JP3679717B2 - 球面創成研削加工用のブランクおよび球面創成研削加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学素子として用いられるガラスやセラミックス等の平面状ブランクから球面形状を創成研削加工する際に用いるブランクおよび該ブランクを用いる球面創成研削加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光学素子として用いられるガラスやセラミックス等の平面状ブランクから球面形状を創成研削する球面研削工程においては、特公昭61−33665号公報等に記載されているように、カーブジェネレータ(CG)によるレンズ研削方法が一般的に適用されており、カーブジェネレータ(CG)による研削方法には図2に図示する球面研削装置が用いられている。この球面研削装置は、ワーク11をチャッキングするワークチャック10aを有してA方向に移動可能なワーク軸10と、カップ型の研削ホイール13を装着してB方向に移動調整ができかつ角度θの調整が可能な砥石軸本体12を備え、砥石軸本体12のB方向の位置と角度θの調整は図示しない送りネジ機構により行われる。また、研削ホイール13の直径Dは、創成しようとするワーク11の曲率半径Rとワーク径の関係により選定される。
【0003】
図2に図示する球面研削装置による球面研削加工は、ワークチャック10aにチャッキングされたワーク11と砥石軸本体12に装着されたカップ型の研削ホイール13を対向させ、砥石軸本体12を、ワーク軸10に対して、Sinθ=D/2(R±r)に相当する角度θだけ傾け(なお、ここで、rは研削ホイール13の先端14の半径である)、そして、A方向の切り込みが完了する位置で研削ホイール13の先端14がワーク軸中心線とP点で一致するように、砥石軸本体12を図示しない送りネジ機構によりB方向に移動調整する。この調整が完了した後に、ワーク11と研削ホイール13を回転させながらワーク軸10をA方向に切り込みを行い、研削加工を行う。そして、A方向の切り込み完了位置で、砥石軸本体12およびワーク軸10の軸移動を停止させて、ワーク11を最低一回転させ、ワーク11の削り残しがないようにする(スパークアウト工程)。以上のような工程を経て研削加工が完了し、研削ホイール13からワーク11を離脱させることで、所望の曲率半径Rをもった球面を創成することができる。
【0004】
また、球面形状や曲率精度の測定には、通常、図3に図示する簡易球面測定器が用いられている。この簡易球面測定器15は、軸方向に移動自在な測定子15bを有するダイヤルゲージ15aとこれを保持するリング15cとで構成され、基準となる曲率半径を有する球面原器(不図示)と比較対象となる球面を有する被測定物との球面の頂点から弦までの高さの差ΔHを読み取り、被測定物の球面形状や曲率精度を簡便に測定することができるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述した従来の球面研削加工方法においては、最初に、ワーク(平面状のブランク)全体の50〜60%の球面形状を創成することで、ワークの曲率半径を図3に図示する簡易球面測定器15を用いて測定して、ワークの初期の当たり確認にしている。
【0006】
しかし、前述した従来の球面研削加工方法に用いる球面研削装置では、研削ホイール13の先端14は型プレスで製作されているため、研削ホイール先端14の半径rは必ずしも正確な曲率半径となっていない。また、研削ホイール先端14は、ダイヤモンドの砥粒および金属材料を主成分として焼結されたものであり、ダイヤモンドの粒径は通常#150〜#250のものが使用されているため、研削ホイール先端14の表面は凹凸状に粗い形状になっている。このために、研削ホイール先端14のワーク11と当接する接点が特定できず、実際に設定したワーク軸10と砥石軸本体12との傾斜角θは、理論計算式Sinθ=D/2(R±r)に研削ホイール13の直径Dと研削ホイール先端14の半径rを代入して求めた角度θと異なってしまう。その結果、所望の曲率半径Rおよびワーク中心部の精度を満足できない。
【0007】
例えば、図4の(a)に示すようなワーク(平面状のブランク)21を球面創成研削すると、図4の(b)に示すようにワーク中心に突起(へそ)23が生じ、さらに、曲率半径等の球面形状精度も十分に効率良く得ることができなかった。このようなワークのへそ23の有無や曲率半径Rを簡易球面測定器15(図3)で効率良く測定および判定確認するためには、ワーク全面が当たらないと測定および判定ができない。したがって、図4の(a)に示すワーク(平面状のブランク)21においては、斜線を施した一点鎖線部22で示すような取り代が必要となる。そして、その後に、所望の球面形状精度を出すために砥石軸本体12の角度θと切り込みA方向を移動調整しながら球面を創成し、最終的には、図4の(c)に示す形状のワーク21が創成され、斜線で示す大きな部分25が取り代となる。
【0008】
また、多品種小量生産(小ロット)のレンズ等の光学素子でも、実際に製品となるブランクを使用して初期段取りを行う必要がある。そのため、へそと曲率半径Rの球面形状精度出しは前述した球面創成研削加工方法で行っている。
【0009】
さらに、前述した従来の球面創成研削加工方法は、環境面で問題となるガラススラッジの削減ができないという問題点も有していた。
【0010】
そこで、本発明は、前述した従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであって、平面状のブランク(ワーク)をカーブジェネレータ(CG)により球面形状を創成する球面創成研削加工に際して、取り代削減と作業効率の向上を図ることができる球面創成研削加工用のブランクおよび該ブランクを用いる球面創成研削加工方法を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の球面創成研削加工用のブランクは、平面状のブランクからカーブジェネレータにより球面形状を創成研削加工する際に使用するブランクであって、平面状のブランクの平面中心部に小さい円柱形状のガラス片を貼り付けてあることを特徴とする。
【0012】
本発明の球面創成研削加工用のブランクにおいて、前記ガラス片は、厚さ1〜3mmで前記ブランクの加工径の略10〜20%の大きさを有するものであることが好ましい。
【0013】
本発明の球面創成研削加工方法は、平面状のブランクからカーブジェネレータにより球面形状を創成研削加工する球面創成研削加工方法において、平面状のブランクの平面中心部に小さい円柱形状のガラス片を貼り付けてあるブランクを用いて、初期の当たり確認に際して、前記ブランクの全面を当てずに前記ガラス片上の中心突起と曲率半径を測定および判定確認し、該測定および判定結果に基づいて前記カーブジェネレータの調整を行いながら前記中心突起および前記ガラス片をなくしかつ所望の曲率半径と肉厚の球面形状精度を創成することを特徴とする。
【0014】
本発明の球面創成研削加工方法において、前記ガラス片は厚さ1〜3mmで前記ブランクの加工径の略10〜20%の大きさを有するものであることが好ましい。
【0015】
本発明の球面創成研削加工方法において、前記測定および判定確認は簡易球面測定器を用いて行うことが好ましい。
【0016】
【作用】
本発明によれば、ワーク(平面状のブランク)とカップ型の研削ホイールを当接させた状態でワークと研削ホイールを回転させ、ワーク軸を切り込んで加工を行う球面創成研削において、ブランクとして、平面状のワークの中心部に厚さ1〜3mmでワーク径の10〜20%程度の小さい円柱形状のガラス片を接着剤で貼り付けた形状のものを用いることにより、初期の当たり確認において、平面状のワーク全面を当てずに、へそ(中心突起)と曲率半径を簡易球面測定器で測定および判定確認することができ、さらに、測定および判定結果に基づいてワークとカップ型の研削ホイールの位置関係を調整しながら、へそと曲率半径Rを修正し、へそおよびガラス片をなくしかつ所望の曲率半径Rと肉厚tの球面精度を創成することができる。
【0017】
また、所望の曲率半径Rと肉厚tの球面形状精度出しにおいても、ワーク(平面状のブランク)の全面を当てずに簡易球面測定器で測定および判定が可能であり、さらに調整もできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1の(a)は、本発明に基づく球面創成研削加工に用いるブランクの形状を示す図であり、同(b)は、本発明の球面創成研削加工方法による初期球面研削後のワークの形状を示す図であり、同(c)は、同じく球面研削修正後のワークの形状を示す図であり、同(d)は、同じく球面創成研削工程での最終のワークの形状を示す図である。
【0020】
本発明の球面創成研削加工に用いるブランクは、図1の(a)に図示するように、ワーク(平面状のブランク)1の平面中心部に厚さ1〜3mmでワーク加工径の10〜20%程度の小さい円柱形状のガラス片2を接着剤で貼り付けた形状を有するものであり、このワーク(平面状のブランク)1の球面創成研削加工は、前述した球面研削装置(図2)を用いてカーブジェネレータ(CG)により行う。
【0021】
次に、本発明の球面創成研削加工方法について、図1を参照してさらに説明する。なお、本発明の研削加工方法は、前述するように、図2に図示する球面研削装置を用いてカーブジェネレータ(CG)により行うものであり、その研削加工方法は前述した従来例と概略同様である。
【0022】
図1の(a)に図示するガラス片2が貼り付けられたワーク(平面状のブランク)1を図2に図示する球面研削装置のワーク軸10のワークチャック10aにチャッキングし、このワーク1と砥石軸本体12に装着されたカップ型の研削ホイール13とを対向させ、砥石軸本体12を、ワーク軸10に対して、Sinθ=D/2(R±r)に相当する角度θだけ傾け、そして、A方向の切り込みが完了する位置で、研削ホイール先端14がワーク軸中心線とP点で一致するように、砥石軸本体12を図示しない送りネジ機構によりB方向に移動調整する。そして、初期の当たり確認のための初期球面創成研削として、ワーク1上のガラス片2を全面加工すると同時にワーク1の外周部(ワーク全面に対して20〜30%)も加工する。この研削加工により、ワーク1は一定の曲率半径の曲面4とへそ3(ワーク中心のガラス片2上の突起)をもった状態のワーク1bになる。図1の(b)に、初期球面創成研削加工後のワークの形状を示す。そこで、初期の当たり確認のために、簡易球面測定器15(図3)を用いてワーク1bにおけるへそ3(ワークの中心突起)と曲面4の曲率半径を測定および判定する。
【0023】
測定確認後、その測定および判定結果に基づいて、所望の曲率半径Rが得られるように、そして、へそ3(ワークの中心突起)がなくなるように、砥石軸本体12についてB方向の位置調整と傾斜旋回角θの調整を行い、再度研削加工する。図1の(c)に図示するワーク1cは、前記の調整を行った後に研削加工を行い、ワーク全面は当たらずに、ガラス片2上のへそ3がなく、所望の曲率半径Rをもつ曲面4の球面精度が出ている状態にある。
【0024】
さらに、ワーク1の中心部に貼り付けられたガラス片2を削り取り、そして、所望の肉厚精度tを出すために、切り込みA方向で移動調整しながら研削加工を行うことにより、最終の球面形状が創成されたワーク1d(図1の(d)参照)が得られる。
【0025】
以上説明するように、本発明の球面創成研削加工方法によれば、ワークブランクとして、平面状のブランクの中心部に厚さ1〜3mmでワーク加工径の10〜20%程度の小さい円柱形状のガラス片を接着剤で貼り付けた形状のものを用いることにより、実際に製品となる平面状のワーク全面を削る前の段階で、曲率半径Rとへその調整を終えることができることから、球面創成研削加工前の平面状ワーク(ブランク)の肉厚は必要最小限のものを準備すればよく、ブランクの中心厚みを製品の所望の肉厚と同一の厚みとすることも可能であり、作業効率を向上させることができ、さらに、ワークの取り代を削減することができることから、環境面で問題となるガラススラッジを大幅に削減することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、光学素子等の球面創成研削加工に際して、平面状のワークの中心部に小さい円柱形状のガラス片を貼り付けた形状のブランクを用い、実際に製品となる平面状のワーク全面を削る前の段階で、曲率半径Rとへその調整を終えることができることから、球面創成研削加工前の平面状ワークの肉厚は必要最小限のものを準備すればよく、ブランクの中心厚みを製品の所望の肉厚と同一の厚みとすることも可能であり、作業効率を向上させることができる。さらに、ワークの取り代を削減することができることから、環境面で問題となるガラススラッジを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明に基づく球面創成研削加工に用いるブランクの形状を示す図であり、(b)は、本発明の球面創成研削加工方法による初期球面研削後のワークの形状を示す図であり、(c)は、同じく球面研削修正後のワークの形状を示す図であり、(d)は、同じく球面創成研削工程での最終のワークの形状を示す図である。
【図2】従来の一般的なカーブジェネレータ加工による球面研削装置の概略的な側面図である。
【図3】一般的な簡易球面測定器を示す正面図である。
【図4】従来の球面創成研削方法によるワークの形状変化を示す図であり、(a)は球面創成研削前のワークの形状を示す図であり、(b)は初期球面創成研削後のワークの形状を示す図であり、(c)は球面創成研削された最終のワークの形状を示す図である。
【符号の説明】
1(1b〜1d) ワーク(平面状ブランク)
2 ガラス片
3 へそ(ワークの中心突起)
4 曲面
10 ワーク軸
10a ワークチャック
11 ワーク
12 砥石軸本体
13 (カップ型)研削ホイール
14 (研削ホイール)先端
15 簡易球面測定器
21 ワーク(平面状ブランク)
22、25 取り代
23 へそ(ワークの中心突起)
24 曲面
Claims (5)
- 平面状のブランクからカーブジェネレータにより球面形状を創成研削加工する際に使用するブランクであって、平面状のブランクの平面中心部に小さい円柱形状のガラス片を貼り付けてあることを特徴とする球面創成研削加工用のブランク。
- 前記ガラス片は、厚さ1〜3mmで前記ブランクの加工径の略10〜20%の大きさを有するものであることを特徴とする請求項1記載の球面創成研削加工用のブランク
- 平面状のブランクからカーブジェネレータにより球面形状を創成研削加工する球面創成研削加工方法において、平面状のブランクの平面中心部に小さい円柱形状のガラス片を貼り付けてあるブランクを用いて、初期の当たり確認に際して、前記ブランクの全面を当てずに前記ガラス片上の中心突起と曲率半径を測定および判定確認し、該測定および判定結果に基づいて前記カーブジェネレータの調整を行いながら前記中心突起および前記ガラス片をなくしかつ所望の曲率半径と肉厚の球面形状精度を創成することを特徴とする球面創成研削加工方法。
- 前記ガラス片は、厚さ1〜3mmで前記ブランクの加工径の略10〜20%の大きさを有するものであることを特徴とする請求項3記載の球面創成研削加工方法。
- 前記測定および判定確認は簡易球面測定器を用いて行うことを特徴とする請求項3または4記載の球面創成研削加工方法。
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