JP3753849B2 - 一方向クラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一方向クラッチにおけるスプラグあるいはローラのクラウニング形状の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、内輪と外輪との相対的な一方向への回転を許容する一方、相対的な他方向への回転を阻止する一方向クラッチとして、図9に示すようなスプラグ式の一方向クラッチがある。この一方向クラッチ1は、一方が他方に対して相対的に回転する内輪2と外輪3とを有し、両輪2,3間には環状の外側保持器4と内側保持器5とに保持されたスプラグ6が複数介設されている。
【0003】
上記スプラグ6は、1つまたは2以上の曲率半径で構成されて内輪2の外周面および外輪3の内周面に線接触する2つの摺接面6a,6bを有して、概略瓢箪型に形成されている。そして、上記両摺接面6a,6bには、上記両輪2,3の間隔よりの大きな直径の箇所(以下、大径部と言う)と小さな直径の箇所(以下、小径部と言う)とが設けられている。また、スプラグ6は、環状のリボンスプリング7に挿入されており、リボンスプリング7のばね作用によって上記大径部が両輪2,3の周面に摺接しようとする矢印Cの方向に付勢されている。
【0004】
上記構成の一方向クラッチ1は、上記内輪2と外輪3とが相対的に矢印Dの方向に回転しようとすると、スプラグ6は両輪2,3との摩擦によって矢印Cとは反対方向に、つまり、上記大径部が両輪2,3の周面から離間する方向に転動される。その結果、両輪2,3は回転可能となる。一方、両輪2,3が相対的に矢印Dとは反対方向に回転しようとすると、スプラグ6は矢印Cの方向に、つまり、上記大径部が両輪2,3の周面に摺接する方向に転動される。その結果、スプラグ6は、両輪2,3の間に食い込むことになり、両輪2,3は回転不可能となる。こうして、内輪2と外輪3との相対的な一方向への回転が許容される一方、相対的な他方向への回転が阻止されるのである。
【0005】
ところで、上記スプラグ式の一方向クラッチにおいては、内輪2と外輪3との間に配置されるスプラグ6の摺接面6a,6bにおける転動方向Cと直交する方向(以下、軸方向と言う)への断面形状には、図10に示すように、接触圧力の集中を避けるためにクラウニングと呼ばれるわずかな膨らみを形成するようにしている。このようなクラウニングの形状として、ルンドベルグ(Lundberg)は、接触圧力を転動体の軸方向に均一にするようなクラウニング形状を提案しており、現在ではこのクラウニング形状が最適とされている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記ルンドベルグのクラウニング形状によれば、確かにスプラグ6の軸方向へ均一な接触圧力分布を呈する。ところが、実際にスプラグ6が受けるダメージを評価すると、破壊,金属疲労や塑性変形等の材料が受けるダメージの軸方向への分布は一様でないという問題がある。ところで、スプラグ6と内輪2またはスプラグ6と外輪3のように互いに線接触して摩擦や滑りが生ずる2つの相互接触部材においては、両相互接触部材の接触面における最適間隔決定の問題を、図4に示すような有限幅円筒25と半無限体(以下、単に平面と言う)26との相対接近量(相対隙間)問題に置き換えることができる。図4において、X,Y,Zは無次元座標であり、X軸はx/b,Y軸はy/b,Z軸はz/bである。但し、x,y,zは座標であり、bは回転方向へのヘルツ(Hertz)の接触幅の1/2である。
【0007】
図11は、上記ルンドベルグのクラウニング形状を適用した有限幅円筒25に発生する軸方向に均一な接触圧力下での相当応力σEをヘルツの最大接触応力Phで無次元化した無次元化相当応力ΣE(=σE/Ph)の分布を示す。ここで、相当応力σEとは、金属材料の降伏条件の一種のフォン・ミーゼス(Von Mises)の降伏条件に用いられる応力成分である。図11より、上記有限幅円筒25の内部における破壊や金属疲労や塑性変形等の材料が受けるダメージを評価する無次元化相当応力ΣEは、回転軸から半径方向に有効長さの0.8倍の箇所Aに帯状に強くあらわれる。そして、特に、上記帯状箇所Aのうちの側面近傍の領域Bで降伏応力(=0.60)を越える強い値を示し、領域Bから降伏が始まることが分かる。このように、例え、接触圧力分布を軸方向に均一にしたとしても、必ずしも3次元の相当応力分布は均一とはならず、相当応力σEが集中する箇所が存在する。そのために、上記スプラグ6に最大負荷能力を与えることができないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明の目的は、相当応力または最大剪断応力等で表される材料が受けるダメージの集中を無くして最大負荷能力を高めることができる一方向クラッチを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、内輪と,外輪と,上記内輪と外輪との間に配列されて上記内輪および外輪の相対的な一方向のみへの回転力を伝達するスプラグを有する一方向クラッチにおいて、上記スプラグと内輪との接触面の間隔,および,上記スプラグと外輪との接触面との間隔における上記スプラグの転動方向に直交する方向への変化が、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等の材料が受けるダメージを評価する物理量が均一になるように設定されており、上記各接触面の間隔における上記方向への変化が、実質的に下記の式で表されることを特徴としている。
【数3】
h cr (y) = ( 12 . 89k・σ Emax 2 ・R /( C 1 ・E ' 2 ))
・ ln( 1 /( 1− ( 2y /( C 1 ・L we )) 2 ))
あるいは
h cr (y) = ( 44 . 44k・τ max 2 ・R /( C 1 ・E ' 2 ))
・ ln( 1 /( 1− ( 2y /( C 1 L we )) 2 ))
尚、h cr (y): 上記方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
k : 加工公差に関する係数
R : 上記転動方向への等価半径
C 2 : 必要最大間隔の加工公差に関する係数
E ': 等価ヤング率
L we : 上記スプラグの有効長
σ Emax : 材料の圧縮に関する強度
τ max : 材料の最大剪断応力に関する強度
【0010】
上記構成によれば、上記スプラグと内輪との接触面の間隔、および、上記スプラグと外輪との接触面の間隔における上記方向への変化は、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等で表される材料が受けるダメージが均一になるように設定されている。したがって、上記相当応力または最大剪断応力等で表される材料が受けるダメージが集中する箇所が存在せず、その分だけ上記スプラグの最大負荷能力が高められる。
【0011】
さらに、上記転動方向への等価半径R、等価ヤング率E ' 、上記スプラグの有効長L we 、材料の圧縮に関する強度σ Emax 、および、材料の最大剪断応力に関する強度τ max が分かれば、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布が均一になるような上記各接触面の間隔が容易に得られる。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、内輪と,外輪と,上記内輪と外輪との間に配列されて転動するローラを有すると共に,上記内輪の外周面および外輪の内周面の少なくとも一方に,上記両輪の間隔が周方向に一方向側が上記ローラの径より狭く他方向側が上記ローラの径より広くなるような曲面が形成されており,上記内輪および外輪の相対的な上記一方向へのみ回転力を伝達する一方向クラッチにおいて、上記ローラと内輪との接触面の間隔,および,上記ローラと外輪との接触面との間隔における上記ローラの軸方向への変化が、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等の材料が受けるダメージを評価する物理量が均一になるように設定されており、上記各接触面の間隔における上記方向への変化が、実質的に下記の式で表されることを特徴としている。
【数4】
h cr (y) = ( 12 . 89k・σ Emax 2 ・R /( C 1 ・E ' 2 ))
・ ln( 1 /( 1− ( 2y /( C 1 ・L we )) 2 ))
あるいは
h cr (y) = ( 44 . 44k・τ max 2 ・R /( C 1 ・E ' 2 ))
・ ln( 1 /( 1− ( 2y /( C 1 L we )) 2 ))
尚、h cr (y): 上記方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
k : 加工公差に関する係数
R : 上記転動方向への等価半径
C 2 : 必要最大間隔の加工公差に関する係数
E ': 等価ヤング率
L we : 上記ローラの有効長
σ Emax : 材料の圧縮に関する強度
τ max : 材料の最大剪断応力に関する強度
【0013】
上記構成によれば、上記ローラと内輪との接触面の間隔、および、上記ローラと外輪との接触面の間隔における上記方向への変化は、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等で表される材料が受けるダメージが均一になるように設定されている。したがって、上記相当応力または最大剪断応力等で表される材料が受けるダメージが集中する箇所が存在せず、その分だけ上記ローラの最大負荷能力が高められる。
【0014】
さらに、上記転動方向への等価半径R、等価ヤング率E'、上記ローラの有効長Lwe、材料の圧縮に関する強度σEmax、および、材料の最大剪断応力に関する強度τmaxが分かれば、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布が均一になるような上記各接触面の間隔が容易に得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。図1は、本実施の形態の一方向クラッチの一例としてのスプラグ式の一方向クラッチの部分縦断面図である。内輪12,外輪13,外側保持器14,内側保持器15およびリボンスプリング17は、図9における内輪2,外輪3,外側保持器4,内側保持器5およびリボンスプリング7と同じ構成を有して、同様に動作する。また、スプラグ16は、図9におけるスプラグ6と基本構造は同じであり、内輪12と外輪13との間に介装される。図2は、スプラグ16の斜視図である。
【0016】
上記スプラグ16と内輪12との接触面の相対隙間の問題は、図4に示すような有限幅円筒25と平面26の隙間の問題に置き換えることができる。同様に、スプラグ16と外輪13との接触面の相対隙間の問題も、図4に示す力学モデルに置き換えることができる。そこで、以下、スプラグ16と内輪12との接触面の相対隙間、および、スプラグ16と外輪13との接触面の相対隙間を、図4の力学モデルを用いて説明する。
【0017】
上述したように、図4に示す有限幅円筒25と平面26との相対隙間においては、有限幅円筒25に対する接触圧力分布を有限幅円筒25の軸方向に均一にしたとしても、3次元の相当圧力分布は均一にはならない。そこで、本実施の形態においては、上述の点に着目して、有限幅円筒25の軸方向への相当応力分布が均一になるように、有限幅円筒25のクラウニング形状(つまり、スプラグ16のクラウニング形状)を決定するのである。
【0018】
先ず、上記有限幅円筒25に任意のクラウニング形状与えて、乾燥接触問題における基礎式を用いて接触2物体間(つまり、有限幅円筒25と平面26との間)の相対距離Hを求め、接触圧力を求める。そして、得られた接触圧力の分布を用いて3次元の内部応力分布を得、この3次元内部応力分布から次式によって相当応力を求める。
σE=[1/2{(σX−σY)2+(σY−σZ)2+(σZ−σX)2
+6τXY 2+6τYZ 2+6τZX 2}0.5]
ここで、 σE:相当応力
σX:YZ面に作用する垂直応力成分
σY:XZ面に作用する垂直応力成分
σZ:XY面に作用する垂直応力成分
τXY:XY面に作用する剪断応力成分
τYZ:YZ面に作用する剪断応力成分
τZX:ZX面に作用する剪断応力成分
【0019】
そして、こうして得られた相当応力σEの分布が有限幅円筒25の軸方向に均一になるようにクラウニング形状を変更し、上述の解析を繰り返す。こうして、材料内部のダメージが軸方向に均一に分布するようにクラウニング形状を決定するのである。
【0020】
上述のようにして導出されたクラウニング形状の式は、次のような式である。
【数5】
hcr(y)=(12.89k・σEmax 2・R/(C1・E'2))
・ln(1/(1−(2y/(C1・Lwe))2))
あるいは
hcr(y)=(44.44k・τmax 2・R/(C1・E'2))
・ln(1/(1−(2y/(C1Lwe))2))
尚、hcr(y):位置yにおけるクラウニング量
k:加工公差に関する係数
(k=1.2〜15:この範囲内で同等の効果を呈する)
R:相対移動方向への等価半径
1/R=1/r1+1/r2
r1,r2:相対移動方向への物体1,2の曲率半径
C2:必要最大間隔の加工公差に関する係数
(C2=0.6〜8)
E':等価ヤング率
1/E'=1/2{(1−ν1 2)/E1+(1+ν2 2)/E2}
E1,E2:物体1,2のヤング率
ν1,ν2:物体1,2のポアソン比
Lwe: 有限幅円筒25の有効長
σEmax:材料の圧縮に関する強度(圧縮降伏応力または圧縮疲労限)
τmax:材料の最大剪断応力に関する強度(圧縮降伏応力または圧縮疲労限)
【0021】
図3は、上記クラウニング形状の式によって算出された有限幅円筒25のクラウニング量の一例を示す図である。また、図5は、上記クラウニング形状の式が適用された有限幅円筒25における接触圧力pをヘルツの最大接触応力Phで無次元化した無次元化接触圧力P(=p/Ph)の分布である。図5(a)はY=0におけるZX面の接触圧力分布であり、図5(b)はX=0におけるYZ面の接触圧力分布である。また、図6は、図11の場合と同じ荷重条件下での軸方向への無次元化相当応力ΣEの分布を示す。
【0022】
図5(b)から分かる様に、本実施の形態におけるクラウニング形状によれば、有限幅円筒25の軸方向の接触圧力分布は、中央部から軸方向両端のエッジ部に向かって少しずつ減少し、上記エッジ部で曲線的に低下するようになっている。
【0023】
したがって、図6に示すY軸方向への無次元化相当応力ΣEの分布から分かるように、上記ルンドベルグのクラウニング形状を適用した場合の上記エッジ部での無次元化相当応力ΣEの上昇(図11参照)が無くなり、そのまま曲線的に減少している。その結果、図11に見られるような上記帯状領域Aの側面近傍に現れる降伏応力を越える強い相当応力の集中が回避される。
【0024】
通常、上記内輪12の軌道面および外輪13の軌道面は円筒状に形成されている。したがって、図2に示すように、スプラグ16の摺接面18における回動方向Cに直交する方向(以下、軸方向と言う)への断面形状を上記式で求められるクラウニング形状にすれば、上記軸方向への上記相当応力分布を均一にすることができ、材料内部のダメージが集中する箇所を無くすことがきるのである。尚、内輪12の軌道面および外輪13の軌道面が円筒状でない場合には、スプラグ16と内輪12との接触面の相対隙間、および、スプラグ16と外輪13との接触面の相対隙間が、上記式で求められる形状になるようにすればよい。
【0025】
上述のように、本実施の形態においては、スプラグ式の一方向クラッチにおける上記スプラグ16と内輪12との接触面の隙間、および、スプラグ16と外輪13との接触面の隙間を、スプラグ16の軸方向への無次元化相当応力ΣEの分布を均一にするように決定している。したがって、スプラグ16の軸方向両端エッジ部における無次元化相当応力ΣEの集中を防止できる。すなわち、本実施の形態によれば、無次元化相当応力ΣEの集中が無くなる分だけスプラグ16の静的最大負荷容量及び動的最大負荷容量を高めることができるのである。したがって、何らかの原因で、スプラグ16が内輪12と外輪13との間に食い込んだ場合におけるスプラグ16の内部破壊や圧痕の発生が極力抑えられる。
【0026】
尚、上記実施の形態においてはスプラグ式の一方向クラッチを例に説明しているが、この発明はこれに限定されるものではない。要は、内輪および外輪の軌道面と線接触する相互接触部材を有し、この相互接触部材によって両輪の一方向への相対的な回転が阻止される一方向クラッチであればよく、例えば、ローラ式の一方向クラッチ等にも適用可能である。
【0027】
図7は、上記ローラ式の一方向クラッチの縦断面図である。この一方向クラッチ31は、円周方向に一方を狭く他方を広く形成したカム溝37と空間38とが内周面に形成された外輪32と内輪33を有している。そして、外輪32と内輪33との間には、ポケット40と外輪32の空間38内に挿入される凸部41とが形成された環状の保持器34が配置され、保持器34のポケット40内にはローラ35が収納されて外輪32のカム溝37内に保持されている。外輪32の空間32内にはばね36が縮装されて、保持器34の凸部41を矢印Eとは反対側に付勢している。上記構成において、通常はローラ35が保持器34によってカム溝11の狭い方に押し付けられているので、外輪32,保持器34および内輪33はロック状態にある。したがって、この状態で外輪32が内輪33に対して相対的に矢印E方向に回転すると、外輪32,保持器34および内輪33は一体となって回転し、内輪33も矢印Eの方向に回転する。これに対して、外輪32が内輪33に対して相対的に矢印Eとは反対方向にばね36の付勢力に抗して回転した場合には、外輪32,保持器34および内輪33のロックが解除され、ローラ35はカム溝37の広い方で空転する。したがって、内輪33は回転しないのである。
【0028】
図8は、上記保持器34の展開平面図である。本実施の形態においては、ローラ35の外周面39の軸方向への断面形状を、上記式で求められるクラウニング形状にする。こうして、上記軸方向への上記相当応力分布を均一にして、材料内部のダメージが集中する箇所を無くすのである。尚、カム溝37の内周面および内輪33の軌道面が軸に平行な面でない場合には、ローラ35とカム溝37との接触面の相対隙間、および、ローラ35と内輪33との接触面の相対隙間におけるローラ35の軸方向への変化が、上記式で求められる形状になるようにすればよい。
【0029】
【発明の効果】
以上より明らかなように、請求項1に係る発明の一方向クラッチでは、スプラグと内輪との接触面の間隔、および、上記スプラグと外輪との接触面との間隔における上記スプラグの転動方向に直交する方向への変化を、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等の材料が受けるダメージを評価する物理量が均一になるように設定したので、上記相当応力または最大剪断応力等で表される材料が受けるダメージが集中する箇所が存在せず、その分だけ上記スプラグの静的最大負荷容量および動的最大負荷容量を高めることができる。さらに、上記スプラグの耐圧痕性や寿命の向上を図ることができる。
【0030】
さらに、上記各接触面の間隔における上記方向への変化を実質的に下記の式で表したので、転動方向への等価半径R、等価ヤング率E ' 、スプラグの有効長L we 、材料の圧縮に関する強度σ Emax 、および、材料の最大剪断応力に関する強度τ max が分かれば、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布が均一になるような上記各接触面の間隔を容易に得ることができる。
【数6】
h cr (y) = ( 12 . 89k・σ Emax 2 ・R /( C 1 ・E ' 2 ))
・ ln( 1 /( 1− ( 2y /( C 1 ・L we )) 2 ))
あるいは
h cr (y) = ( 44 . 44k・τ max 2 ・R /( C 1 ・E ' 2 ))
・ ln( 1 /( 1− ( 2y /( C 1 L we )) 2 ))
尚、h cr (y): 上記方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
k : 加工公差に関する係数
C 2 : 必要最大間隔の加工公差に関する係数
【0031】
また、請求項2に係る発明の一方向クラッチは、ローラと内輪との接触面の間隔、および、上記ローラと外輪との接触面との間隔における上記ローラの軸方向への変化を、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等の材料が受けるダメージを評価する物理量が均一になるように設定したので、上記相当応力または最大剪断応力等で表される材料が受けるダメージが集中する箇所が存在せず、その分だけ上記ローラの静的最大負荷容量および動的最大負荷容量を高めることができる。さらに、上記ローラの耐圧痕性や寿命の向上を図ることができる。
【0032】
さらに、上記各接触面の間隔における上記方向への変化を実質的に下記の式で表したので、転動方向への等価半径R、等価ヤング率E'、ローラの有効長Lwe、材料の圧縮に関する強度σEmax、および、材料の最大剪断応力に関する強度τmaxが分かれば、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布が均一になるような上記各接触面の間隔を容易に得ることができる。
【数7】
hcr(y)=(12.89k・σEmax 2・R/(C1・E'2))
・ln(1/(1−(2y/(C1・Lwe))2))
あるいは
hcr(y)=(44.44k・τmax 2・R/(C1・E'2))
・ln(1/(1−(2y/(C1Lwe))2))
尚、hcr(y):上記方向への位置yにおける2つの相互接触部材の接触面の間隔
k:加工公差に関する係数
C2:必要最大間隔の加工公差に関する係数
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一方向クラッチの一例としてのスプラグ式一方向クラッチの部分縦断面図である。
【図2】 図1におけるスプラグの斜視図である。
【図3】 図1におけるスプラグに適用されるクラウニング量の一例を示す図である。
【図4】 図1におけるスプラグに関する力学モデルを示す図である。
【図5】 図4における有限幅円筒の接触圧力分布を示す図である。
【図6】 図4における有限幅円筒の無次元化相当応力分布を示す図である。
【図7】 ローラ式一方向クラッチの縦断面図である。
【図8】 図7における保持器の展開平面図である。
【図9】 従来のスプラグ式一方向クラッチの部分縦断面図である。
【図10】 図9におけるスプラグの斜視図である。
【図11】 ルンドベルグのクラウニング形状を適用した有限幅円筒における図6と同じ荷重条件下での無次元化相当応力分布を示す図である。
【符号の説明】
11…スプラグ式一方向クラッチ、 12,33…内輪、
13,32…外輪、 14…外側保持器、
15…内側保持器、 16…スプラグ、
17…リボンスプリング、 18,19…摺接面、
31…ローラ式一方向クラッチ、 34…保持器、
35…ローラ、 36…ばね、
37…カム溝、 39…外周面。
Claims (2)
- 内輪と、外輪と、上記内輪と外輪との間に配列されて上記内輪および外輪の相対的な一方向のみへの回転力を伝達するスプラグを有する一方向クラッチにおいて、
上記スプラグと内輪との接触面の間隔、および、上記スプラグと外輪との接触面との間隔における上記スプラグの転動方向に直交する方向への変化が、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等の材料が受けるダメージを評価する物理量が均一になるように設定されており、
上記各接触面の間隔における上記方向への変化が、実質的に下記の式で表される
ことを特徴とする一方向クラッチ。
k : 加工公差に関する係数
R : 上記転動方向への等価半径
C 2 : 必要最大間隔の加工公差に関する係数
E ': 等価ヤング率
L we : 上記スプラグの有効長
σ Emax : 材料の圧縮に関する強度
τ max : 材料の最大剪断応力に関する強度 - 内輪と、外輪と、上記内輪と外輪との間に配列されて転動するローラを有すると共に、上記内輪の外周面および外輪の内周面の少なくとも一方に、上記両輪の間隔が周方向に一方向側が上記ローラの径より狭く他方向側が上記ローラの径より広くなるような曲面が形成されており、上記内輪および外輪の相対的な上記一方向へのみ回転力を伝達する一方向クラッチにおいて、
上記ローラと内輪との接触面の間隔、及び、上記ローラと外輪との接触面との間隔における上記ローラの軸方向への変化が、接触圧力下での上記方向への相当応力分布または最大剪断応力分布等の材料が受けるダメージを評価する物理量が均一になるように設定されており、
上記各接触面の間隔における上記方向への変化が、実質的に下記の式で表される
ことを特徴とする一方向クラッチ。
k : 加工公差に関する係数
R : 上記転動方向への等価半径
C 2 : 必要最大間隔の加工公差に関する係数
E ': 等価ヤング率
L we : 上記ローラの有効長
σ Emax : 材料の圧縮に関する強度
τ max : 材料の最大剪断応力に関する強度
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