JP3747151B2 - ポリオレフィン系熱収縮性積層チューブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にコンデンサなどの電気部品の絶縁被覆用途に好適に使用される熱収縮性チューブに関し、さらに詳細には、耐熱性、柔軟性、被覆仕上がり性などに優れるポリオレフィン系熱収縮性積層チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来からコンデンサの絶縁用熱収縮性チューブとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)からなるチューブが広く使用されている。PVCチューブは優れた実用特性とコスト性を有しているものの、廃棄後焼却すると塩素を含んだガスを発生するということなどから、近年PVC以外の材料(非PVC材料)が要望されつつある。
また電子機器の発展に伴って、その電気部品として使用されるコンデンサにおいても高性能、高信頼化が進んでおり、たとえばアルミ電解コンデンサにおいては、125℃以上の雰囲気温度で、長時間使用される用途がある。
【0003】
そのため、これらに使用されるチューブは非PVC材料で且つ高耐熱性が必要となるが、チューブの耐熱性を上げるために、材料の融点やガラス転移温度の高いものを選択すると、その結果、低温延伸性、低温収縮性が損なわれるという欠点がある。チューブの延伸及び収縮は、低温且つ短時間で行われた方が、製造、被覆時とも作業性、コスト性が優れており望ましい。
これらを解決し得る方法として、ポリエチレン系樹脂を主成分としたチューブに、電子線等の電離放射線照射を行って、低温延伸性、低温収縮性と耐熱性を同時に付与する方法が開示されているが、その設備投資費用やランニングコストが高く、また製造工程の小スペース化が難かしい等の問題点があった。
【0004】
また、特開平7−32503号公報、特開平9−278974号公報では、環状ポリオレフィンを主体とした熱収縮性チューブが開示されているが、これらのチューブでは、自動機に適した腰(剛性)を保持する目的から、環状ポリオレフィンに混合する他のポリオレフィン系樹脂の添加量や特性等が制限されているため低温収縮性は付与できるが、低温収縮性、耐熱性および柔軟性を同時に満たすことができない等の問題点があった。
本発明者らは、上記の問題を解決するため、特定の環状オレフィン系重合体と高融点低結晶性ポリプロピレン系重合体との混合組成物により、低コスト、耐熱性、柔軟性、低温延伸、低温収縮性を満たす方法を提案している(特願2000−196208号)。
【0005】
しかしながら、常温の柔軟性を改良するため、結晶性の低いポリプロピレン系樹脂を多量に混合すると延伸工程での加熱によって、延伸前のチューブ内面が密着してチューブラー延伸が難しくなる等の問題が発生することがあった。このような内面密着の問題を解決する手段としては、滑剤等の添加剤を配合して防止することが一般的である。通常このような内面密着を防ぐには多量の添加剤が必要であるため、収縮チューブの滑性が増大し、収縮チューブの被覆の際、例えばシュリンクトンネル等を使用する場合等に、通過中に被覆物体とチューブにずれが生じて被覆位置がずれる等の被覆仕上がり性に問題が発生しやすい。
これらのことにより、延伸性、柔軟性、耐熱性、製造コスト、被覆仕上がり性を有するバランスに優れた熱収縮性チューブは見出されていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、延伸性、柔軟性、耐熱性、製造コスト、被覆仕上がり性などに優れたポリオレフィン系熱収縮性積層チューブを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の熱特性を有するポリプロピレン系重合体と環状オレフィン系重合体を用い、さらにこれらを所定の割合で混合し積層化することで上記課題を達成することができることを見出したものであり、
その要旨は、最内層(A)層と最外層(B)の少なくとも2層からなる熱収縮性積層チューブであって、最内層(A)は、下記(a)成分が50〜60重量%、(b)成分が50〜40重量%を主成分とし、外層(B)は、下記(a)成分が35〜50重量%、(b)成分が65〜50重量%を主成分とする混合樹脂層からなり、また(B)層の厚みが全層の厚みの50〜98%である積層体を延伸してなることを特徴とするポリオレフィン系熱収縮性積層チューブに存する。
(a)ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃である環状オレフィン系重合体
(b)示差走査熱量計(DSC)にて測定される結晶化熱量が10〜50J/gで、結晶融解ピーク温度(Tm)が125℃以上であるポリプロピレン系重合体
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明は、特定の環状オレフィン系重合体とポリプロピレン系重合体を配合し、低温延伸、低温収縮性、耐熱性、柔軟性に優れた熱収縮性積層チューブであり、円筒状の積層チューブを最内層(A)と最外層(B)の少なくとも2層から構成し、各層の主な特性として最内層(A)が内面密着を防ぐこと、最外層(B)が、(A)より高い柔軟性を付与することを特徴としている。
それぞれ最内層(A)最外層(B)とも(a)成分であるガラス転移温度(Tg)が50〜90℃である環状オレフィン系重合体と(b)成分である示差走査熱量計(DSC)にて測定される結晶化熱量が10〜50J/gで、結晶融解ピーク温度(Tm)が125℃以上であるポリプロピレン系重合体とを主成分とする。
【0009】
ここで、(a)成分である環状オレフィン系重合体は、ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃である環状オレフィン系樹脂である。ガラス転移温度が50℃未満では得られた熱収縮性チューブの自然収縮が大きくなり、寸法安定性に欠けるチューブとなりやすく実用上好ましくない。また90℃を越えると低温延伸、その結果低温熱収縮性が得られず好ましくない。このことから好適なガラス転移温度の範囲は60〜85℃である。
なお、本発明において使用するガラス転移温度(Tg)は、次のようにして求めた値である。すなわち、岩本製作所(株)製「粘弾性スペクトロメーターVES−F3」を用い、振動周波数10Hz、昇温速度1℃/分で測定し、得られたデータから損失弾性率(E”)のピーク値を求め、その時の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0010】
【式1】
【0011】
(a)成分である環状オレフィン系重合体の結合形態は、上述した条件を満足すれば特に制限はなく、上記一般式(1)で表される環状オレフインとエチレンとのランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体、環状オレフィン開環(共)重合体の水素化物、およびこれらの(共)重合体のグラフト変性物などが挙げられる。
ここで上記一般式(1)で表される環状オレフインの例としては、下記式(2)のビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体、例えばノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、6−n−ブチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フエニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどを挙げることができる。
【0012】
また下記式(3)のテトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体としては、例えば8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−ヘキシルテトラシクロ−3−ドデセン、2,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセンなどを挙げることができる。
【0013】
【式2】
【0014】
本発明チューブにおいては、エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体を好適に使用することができ、例えば、上記一般式(1)で表される環状オレフインを20〜50モル%程度含有するエチレンとの共重合体を例示することができる。また、エチレン以外のα−オレフインを含むものや、第3成分としてブタジエン、イソプレンなどを含有するものであってもよい。
環状オレフインの含有量により各種のガラス転移温度を有するものがあり、具体的には、三井化学(株)製の商品名「アペル」やTicona社製の商品名「Topas」等を例示することができる。
なお、環状オレフィン系重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭61−115912号公報、特開昭61−115916号公報、特開昭61−271308号公報、特開昭61−272216号公報、特開昭62−252406号公報、特開昭62−252407号公報などに記載されている公知の方法に準じて製造することができる。
【0015】
さらに、本発明において、環状オレフィン系樹脂としては、上記のような環状オレフィン系ランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体あるいは環状オレフィン開環(共)重合体の水添物を、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸あるいはその無水物等の変性剤で変性したグラフト重合体も使用することができる。これらの変性剤は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0016】
次に(b)成分であるポリプロピレン系重合体は、示差走査熱量計(DSC)にて測定される結晶化熱量が10〜50J/gで、結晶融解ピーク温度(Tm)が125℃以上である条件を満足するポリプロピレン系樹脂である。
ここで結晶化熱量が10J/g未満では、耐熱性が不充分となったり、内面密着が発生しやすく好ましくない。一方50J/gを超えると低温での延伸特性が低下し、低温収縮性が不充分となりやすく好ましくない。このことから好適な結晶化熱量の範囲は15〜45J/gである。また結晶融解ピーク温度が125℃未満では耐熱性が不充分となる。
【0017】
以上より耐熱性と低温延伸性および低温収縮性とのバランスから好適なポリプロピレン系重合体の特性は、示差走査熱量計(DSC)にて測定される結晶化熱量が15〜45J/gで、結晶融解ピーク温度範囲が135〜170℃である。
なお、本発明において使用する結晶化熱量と結晶融解ピーク温度は、次のようにして求めた値である。すなわち、結晶化熱量については、パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7122に準じて、加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温したときのサーモグラムから求めた。また結晶融解ピーク温度については、試料10mgをJIS−K7121に準じて、加熱速度10℃/分で昇温したときのサーモグラムから求めた。
【0018】
(b)成分であるポリプロピレン系重合体の結合形態は、上述した条件を満足すれば特に制限はなく、プロピレンと共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。また、これらの立体構造には特に制限がなく、イソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックあるいはこれらの混在した構造の重合体でもかまわない。
ここで共重合可能な他の単量体としては、エチレンやブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−ペンテン−1、オクテン−1等の炭素数4〜12のα−オレフィンおよびジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、エチリデンノルボルネン等のジエン類等が挙げられるが、これらのうちエチレンであるのが好ましい。
またポリプロピレン系樹脂が、プロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体である場合の、他の単量体の含有量は、通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0019】
上記ランダム共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体やプロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体などが挙げられ、またブロック共重合体としては、プロピレン−エチレンブロック共重合体やリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーなどが挙げられ、具体的な商品としては、(株)トクヤマの商品名「P.E.R.」、チッソ(株)の商品名「NEWCON」、モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)の商品名「Adflex」(キャタロイプロセス)、住友化学工業(株)の商品名「EXCELLEN EPX」、Huntsman Polymer Corporationの商品名「REXflex」等が市販されている。
【0020】
上記の中で、熱収縮性チューブとしての収縮特性、延伸特性および経済性の点からリアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーが好適に使用される。
なおこれらのポリプロピレン系樹脂は1種のみを単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、そのメルトフローレート(MFR)(JISK7210、230℃、21.18N荷重)は通常0.4〜20g/10分、好ましくは0.5〜5g/10分のものが用いられる。
【0021】
本発明の熱収縮性チューブは、最内層(A)と最外層(B)の少なくとも2層からなる熱収縮性積層チューブであって、最内層(A)は、上記した(a)成分が50〜60重量%、(b)成分が50〜40重量%を主成分とし、(B)層は、(a)成分が35〜50重量%、(b)成分が65〜50重量%を主成分とする混合樹脂層からなる。
ここで、最内層(A)は、熱収縮性積層チューブの低温延伸、低温収縮、耐熱性、柔軟性を維持しながら、加えて内面密着を防止することが目的であり、(a)成分が50重量%未満、或いは、(b)成分が50重量%以上の場合は、内面密着が発生しやすく好ましくない。一方、(a)成分が60重量%を超えたり、(b)成分が40重量%未満の場合は、125℃雰囲気中での耐熱性が不充分となったり、柔軟性が不充分となりやすく好ましくない。また内面密着を防止する点から(A)層の厚みは、少なくとも1μm以上が好ましい。
【0022】
次に、最外層(B)は熱収縮性積層チューブの低温延伸、低温収縮、耐熱性を維持しながら、さらに最内層(A)より高い柔軟性を付与することが目的であり、(a)成分が50重量%を超えたり、(b)成分が50重量%未満の場合は、柔軟性を付与する効果が顕著でなく好ましくない。一方、(a)成分が35重量%未満、或いは、(b)成分が65重量%を超える場合は、低温延伸性や低温収縮性が不充分となりやすく好ましくない。また、(B)層の厚みが全層の厚みの50〜98%であることが望ましく、(B)層の厚みが全層の50%未満では所望する柔軟性が得られ難い。
【0023】
本発明のチューブは、最内層(A)と最外層(B)の少なくとも2層からなる円筒状の熱収縮性積層チューブであり、かかる条件を満足する限り特に制限はなく、例えば、最内層(A)/最外層(B)の2層構造や、最内層(A)/中間層(C)/最外層(B)の3層構造や、最内層(A)/中間層(C)/中間層(C)/最外層(B)の4層構成でもよく、また、最内層(A)と中間層(C)、また中間層(C)と最外層(B)を構成する(a)、(b)各成分の混合組成比は、規定の範囲内で同一でも異なっていてもかまわない。
【0024】
また中間層(C)は、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、(a)、(b)成分以外のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等から構成される層であっても、また接着層でも構わない。
本発明において、(B)の総厚みは、層構成数には関係なくチューブの総厚みに対して、50〜98%であればよい。
さらに本発明のチューブには、成形加工性やチューブの物性を改良・調整する目的で、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、例えば、石油樹脂類、パラフィン系オイル、液状ポリブテン、ビニル芳香族系化合物と共役ジエンとの共重合体(ブロックおよびランダム)またはその水素添加誘導体、芳香族モノマーとエチレンおよび/または他のα−オレフィンとの共重合体等やその他の相溶化剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、難燃剤等の添加剤を適宜添加してもかまわない。
【0025】
以上説明した各成分からなる組成物は、多層環状ダイを備えた各種押出機によってチューブ状に押出される。この未延伸チューブを長さ方向および径方向にチューブラー延伸する。その際の延伸倍率は目的とする熱収縮率により決められるが、一般に長さ方向には1〜1.7倍、好ましくは1〜1.4倍とし、径方向には1.7〜4倍、好ましくは1.8〜3.5倍の範囲である。延伸温度は組成物の特性、特にガラス転移温度により異なるが、通常75〜100℃の範囲で適宜決められる。上記のようにして得られるチューブの厚さは特に限定されないが、一般にコンデンサに使用されるチューブの厚みは、コンデンサの定格電圧に応じて、おおよそ0.05mm〜1.0mm、代表的には0.1mm〜0.7mmであるものが使用されている。本発明チューブは、柔軟性が高いため特に厚みが0.3mm以上でも、次のような不具合が発生しにくい。すなわち、剛性(腰)の強いチューブでは、厚みが増加すると、チューブを巻き取る際に折れ曲がらなかったり、被覆時の作業性が低下したり、収縮時の被覆物体への形状追随性が低下する等の不具合が発生する。
【0026】
本発明チューブの熱収縮特性は主に上記延伸条件により決まるが、例えば乾電池や他の電池の内缶あるいはコンデンサの被覆用としては、100℃熱水中30秒間での収縮率が、長さ方向で40%以下、好ましくは20%以下、径方向には40%以上、好ましくは45%以上であることが必要である。100℃×30秒での径方向の熱収縮率が40%未満では、チューブ端部が密着せず立ち上がった状態で外観不良となり好ましくない。また径方向の収縮率が40%以上でも、長さ方向の収縮率が40%を超えるものでは、被覆したときに被覆位置がずれてしまったり、またカット長さを長くしなければならずコストアップにもつながるため好ましくない。
【0027】
【実施例】
以下に実施例でさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示されるチューブについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、チューブの押出機からの流れ方向を縦方向、その直交方向を径方向とよぶ。
【0028】
1) 結晶融解ピーク温度(Tm)
パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121に準じて、加熱速度10℃/分で昇温したときのサーモグラムから求めた。
【0029】
2) 結晶化温度(Tc)、結晶化熱量(ΔHc)
パーキンエルマー社製DSC−7を用いて、試料10mgをJIS−K7121、JIS−K7122に準じて、加熱速度10℃/分で結晶融解後、200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温したときのサーモグラムから求めた。
【0030】
3) ガラス転移温度(Tg)
岩本製作所(株)製「粘弾性スペクトロメーターVES−F3」を用い、振動周波数10Hz、昇温速度1℃/分で測定し、得られたデータから損失弾性率(E”)のピーク値を求め、その時の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0031】
4) 貯蔵弾性率(E’)
岩本製作所(株)製「粘弾性スペクトロメーターVES−F3」を用い、振動周波数10Hz、昇温速度1℃/分で−50℃から150℃まで測定し、得られたデータから温度30℃での値を表示した。
5) 熱収縮率(%)
100℃の熱水に30秒浸漬した後、長さ方向および径方向について下式に基づいて算出した。
熱収縮率(%)=[(L0 −L1 )/L0 ]×100
L0 :収縮前の寸法
L1 :収縮後の寸法
【0032】
6) 自然収縮率(%)
チューブを30℃×80%RHの恒温槽に30日間放置後、径方向の収縮率を前記5)と同様にして算出したものが、2%未満なら「○」、2%以上なら「×」と表示した。
【0033】
7) 巻き外観
外径130mmの巻芯に、肉厚0.4mmのチューブを30m巻き取って、チューブを目視で観察したとき、チューブに折れが発生して折れ跡が残るものを「×」、折れ跡が残らず良好なものを「○」と表示した。
【0034】
8) 被覆仕上がり性
長さ33mmにカットしたチューブに、直径18mm、長さ25mmのアルミ電解コンデンサを手挿入し、その後200℃に設定したシュリンクトンネルで100個加熱収縮させたとき、端部が密着せず立ち上がった状態となったり、被覆位置がずれて被覆されたものが、3個以上あったものを「×」、1〜2個を「△」、これらの不都合が全くなかったものを「○」と表示した。
【0035】
9)耐熱性
被覆仕上がり性テスト後のアルミ電解コンデンサを、JIS C5102に準拠して、125℃の恒温槽で100時間経過後取り出し、外観をチェックした。それを剥離し、内外面を目視にて確認した。テスト後、チューブに変化がなく、コンデンサの絶縁性能が保持されているものを「○」、また外観が変化したりチューブのずれ、割れ、溶融等により、短絡の恐れがあるものを「×」と表示した。なお被覆仕上がり性テストにて評価が「×」だったものについては、耐熱性評価は省略した。
【0036】
10)内面密着性
収縮チューブの製造時における未延伸チューブの延伸工程時に、延伸温度を98℃に設定したとき、チューブラー延伸が問題なく行えたものを「○」、内面密着が発生したものを「×」とした。
【0037】
(実施例1)
表1に示すように、最内層(A)、最外層(B)とも(a)成分の環状オレフィン系重合体として、エチレン成分と環状オレフイン成分からなるランダム共重体(三井化学(株)製、商品名:「アペル8008T」;Tg:75℃)(以下、「環状PO」と略称する)、(b)成分として、プロピレン−エチレンブロック共重合体(モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製、商品名:「Adflex KS−353P」、ΔHc:25J/g、Tc:100℃、Tm:141℃、MFR:0.5g/10分、E’:6.7×107Pa)(以下、「PP1」と略称する)を選択し、最内層(A)用原料には環状POを65重量%にPP1を45重量%配合し、最外層(B)用原料には環状POを40重量%にPP1を60重量%配合して、同方向2軸押出機を用いて溶融混合し組成物のペレツトを得た。このペレットをそれぞれ別の押出機に投入し、2種2層環状ダイからチューブラー積層押出を行って、内径9mm、厚さ0.8mm、B層の厚みが全体の70%の未延伸チューブを得た。これを延伸温度98℃で長さ方向に1.1倍、径方向に2.1倍チューブラー延伸し、内径19mm、厚み0.4mmの延伸チューブを得て、そのチューブの評価を行った。
また、得られた結果について総合評価も行い、すべての評価が良好であり、実用上問題のないものを「○」、いずれか1つでも不良であるものを「×」として表示し、上記評価の結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
実施例1で使用したPP1を、プロピレン−エチレンブロック共重合体(チッソ(株)製、商品名:「NEWCON NNT2005」、ΔHc:26J/g、Tc:110℃、Tm:165℃、MFR:1.3g/10分、E’:3.1×107Pa)(以下、「PP2」と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸チューブを得た。得られたチューブの評価結果を表1に示した。
【0039】
(比較例1)
実施例1で使用したPP1を、プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体(モンテル・エスディーケイ・サンライズ(株)製、商品名:「Adsyl 5C30F」、ΔHc:67J/g、Tc:94℃、Tm:146℃、MFR:5.5g/10分、E’:6.7×108Pa)(以下、「PP3」と略称する)に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸チューブを得た。得られたチューブの評価結果を表1に示した。
【0040】
(比較例2)
実施例1で最内層(A)に使用した環状POとPP1の配合量を、それぞれ70重量%と30重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸チューブを得た。得られたチューブの評価結果を表1に示した。
【0041】
(比較例3)
実施例1の最内層(A)に使用した環状POとPP1の配合量を、それぞれ35重量%と65重量%に変更し、さらに最外層(B)に使用した環状POとPP1の配合量を、それぞれ40重量%と60重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸チューブを得た。各々のチューブの評価結果を表1に示した。
【0042】
(比較例4)
実施例1で使用した最外層(B)に使用した環状POとPP1の配合量を、それぞれ20重量%と80重量%に変更した以外は、実施例1と同様にして延伸チューブを得た。各々のチューブの評価結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1より、本発明で規定する成分を有し、かつ規定する範囲にある実施例1乃至2のチューブは、いずれも耐熱性、柔軟性(巻き外観)、被覆仕上がり、内面密着性に総合的に優れていることが分かる。これに対して、成分が異なるか(比較例1)、本発明で規定する範囲外(比較例2、3、4)のチューブは、熱収縮率、自然収縮率、柔軟性(巻き外観)、被覆仕上がり性、耐熱性、内面密着性のうち1つ以上の特性に劣ることが分かる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、延伸性や被覆加工性が良好であり、柔軟性、収縮仕上がり性、耐熱性などに優れたポリオレフィン系熱収縮性積層チューブが提供できる。
Claims (5)
- 最内層(A)と最外層(B)の少なくとも2層からなる熱収縮性積層チューブであって、最内層(A)は、下記(a)成分が50〜60重量%、(b)成分が50〜40重量%を主成分とし、最外層(B)層は、下記(a)成分が35〜50重量%、(b)成分が65〜50重量%を主成分とする混合樹脂層からなり、また(B)層の厚みが全層の厚みの50〜98%である積層体を延伸してなることを特徴とするポリオレフィン系熱収縮性積層チューブ。
(a)ガラス転移温度(Tg)が50〜90℃である環状オレフィン系重合体
(b)示差走査熱量計(DSC)にて測定される結晶化熱量が10〜50J/gで、結晶融解ピーク温度(Tm)が125℃以上であるポリプロピレン系重合体 - 環状オレフィン系重合体(a)が、エチレンと環状オレフィンとのランダム共重合体、環状オレフィン開環(共)重合体、環状オレフィン開環(共)重合体の水素化物、およびこれらの(共)重合体のグラフト変性物よりなる群から選ばれる少なくとも一種の環状オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系熱収縮性積層チューブ。
- ポリプロピレン系重合体(b)が、リアクタータイプのポリプロピレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系熱収縮性積層チューブ。
- 100℃×30秒での径方向の熱収縮率が40%以上であることを特徴とする請求項1乃至3記載のポリオレフィン系熱収縮性積層チューブ。
- 厚みが0.05mm〜1.0mmのコンデンサ被覆用であることを特徴とする請求項1乃至4記載のポリオレフィン系熱収縮性積層チューブ。
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