、前後方向および上下方向で移動が可能となっている。加圧部材40の操作によってカム部46の短辺の面46aおよび長辺の面46bの方向が変化する時、ピン部47の位置が前後および上下の方向で移動するのに対応させたものである。
【0022】
更に、加圧部材40のカム部46と係合している偶数極の端子60Aの上腕62の先端部下側縁には肩部62aが形成されており、カム部46の長辺の面46bは、肩部62aを有する下側縁の形状に対応させて、段部48が形成されている。また、奇数極の端子60Bの上腕68に形成した上方開放切欠部74は、ピン部47の前記した如くの移動に対応するように、前縁74a、円弧下縁74b、傾斜下縁74c、後縁74dで画成され(図11参照)、ピン部47が各縁に沿ってまたは各縁から離れて移動するようにしてある。
【0023】
加圧部材40の係合部42と端子60A、60Bの上腕62、68をこのように係合させることで、加圧部材40は、図6に示した位置、即ち、挿入端25の開口部24を通してFPC80をFPC受入空洞23に挿入可能とする第1の位置と、図1に示した位置、即ち、FPC受入空洞23に挿入されたFPC80の接点と端子60A、60Bのコンタクト片64、65、71、72に設けられたコンタクト部64a、65a、71a、72aを所定の接圧で加圧係合させる第2の位置の間で姿勢変化することが可能となっている。以下、この加圧部材40の姿勢変化に伴うカム部46、ピン部47の動作と加圧係合の様子について図1、6と、姿勢変化の途中を表している図7〜10を参照して説明する。
【0024】
加圧部材40の姿勢を図6の第1の位置にすると、カム部46はその長辺の面46bが偶数極の端子60Aの上腕62の先端部下側縁に係合するように変位して、コンタクト片64、65の間を開放する。奇数極の端子60Bの上腕68に形成した上方開放切欠部74に遊合させた加圧部材40のピン部47は、この時、傾斜下縁74cと係合する位置を取るようになっている。
【0025】
加圧部材40の姿勢をこのように第1の位置にすると、FPC受入空洞23へFPC80を挿入抵抗の無いゼロ挿入力で挿入することができる。FPC80をFPC受入空洞23に臨んでいる端子60Aのコンタクト片64、65の間および端子60Bのコンタクト片71、72の間に挿入し、上下面の接点とコンタクト部64a、65a、71a、72aを1対1の関係で対向させることができる。各端子60A、60Bの短いコンタクト片65、72のコンタクト部65a、72aと接点の対向部は、FPC受入空洞23で各端子60A、60Bの間に設けられている隔壁28の上縁でバックアップされる。
【0026】
FPC80を挿入した後、加圧部材40を図1の第2の位置まで姿勢変化させると、その過程において、図7、8、9、10のような姿勢に順次変化して最後に図1の第2の位置の姿勢に変化する。これに伴って、加圧部材40のカム部46も各図に表れているように、その短辺の面46aと長辺の面46bの向きを順次変化させていく。そして、加圧部材40のピン部47も上方開放切欠部74内で図のように移動していく。
【0027】
カム部46のこのような向きの変化は、図7〜図10に表れているように端子60Aの上腕62の先端部下側縁に角部46cを係合させて、この係合部を起点として進行する。したがって、ピン部47はその位置を移動させることになる。即ち、図7に表れているように、ピン部47は上方開放切欠部74の傾斜下縁74cを下るように前方へ移動して円弧下縁74bと係合するように変位する。ピン部47が円弧下縁74bと係合する位置まで移動すると、ピン部47は前縁74aとも係合することとなり、それ以上前方への移動は停止される。前縁74aがピン部47の前方への移動の限界を構成する。また、この前縁74aとピン部47の係合によって、加圧部材40が姿勢変化の際に端子60A、60Bとの係合が外れて脱落するのを防止する。
【0028】
ピン部47が上方開放切欠部74の前縁74aと係合して前方への移動が停止した後は、カム部46の角部46cと上腕62の先端部下側縁の係合部を後方に移動させながらカム部46の向きの変化が進行する(図8〜10)。上腕62の先端部下側縁に形成した肩部62aは、この係合部の後方移動の限界を構成し、また、加圧部材40の姿勢変化の際の後方移動の限界も構成している。もっとも、ピン部47が上方開放切欠部74の前縁74aと係合して前方への移動が制限されているので、肩部62aの位置は、カム部46の角部46cと上腕62の先端部下側縁との係合部の移動範囲を確保できる位置とされていることは言うまでもない。
【0029】
このようなカム部46がその短辺と長辺の向きを変化させ、また、ピン部47が上方開放切欠部74内で移動する過程で、加圧部材40の係合部42の端面は、ハウジング20のFPC受入空洞23内において、FPC80の上面と当接して、加圧面49として働く。カム部46と端子60Aの上腕62の先端部下側縁とが係合しているので、加圧面49はFPC80を端子60A、60Bの長いコンタクト片64、71へと押圧付勢して、各コンタクト片64、71を下方に弾性変形させて、コンタクト部64a、71aとFPC80の接点を適度の接圧で加圧係合させる。長いコンタクト片64、71が下方に弾性変形を受けると、それぞれ一体の短いコンタクト片65、72も下方へ追従させるので、隔壁28でバックアップされているFPC80の接点とコンタクト部65a、72aも適度の接圧で加圧係合させることができる。
【0030】
加圧部材40の加圧面49がFPC80を介して長いコンタクト片64、71を弾性変形させ、また、短いコンタクト片65、72も間接的に弾性変形させると、その反力が加圧部材40に作用することになる。この反力は、カム部46が図9のように、角部46cとこれに対向する角部を結ぶ対角線が垂直方向に向いた時に最大となる。この最大の反力はカム部46のもう一対の角部に表れるモーメントf1、f2(図12)も最大とする。したがって、加圧部材40が図9の段階まで姿勢変化した後は、一気に図1の第2の位置まで姿勢変化し、しかも、第2の位置まで姿勢変化をすると、カム部46の短辺の面46aが上腕62の先端部下側縁に係合して、それ以上の姿勢変化を急激に停止させるので、加圧部材40を操作する操作者には、確かなクリック感を与えてFPC80の接続の完成を認識させることができる。
【0031】
加圧部材40が第2の位置まで姿勢を変化させ、カム部46の短辺の面46aが上腕62の先端部下側縁と係合する時には、ピン部47は上方開放切欠部74内で、前縁74aに沿って上方へ僅かに移動し、円弧下縁74bからは離れるようになる(図1)。
【0032】
このようにしてFPC80が接続された後は、カム部46の短辺の面46aと上腕62の先端部下側縁が係合している状態から、角部46cが上腕62の先端部下側縁と係合する状態へ変化させるには、端子60A、60B側からの反力が作用している条件で、比較的大きな力を必要とする。したがって、FPC80の引き回し等によって加圧部材40が意に反して第1の位置に向って姿勢変化するのを確実に防止することができる。接続状態がこのように確実に維持されるので、接続の信頼性を向上することができる。接続を解除する場合は、加圧部材40に端子60A、60Bからの反力に打ち勝つ力を与えて、第1の位置へ向かって姿勢変化させることになる。この時、カム部46とピン部47は前記と逆の経過をたどって、向きを変化させ、また、移動をする。
【0033】
図13は、他の実施形態のカム部46の断面を表している。図のように、カム部46の上腕62の先端部下側縁と係合することになる長辺の面46bは、平坦面50とテーパー面51で構成して、肩部62aを形成した上腕62の先端部下側縁の形状に対応させることもできる。
【0034】
尚、先の実施形態において、ハウジング20の両側には金属製のネイル100が装着してある。このネイル100は、図14、15に示すように、ハウジング20と係合する装着片101と、ハウジング20の外側に延びる係合片102が連結底片103で連続している。前記加圧部材40の側板部43は、ハウジング20とこのネイル100の係合片102の間隙に挟まれるように配置されている。
【0035】
ネイル100の係合片102には、突条104が内側に突出するようにして長手方向で設けてある。一方、加圧部材40の側板部43の外面には、図16に示したように、突条104を収容できる凹入溝52と、突条104と係合する段部53が設けてある。加圧部材40を第2の位置にすると、突条104と段部53が係合して、ここでも加圧部材40の第1の位置に向かう意に反する姿勢変化が起こらないようにしている。
【0036】
図17には更に別の実施形態のFPC用コネクタ200が示されている。この実施形態のFPC用コネクタ200は、偶数極の端子260Aおよび奇数極の端子260Bの形状が先の実施形態と異なっており、他の部分は先の実施形態と同様に構成されている。したがって、先の実施形態と同一の部材には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
先の実施形態の端子60A、60Bは、長いコンタクト片64、71のコンタクト部64a、71aおよび短いコンタクト片65、72のコンタクト部65a、72aがFPC受入空洞23において千鳥状に配置される構成であった。これに対して、図17に示した実施形態では、コンタクト部が千鳥配置ではなく一直線に並ぶようにしている。即ち、偶数極の端子260Aのコンタクトを構成している長いコンタクト片264の先端上縁に形成したコンタクト部264aと奇数極の端子260Bのコンタクトを構成している長いコンタクト片271の先端上縁に形成したコンタクト部271aがFPC受入空洞23内で、図の紙面に垂直の方向で一直線に並ぶように構成されている。短いコンタクト片265、272も同様で、偶数極の端子260Aの短いコンタクト片265の先端下縁に形成したコンタクト部265aと、奇数極の端子260Bの短いコンタクト片272の先端下縁に形成したコンタクト部272aが、FPC受入空洞23内で、図の紙面に垂直の方向で一直線に並ぶように構成されている。
【0038】
先の実施形態のFPC用コネクタ10に接続するFPC80では、その接点を上面および下面でそれぞれ千鳥配置の形態とするのに対し、この図17の実施形態のFPC用コネクタ200に接続するFPCでは、その接点を上面および下面でそれぞれ一直線に配置することになる。
【0039】
また、奇数極の端子260Bは、ハウジング20の後端27側から装着できるように形成されている。したがって、下腕を有することなく、基板部269の上部前縁から上腕268が延び、また、半田テイル273は基板部269の後縁下部から斜め下方に延びている。偶数極の端子260Aの半田テイル266と奇数極の端子260Bの半田テイル273も一直線に並列するようにしている。
【0040】
各端子260A、260Bの上腕262、268と加圧部材40の係合構造は先の実施形態と同一である。したがって、加圧部材40の姿勢変化におけるカム部45およびピン部47の動作は前記と同様であり、この実施形態においても接続の完了を確かなクリック感で認識させることができ、また、接続状態の意に反する解除を回避して信頼性を向上することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上に説明の通り、この発明のFPC用コネクタでは、加圧部材の断面を略長方形としたカム部と上腕の先端部下側縁を係合させ、また、ピン部を上腕の上方開放切欠部に遊合させて前後および上下の方向で移動可能に構成して加圧部材の第1の位置と第2の位置の間の姿勢変化を可能とし、一定の位置に配置される回動軸と軸受部を備えていない構成としたので、製造上の管理を容易にし、しかも、確かなクリック感を与えて操作上の認識性を向上し、また、加圧部材の意に反する姿勢変化を困難にして接続の信頼性を向上できるなどの優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 加圧部材が第2の位置にある時のこの発明の実施形態の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図2】 この発明の実施形態の斜視図である。
【図3】 この発明の実施形態の平面図である。
【図4】 この発明の実施形態の正面図である。
【図5】 この発明の実施形態の側面図である。
【図6】 加圧部材が第1の位置にある時のこの発明の実施形態の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図7】 加圧部材が第1の位置から第2の位置へ姿勢変化する時の中間段階の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図8】 図7から更に進んだ中間段階の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図9】 図8から更に進んだ中間段階の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図10】 図9から更に進んだ中間段階の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図11】 奇数極の端子の上腕に形成した上方開放切欠部の拡大図である。
【図12】 カム部に働くモーメントを説明する図である。
【図13】 この発明の他の実施形態のカム部の断面図である。
【図14】 この発明の実施形態のネイルの正面図である。
【図15】 同じくネイルの底面図である。
【図16】 この発明の実施形態の加圧部材の側面図である。
【図17】 この発明の別の実施形態の断面図で、(a)は偶数極の端子に沿って示した断面図、(b)は奇数極の端子に沿って示した断面図である。
【図18】 従来のFPC用コネクタの上方斜視図である。
【図19】 従来のFPC用コネクタの下方斜視図である。
【図20】 従来のFPC用コネクタの断面図である。
【図21】 従来の別のFPC用コネクタの分解斜視図である。
【図22】 従来の別のFPC用コネクタの断面図である。
【図23】 従来の更に別のFPC用コネクタの分解斜視図である。
【図24】 従来の更に別のFPC用コネクタの断面図である。
【符号の説明】
10、200 FPC用コネクタ
20 ハウジング
21 上側壁
23 FPC受入空洞
24、26 開口部
40 加圧部材
42 係合部
46 カム部
46a カム部の短辺の面
46b カム部の長辺の面
46c カム部の角部
47 ピン部
49 加圧面
60A、260A 第1(偶数極)の端子
60B、260B 第2(奇数極)の端子
62、262 上腕
64、264 コンタクト片
64a、264a コンタクト部
65、265 コンタクト片
65a、265a コンタクト部
68、268 上腕
71、271 コンタクト片
71a、271a コンタクト部
72、272 コンタクト片
72a、272a コンタクト部
74 上方開放切欠部
74a 前縁
74b 円弧下縁
74c 傾斜下縁
74d 後縁
80 FPC
Claims (5)
- ハウジング(20)と、複数の端子(60A、60B、260A、260B)と、加圧部材(40)とを備え、加圧部材(40)に設けた断面が略長方形のカム部(46)を用いて、ハウジング(20)のFPC受入空洞(23)に挿入されたFPC(80)の接点と端子(60A、60B、260A、260B)のコンタクト片(64、65、264、265)に形成したコンタクト部(64a、65a、264a、265a)を加圧係合させるようにしたFPC用コネクタ(10、200)において、
前記加圧部材(40)は、断面が略長方形のカム部(46)に加えてピン部(47)を備えており、前記カム部(46)が前記端子(60A、260A)の前記ハウジング(20)の上側壁(21)の下側に接するようにして、上側壁(21)に沿って延びて、先端部がFPC受入空洞(23)に臨んでいる上腕(62、262)の先端部下側縁に係合し、前記ピン部(47)が前記端子(60B、260B)の前記ハウジング(20)の上側壁(21)の下側に接するようにして、上側壁(21)に沿って延びて、先端部がFPC受入空洞(23)に臨んでいる上腕(68、268)の先端部に形成された、前縁(74a)、円弧下縁(74b)、傾斜下縁(74c)、後縁(74d)で画成される上方開放切欠部(74)と遊合しており、
前記加圧部材(40)が、FPC受入空洞(23)にFPC(80)の挿入を受け入れる第1の位置からFPC(80)の接点と前記コンタクト部(64a、65a、264a、265a)を加圧係合させる第2の位置へ姿勢変化する時、
前記カム部(46)は、前記第1の位置においてその長辺の面(46b)と前記上腕(62、262)の先端部下側縁が係合し、第1の位置から第2の位置への変化の際にはその角部(46C)が前記上腕(62、262)の先端部下側縁に移動しながら係合し、前記第2の位置においてはその短辺の面(46a)と前記上腕(62、262)の先端部下側縁が係合し、
前記ピン部(47)は、前記第1の位置において前記上方開放切欠部(74)の前記傾斜下縁(74c)と係合する位置にあり、第1の位置から第2の位置への変化の際には前記傾斜下縁(74c)を下るように移動して上方開放切欠部(74)の前記円弧下縁(74b)および前記前縁(74a)と係合する位置に移り、第2の位置においては前記円弧下縁(74b)から離れて前記前縁(74a)と係合する位置にあり、
前記加圧部材(40)が端子(60A、60B、260A、260B)のコンタクト片(64、65、264、265)から受ける反力が、前記カム部(46)の前記角部(46c)とこれに対向する角部を結ぶ対角線が垂直方向に向いた時に最大となるように構成されていることを特徴とするFPC用コネクタ。 - 前記端子(60B、260B)の上腕(68、268)に形成した上方開放切欠部(74)を画成している前縁(74a)は、前記ピン部(47)の前方移動の限界を構成して、加圧部材(40)の脱落を防止している請求項1に記載のFPC用コネクタ。
- 前記端子(60A、260A)の上腕(62)の下側縁は、断面略長方形のカム部(46)の角部(46c)と係合可能な肩部(62a)が形成されて、加圧部材(40)の後方移動の限界を構成している請求項1に記載のFPC用コネクタ。
- 断面略長方形のカム部(46)の一側面は、肩部(62a)が形成された上腕(62)の下側縁に対応させた面に形成されている請求項3に記載のFPC用コネクタ。
- 前記端子(60A、60B、260A、260B)は、FPC(80)の上面に設けられた接点と係合するコンタクト片(65、72、265、272)と、下面に設けられた接点と係合するコンタクト片(64、71、264、271)を、それぞれ、同一面内に備え、且つ偶数極および奇数極としてそれぞれ交互に隣接して配置されている請求項1に記載のFPC用コネクタ。
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