JP3872903B2 - 一缶多水路型給湯機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、浴槽内の水の循環する追い焚き流路内の水と給水の通る給湯流路内の水の双方にバーナーからの熱を1つの熱交換器で伝える一缶多水路型給湯機であって、設定された湯量まで前記浴槽に湯張りする際に浴槽内の残水を所定時間追い焚きし、これによって上昇した前記残水の温度差と当該追い焚きによって前記残水に加えた熱量とを基にして浴槽内の残水量を求めるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から使用されている一缶二水路型給湯機には、予め設定された湯量(水位)になるよう浴槽へ湯張りを行うものがあり、このような風呂釜では、浴槽内の残水量を調べ、これを基にして目標水位まで湯張りするのに必要な注湯量を求めるようになっている。残水量の確認は、水位センサを用いるほか、次のような手法で行われている。
【0003】
すなわち、湯張りを行う前に、一定時間、浴槽内の湯を追い焚きするとともに、当該追い焚きによって浴槽内の水温がどの程度上昇したかを測定し、追い焚きによって加えた熱量と上昇した温度差とから、浴槽内の残水量を演算で求めている。
【0004】
ところで、一缶二水路型給湯機では、1つの熱交換器で給湯流路と追い焚き流路の双方を加熱するので、給湯のない状態、すなわち、給湯流路の水が停留している状態で無制限に追い焚きを行うと、給湯流路内の水が沸騰してしまう。そこで、追い焚き単独運転を行う場合には、通常、給湯流路内の停留している水が沸騰しない範囲の少ない燃焼量でバーナーを連続燃焼させるか、もしくは、比較的大きな燃焼量でバーナーを間欠的に燃焼させるようになっている。
【0005】
また給湯側は、追い焚き側よりも大きな熱量を要求されるので、一般に、給湯流路を熱交換器内でバーナー寄りの箇所へ配置し、追い焚き流路を給湯流路よりもバーナーから遠い箇所に配置している。このほか、追い焚き流路を給湯流路の上方等に接触させて配置することで給湯流路の熱を追い焚き流路に伝導し、追い焚き単独運転時に給湯流路内の水が沸騰することを抑えるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
追い焚き単独運転の際に、給湯流路内の水が沸騰しないよう小さい燃焼量でバーナーを燃焼させると、バーナーからの熱は、当該バーナーから遠い箇所に配置された追い焚き流路よりもバーナーに近い給湯流路側へより多く吸熱されるようになり、追い焚き効率が低下し、焚きあげるまでの時間が長くかかってしまうという問題がある。
【0007】
一方、追い焚きの際にバーナーを大きな燃焼量で間欠的に燃焼させるものでは、追い焚き効率は高くなるが、自動湯張りの際、演算によって求めた残水量の誤差が大きくなってしまう。図11に示すように、バーナーを間欠的に燃焼させて追い焚きを行うと、浴槽から追い焚き流路内へ戻ってくる湯の平均温度は実線501で示すように上昇するが、点火後しばらくの間は、熱交換器や給水流路を加熱するためにバーナーから熱量が消費される。このため、熱効率が比較的安定し残水量の演算に適用可能な有効期間502a〜502cは、それぞれ対応する燃焼期間503a〜503cのうちのきわめて短い一部の期間に制限されてしまう。したがって、間欠燃焼させる場合には、残水量演算用の追い焚き期間のうち、一部の期間しか残水量の演算に用いることができず、演算結果の誤差が大きくなってしまう。
【0008】
また、間欠燃焼させる場合には、分散している各有効期間だけを演算の対象期間にするため、それぞれの有効期間ごとにその開始時点と終了時点における残水の温度を求める必要がある。なお、熱効率が安定している有効期間では、単位時間当たりにおける追い焚き側の加熱量が一定と考えられるので、図11では、各有効期間ごとに求まる残水量は、それぞれの有効期間の開始時点におけるもどり温度と終了時点におけるもどり温度とを結ぶ直線の角度(θ)として表される。
【0009】
ところで、浴槽内の湯は十分に攪拌されず、たとえば風呂釜から浴槽に出た加熱後の湯がすぐに追い焚き流路へ戻るような事態が生じるので、図12に拡大示するように、浴槽から戻ってくる湯の実測温度511は刻々と上下変動し、浴槽内の湯全体の平均温度の上昇特性512と大きく相違している。このため、各有効期間ごとに残水量を求めると、平均温度から求まる残水量θ1に対してθ2、θ3で表すように大きな誤差を含む場合が多発する。
【0010】
したがって、残水確認のための追い焚きを間欠的な燃焼で行うと、演算に適用できる有効期間が短くなるのみならず、各有効期間ごとの誤差も大きいので、残水量を的確に求めることがきわめて難しくなる。
【0011】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、通常の追い焚きを効率良く行うことができるとともに、自動湯張りの際、浴槽内の残水量を少ない誤差で求めることのできる一缶多水路型給湯機を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]浴槽(40)内の水の循環する追い焚き流路(31)内の水と給水の通る給湯流路(21)内の水の双方にバーナー(12)からの熱を1つの熱交換器(13)で伝える一缶多水路型給湯機であって、設定された湯量まで前記浴槽(40)に湯張りする際に浴槽(40)内の残水を所定時間追い焚きし、これによって上昇した前記残水の温度差と当該追い焚きによって前記残水に加えた熱量とを基にして浴槽(40)内の残水量を求めるものにおいて、
前記バーナー(12)の燃焼量を制御する燃焼制御手段(51)を備え、
前記燃焼制御手段(51)は、少なくとも前記浴槽(40)内の残水量を確認する際の追い焚きを前記給湯流路(21)内の湯温が所定の許容範囲に収まる燃焼量で前記バーナー(12)を連続的に燃焼させて行い、前記給湯流路(21)内の湯温の変動が所定範囲内に収まる安定状態に入った時点から、湯温が所定温度に到達するまでの間を残水量を調べるための有効期間とし、前記安定状態から湯温の変動幅が大きくなって不安定状態に戻った場合には、再度、安定状態に入ってから有効期間を開始させることを特徴とする一缶多水路型給湯機。
【0013】
[2]浴槽(40)内の水の循環する追い焚き流路(31)内の水と給水の通る給湯流路(21)内の水の双方にバーナー(12)からの熱を1つの熱交換器(13)で伝える一缶多水路型給湯機であって、設定された湯量まで前記浴槽(40)に湯張りする際に浴槽(40)内の残水を所定時間追い焚きし、これによって上昇した前記残水の温度差と当該追い焚きによって前記残水に加えた熱量とを基にして浴槽(40)内の残水量を求めるものにおいて、
前記浴槽(40)内の残水量を確認する際に追い焚きを行う場合とこれ以外で追い焚きを行う場合とで前記バーナー(12)を異なる燃焼モードで燃焼させる燃焼制御手段(51)を備え、
前記燃焼制御手段(51)は、前記残水量を確認する際の追い焚きを前記給湯流路(21)内の湯が沸騰しない範囲の所定燃焼量で前記バーナー(12)を連続的に燃焼させる第1の燃焼モードで行い、前記給湯流路(21)内の湯温の変動が所定範囲内に収まる安定状態に入った時点から、湯温が所定温度に到達するまでの間を残水量を調べるための有効期間とし、前記安定状態からその後湯温の変動幅が大きくなって不安定状態に戻った場合には、再度、安定状態に入ってから有効期間を開始させ、前記残水量を確認する場合以外の追い焚きを前記第1の燃焼モードにおける前記所定燃焼量より大きい燃焼量で前記バーナー(12)を間欠的に燃焼させる第2の燃焼モードで行うことを特徴とする一缶多水路型給湯機。
【0014】
[3]前記燃焼制御手段(51)は前記第2の燃焼モードにおいて、連続的に燃焼させると前記給湯流路(21)内の水が沸騰する燃焼量で前記バーナー(12)を燃焼させるとともに、前記給湯流路(21)内の水が沸騰しないよう前記燃焼量での燃焼を間欠的に行うことを特徴とする[2]記載の一缶多水路型給湯機。
【0015】
[4]前記バーナー(12)は複数の燃焼面(12a、12b)を有し、前記燃焼制御手段(51)は前記第1の燃焼モードにおいてこれら複数の燃焼面(12a、12b)のうちの一部を燃焼させるとともに、前記第2の燃焼モードにおいて前記第1の燃焼モードより多くの燃焼面を燃焼させることを特徴とする[2]または[3]記載の一缶多水路型給湯機。
【0016】
前記本発明は次のように作用する。
燃焼制御手段(51)は、残水量を確認する際の追い焚きを、給湯流路(21)の湯温が所定の許容範囲に収まる燃焼量でバーナー(12)を連続的に燃焼させて行う。これにより、残水量確認のための追い焚きを開始した後、給湯流路(21)内の湯温の変動が所定範囲内に収まって熱効率が比較的安定した時点から1つの長い期間を残水量演算のための有効期間とすることができるので、当該有効期間の開始時点と終了時点の2点で残水の温度を計測すれば良くなり、全体の温度上昇に占める計測誤差の割合が減少し、残水量を少ない誤差で求めることができる。さらに、熱効率が比較的安定した状態から不安定な状態に戻った場合には、再度、熱効率が比較的安定した状態に入ったことが確認されてから有効期間を開始させるので、確実に誤差を少なくすることができる。
【0017】
なお、残水量を確認する場合以外の追い焚きについても連続燃焼で行うようにしても良い。たとえば、給湯流路内の湯が沸騰しないように、燃焼量が大なる期間と燃焼量が小なる期間を交互に切り替えながら連続燃焼させたり、2以上の燃焼面を有する場合には、燃焼面を適宜切り替えることによって部分沸騰を防止し、バーナー(12)全体として見ると連続燃焼が行われるようにしても良い。
【0018】
燃焼制御手段(51)は、残水量を確認する際の追い焚きを給湯流路(21)内の湯が沸騰しない範囲の所定燃焼量でバーナー(12)を連続的に燃焼させる第1の燃焼モードで行い、残水量を確認する場合以外の追い焚き、すなわち、通常状態での追い焚きを、第1の燃焼モードにおける燃焼量より大きい燃焼量でバーナー(12)を間欠的に燃焼させる第2の燃焼モードで行う。
【0019】
残水量確認のための追い焚きをバーナー(12)を連続燃焼させる第1の燃焼モードで行うことにより、残水量確認のための追い焚きを開始した後、給湯流路(21)内の湯温の変動が所定範囲内に収まって熱効率が比較的安定した時点から当該追い焚きを終えるまでの期間を残水量演算のための有効期間とすることができる。また当該有効期間の開始時点と終了時点の2点で残水の温度を計測すれば良くなるので、全体の温度上昇に占める計測誤差の割合が減少し、残水量を少ない誤差で求めることができる。さらに、熱効率が比較的安定した状態から不安定な状態に戻った場合には、再度、熱効率が比較的安定した状態に入ったことが確認されてから有効期間を開始させるので、確実に誤差を少なくすることができる。
【0020】
一方、第2の燃焼モードでは、追い焚き流路(31)側の吸熱比が高くなり、効率よく追い焚きを行うことができる。このように残水量演算の際の追い焚きを第1の燃焼モードで行い、通常の追い焚きを第2の燃焼モードで行うので、少ない誤差で残水量を求めることと通常の追い焚きを効率良く行うこととを両立させることができる。
【0021】
なお、第2の燃焼モードにおいて、連続的に燃焼させると給湯流路(21)内の水が沸騰するような大きい燃焼量でバーナー(12)を燃焼させるとともに、当該燃焼量での燃焼を給湯流路(21)内の水が沸騰しないように間欠的に行うようにする。これにより一層効率よく通常の追い焚きを行うことができる。
【0022】
ここで、バーナー(12)が複数の燃焼面(12a、12b)を有する場合には、第1の燃焼モードにおいてこれら複数の燃焼面(12a、12b)のうちの一部(12a)を燃焼させ、第2の燃焼モードにおいては第1の燃焼モードより多くの燃焼面(12a、12b)を燃焼させるようにしてもよい。第1の燃焼モードにおいて一部の燃焼面だけを燃焼させることにより、より細かく燃焼量を制御することができるとともに、全ての燃焼面を用いる場合より当該燃焼面の炎を大きくできるので、追い焚き側への吸熱効率を高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づき本発明の一実施の形態を説明する。
各図は本発明の一実施の形態を示している。
本発明にかかる一缶多水路型給湯器風呂釜10は、水栓あるいは風呂の浴槽内へ給湯する機能と、浴槽内の湯を追い焚きする機能と、設定温度の湯を目標水位まで浴槽に湯張りする自動湯張り機能とを備えている。図1に示すように、一缶多水路型給湯器風呂釜10は、燃焼室11を備えており、当該燃焼室11の下部には、バーナー12が、燃焼室11の上部には、バーナー12からの熱を給水等に伝える熱交換器13がそれぞれ配置されている。バーナー12は、第1の燃焼面12aと第2の燃焼面12bとで構成されている。
【0024】
熱交換器13には、給湯用の水を流すための給湯用パイプ21と、追い焚き用に浴槽内の水を循環させる追い焚き用循環パイプ31の双方が通っており、熱交換器13はバーナー12からの熱をこれら双方のパイプ21、31内の流体へ伝えて加熱する機能を備えた一缶二水路型になっている。
【0025】
給湯用パイプ21のうち熱交換器13の入側へ通じる給水側流路21aと、熱交換器13の出側から延びる出湯側流路21bの間には、固定バイパス路22と、流量制御弁23の介挿されたバイパス路24が接続されている。熱交換器13で加熱された湯に、固定バイパス路22、バイパス路24を通じて給水を混合するとともに、バイパス比を、流量制御弁23によって制御し得るようになっている。また、給湯用パイプ21の出湯側流路21b側には、出湯の総流量やバイパス比を制御するための流量制御弁25が設けられている。
【0026】
給湯用パイプ21の入口部および出口部の近傍にはそれぞれ、通水の有無や通水量を検知するためのフローセンサ26a、26bが設けられている。また、給湯用パイプ21の入口部近傍には、給水の温度を検知するための入水サーミスタ27が、熱交換器13の出口部近傍には、加熱後の湯温を検知するための熱交サーミスタ28が、さらに給湯用パイプ21の出口部近傍には、出湯温度を検知するための出湯サーミスタ29がそれぞれ取り付けられている。また熱交換器13の給湯フィンパイプのUベンド部には水管サーミスタ28aを設けてある。
【0027】
追い焚き用循環パイプ31は、浴槽40内の水を熱交換器13側へ戻す風呂戻パイプ部31aと、熱交換器13で加熱後の湯を浴槽40へ送り出す風呂往パイプ部31bとから構成されている。風呂戻パイプ部31aの途中には循環ポンプ32と、風呂戻パイプ部31a内の通水の有無を検知する風呂流水スイッチ33が設けられている。また、風呂流水スイッチ33の近傍には、浴槽40側から流入する湯の温度を検知するための風呂温度サーミスタ34が取り付けてある。
【0028】
給湯用パイプ21の出湯側流路21bと、風呂戻パイプ部31aとは、注湯電磁弁35を備えた注湯パイプ36で接続されており、熱交換器13で加熱された給水を注湯パイプ36を介して浴槽40へ注湯することができるようになっている。
【0029】
給排気は、燃焼ファン14によって燃焼室11の下方側から給気を送風することによって強制的に行われ、排気は燃焼室11の上部から排出されるようになっている。バーナー12近傍には、図1では示していない点火装置15が設けてある。またバーナー12へ供給される燃焼ガスは、ガス電磁弁16、元ガス電磁弁17、ガス切替弁18によってオンオフ制御される。ガス切替弁18を開くことにより第1の燃焼面12aと第2の燃焼面12bの双方が燃焼し、ガス切替弁18を閉じ、ガス電磁弁16を開くことで第1の燃焼面12aのみが燃焼するようになっている。さらにバーナー12へ供給される燃焼ガスのガス量は、ガス比例弁19によって調整される。
【0030】
図2は、熱交換器13の断面の一例を示している。図示するように熱交換器13内を給湯用パイプ21および追い焚き用循環パイプ31が貫通している。バーナー12に近い側(図中の下方)に、給湯用パイプ21が配置され、追い焚き用循環パイプ31は給湯用パイプ21の上方に沿って配置されている。また追い焚き用循環パイプ31は給湯用パイプ21よりもバーナー12から遠くに配置されているので、バーナー12の燃焼量が低下し炎の高さが低くなるにつれて追い焚き用循環パイプ31側の吸熱比が低下する。
【0031】
図3は、一缶多水路型給湯器風呂釜10の有する制御基盤の回路構成を示したものである。一缶多水路型給湯器風呂釜10の制御基盤は、燃焼制御手段の機能のほか各種制御の中枢的役割を果たすCPU(中央処理装置)51を備えている。CPU51には、データバスやアドレスバスなど各種バス52を介して各種の回路装置が接続されている。
【0032】
このうち、ROM(リード・オンリ・メモリ)53は、CPU51の実行するプログラムや各種の固定的データを記憶する読み出し専用メモリである。RAM(ランダム・アクセス・メモリ)54は、プログラムを実行する上で、一時的に必要になるデータを記憶するための作業メモリである。
【0033】
バス52には、本体操作部(メインリモコン、風呂リモコン等を含む)55のほか、各種回路装置とCPU51との間で電気信号の入出力を行うための入出力インターフェイス回路部56が接続されている。入出力インターフェイス回路部56には、フローセンサ26a、26b、各種サーミスタ27〜29、34、点火装置15、燃焼ファン14、各種ガス制御弁16〜19、および流量制御弁23、25、注湯電磁弁35および循環ポンプ32を駆動するポンプ駆動回路32aが接続されている。このほか、必要に応じて各種制御装置が入出力インターフェイス回路部56に接続される。
【0034】
次に作用を説明する。
まず、浴槽40への自動湯張り動作について説明する。図4は、浴槽に湯張りを行う際の動作の流れを示している。風呂リモコン等55に設けてある風呂の自動運転スイッチがオンされると(ステップS101;Y)、まず、浴槽40内に存在する残水量の確認動作を行う(ステップS102)。なお、残水確認動作の詳細については後に説明する。
【0035】
残水量確認によって求めた浴槽内の残水量が、予め設定されている湯張り完了時の湯量より少ないときは(ステップS103;N)、その差分を、浴槽40へ注湯すべき湯量として求め、当該量の湯を浴槽40へ注湯する(ステップS104)。注湯終了後、あるいは当初から必要湯量があったときは(ステップS103;Y)、浴槽内の湯温が、設定されている沸き上がり温度に達しているか否かを調べる(ステップS105)。
【0036】
浴槽40内の湯温が、設定温度より低いときは(ステップS105;Y)、追い焚きを行い(ステップS106)、設定温度になったとき(ステップS105;N)、お知らせ音等を鳴らし、自動湯張りの動作を終了する(エンド)。
【0037】
残水量は、追い焚きを開始してから所定時間の経過した時と追い焚き動作の終了した時にそれぞれ浴槽40からのもどり湯の温度を測定し、それらの温度差と、当該追い焚きによって残水へ加えた熱量とを基にして次式で求めている。
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、Vは、浴槽内の残水量(リットル)、Isはインプット(Kcal/hr)、tは燃焼時間(hr)、ηは熱効率(%)、cは水の比熱(Kcal/Kg℃)、T1は追い焚き前の残水の水温、T2は追い焚き後の残水の水温をそれぞれ示している。
【0040】
(1)式を基にして少ない誤差で残水量を求めるためには、風呂温度サーミスタ34の検温する温度が、浴槽内の平均湯温にできるだけ近いことが望ましい。また検温の間に浴槽内の残水へ加えた熱量をできるだけ正確に把握しておくことが必要になる。
【0041】
先に説明したように、バーナー12を点火した後しばらくの間は、熱交換器13や給湯用パイプ21を加熱するためにバーナーから熱量が消費されるので熱効率は刻々と変化し不安定な状態にある。一方、バーナー12を点火してから所定時間の経過した後は、熱交換器13等が既に十分熱くなっているので、バーナー12から発する熱量のうち追い焚き用循環パイプ31側の吸熱する熱量の比率(熱効率)は安定する。
【0042】
したがって、残水量を演算するための追い焚き期間中、バーナー12の燃焼を連続的に行い、熱効率の安定した有効期間を長く確保することが望ましい。ところが、一缶多水路型の場合、バーナー12を燃焼させると給湯用パイプ21と追い焚き用循環パイプ31の双方が同時に加熱されるので、給湯用パイプ21内の給水が流れない状態でバーナー12を大きい燃焼量で燃やし続けると、給湯用パイプ21内の水が沸騰してしまい好ましくない。
【0043】
また風呂釜から浴槽に出た加熱後の湯が浴槽40内で十分に攪拌されず、すぐに風呂戻パイプ部31aへ戻るようなことが頻繁に起こるので、浴槽40から戻ってくる湯の実測温度は刻々と上下に変動し、浴槽40内の湯全体を平均温度と一致しないことが多い。浴槽40内の湯の平均温度と風呂温度サーミスタ34によって実測される湯温との誤差が一定範囲にあるとすると、追い焚き前に行った検温時の湯温と追い焚き後に行った検温時の湯温の温度差が大きいほど、誤差の占める比率が小さくなる。
【0044】
そこで、本実施の形態における一缶多水路型給湯器風呂釜10では、残水確認のための追い焚きを給湯用パイプ21内の水が沸騰しない範囲の小さい燃焼量に抑制することによって連続的に行うようにしている。その結果、熱効率の安定した有効期間が1つの長い期間になるので、残水の検温は、追い焚き開始時と追い焚き終了時の2点だけで行えば良くなり、上昇温度に占める検温誤差の割合が小さくなり、(1)式の演算で残水量を精度良く求めることができる。
【0045】
図5は、自動湯張りの際に行う残水量確認動作の流れを示している。まず、残水確認のための追い焚きを第1の燃焼モードで開始する(ステップS201)。第1の燃焼モードにおける燃焼量は、通水の無い状態で給湯用パイプ21内で沸騰の起こらない値であり、予め実験にて定めたものである。残水確認のための追い焚きを開始してから、熱効率が安定化するまでに要する時間として予め定めた所定時間が経過するのを待った後(ステップS202;Y)、風呂温度サーミスタ34で浴槽40からの戻り湯の温度(T1)を検温する(ステップS203)。
【0046】
その後、第1の燃焼モードで追い焚きを一定時間連続的に行ってから追い焚き動作を停止し(ステップS204;Y)、追い焚き終了時における浴槽40からの戻り湯の温度(T2)を検温する(ステップS205)。その後、(1)式を基にして残水量の演算を行う(ステップS206)。なお、第1の燃焼モードで追い焚きを行う時間の長さを、戻り湯の温度を基準に定めるようにしてもよい。たとえば、湯温(T1)に比べて20℃上昇するまでの期間にする等である。
【0047】
ここで、残水量の演算対象となる有効期間は、ステップS203でもどり湯温(T1)を検温した時点からステップS205でもどり湯温(T2)を検温する直前、すなわち追い焚きを停止する時点までの期間、あるいは(T1)に対して湯温が20℃等上昇するまでの期間となる。当該有効期間においてバーナー12へのインプット(Is)および熱効率(η)はほぼ一定であるので、(1)式に基づく演算を行うことにより、少ない誤差で残水量を求めることができる。
【0048】
図6は、残水確認のための追い焚き中における残水温度の変化を示したものである。残水量の演算対象になる有効期間61は、バーナー12を点火した時刻(t1)から熱効率がほぼ安定するために要する所定時間の経過した時刻(t2)から開始し、残水確認のための追い焚きを停止させた時刻(t3)までである。有効期間61の間、残水の平均温度62は緩やかに上昇するが、風呂温度サーミスタ34で実測される温度63は、細かく上下に変動している。
【0049】
追い焚き終了時に行う検温で実測される湯温は、浴槽40内の残水の平均湯温に対して所定の誤差範囲64を有しているが、有効期間61全体における温度上昇幅65が大きいので、検温誤差の占める割合が小さくなり、許容範囲の精度で残水量を算出することができる。
【0050】
なお、残水確認時以外における追い焚きは、第1の燃焼モードにおける燃焼量よりもかなり大きい燃焼量での燃焼を、給湯用パイプ21内で沸騰が生じないよう間欠的に行う第2の燃焼モードで行われる。ここでは、第2の燃焼モードにおいて第1の燃焼面12a、第2の燃焼面12bの双方を燃焼させている。当該燃焼量で、一定時間以上連続的に燃焼を行うと給湯用パイプ21内で沸騰が生じるが、熱交換器13の給湯フィンパイプのUベンド部に設けられた水管サーミスタ28aで検知される温度を基にして沸騰が生じないよう、バーナー12を間欠燃焼させている。「沸騰が生じない範囲」とは給水圧との関係から100℃を越える場合もある。なぜならば、給水圧が10kg/平方cm以上あることもめずらしくないからである。なお、第2の燃焼モードにおける燃焼時間と燃焼を停止させる時間とを予め実験等によって求めておき、これに従って間欠燃焼を行うようにしてもよい。
【0051】
図7に示すように、燃焼制御手段(CPU51)は、追い焚き動作を行うとき(ステップS301;Y)、これが残水量確認のための追い焚きか否かを判定し(ステップS302)、残水量確認中における追い焚きの場合には(ステップS302;Y)、先に説明した第1の燃焼モードでバーナー12を燃焼させる(ステップS303)。一方、今回の追い焚きが、たとえば、図4のステップS106におけるような通常の追い焚き動作の場合には(ステップS302;N)、第2の燃焼モードでバーナー12を燃焼させる。
【0052】
このように、比較的燃焼量の大きい第2の燃焼モードで通常の追い焚き運転を行うので、先に説明した通り、追い焚き用循環パイプ31の吸熱比が高くなり、追い焚きを効率良く行うことができる。また、残水確認のときの追い焚きと通常の追い焚きとで燃焼モードを切り替えるので、少ない誤差で残水量を求めることと、効率よく通常の追い焚きを行うことの双方を両立させることが可能になっている。
【0053】
以上説明した実施の形態では、第1の燃焼モードにおいて第1の燃焼面12aのみを燃焼するようにしたが、給湯用パイプ21内で沸騰の生じない燃焼量如何によっては、バーナー12の全面を少ないインプットで燃焼させるようにしてもよい。また、残水確認のための追い焚き終了時に行う検温を、バーナー12を燃焼させない状態で循環ポンプ32を30秒程度動作させて浴槽40内の湯を攪拌し、湯温の平均化を図ってから行うようにしてもよい。
【0054】
また、実施の形態では、残水確認を行う場合以外の追い焚きを間欠燃焼で行うようにしたが、残水確認を行う場合以外もバーナー12を連続燃焼させるようにしても良い。たとえば、図8に示すように、追い焚き運転を開始してから、水管サーミスタ28aの検出する温度が予め定めた温度Taになるまでは、最大燃焼量等でバーナー12を燃焼させ、その後、除々に燃焼量を低下させて、水管サーミスタ28aの検知する湯温が許容上限温度Tbを越えないように燃焼量を制御することで、バーナー12を連続燃焼させてもよい。
【0055】
許容上限温度Tbは、たとえば、給湯流路側とバイパス路側との混合比が7:3であって、出湯設定温度が43℃でその許容温度誤差が±3℃の場合には、46℃=0.7×(許容上限温度Tb)+0.3×給水温度、の式を満足する温度になる。給水温度が15℃であるとすると、Tbは59.2℃になる。また連続燃焼で追い焚きする場合の下限温度は、40℃=0.7×(許容下限温度)+0.3×給水温度、の式を満足する温度となり、給水温度が15℃とすると下限温度は50.7℃になる。
【0056】
追い焚き期間中、終始連続燃焼させる場合には、水管サーミスタ28aの検知する湯温の変動が所定範囲内に収まる安定状態に入った時点から、湯温が沸き上げ目標温度に到達するまでの間を残水量を調べるための有効期間とすることができる。なお、湯温の変動幅が所定範囲内に収まる状態が2分以上続いたとき、安定状態に入ったものと判定するようにすればよい。
【0057】
また、安定状態に入った時点から湯温が20℃上昇するまでの間を有効期間としてもよい。なお、安定状態に入ったことを一旦確認したが、その後、湯温の変動幅が大きくなり不安定な状態に戻った場合には、それまでの計測を一旦、破棄し、再度、安定状態に入ったことが確認されてから有効期間を開始させることが望ましい。
【0058】
このほか、図9に示すごとく、給湯流路内の湯が沸騰しないように、燃焼量が大なる期間81と燃焼量が小なる期間82とを交互に切り替えながら連続燃焼させたり、2以上の燃焼面を有する場合には、図10に示すように燃焼面を交互に切り替える等によって給湯流路内での部分沸騰を防止し、バーナー12全体として見ると連続燃焼が行われるようにしても良い。
【0059】
また実施の形態では一缶二水路型の給湯と追い焚きの例を示したが、これに限定されず、たとえば、循環経路側として床暖房等の回路であってもかまわない。したがって、給湯と追い焚きと暖房の各流路を共通の熱交換器で加熱する一缶多水路型給湯機でも本願は有効である。なお、バーナーへ供給する燃料はガス以外に石油等であってもかまわない。また、石油等ではガンタイプバーナーのようなバーナーレスタイプなどでもよい。
【0060】
【発明の効果】
本発明にかかる一缶多水路型給湯器風呂釜によれば、残水量を確認する際の追い焚きを給湯流路内の湯が沸騰しない範囲の所定燃焼量でバーナーを連続的に燃焼させる第1の燃焼モードで行い、残水量を確認する場合以外の追い焚きを第1の燃焼モードにおける所定燃焼量より大きい燃焼量でバーナーを間欠的に燃焼させる第2の燃焼モードで行うなど、少なくとも残水量確認用の追い焚き中にバーナーを連続燃焼させることにしたので、通常の追い焚きを効率良く行うことができるとともに、自動湯張りの際、浴槽内の残水量を少ない誤差で求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る一缶多水路型給湯器風呂釜を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る一缶多水路型給湯器風呂釜の熱交換器を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る一缶多水路型給湯器風呂釜の有する制御基盤の回路構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る一缶多水路型給湯器風呂釜が自動湯張りの際に行う動作の流れを示す流れ図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る一缶多水路型給湯器風呂釜が自動湯張りの際に行う残水量確認動作の流れを示す流れ図である。
【図6】残水確認のための追い焚き中における残水の温度変化の様子を示した説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態に係る一缶多水路型給湯器風呂釜がバーナーの燃焼モードを切り替える際の動作の流れを示す流れ図である。
【図8】燃焼量を除々に低下させるようにしてバーナーを連続燃焼させた場合における湯温の変化と燃焼量との関係を示す説明図である。
【図9】大燃焼期間と小燃焼期間とを交互に切り替えて連続燃焼させた場合のバーナーの燃焼量を示す説明図である。
【図10】燃焼面を交互に切り替えることで見かけ上連続燃焼させた場合の燃焼状態を示す説明図である。
【図11】残水量確認の際にバーナーを間欠燃焼させた場合における残水の温度変化の様子を示す説明図である。
【図12】残水量確認の際にバーナーを間欠燃焼させた場合における残水の温度変化の様子を拡大して示した説明図である。
【符号の説明】
10…一缶多水路型給湯機
12…バーナー
12a…第1の燃焼面
12b…第2の燃焼面
13…熱交換器
15…点火装置
16…ガス電磁弁
17…元ガス電磁弁
18…ガス切替弁
19…ガス比例弁
21…給湯用パイプ
21a…給水側流路
21b…出湯側流路
27…入水サーミスタ
28…熱交サーミスタ
28a…水管サーミスタ
29…出湯サーミスタ
31…追い焚き用循環パイプ
31a…風呂戻パイプ部
31b…風呂往パイプ部
32…循環ポンプ
33…風呂流水スイッチ
34…風呂温度サーミスタ
35…注湯電磁弁
36…注湯パイプ
40…浴槽
51…CPU(燃焼制御手段)
Claims (4)
- 浴槽内の水の循環する追い焚き流路内の水と給水の通る給湯流路内の水の双方にバーナーからの熱を1つの熱交換器で伝える一缶多水路型給湯機であって、設定された湯量まで前記浴槽に湯張りする際に浴槽内の残水を所定時間追い焚きし、これによって上昇した前記残水の温度差と当該追い焚きによって前記残水に加えた熱量とを基にして浴槽内の残水量を求めるものにおいて、
前記バーナーの燃焼量を制御する燃焼制御手段を備え、
前記燃焼制御手段は、少なくとも前記浴槽内の残水量を確認する際の追い焚きを前記給湯流路内の湯温が所定の許容範囲に収まる燃焼量で前記バーナーを連続的に燃焼させて行い、前記給湯流路内の湯温の変動が所定範囲内に収まる安定状態に入った時点から、湯温が所定温度に到達するまでの間を残水量を調べるための有効期間とし、前記安定状態から湯温の変動幅が大きくなって不安定状態に戻った場合には、再度、安定状態に入ってから有効期間を開始させることを特徴とする一缶多水路型給湯機。 - 浴槽内の水の循環する追い焚き流路内の水と給水の通る給湯流路内の水の双方にバーナーからの熱を1つの熱交換器で伝える一缶多水路型給湯機であって、設定された湯量まで前記浴槽に湯張りする際に浴槽内の残水を所定時間追い焚きし、これによって上昇した前記残水の温度差と当該追い焚きによって前記残水に加えた熱量とを基にして浴槽内の残水量を求めるものにおいて、
前記浴槽内の残水量を確認する際に追い焚きを行う場合とこれ以外で追い焚きを行う場合とで前記バーナーを異なる燃焼モードで燃焼させる燃焼制御手段を備え、
前記燃焼制御手段は、前記残水量を確認する際の追い焚きを前記給湯流路内の湯が沸騰しない範囲の所定燃焼量で前記バーナーを連続的に燃焼させる第1の燃焼モードで行い、前記給湯流路内の湯温の変動が所定範囲内に収まる安定状態に入った時点から、湯温が所定温度に到達するまでの間を残水量を調べるための有効期間とし、前記安定状態からその後湯温の変動幅が大きくなって不安定状態に戻った場合には、再度、安定状態に入ってから有効期間を開始させ、前記残水量を確認する場合以外の追い焚きを前記第1の燃焼モードにおける前記所定燃焼量より大きい燃焼量で前記バーナーを間欠的に燃焼させる第2の燃焼モードで行うことを特徴とする一缶多水路型給湯機。 - 前記燃焼制御手段は前記第2の燃焼モードにおいて、連続的に燃焼させると前記給湯流路内の水が沸騰する燃焼量で前記バーナーを燃焼させるとともに、前記給湯流路内の水が沸騰しないよう前記燃焼量での燃焼を間欠的に行うことを特徴とする請求項2記載の一缶多水路型給湯機。
- 前記バーナーは複数の燃焼面を有し、前記燃焼制御手段は前記第1の燃焼モードにおいてこれら複数の燃焼面のうちの一部を燃焼させるとともに、前記第2の燃焼モードにおいて前記第1の燃焼モードより多くの燃焼面を燃焼させることを特徴とする請求項2または3記載の一缶多水路型給湯機。
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