JP3755454B2 - 硝酸性窒素含有水の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は硝酸性窒素含有水(以下、被処理水という場合がある)中の硝酸性窒素を還元して除去する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
硝酸性窒素を含む排水の処理方法として、水中で水素を発生する金属と接触させて硝酸性窒素を亜硝酸性窒素またはアンモニア性窒素に還元し、亜硝酸窒素の場合は還元剤、アンモニア性窒素の場合は酸化剤の存在下に反応させて窒素ガスに転換して無害化する方法が提案されている(特開平7−328651号)。この方法ではデバルダ合金、亜鉛、アルミニウムなどの水中で水素を発生する金属の充填層に被処理水を通水して水素を発生させ、その還元力により硝酸性窒素を還元している。上記金属としてデバルダ合金の場合はpH10以上、亜鉛の場合はpH6以下、アルミニウムの場合は中性付近でアルミニウムの溶出と、硝酸性窒素の還元反応を行うことが示されている。
【0003】
上記の方法では主としてデバルダ合金が使用されているが、コスト高であり、また多量の汚泥が生成し、その処理が困難であるとともに、溶出後に残留するデバルダ合金の処理が困難であるなどの問題点がある。またアルミニウムも使用可能であるとされているが、その適性pHとされる中性付近、または金属の溶出性が高いとされる酸性領域ではアルミニウムの溶出量は少なく、硝酸性窒素の還元は不十分であるという問題点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、低コストで汚泥発生量が少なく、残留金属の処理も容易なアルミニウムを使用して、硝酸性窒素を効率的に還元して除去することができる硝酸性窒素含有水の処理方法を提案することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の硝酸性窒素含有水の処理方法である。
(1) 硝酸性窒素含有水をアルカリの存在下に金属アルミニウム充填層に通水し、金属アルミニウムを溶出させるとともに、硝酸性窒素を還元する方法であって、
金属アルミニウム充填層にアルカリを多段で注入し、pH10以上にして金属アルミニウムをアルミン酸イオンとして溶出させることを特徴とする硝酸性窒素含有水の処理方法。
(2) 単一の金属アルミニウム充填層にアルカリを多段で注入する上記(1)記載の方法。
(3) 複数のアルミニウム充填層に硝酸性窒素含有水を順次通水し、各充填層にアルカリを注入する上記(1)記載の方法。
【0006】
本発明において被処理水としての硝酸性窒素含有水は、硝酸塩その他硝酸イオンを解離する物質を含有する水である。硝酸イオンの濃度は特に限定されないが、1〜500mg/lの濃度で含有する水が処理に適している。このような硝酸性窒素含有水としては、発電所排水、半導体製造排水、無機化学工業排水、肥料工場排水、硝酸イオンを吸着したイオン交換樹脂の再生排液などがあげられる。硝酸性窒素含有水には、アンモニア、亜硝酸イオン、亜硝酸ガス、亜硝酸塩、その他の物質を含有していてもよい。
【0007】
本発明ではこのような被処理水をアルカリの存在下で金属アルミニウム充填層に通水し、金属アルミニウムを溶出させるとともに硝酸性窒素を還元する。金属アルミニウムはアルカリの存在下、pH10以上、好ましくはpH11以上では主にアルミン酸イオンに酸化されて溶出し、このとき硝酸性窒素が還元される。中性または酸性下ではアルミニウムは主にアルミニウムイオンとなって溶出し、このときの硝酸性窒素の還元は少ない。アルカリの存在下、特にpH11以上ではアルミニウムが良好に溶出し、硝酸性窒素が還元処理できる。還元処理された硝酸性窒素のうち相当部分は窒素ガスに還元される。他の相当部分はアンモニアに還元され、小部分は亜硝酸性窒素に還元され、他の一部は還元されないで残留する場合がある。
【0008】
本発明において使用する金属アルミニウムは単体金属であるが、不純物を含んでいてもよく、屑アルミニウムでもよい。このような金属アルミニウムは粒径0.1〜100mmの粒状物、線状物、板状物など任意の形状のものを塔内に充填して充填層を形成する。充填層は被処理水との接触が効率的に行われるように通水間隙を形成すればよく、その充填密度、充填高さ等は処理目標に応じて任意に決めることができる。
充填層は単一の塔内に一層または多層形成してもよく、また複数の塔内に一層または多層形成してもよい。
【0009】
本発明ではこのような金属アルミニウム充填層に被処理水をアルカリの存在下に通水して金属アルミニウムを溶出させる。被処理水に存在させるアルカリの量は含有アルミニウムをアルミン酸として溶出させる量であり、特にアルカリ濃度120mg/L(asOH-)以上、pH11以上の状態で通水するのが好ましい。通水方向は任意で上向流でも下向流でもよいが、上向流の方が汚泥の捕捉に適している。通水速度はアルミニウムが溶出するのに適した範囲であればよく、一般的にはSV=1〜100hr-1、好ましくは10〜50hr-1であるが、アルミニウム充填頻度に応じて任意に設定してもよい。
【0010】
被処理水をアルカリの存在下で通水するために、金属アルミニウム充填層にアルカリを多段で注入する。アルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が好ましい。被処理水がアルカリを含む場合には、アルカリを添加しなくてもよい場合があるが、不足する場合は添加して通水する。被処理水は金属アルミニウム充填層を通過する間アルカリ濃度0.2〜1g/L(asOH-)、pH11以上に調整して通水するのが好ましい。
【0011】
アルカリは必要な量を多段に分割して注入するが、分割して注入はアルミニウムの利用効率の点から好ましい。アルカリを多段に注入する場合、単一の充填層に、通水方向に沿って注入してもよく、また複数形成された充填層に順次被処理水を通水し、各充填層に一段または多段で注入してもよい。多段に注入する場合の注入段数は限定されず、通水方向に沿って連続的に注入してもよい。
【0012】
被処理水をアルカリの存在下で金属アルミニウム充填層に通水すると、(1)式により金属アルミニウムはアルミン酸となって溶出する。
【化1】
Al → Al3+ + 3e- ・・・(1)
【0013】
このとき電子が放出され、その還元力によって硝酸性窒素が還元される。中性、酸性域においてもアルミニウムは溶出するが、このときはアルミニウムイオンとなって溶出するのであり、溶出の形態が異なる。中性、酸性域よりも、pH10以上、好ましくはpH11以上でアルミニウムを溶出させるほうが、溶出量が多く、硝酸性窒素の還元処理性能も高くなることがわかった。
【0014】
このようなアルカリの存在下におけるアルミニウムの溶出に際し、アルカリを多段に分割して注入すると硝酸性窒素の還元処理に対するアルミニウムの利用効率が高くなる。アルミニウムの溶出量はアルカリ濃度が高いほど高く、アルカリを一度に注入してアルカリ濃度を高くすると、多量のアルミニウムが溶出し、硝酸性窒素の除去効率も高くなると考えられる。しかしアルカリ濃度を高くすると、アルミニウムの溶解、すなわちアルミニウムの酸化による還元作用は、水素の発生に多く使われ、硝酸性窒素の処理に使われる量が減るため、アルミニウムの利用効率が低くなることがわかった。
【0015】
本発明において、アルカリを多段で注入すると、被処理水のアルカリ濃度が高くなりすぎず、水素発生に使われるアルミニウムが少なくなり、アルミニウムの利用効率が高くなるものと推測される。被処理水の好ましいアルカリ濃度は0.02g/L(asOH-)以上、さらに好ましくは0.2〜1g/L(asOH-)、このときの好ましいpH領域はpH10以上、さらに好ましくはpH11〜12である。
【0016】
アルミニウムのアルカリによる溶解は(2)式、(2a)式により行われるものと推測される。
【化2】
2Al+2NaOH+2H2O→2NaAlO2+3H2 ・・・(2)
2Al+2OH-+2H2O→2AlO2 -+3H2 ・・・(2a)
【0017】
硝酸性窒素の窒素への還元反応は(3)式の目的反応により行われるものと推測される。
【化3】
6NO3 -+10Al+4OH-→3N2+10AlO2 -+2H2O ・・・(3)
【0018】
硝酸性窒素の還元を上記反応に限定するのは困難で、相当部分は(4)式に示す副反応によりアンモニアまで還元されるものと推測される。
【化4】
3NO3 -+8Al+2H2O+5OH-→3NH3+8AlO2 - ・・・(4)
【0019】
(3)式の主反応による硝酸性窒素1モルの分解に必要なアルカリの理論量は0.67モル、金属アルミニウムの量は1.67モル、アルカリの重量比は2.9重量部−NaOH/1重量部−NO3−N、(4)式の副反応による硝酸性窒素1モルの分解に必要なアルカリの理論量は1.67モル、金属アルミニウムは2.67モル、アルカリの重量比は4.8重量部−NaOH/1重量部−NO3−Nである。理論的には上記の薬品添加量に近づけるほど効率が高くなり好ましいが、現実には金属アルミニウム溶解によるアルミン酸の発生効率を高くするのは困難である。このためアルカリの添加量は上記理論量の2〜10倍、好ましくは2〜5倍とすることができる。
【0020】
一方、塩酸によるアルミニウムの溶出は(5)式により、また硝酸性窒素の窒素への還元は(6)式によるものと推測される。
【化5】
2Al+6HCl→2AlCl3+3H2 ・・・(5)
6NO- 3+10Al+30HCl→3N2+10AlCl3+12H2O+6OH- ・・・(6)
【0021】
また硫酸によるアルミニウムの溶出は(7)式により、硝酸性窒素の窒素への還元は(8)式によるものと推測される。
【0022】
【化6】
2Al+3H2SO4→Al2(SO4)3+3H2 ・・・(7)
6NO- 3+10Al+15H2SO4→3N2+5Al2(SO4)3+12H2O+6OH- ・・・(8)
【0023】
(6)式および(8)式の反応における硝酸性窒素1モルの分解に必要な酸の理論量は(6)式の場合塩酸5モル(5当量)、重量比では13重量部−HCl/1重量部NO3−N、(8)式の場合硫酸2.5モル(5当量)17.5重量部H2SO4/1重量部NO3−Nであり、(3)式の場合に比べて多量の酸が必要であることがわかる。
【0024】
上記の反応により窒素ガスが発生する場合、そのまま大気中に排出することができる。理論的には亜硝酸も生成するが、実際の反応ではほとんど発生せず、発生してもわずかである。相当量の硝酸性窒素はアンモニアに還元され、処理水中には生成するアンモニアと残留する硝酸性窒素、ならびに溶出したアルミン酸塩が含まれる。
【0025】
処理水中の窒素、アルミニウム等は排出基準値以下であればそのまま排出することができるが、一般的には後処理によりこれらを除去して排出する。アルミン酸塩は酸を添加し、pH6.5〜7に調整して水酸化アルミニウムを析出させ、沈澱分離等により分離して排出することができる。このとき処理水中に含まれる懸濁物等の不純物も同時に除去される。
【0026】
アンモニアの除去はストリッピング法、生物分解法、塩素分解法、アンモニアと亜硝酸塩の触媒酸化法など公知の方法により処理することができる。ストリッピング法は空気中にアンモニアを追出して除去する方法であり、追出されたアンモニアは反応中に発生する水素、アンモニアを含むガスとともに処理してアンモニアを除去することができる。生物分解法、塩素分解法、触媒酸化法などの場合はアンモニアを窒素ガスに分解でき、そのまま排出することが可能である。
【0027】
上記の処理でアルミニウムを溶出させる場合は、デバルダ合金、亜鉛等を溶出させる場合に比べて、発生する汚泥量は少なくなる。特にアルカリを多段で注入する場合は、硝酸性窒素の還元処理に対するアルミニウムの利用効率は高くなり、窒素処理量あたりの汚泥の発生量も少なくなる。処理後に残留する金属アルミニウムは、簡便な方法で除去できる。
【0028】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によればアルカリの存在下に金属アルミニウム充填層に通水する方法でにおいて、金属アルミニウム充填層にアルカリを多段で注入し、pH10以上にして金属アルミニウムをアルミン酸イオンとして溶出させることにより、低コストで汚泥発生量が少なく、残留アルミニウムも容易に除去可能な硝酸性窒素含有排水の処理が行え、さに硝酸性窒素の還元処理に対するアルミニウムの利用効率は高くなり、汚泥発生量も少なくなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1は実施形態の処理方法を示すフロー図であり、複数の反応槽1a、1b、1c内にそれぞれ金属アルミニウム充填層2a、2b、2cが形成されている。各充填層2a、2b、2cに順次シリーズで通水するように被処理水路3a、3b、3cが上向流通水できるように、反応槽1a、1b、1cの下部に連絡し、反応槽1c上部から処理水路4が系外に連絡している。アルカリ供給路5から各被処理水路3a、3b、3cにアルカリ注入路5a、5b、5cが連絡している。
【0030】
上記の処理系において、被処理水路3aから被処理水を供給し、このときアルカリ供給路5からアルカリを供給してアルカリ注入路5a、5b、5cから被処理水路3a、3b、3cに多段に注入して処理を行う。被処理水路3aの被処理水はアルカリ注入路5aからアルカリを注入してpH11以上の状態で充填層2aを通過する際金属アルミニウムが溶出し、これにより電子が放出され、硝酸性窒素が還元される。アルミニウムの溶出によってアルカリが消費された被処理水は被処理水路3b、3cに取り出され、アルカリ注入路5b、5cからアルカリを注入することにより補給された状態で反応槽1b、1cに供給され、充填層2b、2cを通過する際アルミニウムの溶出による硝酸性窒素の還元が行われる。硝酸性窒素を還元した処理水は処理水路4に取り出され、発生ガスを分離し、アルミニウム、アンモニアの分離、除去等の後処理を行ったのち放流される。
【0031】
図2は他の実施形態を示し、単一の反応槽1内に複数の金属アルミニウム充填層2a、2b、2cが形成されている。被処理液路3が反応槽1の下部に、処理水路4が上部に連絡し、またアルカリ供給路5からアルカリ注入路5a、5b、5cが充填層2a、2b、2cの下部に連絡している。
この処理系では、被処理水路3から入った被処理液は充填層2a、2b、2cを通して通水されるが、このときアルカリ供給路5から注入されるアルカリがアルカリ供給路5a、5b、5cから分割注入され、図1の場合と同様にアルミニウムの溶出と硝酸性窒素の還元が行われる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0033】
実施例1:
被処理水としてNO3−N200mg/l、NaOH2.2g/lの硝酸性窒素含有排水を図1の処理系で処理した。ただし反応槽1aでは被処理水中のNaOH2.2g/lを利用するためアルカリ注入は行わず、反応槽1b、1cにそれぞれNaOH1.35g/lを注入した。金属アルミニウム充填層2a、2b、2cはそれぞれ金属アルミニウム10mlを充填し、被処理水をSV=8hr-1で通水して処理を行った。
【0034】
参考例1
金属アルミニウム30mlを単一の反応槽に充填した反応槽に実施例1と同じ被処理水をSV=8hr-1で通水して処理を行った。このとき反応槽下部にNaOH1.2g/lを注入し、元々含まれているNaOHとの合計3.4g/lで処理を行った。
【0035】
比較例1、2:
実施例2において、NaOH1.2g/lに代えてHCl7.3g/l(比較例1)、およびH2SO49.8mg/l(比較例2)を注入した他は同様に行った。
【0036】
以上の結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0003755454
*1 排水基準T−N(=0.4×NH4−N+NO2−N+NO3−N)100mg/l以下
*2 処理水を後処理してアルミニウムを析出させたとき、処理水1literから発生する汚泥量(含水率80%)
【0037】
以上の結果より、酸を注入する比較例1、2では硝酸性窒素をほとんど除去できないのに対し、アルカリを注入する実施例1では硝酸性窒素を還元してT−Nを排水基準以下にすることができ、特にアルカリを多段で注入する実施例1では、参考例1よりも少ないアルカリ添加量で、アルミニウムを効率よく利用して硝酸性窒素を除去することができ、発生する汚泥量も少ないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の処理方法のフロー図である。
【図2】他の実施形態の処理方法のフロー図である。
【符号の説明】
1、1a、1b、1c 反応槽
2a、2b、2c 金属アルミニウム充填層
3、3a、3b、3c 被処理水路
4 処理水路
5、5a、5b、5c アルカリ注入路

Claims (3)

  1. 硝酸性窒素含有水をアルカリの存在下に金属アルミニウム充填層に通水し、金属アルミニウムを溶出させるとともに、硝酸性窒素を還元する方法であって、
    金属アルミニウム充填層にアルカリを多段で注入し、pH10以上にして金属アルミニウムをアルミン酸イオンとして溶出させることを特徴とする硝酸性窒素含有水の処理方法。
  2. 単一の金属アルミニウム充填層にアルカリを多段で注入する請求項記載の方法。
  3. 複数のアルミニウム充填層に硝酸性窒素含有水を順次通水し、各充填層にアルカリを注入する請求項記載の方法。
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