JP3693354B2 - 硝酸塩を含む排水の処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は硝酸塩を含む排水の処理法に係り、特に、硝酸塩を含む排水に水素ガスを添加して触媒存在下に加熱することにより硝酸塩を分解する方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、硝酸アンモニウムを含む排水からアンモニウムイオン(NH4 +),硝酸イオン(NO3 -)を除去する方法としては、生物処理による方法、或いは、薬剤とオゾンを併用する方法(特開平3−181390号公報)がある。
【0003】
また、特開昭52−7369号公報には、40〜95重量%の硝酸アンモニウムを分解するに当り、180〜290℃の流動床に排水を噴霧する方法が、特開昭53−20662号公報,同55−86484号公報等には、アンモニア含有水に酸素を吹き込んで脱窒することが開示されている。
【0004】
更に、特開平2−111495号公報では、亜硝酸塩や硝酸塩を含む水に水素ガスを注入した後、パラジウム触媒やロジウム触媒と接触させ亜硝酸塩や硝酸塩を窒素に還元することが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法のうち、生物処理による方法では、次のような問題点がある。
【0006】
▲1▼ 汚泥が発生する。
▲2▼ 処理水の水質のコントロールが難かしい。
▲3▼ 広いスペースを必要とする。
【0007】
また、薬剤とオゾンの併用処理には次のような問題点がある。
▲1▼ NH4 +濃度の10倍以上のBr- 濃度が必要である。
▲2▼ NH4 +濃度の2倍以上のオゾン濃度が必要である。
▲3▼ NH4 +濃度の大きい原水に対応できない。
▲4▼ NO3 -に対しては効果がない。
【0008】
また、特開昭52−7369号公報の方法では、焼却炉が必要であること、水を蒸発させるための熱が必要であり、40重量%以下の硝酸アンモニウム濃度のものには対応できないという欠点があり、特開昭53−20662号公報,同55−86484号公報の方法では、実用上の温度は250℃以上と高く、第1種高圧容器の取締りを受ける条件となり、管理者の常駐が必要となるという不具合がある。
【0009】
更に、水素ガスを用いる特開平2−111495号公報の方法では、水素の水への溶解度が著しく低い(例えば、水素分圧1kgf/cm2 で1.6ppm)ため、高濃度の排水を処理する際には、一旦処理した水に再度水素を溶解させて再び触媒と接触させるといった操作を繰り返す必要がある。このため、処理速度が遅く、また、処理工程が複雑になるといった問題がある。
【0010】
一方、還元剤として、水素ガスの代りにヒドラジン又はヒドロキシルアミンを用いる方法が、先に本出願人より提案された(特願平4−68209号。以下「先願」という。)。この先願の方法によれば、水素ガスによる上記問題は解消されるが、
▲1▼ ヒドラジンやヒドロキシルアミンは毒性があると言われているため、使用が制限される場合がある。
▲2▼ ヒドラジン又はヒドロキシルアミン自体が窒素を含むため、還元剤の添加量が多くなると処理水質が悪化する。
▲3▼ 上記▲2▼を防止するために、還元剤添加量を厳密に制御する必要がある。
といった問題が生じる。
【0011】
本発明は上記従来の問題点を解決し、硝酸塩を含む排水に還元剤として水素ガスを添加し、触媒存在下に加熱して硝酸塩を分解する方法において、高濃度排水をも容易かつ効率的に処理することができる硝酸塩を含む排水の処理方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の硝酸塩を含む排水の処理方法は、硝酸塩を含む排水に水素ガスを添加し、触媒存在下に加熱して硝酸塩を分解する方法において、該水素ガスを、該排水に対する水素ガス溶解度を超える添加量で、1〜10kg/cm 未満の供給圧力で供給すると共に、該分解処理温度を85〜180℃とすることを特徴とする。
【0013】
以下に本発明を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の硝酸塩を含む排水の処理方法の一実施例方法を示す系統図である。
【0014】
図中、1は硝酸塩(本実施例では硝酸アンモニウム(NH4 NO3 ))を含有する排水の貯槽、2はポンプ、3は熱交換器、4は圧力調整バルブ、5はヒーター、6は水素ガスボンベ、7はコンプレッサー、8は水素分離膜8Aを備える水素回収装置、9は触媒層9Aが形成された触媒塔である。11,12,13,14,15,16,17,18は配管を示す。
【0015】
本実施例の方法においては、貯槽1中のNH4 NO3 含有排水をポンプ2を備える配管11を経て熱交換器3に導入して、後述の触媒塔9から配管13を経て排出される処理水と熱交換し、更にヒーター5で加熱した後配管12を経て触媒塔9に導入して接触分解するが、この触媒塔の入口側において、導入配管12に、配管18より水素ガスボンベ6から水素ガスを添加する。
【0016】
本発明においては、この水素ガス添加量は、被処理排水に対する水素ガス溶解度を超える添加量とし、触媒塔9の触媒層9A内に水素の気泡が存在するように水素ガスを供給する。
【0017】
このような水素ガスの過剰添加により、高濃度排水であっても、効率的に接触分解処理することが可能とされる。
【0018】
触媒塔9で含有されるNH4 NO3 が分解除去された処理水は、配管13を経て抜き出され、熱交換器3で被処理排水と熱交換された後、配管14より系外へ排出される。
【0019】
一方、余剰の水素ガスと、反応により発生した窒素ガスとを含むガス成分は、配管15より抜き出され、水素分離膜8Aを備える水素回収装置8にて水素ガスが分離される。
【0020】
この水素回収装置8で分離された水素ガスはコンプレッサー7を備える配管17より水素ガス添加配管18に供給され、循環再使用される。一方、残余の排ガス成分は配管16より系外へ排出される。
【0021】
本発明において、触媒としては、触媒有効成分として、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、インジウム、イリジウム、銀、金、コバルト、ニッケル及びタングステン、並びにこれらの金属の水不溶性又は水難溶性の化合物、具体的には、一酸化コバルト、一酸化ニッケル、二酸化ルテニウム、三二酸化ロジウム、一酸化パラジウム、二酸化イリジウム、二酸化タングステン等の酸化物、更には二塩化ルテニウム、二塩化白金等の塩化物、硫化ルテニウム、硫化ロジウム等の硫化物等よりなる群から選ばれた1種又は2種以上を、アルミナ、活性炭、酸化チタン、酸化ジルコニア等の担体に担持したものが挙げられる。このような担持触媒中の金属及び/又はその化合物の担持量は、通常、担体重量の0.05〜25重量%、好ましくは0.5〜3重量%であることが望ましい。このような担持触媒は、球状、ペレット状、円柱状、破砕片状、ハニカム状、粉末状等の種々の形態で使用可能である。
【0022】
また、図1に示す方法において使用される水素分離膜としては、市販のものを好適に使用することができる。
【0023】
本発明の方法は、図1に示す如く、硝酸塩を含む排水を加熱すると共に水素ガスを添加し、これを上記担持触媒を充填した固定床式反応層に通液することにより実施することができる。この場合、反応層容積、触媒充填量、通液速度は、被処理排水と担持触媒との接触時間が3〜60分、特に10〜20分となるように設定するのが好ましい。なお、固定床式反応層に使用する担持触媒の粒径は、通常、0.2〜10mm、特に0.5〜5mm程度であることが好ましい。また、分解処理温度は、85〜180℃、好ましくは140〜170℃とする。
【0024】
なお、本発明において、水素ガスの過剰添加の割合は、被処理排水の硝酸塩濃度等により適宜決定され、硝酸塩濃度が高いものほど、水素ガスの過剰添加量を多くすることが好ましい。水素ガスの供給圧力は1〜10kg/cm未満で、水素ガスを、被処理排水中の硝酸塩を窒素ガスに還元するための理論量に対して好ましくは1/3〜100倍程度、特に好ましくは1/3〜10倍となるように添加する。
【0025】
このような本発明の方法は、特に、半導体製造工場から排出される硝酸排水とアンモニア排水とを合併して硝酸アンモニウムとすることにより、酸化性成分(HNO3 )と還元性成分(NH3 )とを含む化合物の形の排水に調製されたものに対して極めて有効である。
【0026】
【作用】
硝酸塩、例えばNH4 NO3 を含む排水に、水素ガスを添加すると共に所定温度に加熱して触媒に接触させると、下記反応により、NH4 NO3 をN2 に分解して除去することができる。
【0027】
NH4 ++NO3 -+H2 →N2 +3H2
本発明においては、水素ガスを過剰量添加して、触媒層内に水素ガスの気泡が存在する状態で上記反応を進行させるため、反応により液相の溶存水素が消費されると、その消費量に見合う水素が気相から液相へ移行し、溶存水素が逐次補給されるようになる。
【0028】
このため、高濃度排水であっても、本発明による十分な水素ガス供給量により、効率的に分解処理することが可能となる。
【0029】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0030】
実施例1
図1に示す方法に従って、排水の処理を行なった。ただし、水素分離膜による水素ガスの分離回収、循環再使用は行なわなかった。
【0031】
触媒塔としては、0.5重量%Pt担持Al23 触媒40g(約40ml)をカラムに詰めたものを用い、このカラムに、NH4 NO3 水溶液(Nとして2000ppm)を140℃に加熱し、水素ガスを供給圧8kg/cm2 ,供給量30ml−N/minで添加した後、毎分3.0ml/min(SV=4.5hr-1)で送液してNH4 NO3 の分解を行なった。
【0032】
得られた処理水のNH4 +,NO3 -濃度を測定したところ、各々、Nとして15ppm,3ppmであり、99%以上のNH4 NO3 除去率が達成された。
【0033】
実施例2
実施例1において、触媒塔の上部から水素ガスを含む混合ガス成分(原ガス)を引き抜き、表1に示す条件で水素分離膜(ポリイミド膜)による水素ガス分離回収試験を行なった。
【0034】
その結果、表2に示す通り、高濃度に水素ガスを含有する回収ガスが得られ、80%の水素ガスを回収することができた。
【0035】
【表1】
Figure 0003693354
【0036】
比較例1
被処理排水に水素ガスを供給した後、気液分離し、溶存水素のみを含む状態で触媒層に導入して接触処理を行なった。なお、水素ガスの供給量以外の処理条件は、実施例1と同様とした。
【0037】
その結果、処理水のNH4 +,NO3 -濃度は、いずれもNとして910ppmであり、NH4 NO3 除去率は9%であった。
【0038】
比較例2
比較例1において、得られた処理水に水素ガスを供給し、気液分離後同様に接触処理を行なう操作を繰り返した。
【0039】
その結果、NH4 NO3 除去率99%を達成するためには、水素ガスの供給及び接触処理の操作を11回行なう必要があり、実施例1に比べて11倍の処理時間を要することが確認された。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明の硝酸塩を含む排水の処理方法によれば、高濃度に硝酸塩を含む排水であっても、該排水中から硝酸塩をN2 として容易かつ効率的に分解除去することができる。
【0041】
本発明によれば、還元剤として水素ガスを用いて効率的な接触分解を行なえるため、
▲1▼ 毒性を有すると言われている還元剤(ヒドラジン、ヒドロキシルアミン)の使用が必要なくなる。
▲2▼ 還元剤の過剰添加に起因する処理水質の悪化の問題がなくなる。
▲3▼ 還元剤添加量の制御システムが不要となる。
といった効果が奏され、工業的に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の硝酸塩を含む排水の処理方法の一実施方法を示す系統図である。
【符号の説明】
1 貯槽
2 ポンプ
3 熱交換器
4 圧力調整バルブ
5 ヒーター
6 水素ガスボンベ
7 コンプレッサー
8 水素回収装置
8A 水素分離膜
9 触媒塔
9A 触媒層

Claims (3)

  1. 硝酸塩を含む排水に水素ガスを添加し、触媒存在下に加熱して硝酸塩を分解する方法において、該水素ガスを、該排水に対する水素ガス溶解度を超える添加量で、1〜10kg/cm未満の供給圧力で供給すると共に、該分解処理温度を85〜180℃とすることを特徴とする硝酸塩を含む排水の処理法。
  2. 請求項1において、触媒存在下に加熱して硝酸塩を分解した後の余剰の水素ガスを、水素分離膜を備えた水素回収装置にて分離回収して、再利用することを特徴とする硝酸塩を含む排水の処理法。
  3. 請求項1又は2において、該分解処理温度を140〜170℃とすることを特徴とする硝酸塩を含む排水の処理法。
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