JP3753696B2 - 乾燥穀類及び乾燥穀類加工品並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾燥アルファ化米(白米、かゆ、五目御飯、赤飯等)、乾燥アルファ化米粉等の乾燥米飯・乾燥米飯加工品をはじめとする、乾燥穀類や乾燥穀類加工品及びその製造方法に関し、特に、保存性に優れた乾燥穀類や乾燥穀類加工品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、米等の炊飯米を乾燥して得られる商品として乾燥アルファ化米、フレーク状の米粉、フリーズドライ米飯等があり、これらに調味成分や具材を添加又は添付したりしたものなどもある。また、かゆ状にしたものや、雑穀(ヒエ、キビ、粟等)等も単独又は混ぜたものなどもある。これらは、湯を加えるだけで復元することから即席的に食することができ便利である。このため、硬さや形状を変えれば、一般食としてだけでなく、乳児食、病人食、高齢者向け食品として更には保存食としても利用することができ、これらの乾燥食品は有用である。
【0003】
ところが、米等の穀類乾燥品、乾燥加工品は、本来風味が変化しやすく、またそれに含まれる油脂も酸化し易く、異臭、酸化臭の発生等が短期間で起こることが一般的である。レトルト米飯を含む炊飯した含水状態の米においてさえ風味の変化、異臭、酸化臭の問題発生が知られており、乾燥したものは乾燥工程で熱がかかる事、圧篇されたり、多孔質構造となり空気(酸素)と接触する面積が多くなり、酸化などにより風味の劣化、異臭等の発生が起こりやすくなる。これらは、遮光し密封、あるいは酸素との遮断を行えば1年以上は官能的には品質が保持できる場合もあるが、概ね商品の品質保持期間は、3〜6ヶ月である。ここで、乾燥α化米の酸化臭を防止する従来技術に、脱脂粉乳とビタミンEとを組合わせものを用いたものがある(特許文献1参照)。しかし、この技術は、実際に使用した場合には乳由来のアレルギー物質を含むことになり、ミルク臭等の問題も抱えている。
【0004】
【特許文献1】
特公平4−39306号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、長期間保存しても異臭や酸化臭の発生が無く、風味も良好であり、更にはP.O.V.の上昇も少なく、更には乳由来のアレルギー物質やミルク臭等の問題も無い、保存性良好な米などの穀類乾燥品、穀類乾燥加工品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明(1)は、穀類をα化する工程と、該α化した穀類を乾燥する工程とを含む、乾燥穀類又は乾燥穀類加工品の製造方法において、該乾燥工程前に、α化した穀類に対して0.05〜5重量%の中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加する工程を含むことを特徴とする方法である。
【0007】
また、本発明(2)は、該添加工程において、中鎖脂肪酸トリグリセライドと共に、中鎖脂肪酸トリグリセライドに対して0.01〜10重量%のビタミンEを添加する、前記発明(1)の方法である。
【0008】
更に、本発明(3)は、穀類が米である、前記発明(1)又は(2)の方法である。
【0009】
また、本発明(4)は、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの方法に従って製造された乾燥穀類又は乾燥穀類加工品である。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、本明細書で用いられている用語の意義について説明する。
【0011】
「穀類」とは、イネ科植物の種子を指し、例えば、米、ヒエ、キビ、粟等が挙げられる。米の場合、種類や部位は特に限定されず、うるち米(低アミロース米を含む)やもち米でも、また、白米でも玄米でもよい。
【0012】
「乾燥穀類」とは、穀類をα化した後に乾燥させたものをいう。例えば、いわゆるアルファ米(本明細書にいう「乾燥アルファ化米」)を挙げることができる。
【0013】
「乾燥穀類加工品」とは、穀類に手を加えた後に乾燥させたものと、乾燥穀類に手を加えたものの両方を含む概念である。前者の例としては、穀類に調味料や具材等を入れた加工品(例えば炊込み御飯)を乾燥させたもの、後者の例としては、乾燥後に乾燥した具材や調味料を加えたものや乾燥穀類を粉末化したものを挙げることができる。
【0014】
「α化」とは、β−澱粉をα−澱粉に変えることを指す。
【0015】
「中鎖脂肪酸トリグリセライド」とは、炭素数6〜12(好適には8〜10)の脂肪酸とグリセリンとのトリエステルを意味する。ここで、使用可能な脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等を挙げることができる。加えて、このトリエステルを構成する3個のアシル基は、すべて同一でも、二つが同一でも、三つとも相違していてもよい。また、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、これは一般にMCTオイルといわれており、容易に入手可能である。
【0016】
「ビタミンE」は、α−,β−,γ−及びδ−トコフェロール並びにα−,β−,γ−及びδ−トコトリエノールのいずれかまたはこれらの組み合わせを指す。
【0017】
以下、本発明に係る乾燥穀類又は乾燥穀類加工品の製造方法につき説明する。尚、以下の説明では、穀類の一つである米について具体的に行うが、他の穀類についても当業者であれば、本明細書の記載に基づき容易に実施可能である。
【0018】
まず、本方法は、原料である米をアルファ化してアルファ化米を得る工程を含む。ここで、アルファ化させる好適な手段としては、炊飯{容器に米と水を入れ電気やガス等の熱によりご飯を炊きあげること(バッチ式)}や、上記処理乃至は蒸煮(米を金網のベルトコンベアに均一に層状に並べ、蒸気相内を連続的に流すことにより、ご飯に炊きあげること)を挙げることができる。なお、本明細書にいう「アルファ化米」とは、澱粉がアルファ化している米を意味し(例えば、炊きたてご飯)、乾燥させたものは含まない概念である。
【0019】
ここで得られたアルファ化米の水分含量は、おこわ程度の炊飯状態からお粥の炊飯水分までとするが、好適には55〜90重量%、より好適には60〜70重量%に調節する。なお、本明細書における水分含量(調湿水分量を含む)は、赤外線水分計により測定された値をいう。
【0020】
本方法は、アルファ化米を乾燥させて乾燥アルファ化米を得る工程を更に含む。乾燥工程は特に限定されず、熱風乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、ローラー乾燥、高周波乾燥、天日乾燥等が採用しうる。但し、好適には熱風乾燥であり、具体的には、60〜100℃の温度で、1〜2時間程度の時間、乾燥させることが好適である。また、乾燥手段としては、例えば、バンド乾燥、棚式乾燥等を挙げることができる。尚、乾燥の程度であるが、アルファ澱粉の安定性、タンパク質の熱変成、乾燥変形による復元性の劣化の観点から、乾燥アルファ化米の水分含量が、1〜15%となる程度まで乾燥させることが好適である。
【0021】
そして、本発明は、乾燥工程の前に、α化米に対して0.05〜5重量%の中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加する工程を含むことを特徴とする。ここで、乾燥工程前に添加する理由は、乾燥時に熱がかかり油脂の劣化が起こり易いためである。また、添加方法としては、炊飯後、噴霧添加する方式を採ることが挙げられる。尚、中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加するタイミングは、乾燥工程前であれば特に限定されないが、好ましくは、アルファ化工程後乾燥工程前である。但し、均一に穀類に行き渡るために、α化工程前に添加してもよい。
【0022】
更に、該添加工程において、中鎖脂肪酸トリグリセライドとビタミンEとを組み合わせて使用することが好適である。この場合、ビタミンEの量は、中鎖脂肪酸トリグリセライドに対して0.01〜10重量%とすることが好適である。
【0023】
尚、本方法は、好適には、乾燥工程の後に、乾燥アルファ化米を焙煎して膨化乾燥アルファ化米を得る工程を含む。ここで、「膨化」とは、吸水性を上げるために、乾燥アルファ化米内部に空洞を形成させる操作をいう。本工程は、好適には120〜250℃、より好適には140〜220℃で、30〜120秒焙煎を行なう。また、復元時間、米粒組織の破壊防止、膨潤しすぎによる崩壊防止等の観点から、焙煎後の比容積(ml/g)は2〜5であることが好適である。なお、本明細書の「比容積」は、ブラウエル穀粒計により測定された値をいう。
【0024】
尚、焙煎工程の前に、必要に応じ、乾燥アルファ化米の水分量が均等になるように調整する調湿工程(テンパリング工程)を更に含んでいてもよい。特に、ハンドリングの観点からは、一度過剰に乾燥させた後(例えば、2重量%程度低め)に調湿するという手法を講じることで、乾燥アルファ化米の水分量を容易に均等にすることができるため好適である。ここで、調湿手段としては、例えば、乾燥アルファ化米をタンクに入れ、一定の高湿度・温度の空気を送風循環(対流)させることにより、徐々にゆっくりと乾燥アルファ化米の水分含量を上げる方法が挙げられる。また、調湿水分は、焙煎機の種類、能力により異なるが、7〜15重量%とすることが好ましい。
【0025】
また、アルファ化米を得る工程において、乾燥アルファ化米及び膨化アルファ化米を得る工程において、食塩、油脂、アミノ酸等の調味料、香料等添加物を添加してもよい。
【0026】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は、これらの実施例になんら限定されるものではない。
【0027】
実施例1
まず、精米歩合88%の米(平成13年度産ミルキークイーン)1000gを乾式洗米し、水に2時間浸漬した後で炊飯した。そして、中鎖脂肪酸トリグリセライド{O.D.O 日清製油(株)製}7.8g(炊飯米に対して0.3重量%)を直接噴霧した後、熱風乾燥(70℃ 1時間)した。調湿(水分14.5%)した後、流動式焙煎機により120℃で30秒間、150℃で30秒間の条
【0028】
実施例2〜4
中鎖脂肪酸トリグリセライド(O.D.O)の噴霧の際、ビタミンE{イーミックスD エーザイ(株)製}とを組み合わせたものを用いた点を除き、実施例1と同様の方法で、乾燥アルファ化米封入アルミ袋を得た。ビタミンEの使用量は、実施例2では0.625mg%(乾燥アルファ化米に対して)、実施例3では1.25mg%(乾燥アルファ化米に対して)、実施例4では12.5mg%(乾燥アルファ化米に対して)とした。尚、実施例2〜4の調湿後の水分は、夫々、13.7%、11.8%、11.7%とした。
【0029】
実施例5
中鎖脂肪酸トリグリセライド(O.D.O)の噴霧の際、ビタミンEを含有する乳化剤17.2mg%{理研E乳剤14SP 理研ビタミン(株)製 ビタミンE含量約20%}を加える点を除き、実施例1と同様の方法で、乾燥アルファ化米封入アルミ袋を得た。尚、調湿後の水分は、13.2%とした。
【0030】
比較例1
O.D.Oを噴霧しない点を除き、実施例1と同様の方法で乾燥アルファ化米封入アルミ袋を得た。調湿後の水分は、11.7%とした。
【0031】
評価
実施例1〜5及び比較例1につき、スタート時、37℃で2ヶ月及び4ヶ月保管した時及び室温下に2ヶ月及び4ヶ月保管した時の、外観、風味(加水前、加水後)、臭い(加水前、加水後)に関して、5段階評価し、P.O.V.値の測定を実施した。その結果を表1〜3に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
これらの表からも分かるように、実施例に関しては、室温、37℃共に2ヶ月間では、外観・風味上における変化は問題なしとの結果となった。このように、O.D.O及びビタミンE添加の効果がはっきり見られた。しかも、これらを添加しても、風味を損なう等、風味上の影響は殆ど無いことも判明した。
【0036】
実施例6〜10及び比較例2
アルミ袋封入の際に窒素置換をしない点を除き、実施例1〜5及び比較例1と同様の方法で、乾燥アルファ化米封入アルミ袋を得た。その結果を表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、長期間保存しても異臭や酸化臭の発生が無く、風味も良好であり、更にはP.O.V.の上昇も少ない、保存性良好な米などの穀類乾燥品、穀類乾燥加工品を得ることができる。
Claims (8)
- 穀類をα化する工程と、該α化した穀類を乾燥する工程とを含む、加水により復元して食する乾燥穀類又は乾燥穀類加工品の製造方法であって、該乾燥工程前に、α化した穀類に対して0.05〜5重量%の中鎖脂肪酸トリグリセライドを添加する工程を含むことを特徴とする方法。
- 該α化工程後のα化した穀類の水分含量が55〜90重量%である、請求項1記載の方法。
- 該α化工程後のα化した穀類の水分含量が55〜70重量%である、請求項1記載の方法。
- 該α化工程後のα化した穀類の水分含量が60〜70重量%である、請求項1記載の方法。
- 該乾燥工程後のα化した穀類の水分含量が1〜15重量%である、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
- 該添加工程において、中鎖脂肪酸トリグリセライドと共に、中鎖脂肪酸トリグリセライドに対して0.01〜10重量%のビタミンEを添加する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
- 穀類が米である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の方法に従って製造された、加水により復元して食する乾燥穀類又は乾燥穀類加工品。
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