JP3754823B2 - 球面形状の加工方法 - Google Patents

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  • Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチルカメラ、ビデオカメラ等に用いられる球面形状のレンズを加工する方法の改良に関するもので、特に加工するレンズの球面の、凹凸反転した曲率半径の球面形状を有する総型工具に被加工材料を押しつけ、総型工具の回転による総型工具と被加工材料の相対運動と、場合により総型工具または被加工材料を球面の接線方向に揺動運動を与えることによって被加工材料を加工する、球面形状の加工方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の球面の被加工材料(レンズ)を総型砥石で加工する装置として、図6に示すような傾斜軸タイプの研磨機、図7に示すような垂直軸タイプの研磨機、図8に示すような球心揺動タイプの研磨機をはじめ、様々な種類の研磨機が用いられている。
【0003】
これらの研磨機は、いずれも「総型工具の回転と被加工材料の連れ回りによる相対運動」、「被加工材料の総型工具に対する加圧力」、「場合により総型工具の接線方向への、被加工材料または工具の揺動運動」によって、被加工材料が総型工具によって加工され、被加工材料が工具形状を凹凸反転した球面形状に加工されるものである。
【0004】
前記傾斜軸タイプの研磨機、垂直軸タイプの研磨機で、総型砥石により球面形状を加工するときの、カンザシおよびカンザシアームの長さをどのように設定するか、また傾斜軸タイプの研磨機、球心揺動タイプの研磨機で球面形状を加工するときの、工具軸の傾斜角度をどのように設定するか、すなわち総型工具の中心軸と被加工材料の中心軸の相対位置関係をどのように設定するかについては、例えば特開平3−117550号公報で述べられているように、球面レンズの製造途中で、加工終了した被加工球面の曲率半径を測定し、前回加工した被加工球面の曲率半径の測定値と対比して曲率半径の変化値を求め、工具と被加工材料の相対位置を修正する、あるいは前記特許公報の従来例で述べられているように、熟練者の勘に頼って作業が行なわれているのが通例であった。
【0005】
なぜこのような作業が必要かというと、この種の加工方法は、共ずり加工であるため、被加工材料が総型工具で削られると同時に、総型工具も被加工材料によって削られ(摩耗し)、徐々に総型工具の球面の形状が変化し、加工される被加工材料の球面形状もそれに応じて変化してしまうのである。この球面形状の変化の度合い(曲率半径が大きくなるのか、小さくなるのか、すぐに変化するか、ゆっくり変化するか)は、様々な要因があるが、中でも総型工具と被加工材料の相対位置関係がどのようになっているかが、最も大きな要因なのである。
【0006】
図10は、従来の球面レンズ製造の場合を例に、従来の球面形状加工方法を説明するためのフローチャートである。
【0007】
従来の球面レンズ製造方法は、まず加工すべきレンズのプロフィール、すなわち図11に示す完成品のレンズの曲率半径Rwと、レンズの加工面の直径Dw、および、RwとDwから計算されるレンズの半開角θw、が提示されると、経験と勘から、揺動中心角度位置θ0を適当にセットし、実際にレンズ材料を加工する。次に加工された被加工球面の曲率半径を、例えば図9に示す簡易球面計等で測定し、加工された被加工球面の曲率半径が許容値以内かどうか、またいくつかのレンズ材料を加工した後、加工された被加工球面の曲率半径の変化値が許容値以内かどうかを判断し、許容値外の場合には、当初設定した揺動中心角度位置θ0を修正して、あらためて加工を続行する。
【0008】
この、加工・測定・揺動中心角度位置θ0の修正という作業を、少なくとも、加工された被加工球面の曲率半径が許容値内で、かつ曲率半径の変化値が許容値内になるまで続行する。
【0009】
すなわち、球面レンズの生産途中で、揺動中心角度位置θ0の調整作業と、生産途中で加工された被加工球面の曲率半径の測定を行なう必要があり、人手を省くことができない、あるいは、加工装置に自動的にこれらの作業を行なわせる機能を付加したとすると、非常に高価な装置になってしまうなど、いずれも球面レンズの製造コストを下げられない原因となっていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
球面レンズの生産において、曲率半径が一定のレンズを継続して作ることは非常に難しいことであるが、特に加工機のカンザシやカンザシアームの長さ、あるいは工具軸の傾斜角度、すなわち総型工具の中心軸とレンズ材料の中心軸の相対角度を変えると、加工されたレンズの曲率半径の変化値が変わってしまうという問題があった。
【0011】
しかしながら、従来の技術で述べてきたように、総型工具の中心軸と被加工材料(レンズ)の中心軸の相対角度をどのように設定するかについては、球面レンズの製造途中で、加工終了した被加工球面の曲率半径を測定し、前回加工した被加工球面の曲率半径の測定値と対比して曲率半径の変化値を求め、工具と被加工材料の相対位置を修正する、あるいは熟練者の経験と勘に頼って作業が行なわれているのが通例であった。
【0012】
すなわち、被加工球面の曲率半径は生産途中で変化してしまうということを前提として、生産の途中で加工条件をどのように変更していくかを決めることが、球面レンズの生産を安定させる唯一の方法であった。このため、球面レンズの生産途中での被加工球面の曲率半径測定が必要で、手間とコストがかかってしまう、あるいはなかなか曲率半径が安定する相対位置を見つけられずに、何度も繰り返し条件の変更をしなければならないなどの問題があった。
【0013】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、球面レンズの生産開始当初から、安定して一定の曲率半径の球面レンズを加工し続けることができる球面形状の加工方法及び水平位置出し治具を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係わる球面形状の加工方法は、加工する被加工材料の、凹凸反転した曲率半径の球面形状を有する総型工具に前記被加工材料を押しつけ、前記総型工具を回転させて該総型工具と前記被加工材料に相対運動を与え、かつ前記総型工具または前記被加工材料を前記総型工具球面の接線方向に揺動運動を与えることによって、前記被加工材料を加工する球面形状の加工方法において、前記揺動運動の振り幅の中心位置における前記総型工具の中心軸と前記被加工材料の中心軸がなす相対角度をθ 0 加工に使用する前記総型工具の半開角をθtとし、前記相対角度θ0と前記総型工具の半開角θtの比を、揺動中心位置係数α(=θ0/θt)としたときに、工具を交換する際に、交換前に使用していた前記総型工具の半開角θt1と、交換後の前記総型工具の半開角θt2が異なる場合であっても、前記揺動中心位置係数αが同じ数値となるように、交換後の前記相対角度θ02を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、新しい総型工具と被加工材料の相対角度がθ02となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0016】
また、この発明に係わる球面形状の加工方法において、前記揺動中心位置係数αを0.35〜0.65の範囲に設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係わる球面形状の加工方法において、前記揺動中心位置係数αの最適値を決定するために、あらかじめ予備加工条件として、任意の揺動中心位置係数α1、α2の2条件で、予備加工に使用する工具の半開角θt0に応じて、θ01=α1×θt0、θ02=α2×θt0となるように総型工具と被加工材料の相対角度θ01とθ02を決定し、 球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ01、θ02となるように調整し、それぞれの加工条件で、一定数の被加工材料を加工したときの、被加工材料の曲率半径の変化量の測定値ΔR1、ΔR2の値から、αb=(ΔR1×α2−ΔR2×α1)÷(ΔR1−ΔR2)の計算式により、揺動中心位置係数の最適値αbを求めておき、前記揺動中心位置係数の最適値αbにより、加工に使用する工具の半開角θtに応じて、θ0b=αb×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度の最適値θ0bを決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度が、最適値θ0bとなるように調整し、θ0=一定(θ0b)の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0018】
また、この発明に係わる球面形状の加工方法において、前記揺動中心位置係数αを、加工するレンズの半開角θwに応じて、実験的に求めた最適範囲を示す式である、αb1(=0.73−0.005×θw)<α<αb2(=0.75−0.005×θw)の範囲で設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0022】
また、本発明に係わる球面形状の加工方法は、加工する被加工材料の、凹凸反転した曲率半径の球面形状を有する総型工具に前記被加工材料を押しつけ、前記総型工具を回転させて該総型工具と前記被加工材料に相対運動を与え、揺動運動はさせずに前記被加工材料を加工する球面形状の加工方法において、前記総型工具の中心軸と前記被加工材料の中心軸がなす相対角度をθ 0 加工に使用する前記総型工具の半開角をθtとし、前記相対角度θ0と前記総型工具の半開角θtの比を、揺動中心位置係数α(=θ0/θt)としたときに、工具を交換する際に、交換前に使用していた前記総型工具の半開角θt1と、交換後の前記総型工具の半開角θt2が異なる場合であっても、前記揺動中心位置係数αが同じ数値となるように、交換後の前記相対角度θ02を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、新しい総型工具と被加工材料の相対角度がθ02となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0023】
また、この発明に係わる球面形状の加工方法において、前記揺動中心位置係数αを0.35〜0.65の範囲に設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0024】
また、この発明に係わる球面形状の加工方法において、前記揺動中心位置係数αの最適値を決定するために、あらかじめ予備加工条件として、任意の揺動中心位置係数α1、α2の2条件で、予備加工に使用する工具の半開角θt0に応じて、θ01=α1×θt0、θ02=α2×θt0となるように総型工具と被加工材料の相対角度θ01とθ02を決定し、 球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ01、θ02となるように調整し、それぞれの加工条件で、一定数の被加工材料を加工したときの、被加工材料の曲率半径の変化量の測定値ΔR1、ΔR2の値から、αb=(ΔR1×α2−ΔR2×α1)÷(ΔR1−ΔR2)の計算式により、揺動中心位置係数の最適値αbを求めておき、前記揺動中心位置係数の最適値αbにより、加工に使用する工具の半開角θtに応じて、θ0b=αb×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度の最適値θ0bを決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度が、最適値θ0bとなるように調整し、θ0=一定(θ0b)の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0025】
また、この発明に係わる球面形状の加工方法において、前記揺動中心位置係数αを、加工するレンズの半開角θwに応じて、実験的に求めた最適範囲を示す式である、αb1(=0.73−0.005×θw)<α<αb2(=0.75−0.005×θw)の範囲で設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴としている。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施形態)
まず、本発明の球面形状加工方法を球面レンズの製造に適用した場合について、図1に示すフローチャートに基づき説明する。
【0030】
本実施形態の球面形状加工方法では、製造するレンズのプロフィール(曲率半径、外径、外観形状等と、それぞれの公差)が与えられると、予め構築されているデータベース、あるいは予備実験等に基づき、揺動中心位置係数の最適値αbを決定する。さらに、この揺動中心位置係数を、使用する工具の半開角に掛け合わせた角度が「最適な揺動中心角度位置θb」であり、揺動運動を加える場合には、揺動の中央位置がこの「最適な揺動中心角度位置」となるように、揺動運動を加えない場合には、固定される工具と被加工材料の相対角度を、この「最適な揺動中心角度位置」となるように、加工機の工具傾斜角やカンザシ位置を調整し、工具と被加工材料の相対角度をセットする。この相対角度位置で加工を開始し、この相対角度位置を維持しながら連続して多数の被加工材料を加工する。多数の被加工材料を加工すると、使用する機械の構成によっては、工具の摩耗による工具と被加工材料の相対位置のずれが発生する場合もあるが、この場合には予め工具の摩耗速度を測定しておき、一定数の被加工材料を加工するごとに機械の位置を微調整して、工具と被加工材料の相対角度位置が変化しないように対応する。
【0031】
次に図2は、図6に示す傾斜軸タイプの研磨機でレンズ材料を加工する場合に、本実施形態のレンズ材料加工方法を実施するための、工具半開角と、揺動中心位置における工具とレンズの相対角度の関係を、模式的に示した図である。
【0032】
図2の説明の前に、図6の傾斜軸タイプの研磨機について説明する。
【0033】
図6に示す傾斜軸タイプの研磨機では、工具軸115と工具軸回転モータ119は、工具軸支持部材121に取り付けられ、工具軸回転モータ119の回転がプーリ118,116、ベルト117を介して伝えられることにより、工具軸115が回転する。
【0034】
工具軸支持部材121は、架台120に対し、図示しない軸を中心に回動自在で、傾斜角を調整することができる。工具軸支持部材121は、傾斜角調整ネジ122に取り付けられたハンドル123を回転して工具軸115の傾斜角を調整した後、固定ネジ124により架台120に固定される。
【0035】
総型工具101は図示しないネジで工具軸115に取り付けられ、工具軸115と共に回転する。
【0036】
一方、被加工材料であるレンズ材料102は、ゴム等の保持材103を介してホルダ104内におさめられ、ホルダ104の凹部にカンザシ105の先端の球がはまり、ホルダ104はカンザシ105に対して回転、傾斜自在となっている。加工中レンズ材料102は総型工具101の回転に伴ってレンズ自身の自転トルクが発生し、ホルダ104とともに回転する。
【0037】
カンザシ105はネジ107でカンザシアーム106に長さを調整して取り付けられる。またカンザシアーム106は揺動ベース109にピボット108を中心に回動自在に取り付けられており、カンザシアーム106およびカンザシ105の荷重と、場合により図示しない重り、バネ、エアシリンダ等によって調整された荷重がホルダー104に加えられ、レンズ材料102が総型工具101に押しつけられる。
【0038】
揺動ベース109はリンク110を介して揺動回転軸111と結合され、リンク110の固定長さを、ネジ109bを緩めて調整することにより、揺動ベース109の図示左右方向の位置を調整することができる。リンク110の別の端部は、ネジ112で揺動回転軸111に結合されており、揺動回転軸111の回転に伴って揺動ベース109が図示左右方向に揺動運動する、もしくは揺動回転軸111の回転を停止して総型工具の中心軸とレンズ材料の中心軸の相対角度を一定にしたまま加工を行なう。この揺動ベース109の揺動運動にともない、カンザシアーム106、カンザシ105が図示左右方向に揺動運動し、レンズ材料102が総型工具101の表面を揺動する、もしくは一定の位置に停止する。なお揺動回転軸111は図示しないモータにより一定回転数で回転可能である。
【0039】
以上の構造の研磨機により、総型工具の回転とレンズ材料の連れ回り、レンズ材料の総型工具に対する加圧力、場合により総型工具の接線方向へのレンズ材料の揺動運動によってレンズ材料が総型工具によって加工され、被加工面が工具形状を凹凸反転した球面に加工される。
【0040】
図2は、図6の傾斜軸タイプの研磨機の主要部を模式的に表した図であるが、総型工具11の半開角は図示θtであり、揺動中心における工具中心軸21とレンズ材料の中心軸22の相対角度は図示θ0である。
【0041】
総型工具の半開角θtは、総型工具の外形dtと曲率半径Rtを測定することにより、
θt=arcsin(dt/2Rt)
の式から求めることができる。
【0042】
なお、総型工具の外径dtの測定は、凸面の工具はマイクロメータで、また凹面の工具は工具顕微鏡等で正確に行なう。
【0043】
また、総型工具の曲率半径は、ここでは実測値ではなく、加工したい球面形状の曲率半径の仕様値とする。
【0044】
レンズ材料の加工は、総型工具11が中心軸21回りに回転し、レンズ材料12は保持材13を介してホルダ14に納められており、ホルダ14がカンザシ15によって図示下方向に押しつけられている。この時レンズ材料12は、総型工具11の回転につられて自転する。
【0045】
揺動運動を付加する場合には、カンザシ15が図示左右方向に動くことにより、例えばカンザシ15は右端のカンザシ15bの位置から、左端のカンザシ15cの位置まで動き、ホルダ14と保持材13とレンズ材料12は、カンザシの左右方向の動きに伴って、レンズ材料12が総型工具11の表面の球の接線方向に沿って、右端のレンズ材料12bの位置から、左端のレンズ材料12cの位置の間で揺動運動する。この時、右端のレンズ材料12bの位置のレンズ材料の中心軸22bと、左端のレンズ材料12cの位置のレンズ材料の中心軸22cのそれぞれが総型工具の中心軸となす角の平均値となる位置における、レンズ材料の中心軸22が総型工具の中心軸となす角を、揺動中心位置におけるレンズ材料と工具の相対角度θ0と定義する。
【0046】
この図6に示す傾斜軸タイプのレンズ加工機を使用して、揺動中心位置における、レンズ材料と工具の相対角度θ0を正確にセットするために、本実施形態では、加工機の工具軸の傾斜角を、セットしたい工具とレンズの相対角度θ0と同じ角度になるように調整し、上軸は、図示左右方向の揺動の中心位置において、レンズを工具上にセットした時に、レンズが水平になるように調整した。
【0047】
本実施形態では、図6に示す傾斜軸タイプの加工機を正確に調整するために、図14に示すように、加工機の傾斜基準面121b上にデジタル傾斜計125を取付け、また揺動ベース109の位置を測定するデジタルスケール126を取り付けた。
【0048】
ここではデジタル傾斜計125の種類として、Lucas Sensing System Inc.製傾斜計DP−60型、デジタルスケール126の種類として、ソニー・プレシジョン・テクノロジー(株)製デジタルゲージDG100Pを使用したが、類似の測定器であれば、いかなる製品も使用できる。
【0049】
また、レンズ材料の水平位置を正確に決めるためには、図15に示す水平位置出し治具を使用した。
【0050】
水平位置出し治具は、水準器130、治具131、レンズ材料ダミー132から構成されており、治具131の上面には実際のホルダーと同じように、カンザシ受け用のカンザシ穴134がある。
【0051】
レンズ材料ダミーの下面は、実際に加工するレンズの曲率半径と略一致する球面形状となっている。
【0052】
また、治具131の基準面131bは、治具に接着されたレンズ材料ダミー132の下面の球面の中心軸のうち、カンザシ穴134の中心を通る軸に垂直な、水平基準面となっている。
【0053】
また、レンズ材料ダミー132の底から、カンザシ穴131bの底までの厚さtは、実際に加工するレンズ材料102、保持材103、ホルダー104のカンザシ穴104bの底までの厚さの合計とほぼ同じ厚さになっている。
【0054】
これらの装置、治具を使用して、揺動中心位置における、レンズ材料と工具の相対角度θ0を正確にセットする方法は、まずデジタル傾斜計125を見ながら、工具軸115の傾斜角を所定の角度θ0に調整して、固定ネジ124で傾斜角を固定する。
【0055】
次に図15に示す水平位置出し治具を、レンズ加工に先立ち、図14の研磨機に、レンズ材料102、保持材103、ホルダー104の代わりに取付け、実際に加工する時と同じようにカンザシ105をおろして、レンズ材料ダミー132を総型工具101に押しつけた状態にする。
【0056】
この状態で、ネジ109bを緩めて、揺動ベース109を図示左右方向に動かして、水準器で治具基準面131bが水平になる位置を捜し、治具基準面131bが水平な位置で、デジタルスケール126のスケールカウンター127の数値を0にリセットする。
【0057】
この状態において、レンズ材料102が水平で、工具軸115の傾斜角が、セットしたい工具とレンズの相対角度θ0と同じ角度となるから、総型工具の中心軸と、レンズ材料の中心軸との実際の相対角度は、θ0となる。
【0058】
次に、揺動回転軸111を回転させた時に、スケールカウンター127の読みが、数値0を中心に左右均等に動くように、すなわち、スケールカウンターの読みの最大値と、最小値が、符号を逆にして絶対値が同じ値となるように、ネジ109bを緩めて揺動ベース109の位置を調整する。
【0059】
この状態において、レンズ材料と総型工具の相対角度は、揺動の中心位置において、レンズ材料102が水平で、工具軸115の傾斜角が、セットしたい工具とレンズの相対角度θ0と同じ角度であるから、揺動中心位置におけるレンズ材料と総型工具の実際の相対角度は、θ0となる。
【0060】
また、本実施形態では、工具の摩耗等により工具を交換する際に、工具の直径(半開角)が工具交換前と異なる場合には、工具交換前後で揺動中心位置係数αが同じ値となるように、新しい総型工具と被加工材料の相対角度を決定する。
【0061】
本実施形態では、この点についての実際の加工例を、以下に詳しく説明する。球面形状加工用の総型工具は、その製法上直径を正確に再現良く作ることは難しく、1個ごとにその直径は微妙に異なる。
【0062】
例えば、R10、φ19.2の仕様の工具では、10個の同じ仕様の総型工具の直径のばらつきは、±0.1mmほどあったが、直径が0.1mm異なると、半開角にして約1°の誤差が出る。この時レンズ材料と総型工具の相対角度位置θ0を同じ条件にして加工を行うと、工具半開角のわずかな差により、加工されたレンズの曲率半径の変化値は大きく異なってしまうのである。
【0063】
従って、工具を交換した場合には、工具交換前の工具半開角をθt1、相対角度位置をθ01とし、その比を揺動中心位置係数α(=θ01/θt1)とした時に、工具交換後の工具半開角をθt2とすれば、工具交換前後で揺動中心位置係数αの値が同じ数値となるように、すなわち工具交換後の相対角度位置θ01=α×θt2となるように、相対位置を決定し、加工機を調整する。
【0064】
具体的な例として、レンズ球面の曲率半径R=10.00mm、レンズ径φw=15.00mm(半開角48.59°)の凹レンズを加工する場合に、工具径φt1=19.20mm(半開角θt1=73.74°)の工具1から、工具径φt2=19.10mm(半開角θt2=72.75°)の工具2に交換した時に、本実施形態の方法を取り入れた場合の、加工されたレンズの曲率半径の変化を測定した。
【0065】
なお、一般に、レンズをブランクから製品として使用可能な形状、表面状態に仕上げるまでの工程は、例えば、まずカーブジェネレータでブランクを概略の球面形状に削り出す粗研削工程、本実施形態で述べている、メタルボンドの総型砥石で適度な形状、粗さに仕上げる精研削第1工程、精研削第1工程と同様の加工方法で、レジンボンドの総型砥石でレンズ材料の粗さを更に良くする精研削第2工程、傷やクラックを除去してレンズ材料表面を、研磨材と、弾性シートを表面に貼った総型工具で磨きあげる研磨工程など、数多くの工程が必要となる。この時、各工程で作るべき曲率半径(目標値)は、次工程に投入した時に、レンズ被加工面の外周側のエッジが工具球面部に最初に接触するように、各工程の曲率半径を仕上げることが望ましく、すなわち、凹球面のレンズでは、前工程ほど曲率半径が小さく、また凸球面のレンズでは、前工程ほど曲率半径が大きくなるように各工程の曲率半径を仕上げていくことが一般的である。
【0066】
本実施形態では、前工程のカーブジェネレータによる粗研削工程で仕上げるレンズ材料の被加工面の曲率半径が、本実施形態の工程の目標値よりも約0.010mm小さくなるように加工した。
【0067】
また、レンズの曲率半径の測定は、一般に図9に示すような簡易球面計で行ない、マスターとなる球面原器との球面高さの差であるΔH(μm)で示す。本実施形態の場合には、前工程の方がレンズの曲率半径が0.010mm小さいので、これを簡易球面計で測定すると、前工程のΔHが自工程のΔHよりも、3.2μmマイナス(リング303の径:φ13mm)になるようにすればよい。
【0068】
使用した総型砥石の種類は、#1200のメタルボンドダイヤモンド砥石であり、あらかじめ皿合わせと呼ばれる作業を行い、所定の曲率半径の球面形状に成型された、凸球面総型砥石である。
【0069】
使用した加工機は、前述の図6に示す、傾斜軸タイプの加工機であり、半開角θt1=73.74°の「工具1」で加工を行う時の工具とレンズの相対角度θ01=36.40°(揺動中心位置係数α=0.4936)となるように、先に説明した通り(下軸)工具軸の傾斜角を36.40°に調整し、レンズが水平位置を中心に揺動するように上軸を調整した。
【0070】
また、使用する工具を、半開角θt2=72.75°の「工具2」に交換した時は、αが同じ値となるように、θ02=35.91°となるように調整した。(36.40/73.74=35.91/72.75=α)
それぞれの条件で、150個ずつの被加工材料(レンズ)を加工した時の、レンズのΔH測定値の変化を、図16と図17に示す。
【0071】
また、本実施形態と同時に、比較例として、従来通り「工具1」から「工具2」に交換した時にも相対角度位置を変更せず、θ02=36.40°で加工を続けて行った結果も合わせて示す。
【0072】
なお、この工程でのΔHの目標値は、−4.0μm±1.0μmとした。(リング303の径:φ13mm)
図16及び図17より、本実施形態の方法では、150個のレンズを加工する間のレンズのΔH変化量は(1つの工具を使っている間でのΔH変化量で、工具交換時の急激な変化は除く)、工具交換前も後も+0.2μmであり同等であったが、比較例の方法では、工具交換前は+0.2μm、工具交換後は−0.6μmであり工具交換前後でのレンズΔHの変化量が大きく異なる結果となった。
【0073】
この実施形態と同様の実験を数々行った結果、揺動中心位置係数αが同じ数値になるように加工機の調整を行えば、工具径が異なる工具で同じ形状のレンズを加工する場合には、加工されたレンズの曲率半径の変化速度が、ほぼ同じ量になる、ということを、本願発明者らは見出したのである。
【0074】
本実施形態の方法を取り入れることにより、工具交換前後でのレンズのΔHの変化量は変わらないから、一定の決められたタイミングで工具交換を行えば、生産途中でレンズのΔHを測定したり、加工機の位置調整を行わなくとも、安定して良品のレンズを作り続けることができ、大幅な人件費の削減を図ることができた。
【0075】
(第2の実施形態)
第1の実施形態で既に説明した揺動中心位置係数αは、加工するレンズの形状、前工程のレンズの曲率半径等により、最適な値が異なる。そこで、第2実施形態として、揺動中心位置係数αの最適値αbの決定方法、およびデータベースの構築方法について説明する。
【0076】
本実施形態では、曲率半径10mm凹面、レンズ径12.30mm(半開角37.95°)のレンズを、球面形状の総型砥石で研削加工する場合の例について述べる。
【0077】
使用した砥石は、形状が曲率半径10mmの凸球面、直径17.82mm(半開角63.00°)であり、種類は#1200のメタルボンドダイヤモンド砥石である。
【0078】
また、前工程のカーブジェネレータによる粗研削工程で仕上げるレンズ材料の被加工面の曲率半径は、本実施形態の工程の目標値よりも約0.010mm小さくなるよう、簡易球面計で、ΔHが2.0μmマイナス(リング径303の径:φ11mm)になるように加工した。
【0079】
以上の条件下で、揺動中心位置係数αの最適値を求めるために、次のような予備実験を行なった。
【0080】
まず、適当な揺動中心位置係数α1、α2、α3を選定し、実際にレンズ材料を、連続して100個程度同じ条件で加工を行なう。本実施形態で選定した揺動中心位置係数α1、α2、α3は、0.50、0355、030である。
【0081】
この予備実験での揺動中心位置係数の選定は、0.35〜0.65の範囲で、適宜選定する。
【0082】
揺動中心位置係数を、この範囲に選定する理由は、揺動中心位置係数が0.35より小さい場合、すなわち総型工具とレンズの相対角度が小さい場合には、揺動によりレンズを最も工具の外側に振った時でも、図12に示すように、レンズの最外周が工具の最外周よりも常に内側にあり、工具の最外周付近には、レンズと全く接触しない部分がある。このような場合、レンズを加工して工具が摩耗した時に、徐々に工具に段差ができ、工具の段差と接触したレンズの最外周部分が集中荷重を受けるため、レンズのエッジが微小に欠ける(ピリ、またはチッピングと呼ぶ)、加工されたレンズのΔHが安定しないなどの現象が発生し、レンズは不良品となってしまう。
【0083】
また、揺動中心位置係数が0.65より大きい場合、すなわち、工具とレンズの相対角度が大きい場合には、今度は工具の中心付近にレンズと接触しない部分が生じ、工具中心側に段差ができて、レンズのエッジが微小に欠けるなどの現象が発生し、レンズは不良品となってしまう。
【0084】
あるいは、半開角が大きいレンズを加工する場合に、図13に示すように、工具の最外周からはみ出したレンズの最外周が、工具の外周面と接触してしまい、前記と同様レンズの最外周に集中荷重が加わり、レンズのエッジが微小に欠けるなどの現象が発生し、レンズは不良品となってしまう。
【0085】
揺動中心位置係数を0.35〜0.65の範囲に設定することは、予備実験に限らず、揺動中心位置係数を決定する時には常に必要な条件である。
【0086】
本実施形態では、工具の半開角は63.00°であるから、それぞれの揺動中心位置係数に対し、例えば揺動中心位置係数α=0.50の時には、揺動中心位置におけるレンズ材料と総型工具の相対角度θ0=0.50×63.00=31.50°になるように加工機をセットする。
【0087】
同様に、それぞれの揺動中心位置係数から計算したレンズ材料と総型工具の相対角度位置を基に決定した揺動位置で、レンズ材料を各100個ずつ加工した時の、でき上がったレンズ材料の被加工面の曲率半径の測定結果を図18に示す。
【0088】
曲率半径の測定は、図9に示す簡易球面計で行ないマスターとなる球面原器との球面高さの差であるΔH(μm)で示す。
【0089】
なお、この工程でのΔHの目標値は、−3.0μm±1.0μmとした(リング303の径:φ11mm)。
【0090】
図18より、揺動中心位置係数αが0.55の条件では、若干のΔHの変化はあるものの、加工されたレンズのΔHは常に目標値内に入っている。これに対し、αが0.50の条件と、αが0.60の条件では、ΔHの変化が大きく、すぐに目標値(−3.0μm±1.0μm)の公差から外れてしまった。
【0091】
次にΔHの変化(曲率半径の変化)をグラフに表わすと図19のようになり、いずれの揺動中心位置係数の場合でも、加工したレンズ材料の個数にほぼ比例してレンズの被加工面のΔH(曲率半径)が変化する。
【0092】
更に上記のΔHの変化データから、それぞれの揺動中心位置係数の場合について、加工1個目から100個目でのΔH変化量をΔH変化率として表およびグラフに書くと図20、図21のようになり、ΔH変化率は揺動中心位置係数にほぼ比例していることがわかる。
【0093】
図21において、データのラインが、Y(ΔH変化率)=0と交わる時の×(揺動中心位置係数)の値が、加工を行なった時にレンズの被加工面の曲率半径が変化しない条件であり、すなわち揺動中心位置係数の最適値αbである。
【0094】
このαbを求めるための計算式は、データのラインがほぼ直線であるから、両端の2点の条件から、以下のように計算すれば良い。
【0095】
まず2つの条件の、揺動中心位置係数をα1、α2とする。
【0096】
本実施形態では、α1=0.50、α2=0.60である。
【0097】
つぎにそれぞれの条件でレンズを加工した時のΔH(曲率半径)の変化率を、ΔR1、ΔR2とする。
【0098】
本実施形態では、ΔR1=+2.0、ΔR2=−1.8であった。
【0099】
この時、両端の2条件を結ぶ式を、
ΔR=p×α+q ………(1)
とすれば、ΔR、αに上記条件を代入し、
ΔR1=p×α1+q ………(2)
ΔR2=p×α2+q ………(3)
(2)、(3)式から、p,qを求めると、
Figure 0003754823
となる。
【0100】
(4)、(5)式を(1)式に代入し、ΔR=0となる時のα(=αb)を求めると、
αb=(ΔR1×α2−ΔR2×α1)/(ΔR1−ΔR2) ………(6)
となる。
【0101】
本実施形態の場合のαbを求めると、
Figure 0003754823
の計算式により、揺動中心位置係数の最適値αb=0.553を求めることができた。
【0102】
以上述べてきた方法により求めた揺動中心位置係数の最適値αb=0.553により、あらためて本実施形態の、曲率半径10mm凹面、半開角37.95°のレンズを、半開角63.00°の総型工具を使用して、先に述べてきた方法によりθb=0.553×63=34.84°の揺動中心位置となるように、傾斜軸タイプの研磨機の工具傾斜角を34.84°に固定し、レンズ材料を水平の位置を中心として揺動するように加工機をセットした後、多数のレンズ材料を連続して加工した。その結果、500個のレンズ材料を加工している間、加工後のレンズ材料の被加工面のΔH(曲率半径)はほとんど変化が無く、安定して良品を製造し続けることができた。
【0103】
ただし本実施形態の場合には、工具の中心部の摩耗深さは30μmであり、揺動中心の位置の変化(加工点のずれによる相対位置の変化)はほとんどないが、摩耗し易い工具を使用した場合や、より多くのレンズ材料を加工する場合には、一定数のレンズ材料を加工するごとに、カンザシやカンザシアームの長さなどを調整して、レンズ材料が水平になる位置を中心とする揺動位置を保っていくことが必要である。
【0104】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第2の実施形態とは別のタイプの研磨機を使用して、また揺動運動を与えずに球面形状を加工する場合の例について述べる。
【0105】
図3は、図7に示す垂直軸タイプの研磨機を使用して、被加工材料であるレンズ材料を球面加工する場合に、本発明の球面形状加工方法を実施するための、工具半開角と、揺動中心位置における工具と被加工材料の相対角度の関係を、模式的に示した図である。
【0106】
まず、図7に示す垂直軸タイプの研磨機について説明すると、動作は前記の傾斜軸タイプの研磨機とほぼ同等であるため、ここでは説明を省略するが、傾斜軸タイプの研磨機と垂直軸タイプの研磨機の差は、工具軸が傾斜可能か否かであり、傾斜軸タイプの研磨機では、工具軸をある角度傾斜させ、被加工材料はほぼ水平の位置で加工を行なうのに対し、垂直軸タイプの研磨機では、工具の傾斜ができないため、被加工材料が傾いた位置にカンザシおよびカンザシアームの長さを調節し、工具の中心軸と被加工材料の中心軸に、ある程度相対角を持たせて加工を行なう。
【0107】
図3では、総型工具31の半開角は図示θtであり、揺動中心における工具中心軸41と被加工材料であるレンズ材料の中心軸42の相対角度は、図示θ0である。
【0108】
垂直軸タイプの研磨機は、工具の中心軸41が鉛直方向であり、レンズ材料の中心軸42が傾斜している。揺動運動を加える場合には、レンズ材料の中心軸42が、左端の42cから右端の42bの位置まで往復運動を行ない、揺動の中心位置におけるレンズ材料の中心軸42が工具の中心軸41となす角を、工具とレンズ材料の相対角度θ0と定義する。
【0109】
また、揺動中止位置における、レンズ材料と工具の相対角度θ0を正確にセットする方法は、図15に示す水平出し治具から水準器130をはずしたものを、レンズ加工に先立ち、図7の研磨機に、レンズ材料152、保持材153、ホルダー154の代わりに取付け、実際に加工する時と同じようにカンザシ155をおろして、レンズ材料ダミー132を総型工具101に押しつけた状態にする。
【0110】
この状態で、ネジ159bを緩めて、揺動ベース159を図示左右方向に動かして、水準器の代わりに例えばLucas Sensing Sysitem Inc.製DP−60型傾斜計等を用いて、基準面131bの傾斜角度が所定の角度になるように計測しながら調節し、揺動ベース159の位置を決定する。
【0111】
以上の構成の研磨機を用いて、本実施形態では、第2の実施形態と同じ、曲率半径10mm凹面、半開角37.95°のレンズを、球面形状の総型砥石で研削加工する場合の例について述べる。使用した総型砥石は、形状が曲率半径10mmの凸球面、直径17.82mm(半開角63.00°)であり、種類は#1200のメタルボンドダイヤモンド砥石である。
【0112】
また、前工程のカーブジェネレータによる粗研削工程で仕上げるレンズ材料の被加工面の曲率半径は、本実施形態の工程の目標値よりも約0.010mm小さくなるよう、簡易球面計で、ΔHが2.0μmマイナス(リング303の径:φ11mm)になるように加工した。
【0113】
以上の条件下で、第2の実施形態と同様、揺動中心位置係数αの最適値を求めるために、揺動中心位置係数α=0.50、0.55、0.60から計算した工具とレンズの相対角度位置で、本実施形態の場合には揺動運動を与えずに相対角度一定の条件で、レンズ材料を連続して100個程度同じ条件で加工を行った。
【0114】
それぞれの条件で実際にレンズ材料を加工した時の、レンズの曲率半径の測定結果を、図22に示す。
【0115】
なお、曲率半径の測定は、図9に示す簡易球面計で行ない、マスターとなる球面原器との球面高さの差であるΔH(μm)で示し、この工程でのΔHの目標値は、−3.0μm±1.0μmとした(リング303の径:φ11mm)。
【0116】
この予備実験の結果から、揺動中心位置係数αの最適値αbは0.554と求まり、同じ形状のレンズ、工具の場合には、機械の構成が変わっても、また揺動運動を与えなくとも、第2の実施形態の傾斜軸タイプの研磨機で調べた揺動中心位置係数の最適値αb=0.553とほぼ同じ値となることがわかった。
【0117】
また、垂直軸タイプの研磨機を用いて、揺動中心位置係数αの最適値αb=0.554から計算した、工具とレンズの相対角度34.90°により、500個のレンズ材料を連続して加工したが、加工後のレンズ材料の被加工面ΔH(曲率半径)はほとんど変化が無く、安定して良品を製造し続けることができた。
【0118】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、凸球面のレンズを、図8に示す球心揺動タイプの研磨機で加工する場合の例を述べる。図4は、図8に示す下軸球心揺動タイプの研磨機でレンズ材料を加工する場合に、本発明の球面形状加工方法を実施するための、工具半開角と、揺動中心位置における工具と被加工材料の相対角度の関係を、模式的に示した図である。
【0119】
まず、図8に示す球心揺動タイプの研磨機の動作を説明すると、工具軸221は、架台230に対して回動自在に取り付けられた揺動プレート220にネジで固定されている。工具軸221は、同じく揺動プレート220に固定された工具軸回転モータ225の回転がプーリ222,224、ベルト223を介して伝えられることにより回転する。総型工具201は図示しないネジで工具軸221に取り付けられ、工具軸221と共に回転する。
【0120】
揺動プレート220は、架台230に対して、回動自在であるが、その回動中心軸の延長線上に、総型工具201、および被加工材料であるレンズ材料202の球面の中心Oを配置する。このため、揺動プレート220の回動に伴う総型工具201の動きは、前述の点Oを中心とする回動運動となり、工具の球面部は常に一定の球面内にある。このため、加工されるレンズ材料202は、揺動に伴って上下や左右に動くことがなく、安定した加工を行なえるのが、球心揺動タイプ研磨機の特徴である。
【0121】
揺動プレート220の揺動運動は、リンク227を介して揺動回転軸226の回転が伝えられることによって規制される。揺動回転軸226は図示しないモータにより一定回転数で回転が可能であり、揺動プレート220は、揺動回転軸226の回転に伴って、円弧上を往復運動する。
【0122】
一方、レンズ材料202は、加工中、ゴム等の保持材203を介してホルダ204内におさめられる。
【0123】
ホルダ204は、ワーク軸シャフト205と図示しないネジ等で結合しており、ワーク軸シャフト205と共にワーク軸スリーブ206内で回転自在な構造となっている。加工中レンズ材料202は総型工具201の回転に伴ってレンズ自身の自転トルクが発生し、ホルダ204、ワーク軸シャフト205とともに回転する。
【0124】
ワーク軸スリーブ206は、ワーク軸ハウジング207内で上下動自在であり、ワーク軸スリーブ上端でワーク軸ハウジンウ207との間に加圧スプリングが掛け渡されている。
【0125】
ワーク軸ハウジング207はワーク軸アーム208でワーク軸スライド212に固定され、ワーク軸スライド212はガイド213に沿ってワーク軸コラム214上を図示上下方向に移動可能である。上下動は、ワーク軸コラム214の図示上端に取り付けられたエアシリンダ215によって行なわれ、ワーク軸スライド212が図示上下方向に移動してレンズ材料202が総型工具201に押しつけられると、ワーク軸スリーブ206がワーク軸ハウジング207に対して、図示上方向に移動し、加圧スプリング209が伸びることによって、加圧のための加圧力が発生する。
【0126】
加圧力の調整は、加圧スプリング209の初期長さを、ネジ211で調整することによって行なう。
【0127】
以上の構造の研磨機により、総型工具の回転とレンズ材料の連れ回り、レンズ材料の総型工具に対する加圧力、場合により総型工具の接線方向へのレンズの揺動運動によってレンズが総型工具によって加工され、レンズ材料が工具形状を凹凸反転した球面に加工される。
【0128】
図4は、前記図8に示した球心揺動タイプの研磨機の主要部を模式的に示しているが、総型工具71の半開角は図示θtであり、揺動中心における工具中心軸81とレンズ材料の中心軸82の相対角度は図示θ0である。
【0129】
球心揺動タイプの研磨機は、工具側が、工具の球面の球心点を中心として揺動するが、工具とレンズの相対角度の定義は、レンズ側が揺動する傾斜軸タイプ、垂直軸タイプの研磨機と同様である。すなわち、揺動運動を加える場合には、工具の中心軸81が、左端の81cから右端の81bの位置まで往復運動を行ない、揺動の中心位置における工具の中心軸81がレンズ材料の中心軸82となす角を、工具とレンズ材料の相対角度θ0と定義する。
【0130】
最適な揺動中心位置係数αbが求まれば、工具とレンズの相対角度θ0は、αb×θtにすれば良い。ただし、凸形状の球面を加工するための凹形状の総型砥石は、図8に示すように球面エッジ部に面取りが施してある場合があるため、半開角θtを計算するための工具直径は、工具上面から工具顕微鏡等を用いて、球面の加工径を正確に測定して求める。
【0131】
次に実際に曲率半径20mm凸面、φ20mm(半開角30°)のレンズを、曲率半径20mm凹面、φ31.5(半開角51.95°)の総型工具で加工する場合の例について、第2、第3及び第4の実施形態と同様の予備実験から揺動中心位置係数の最適値αbを求め、αb=0.592を得た。この値を用いて計算した工具とレンズ材料の相対角度の最適値30.75°を中心とする揺動位置により、500個のレンズ材料を連続して加工したが、加工後のレンズ材料の被加工面のΔH(曲率半径)はほとんど変化が無く、安定して良品を製造し続けることができた。
【0132】
このことから、本発明の球面形状の加工方法は、加工する形状が凸面であっても適用可能で、形状を選ばず幅広い製品の加工方法として有効であることが分かった。
【0133】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、比較的大口径のレンズ、半開角が小さいレンズなどを製造する時に用いられる、多数個のレンズ材料をレンズ貼りつけ治具に貼って同時に加工を行なう、多数個貼り方式の球面形状加工方法の例を述べる。
【0134】
図5は、図6に示す傾斜軸タイプの研磨機で多数個貼りのレンズ材料を加工する場合に、本発明の球面形状加工方法を実施するための、工具とレンズ材料の半開角と、揺動中心位置における工具と被加工材料の相対角度の関係を、模式的に示した図である。
【0135】
図6の説明は第1の実施形態の中で述べているのでここでは省略する。
【0136】
図5を説明すると、加工するレンズ材料93は、接着剤等でレンズ貼りつけ治具94に貼りつけられ、カンザシ95で工具側に治具ごと押しつけられている。また、多数個貼り方式で加工するレンズは、比較的加工する径が大きいことが多いため、研削工程においては工具90側も砥石部が単一組成の総型砥石ではなく、φ3〜20mm程度のペレット型砥石と呼ばれる小さい小型砥石片92を、接着剤等でペレット貼りつけ治具91に多数個貼りつけた後、加工すべき被加工物であるレンズの曲率半径を凹凸反転した曲率半径に、全体の球面形状を修正したペレット型工具を使用する場合が多い。
【0137】
多数個貼り方式のレンズ加工方法において、工具90の半開角は、ペレット貼りつけ治具91に貼りつけている多数のペレット型砥石のうち、最外周側に貼ってあるものの、最も外側の部分までの角度と定義し、図示θtとする。
【0138】
また、ワークの半開角θwは、ワークの中心軸98から、レンズ貼りつけ治具に貼っているいくつかのレンズ材料のうち、最外周よりのものの、もっとも外側の部分までの角度と定義する。
【0139】
レンズ材料を加工する時には、工具90が工具の中心軸97回りに回転し、レンズ材料93はレンズ貼りつけ治具94と一体になって、カンザシ95によって図示下方向に押しつけられている。この時ワークは、工具90の回転につられて自転する。
【0140】
揺動運動を付加する場合には、カンザシ95が図示左右方向に動くことによりレンズ貼付治具94と一体になったレンズ材料93が、カンザシの左右方向の動きに伴って、工具90の表面の球の接線方向に沿って揺動運動する。この時、レンズ材料93の貼りつけ範囲の中心を通る軸をワークの中心軸98とし、揺動の中心位置において、ワークの中心軸98が総型工具の中心軸となす角を、揺動中心位置におけるレンズ材料と工具の相対角度θ0と定義する。
【0141】
この、揺動中心位置におけるワークと工具の相対角度θ0をどのように決定するかが本発明のポイントであり、既に説明したように本発明では工具の半開角θtを基準として、θtに揺動中心位置係数αを掛けた角度にθ0を決定する。
【0142】
最適な揺動中心位置係数αbが求まれば、工具とレンズの相対角度θ0は、αb×θtにすれば良い。
【0143】
そこで、実際に曲率半径45mm凹面、φ27.5mm(半開角17.79°)のレンズを、レンズ貼り付け治具に、φ80mm(半開角62.7°)の範囲に7個貼りつけたワークを、曲率半径45mm凸面、φ87mm(半開角75.2°)の範囲に、55個のφ10mmのペレット状砥石を貼りつけた工具で加工する場合の例について、第1、第2、第3及び第4の実施形態と同様の予備実験から揺動中心位置係数の最適値αbを求め、αb=0.430を得た。この値を用いて計算した工具とレンズ材料の相対角度の最適値32.34°を中心とする揺動位置により、100個のワーク(レンズ材料は700個)を連続して加工したが、加工後のレンズ材料の被加工面のΔH(曲率半径)はほとんど変化が無く、安定して良品を加工製造し続けることができた。
【0144】
このことから、本発明の球面形状の加工方法は、被加工材料であるレンズ材料をレンズ貼付治具に多数個貼り付け、多数個のレンズ材料を同時に加工する多数個貼り方式の球面形状加工方法にも適用可能であることが分かった。
【0145】
また、使用する砥石が単一組成の総型砥石ではなく、φ3〜20mm程度のペレット型砥石と呼ばれる小さい砥石片を、接着剤等でペレット貼りつけ治具に多数個貼りつけたペレット型工具を使用する場合にも適用可能であることが分かった。
【0146】
(第6の実施形態)
本実施形態では、図1のフローチャートの最初の段階で、レンズプロフィール(曲率半径、レンズ径、レンズ半開角)から揺動中心位置係数の最適値αbをどのように決定するか、あるいは揺動中心位置係数の最適値αbを決めるための、第2乃至第5の実施形態で説明したような予備実験を行うための条件を、どのように決定するかについて、詳しく説明する。
【0147】
本発明者らは、本発明に至る以前に、数々の実験を行ってきた。
【0148】
具体的には、加工されるレンズの半開角に注目し、半開角が約20°、30°、40°、50°、60°程度のレンズについて前記の第1乃至第4の実施形態と同様の予備実験を行い、それぞれの条件での揺動中心位置係数の最適値αbを求めた。
【0149】
なお、実験では、様々な曲率半径のレンズに対しても実験を行ったが、曲率半径が異なっていても、レンズの半開角が同じであれば、揺動中心位置係数の最適値αbは、ほぼ同じ値になることが判明したため、本実施形態では、曲率半径10mm凹面での実験結果について説明する。
【0150】
実験に使用したレンズの半開角θw、および、実験から求められた、揺動中心位置係数の最適値αbを、図23に示す。
【0151】
図23及び図24より、揺動中心位置係数の最適値αbは、レンズの半開角θwにほぼ比例していることがわかり、各データを最小二乗近似して求めた直線の式は、
αb=0.740−0.005×θw ………(7)
となった。
【0152】
そこで、本実施形態では、曲率半径10mm、レンズ径φ15mm(半開角48.59°)のレンズ材料を加工するに当り、揺動中心位置係数が前記(7)式の値の時と、(7)式−0.02、(7)式−0.01、(7)式+0.01、(7)式+0.02の4つの条件の場合を比較して、それぞれ500個ずつのレンズ材料を加工し、レンズ曲率半径(ΔH)の変化を測定した。
【0153】
本実施形態では、レンズの半開角θwは48.59°であるから、実験を行った揺動中心位置係数の値は、0.4771、0.4871、0.4971((7)式の値)、0.5071,0.5171の5条件である。
【0154】
加工に使用した工具は、直径φ19.20mm(半開角73.74°)の、#1200のメタルボンドダイヤモンド総型砥石である。
【0155】
また、前工程のカーブジェネレータによる粗研削工程で仕上げるレンズ材料の被加工面の曲率半径は、本実施形態の工程の目標値よりも約0.006mm小さくなるよう、簡易球面計で、ΔHが2.0μmマイナス(リング径φ13mm)になるように加工した。
【0156】
また、本工程のΔHの目標値は、−4.0±1.0μmである。
【0157】
この時の各条件でのΔHの測定値を、図25の表と図26のグラフに示す。
【0158】
以上の実験結果から、揺動中心位置係数αの差により、加工されたレンズのΔH(曲率半径)の変化量は異なり、α=0.4871〜0.5071の範囲の条件では、500個のレンズを加工する間、本工程のΔHの目標値、−4.0±1.0μmの許容値内で、常に加工することができたが、α=0.4771ではΔHがプラス方向大きく変化し、α=0.5171では、ΔHがマイナス方向へ大きく変化し加工開始後250個目程度から、ΔHの目標値、−4.0±1.0μmを外れてしまうという結果となった。
【0159】
この事から、500個という大量の数のレンズを継続して安定して加工を行うためには、揺動中心位置係数αの範囲を、最適値を求める(7)式、αb=0.740−0.005×θwに対し、±0.01程度の範囲に設定すればよいことがわかった。
【0160】
本実施形態のように、公式、αb=0.740−0.005×θwにより、揺動中心位置係数の最適値αbを求めれば、予備実験を行わなくとも、概略安定位置は見つけ出すことができ、非常に簡単に、安定してレンズ加工を続けることができることが分かった。
【0161】
ただし、揺動中心位置係数の最適値αbの値は、概略は(7)式αb=0.740−0.005×θwで求められるが、他の条件、例えば前工程との曲率半径の差を大きくして加工した場合、総型砥石の成分を変えた場合などに、αbが微妙に変化する場合があるので、望ましくは、第2乃至第5の実施形態で説明したように、他の条件を実際の加工と同じ条件にして、予備実験を行い、実際にレンズを加工した結果から揺動中心位置係数の最適値を求めた方が、より正確な最適値となるため、更に多数のレンズを継続して安定加工をすることができる。
【0162】
また、本発明の実施形態では、球面のレンズを製造する場合を例にとって述べてきたが、製造する製品が例えば光ファイバコネクタのような他の用途の球面形状の製品であっても、本発明の加工方法は適用可能である。
【0163】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、加工開始当初から一定の揺動中心位置に加工機をセットして、多数の被加工材料を加工するから、生産途中での被加工材料の曲率半径の測定と、加工機の揺動中心位置の調整という、非常に熟練を要する作業を行う必要がなくなる。よって、作業者が初心者であっても、容易に担当することができ、また測定、調整の作業が無いから加工途中でのロスタイムを最小限に抑えることができる。
【0164】
また、工具交換を行った際にも、あらためて条件出しを行う必要が無く、一回で条件を決定することができるため、工具交換による生産ロスも最小限に抑えることができる。
【0165】
また、揺動中心位置係数αを0.35〜0.65の範囲に設定しておくことにより、工具全面を有効に使用することができ、工具に段差ができたり、被加工材料(レンズ)の外周エッジ部と工具外周部が接触して、被加工材料が破損するなどのトラブル発生を防ぐことができ、加工品質が向上する。
【0166】
また、揺動中心位置係数の最適値αbを予備実験で求め、最適条件に加工機を調整して加工を行うことにより、長期間に渡って、一定の曲率半径の球面形状を安定して作り続けることができる。
【0167】
これらの、人件費の削減、生産ロスの削減などの効果により、本発明の方法は、球面形状レンズの製造コストを著しく下げることができる。
【0168】
【図面の簡単な説明】
【図1】球面形状加工方法を示すフローチャートである。
【図2】傾斜軸タイプの研磨機で球面形状を加工するときの、工具の半開角および工具と被加工材料の相対角の定義を示す図である。
【図3】 垂直軸タイプの研磨機で球面形状を加工するときの、工具の半開角および工具と被加工材料の相対角の定義を示す図である。
【図4】球心揺動タイプの研磨機で球面形状を加工するときの、工具の半開角および工具と被加工材料の相対角の定義を示す図である。
【図5】多数個貼り方式のレンズ加工方式における、工具、レンズの半開角および、工具と被加工材料の相対角の定義を示す図である。
【図6】傾斜軸タイプの研磨機を示す図である。
【図7】垂直軸タイプの研磨機を示す図である。
【図8】球心揺動タイプの研磨機を示す図である。
【図9】レンズの曲率半径を測定するための、簡易球面計を示す図である。
【図10】従来の球面形状加工方法を示すフローチャートである。
【図11】被加工物であるレンズの形状の一例を示す図である。
【図12】揺動中心位置係数αが0.35より小さい場合の工具摩耗の様子を示す図である。
【図13】揺動中心位置係数αが0.65より大きい場合の、レンズの外周エッジと、工具外周面の接触の様子を示す図である。
【図14】傾斜軸タイプの研磨機に測定器を取り付けた状態を示した図である。
【図15】水平位置出し治具の構成を示す図である。
【図16】レンズを多数個製造したときのΔHの推移を示す図である。
【図17】工具交換前後のΔHの変化を示す図である。
【図18】揺動中心位置係数の値とΔHの変化の様子との関係を示す図である。
【図19】加工個数とΔHの関係を示す図である。
【図20】揺動中心位置係数の値とΔHの変化の様子との関係を示す図である。
【図21】揺動中心位置係数の値とΔHの変化率との関係を示す図である。
【図22】揺動中心位置係数の値とΔHの変化の様子との関係を示す図である。
【図23】レンズの半開角と揺動中心位置係数の最適値との関係を示す図である。
【図24】レンズの半開角と揺動中心位置係数との関係を示す図である。
【図25】揺動中心位置係数の値とΔHの変化の様子との関係を示す図である。
【図26】加工個数とΔHの関係を示す図である。
【符号の説明】
11,31 総型工具
11b 総型工具の摩耗部
12,32 揺動中心位置におけるレンズ材料
12b,32b 揺動の右端におけるレンズ材料
12c,32c 揺動の左端におけるレンズ材料
13,33,73 保持材
14,34,74 ホルダ
15,35 揺動中心位置におけるカンザシ
15b 揺動右端におけるカンザシ
15c 揺動左端におけるカンザシ
21,41 工具の中心軸
22,42 揺動の中心位置におけるレンズ材料の中心軸
22b,42b 揺動の右端におけるレンズ材料の中心軸
22c,42c 揺動の左端におけるレンズ材料の中心軸
71 揺動中心位置における総型工具
71b 揺動の右端における総型工具
71c 揺動の左端における総型工具
72 レンズ材料
75 ワーク軸シャフト
81 揺動中心位置における工具の中心軸
81b 揺動の右端における工具の中心軸
81c 揺動の左端における工具の中心軸
82 レンズ材料の中心軸
90 工具
91 ペレット貼付治具
92 ペレット型砥石
93 レンズ材料
94 レンズ貼付治具
95 カンザシ
97 工具の中心軸
98 ワークの中心軸
101,151,201 総型工具
102,152,202 レンズ材料
103,153,203 保持材
105,155 カンザシ
106,156 カンザシアーム
107,109b,157,159b ネジ
108,158 ピボット
109,159 揺動ベース
110,160,227 リンク
111,161,226 揺動回転軸
112,162 ネジ
115,165,221 工具軸
116,166,222 プーリ
117,167,223 ベルト
118,168,224 プーリ
119,169,225 工具軸回転モータ
120,170 架台
121 工具軸支持部材
121b 傾斜基準面
122 傾斜角調整ネジ
123 ハンドル
124 固定ネジ
125 デジタル傾斜計
126 デジタルスケール
127 スケールカウンター
130 水準器
131 軸
132 レンズ材料ダミー
134,104b カンザシ穴
205 ワーク軸シャフト
206 ワーク軸スリーブ
207 ワーク軸ハウジング
208 ワークアーム
209 加圧スプリング
210 与圧調整プレート
211 ネジ
212 ワーク軸スライド
213 ガイド
214 ワーク軸コラム
215 エアシリンダ
220 揺動プレート
301 ダイヤルゲージ
302 固定具
303 リング
304 触針
310 マスター球面
311 被検レンズ
321 レンズ
321b 被加工面

Claims (8)

  1. 加工する被加工材料の、凹凸反転した曲率半径の球面形状を有する総型工具に前記被加工材料を押しつけ、前記総型工具を回転させて該総型工具と前記被加工材料に相対運動を与え、かつ前記総型工具または前記被加工材料を前記総型工具球面の接線方向に揺動運動を与えることによって、前記被加工材料を加工する球面形状の加工方法において、
    前記揺動運動の振り幅の中心位置における前記総型工具の中心軸と前記被加工材料の中心軸がなす相対角度をθ 0 加工に使用する前記総型工具の半開角をθtとし、前記相対角度θ0と前記総型工具の半開角θtの比を、揺動中心位置係数α(=θ0/θt)としたときに、
    工具を交換する際に、交換前に使用していた前記総型工具の半開角θt1と、交換後の前記総型工具の半開角θt2が異なる場合であっても、前記揺動中心位置係数αが同じ数値となるように、交換後の前記相対角度θ02を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、新しい総型工具と被加工材料の相対角度がθ02となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする球面形状の加工方法。
  2. 前記揺動中心位置係数αを0.35〜0.65の範囲に設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、
    球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする請求項に記載の球面形状の加工方法。
  3. 前記揺動中心位置係数αの最適値を決定するために、あらかじめ予備加工条件として、任意の揺動中心位置係数α1、α2の2条件で、予備加工に使用する工具の半開角θt0に応じて、θ01=α1×θt0、θ02=α2×θt0となるように総型工具と被加工材料の相対角度θ01とθ02を決定し、 球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ01、θ02となるように調整し、
    それぞれの加工条件で、一定数の被加工材料を加工したときの、被加工材料の曲率半径の変化量の測定値ΔR1、ΔR2の値から、
    αb=(ΔR1×α2−ΔR2×α1)÷(ΔR1−ΔR2)
    の計算式により、揺動中心位置係数の最適値αbを求めておき、
    前記揺動中心位置係数の最適値αbにより、加工に使用する工具の半開角θtに応じて、θ0b=αb×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度の最適値θ0bを決定し、
    球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度が、最適値θ0bとなるように調整し、
    θ0=一定(θ0b)の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする請求項に記載の球面形状の加工方法。
  4. 前記揺動中心位置係数αを、加工するレンズの半開角θwに応じて、実験的に求めた最適範囲を示す式である、αb1(=0.73−0.005×θw)<α<αb2(=0.75−0.005×θw)の範囲で設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、
    球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする請求項に記載の球面形状の加工方法。
  5. 加工する被加工材料の、凹凸反転した曲率半径の球面形状を有する総型工具に前記被加工材料を押しつけ、前記総型工具を回転させて該総型工具と前記被加工材料に相対運動を与え、揺動運動はさせずに前記被加工材料を加工する球面形状の加工方法において、
    前記総型工具の中心軸と前記被加工材料の中心軸がなす相対角度をθ 0 加工に使用する前記総型工具の半開角をθtとし、前記相対角度θ0と前記総型工具の半開角θtの比を、揺動中心位置係数α(=θ0/θt)としたときに、
    工具を交換する際に、交換前に使用していた前記総型工具の半開角θt1と、交換後の前記総型工具の半開角θt2が異なる場合であっても、前記揺動中心位置係数αが同じ数値となるように、交換後の前記相対角度θ02を決定し、球面形状加工機の各軸の位置関係を、新しい総型工具と被加工材料の相対角度がθ02となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする球面形状の加工方法。
  6. 前記揺動中心位置係数αを0.35〜0.65の範囲に設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、
    球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする請求項に記載の球面形状の加工方法。
  7. 前記揺動中心位置係数αの最適値を決定するために、あらかじめ予備加工条件として、任意の揺動中心位置係数α1、α2の2条件で、予備加工に使用する工具の半開角θt0に応じて、θ01=α1×θt0、θ02=α2×θt0となるように総型工具と被加工材料の相対角度θ01とθ02を決定し、 球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ01、θ02となるように調整し、
    それぞれの加工条件で、一定数の被加工材料を加工したときの、被加工材料の曲率半径の変化量の測定値ΔR1、ΔR2の値から、
    αb=(ΔR1×α2−ΔR2×α1)÷(ΔR1−ΔR2)
    の計算式により、揺動中心位置係数の最適値αbを求めておき、
    前記揺動中心位置係数の最適値αbにより、加工に使用する工具の半開角θtに応じて、θ0b=αb×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度の最適値θ0bを決定し、
    球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度が、最適値θ0bとなるように調整し、
    θ0=一定(θ0b)の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする請求項に記載の球面形状の加工方法。
  8. 前記揺動中心位置係数αを、加工するレンズの半開角θwに応じて、実験的に求めた最適範囲を示す式である、αb1(=0.73−0.005×θw)<α<αb2(=0.75−0.005×θw)の範囲で設定し、使用する総型工具の半開角θtに応じて、θ0=α×θtとなるように総型工具と被加工材料の相対角度θ0を決定し、
    球面形状加工機の各軸の位置関係を、総型工具と被加工材料の相対角度がθ0となるように調整し、θ0=一定の加工条件で、継続して多数の被加工材料を加工することを特徴とする請求項に記載の球面形状の加工方法。
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