JP3746000B2 - ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色相の良好なポリカーボネート樹脂に関する。さらに詳しくは発色性成分を非発色の状態に固定した9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を有するポリカーボネート樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を有するポリマーは耐熱性を向上する目的で種々合成され、位相差フィルム等各種用途に有用であることが知られている(特開平6−25398号公報、特開平6−49186号公報、特開平6184288号公報、特開平7−26132号公報、特開平7−48424号公報、特開平7−149881号公報、特開平7−228669号公報)。
【0003】
しかしながら、9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を有するポリマーが有機溶媒溶液で保存中に経時的に着色劣化を起こすことがある。この着色劣化した溶液の色はポリマーにも移行し、溶液からのポリマー回収あるいは溶液からのキャスティング成形に際して、着色したポリマーあるいは成形品しか得られず、この改善が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、色相の改善された9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を有するポリカーボネート樹脂を提供することにある。
【0005】
本発明者はこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、前記ポリマーの有機溶媒溶液に特定波長の光を照射することにより発色性成分が非発色の状態になり、これから溶媒を除去して固体状ポリマーとすることによりこの非発色状態が固定され、ポリマーの色相の経時劣化が著しく改善され、さらに退色することを見出し、本発明に到達した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、発色性成分を含有する下記式[1]で示される構造単位[1]を有するポリカーボネート樹脂において、発色性成分が非発色の状態に固定されていることを特徴とするポリカーボネート樹脂が提供される。
【0007】
【化3】
【0008】
[式中、R1〜R4は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基或いは炭化水素オキシ基又はハロゲン原子を表し、m、n、pおよびqはそれぞれ1〜4の整数を示す。]
本発明において、前記式[1]で表される構造単位[1]を形成する芳香族ジヒドロキシ成分としては、R1〜R4が夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基或いは炭化水素オキシ基、又はハロゲン原子を表す9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物であり、中でも好ましくはR1〜R4の全てが水素原子であるか、R1およびR2が水素原子で、R3およびR4が夫々炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基或いは炭化水素オキシ基を表し、m、n、pおよびqはそれぞれ1または2を示す9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物である。
【0009】
具体的には9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられ、なかでも本発明の効果が顕著に現れることから9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンが最も好ましい。
【0010】
これらのフルオレン系化合物は、全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜100モル%、好ましくは5〜95モル%、より好ましくは10〜90モル%、さらに好ましくは30〜85モル%、特に好ましくは40〜80モル%用いられる。
【0011】
また、ポリカーボネート樹脂の好ましい態様として、全芳香族ジヒドロキシ成分の5〜95モル%が前記式[1]で示される構成単位[1]、95〜5モル%が下記式[2]で示される構成単位[2]からなる共重合ポリカーボネート樹脂である。
【0012】
【化4】
【0013】
[式中、R5〜R8は夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基或いは炭化水素オキシ基又はハロゲン原子であり、Wは単結合、炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよい炭化水素基、O、S、SO、SO2、CO又はCOO基である。]
本発明において使用される前記式[1]で表される構造単位[1]を構成する9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物は、通常o−クレゾールとフルオレノンの反応によって得られる。
【0014】
本出願人は、特開2001−146526号公報において、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンに残存する不純物を除去することにより、99.5%以上の純度の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンを得て、これを使用することにより色相の優れたポリカーボネート樹脂フィルムを得られることを示した。
【0015】
本願においては、不純物を高度に除去することにより色相の悪化を改善するものではなく、不純物又は前記式[1]の構造単位の構造に起因する色相の劣化をそれらが存在するままで改善するものである。したがって、構造単位[1]を構成する9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物中の不純物量は少ないほど良いが、ある程度含んでいてもよく、HPLC分析による純度としては必ずしも99.5%以上である必要はなく、例えば98%〜99.3%程度で構わない。
【0016】
上記共重合ポリカーボネート樹脂において用いられる上記式[2]で示される構造単位[2]を構成する芳香族ジヒドロキシ成分としては、通常芳香族ポリカーボネート共重合体の芳香族ジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、例えば4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンなどが挙げられ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールMが好ましく、特にビスフェノールAが好ましい。
【0017】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば上記芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0018】
界面重合法による反応は、通常芳香族ジヒドロキシ成分とホスゲンとの反応であり、酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。
【0019】
酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。
【0020】
溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。
【0021】
また、反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0022】
溶融重合法による反応は、通常芳香族ジヒドロキシ成分と炭酸ジエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。
【0023】
反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。
【0024】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0025】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
【0026】
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノール或いは低級アルキル置換フェノールであって、下記式[3]で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0027】
【化5】
【0028】
[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。]
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0029】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂はそのポリマーを塩化メチレンに溶解した溶液での20℃における極限粘度は0.35〜1.0が好ましく、0.50〜0.80がより好ましく、0.55〜0.80がさらに好ましい。極限粘度がかかる範囲であると成形品、殊にフィルムの強度が十分で、また、溶融粘度および溶液粘度も適当であり、取り扱いが容易で好ましい。
【0030】
本発明の対象とする9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を含有するポリカーボネート樹脂は、製造工程の途中で溶液状態となったり、あるいはキャスティングフィルムや塗料用途等溶液状態を経て、製品化されることがある。
【0031】
ポリカーボネート樹脂においては、耐熱性のプラセル基板や位相差フィルム等の液晶ディスプレー用フィルムに、かかる9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を有するポリカーボネート樹脂フィルムが好適に使用されるが、液晶ディスプレー用の色相の悪化は、色表示の色調が不鮮明となるなどの問題があり、その防止方法が望まれている。
【0032】
本発明の9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を含有するポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液は溶液状態で放置、特に暗所で放置すると経時的に着色劣化する。
【0033】
本発明においては、発色性成分を含有する9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物から構成される構造単位を有するポリカーボネート樹脂において、かかる発色性成分を非発色の状態に固定化させる。
【0034】
発色性成分を非発色の状態に変化させる方法としては、9,9−ビスヒドロキシフェニルフルオレン系化合物の構造によるけれどもポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に、例えば波長360〜500nm、好ましくは波長390〜470nmの光を照射する方法が採用される。この方法によれば、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液の着色(黄色み)を退色させることができる。
【0035】
前記ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液において使用される有機溶媒としては、界面重合法で使用される塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素やその他ジオキソラン、トルエン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられ、塩化メチレンが特に好ましく使用される。
【0036】
代表的に9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから構成される構造単位を有するポリカーボネート樹脂溶液について述べるとすれば、このポリカーボネート樹脂溶液に波長360〜500nmの光を照射することにより、発色性成分が非発色の状態に変化する。この変化は溶液状態である限りは可逆的であり、このように一旦波長360〜500nmの光を照射し黄色みが薄れたポリカーボネート樹脂溶液を暗所で放置すると再び徐々に黄色に着色していく。
【0037】
また、波長360〜500nmの光を照射して発色成分を非発色状態にしたポリカーボネート樹脂溶液を、そのまま溶媒を除去してパウダーやフィルム等に固体化すると、かかる固体状ポリカーボネートは暗所に放置しても着色し難くなることから、固体状では発色性成分が非発色状態のまま固定されるものと考えられる。さらに、この発色性成分が非発色状態のまま固定された固体状ポリカーボネートを有機溶媒に溶解し溶液状態にして暗所に放置すると徐々に発色する。
【0038】
したがって、上記ポリカーボネート樹脂溶液に波長360〜500nmの光を照射して、色相に優れたポリカーボネート樹脂溶液を得て、そのままこのポリカーボネート樹脂溶液から溶媒を除去して固形状とすることにより、色相の改善されたポリカーボネート樹脂を得ることができる。
【0039】
また、前記ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に、該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、重金属不活性化剤及び/又は活性水素含有化合物を0.0001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部配合することができる。
【0040】
さらに、前記ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液に、該有機溶媒100重量部に対して、アルコール類を0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部配合することができる。
【0041】
かかる重金属不活性化剤、活性水素含有化合物またはアルコール類を配合することで該ポリカーボネート樹脂有機溶媒溶液の着色がある程度防止でき、本発明の退色方法にこれらを併用することにより更に着色のないポリカーボネート樹脂有機溶媒溶液を容易に得ることができる。
【0042】
前記重金属不活性化剤としては、キレート化剤即ち、構造中に不対電子を持つキレート形成能を有する化合物であり、例えば、N,N′−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン{IrganoxMD1024(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)}、オキサリックビス(ベンジリデンヒドラジド){EastmanInhibitorOABH(イーストマン・コダック(株)製)}、1,2,3−ベンゾトリアゾール、その他アデカタプスCDA−1(旭電化(株)製)、アデカタプアスCDA−6(旭電化(株)製)、Qunox(三井東圧ファイン(株)製)、NaugardXL−1(ユニロイアル(株)製)などが挙げられる。特に、塩化メチレン等の有機溶媒に対する溶解度の高いN,N′−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン{IrganoxMD1024(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)}が好ましく用いられる。
【0043】
また、活性水素含有化合物としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられ、具体的には、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。特に、塩化メチレン等の有機溶媒に対する溶解度の高いオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0044】
また、前記アルコール類としては、炭素数1〜3の低級アルコールが好ましく、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノールおよびイソプロパノール等が挙げられ、なかでもメタノールおよびエタノールが好ましく用いられる。
【0045】
本発明で得られるポリカーボネート樹脂には、必要に応じて一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。
【0046】
かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。また、かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0047】
かかるアルコールと高級脂肪酸とのエステルの配合量は、該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.01〜2重量部が好ましく、0.015〜0.5重量部がより好ましく、0.02〜0.2重量部がさらに好ましい。配合量がこの範囲内であれば離型性に優れ、また離型剤がマイグレートし金属表面に付着することもなく好ましい。
【0048】
本発明において、前記ポリカーボネート樹脂に必要に応じて、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。かかるリン化合物の配合量は、該ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.0001〜0.05重量部が好ましく、0.0005〜0.02重量部がより好ましく、0.001〜0.01重量部が特に好ましい。このリン化合物を配合することにより、かかるポリカーボネート樹脂の熱安定性が向上し、成形時における分子量の低下や色相の悪化が防止される。
【0049】
かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物である。
【0050】
かかるリン化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、
【0051】
トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイト、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。
【0052】
これらのリン化合物のなかで、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトが好ましく使用される。
【0053】
本発明のポリカーボネート樹脂には、さらに光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤などの添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で少割合添加することもできる。
【0054】
本発明の発色性成分を非発色の状態に固定したポリカーボネート樹脂からは、液晶ディスプレー用フィルム等の光学フィルムが好適に作成される。
【0055】
ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液からフィルムを作成する方法としては、一般にはダイから溶液を押し出すキャスティング法、ドクターナイフ法等が好ましく用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、ジオキソラン、トルエン、ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の有機溶媒が好ましい。これらは一種でもよいし、二種以上の混合溶媒でもよい。液晶ディスプレー用フィルムは厚膜であり、溶液濃度は10重量%以上、好適には20重量%以上の高濃度溶液が好ましく用いられる。
【0056】
ポリカーボネート樹脂フィルムの膜厚は用途に応じて選択すればよいが、50〜500μmの範囲が好ましく、80〜300μmの範囲がより好ましく用いられる。この範囲内では、位相差フィルムにおいて屈折率異方性に基づく充分なリターデーションが得られ、また液晶基板用フィルム(プラセル基板)では充分に腰のある(剛直な)フィルムが得られ、また、製膜が容易であり好ましい。さらに、位相差フィルムにおいて延伸により精度よく目的のリターデーションが得られやすく好ましい。
【0057】
本発明のポリカーボネート樹脂から得られたフィルムは、フィルム強度に優れ、耐熱性、色相も良好であり、このフィルムの両面にガスバリヤー膜、耐溶剤膜を付けたり、透明導電膜や偏光板と共に液晶基板用フィルムまたは位相差フィルム等の液晶ディスプレー用フィルムとして好適に用いられ、具体的には、ポケベル、携帯電話、ハンディーターミナル、種々の表示素子等に有利に使用することができる。
【0058】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
(1)ポリカーボネート樹脂溶液の色相測定:光路長10mmの石英セルにてスガ試験機(株)製多光源分光測色計MSC−Pを用いて色相b値を測定した。b値が大きいほど黄色みが強いことを示す。
(2)光照射:光路長10mmの石英セルにてスガ試験機(株)製分光老化試験機SPW−7型を用いて波長250nm〜530nmの光を照射した。この時の照射光量は12W/m2とした。
(3)極限粘度:ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し20℃の温度で測定した。
(4)ガラス転移点(Tg):ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910型DSCを用いて測定した。
(5)フィルムのb値:ポリカーボネート樹脂溶液をガラス板上にキャスティングして得た厚み0.2mmのフィルムを日立U−3000分光光度計を用いて測定した。
(6)モノマー純度:試料10mgを10mlのアセトニトリルに溶解し東ソー(株)TSK−GEL ODS−80TMカラムを用いて、アセトニトリル/水=6/4の溶媒にて波長254nmでHPLC分析して求めた。
【0059】
[合成例1]
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水24623部、48%水酸化ナトリウム水溶液4153部を入れ、HPLC分析で99.1%の9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“ビスクレゾールフルオレン”と略称することがある)4439.4部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“ビスフェノールA”と略称することがある)1147.8部およびハイドロサルファイト8部を溶解した後、塩化メチレン18188部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン1994部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール38.4部を塩化メチレン330部に溶解した溶液および48%水酸化ナトリウム水溶液692.1部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.8部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
【0060】
反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、更に水洗を繰り返し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を分離した。この塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリカーボネート濃度が20%の溶液を得た。この溶液から溶媒を除去し、乾燥してポリカーボネート共重合体を得た。得られたポリカーボネート共重合体は、ビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAとの構成単位の比がモル比で70:30であった(ポリマー収率97%)。またこのポリマーの極限粘度は0.711、Tgは230℃であった。
【0061】
[実施例1]
合成例1で得られたポリカーボネート共重合体13gを塩化メチレン87gに溶解し13重量%溶液を調整した。このポリマー溶液のb値は6.90であった。次いで、この溶液を暗所で3日間放置し、光照射試験用のサンプルとした。このサンプル溶液のb値は30.05であった。このサンプル溶液を光路長10mmの石英セルに入れ、スガ試験機(株)製分光老化試験機SPW−7型を用いて波長330nm〜530nmの光を照射した。その際のサンプル溶液の色相(b値)の経時変化を表1に示した。その結果、波長360nm〜500nmの光、特に波長390nm〜470nmの光を照射することにより、ポリマー溶液の色相(b値)が著しく改善された。また、暗所で3日間放置した溶液から得られたフィルムのb値は1.33であり、波長420nm〜440nmの光を1時間照射した溶液から得られたフィルムのb値は0.49であった。
【0062】
【表1】
【0063】
次いで、波長390nm〜410nm、420nm〜440nmおよび450nm〜470nmの光を60分間照射した3種類のポリマー溶液を、それぞれ20℃でTダイより移動しているステンレス板上に流延し、徐々に温度を上げながら塩化メチレンを蒸発し、ステンレス板より剥離して更に加熱して塩化メチレンを除去して200μmの厚みのフィルムを得た。これらのフィルムをテンター法により230℃で延伸倍率2.0に一軸延伸した。これらの一軸延伸したフィルムにバリヤー層および液晶用透明電極をスパッタリングした後、粘着剤を用いて偏向板の片面に光学軸が45度になるように接着して複合偏向板を得た。次いでこのものをSTN液晶表示装置の液晶セルと上部偏向板の間に貼り合わせて用いたところ、視野角が広く、背景色が白、表示色が黒のコントラストのよい白黒表示が得られた。また、この上部にカラーフィルターを被せ、RGBのセルを白黒のグレー濃度で発色表示させることにより、鮮明なフルカラー表示が得られた。
【0064】
[参考例1]
合成例1で得られたポリカーボネート共重合体13gを塩化メチレン87gに溶解し13重量%溶液を調整した。このポリマー溶液のb値は6.90であった。この溶液を光照射試験用のサンプルとした。このサンプル溶液を光路長10mmの石英セルに入れ、スガ試験機(株)製分光老化試験機SPW−7型を用いて波長250nm〜360nmの光を照射した。その際のサンプル溶液の色相(b値)の経時変化を表2に示した。その結果、波長250nm〜360nmの光、特に波長310nm〜330nmの光を照射することにより、ポリマー溶液の色相(b値)が著しく悪化した。
【0065】
【表2】
【0066】
[実施例2]
合成例1のビスクレゾールフルオレンを1901.3部、ビスフェノールAを2676.7部とした以外は合成例1と同様にしてビスクレゾールフルオレンとビスフェノールAとの構成単位の比がモル比で30:70のポリカーボネート共重合体を得た(ポリマー収率99%)。このポリマーの極限粘度は0.723、Tgは195℃であった。
【0067】
このポリマーをポリマー濃度が20重量%となるように塩化メチレンに溶解し、エタノールを塩化メチレンに対し1重量%となるように添加した。この溶液を暗所で17時間放置した(放置後の溶液のb値6.6)。この溶液に、400Wの高圧水銀灯((株)日立ライティング製;400nm〜700nmの光)を1時間照射した。照射後のポリマー溶液(b値5.4)をTダイより移動しているステンレス板上に流延し、実施例1と同様にして100μmの厚みのフィルムを得た。
【0068】
このフィルムの両面に耐溶剤性層をコーティングし、高圧水銀灯を用いて硬化して厚さ4.5μmの耐溶剤性層を形成した。さらに片面に30nmのシロキサンガスバリヤー層を形成した。ガスバリヤー層と逆の面には30nmのインジウム/スズ酸化物導電膜を形成した。
【0069】
次にこれより7cm角の試料を2枚切り出し、それぞれに配向剤として低温硬化型ポリイミドをコートし、硬化後スペーサーとして積水ファインケミカル製ミクロパールを散布し、封止剤としてチバガイギー製アラルダイトをスクリーン印刷した。
【0070】
次いでこの2枚の試料を貼り合せてセルギャップ6μmの液晶セルを作成した。これに旭電化製キラコール6228を液晶注入装置を用いて注入した。注入後液晶相転移温度まで加熱し、その後室温まで徐冷して配向を完了した。
【0071】
この結果得られたセルは、色調が均一であり、1.8Vの印加電圧でON応答は60msec以下、OFF応答は25msec以下であるSTN液晶セルの応答を示した。
【0072】
【発明の効果】
本発明の発色性成分が非発色の状態に固定されているポリカーボネート樹脂は、色相が極めて良好であり、キャスティングによる位相差フィルム、液晶基板用フィルムなどの用途として好適に利用でき、その奏する工業的効果は格別である。
Claims (5)
- 発色性成分が非発色の状態に可逆状態で固定されている請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 前記ポリカーボネート樹脂は、全構造単位中、前記式[1]で示される構造単位[1]を少なくとも5モル%含有する請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
- 前記式[1]で示される構造単位[1]を構成するジヒドロキシ化合物成分が、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンである請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
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