JP3750826B2 - 摩擦圧接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は摩擦圧接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブレーキ法による摩擦圧接方法では、まず、一方のワークを固定し、他方のワークを回転装置に結合された主軸に取り付ける。そして、摩擦送り工程として、他方のワークを一定回転し続け、推力付与装置で相互の接合界面に軸方向の摩擦推力を付与して摩擦させる。この間、初めのうちは、接合界面では、微小な接触点で変形、破壊を生じ、ついには多くの焼付点を生じるようになる。継続して両ワークの相対回転が存在することから、焼付点の発生と破壊が生じ、焼付面積が拡大される。熱は両ワークの深さ方向にも伝導するので、接合界面が高温層を有することとなる。次いで、接合界面の高温層がより厚くなると、接合界面は変形が容易になるので、摩擦推力によって接合界面は激しい変形をし、バリの形成を繰り返す。
【0003】
この後、通常所定時間の経過を待ってアップセット工程を行う。この際、ブレーキによって主軸の回転を急停止させるとともに、推力付与装置で摩擦推力より増加された軸方向のアップセット推力を付与する。この時には、清浄な材料が溶融していることにより接合界面は圧接に充分な状態になっているので、アップセット推力によって両ワークが摩擦圧接される。
【0004】
一般的な摩擦圧接方法では、油圧シリンダを推力付与装置として採用している(特開昭59−197389号公報等)。また、電動モータを推力付与装置として採用するとともに、電動モータの出力トルクと回転装置の出力トルクとを検知し、これらの偏差に基づいて電動モータのトルク制御を行なう摩擦圧接方法も近年提案されている(特開平3−124384号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記両摩擦圧接方法では、例え精度の高い素材長のワークを用いたとしても、圧接後の製品の製品長の精度が充分でないことが明らかになった。
すなわち、油圧シリンダを推力付与装置として採用した摩擦圧接方法では、油圧シリンダに送給される作動油の温度変化、劣化等に起因して油圧が変化しやすいため、摩擦推力やアップセット推力を設定値通りに付与することが困難である。
【0006】
また、電動モータを推力付与装置として採用した従来の摩擦圧接方法では、摩擦送り工程及びアップセット工程中に溶融により接合界面の変形のし易さが変動するにもかかわらず、電動モータのトルク制御を行なうこととしているため、両ワークには設定値以上の摩擦推力やアップセット推力を付与してしまう場合がある。
【0007】
こうして、付与する摩擦推力が設定値通りでなく、オーバーシュートや変動があれば、接合界面の溶融深さがばらつき、ばらついた溶融深さでアップセット工程を行うと、摩擦圧接後の製品の製品長がばらつくことになる。また、仮に接合界面の溶融深さがばらついていないとしても、付与するアップセット推力が設定値通りでなく、オーバーシュートがあるのであれば、摩擦圧接後の製品の製品長がばらつくことになる。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、精度の高い素材長のワークを用いれば、精度が充分な製品長の製品を圧接可能な摩擦圧接方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の摩擦圧接方法は、互いに対向する一方のワークと他方のワークとに一定の相対運動を付与しつつ、推力付与装置で該一方のワークと該他方のワークとに摩擦推力を付与することにより、圧接に充分な状態になるまで相互の接合界面を発熱させる摩擦送り工程と、該相対運動を断ち、該推力付与装置で該一方のワークと該他方のワークとにアップセット推力を付与することにより、該一方のワークと該他方のワークとを該接合界面で摩擦圧接するアップセット工程と、を有する摩擦圧接方法において、
前記推力付与装置としてサーボモータを採用し、前記サーボモータの回転軸はボールねじ軸に係合され、該ボールねじ軸はボールねじナットと螺合され、該ボールねじナットはロードセルを介して該一方のワークを把持する摺動可能に設けられた主軸ボックス又は摺動チャックに係合され、該主軸ボックス又は摺動チャックが受ける力を該ロードセルによって検知される実推力に基づき、前記摩擦送り工程及び前記アップセット工程内で該サーボモータの速度制御を制限された上限値の下で行うことを特徴とする。
【0010】
この摩擦圧接方法では、摩擦送り工程及びアップセット工程中に溶融により接合界面の変形のし易さが変動していても、制限された上限値の下、検知される実推力に基づいてサーボモータの速度制御を行なうため、両ワークにはほぼ設定値通りの摩擦推力やアップセット推力を付与できる。
こうして、摩擦推力をほぼ設定値通りに付与できるため、接合界面の溶融深さがばらつかない。また、アップセット推力をもほぼ設定値通りに付与できるため、摩擦圧接後の製品の製品長がばらつかない。
【0011】
したがって、この摩擦圧接方法では、精度の高い素材長のワークを用いれば、精度が充分な製品長の製品を圧接することが可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、請求項1の発明を具体化した実施形態1の摩擦圧接方法について詳述する。
まず、この摩擦圧接方法を使用する摩擦圧接機について説明する。この摩擦圧接機では、図1及び図2に示すように、水平面上に載置されたベッド1上の左側のブラケット1aに推力付与装置としてのサーボモータ2が固定されており、ベッド1上の中央のブラケット1bに水平に軸支されたボールねじ軸3はサーボモータ2の回転軸とカップリング4を介して係合されている。また、ボールねじ軸3と平行に形成されたベッド1の直動軸受(リニアガイド)1c上には主軸ボックス5が摺動可能に設けられており、主軸ボックス5のスピンドルにはボールねじナット6及びロードセル7を介してボールねじ軸3が係合されている。
【0013】
主軸ボックス5には主軸8が水平に軸支されており、ボールねじ軸3の延在方向側である主軸8の先端には回転チャック9が固定されている。また、主軸ボックス5上には回転装置としての主軸モータ10が固定されており、主軸モータ10の回転軸はプーリ11、ベルト12、図示しないプーリ及び電磁クラッチを介して主軸8と係合されている。
【0014】
そして、ベッド1上の右側には、回転チャック9と対向する固定チャック13が固定されているとともに、固定チャック11の後方にストッパ14が固定されている。
また、摩擦圧接機の一部を構成する図示しない制御盤では、図3に示すように、CRT20とデジタルSW21とからなる操作盤22がコントローラ23に接続されており、コントローラ23には、サーボドライバ24を介して上記サーボモータ2が接続されているとともに、電磁リレー25を介して上記主軸モータ10が接続されている。また、コントローラ23にはCRT26とCPU27とからなる品質保証装置28が接続されており、これにより長さ及び時間に関連した信号の伝達が可能になっている。主軸モータ10に設けられた主軸回転計29(図1及び図2では図示せず)は品質保証装置28のCPU27に接続され、これにより主軸の回転数に関連した信号の伝達が可能になっている。さらに、コントローラ23にはトランスミッタ30を介して上記ロードセル7が接続され、トランスミッタ30も品質保証装置28のCPU27に接続されて圧力に関連した信号の伝達が可能になっている。
【0015】
上記のように構成された実施形態1の摩擦圧接機により、摩擦圧接方法を実行する。まず、回転チャック9と固定チャック13とによりそれぞれワークを把持する。そして、図4に示すように、A時点において、主軸モータ10により主軸8を回転させる。
「早送り工程」
しばらく経過後、位置制御によりサーボモータ2の早送りを行なう。
「微速送り・素材接触工程」
この後、主軸ボックス5が所定の位置になれば、両ワークが当接するまでトルク制御によりサーボモータ2の微速送りを行なう。
「位相合わせ工程」
また、位相合わせのために位置制御により主軸8の位置を後退させる。
【0016】
「摩擦送り工程」
この後、B時点において、サーボモータ2をフルパワーとして両ワークの接合界面に予熱摩擦推力P0 を付与し、予熱送りを行う。この間、トルク制御を行なうとともに回転速度制御を行なう。
そして、通常所定時間の経過を待って、C時点において、サーボモータ2をフルパワーとして両ワークの接合界面に予熱摩擦推力P0 を2倍以下程度で増加した本摩擦推力P1 を付与し、本摩擦送りを行なう。この間、位置指令、トルク制御及び回転速度制御を行なう。
【0017】
「アップセット工程」
この後、通常所定時間の経過を待って、D時点において、ブレーキにより主軸8の回転を急停止させるとともに、サーボモータ2でワークに応じたアップセット推力P2 (本摩擦推力P1 の2〜3倍程度)を付与し、アップセット工程を行なう。この間、トルク制御及び回転速度制御を行なう。
【0018】
「ワーク払い出し工程」
そして、圧力を除去することにより、アップセット推力P2 の付与を停止した後、位置制御でワークの払い出し位置まで主軸ボックス5を移動させ、位置制御で主軸ボックス5をスライド後退させる。
以上の1回目の摩擦圧接方法の間、サーボモータ2をフルパワーとしているため、サーボモータ2のボールねじ軸3の回転速度の上限値は、摩擦送り工程中で500v、アップセット工程中で5vである。かかるボールねじ軸3の回転速度500v、5vは、ボールねじ軸3及びボールねじナット6のリードとによりサーボモータ2の送り速度VA 、VB と相関関係を有している。このため、摩擦送り工程内で付与する予熱摩擦推力P0 及び本摩擦推力P1 にはオーバーシュート及び変動があり、かつアップセット工程内で付与するアップセット推力P2 にもオーバーシュートがある。かかるオーバーシュート等は操作盤22のCRT20にて確認可能である。このため、1回目の摩擦圧接方法により得られた製品は製品長がばらつくことになる。
【0019】
このため、この摩擦圧接方法では、摩擦送り工程内において、寄り代Sと関連してSA /TA からサーボモータ2の摩擦送り速度VA を算出する。また、アップセット工程内において、ロードセル7がボールねじナット6と主軸ボックス5のスピンドルとに生じる実推力に関連する信号を出力するため、アップセット推力P2 が最大値を示す時刻から、SB 及びTB を求め、SB /TB からサーボモータ2のアップセット送り速度VB を算出している。そして、2回目の摩擦圧接方法として、上記と同様の各工程を実行する際、サーボモータ2の回転速度の上限値を、送り速度が摩擦送り工程中で1.1〜1.5V A 、アップセット工程中で1.1〜1.5V B とになるように回転速度制御を行なう。この回転速度制御はサーボモータ2の送り速度でみれば、送り速度制御である。こうして、サイクル毎にロードセル7が検知する実推力を±5〜10%以内で変更するように、摩擦送り工程及びアップセット工程内の少なくとも一方で回転速度制御を行なう。仮に3回目の摩擦圧接方法でも図4と同様に予熱摩擦推力P0 、本摩擦推力P1 又はアップセット推力P2 にオーバーシュートや変動があれば、再度、摩擦送り工程又はアップセット工程内で回転速度制御を行なう。予熱摩擦推力P0 、本摩擦推力P1 及びアップセット推力P2 にオーバーシュートや変動がないときの図4と同様の関係を図5に示す。このときには、両ワークにはほぼ設定値通りの予熱摩擦推力P0 、本摩擦推力P1 及びアップセット推力P2 を付与できる。
以上
【0020】
こうして、摩擦推力をほぼ設定値通りに付与できるため、接合界面の溶融深さがばらつかない。また、アップセット推力をもほぼ設定値通りに付与できるため、摩擦圧接後の製品の製品長がばらつかない。
したがって、この摩擦圧接方法では、精度の高い素材長のワークを用いれば、精度が充分な製品長の製品を圧接することが可能となる。
【0021】
【実施例】
図6に示すように、個数n=100、幅0.13(μm)、標準偏差σn-1 =0.0225で素材長のばらつきを有するワークを用意する。そして、摩擦送り工程及びアップセット工程において回転速度制御を行いつつ上記実施形態1の摩擦圧接機により摩擦圧接方法を実行する。
【0022】
得られた製品について、個数n=30、幅0.11(μm)、標準偏差σn-1 =0.0278で製品長のばらつきを調べ、図7を得た。
【0023】
【比較例1】
実施例で示したばらつきを有する素材長のワークを用い、摩擦送り工程及びアップセット工程において回転速度制限を行わないで上記実施形態1の摩擦圧接機により摩擦圧接方法を実行する。
得られた製品について、個数n=30、幅0.12(μm)、標準偏差σn-1 =0.0331で製品長のばらつきを調べ、図8を得た。
【0024】
【比較例2】
実施例で示したばらつきを有する素材長のワークを用い、油圧シリンダを推力付与装置とした従来の摩擦圧接機により摩擦圧接方法を実行する。
得られた製品について、個数n=100、幅0.22(μm)、標準偏差σn-1 =0.0454で製品長のばらつきを調べ、図9を得た。
【0025】
【比較例3】
実施例で示したばらつきを有する素材長のワークを用い、サーボモータを推力付与装置とし、摩擦送り工程及びアップセット工程においてトルク制御のみを行って摩擦圧接方法を実行する。
得られた製品について、個数n=100、幅0.12(μm)、標準偏差σn-1 =0.0248で製品長のばらつきを調べ、図10を得た。
【0026】
【評価】
図7〜10より、実施例では、精度の高い素材長のワークを用いれば、精度が充分な製品長の製品を圧接できることがわかる。
(実施形態2)
実施形態2の摩擦圧接方法を使用する摩擦圧接機では、図11に示すように、直動軸受1c上に摺動チャック31が摺動可能に設けられており、摺動チャック31がボールねじナット6及びロードセル7を介してボールねじ軸3に係合されている。
【0027】
また、ブラケット1aにストッパ32が固定され、ベッド1上の右側に主軸8を軸支する主軸ボックス33が固定されている。制御盤その他の構成は実施形態1と同様であるため、同様の構成については同一符号を付している。
この摩擦圧接機により摩擦圧接方法を実行すれば、同様の作用及び効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の摩擦圧接方法に係る摩擦圧接機の縦断面図である。
【図2】実施形態1の摩擦圧接方法に係る摩擦圧接機の横断面図である。
【図3】実施形態1の摩擦圧接方法に係る摩擦圧接機における制御装置のブロック図である。
【図4】実施形態の摩擦圧接方法に係り、1回目の時間と、寄り代と、推力と、主軸の回転数との関係を示すグラフである。
【図5】実施形態の摩擦圧接方法に係り、2回目以降の時間と、寄り代と、推力と、主軸の回転数との関係を示すグラフである。
【図6】実施例及び比較例1、2に係り、ワークの素材長のばらつきを示すグラフである。
【図7】実施例に係り、製品の製品長のばらつきを示すグラフである。
【図8】比較例1に係り、製品の製品長のばらつきを示すグラフである。
【図9】比較例2に係り、製品の製品長のばらつきを示すグラフである。
【図10】比較例3に係り、製品の製品長のばらつきを示すグラフである。
【図11】実施形態2の摩擦圧接方法に係る摩擦圧接機の横断面図である。
【符号の説明】
2…推力付与装置(サーボモータ)
7…ロードセル
P0 、P1 …摩擦推力(P0 …予熱摩擦推力、P1 …本摩擦推力)
P2 …アップセット推力
Claims (1)
- 互いに対向する一方のワークと他方のワークとに一定の相対運動を付与しつつ、推力付与装置で該一方のワークと該他方のワークとに摩擦推力を付与することにより、圧接に充分な状態になるまで相互の接合界面を発熱させる摩擦送り工程と、該相対運動を断ち、該推力付与装置で該一方のワークと該他方のワークとにアップセット推力を付与することにより、該一方のワークと該他方のワークとを該接合界面で摩擦圧接するアップセット工程と、を有する摩擦圧接方法において、
前記推力付与装置としてサーボモータを採用し、前記サーボモータの回転軸はボールねじ軸に係合され、該ボールねじ軸はボールねじナットと螺合され、該ボールねじナットはロードセルを介して該一方のワークを把持する摺動可能に設けられた主軸ボックス又は摺動チャックに係合され、該主軸ボックス又は摺動チャックが受ける力を該ロードセルによって検知される実推力に基づき、前記摩擦送り工程及び前記アップセット工程内で該サーボモータの速度制御を制限された上限値の下で行うことを特徴とする摩擦圧接方法。
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