JP3749757B2 - ラッチボルトの係止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ホテルの客室等に用いられる自動施錠の錠前の、デッドボルトを兼ねるラッチボルト(以下単にラッチボルトという)の係止装置に係り、特に、簡単な操作でラッチボルトを引込めたままの状態にすることができるラッチボルトの係止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばホテルの客室や企業の研究所の扉口等に用いられる錠前は、安全性を向上させるために、所謂自動施錠の錠前が採用されている場合が多い。
【0003】
この自動施錠の錠前は、その一例を後述するが、閉扉時ラッチボルトが扉枠のストライク孔に投入されると、そのラッチボルトを突出位置に固定する部材が自動的に作動し、閉扉後合鍵により錠前を施錠しなくとも扉の施錠をすることができる。
【0004】
しかして、この自動施錠の錠前を例えば研究所の扉口、或いは金融機関の従業員の出入り口に装着した場合、人の出入りの少ない日中は良いが、出退社時等人の出入りの多い朝夕には、人の出入り毎に合鍵や電気錠の暗証符号入力盤の操作をしなければならず煩わしい。
【0005】
そこで、自動施錠のラッチボルトを一時的に錠箱内に没入した状態に保持し、これを空錠とするラッチボルトの係止装置が提案され、かつ実用されている。
【0006】
このラッチボルトの係止装置は、例えば図1に示すように、錠箱1内にラッチボルト2と一体的に前後方向(フロント板3の板厚方向)に移動する係止体4と、外端面に形成されたスリワリをフロント板3に臨ませた制御杆5と、この制御杆5の内端に装着されたストッパー6とを有している。
【0007】
上記ストッパー6は、このラッチボルトの係止装置が作動しない常態では、図1に示すように、係止体4の移動軌跡と干渉しない角度位置にあるが、作動時には、合鍵又は室内側のハンドルによりラッチボルト2を錠箱1内に引込ませた状態で、制御杆5をドライバー等で反時計方向に例えば90度回動させる。
【0008】
すると、図2に示すように、ストッパー6が係止体4の移動軌跡と干渉するようになり、前者が前方(手前側)から後者を遮るので、係止体4と一体のラッチボルト2は錠箱1内に引込んだ状態に係止される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記したラッチボルトの係止装置は勿論その所期の機能を発揮し実用されているが、係止装置を作動させるため一旦扉を開けて制御杆5を露出させ、しかもドライバー等を捜して扉口まで持っていかなくてはならないので、やや操作が面倒である、という恨みが残る。
【0010】
そこで、この発明は、扉を閉めた状態で手指で操作でき、勿論ドライバー等を使用しなくてもよい操作の簡単なラッチボルトの係止装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、錠箱のフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内され、また、前方に付勢されたデッドボルトを兼ねるラッチボルトと、前後方向に延在し、中央部をラッチボルトの近傍において回動可能に支承されると共に、その前端がラッチボルトの頭部の段部の移動軌跡と干渉する方向に付勢された係止レバーと、この係止レバーに関しラッチボルトとは反対側に配設され、前後方向に移動可能に案内されると共に前方に付勢され、また、ラッチボルトに突設された連結片に前方から係合可能な解錠ボードと、この解錠ボードに植設され、係止レバー15の後方の傾斜部に前方から当接する解錠ピンと、シリンダ錠の内筒及びサムターン軸に連結され、外周部にセクターギアを形成して、このセクターギアを解錠ボードに形成されたラックに噛み合わせた制御カムとを有する自動施錠錠において、ラッチボルトを一時的に錠箱内に保持し、自動施錠錠を空錠とする作動モードと、本来の自動施錠錠とする作動モードとを任意に切り替えるものであって、上記制御カムに同軸かつ一体的に連結されたサムターン軸と、室内側に設けられたサムターン軸操作用の摘みとを、第1及び第2カム体の係合を介して同軸かつ相対回動可能に連結し、第1カム体には外周に円周方向に切欠を形成すると共に、第2カム体の先端に上記第1カム体の切欠と円周方向において遊動可能に係合する係合突起を突設し、これら第1及び第2カム体の何れか一方をサムターン軸に、他方を摘みに夫々同軸かつ一体的に結合し、一方、摘みに結合されたカム体を思案位置を有するばね装置により付勢したことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の態様】
以下この発明の実施例を図3乃至図8を参照して説明する。
図3において符号7は扉を、符号8及び9は外側及び内側エスカチオンを夫々示し、これら外側及び内側エスカチオンの間における扉7内に自動施錠の錠前の錠箱1が装着される。
【0013】
自動施錠の錠箱の構造は周知であり、加えて本発明の要旨ではないが、念の為その構造の一例を図4に示すと、シリンダ錠の内筒又はサムターン軸に連結された制御カム11の外周部にセクターギア12が形成されている。
【0014】
このセクターギア12は、前後方向に移動可能に案内され、前方に向かう方向に付勢された解錠ボード13の一部に形成されたラックと噛み合っており、また、この解錠ボード13に植設された解錠ピン14が係止レバー15の傾斜部に前方から当接している。
【0015】
上記した構成により、例えばサムターン軸を図4で反時計方向に回すと、解錠ピン14が後方に移動するので係止レバー15が時計方向に回動してラッチボルト2の係止を解く。
【0016】
更にサムターン軸を反時計方向に回すと、解錠ボード13が連結片16を介してラッチボード17を後方に移動させるので、ラッチボード17に搭載されたラッチボルト2が錠箱1内に没入する。
【0017】
尚、図3に示す本発明のラッチボルトの係止装置を装備した錠は、ホテルの客室に装着される電気錠で、図4に示す錠箱の構造に加え、外側エスカチオン8のシリンダ錠洞18に装着される図示しない、かつ、サムターン軸19と同軸ではないシリンダ錠によってもラッチボルトの出し入れができる構造であるが、その構造は本発明の要旨ではないので、更に詳細な説明は省略する。
【0018】
上記サムターン軸19は、図示しない自動施錠型の錠箱の制御カム(図4では符号11)を貫通し、外端(図3で左端)は外側エスカチオン8の内面に回動自在に支承されている。
【0019】
一方、サムターン軸19の内端は、カプラー21を介して、内側エスカチオン9の室内側表面に回動可能に突設された摘み22に同軸かつ相対回動可能に連結されている。
【0020】
即ち、図5に示すように、カプラー21の外端面(図3及び図5で左端面)にはカプラー21の内端部と嵌合する段付の受入れ孔21aが開口しており、この受入れ孔21aと嵌合するサムターン軸19の内端部は、カプラー21を貫通するピン23(図3参照)によりカプラー21に一体的に結合されている。
【0021】
また、図5に示すように、カプラー21の内端面には断面小判形の取付段部21bと連結軸21cとが同軸に連設されている。
【0022】
一方、図5に示すように、摘み22の外端面に連設された小径部22aのほぼ中央部に止め輪溝22bが形成されており、この止め輪溝22bより外側(図5で左側)の横断面は矢張り小判形になっていて、この横断面小判形の部分はカム取付部22cとなっている。
【0023】
また、小径段部22aには、上記連結軸21cと回動可能に嵌合する連結孔22dが穿設されている。
【0024】
図3に戻って、上記した構造の摘み22は、その小径段部22aを外側にして内側エスカチオン9に回動自在に支承され、止め輪24により抜け止めが施されている。
【0025】
上記摘みのカム取付部22cには、図3及び図6に示すように、大体の形状が皿状で、外周に角度にして約90度の切欠を形成し、中心部にカム取付部22cの横断面形状と同形の小判形の取付孔(図示せず)を開口させた第1カム体26が嵌着されている。
【0026】
一方、上記のようにして内側エスカチオン9に装着された摘み22の連結孔には、外端にサムターン軸19を結合したカプラー21の内端の連結軸21c(図5参照)が回動可能に嵌合している。
【0027】
このようにして、サムターン軸9と摘み22とは、カプラー21を介して、同軸かつ相対回動可能に連結されている。
【0028】
そして、カプラー21の取付段部21b(図5参照)には、その横断面形状と同形の小判形の取付孔(図示せず)を中心部に開口させた第2カム体27が、第1カム体26との間にワッシャー28を挟んで嵌着されている。
【0029】
図示の実施例における第2カム体27は、図6に示すように、全体の形状が涙滴形の板状体で、その尖端である先端には、第1カム体26に対向するようにして(図3参照)、ピン様の係合突起29が突設されている。
【0030】
この係合突起29は、図6に明示するように、第1カム体の切欠25に一定角度(図示の実施例では90度)遊動可能に係合している。
【0031】
また、第1カム体26の中心に関して切欠25とは反対側の端部には、図3及び図6に示すように、ばね杆31の一端が回動可能に結合されており、このばね杆31の他端部は内側エスカチオン9に取付けられた水平な支持板32のスリット33に遊嵌している。
【0032】
更にまた、上記ばね杆31には、圧縮コイルばねとしての付勢ばね34が巻装されている。
【0033】
上記したばね杆31、支持板32及び付勢ばね34等からなるばね装置は、ばね杆31が図6で鉛直になる角度位置が一端が左にも右にも振れる思案位置となる、思案位置を有するばね装置(以下単にばね装置という)35を構成する。
【0034】
なお、図6において符号36は停止ピンを示し、この停止ピン36はばね装置35により付勢された第1カム体26の角度位置を規定するものである。
【0035】
上記のように構成されたこの発明の一実施例によるラッチボルトの係止装置において、自動施錠の錠前の本来の機能を有する常態においては、図6に示すように、例えば第1カム体の切欠25がX−Y座標軸の第1象限に在るものとする。
【0036】
またこのとき、サムターン軸19と一体の係合突起29がサムターン軸19を常時付勢している付勢力により(例えば図4の解錠ボード13を前方に付勢しているばねの付勢力)、係合突起29が時計方向に付勢され、切欠25の一方の端縁に係止されて、時計盤面に換算して3時の角度位置に在るものとする。
【0037】
上記し、また図6に示す錠前の常態においては、ばね装置35はそのばね杆31及び第1カム体26の角度位置を安定に保ち、サムターン軸19を弾性的に定角度位置に係止する。
【0038】
この常態においては、室外側から合鍵及び/又はノブ等の外部操作部材により、或いは室内側からハンドルやノブ等の内部操作部材を操作すれば、錠箱内部の周知のラッチボルト操作機構によりラッチボルトが錠箱内に引込むように駆動され、この時ラッチボルトと一体的に連結されたサムターン軸19及び係合突起29は図6において反時計方向に90度回動するので、係合突起29は第1カム体の切欠25内で遊動する。
【0039】
この発明によるラッチボルトの係止装置を作動させるには、サムターンの室内側の摘み22を室内側から見て時計方向に、図6においては第1カム体26を反時計方向に駆動するように手指で回す。
【0040】
すると、サムターン軸19に印加される付勢力、及びばね装置35の呈する弾力に抗して、摘み22と一体の第1カム体26が図6において反時計方向に回動し始める。
【0041】
その回動の初期においては、手指の力はばね装置の付勢ばね34を押し縮める方向に作用し、ばね杆31の他端部を支持板32のスリット33に押込みつつ、第1カム体26を反時計方向に回動するように駆動する。
【0042】
ばね杆31がほぼ鉛直になる思案位置を過ぎると、今度は付勢ばね34の弾力により第1カム体26が急激に反時計方向に回動し、一方の停止ピン36に当接して、その切欠25がX−Y座標軸の第4象限に整合する角度位置に停止する。
【0043】
このときには、切欠25の一方の端縁が、サムターン軸の付勢力に抗して、サムターン軸19と一体の係合突起29を時計盤面に換算して12時の角度位置に弾性的にかつ恒常的に係止する。
【0044】
したがって、サムターン軸19に連結されたラッチボルトも錠箱内に引込んだ位置を安定に保ち、このようにしてこの錠前は空錠状態となる。
【0045】
このラッチボルトの係止装置を解除するには、単に摘み22と一体の第1カム体26を上記とは逆に、即ち図7において時計方向に手指で回動すればよい。
【0046】
この解除方向の摘み22の回動により、このラッチボルトの係止装置を構成する各部材は前記とは逆方向に作動し、図6に示す常態に戻る。
【0047】
尚、本発明は上記した実施例に限定されず、種々に変形して実施することができる。
【0048】
例えば、図8に示すように、ばね装置35として周知の開脚ばねを採用し、その一端を第1カム体26のばね掛けピンに、他端を内側エスカチオンに植設された固定ばね掛けピン37に夫々回動自在に巻き掛けておく。
【0049】
すると、第1カム体26の回動により、開脚ばね35はその開脚部の間隔を狭めるように弾性変形すると共に、その他端を回動中心として全体が回動するから、矢張り思案位置が生じる。
【0050】
また、図示の実施例では第1カム体26を摘み22に、第2カム体27をサムターン軸19に夫々結合するようにしたが、第1及び第2カム体26及び27は要するに遊動機構付のカプラーであるから、これらを反対の組合わせにしてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によるラッチボルトの係止装置は、その作動及び解除をドライバー等の工具を用いること無く手指で操作し、また、扉を閉鎖したまま行うことができるので、ラッチボルトの係止装置の使い勝手を格段に向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のラッチボルトの係止装置を備えた錠箱の一部破断正面図で、ラッチボルトの係止装置が作動していない常態を示す。
【図2】従来のラッチボルトの係止装置を備えた錠箱の一部破断正面図で、ラッチボルトの係止装置が作動している状態を示す。
【図3】この発明の一実施例によるラッチボルトの係止装置の要部断面図。
【図4】自動施錠機構を有する錠箱の一例を示す一部断面側面図。
【図5】カプラーと摘みの構成を示す側面図。
【図6】図3のVI−VI線による一部断面図で、ラッチボルトの係止装置が作動していない常態を示す。
【図7】図3のVII−VII線による一部断面図で、ラッチボルトの係止装置の作動状態を示す。
【図8】本発明の他の実施例を示す図7と同様のラッチボルトの係止装置の正面図。
【符号の説明】
2 ラッチボルト
11 制御カム
19 サムターン軸
22 摘み
25 切欠
26 第1カム体
27 第2カム体
29 係合突起
35 ばね装置

Claims (1)

  1. 錠箱のフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内され、また、前方に付勢されたデッドボルトを兼ねるラッチボルトと、前後方向に延在し、中央部をラッチボルトの近傍において回動可能に支承されると共に、その前端がラッチボルトの頭部の段部の移動軌跡と干渉する方向に付勢された係止レバーと、この係止レバーに関しラッチボルトとは反対側に配設され、前後方向に移動可能に案内されると共に前方に付勢され、また、ラッチボルトに突設された連結片に前方から係合可能な解錠ボードと、この解錠ボードに植設され、係止レバー15の後方の傾斜部に前方から当接する解錠ピンと、シリンダ錠の内筒及びサムターン軸に連結され、外周部にセクターギアを形成して、このセクターギアを解錠ボードに形成されたラックに噛み合わせた制御カムとを有する自動施錠錠において、ラッチボルトを一時的に錠箱内に保持し、自動施錠錠を空錠とする作動モードと、本来の自動施錠錠とする作動モードとを任意に切り替えるものであって、上記制御カムに同軸かつ一体的に連結されたサムターン軸と、室内側に設けられたサムターン軸操作用の摘みとを、第1及び第2カム体の係合を介して同軸かつ相対回動可能に連結し、第1カム体には外周に円周方向に切欠を形成すると共に、第2カム体の先端に上記第1カム体の切欠と円周方向において遊動可能に係合する係合突起を突設し、これら第1及び第2カム体の何れか一方をサムターン軸に、他方を摘みに夫々同軸かつ一体的に結合し、一方、摘みに結合されたカム体を思案位置を有するばね装置により付勢したことを特徴とするラッチボルトの係止装置。
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