JP3754473B2 - 残水量の演算を行なう給湯器付き風呂釜 - Google Patents

残水量の演算を行なう給湯器付き風呂釜 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、給湯器用の給湯熱交換器と浴槽の水を追焚する風呂熱交換器とを備えた給湯器付き風呂釜に係り、浴槽内の残水量の演算を含む自動湯はり運転を最短で行なうことができる風呂釜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の給湯器付き風呂釜では、風呂用のバーナーに風呂用の電磁弁を接続し、給湯用のバーナーに給湯用の電磁弁を接続し、両電磁弁に共通に比例弁を接続して、元ガス電磁弁からのガス量を制御している。このように、比較的能力の大きい比例弁を共通に設けることでコストダウンを図ることができると同時に、比例弁の開閉制御を利用して所望の温度の給湯を可能にすることができる。また、比例弁のガバナー機能を利用して一定の圧力のガスを風呂バーナーに供給することもできる。
【0003】
一方、近年においては、給湯器付き風呂釜の多機能化に伴い、設定温度の湯を設定水位まで注湯する自動湯はり機能を持つものが販売されている。このような機能を実現するためには、浴槽に残っている水量を検知した上で残りの水量を演算して注湯する必要がある。その場合、コストアップにつながる圧力センサー等を使用することなく、浴槽内の残水量を測定する方法として、風呂バーナーからの追焚を行い残水の温度が所定温度上昇した時の投入熱量を測定し、風呂釜のシステム効率などを参照して演算することが提案されている。
【0004】
かかる演算式は、
残水量(Qz)=(I×Δt)×ηs /(ΔT×c×γ)
Qz:残水量(リットル)
I :燃焼量(Kcal/h)
Δt:追焚時間(h)
I×Δt:投入熱量
ηs :システム効率
(I×Δt)ηs:供給熱量(Kcal)
ΔT:上昇温度(℃)
c :水の比熱(Kcal/Kg・℃)
γ :水の比重(Kg/リットル)
である。
【0005】
そして、この追焚運転では、浴槽内の残水を設定温度まで上昇させてから、設定水量までの足りない分を給湯器から設定温度で注湯している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図1に、かかる自動湯はり運転のタイムチャート図を示している。図中の実線で記したa−b−d−fが、従来の自動湯はり運転の場合である。
【0007】
図1は、横軸に時間(t)、縦軸に浴槽の温度(T)をとっている。上記した様に、従来の自動湯はり運転の場合は、浴槽内の残水の温度がTaとすると、時間taから追焚を開始して、追焚が安定する時間tb(チャート線のb)まで追焚を行い、その後設定温度Tsまで追焚を続けながら、設定温度Tsに至間際の期間での浴槽温度の上昇と投入熱量とから残水量の演算を行なっている(チャート中の実線のd、時間td)。そして、その後設定水量に足りない分の湯を給湯器側から注湯して、チャート中の実線のf(時間tf)で自動湯はり運転を終了している。
【0008】
しかしながら、給湯器側のバーナーの能力は、水道管からの常温の水を比較的高い温度に変換する能力が要求される為、風呂側のバーナーの能力に比べて大きく設定されている。例えば、風呂側のバーナーの燃焼量が10,000Kcal/hであるのに対して、給湯器側のバーナーの燃焼量は最大で30、000Kcal/h或いは46,000Kcal/hになる場合がある。
【0009】
この様に、給湯器側に比較して燃焼能力が低い風呂側のバーナーで、図1中のa−b−dの様に浴槽内の残水を設定温度まで追焚するには、かなりの時間を要することになる。
【0010】
一方で、浴槽内の残水の温度が、設定温度と比べるとかなり低い場合は、チャート線のbから残水量の演算を行なうのに必要な追焚が終了しても、更に設定温度までかなりの温度上昇が必要になる。図1で説明すると、追焚運転が十分安定した後に、チャート線のbからcまでで残水量の演算が終了し得た場合、残水の温度は未だTcであり、設定温度のTsまでかなりの温度上昇が必要になる。従って、その追焚(チャート線のc−d間)に要する時間は長くなる。しかも、残水の量が比較的多い場合は、特に長時間となる。その為、自動湯はり運転が終了するまでの全体の時間も長くなることになる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、自動湯はり運転に要する時間をできるだけ短くすることができる給湯器付き風呂釜を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の目的は、自動湯はり運転に必要な残水量の演算に必要な追焚時間を必要最小限に止めることにより、自動湯はり運転に要する時間を最短にすることができる給湯器付き風呂釜を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、残水量の演算に伴う追焚と設定量までの注湯とを最適に組み合わせることで、最短時間で自動湯はり運転を終了させることができる給湯器付き風呂釜を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、第一の発明によれば、
風呂熱交換器と、給湯熱交換器と、該風呂熱交換器に熱量を投入する風呂側熱量投入手段と、該給湯熱交換器に熱量を投入する給湯側熱量投入手段とを有する給湯器付き風呂釜において、
前記風呂側熱量投入手段から熱量を投入することで追焚して浴槽内の残水に熱量を供給し、所定の温度上昇した時の供給熱量と当該上昇温度から前記残水の量を演算するに際し、当該演算用の追焚運転を所定の設定された最大上昇温度分上昇した時点で停止し、その後、最終的に設定水量の湯はりが終了した時の浴槽の温度が所定の設定温度になるような温度で、該設定水量になるまで、給湯側から浴槽に注湯するようにした制御部を有することを特徴とする給湯器付き風呂釜を提供することにより達成される。
【0015】
かかる発明によれば、演算に必要な追焚運転を行なった後は、追焚を停止し、より能力の高い給湯器側から注湯しながら更に必要な残水の温度上昇を行なうことになり、自動湯はり運転に要する時間を短くすることができる。
【0016】
また上記の目的は、第二の発明によれば、
風呂熱交換器と、給湯熱交換器と、該風呂熱交換器に熱量を投入する風呂側熱量投入手段と、該給湯熱交換器に熱量を投入する給湯側熱量投入手段とを有する給湯器付き風呂釜において、
前記風呂側熱量投入手段から熱量を投入することで追焚して浴槽内の残水に熱量を供給し、所定の温度上昇した時の供給熱量と当該上昇温度から前記残水の量を演算するに際し、当該演算用の追焚運転により当該残水が所定の設定された最大上昇温度分上昇した時点で、
当該追焚運転を停止し、その後、最終的に設定水量の湯はりが終了した時の浴槽の温度が所定の設定温度になるような温度で、該設定水量になるまで、給湯側から浴槽に注湯するようにした時に要する第一の時間と、
当該追焚運転を前記設定温度に上昇するまで継続し、その後、該設定温度で該設定水量になるまで給湯側から浴槽に注湯するようにした時に要する第二の時間とを比較し、最短の時間になるよう前記追焚運転の停止と注湯運転とを制御する制御部を有することを特徴とする給湯器付き風呂釜を提供することにより達成される。
【0017】
この発明によれば、演算に必要な追焚運転が終了した時点で、追焚を停止して注湯する場合と、設定温度まで追焚した後注湯する場合とでどちらが短い時間で終了するかの演算を行い、短い方の運転を行なうようにすることで、自動湯はり運転を最短で行なうことができる。
【0018】
また上記の目的は、第三の発明によれば、上記第一または第二の発明において、
前記制御部は、前記演算用の追焚運転により前記最大上昇温度分上昇する前に、当該残水の温度が設定温度に達した場合は、該追焚運転を停止して、給湯側から設定水量になるまで該浴槽に注湯することを特徴とする給湯器付き風呂釜を提供することにより達成される。
【0019】
この発明によれば、浴槽内の残水の温度が設定温度よりも高くなることが防止される。
【0020】
また上記の目的は、第四の発明によれば、上記第三の発明において、
前記制御部は、当該演算用の追焚運転により上昇した温度が、該残水量の演算に必要な所定の最低上昇温度以下の場合は、前記の設定水量になるまでの該浴槽への注湯を行なわないことを特徴とする給湯器付き風呂釜を提供することにより達成される。
【0021】
この発明により、不正確な量の注湯が行なわれることが防止される。
【0022】
また上記の目的は、第五の発明によれば、上記第一または第二の発明において、
前記の設定水量になるまでの該浴槽への注湯をする時の注湯温度を、所定の上限温度以下にすることを特徴とする給湯器付き風呂釜を提供することにより達成される。
【0023】
この発明により、入浴中の人体に極端に高温の湯が触れて火傷の原因になるのを防止することができる。
【0024】
また上記の目的は、第六の発明によれば、上記第一乃至第五の何れかの発明において、
前記制御部は、当該残水量の演算の結果、設定水量までに足らない量が所定の最低注湯量より少ない場合は、前記の設定水量になるまでの該浴槽への注湯を行なわないことを特徴とする給湯器付き風呂釜を提供することにより達成される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0026】
[給湯器付き風呂釜の概要]
図5は、本発明の実施の形態の給湯器付き風呂釜の全体構成図である。給湯器付き風呂釜100には、風呂燃焼室1と給湯燃焼室2とが設けられている。それぞれの燃焼室には、風呂熱交換機10と給湯熱交換機20が設けられている。さらに燃焼室には、熱量投入手段としての風呂バーナー11と給湯バーナー21、風呂イグナイター13と給湯イグナイター23、風呂フレームロッド14と給湯フレームロッド24が設けられている。また両燃焼室1、2に対して共通の燃焼ファン30が設けられており、それぞれで燃焼した空気は排気口を通じて排気される。燃焼ファン30により供給される風量は、風量センサ42により検出されて、燃焼制御のパラメータとして利用される。
【0027】
風呂バーナー11、給湯バーナー21へのガスの供給をオン・オフ制御する風呂電磁弁12、給湯電磁弁22が設けられ、それらの電磁弁12、22に対して共通に燃料制御手段として比例弁31、元ガス電磁弁32が設けられている。これらの電磁弁や比例弁、イグナイター、フレームロッド、燃焼ファン、更に後述する各種センサー等は、電装基板41に搭載されるマイクロコンピュータ等の制御装置(後で説明)により制御される。また、制御装置は浴室や台所のリモコン40に接続され、メモリに記憶されたプログラムに従って操作信号を受信し制御信号を出力する。
【0028】
給湯器側の動作の概略は以下の通りである。まず、給湯栓が開かれると水量センサー25が給水28の流量を感知し、燃焼ファン30によるプリパージの後、給湯イグナイター23の放電と共に元ガス電磁弁32、比例弁31、給湯電磁弁22が開き給湯バーナー21が着火し、所定温度の湯が給湯口29から供給される。給湯温度を設定温度に保つために、入水サーミスタ26、出湯サーミスタ27及び水量センサー25の出力から演算された値に比例弁31の電磁弁駆動電流が制御され、燃焼ファン30の回転が制御される。
【0029】
一方、風呂側では、元ガス電磁弁32、比例弁31、風呂電磁弁12を開くことで、風呂バーナー11を燃焼させ、循環ポンプ17により浴槽43内の湯を循環させながら追焚運転を行っている。44は、往き管18と戻り管19と浴槽を接続する取り付け金具である。
【0030】
自動湯はり運転では、残水がある場合はその残水量を演算し、給湯側の燃焼で得られた湯を注湯電磁弁34を開くことで風呂側の循環通路に供給し、往き管18と戻り管19を介して、設定した温度で設定した量の注湯を浴槽に行っている。自動湯はり運転についてのフローを以下に更に詳細に説明する。
【0031】
[自動湯はり運転のフロー]
図2は、自動湯はり運転のフローチャートである。後で説明する残水量の演算が自動湯はり運転中にどの様な段階で行われるのかについて簡単に説明する。
【0032】
まず、浴槽43内の湯の温度と水量が設定されて自動スイッチがオンされる(ステップ51)。最初に浴槽43内に残水があるかどうかを検知するために、循環ポンプ17を作動させ、風呂水流スイッチ15がオフかどうかがチェックされる(ステップ52)。風呂水流スイッチ15がオンする場合は、浴槽43内に取付け金具44より上まで残水があることを意味するので、残水量の演算フローに進む。風呂水流スイッチ15がオフの場合は、浴槽43が空であると仮定した時に取付け金具44の直ぐ下までに必要な水量の湯を設定温度で注湯する(ステップ53)。この水量は、風呂釜を設置した最初の記憶モード運転の時に記憶されている。そして、循環ポンプ17を作動させて風呂水流スイッチ15がオフかどうかのチェックが行われる(ステップ54)。ここで、スイッチがオンする場合は、最初に浴槽43内に多少の残水があったことを意味し、残水量の演算フローに進む。また、スイッチがオフの場合は、最初から残水が無かったことを意味し、更に注湯して取付け金具の上まで湯が来るようにする(ステップ55)。
【0033】
そこで、循環ポンプ17を作動の上、風呂水流スイッチ15がオンするかどうかをチェックし(ステップ56)、オンの場合は、間違いなく最初の浴槽43には残水がなかったことを意味し、設定された水量になるよう残りの湯を設定温度で注湯する(ステップ57)。風呂水流スイッチ15がオフの場合は、何らかのエラーの原因があることを意味し、ステップ63にて水流スイッチ15がオンするまで注湯を続け、一定量注湯しても水流スイッチがオンしない場合はエラー信号を発する。
【0034】
最初の浴槽43内に残水があった場合には、上述した動作フローに従って、循環金具44より上まで残水があることを確認した上で、残水量の演算フローに進む。残水量の演算は、ステップ64から67により行われる。
【0035】
残水量の演算のステップ66に進む前に、浴槽の残水の温度Tを風呂サーミスタ16により測定し(ステップ64)、浴槽温度Tが設定温度近傍まで高くないかどうかの判定を行なう(ステップ65)。T1は、残水量を演算するのに最低限必要な上昇温度(最低上昇温度)で、例えば数℃である。従って、ステップ65では、浴槽温度Tが設定温度Tsに最低上昇温度T1を加えた温度より低いことを確認して残水量の演算ステップ66に入る。浴槽温度Tがその温度以上である場合は、残水量の演算ができないため、直ちに自動湯はり運転を終了する。
【0036】
浴槽内の残水が設定温度近傍より高くなる追焚運転を行なうことは、入浴中又は入浴してくる人体にとって危険であるため、安全性を最優先して自動湯はり運転を終了するのである。
【0037】
[残水量演算の追焚運転]
図3は、残水量の演算の追焚運転のフローチャート図である。フローチャート図に従って説明する前に、残水量演算の追焚運転の考え方について、図1に従って説明する。
【0038】
図1において、前述した通り従来は、残水の温度Taから設定温度Tsまで追焚を行い(チャート中a−d)、その後設定温度での注湯(チャート中d−f)を行なっていた。従って、自動運転に要する時間は(tf−ta)であった。
【0039】
一方、本発明の実施の形態によれば、追焚を開始し、残水の温度TaからTbまで循環回路を循環させながら追焚を継続して追焚が安定するのを待った後、直ちに、チャート中のbの時点からcの時点まで残水量演算の為の追焚を行ない、そこで一旦追焚を中止し、図中破線で示したようにcの時点からeの時点まで給湯側から注湯を行なう。ここでの注湯温度Tkは、注湯が終了した時点で浴槽内の温度が設定温度Tsになるよう逆算して求められた値である。従って、時間teにて自動湯はり運転が終了することになる。
【0040】
また、チャート中のbの時点からcの時点までは、追焚きにより浴槽温度が温度Tbから最大上昇温度TMAX 上昇した時点により決められる。この最大上昇温度は、残水量の演算に最低限必要な上昇温度(例えば数℃)よりも大きいが、それ以上追焚きをしても残水量の演算の精度は変わらない程度の値(例えば、10℃前後)が選ばれる。従来は、設定温度Tsの手前の時間帯で残水量の演算を行っていたが、本発明では、一旦追焚きが安定したら、直ちに残水量の演算を行い、演算の精度が十分上がったところで追焚きを停止して注湯を行うようにしている。
【0041】
図1に示した破線の如く自動湯はり運転が従来の時間tfよりも早く終了するためには、様々な要因がある一定の条件を満たす場合であることは明らかである。即ち、残水量演算の為の追焚が終了したcの時点での、浴槽の温度Tcから設定温度Tsまでの温度差、残水量Qz、注湯温度Tkの湯を出力する場合の給湯側の単位時間当たりの出水量q2等により、図中の破線c−eの傾きは、図中の矢印のように変動する。更に、給湯側の熱量投入手段である給湯バーナー21と風呂バーナー11の燃焼能力の差にも依存して変動する。
【0042】
給湯バーナー21の燃焼能力が風呂バーナー11よりも十分能力が高く、設定温度Tsで注湯する場合も注湯温度Tkで注湯する場合もそれぞれの出水量q1、q2が同等である場合は、図1中の破線c−eの様に注湯することが可能である。逆に、給湯バーナー21の燃焼能力が余り高くない場合や、設定温度までの温度差(Ts−Tc)が大きく且つ残水量Qzがある程度多いため注湯温度Tkがかなり高く設定されてしまって出水量q2が十分取れない場合等は、図1中の一点鎖線c−gの様になる場合も考えられる。一方で、給湯バーナー21の燃焼能力が非常に高い場合等は、図1中の二点鎖線c−e1の様になることも考えられる。
【0043】
従って、残水量演算用の追焚が終了した時点cにおいて、何れの場合が最短時間で湯はり運転を終了することができるかの比較を行い、追焚を続けるか、追焚を停止して直ちに注湯を行なうのかの判断を行なうことが望ましい。
【0044】
しかしながら、一般的な給湯器付き風呂釜の場合は、前述したように風呂バーナー11の燃焼能力が10,000Kcal/hであるのに対して、給湯バーナー21の燃焼能力は30,000−45,000Kcal/hもあるので、現実的には図1中の一点鎖線c−fのようになることは余りない。
【0045】
以下、従来の様に実線c−d−fのように運転した場合と、本発明の実施の態様の破線c−eのように運転した場合について、数式により説明する。先ず従来例の場合は、
Figure 0003754473
であるのに対して、改良例の破線c−eの場合は、
tce=(Qs−Qz)/q2
となる。尚、Qsは設定水量で、Qzは残水量である。従って上記したように、設定温度Tsで注湯する場合の出水量q1と注湯温度Tkで注湯する場合の出水量q2が同等である場合は、従来例のほうが単純にtcd分長い時間を要することになる。
【0046】
但し、注湯温度Tkは、残水量が比較的多いのにも係わらず設定温度Tsと残水演算終了時の温度Tcとの差が大きい場合はかなり高い温度になり、給湯側の燃焼能力が低いと出水量を絞るなどの制御が必要になり、出水量q2がq1より少なくなる場合が考えられる。その場合は、従来例のtcdの時間がどの程度かかるかが問題となり、残水量Qz、設定温度までの差(Ts−Tc)、風呂バーナー11の能力I等により決まることになる。尚、出水量q2は、水道管の水圧が低い場合も少なくなるが、それは従来例の出水量q1も同様に少なくなるので、ここでは問題外である。
【0047】
注湯温度Tkは、残水量が判明していれば熱量計算により簡単に求めることができる。そして、注湯温度Tkが決まれば、給湯バーナー21の能力から単位時間あたりに注湯できる出水量q2も制御テーブルから求められることになる。従って、残水量演算用の追焚が終了した時点cにおいて、制御装置であるマイクロコンピュータは、上記の二つの場合の何れのほうが短時間で終了するかを比較演算することができる。更に、チャート中のcの時点では、従来のc−d−fのほうが短い場合でも、暫く追焚を行なった後のc1の時点では追焚を中止して注湯したほうが短くなる場合も可能性としてはある。従って、給湯バーナーの能力が低い場合は、継続的に比較演算を行ない、比較結果に応じて切り換えるようにすることが望ましい。
【0048】
次に図3のフローチャート図に従って、残水演算の追焚運転について説明する。図2で説明した様に、浴槽43内の取付け金具44より上まで残水があることが確認され、残水の温度が設定温度付近より低いことが確認された後、図3の残水量演算のための追焚き運転に入る。先ず、循環ポンプ17をオンにし風呂バーナー11をオンにして追焚きを開始する(ステップ71)。そして、追焚きが安定する所定時間経過するまで待機する(ステップ72)。これは、循環ポンプ17により追焚き回路内の温度分布が均一になり、浴槽43内と風呂サーミスタ16の部分とで温度差がなくなり、温度上昇も同様になるまで待機することを意味する。例えば、20−40秒程度であるが、風呂釜の大きさ等により適宜設定される。
【0049】
上記所定時間が経過して追焚きが安定した後、マイクロコンピュータよりなる制御装置(後述)が風呂サーミスタ16からの出力のデジタル信号が、1デジット上昇するのを待つ(ステップ73)。別途、本出願人から出願している通り(特願平7−225491、平成7年9月1日出願)、正確な温度上昇を測定するために、デジタル値が1デジット上昇した時点から、温度の上昇と供給熱量の測定を始める。そこで、ステップ74にて、浴槽温度Tbを記憶し、ある程度正確な演算ができるのに最低必要な上昇温度T1を加えた温度Tθを演算し、追焚き時間の計測を開始する。尚、供給熱量が一定である場合は時間の計測だけで足りるが、風呂バーナー11からの投入熱量や風呂側回路のシステム効率が変動する場合は、正確に測定する為には単位時間毎に供給熱量を測定して積算していく必要がある。
【0050】
ステップ75から84が、残水量演算の為の追焚き運転のフローである。このフローの中では、浴槽温度が設定温度Tsより低い間に(ステップ76)、浴槽温度が最低必要な上昇温度Tθまで上昇したかどうか(ステップ78)の判定が行われる。そして、浴槽温度がTθを越えた後、浴槽温度が1デジット上昇して(ステップ79)区切りの良い時点で、浴槽温度を測定しTθとする(ステップ80)。
【0051】
そして、残水量Qzの演算を行い、設定水量までの注湯量(Qs−Qz)を得て、最終的に設定温度になるような注湯温度の演算を行う。残水量Qzの演算は、前述の数式に従って求められる。また、注湯温度も簡単な熱量計算により求められるのは明らかである。尚、注湯温度Tkは、余り高くなると、入浴中の人体に火傷をさせる危険性が出てくるので、ある程度以上高くならないようにすることが安全性の観点から求められるかもしれない。その場合は、ここでの演算の結果得られる注湯温度Tkが最大注湯温度(例えば60℃)以上の場合は、注湯温度は60℃と記憶されることになる。
【0052】
ステップ82では、浴槽温度Tθと最初の浴槽温度Tbとの差が、最大上昇温度TMAX に達したかどうかのチェックが行われる。もし、達したとすると、図1中のcの時点になっていることを意味し、追焚きを停止して注湯する場合と、そのまま追焚きをする場合とでどちらが短時間で終了できるかの判断が行われ(ステップ83)、前者が短時間である場合は、追焚きを中止し(ステップ84)、図1の破線c−eの様に、注湯を開始する。
【0053】
上記の追焚き運転中に、浴槽の温度が設定温度付近よりも高くなると、ステップ77にて追焚きを終了することになる。これは、浴槽内の温度が高くなりすぎることを防止する安全性確保の理由からである。その場合は、ステップ75で追焚きを終了し、上昇温度が最低上昇温度T1あったかどうかのチェックが行われ(ステップ85)、T1に満たない場合は、演算不可能として残水フラグを1にする(ステップ87)。また、最低上昇温度T1以上の上昇があった場合でも、注湯量が注湯最小値(例えば数リットル)以上ない場合も、残水フラグを1にする。
【0054】
ステップ82にて最大上昇温度TMAX まで上昇していることが確認され、ステップ83にて、未だ浴槽温度が設定温度に達していないが、追焚きを中止して注湯したほうが短時間で終了することが確認された場合は、注湯量が最低注湯量以上の時は、残水フラグが0にされる。この場合は、注湯温度は既にステップ81にて演算済である。また、最大上昇温度TMAX まで上昇しない内に浴槽温度が設定温度まで上昇した場合(ステップ75でYES)であって、最低上昇温度T1以上の追焚きが行われていた場合(ステップ85でYES)にも、残水フラグが0にされる。
【0055】
そして、図2のステップ67に戻り、残水フラグが0の場合のみ、設定水量までの注湯が行われる。この場合、上述した前者の場合、即ち最大上昇温度TMAX 上昇したが浴槽が設定温度に達していない場合(図1中のcの時点)は、別途演算で求めた注湯温度Tkにより注湯が行われ、最終的に浴槽が設定温度、または設定温度付近になるよう制御される。また後者の場合、即ち最大上昇温度TMAX 上昇せずに浴槽が設定温度付近になっている場合は、設定温度、またはその付近の温度で注湯が行われる。勿論、その場合でも、ステップ81で演算して求めた注湯温度を採用しても構わない。
【0056】
注湯後は、必要に応じて浴槽温度が設定温度、またはその付近になるまで最後の追焚きを行う(ステップ61)。尚、残水フラグが0でなく1の場合は、注湯は行われず、自動湯はり運転は終了する。尚、上記した最大上昇温度TMAX は、機器の能力に応じて最適の値が設定される。
【0057】
仮に例として、風呂バーナーの能力が10,000Kcal/h、給湯バーナーの能力が少なめの30,000Kcal/hであるとする。また、浴槽の大きさが180リットル、設定温度42℃で、最大上昇温度が例えば10℃であったとする。そして、簡単の為にシステム効率は風呂側、給湯器側何れも80%とする。更に最も極端な例として、残水量が浴槽の半分以下の80リットルで、残水の温度が10℃と低かったとする。
【0058】
図1に従って説明すると、Taは10℃で、36秒間追焚きをすると、残水への供給熱量は80Kcal(10,000Kcal/h×36秒/3600秒×80/100)となり、80リットルの残水は1℃上昇することになる。即ちTbは11℃である。そこで、最大温度上昇の10℃上昇させるためには、360秒間(6分間)(36秒/℃×10℃)追焚きをする必要がある。その時点で、残水の温度は21℃(=Tc)である。そこで、チャート図中c−d−fと運転した場合の時間を計算すると、756秒(36秒/℃×21℃)に残りの分100リットルを設定温度で注湯する時間を加えた値になる。一方、チャート図中c−eと運転した場合は、注湯温度が、
80×21℃+100×Tk=180×42℃
の式からTk=58.8℃が求められる。これは、最大注湯温度の60℃よりも低いため、かかる温度での注湯が許される。また、通常の給湯器であればこの程度の温度であれば、100%の能力の出水量を確保することができる。従って、上記の例の場合でも、明らかに追焚きを停止して注湯を行ったほうが短時間で湯はりを行うことができる。
【0059】
上記の一連の動作フローは、電装基板41に搭載されたマイクロコンピュータからなる制御部80内のメモリに記憶された動作プログラムに従って制御される。図4は、その制御部80の構成の概略と各センサやスイッチとの関係を示すブロック図である。
【0060】
制御部80は、一般的な8ビットのマイクロコンピュータで構成され、内部は、CPU81、レジスタ82、書換え可能な記憶装置(RAM)83、読み出し専用の記憶装置(ROM)84とインターフェース86とが、共通のバス85を介して互いに接続されている。また、電装基板41には、電気的に書換え可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)87も搭載され、制御部41に接続されている。
上記の動作を制御する動作プログラムはROM84内に記憶されている。また、必要に応じて、風呂釜が設置される環境に応じて変動する各種パラメータは、外付けのROM87に記憶される。前述した注湯温度Tkから出水量q2を求める為のテーブルについても、適宜この外付けROM87に記憶される。動作プログラムに応じて制御するマイクロコンピュータ80内の動作は、一般的に知られたものと同じであり、ここでの説明を省略する。
【0061】
尚、本発明の実施の形態を、ガスを使ったバーナーによる熱量の供給をする場合で説明したが、本発明では、燃料はガスに限定されず、灯油や軽油等でも適用でき、その場合は比例弁の代わりに電磁ポンプが使用される。また、熱量の供給手段として、熱交換機の回りに触媒層を設けそれにガスと空気を供給することで直接熱量を供給する場合でも本発明は適用できる。
【0062】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、自動湯はり運転において、残水量の演算のための追焚き運転を必要なだけ行った後は、熱量能力が比較的大きい給湯器側からの高めの温度での注湯を行うことで、全体の運転時間を短縮することができる。また、残水量の演算の為の追焚きの最大上昇温度を予め設定しておくことで、正確な残水量を演算することができると共に、湯はり運転時間も短縮することができる。更に、注湯温度の上限を決めておくことで、安全性を確保することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例と本発明の実施の形態のタイムチャート図である。
【図2】自動湯はり運転のフローチャート図である。
【図3】残水量演算の追焚き運転のフローチャート図である。
【図4】制御部のブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態の風呂釜の全体構成図である。
【符号の説明】
10 風呂熱交換器
11 風呂バーナー(風呂熱量投入手段)
20 給湯熱交換器
21 給湯バーナー(給湯熱量投入手段)
31 比例弁
41 電装基板
43 浴槽
80 制御部

Claims (5)

  1. 風呂熱交換器と、給湯熱交換器と、
    該風呂熱交換器に熱量を投入する風呂側熱量投入手段と、
    該給湯熱交換器に熱量を投入する給湯側熱量投入手段とを有する給湯器付き風呂釜において、
    前記風呂側熱量投入手段から熱量を投入することで追焚して浴槽内の残水に熱量を供給し、所定の温度上昇した時の供給熱量と当該上昇温度から前記残水の量を演算するに際し、当該演算用の追焚運転により当該残水が所定の設定された最大上昇温度分上昇した時点で、
    当該追焚運転を停止し、その後、最終的に設定水量の湯はりが終了した時の浴槽の温度が所定の設定温度になるような温度で、該設定水量になるまで、給湯側から浴槽に注湯するようにした時に要する第一の時間と、
    当該追焚運転を前記設定温度に上昇するまで継続し、その後、該設定温度で該設定水量になるまで給湯側から浴槽に注湯するようにした時に要する第二の時間とを比較し、前記第一または第二の時間のいずれか短い時間に対応する前記追焚運転及び注湯運転の制御を行う制御部を有することを特徴とする給湯器付き風呂釜。
  2. 請求項1において、
    前記制御部は、
    前記演算用の追焚運転により前記最大上昇温度分上昇する前に、当該残水の温度が設定温度に達した場合は、該追焚運転を停止して、給湯側から設定水量になるまで該浴槽に注湯することを特徴とする給湯器付き風呂釜。
  3. 請求項2において、
    前記制御部は、
    当該演算用の追焚運転により上昇した温度が、該残水量の演算に必要な所定の最低上昇温度以下の場合は、前記の設定水量になるまでの該浴槽への注湯を行なわないことを特徴とする給湯器付き風呂釜。
  4. 請求項1において、
    前記の設定水量になるまでの該浴槽への注湯をする時の注湯温度を、所定の上限温度以下にすることを特徴とする給湯器付き風呂釜。
  5. 請求項4において、
    前記制御部は、
    当該残水量の演算の結果、設定水量までに足らない量が所定の最低注湯量より少ない場合は、前記の設定水量になるまでの該浴槽への注湯を行なわないことを特徴とする給湯器付き風呂釜。
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