JP3750291B2 - 車両用空気調和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば加熱用熱交換器に供給する熱媒体を燃焼式ヒータにより加熱することにより車室内の暖房を行う車両用空気調和装置に関するもので、特にエンジン冷却水を有しない電気自動車や空冷式エンジン搭載車等の車室内の暖房に利用される車両用空気調和装置に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電気自動車や空冷式エンジン搭載車等のようにエンジンの冷却水を暖房用熱源として利用できない車両用空気調和装置においては、冷媒圧縮機を稼働して、ダクト内の加熱用熱交換器を凝縮器として運転し、ダクト外の室外熱交換器を蒸発器として運転するヒートポンプサイクル(以下ヒートポンプ暖房と言う)時に、外気温度が0℃以下に低下していると、暖房能力が極端に低下してしまい、特に寒冷地(外気温度が−10℃〜−30℃以下に低下する地域)ではそのようなヒートポンプ暖房では暖房能力が著しく不足するという問題が生じている。
【0003】
そこで、上記の問題を解決するために、特開平8−197937号公報や特開平9−52508号公報においては、寒冷地仕様の暖房用熱源としての燃焼式ヒータと、冷媒と冷却水とを熱交換して温水を加熱する冷媒水熱交換器と、ダクト内に配設されて空気を加熱する加熱用熱交換器と、および燃焼式ヒータまたは冷媒水熱交換器で加熱された冷却水を加熱用熱交換器に循環させるポンプを利用して、車室内を燃焼式ヒータ温水暖房またはヒートポンプ温水暖房を行うことが可能な車両用空気調和装置が提案されている。
【0004】
そして、燃焼式ヒータを使用して車室内を暖房する燃焼式ヒータ温水暖房モードの時には、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度(TAO)に応じて変更される目標温水温度(TWO)と温水温度センサにて検出される実際の温水温度(TW)とが等しくなるように、燃焼式ヒータに供給する燃焼空気と燃料とを調節することによって燃焼式ヒータの燃焼能力(暖房能力)を変更するようにしている。なお、燃焼式ヒータによる燃焼能力の変更は、最大燃焼能力(Qmax:例えば4000kcal/h)から最小燃焼能力(Qmin:例えば2000kcal/h)までの間で連続的(リニア)または段階的に行われている(燃焼能力切替制御)。
【0005】
また、燃焼式ヒータ温水暖房モードの時には、温水温度センサにて検出した実際の温水温度(TW)が予め設定された過熱保護温度(例えば85℃)に到達すると、運転灯を点滅させ、且つ燃焼式ヒータの燃焼能力を徐々に小さくする消火時制御を行う。そして、所定時間(例えば50秒間)が経過したら、次に燃焼用ファンのみを駆動して掃気(ポストパージ)を開始する。そして、所定時間(例えば250秒間)が経過すると、掃気を終了して燃焼式ヒータの全ての機器を自動停止して消火制御を終了するようにしている。
【0006】
その後に、温度センサにて検出した実際の温水温度(TW)が予め設定された復帰温度(例えば75℃)以下に低下すると、グロープラグを通電してフレームセンサにより着火を検出するまでの所定時間(例えば110秒間)が経過するまで着火制御を行い、その後に上記の燃焼能力を切り替える制御(燃焼能力切替制御)に移るようにして、燃焼式ヒータが過熱することを防いでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の車両用空気調和装置においては、燃焼能力切替制御時に、温水温度センサにて検出される実際の温水温度(TW)が、燃焼式ヒータの運転を停止(OFF)する過熱保護温度に近い時、例えば過熱保護温度が85℃の場合に70℃〜84℃の時に、暖房熱負荷の大きい状態から暖房熱負荷の小さい状態に急激に変化したり、暖房熱負荷の小さい状態から更に暖房熱負荷の小さい状態に急激に変化したりすると、燃焼式ヒータの現在の燃焼能力では暖房過多となり、実際の温水温度が上記の過熱保護温度以上に瞬間的に上昇する。
【0008】
このように、実際の温水温度が過熱保護温度以上に瞬間的に上昇すると、上述したように、燃焼式ヒータの消火制御が行われ、燃焼式ヒータが再度燃焼能力切替制御に移るまでに例えば4分間〜10分間かかるので、その間は暖房能力が著しく不足するという問題が生じている。また、燃焼式ヒータは、着火制御時には排気ガスを多く排出するので、燃焼式ヒータ温水暖房中に燃焼式ヒータをオン、オフすることは回避することが望ましい。
【0009】
そこで、実際の温水温度が過熱保護温度以上に上昇した場合には、ヒートポンプ温水暖房により車室内を暖房することも考えられるが、上述したように、外気温度が極めて低い時には暖房能力不足を補うことはできない。また、燃焼式ヒータの代わりに、電動式の冷媒圧縮機を稼働させることになるので、冷媒圧縮機が大きな電力を消費することにより、車載電源を大きく消耗させてしまう。そして、電気自動車では、車載電源が走行用モータへの電力を供給しているので、電気自動車の走行距離が短くなるという問題が生じる。
【0010】
【発明の目的】
本発明の目的は、燃焼式ヒータの過熱保護による暖房中断を防止することのできる車両用空気調和装置を提供することにある。また、冷媒圧縮機を稼働させることなく、燃焼式ヒータの過熱保護により暖房能力が不足することを防止する車両用空気調和装置を提供することにある。さらに、車載電源の消耗を抑えることのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、目標値設定手段によって熱媒体の目標温度の目標値が設定され、上限値設定手段によって熱媒体の目標温度の上限値が設定される。そして、熱媒体温度検出手段にて検出した熱媒体の温度が目標温度の目標値および目標温度の上限値のうち低い方の値と等しくなるように燃焼式ヒータの燃焼能力が制御される。
したがって、燃焼式ヒータの燃焼能力が目標温度の上限値に応じて制御されれば、その目標温度の上限値が過熱保護温度よりも低い値に設定されているので、暖房熱負荷の小さい状態であっても、実際の熱媒体の温度と過熱保護温度との間に、瞬間的な暖房熱負荷の変化によっては到達不可能な余裕温度が設けられることになる。
それによって、暖房熱負荷の大きい状態から暖房熱負荷の小さい状態に瞬間的に変化したり、また暖房熱負荷の小さい状態から更に暖房熱負荷の小さい状態に瞬間的に変化したりした場合でも、実際の熱媒体の温度が過熱保護温度に到達することはない。この結果、燃焼式ヒータの過熱保護による暖房中断を防止できるので、仮に外気温度が極めて低い時でも暖房能力が不足することはない。また、燃焼式ヒータの起動と運転の停止とを繰り返すこともないので、排気ガスが悪化することもない。
【0012】
また、実際の熱媒体の温度が過熱保護温度に近い場合には、暖房熱負荷の少しの変化で実際の熱媒体の温度が過熱保護温度に到達し易い。このような状況は、暖房熱負荷が小さい状態で、最小燃焼能力の近くで燃焼式ヒータが運転されている時であるため、暖房熱負荷が小さい状態であればある程、目標温度の上限値を低く設定するようにしている。それによって、暖房熱負荷の少しの変化でも、実際の熱媒体の温度が過熱保護温度に到達することを抑えることができるので、燃焼式ヒータの過熱保護による暖房中断を防止することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ダクトから車室内に吹き出す空気の目標吹出温度が高くなる程、目標温度の目標値を高く設定する。また、請求項3に記載の発明によれば、外気温度が高温であればある程、暖房熱負荷が小さい状態であるため、目標温度の上限値を低く設定することにより、請求項1に記載の発明と同様な効果を達成することができる。また、請求項4に記載の発明によれば、車室内空気と車室外空気との内外気割合のうち車室内空気の割合が設定割合以上の場合には、暖房熱負荷が小さい状態であるため、目標温度の上限値を低く設定することにより、請求項1ないし請求項3のうちいずれか1つに記載の発明と同様な効果を達成することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、車両の速度が高車速の場合には、車両走行中に車両や燃焼式ヒータが走行風により冷やされるので、燃焼式ヒータが十分な暖房能力を出し難くなる。逆に、車両の速度が低車速の場合には、上記のような暖房熱負荷が少なくなるので、燃焼式ヒータが十分な暖房能力を出し易くなる。このため、車両の速度が高車速の時よりも車両の速度が低車速の時の方が、目標温度の上限値が低くなるように設定することにより、請求項1ないし請求項4のうちいずれか1つに記載の発明と同様な効果を達成することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、燃焼式ヒータの運転を不用意に停止させることはなく、燃焼式ヒータの過熱保護による暖房中断を防止できるので、燃焼式ヒータ温水暖房モードの代わりにヒートポンプ温水暖房モードを行う必要はない。それによって、冷媒圧縮機を稼働させることなく、燃焼式ヒータの過熱保護による暖房能力の不足を防止することができる。そして、車載電源の消耗を抑えることができるので、例えば電気自動車の走行距離が延びる。
【0016】
【発明の実施の形態】
〔実施形態の構成〕
図1ないし図9は本発明の実施形態を示したもので、図1は電気自動車用空気調和装置の全体構成を示した図で、図2は燃焼式ヒータの構造を示した図で、図3は電気自動車用空気調和装置の制御系を示した図である。
【0017】
電気自動車用空気調和装置1は、走行用モータMを搭載する電気自動車(車両)の車室内を空調する各空調機器(アクチュエータ)および燃焼式ヒータ9の燃焼能力を、エアコン制御装置(以下エアコンECUと呼ぶ)40および燃焼式ヒータ制御装置(以下燃焼式ヒータECUと呼ぶ)50によって制御するように構成された車両用オートエアコンである。
【0018】
そして、電気自動車用空気調和装置1は、内部に電気自動車の車室内に空調空気を導く空気通路を形成する空調ダクト2、この空調ダクト2内において空気流を発生させる遠心式送風機3、車室内を空調するためのヒートポンプサイクル(以下ヒートポンプと略す)4、および空調ダクト2内を流れる空気を加熱して車室内を暖房するためのブラインサイクル5等から構成されている。
【0019】
空調ダクト2は、電気自動車の車室内の前方側に配設されている。その空調ダクト2の最も上流側(風上側)は、内外気切替箱を構成する部分で、車室内空気(以下内気と言う)を取り入れる内気吸込口11a、および車室外空気(以下外気と言う)を取り入れる外気吸込口11bを有している。さらに、内気吸込口11aおよび外気吸込口11bの内側には、内外気切替ドア11が回転自在に支持されている。この内外気切替ドア11は、サーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)により駆動される。なお、内外気切替ドア11は、本発明の内外気割合調節手段に相当するもので、内外気切替箱と共に、吸込口モードを内気循環モード、内外気(半内気)導入モードまたは外気導入モード等に切り替える内外気切替手段を構成する。
【0020】
また、空調ダクト2の下流側(風下側)は、吹出口切替箱を構成する部分で、デフロスタ(DEF)吹出口12a、フェイス(FACE)吹出口13aおよびフット(FOOT)吹出口14aを有している。さらに、各吹出口の内側には、デフロスタ(DEF)ドア12、フェイス(FACE)ドア13およびフット(FOOT)ドア14が回転自在に支持されている。DEF、FACE、FOOTドア12〜14よりなる吹出口切替ドアは、サーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)により駆動されて、吹出口モードをフェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フットデフ(F/D)モードまたはデフロスタ(DEF)モードに切り替える。
【0021】
遠心式送風機3は、空調ダクト2と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容された遠心式ファン15、およびこの遠心式ファン15を駆動するブロワモータ16を有し、ブロワ駆動回路(図示せず)を介して印加されるブロワモータ端子電圧(以下ブロワ端子電圧と略す)に基づいてブロワ風量(ブロワモータ16の回転速度)が制御される。
【0022】
ヒートポンプ4は、冷媒圧縮機20、ブライン冷媒熱交換器7、2個の第1、第2減圧手段21、22、室外熱交換器23、エバポレータ24、アキュームレータ25、後記する循環回路切替手段およびこれらを環状に接続する冷媒配管等から構成された冷凍サイクル(アキュームレータサイクル)のことで、各空調運転モードに基づいて冷媒の循環方向が変わる。なお、本実施形態の空調運転モードとしては、車室内を冷房する冷房モード、車室内を除湿する除湿モード、ヒートポンプ4のみを使用させて車室内を暖房するヒートポンプ温水暖房モード、燃焼式ヒータ9のみを使用して車室内を暖房する燃焼式ヒータ温水暖房モード等が設定されている。また、ヒートポンプ4および燃焼式ヒータ9を同時運転する温水暖房モードを設けても良い。
【0023】
冷媒圧縮機20は、吸入したガス冷媒を圧縮する電動式の冷媒圧縮機(コンプレッサ)であって、エアコンECU40の出力信号に基づいて冷媒圧縮機20の駆動モータ(図示せず)の回転速度を制御する回転速度制御手段としてのエアコン用インバータ10を備えている。そして、駆動モータは、エアコン用インバータ10によって車載電源Vから印加される電力が連続的あるいは段階的に可変制御される。したがって、冷媒圧縮機20は、印加電力の変化による駆動モータの回転速度の変化によって、吐出口より吐出される冷媒の吐出容量を連続的に変化させてヒートポンプ4内を循環する冷媒の循環流量を調節することができる。これにより、ブライン冷媒熱交換器7(温水式ヒータ6)の加熱能力やエバポレータ24の冷却能力(除湿能力)が制御される。
【0024】
ブライン冷媒熱交換器7は、本発明の冷媒熱媒体熱交換器に相当するもので、アルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属パイプよりなる二重管構造を成し、内周側に冷却水通路(温水通路)、外周側に冷媒通路が形成されている。このブライン冷媒熱交換器7は、車室外に設置され、冷却水通路内を流れる冷却水(ブライン:熱媒体)と冷媒通路内を流れる高温高圧のガス冷媒とを熱交換させることにより、冷却水(以下温水と呼ぶ)を加熱する温水加熱器として運転されると共に、ヒートポンプ4の水冷式の凝縮器として運転される。なお、室外熱交換器23は、車室外に設置されて、内部を流れる冷媒と電動ファン26により送風される外気とを熱交換する。
【0025】
循環回路切替手段は、ヒートポンプ4中の冷媒の循環方向を冷房サイクル、暖房サイクルおよび除湿サイクル等のいずれかのサイクルに切り替えるものである。本実施形態では、循環回路切替手段として、通電(ON、オン)されると開弁し、通電が停止(OFF、オフ)されると閉弁する3個の電磁式開閉弁(以下電磁弁と略す)VC、VH、VDが使用されている。
【0026】
なお、本実施形態の冷房サイクルとは、図1において矢印Cで示したように、冷媒圧縮機20より吐出された冷媒が、ブライン冷媒熱交換器7→電磁弁VC→室外熱交換器23(凝縮器として運転)→第2減圧手段22→エバポレータ24→アキュームレータ25を経て冷媒圧縮機20に戻る循環回路を言う。また、暖房サイクルとは、図1において矢印Hで示したように、冷媒圧縮機20より吐出された冷媒が、ブライン冷媒熱交換器7→第2減圧手段22→室外熱交換器23(蒸発器として運転)→電磁弁VH→アキュームレータ25を経て冷媒圧縮機20に戻る循環回路を言う。さらに、除湿サイクルとは、図1において矢印Dで示したように、冷媒圧縮機20より吐出された冷媒が、ブライン冷媒熱交換器7→第2減圧手段22→電磁弁VD→エバポレータ24→アキュームレータ25を経て冷媒圧縮機20に戻る循環回路を言う。
【0027】
ブラインサイクル5は、本発明の熱媒体循環回路に相当するもので、温水式ヒータ6、上記のブライン冷媒熱交換器7、ウォータポンプ8、燃焼式ヒータ9、およびこれらを環状に接続する温水配管(ブライン配管)等から構成されている。なお、本実施形態では、ブラインサイクル5内を循環する温水(熱媒体、ブライン)として不凍液(例えばエチレングリコール水溶液)やLLC(ロングライフクーラント)を使用している。
【0028】
温水式ヒータ6は、本発明の加熱用熱交換器に相当するもので、空調ダクト2内に設置され、内部を流れる温水との熱交換によって通過する空気を加熱する室内空気加熱器である。温水式ヒータ6の空気の入口部および出口部には、温水式ヒータ6を通過する空気量(温風量)と温水式ヒータ6を迂回する空気量(冷風量)とを調節して車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する2個のエアミックス(A/M)ドア19が回転自在に支持されている。これらのA/Mドア19は、ステッピングモータやサーボモータ等のアクチュエータ(図示せず)により駆動される。ウォータポンプ8は、通電を受けて起動することによりブラインサイクル5内に温水の循環流を発生する。
【0029】
次に、燃焼式ヒータ9の構造を図1および図2に基づいて簡単に説明する。この燃焼式ヒータ9は、ヒータケース31、このヒータケース31内に設けられた燃焼筒32、この燃焼筒32内へ燃料タンク33から燃料を送るための燃料パイプ34、燃料に着火するグロープラグ35、燃焼空気を送風するエアファン36、このエアファン36を回転駆動するエアモータ37等から構成されている。
【0030】
なお、ヒータケース31の下方には、燃焼筒32内に燃焼空気を吸入する吸入管31a、および燃焼筒32内の燃焼排気を排出する排気管31bが接続されている。また、ヒータケース31と燃焼筒32との間には、内部を温水が流れる温水通路38が形成されている。さらに、ヒータケース31には、温水通路38内に温水を流入させる温水入口配管38a、および温水通路38から温水を流出させる温水出口配管38bが接続されている。そして、燃料パイプ34には、燃料タンク33内の燃料を電動式のフューエルポンプ39の作用により圧送することにより燃料が供給される。
【0031】
すなわち、この燃焼式ヒータ9は、フューエルポンプ39から圧送された燃料を燃焼空気と混合して燃焼し、その燃焼時に生成される燃焼ガスとの熱交換によって温水を加熱する。温水との熱交換を終えた燃焼ガスは、大気に排出される。但し、この燃焼式ヒータ9は、外気温度が低い(例えば4.4℃以下の低外気温)時、つまりヒートポンプ4だけでは十分に温水を加熱できない時に使用される。
【0032】
なお、燃焼式ヒータ9は、燃焼式ヒータECU50の出力信号に基づいて、フューエルポンプ39およびエアファン36を調節することにより、燃料供給量および燃焼用空気量を調整することができる。これにより、最大燃焼能力(Qmax:例えば6000kcal/h)と最小燃焼能力(Qmin:例えば3000kcal/h)との間で燃焼能力を連続的または段階的に切り替えて使用することができる。ここで、燃焼式ヒータ9の燃焼能力比(Qmin/Qmax)は、一般的に、0.6〜0.4程度のものが多い。
【0033】
エアコンECU40は、本発明の暖房制御手段に相当するもので、CPU、ROM、RAM等を持つマイクロコンピュータで、それ自体は周知のものである。また、エアコンECU40は、走行用モータMの回転速度を制御する走行用インバータIにも接続するジャンクションボックスJを介して車載電源Vより電力が供給されて作動する。
【0034】
そして、エアコンECU40は、各センサより入力されるセンサ信号、燃焼式ヒータECU50からの通信信号および操作パネル60より入力される操作信号と予めインプットされた制御プログラムに基づいて、燃焼式ヒータ9を除く各空調機器を制御する。すなわち、エアコンECU40は、各センサの検出値(検出信号)および操作パネル60の操作値(操作信号)などの入力信号と予めインプットされた制御プログラムに基づいて、各冷凍機器(アクチュエータ)の運転状態を制御する。
【0035】
エアコンECU40にセンサ信号を出力するセンサとしては、電気自動車の車室内の空気温度(内気温度)を検出する内気温度センサ41、車室外の空気温度(外気温度)を検出する外気温度センサ42、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ43、ヒートポンプ4の高圧圧力(冷媒圧力)を検出する冷媒圧力センサ44、エバポレータ24を通過した直後の空気温度(エバ後温度)を検出するエバ後温度センサ45、および温水式ヒータ6の入口水温を検出する温水温度センサ46等を使用している。上記の各センサのうち、外気温度センサ42は、本発明の暖房熱負荷検出手段、外気温度検出手段に相当するもので、温水温度センサ46は、本発明の熱媒体温度検出手段に相当するものである。なお、内気温度センサ41、外気温度センサ42、エバ後温度センサ45および温水温度センサ46は、例えばサーミスタ等の感温素子よりなる。
【0036】
燃焼式ヒータECU50は、本発明の暖房制御手段、過熱保護手段に相当するもので、CPU、ROM、RAM等を持つマイクロコンピュータで、それ自体は周知のものである。そして、燃焼式ヒータECU50は、各センサより入力されるセンサ信号、エアコンECU40からの通信信号および操作パネル60より入力される操作信号と予めインプットされた制御プログラムに基づいて、燃焼式ヒータ9のグロープラグ35、エアモータ37およびフューエルポンプ39等を制御する。
【0037】
燃焼式ヒータECU50にセンサ信号を出力するセンサとしては、燃焼式ヒータ9の出口水温を検出する温水温度センサ51、サーモスタット52およびサーモヒューズ53と、燃焼式ヒータ9の着火状態を検出するフレームセンサ54と、電気自動車の車速を検出する車速センサ55とを使用している。温水温度センサ51は、本発明の熱媒体温度検出手段に相当するもので、例えばサーミスタ等の感温素子よりなる。
【0038】
また、サーモスタット52は、燃焼式ヒータ9の出口水温が過熱限界温度(例えば93℃)に達した時に、燃焼式ヒータ9の運転を停止するOFF信号を燃焼式ヒータECU50に出力する。さらに、サーモヒューズ53は、燃焼式ヒータ9の出口水温が過熱限界温度(例えば240℃)に達した時に、燃焼式ヒータ9の運転を停止するOFF信号を燃焼式ヒータECU50に出力する。そして、燃焼式ヒータECU50は、温水温度センサ51にて検出した温水温度(TW)が過熱保護温度(例えば85℃)に達した時に、燃焼式ヒータ9の運転を停止する過熱保護手段を有している。
【0039】
次に、本実施形態の操作パネル60を図4に基づいて簡単に説明する。ここで、図4は操作パネル60を示した図である。この操作パネル60には、温度設定スイッチ61、ブロワオフスイッチ62、オートスイッチ63、風量設定スイッチ64、モード設定スイッチ65、液晶表示器66、内気循環設定スイッチ67、フロントデフロスタ(以下DEFと言う)スイッチ68、リヤデフォッガスイッチ69、エアコンスイッチ70、燃焼式ヒータ切替スイッチ71および燃焼式ヒータオフスイッチ72が配置されている。
【0040】
このうち、温度設定スイッチ61は、ダイヤル式の温度設定器で、冷媒圧縮機20の回転速度の設定、またはA/Mドア19の開度設定を行って車室内へ吹き出す空気の吹出温度を設定する吹出温度設定手段である。内気循環設定スイッチ67は、内外気切替ドア11を開閉制御することによって吸込口モードを内気循環モードに固定するスイッチである。
【0041】
〔実施形態の作用〕
次に、本実施形態の電気自動車用空気調和装置1の作動を図1ないし図7に基づいて説明する。先ず、本実施形態のエアコンECU40および燃焼式ヒータECU50の制御処理を図1ないし図5に基づいて説明する。ここで、図5はエアコンECU40および燃焼式ヒータECU50による主要な制御処理を示したフローチャートである。
【0042】
先ず、エアコンECU40および燃焼式ヒータECU50に車載電源Vから電力が供給されると、図5のルーチンが起動され、各イニシャライズおよび初期設定を行う(ステップS1)。次に、温度設定スイッチ61で設定された設定吹出温度Tsetを読み込む(吹出温度設定手段:ステップS2)。次に、操作パネル60からの各操作信号(例えば風量設定スイッチ64で設定される遠心式送風機3のブロワ風量信号、モード設定スイッチ65やDEFスイッチ68で設定される吹出口モード信号、内気循環設定スイッチ67で設定される内気循環モード信号)を読み込む(ステップS3)。
【0043】
次に、内気温度センサ41で検出した内気温度TR、外気温度センサ42で検出した外気温度TAM、日射センサ43で検出した日射量TS等の各種センサから各センサ信号を読み込む(外気温度検出手段:ステップS4)。次に、予めROMに記憶された下記の数1の式に基づいて、電気自動車の車室内に吹き出す空気の目標吹出温度TAOを算出する(目標吹出温度設定手段:ステップS5)。
【数1】
TAO=Kset×Tset−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
【0044】
なお、Tsetは温度設定スイッチ61で設定された設定吹出温度、TRは内気温度センサ41で検出した内気温度、TAMは外気温度センサ42で検出した外気温度、TSは日射センサ43で検出した日射量である。また、Kset、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0045】
次に、予めROMに記憶された特性図(マップ:図6参照)から、目標吹出温度(TAO)に対応するブロワ端子電圧(ブロワモータ16に印加する電圧)を決定する(ステップS6)。
次に、予めROMに記憶された図示しない特性図(マップ)から、目標吹出温度(TAO)に対応する吹出口モードを決定する(ステップS7)。なお、モード設定スイッチ65を乗員が操作した場合には、その操作に対応した吹出口モードに決定される。
【0046】
次に、予めROMに記憶された特性図(マップ:図7参照)から、目標吹出温度(TAO)に対応する吸込口モードを決定する(ステップS8)。ここで、吸込口モードの決定においては、内気循環設定スイッチ67が押された場合には吸込口モードが内気循環モードに固定される。
【0047】
なお、内気循環モードとは、内外気切替ドア11を図1の一点鎖線位置に設定して、内気吸込口11aを開き、外気吸込口11bを閉じて空調ダクト2内に100%内気を導入する吸込口モードである。また、外気導入モードとは、内外気切替ドア11を図1の実線位置に設定して、内気吸込口11aを閉じ、外気吸込口11bを開いて空調ダクト2内に100%外気を導入する吸込口モードである。そして、内外気導入モードとは、内外気切替ドア11を中立位置に設定して、内気吸込口11aおよび外気吸込口11bの両方とも開いて空調ダクト2内に50%内気および50%外気を導入する吸込口モードである。
【0048】
次に、ステップS5で算出された目標吹出温度TAOおよび外気温度センサ42で検出した外気温度TAMに応じて、空調運転モードを決定する(ステップS9)。具体的には、目標吹出温度TAOが高温側の場合には、ウォータポンプ8をONし、ブライン冷媒熱交換器7を水冷式の凝縮器として運転し、室外熱交換器23のみを蒸発器として運転するヒートポンプ温水暖房モード(図1の暖房サイクルH)が選択される。
【0049】
また、目標吹出温度TAOが低温側の場合には、ウォータポンプ8をOFFし、室外熱交換器23を空冷式の凝縮器として運転し、エバポレータ24を蒸発器として運転する冷房モード(図1の冷房サイクルC)が選択される。さらに、ヒートポンプ温水暖房モード時にDEFスイッチ68が押されている場合には、ウォータポンプ8をONし、ブライン冷媒熱交換器7を水冷式の凝縮器として運転し、エバポレータ24を蒸発器として運転するヒートポンプ温水暖房モード(図1の除湿サイクルD)が選択される。
【0050】
そして、外気温度TAMが4.4℃以下の場合には、ウォータポンプ8をONし、冷媒圧縮機20をOFFし、燃焼式ヒータ9を燃焼能力切替制御する燃焼式ヒータ温水暖房モードが選択される。これら以外に、冷房モードとヒートポンプ温水暖房モードとの間に、ウォータポンプ8および冷媒圧縮機20をOFFし、遠心式送風機3のみを運転する送風モードを選択するようにしても良い。
【0051】
次に、ステップS9で決定された空調運転モードが冷房モード、除湿モードおよびヒートポンプ温水暖房の場合には、冷媒圧縮機20の目標回転速度を決定して、車室内に吹き出す空気の吹出温度制御を行う。また、ステップS9で決定された空調運転モードが燃焼式ヒータ温水暖房モードの場合には、図5に示すサブルーチンがコールされ、車室内に吹き出す空気の吹出温度制御を行う(回転速度制御手段:ステップS10)。
【0052】
次に、各ステップS5〜ステップS8にて算出または決定した各制御状態が得られるように、エアコン用インバータ10、内外気切替ドア11、ウォータポンプ8、DEF、FACE、FOOTドア12〜14、ブロワモータ16、A/Mドア19、電動ファン26、電磁弁VC、VH、VDおよび燃焼式ヒータ9(グロープラグ35、エアモータ37、フューエルポンプ39)等の各アクチュエータに対して制御信号を出力する(ステップS11)。そして、ステップS12で、制御サイクル時間であるτ(例えば0.5秒間〜2.5秒間)の経過を待ってステップS2の処理に戻る。
【0053】
〔実施形態の燃焼式ヒータ温水暖房モード時の吹出温度制御〕
次に、本実施形態のエアコンECU40および燃焼式ヒータECU50による吹出温度制御を図1ないし図9に基づいて説明する。ここで、図8はエアコンECU40および燃焼式ヒータECU50による吹出温度制御(燃焼式ヒータの燃焼能力切替制御)を示したサブルーチンである。
【0054】
先ず、空調運転モードとして燃焼式ヒータ温水暖房モードが選択されているか否かを判断する(ステップS21)。この判断結果がNOの場合には、冷媒圧縮機20の回転速度制御を行い(ステップS22)、その後に図8のサブルーチンを抜ける。具体的には、目標吹出温度TAOおよびエバ後温度TE等から目標温水温度TWOを算出し、温水温度センサ46にて検出する温水温度TWが目標温水温度TWOと等しくなるように、冷媒圧縮機20の回転速度を変更する。
【0055】
また、ステップS21の判断結果がYESの場合には、燃焼式ヒータ9が定常燃焼中であるか否かを判定する(ステップS23)。この判定結果がNOの場合には、着火制御を行う。具体的には、グロープラグ35を予熱するグロー予熱(例えば60秒間)および着火時燃焼(例えば50秒間)を行う(ステップS24)。その後に、図8のサブルーチンを抜ける。
【0056】
また、ステップS23の判定結果がYESの場合には、外気温度センサ42で検出した外気温度TAM、エバ後温度センサ45で検出したエバ後温度TE、温水温度センサ51で検出した温水温度TW、サーモスタット52およびサーモヒューズ53の出力信号、車速センサ55で検出した車速VE等の各種センサから各センサ信号を読み込む(暖房熱負荷検出手段、外気温度検出手段、熱媒体温度検出手段、車速検出手段:ステップS25)。なお、本実施形態では、内外気切替ドア11への出力信号によって現在の吸込口モードを検出している。
【0057】
次に、温水温度センサ51で検出した温水温度TWが過熱保護温度(例えば85℃)TW1以上に上昇しているか否かを判定する(ステップS26)。この判定結果がYESの場合には、消火制御を行うと同時に、空調運転モードをヒートポンプ温水暖房モードに変更する(過熱保護手段:ステップS27)。その後に、ステップS22の制御処理に進む。なお、消火制御では、燃焼能力を最大燃焼能力の50%に下げ、更に40%に下げる消火時制御1(例えば20秒間)、燃焼能力を最大燃焼能力の40%から30%に下げる消火時制御2(例えば30秒間)、およびポストパージ運転(例えば250秒間)を行う。
【0058】
また、ステップS26の判定結果がNOの場合には、温水式ヒータ6を通過する空気の風量(m3 /h)から温度効率φを決定する(温度効率決定手段:ステップS28)。ここでは、遠心式送風機3の運転状態によって求めた遠心式送風機3のブロワ風量と温度効率φとの特性図(図示せず)に基づいて温度効率φを算出する。
【0059】
次に、ヒートポンプ4の目標温水温度TWOを後述の方法で決定する(目標値設定手段:ステップS29)。すなわち、エバ後温度センサ45で検出したエバ後温度(温水式ヒータ6に吸い込む空気の吸込温度)TE、図5のフローチャートのステップS5で決定した目標吹出温度TAO、およびステップS28で決定した温度効率φから目標温水温度TWOを下記の数2の式に基づいて算出する。
【数2】
TWO=(TAO−TE)/φ+TE
【0060】
次に、燃焼式ヒータ9の目標温水温度の目標値TWH1を後述の方法で決定する(目標値設定手段:ステップS30)。すなわち、ステップS29で算出した目標温水温度TWOから目標温水温度の目標値TWH1を下記の数3の式に基づいて算出する。
【数3】
TWH1=f(TWO)
【0061】
次に、温水温度センサ51で検出した温水温度TWが過熱保護温度(例えば85℃)TW1に近い設定温水温度(例えば70℃)TW2以上に上昇しているか否かを判定する(ステップS31)。この判定結果がNOの場合には、ステップS30で算出した目標温水温度の目標値TWH1を目標温水温度TWHと決定する(目標温水温度決定手段:ステップS32)。
【0062】
次に、目標温水温度TWHと温水温度センサ51で検出した温水温度TWとの温度偏差に基づいて、燃焼式ヒータ9の燃焼能力を決定する(燃焼能力決定手段:ステップS33)。その後に、図8のサブルーチンを抜ける。具体的には、燃焼式ヒータ9の燃焼能力は、燃焼空気と燃料とを調節することにより、最大燃焼能力(Qmax:例えば6000kcal/h)と最小燃焼能力(Qmin:例えば3000kcal/h)との間で連続的または段階的に切り替えられる。
【0063】
なお、目標温水温度TWHと温水温度TWとの温度偏差が大きい場合には、燃焼式ヒータ9の燃焼能力が最大燃焼能力寄りとなり、目標温水温度TWHと温水温度TWとの温度偏差が小さい場合には、燃焼式ヒータ9の燃焼能力が最小燃焼能力寄りとなる。ここで、燃焼式ヒータ9を最大燃焼能力で運転する場合には、エアモータ37に供給する電流値または電圧値を最大値にしてエアファン36を最速回転させて燃焼筒32内に大風量の燃焼空気を供給し、且つフューエルポンプ39に供給する電流値または電圧値を最大値にしてフューエルポンプ39を最速回転させて燃焼筒32内に大流量の燃料を供給する。また、燃焼式ヒータ9を最小燃焼能力で運転する場合には、逆に燃焼筒32内に小風量の燃焼空気および小流量の燃料を供給する。
【0064】
また、ステップS31の判定結果がYESの場合には、各センサ信号に対応する目標温水温度の上限値TWH2を後述の方法で決定する(上限値設定手段:ステップS34)。すなわち、予めROMに記憶された図9の特性図(マップ)に基づいて目標温水温度の上限値を設定する。具体的には、図9の特性図に示したように、図5のステップS8で決定した吸込口モードが内気循環モード、あるいは車速センサ55で検出した車速VEが低車速(例えば5km/h以下)の時に、外気温度センサ42で検出した外気温度TAMが例えば−3℃以下の場合は、目標温水温度の上限値TWH2を過熱保護温度TW1よりも低い例えば75℃に設定し、外気温度TAMが例えば−3℃以上の場合は、外気温度TAMが高くなれば高くなる程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定する。
【0065】
また、図9の特性図に示したように、図5のステップS8で決定した吸込口モードが外気導入モードで、且つ車速センサ55で検出した車速VEが高車速(例えば60km/h以上)の時に、外気温度センサ42で検出した外気温度TAMが例えば−10℃以下の場合は、目標温水温度の上限値TWH2を過熱保護温度TW1よりも低い例えば80℃に設定し、外気温度TAMが例えば−10℃以上の場合は、外気温度TAMが高くなれば高くなる程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定する。
【0066】
したがって、温水温度センサ51で検出した温水温度TWが燃焼式ヒータ9をOFFさせる過熱保護温度(例えば85℃)TW1に近い設定温度(例えば70℃)TW2の場合には、予め種々の条件に応じて、下記の数4の式のように、過熱保護温度TW1までΔTW(例えば5℃以上)のマージンを取っておくことにより、不用意に燃焼式ヒータ9をOFFさせないようにすることができる。
【数4】
TWH2=TW1−ΔTW
【0067】
次に、ステップS30で算出した目標温水温度の目標値TWH1よりもステップS34で算出した目標温水温度の上限値TWH2の方が小さい値であるか否かを判定する(ステップS35)。この判定結果がNOの場合には、ステップS32の制御処理に進む。
また、ステップS35の判定結果がYESの場合には、ステップS34で算出した上限値TWH2を目標温水温度TWHと決定する(目標温水温度決定手段:ステップS36)。その後に、ステップS33の制御処理に進む。
【0068】
〔実施形態の効果〕
以上のように、本実施形態の電気自動車用空気調和装置1は、空調運転モードが燃焼式ヒータ温水暖房モードの時の燃焼能力切替制御(定常燃焼)時に、温水温度センサ51にて検出される実際の温水温度TWが、燃焼式ヒータ9をOFFする過熱保護温度(例えば85℃)TW1に近い時に、暖房熱負荷が大きい状態から暖房熱負荷が小さい状態に変化して、燃焼式ヒータ9の現在の燃焼能力では暖房過多となっても、予め上記のような種々の条件によりΔTW(例えば5℃以上)のマージンを取っている。
【0069】
例えば吸込口モードが外気導入モードで、且つ電気自動車が高車速で走行した直後に電気自動車が停止した時、すなわち、電気自動車や燃焼式ヒータ9が冷やされ、且つ冷たい外気が大量に空調ダクト2内に吸い込まれる暖房熱負荷の大きい状態から暖房熱負荷の小さい状態に変わった時であっても、上記のように過熱保護温度に対してマージンを取っているので、瞬間的であっても実際の温水温度TWが過熱保護温度TW1に到達することはない。
【0070】
あるいは、吸込口モードが内気循環モードで、且つ電気自動車が低車速で走行または停車している時、すなわち、そもそも電気自動車や燃焼式ヒータ9が冷え難く暖房熱負荷の小さい状態の時に、乗員が温度設定スイッチ61の設定吹出温度Tsetを下げて暖房過多となった場合であっても、上記のように過熱保護温度に対してマージンを取っているので、瞬間的であっても実際の温水温度TWが過熱保護温度TW1に到達することはない。このように、実際の温水温度TWが過熱保護温度TW1に到達しないので、電力を使用する冷媒圧縮機20を稼働させることなく、燃焼式ヒータ9の過熱保護による暖房中断を防止できるので、暖房能力の低下を防止することができる。また、燃焼式ヒータ9をOFFしない、すなわち、再運転のための着火制御を行う必要がないので、燃焼式ヒータ9より排出する排気ガスの量を抑えることができる。
【0071】
さらに、暖房熱負荷が大きい状態から暖房熱負荷が小さい状態に変化しても、実際の温水温度TWが過熱保護温度TW1に到達することを防止できるので、空調運転モードを燃焼式ヒータ温水暖房モードからヒートポンプ温水暖房に切り替える必要もない。したがって、外気温度TAMが0℃以下の極寒時でも、暖房能力が不足しない。その上、燃焼式ヒータ9の代わりに、ヒートポンプ4の電動式の冷媒圧縮機20を起動させることもないので、車載電源Vを大きく消耗させてしまうことも回避できる。このため、エアコン用インバータ10に電力を供給する車載電源Vが走行用モータMに電力を供給していても、電気自動車の走行距離が短くなる不具合を回避できる。
【0072】
〔他の実施形態〕
本実施形態では、本発明を電気自動車の車室内を冷暖房する電気自動車用空気調和装置1に適用したが、本発明を空冷式エンジン搭載車、水冷式エンジン搭載車、ハイブリッド自動車の車室内を暖房する車両用空気調和装置に適用しても良い。
【0073】
本実施形態では、熱媒体として温水(ブライン)を使用したが、熱媒体として潤滑油または作動油等のオイル、エンジン冷却水、あるいは冷媒を使用しても良い。そして、エアコンECU40および燃焼式ヒータECU50を1個のマイクロコンピュータで構成しても良く、また各々を2個以上のマイクロコンピュータやアナログ回路にて構成しても良い。
【0074】
そして、図1に示したブラインサイクル5に、ラジエータ等の放熱装置、電動器具の排熱を回収する排気回収器や電気ヒータ等の補助加熱装置、流路切替弁等の付属装置を追加しても良い。さらに、減圧手段として、温度自動膨張弁、電動式の膨張弁、オリフィス等の減圧手段を用いても良いが、安価で、故障のないキャピラリチューブやオリフィス等の固定絞りを用いることが望ましい。そして、気液分離器として、レシーバ(受液器)を使用しても良い。このレシーバの接続箇所は、ブライン冷媒熱交換器7と第1減圧手段21との間に接続するか、あるいは室外熱交換器23と第2減圧手段22との間に接続する。
【0075】
本実施形態では、吸込口モードを、内気の割合が100%の内気循環モードと外気の割合が100%の外気導入モードとに切り替える内外気切替ドア11を設けたが、内気100%モードと外気100%モードとの間を連続的または段階的に切り替えることが可能な内外気切替ドアを設けても良い。この場合には、内外気割合のうち内気割合が多ければ多い程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしても良い。また、内外気割合のうち外気割合が少なければ少ない程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしても良い。
【0076】
本実施形態では、外気温度TAMが高ければ高い程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしたが、車両の速度が低ければ低い程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしても良い。また、設定吹出温度Tsetと内気温度TRとの温度偏差が小さければ小さい程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしても良い。さらに、エバ後温度TEと設定吹出温度Tsetとの温度偏差が小さければ小さい程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしても良い。そして、燃焼式ヒータ9の燃焼能力が最小燃焼能力に近ければ近い程、目標温水温度の上限値TWH2を低く設定するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気自動車用空気調和装置の全体構成を示した模式図である(実施形態)。
【図2】燃焼式ヒータの構造を示した断面図である(実施形態)。
【図3】電気自動車用空気調和装置の制御系を示したブロック図である(実施形態)。
【図4】操作パネルを示した正面図である(実施形態)。
【図5】エアコンECUおよび燃焼式ヒータECUによる主要な制御処理を示したフローチャートである(実施形態)。
【図6】目標吹出温度に対するブロワ端子電圧を示した特性図である(実施形態)。
【図7】目標吹出温度に対する吸込口モードを示した特性図である(実施形態)。
【図8】燃焼式ヒータ温水暖房モード時の吹出温度制御を示したサブルーチンである(実施形態)。
【図9】外気温度等の種々の条件に対する目標温水温度の上限温水温度を示した特性図である(実施形態)。
【符号の説明】
1 電気自動車用空気調和装置
2 空調ダクト
3 遠心式送風機
4 ヒートポンプサイクル
5 ブラインサイクル(熱媒体循環回路)
6 温水式ヒータ(加熱用熱交換器)
7 ブライン冷媒熱交換器(冷媒熱媒体熱交換器)
8 ウォータポンプ
9 燃焼式ヒータ
11 内外気切替ドア(内外気割合調節手段)
20 冷媒圧縮機
40 エアコンECU(暖房制御手段)
42 外気温度センサ(暖房熱負荷検出手段、外気温度検出手段)
46 温水温度センサ(熱媒体温度検出手段)
50 燃焼式ヒータECU(暖房制御手段、過熱保護手段)
51 温水温度センサ(熱媒体温度検出手段)
55 車速センサ(車速検出手段)
11a 内気吸込口
11b 外気吸込口
Claims (6)
- (a)車室内へ向かって空気を送るためのダクトと、
(b)このダクト内において車室内へ向かう空気流を発生させる送風機と、
(c)前記ダクト内を流れる空気と熱媒体とを熱交換させて空気を加熱する加熱用熱交換器、およびこの加熱用熱交換器に直列接続され、燃焼能力に応じて熱媒体を加熱する燃焼式ヒータを有する熱媒体循環回路と、
(d)この熱媒体循環回路中を循環する熱媒体の温度を検出する熱媒体温度検出手段と、
(e)この熱媒体温度検出手段にて検出した熱媒体の温度が、前記燃焼式ヒータの過熱を保護する過熱保護温度に到達した時に、前記燃焼式ヒータの運転を停止させる過熱保護手段と、
(f)前記熱媒体循環回路中を循環する熱媒体の目標温度の目標値を設定する目標値設定手段と、
(g)前記熱媒体循環回路中を循環する熱媒体の目標温度に前記過熱保護温度よりも低い上限値を設定する上限値設定手段と、
(h)前記目標値設定手段にて設定された目標温度の目標値および前記上限値設定手段にて設定された目標温度の上限値のうちの低い方の値に、前記熱媒体温度検出手段にて検出した熱媒体の温度が等しくなるように、前記燃焼式ヒータの燃焼能力を制御する暖房制御手段と
を備えた車両用空気調和装置において、
前記上限値設定手段は、暖房熱負荷を検出する暖房熱負荷検出手段を有し、
この暖房熱負荷検出手段にて検出した暖房熱負荷が小さい状態であればある程、前記目標温度の上限値を低く設定することを特徴とする車両用空気調和装置。 - 請求項1に記載の車両用空気調和装置において、
前記目標値設定手段は、前記ダクトから車室内に吹き出す空気の目標吹出温度が高くなる程、前記目標温度の目標値を高く設定することを特徴とする車両用空気調和装置。 - 請求項1に記載の車両用空気調和装置において、
前記暖房熱負荷検出手段は、車室外空気の温度を検出する外気温度検出手段であり、
前記上限値設定手段は、前記外気温度検出手段にて検出した車室外空気の温度が高温であればある程、前記目標温度の上限値を低く設定することを特徴とする車両用空気調和装置。 - 請求項1ないし請求項3のうちいずれか1つに記載の車両用空気調和装置において、
前記ダクトの最上流側には、車室内空気を吸い込むための内気吸込口、車室外空気を吸い込むための外気吸込口、および前記内気吸込口より吸い込まれる車室内空気と前記外気吸込口より吸い込まれる車室外空気との内外気割合を調節する内外気割合調節手段が設けられ、
前記上限値設定手段は、車室内空気と車室外空気との内外気割合のうち車室内空気の割合が設定割合以上の際に、前記目標温度の上限値を低く設定することを特徴とする車両用空気調和装置。 - 請求項1ないし請求項4のうちいずれか1つに記載の車両用空気調和装置において、
前記上限値設定手段は、車両の速度を検出する車速検出手段を有し、
この車速検出手段にて検出した車両の速度が高車速の時よりも、前記車速検出手段にて検出した車両の速度が低車速の時の方を、前記目標温度の上限値を低く設定することを特徴とする車両用空気調和装置。 - 請求項1ないし請求項5のうちいずれか1つに記載の車両用空気調和装置において、
前記車両用空気調和装置は、車載電源より電力が供給されると稼働する電動式の冷媒圧縮機、およびこの冷媒圧縮機より吐出された冷媒と熱媒体とを熱交換させて熱媒体を加熱すると共に、前記加熱用熱交換器と直列して接続された冷媒熱媒体熱交換器を有するヒートポンプサイクルを備え、
前記暖房制御手段は、前記燃焼式ヒータを運転して車室内を暖房する燃焼式ヒータ温水暖房モードと前記冷媒圧縮機を稼働して車室内を暖房するヒートポンプ温水暖房モードとを切り替えることを特徴とする車両用空気調和装置。
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