JP3753513B2 - 共役ジエン系重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温で液状の共役ジエン系重合体の製造方法に関する。さらに詳しくは、反応生成物を効率よく分離精製するとともに、溶媒回収装置内部への重合物の生成付着を抑制することのできる、常温で液状の共役ジエン系重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
常温で液状の共役ジエン系重合体の製造方法については、特公昭42−22048号公報で知られている。この方法では、共役ジエン系単量体を水溶性触媒およびアルコール溶媒の存在下に重合させるが、この場合、反応生成物に含まれている未反応の単量体や重合溶媒、触媒、副生物などを分離除去するため、重合工程で得られた反応生成物を水蒸気ストリッビングする方法を採用している。ところで、この方法では触媒に過酸化水素を使用しているので、得られる製品が着色するという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、特公昭52−22395号公報では、前記と同様にして得られた反応生成物に水を加えた後、有機相と水相とに分離し、有機相から重合体製品を得るとともに、水相からは溶媒を回収する方法が提案されている。しかしながら、この場合、製品の着色の問題は解決できるのであるが、前記水相中に重合体やその前駆体が移行して製品収率の低下を招くほか、水相中の重合体やその前駆体が溶媒回収装置の内部、とくに蒸留塔の塔底部など高温部に付着して装置運転に支障をきたすという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、共役ジエン系単量体を水溶性触媒およびアルコール溶媒の存在下に重合させて常温で液状の共役ジエン系重合体を製造する方法において、反応生成物を効率よく精製するとともに、溶媒回収装置での重合体等の付着の度合いを低減させることのできる共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため、種々検討を重ねた結果、共役ジエン系単量体を水溶性触媒とアルコール溶媒の存在下に重合させて得た反応生成物を、まず静置して水相と有機相とに分離し、ついで該水相の一部を重合工程に再循環するとともに、該水相の残部を有機相とともに水洗および精製工程に導入することにより、前記目的を達成し得ることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、共役ジエン系単量体を水溶性触媒およびアルコー溶媒の存在下に重合させて常温で液状の共役ジエン系重合体を製造するにあたり、重合工程で得られた反応生成物を静置して水相と有機相とに分離し、該水相の一部を重合工程に再循環し、かつ該水相の残部を有機相と共に水洗した後、水洗後の水相は溶媒回収工程に導入して溶媒の回収を行い、水洗後の有機相は精製工程に導入して未反応共役ジエン系単量体の分離除去を行うことにより、常温で液状の共役ジエン系重合体を製造することを特徴とする共役ジエン系重合体の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法における重合工程においては、共役ジエン系単量体を、水溶性触媒およびアルコール溶媒の存在下に重合させて、常温で液状の共役ジエン系重合体を製造する。
この共役ジエン系単量体としては、とくに制約はないが、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが、大量かつ安価に入手できることから好適なものとして挙げられる。これら共役ジエン系単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。さらに、これら共役ジエン系単量体に、スチレンやアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のコモノマーを添加した混合物を原料として用いることもできる。
【0008】
また、前記水溶性触媒としては、例えば過酸化水素、過硫酸塩、コハク酸過酸化物の水溶液を使用することができる。
さらに、アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールが好ましく、これを1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。このほか、これらアルコールと水との混合溶媒を用いてもよい。
【0009】
つぎに、この重合工程での反応条件は、原料の共役ジエン系単量体の種類によって最適条件が異なるが、反応温度については20〜150℃、好ましくは100〜140℃であり、反応圧力は1〜30kg/cm2 G、反応時間は0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間の範囲である。また、水溶性触媒の濃度については、例えば過酸化水素を用いる場合には、30〜70重量%、好ましくは50〜60重量%である。この水溶性触媒の使用量は、例えば1,3−ブタジエンを重合する場合には、この単量体に対して1〜80重量%、好ましくは2〜40重量%である。
【0010】
このような重合反応条件において、共役ジエン系単量体の重合反応を行うことにより、目的物である数平均分子量2000〜10000の常温で液状の共役ジエン系重合体が得られるのであるが、この重合工程での反応生成物には、この共役ジエン系重合体のほかに、未反応の共役ジエン系単量体や低重合体、副生物、溶媒、触媒、水が混入しているので、この反応生成物を精製する必要がある。
【0011】
本発明の方法における反応生成物の分離精製工程においては、まず反応生成物を静置分離工程において、水相と有機相に分離する。ここで用いる静置分離槽としては、反応生成物の供給口と、分離された水相と有機相それぞれの排出口とを槽の両端部近傍に備えるとともに、槽の内部には上層の有機相のみ溢流させる堰板を備えたものを用いるのが好ましい。そして、この静置分離槽の容量は、ここに導入される反応生成物の滞留時間が5分間ないし5時間、好ましくは10分間ないし1時間の範囲内としてあるものが好適である。
【0012】
つぎに、この静置分離槽において、下層に分離された水相は、静置分離槽の底部より抜出した後、この水相の一部を重合工程に再循環し、その残部を前記有機相とともに水洗工程に導入する。ここで再循環する水相には溶媒が高濃度で含まれているので、この再循環操作を開始したのちには重合工程への新たな溶媒の供給量を減少して、溶媒濃度がほぼ一定に保持されるように調節する。この溶媒濃度を一定に保持するためには、重合工程に供給される触媒水溶液の濃度によって変動するが、前記水相の再循環量を増減させることによって、調整することができる。すなわち、触媒水溶液としてその濃度の高いものを用いる場合には再循環量を増大し、その濃度が低いものを用いる場合には再循環量を減少して、残部を水洗工程に供給することにより、溶媒濃度をほぼ一定に保持する。ここで、触媒として過酸化水素水を用いる場合、水洗工程に供給する前記水相の割合は10〜80重量%の範囲とするのが好ましい。
【0013】
このように、静置分離槽の底部より抜出した水相の一部を重合工程に再循環することによって、反応生成物中に残存する過酸化水素等の触媒の失活処理量を低減することができると共に、重合工程に再循環された触媒が再利用できるという効果が得られる。また、再循環された水相中に含まれる共役ジエンの低重合体が重合工程で高分子量化されて製品として回収できるという効果も得られる。さらには、再循環される溶媒が重合工程で再使用されるので、重合工程への溶媒の供給量を低減することができるという効果も得られる。
【0014】
一方、この静置分離槽で上層に分離された有機相は、これに前記水相の残部と共に水洗工程に導入する。この水洗工程では、有機相および水相と洗浄水との接触により、有機相および水相中に混入している触媒や溶媒の他、水溶性物質が除去される。
本発明における水洗工程で用いる洗浄水の量は、従来の反応生成物全量を水洗する場合に較べて大幅にその使用量を減少させることができる。
【0015】
ついで、水洗後の有機相は、精製工程において蒸留塔あるいはフラッシュドラムに供給し、この有機相に含まれる未反応の共役ジエン系単量体を分離除去することにより、目的物である常温で液状の共役ジエン系重合体が得られる。
【0016】
また、水洗後の水相は、溶媒回収装置に供給し、蒸留によってアルコールの回収を行う。この溶媒回収の操作については、従来法に従って行えばよい。
本発明においては、従来の反応生成物全量を水洗する場合に比し、溶媒回収装置に供給する前記水洗後の水相中のジエン系重合体の濃度が大幅に低下しているので、溶媒回収装置における蒸留塔の塔底部など高温部で発生する重合物の付着量が大幅に減少し、この製造装置全体の操作条件にもよるが、その連続運転可能期間を従来法の3〜5倍程度に延長することができるのである。
【0017】
このように溶媒回収装置の連続運転可能期間を延長できるのは、水相に移行しやすい低分子量重合体の大部分を前記静置分離工程から重合工程に再循環することによって、溶媒回収装置に供給する前記水洗後の水相中のジエン系重合体の濃度が大幅に低下していることに起因している。このほか、溶媒の再使用に伴って溶媒回収装置で分離回収するアルコールの量が減少するので、蒸留塔のリボイラーへの供給熱量を減少させることができることも、蒸留塔の塔底部への重合物の生成付着量を減少させる要因となっているのである。
【0018】
【実施例】
つぎに、実施例により本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〕
内容積700ミリリットルのオートクレーブに、ブタジエン100gと、濃度85重量%のイソプロパノール水溶液70g、および触媒として濃度60重量%の過酸化水素水18gを仕込み、120℃、20kg/cm2 Gにおいて、2.5時間、重合反応を行った。
ついで、オートクレーブを水中に投入して急冷することにより、反応を停止して、内容物を取り出した。得られたポリブタジエンの収率は、60%であった。ここで得られた反応生成物は、攪拌槽に入れて攪拌後、10分間静置した。その結果、上層のポリブタジエンと未反応ブタジエンを主成分とする有機相と、下層の水とイソプロパノールおよび残存触媒を主成分とする水相に分離した。
ここで得られた水相の約30重量%に相当する分量の水相を有機相全量に混合し、これに洗浄水400ミリリットルを加えて攪拌し、3時間静置することにより、上層に有機相、下層に水相が分離した。
つぎに、この水洗後の水相につき、ポリブタジエンと、イソプロパノール、過酸化水素の濃度を測定した。測定結果を第1表に示す。
【0019】
〔実施例2〕
反応生成物の攪拌後の静置時間を60分間とし、静置分離後の水相の約10重量%を有機相と混合した他は、実施例1と同様の操作をした。水洗後の水相中の各溶質の濃度の測定結果を第1表に示す。
【0020】
〔比較例1〕
反応生成物の静置分離操作をすることなく、反応生成物全量を洗浄水400ミリリットルで洗浄した他は、実施例1と同様にした。水洗後の水相中の各溶質の濃度の測定結果を第1表に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
第1表中の実施例と比較例における、水洗処理後の水相中の重合体の濃度を比較すれば、本発明での反応生成物の静置分離操作をした後に、水相の一部と有機相とを水洗する方式によると、反応生成物の全量を水洗処理する方式よりも、水洗後の水相中の重合体の濃度が格段に低くなることが明らかである。したがって、本発明では、溶媒回収装置の高温部での重合物の生成付着量が減少することが明らかである。
【0023】
【発明の効果】
本発明の共役ジエン系重合体の製造方法によれば、重合工程で得られた反応生成物から静置分離された溶媒や、触媒および低重合体の一部を重合工程で再使用することができるので、重合工程での溶媒や触媒の使用量が低減できるほか、反応生成物の洗浄水の使用量も低減することができる。
【0024】
また、溶媒回収装置に供給される水洗後の水相中の重合体の濃度が低下することから、この溶媒回収装置の高温部への重合物の生成付着量が減少し、共役ジエン系重合体の製造装置の連続運転可能期間を大幅に延長することができるという効果が得られる。
Claims (1)
- 共役ジエン系単量体を水溶性触媒およびアルコール溶媒の存在下に重合させて常温で液状の共役ジエン系重合体を製造するにあたり、重合工程で得られた反応生成物を静置して水相と有機相とに分離し、該水相の一部を重合工程に再循環し、かつ該水相の残部を有機相と共に水洗した後、水洗後の水相は溶媒回収工程に導入して溶媒の回収を行い、水洗後の有機相は精製工程に導入して未反応共役ジエン系単量体の分離除去を行うことにより、常温で液状の共役ジエン系重合体を製造することを特徴とする共役ジエン系重合体の製造方法。
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JP25696297A JP3753513B2 (ja) | 1997-09-22 | 1997-09-22 | 共役ジエン系重合体の製造方法 |
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JPH1192527A JPH1192527A (ja) | 1999-04-06 |
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EP2492292A1 (de) * | 2012-05-29 | 2012-08-29 | Evonik Industries AG | Polymerisation von Dien |
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1997
- 1997-09-22 JP JP25696297A patent/JP3753513B2/ja not_active Expired - Fee Related
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