JP3754670B2 - 荷役車両のマスト装置 - Google Patents

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肇 田端
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地面の上下に亘って荷役作業が行なえる様にしたマリーナフォークと呼ばれるマスト装置に係り、とりわけ四段マスト形式で二つのリフトシリンダを用いたものの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
マリーナフォークと呼ばれるマスト装置は、例えば岸壁から海面に浮かぶボート等を引上げてこれを艇庫等に収納するという所謂海事作業を主として行なうものであり、勿論、地面より上だけの一般荷役作業も行なえるものである。
従来、この種のマスト装置としては、例えば、次の様なものが知られている。
(1) 三段マスト形式で単一のリフトシリンダを用いたもの(特許文献1参照)。
(2) 三段マスト形式で二つのリフトシリンダを用いたもの(特許文献2の第1図及び第2図参照)。
(3) 三段マスト形式で二段式リフトシリンダを用いたもの(特許文献2の第3図乃至第5図、特許文献5参照)
(4) 四段マスト形式で二つのリフトシリンダを用い、フォーク及びこれを支持する昇降体(フォーク爪及び第2フィンガーボード)が常に第4マストの下位に位置するもの(特許文献3の第8図参照)
(5) 五段マスト形式で二つのリフトシリンダを用いたもの(特許文献4参照)。
【0003】
【特許文献1】
実公昭49−43803号公報
【特許文献2】
実公昭51−43564号公報
【特許文献3】
実開昭56−121094号公報
【特許文献4】
実公平4−23914号公報
【特許文献5】
特表平5−503279号公報
【0004】
然しながら、前記(1)や(2)のものは、運搬走行時の全高が高くなると共に、フォークを支持する昇降体の可動部分(ローラ等)が水没し易かった。
全高が高くなると、倉庫や保管庫等の入口を高くせねばならないと共に、通路上の上方障害物の影響を受け易くて作業性が非常に悪かった。勿論、重心も高くなって走行安定性でも不利であった。
昇降体の可動部分が水没すると、海水に依り可動部分が錆び易くなり、これを防止する為に保守性が非常に悪かった。
前記(3)のものは、運搬走行時の全高を低くできるものの、二段式リフトシリンダを用いる関係上、コストが高く付くと共に、フォークを支持する昇降体の可動部分が水没し易かった。
前記(4)のものは、フォーク及びこれを支持する昇降体が常に第4マストの下位に位置するので、最大揚高がそれだけ低くなると共に、フォークを支持する昇降体の可動部分が水没し易かった。
前記(5)のものは、運搬走行時には、移動マストが上突するので、全高が高くなると共に、マスト数が多い事から構造が複雑化してコストが高く付く難点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
要するに、従来の何れのものも、一長一短があり、全高を低くでき、昇降体の可動部分の水没を防ぎ、最大揚高をできるだけ高くし、然もコストの低減を図る事ができなかった。
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、全高を低くでき、昇降体の可動部分の水没を防ぎ、最大揚高をできるだけ高くし、然もコストの低減を図る事ができるマスト装置を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のマスト装置は、基本的には、荷役車両の車体に支持される第一マストと、第一マストに昇降可能に設けられた第二マストと、第二マストに昇降可能に設けられた第三マストと、第三マストに昇降可能に設けれた第四マストと、第四マストに昇降可能に設けられた昇降体と、昇降体に設けられたフォークと、第一マストに対して第二マストを昇降させる第一リフトシリンダと、第三マストに対して第四マストを昇降させる第二リフトシリンダと、第二マストの上部に回転可能に設けられた第一案内車と、第一マストと第三マストとの間に介設されて第一案内車に掛渡された第一索条と、第四マストの上部に回転可能に設けられた第二案内車と、第三マストと昇降体との間に介設されて第二案内車に掛渡された第二索条とを備え、運搬走行時には、各マストが略同じ高さに揃うと共に、昇降体が第四マストの上位に位置し、フォークの水平片が第四マストの略中位に位置すべく垂直片が長く形成されている事に特徴が存する。
【0007】
運搬走行時には、各マストが略同じ高さに揃っていると共に、第一リフトシリンダと第二リフトシリンダは、最短状態になって居り、昇降体は、第四マストの上位に位置し、フォークの水平片は、第四マストの略中位に位置している。
この様な状態から、第一リフトシリンダを伸長させると、第一マストに対して第二マストが上昇すると共に、第一案内車と第一索条に依り第二マストに対して第三マスト以降のものが二倍の速度で上昇し、最大揚高位置に達する。
運搬走行位置から、第二リフトシリンダを伸長させると、第三マストに対して第四マストが下降すると共に、第二案内車と第二索条とに依り第四マストに対して昇降体以降のものが二倍の速度で下降し、最低揚高位置になる。この時、昇降体は、第四マストの下位に位置すると共に、フォークの水平片は、第四マストの下端より大きく下方に位置する。
【0008】
運搬走行位置では、各マストが略同じ高さに揃っているので、所謂全高を低くする事ができる。
最大揚高位置では、昇降体が第四マストの上位に位置するので、最大揚高がその分だけ高くなる。
最低揚高位置では、昇降体が第四マストの下位に位置するものの、フォークの水平片は、第四マストの下端より大きく下方に位置しているので、昇降体が水没する事がない。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明のマスト装置の運搬走行時を示す略式側面図。図2は、最大揚高時を示す図1と同様図。図3は、最低揚高時を示す図1と同様図。図4は、本発明のマスト装置を装備した荷役車両を示す側面図である。
【0010】
マスト装置1は、第一マスト2、第二マスト3、第三マスト4、第四マスト5、昇降体6、フォーク7、第一リフトシリンダ8、第二リフトシリンダ9、第一案内車10、第一索条11、第二案内車12、第二索条13とからその主要部が構成されて居り、荷役車両50の前側に装備されている。
【0011】
荷役車両50は、車体51と、これに回転可能に設けられた前後の車輪52と、車体51の後側に設けられて車輪(前輪)52を回転させるエンジン等の原動機53と、車体51の前側に設けられた運転席54と、これの前側に設けられて車輪(後輪)52を換向させる為のハンドル55と、これらの上方を覆うべく設けられたヘッドガード56等を備えている。
【0012】
第一マスト2は、荷役車両50の車体51に支持されるもので、この例では、その下部が車体51の前側に前後傾動可能に支持されて居り、車体51に設けたティルトシリンダ57に依り前後傾動される様になっている。
【0013】
第二マスト3は、第一マスト2に昇降可能に設けられたもので、この例では、第一マストと略同じ高さを備え、第一マスト2の内側に昇降可能に設けられている。第二マスト3の下側には、昇降を円滑にする為の上下のローラ(エンドローラのみを記載してサイドローラは図略している。以下同様)14が回転可能に設けられている。
【0014】
第三マスト4は、第二マスト3に昇降可能に設けられたもので、この例では、第一マスト2と略同じ高さを備え、第二マスト3の前側に昇降可能に設けられている。第三マスト4の下側後部には、第二マスト3の内側で昇降可能なリフトブラケット15が付設されて居り、これには、昇降を円滑にする為の上下のローラ16が回転可能に設けられている。
【0015】
第四マスト5は、第三マスト4に昇降可能に設けれたもので、この例では、第一マスト2と略同じ高さを備え、第三マスト4の内側に昇降可能に設けられている。第四マスト5の上側には、昇降を円滑にする為の上下のローラ17が回転可能に設けられている。
【0016】
各マスト、つまり第一マスト2と第二マスト3と第三マスト4と第四マスト5は、運搬走行時には、各高さが揃う様にされている。
【0017】
昇降体6は、第四マスト5に昇降可能に設けられたもので、この例では、第四マスト5の内側に昇降可能に設けられたリフトブラケット18とこれに架設されたフィンガバー19とを備えている。昇降体6のリフトブラケット18には、昇降を円滑にする為の上下のローラ20が回転可能に設けられている。昇降体6は、運搬走行時には、第四マスト5の上位に位置する様にしてある。
【0018】
フォーク7は、昇降体6に設けられたもので、この例では、左右一対のものにしてあり、夫々垂直片21とこれの下部から前方へ延出した水平片22とを備えて居り、垂直片21の上部が昇降体4のフィンガバー19に懸架されている。フォーク7の垂直片21は、運搬走行時の第四マスト5の略中位に水平片22が位置すべく長く形成されている。
【0019】
第一リフトシリンダ8は、第一マスト2に対して第二マスト3を昇降させるもので、この例では、左右一対のものにしてあり、夫々シリンダ本体23とこれに対して伸縮移動可能なピストンロッド24とを備え、ピストンロッド24側を上にして、第一マスト2の下部と第二マスト3の上部に設けられた上下のシリンダサポート25間に介設されている。第一リフトシリンダ8は、テール室が加圧側となる単動シリンダにしてある。
【0020】
第二リフトシリンダ9は、第三マスト4に対して第四マスト5を昇降させるもので、この例では、左右方向の中央に配された単一のものにしてあり、シリンダ本体26とこれに対して伸縮移動可能なピストンロッド27とを備え、ピストンロッド27側を上にして、第三マスト4の上部と第四マスト5の下部に設けられた上下のシリンダサポート28間に介設されている。第二リフトシリンダ9は、ピストンロッド室が加圧側となる単動シリンダにしてある。
【0021】
第一案内車10は、第二マスト3の上部に回転可能に設けられたもので、この例では、シーブにしてあり、横軸廻りに回転可能に軸設されている。第一案内車10は、第一リフトシリンダ8に呼応して左右一対のものにしてある。
【0022】
第一索条11は、第一マスト2と第三マスト3との間に介設されて第一案内車10に掛渡されたもので、この例では、チェーンにしてあり、一端が第一マスト2の上部に止結されていると共に、他端が第三マスト4のリフトブラケット15に止結されている。第一索条11は、第一リフトシリンダ8に呼応して左右一対のものにしてある。
【0023】
第二案内車12は、第四マスト5の上部に回転可能に設けられたもので、この例では、シーブにしてあり、横軸廻りに回転可能に軸設されている。第二案内車12は、第二リフトシリンダ9に呼応して単一のものにしてある。
【0024】
第二索条13は、第三マスト4と昇降体6との間に介設されて第二案内車12に掛渡されたもので、この例では、チェーンにしてあり、一端が第三マスト2の下部に止結されていると共に、他端が昇降体6のリフトブラケット18に止結されている。第二索条13は、第二リフトシリンダ9に呼応して単一のものにしてある。
【0025】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
運搬走行時には、図1に示す如く、各マスト2,3,4,5が略同じ高さに揃っていると共に、第一リフトシリンダ8と第二リフトシリンダ9は、最短状態になって居り、昇降体6は、第四マスト5の上位に位置し、フォーク7の水平片22は、第四マスト5の略中位に位置している。
この様な状態から、第一リフトシリンダ8を伸長させると、図2に示す如く、第一マスト2に対して第二マスト3が上昇すると共に、第一案内車10と第一索条11に依り第二マスト3に対して第三マスト4以降のものが二倍の速度で上昇し、最大揚高位置に達する。
図1に示す運搬走行位置から、第二リフトシリンダ9を伸長させると、図3に示す如く、第三マスト4に対して第四マスト5が下降すると共に、第二案内車12と第二索条13とに依り第四マスト5に対して昇降体6以降のものが二倍の速度で下降し、最低揚高位置になる。この時、昇降体6は、第四マスト5の下位に位置すると共に、フォーク7の水平片22は、垂直片21を長くしているので、第四マスト5の下端より大きく下方に位置する。
【0026】
従って、この様なマスト装置1を装備した荷役車両50は、マスト装置1を図1の運搬走行状態にして地面A上を走行できると共に、岸壁Bまで来ると、マスト装置1を地面Aより下の図3の最短揚高状態にし、フォーク7に依り海面Cに浮かぶボート等Dを掬う事ができる。
そして、ボート等Dを掬い終えると、マスト装置1を前述とは逆の順序で図1の運搬走行状態に戻し、艇庫(図示せず)まで走行した後、ここへ収納する事ができる。
艇庫は、通常、ラック状にしてあるので、上段に収容する場合には、マスト装置1を地面Aより上の図2の最大揚高状態にする。
艇庫から海面Cにボート等Dを浮かべる場合は、前述の収納とは逆の手順に依り行なえば良い。
【0027】
運搬走行位置では、図1に示す如く、各マスト2,3,4,5が略同じ高さに揃っているので、所謂全高Hを低くする事ができる。
最大揚高位置では、図2に示す如く、昇降体6が第四マスト5の上位に位置するので、最大揚高がその分だけ高くなる。
最低揚高位置では、図3及び図4に示す如く、昇降体6が第四マスト5の下位に位置するものの、フォーク7の水平片22は、垂直片21を長く形成したので、第四マスト5の下端より大きく下方に位置しているので、昇降体6のローラ20等の可動部分が水没する事がない。
【0028】
尚、第一リフトシリンダ8は、先の例では、左右一対のものであったが、これに限らず、例えば単一のものでも良い。
第二リフトシリンダ9は、先の例では、単一のものであったが、これに限らず、例えば左右一対のものでも良い。
第二リフトシリンダ9は、先の例では、ピストンロッド27側を上にして配設したが、これに限らず、例えばピストンロッド27側を下にして配設しても良い。
第一案内車10及び第二案内車12は、先の例では、シーブであったが、これに限らず、例えばプーリ等でも良い。
第一索条11及び第二索条13は、先の例では、チェーンであったが、これに限らず、例えばワイヤ等でも良い。
第一索条11は、先の例では、一端を第一マスト2に止結したが、これに限らず、例えば第一リフトシリンダ8のシリンダ本体23等に止結しても良い。
ローラ14は、先の例では、第二マスト3の下側の上下に設けたが、これに限らず、例えば標準的なマスト装置の様に、第一マスト2の上部と第二マスト3の下部とに設けても良い。
ローラ17は、先の例では、第四マスト5の上側の上下に設けたが、これに限らず、例えば標準的なマスト装置の様に、第三マスト4の下部と第四マスト5の上部とに設けても良い。
【0029】
【発明の効果】
以上、既述した如く、本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 第一マスト、第二マスト、第三マスト、第四マスト、昇降体、フォーク、第一リフトシリンダ、第二リフトシリンダ、第一案内車、第一索条、第二案内車、第二索条とで構成し、とりわけ運搬走行時には、各マストが略同じ高さに揃うと共に、昇降体が第四マストの上位に位置し、フォークの水平片が第四マストの略中位に位置すべく垂直片が長く形成されているので、全高を低くでき、昇降体の可動部分の水没を防ぎ、最大揚高をできるだけ高くし、然もコストの低減を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマスト装置の運搬走行時を示す略式側面図。
【図2】最大揚高時を示す図1と同様図。
【図3】最低揚高時を示す図1と同様図。
【図4】本発明のマスト装置を装備した荷役車両を示す側面図。
【符号の説明】
1…マスト装置、2…第一マスト、3…第二マスト、4…第三マスト、5…第四マスト、6…昇降体、7…フォーク、8…第一リフトシリンダ、9…第二リフトシリンダ、10…第一案内車、11…第一索条、12…第二案内車、13…第二索条、14,16,17,20…ローラ、15,18…リフトブラケット、19…フィンガバー、21…垂直片、22…水平片、23,26…シリンダ本体、24,27…ピストンロッド、25,28…シリンダサポート、50…荷役車両、51…車体、52…車輪、53…原動機、54…運転席、55…ハンドル、56…ヘッドガード、57…ティルトシリンダ、A…地面、B…岸壁、C…水面、D…ボート等、H…全高。

Claims (1)

  1. 荷役車両の車体に支持される第一マストと、第一マストに昇降可能に設けられた第二マストと、第二マストに昇降可能に設けられた第三マストと、第三マストに昇降可能に設けれた第四マストと、第四マストに昇降可能に設けられた昇降体と、昇降体に設けられたフォークと、第一マストに対して第二マストを昇降させる第一リフトシリンダと、第三マストに対して第四マストを昇降させる第二リフトシリンダと、第二マストの上部に回転可能に設けられた第一案内車と、第一マストと第三マストとの間に介設されて第一案内車に掛渡された第一索条と、第四マストの上部に回転可能に設けられた第二案内車と、第三マストと昇降体との間に介設されて第二案内車に掛渡された第二索条とを備え、運搬走行時には、各マストが略同じ高さに揃うと共に、昇降体が第四マストの上位に位置し、フォークの水平片が第四マストの略中位に位置すべく垂直片が長く形成され、第一リフトシリンダを伸長させると、第一マストに対して第二マストが上昇すると共に、第二リフトシリンダを伸長させると、第三マストに対して第四マストが下降する事を特徴とする荷役車両のマスト装置。
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