JP3753286B2 - 鉄筋鋼管ソイルセメント杭およびその施工法 - Google Patents
鉄筋鋼管ソイルセメント杭およびその施工法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は排土を少なくした鉄筋鋼管ソイルセメント杭およびその施工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
場所打ち杭の施工順序は孔壁を保護しながら地盤を掘削し、掘削完了後鉄筋かごを建て込み、その後コンクリートを打設して杭を構築するものである。
図1は場所打ち杭の施工順序を説明する図で、リバース工法を例にとって説明する。まず、スタンドパイプを建て込み(図1(a))、先行中堀りを行う(図1(b))。孔内に清水等の安定液を供給して孔内水位を地下水位より2m程高くして孔壁を保護しつつ掘削し、泥水を吸い上げながら掘削を行っていく(図1(c))。掘削が完了すると一次孔底処理を行う(図1(d))。次いで掘削機を引き上げ(図1(e))、孔内に鉄筋かごを建て込み(図1(f))、さらにトレミー管を建て込んで(図1(g))、二次孔底処理を行い(図1(h))、トレミー管を通してコンクリートを打設し(図1(i))、コンクリートの打設が終わるとスタンドパイプを引き抜き(図1(j))、最後に埋め戻しを行って完了する(図1(k))。
【0003】
ところで、リバース工法による掘削土は残土や汚泥、産業廃棄物として処理されるので、処分場が年々減少している現在にあっては、処理費の問題や環境保護の観点からも問題がある。一方、掘削土を有効利用したソイルセメント合成鋼管杭が近年開発されている。この工法はオーガーまたは攪拌ロッドを用いて地山を攪拌掘削し、同時にオーガーまたは攪拌ロッドの先端からセメントミルク等の注入材を吐出し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材としてリブ付き鋼管を建て込むものである。
【0004】
図2はソイルセメント合成鋼管杭の施工順序を説明する図である。まず、土の崩壊を防ぐための口元管を建て込み、口元管内部を掘削する(図2(a))。オーガ付き掘削機で先行排土が完了すると、掘削機を正逆回転しながら、土を砕いて杭一般部の掘削攪拌を行う。この時、同時に攪拌ロッドの先端からセメントミルク等の注入材を吐出し、地山と攪拌混合をする(図2(c))。さらに杭先端部まで掘削攪拌してセメントミルク等の注入材を吐出して地山と攪拌混合し(図2(d))、ソイルセメント柱が完成する(図2(e))。次に、ソイルセメント柱が硬化する前にリブ付き鋼管の建て込みを行い(図2(f))、この建て込みが完了すると(図2(g))、口元管を引き抜き(図2(h))、リブ付き鋼管ソイルセメント柱が完成する(図2(i))。この工法によれば、土をそのまま杭の材料として利用しているため、排土の少ない杭の施工が可能となる。また、応力的には鋼管が受け持ち、さらに鋼管より大径のソイルセメント柱の周面で摩擦抵抗がとれるため、大きな支持力が得られるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ソイルセメント合成鋼管杭は、場所打ち杭と同程度の支持力を得るために使用する鋼管をリブ付きのものにして鋼管とソイルセメントとの付着を良くし、また耐力の計算では鋼管のみを構造部材として評価し、ソイルセメントは構造部材として無視しているため、使用する鋼管は肉厚のものとなり、これらのことから材料費が高くなって不経済な杭になってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためのもので、ソイルセメント合成鋼管杭に要する鋼材としてリブ付き鋼管に代えて鉄筋と筒状の鋼材を組合わせて使用することにより、施工時間の短縮を図ると共に排土を少なくし、材料費の削減を可能にすることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の鉄筋鋼管ソイルセメント杭は、内側に鉄筋を取付けた鋼管をソイルセメント柱に落とし込んで形成したことを特徴とする。
請求項2の鉄筋鋼管ソイルセメント杭は、前記鉄筋はスパイラル状鉄筋であることを特徴とする。
請求項3の鉄筋鋼管ソイルセメント杭は、内側に鉄筋を取付けたコルゲートパイプをソイルセメント柱に落とし込んで形成したことを特徴とする。
請求項4の鉄筋鋼管ソイルセメント杭は、内側に鉄筋を取付けた孔開け加工した鋼管をソイルセメント柱に落とし込んで形成したことを特徴とする。
請求項5の鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法は、地山を攪拌掘削すると同時にセメントミルク等を注入し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材を建て込む鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法において、前記芯材として内側に鉄筋を取り付けた鋼管を使用することを特徴とする。
請求項6の鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法は、地山を攪拌掘削すると同時にセメントミルク等を注入し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材を建て込む鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法において、前記芯材として内側に鉄筋を取付けたコルゲートパイプを使用することを特徴とする。
請求項7の鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法は、地山を攪拌掘削すると同時にセメントミルク等を注入し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材を建て込む鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法において、前記芯材として内側に鉄筋を取付けた孔開け加工した鋼管を使用することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は従来のソイルセメント合成鋼管杭に使用する鋼材としてリブ付き鋼管に代えて鉄筋と筒状の鋼材を組合わせて使用し、曲げ応力および剪断応力に対しては鋼管と鉄筋および拘束された鋼管内部のソイルセメントが受け持つ構造としたことを特徴とする。
【0009】
本発明の杭の施工順序は、オーガーまたは攪拌ロッドを用いて地山を攪拌掘削し、同時にオーガーまたは攪拌ロッドの先端からセメントミルク等の注入材を吐出し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に以下に詳述する鋼材を建て込むもので、施工順序は図2に示したソイルセメント合成鋼管杭工法と同様であるが、使用する鋼材が異なるので、構造の異なる杭ができることになる。
【0010】
以下、図3〜図8により説明する。
図3〜図5は筒状の鋼材の内側に鉄筋を取り付けた芯材を使用した例を示しており、図2に示した施工順序において、図2(e)に示すソイルセメント柱が完成した時点でソイルセメント柱に内側に鉄筋を取付けた鋼材を落とし込んで杭とするものである。
【0011】
図3は鉄筋鋼管ソイルセメントを応力材として用いるもので、図3(a)は縦断面図、図3(b)は横断面図、図3(c)は図3(b)のb─b断面、c─c断面を示す図である。図3において、鋼管1の内面には鉄筋2が予め取付けられており、これをソイルセメント3に落とし込んで杭とする。ソイルセメントが鋼管1の内部に拘束され、曲げ応力、および剪断応力に対して鋼管、鉄筋、拘束された鋼管内部のソイルセメントで受け持つ構造となる。
【0012】
図4はスパイラル鉄筋、鋼管、ソイルセメントを応力材として用いる例を示す図で、図4(a)は縦断面図、図4(b)は横断面図、図4(c)は図4(b)のb─b断面、c─c断面を示す図である。鋼管1の内部にスパイラル鉄筋5が取付けられており、これをソイルセメント3に落とし込んで杭とする。スパイラル鉄筋5には鋼管1とソイルセメント3との付着性を良くする働きを持たせている。この例においても、曲げ応力、剪断応力に対して、鋼管とスパイラル鉄筋および拘束された鋼管内部のソイルセメントで受け持つ構造となっている。
【0013】
図5は鉄筋、コルゲートパイプ、ソイルセメントを応力材として用いる例を示す図で、図5(a)は縦断面図、図5(b)は横断面図、図5(c)は図5(b)のb─b断面、c─c断面を示す図である。コルゲートパイプ7は表面(内面及び外面)が波形になっており、これをソイルセメント3に落とし込んで杭とする。コルゲートパイプは表面の波形によりソイルセメントとの付着性を向上させており、従来のリブ付き鋼管より薄く、安価である。この例においても、曲げ応力および剪断応力に対してコルゲートパイプ、鉄筋および拘束されたコルゲートパイプ内部のソイルセメントで受け持つ構造である。
【0014】
図6は孔開け加工した筒状の鋼材の内側に鉄筋を取付けた芯材を使用した例を示す図である。鋼管9には複数の孔9aが開けられ、内面には鉄筋2が取付けられており、これをソイルセメント3に落とし込み杭とするものである。この孔9aを通してソイルセメントが鋼管9の内側と外側にまたがるため、鋼管9とソイルセメント3との付着性が向上する。この例においても、曲げ応力および剪断応力に対して鋼管、鉄筋および拘束された鋼管内部のソイルセメントで受け持つ構造である。
【0015】
図7は鋼管1の外面に鉄筋2を予め取付け、これをソイルセメント3に落とし込み、杭としたものである。鋼管1の外側に取付けた鉄筋11はソイルセメントとの付着性向上を図るためのもので、付着力が増強する。この例においても、曲げ応力および剪断応力に対して鋼管、鉄筋および拘束された鋼管内部のソイルセメントで受け持つ構造である。
【0016】
図8は鋼管1の外側にスパイラル鉄筋13を取付け、これをソイルセメント3に落とし込み、杭としたものである。スパイラル鉄筋13は鋼管1とソイルセメント3との付着性の向上を図るためのものであり、この例においても、曲げ応力および剪断応力に対して鋼管、鉄筋および拘束された鋼管内部のソイルセメントで受け持つ構造である。
【0017】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、リブ付き鋼管の代わりに安価な筒状鋼材の内側に鉄筋を取り付けたものを芯材としているため、材料費の高いリブ付き鋼管を使用しないですむと共に、剪断補強材およびソイルセメントの拘束材として用いる鋼材の肉厚を最小限、必要な厚さまで薄くできるため、鋼材料を減らすことができ、工事費の削減が可能となる。また、排土が少なく残土処理費おるいは産業廃棄物処理費がかからないので、安価な杭の施工が可能となると共に、環境問題となっている産業廃棄物の処理場への負担も少なくなり、環境にも優しい杭を提供することができる。さらに、排土処理が必要でないため、施工時間の短縮を図ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 場所打ち杭の施工順序を説明する図である。
【図2】 ソイルセメント合成鋼管杭の施工順序を説明する図である。
【図3】 内面に鉄筋を取付けた鋼管を芯材とした例を示す図である。
【図4】 内面にスパイラル鉄筋を取付けた鋼管を芯材とした例を示す図である。
【図5】 内面に鉄筋を取付けたコルゲートパイプを芯材とした例を示す図である。
【図6】 内側に鉄筋を取付けた孔開け加工した筒状鋼材を芯材とした例を示す図である。
【図7】 外面に鉄筋を取付けた鋼管を芯材とした例を示す図である。
【図8】 外面にスパイラル鉄筋を取付けた鋼管を芯材とした例を示す図である。
【符号の説明】
1…鋼管、2,11…鉄筋、3…ソイルセメント、5,13…スパイラル鉄筋、7…コルゲートパイプ、9…孔開け加工した鋼管、9a…孔。
Claims (7)
- 内側に鉄筋を取付けた鋼管をソイルセメント柱に落とし込んで形成したことを特徴とする鉄筋鋼管ソイルセメント杭。
- 前記鉄筋はスパイラル状鉄筋であることを特徴とする請求項1記載の鉄筋鋼管ソイルセメント杭。
- 内側に鉄筋を取付けたコルゲートパイプをソイルセメント柱に落とし込んで形成したことを特徴とする鉄筋鋼管ソイルセメント杭。
- 内側に鉄筋を取付けた孔開け加工した鋼管をソイルセメント柱に落とし込んで形成したことを特徴とする鉄筋鋼管ソイルセメント杭。
- 地山を攪拌掘削すると同時にセメントミルク等を注入し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材を建て込む鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法において、前記芯材として内側に鉄筋を取り付けた鋼管を使用することを特徴とする鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法。
- 地山を攪拌掘削すると同時にセメントミルク等を注入し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材を建て込む鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法において、前記芯材として内側に鉄筋を取付けたコルゲートパイプを使用することを特徴とする鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法。
- 地山を攪拌掘削すると同時にセメントミルク等を注入し、地山と攪拌混合してソイルセメント柱を形成した後、ソイルセメント柱硬化前に芯材を建て込む鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法において、前記芯材として内側に鉄筋を取付けた孔開け加工した鋼管を使用することを特徴とする鉄筋鋼管ソイルセメント杭工法。
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