JP3745437B2 - 車両用走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は車両用走行制御装置に関し、より具体的には前車との車間距離を所定の値に保って追従走行するように制御するものに関する。尚、以下の説明では簡略化のため、『車間距離』を『車間』と略称する。
【0002】
【従来の技術】
車間制御においては一般にはPID制御則を用いてスロットル開度を制御し、車速を目標値に制御している。その例として特開平5−213094号公報記載の技術を挙げることができる。この従来技術においては、先行車との車間と自車速から目標車間を算出し、所定時間後の目標車速を予測し、その目標車速に達するように加速ゲインを車間距離に応じて変化させてスロットル開度を操作している。
【0003】
また特開平4−283744号公報記載の技術も、目標車間距離と実車間距離に応じて制御ゲインを設定することを提案している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術においては、加速ゲインを切り換えて減少させているため、ゲインの切替え付近で振動的な挙動が発生する問題があった。また、その振動的挙動を抑えるため、滑らかにゲインを変化させる、あるいは全体のゲインを下げるなどの手段を追加すると、応答性が低下する問題があった。
【0005】
従って、この発明の第1の目的は、上記した不都合を解消し、制御の応答性を向上させるようにした車両用走行制御装置を提供することにある。
【0006】
それとは別に、目標車間から目標車速を算出してスロットルを制御する場合、例えば先行車を検知したとき、目標車速を低下させることで車間を修正するため、車間変化への追従性を向上させるには、図25に示すように、目標車速を必要以上に低下させ、十分に減速した後に目標車速を元に戻すなどの複雑な制御が必要となる。
【0007】
上記の問題に対して、複雑な制御を行わずに応答性を向上させるには、目標車速を使用することなく、車間からスロットル制御量を直接算出することが考えられるが、スロットル操作量とトルク(加速度)の関係が線形ではないため、加減速制御が困難であった。
【0008】
従って、この発明の第2の目的は、車間変化に対して応答性を向上させると共に、加減速を適正に制御することができるようにした車両用走行制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
更には、上記した従来技術においては、操作量をスロットル開度としているが、スロットル開度は開度によって同一値でも制御量(機関出力)が大きく異なる場合がある。従って、スロットル開度を操作量とすると、必ずしも意図した制御結果を得ることができない場合がある。
【0010】
従って、この発明の第3の目的は、操作量をトルクとすることで上記した欠点を解消するようにした車両用走行制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した第1の目的などを達成するために、請求項1項に係る車両用の走行制御装置は、自車と先行車との車間距離を検出する車間距離検出手段、目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段、自車速を求め、それに前記自車の挙動に影響を与える因子の係数を乗じて自車が現在出力している走行トルクを算出する走行トルク算出手段、前記車間距離と目標車間距離の偏差に基づいて前記走行トルクの目標変化量を算出する走行トルク目標変化量算出手段、前記走行トルクと走行トルクの目標変化量と自車速とに基づいてスロットル開度を算出すると共に、前記走行トルクと自車速とに基づいてスロットル開度を算出し、前記算出された2つのスロットル開度の差に基づいてスロットル開度変化量を算出するスロットル開度変化量算出手段、前記スロットル開度変化量に基づいてアクチュエータ操作量を算出するアクチュエータ操作量算出手段、および前記アクチュエータ操作量を入力されて車速を変更するアクチュエータ、からなる如く構成した。
【0012】
【作用】
車間変化に対して応答性を向上させると共に、加減速を適正に制御することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両用走行制御装置の実施の形態を説明する。
【0014】
図1は、この発明に係る車両用走行制御装置を全体的に示す説明ブロック図である。
【0015】
図示の如く、この装置は、自車の前方に取り付けられ、反射波を通じて自車の前方の先行車などの立体障害物を検出するレーザレーダ10を備える(図2以降ではレーザレーダはL/Rで示す)。また車両のドライブシャフト(図示せず)などの適宜位置には車両の走行速度を検出する車速センサ12が設けられると共に、スロットル弁(図示せず)には電動モータからなるスロットルアクチュエータ(スロットルモータ)14がクラッチ(図示せず)を介して取り付けられる。
【0016】
マイクロプロセッサからなる制御ユニット(制御器)20は、前記したレーザレーダ10の出力から車間距離を求めると共に、車速センサ12の出力から車速を検出し、後述の如く制御指令を出力し、スロットルアクチュエータ14を駆動する。
【0017】
この発明に係る装置は車間制御に関するので、以下それについて説明する。
【0018】
車間制御のためには、図2に示すように、目標車間と実車間mとの偏差が零となるようにスロットルモータ制御量(スロットル変化量)を決定すれば良い。そこで、図3に示す如く、自車のスロットル操作dθthから車間l[m]までの挙動をモデル化した。
【0019】
即ち、スロットル変化量dθth(入力)を積分することでスロットル開度θthが求められ、トルクtrq に変換される。それをタイヤ半径で除算することで駆動力f(軸トルク)が求められる。駆動力fから空気抵抗(車速の二乗値v2 と空気抵抗係数Cdと前面面積Aとの積)および転がり抵抗などの走行抵抗を減算して余裕駆動力が求められる。
【0020】
余裕駆動力fを車重(等価慣性質量を含む)で除算して重力加速度gを乗算すると、水平路面で出力し得る加速度α[m/s2 ]が求められる。それを積分して車速vが求められ、それをさらに積分することで移動距離(車間)l[m]が求められる。
【0021】
尚、スロットル操作がトルクtrq に反映されるまでには吸気特性や燃焼遅れによる遅れがあるが、実験値から2次の遅れとみなした。また、スロットルに対するトルク変化の特性は非線形なため、この部分を除外して線形化した。
【0022】
図4にそれを示す。尚、空気抵抗値は同図に示す如く、線形化のため、100km/h付近を中心とする一次関数に置き換えた(尚、中心速度は100km/hに限定されるものではなく、他の速度であっても良い)。
【0023】
ここで自車モデルは図2の制御モデルから明らかなように、入力は車間(相対距離)であり、相対系で成り立っている。従って、自車モデルの出力も先行車との相対的な車間となり、入力dtrq (トルク変化量。図4)も先行車との相対トルクである。
【0024】
よって、図4の自車モデルを図5のような線形状態モデルに置き換え、
入力=相対トルク
出力=車間(距離)
からなる線形状態方程式を自車モデルから求めると、数1に示すようになる(X:状態変数、U:入力、Y:出力(スカラ))。
【0025】
【数1】
【0026】
出力Yを除いて行列式で表された状態方程式は、数2に示すように、定数ベクトルA,B,Cによって各次数間の係数として当てはめられたものであり、一義的に決定される。
【0027】
【数2】
【0028】
ここで、図6に示す如く、状態変数Xは公知のオブザーバを用いて推定し、図7に示す如く、推定結果にオブザーバゲインKeを乗じて帰還させることとする。即ち、自車モデルは車両モデルであることから本来的にはスロットル操作を入力して車間を出力するものにならざるを得ないが、オブザーバを用いることで車間入力からスロットル操作量(トルク)を出力とするモデルに書き替えることができる。
【0029】
そして、この自車モデルに、図8に示す如く、車間を入力し、検出値との差を零に収束させるようにフィードバックするフィードバック系とする。
【0030】
また、前記理論による制御では線形な制御対象の方が容易に制御できるため、制御器の入力は車間で出力は相対トルク(自車が現在出力している走行トルクの増減分としての目標値)とする。しかし、図9に示すように、実車に入力するには、相対トルクtrq から実車スロットル開度θthへの非線形部分の変換をしなければならない。そのために、運動方程式を逆算して自車絶対トルク(自車が現在出力している走行トルク)trqaを算出し、両者を加算した値に基づき(図22に関して後述)、図10に示すような特性からスロットル開度θthを検索するようにした。
【0031】
他方、自車の現在の絶対トルクに基づいて同様の特性からスロットル開度θtha を検索し、両者の差を求めることでスロットル開度変化量dθthを求めるようにした。このように、図10に示す車速を含めた3次元マップからトルク値と車速値でスロットル開度を検索する。
【0032】
尚、シフトチェンジを行った場合、図10に示す如く、シフト位置に応じた係数Kshift をトルク値に乗じてマップ検索する。そして、検索したスロットル開度となるように、スロットルモータ(スロットルアクチュエータ)14の操作量を決定し、操作する。
【0033】
図11に上記の如く決定された全体モデルを示す。目標車間(後述)が入力され、その値となるようにスロットル開度が制御される。尚、便宜上、制御系を連続系で示してきたが、この制御はディジタル入力を用いる離散系で行われる。図12にそれを示す。
【0034】
また、上記とは別に、この発明に係る装置は定速度、いわゆるオートクルーズ制御も行う。図13にその構成を示す。これは、運転者が設定した車速となるべくPID制御器を用いてスロットルモータ14を駆動して自車の車速を制御するものである。尚、簡略化のためブレーキアクチュエータを省いた点を除くと、これ自体は公知の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0035】
以上を前提として、図14フロー・チャートを参照してこの発明に係る車両用走行制御装置の動作を説明する。尚、図示のプログラムは、例えば100msec ごとに起動される。
【0036】
先ずS1でレーザデータ出力から車間を算出し、S2に進んで(目標)相対トルク(自車が現在出力している走行トルクの増減分としての目標値あるいは目標変化量)を算出する。これは、図9などに関して前記した手法を用いて行う。
【0037】
図15はその算出(より具体的にはフィードバックゲインkrの算出)を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0038】
以下説明すると、先ず、S10で前回算出した車間値mn-1 と今回算出した車間値mn との差異(絶対値)が2[m]を超えているか否か判断する。図16に示す如く、ここでnは離散系におけるサンプリング周期を示す。
【0039】
S10で否定されるときは、ターゲット(先行車)の変更なしと判断してS12に進み、所定の単位時間当たりの他車の割り込みがあったか否か判断し、あったときはその割込回数(ターゲット変更回数)wをカウントする。ここで、『割り込み』はこのように他車の割り込みを意味する。また所定の単位時間は、このプログラム起動周期より十分に大きい時間、例えば10sec とする。
【0040】
次いでS14に進んでカウンタ値が0回を超えたか否か、換言すれば前記単位時間当たりに1回でも他車の割り込みがあったか否か判断する。S14で肯定、即ち、所定の単位時間内に1回でも他車が割り込んだと判断されるときは、前記所定の単位時間は十分に長く設定されていることから、S10で比較した差異はその割り込み車両との差であり、従って前記した通りに制御するため、プログラムをそのまま終了する。尚、この場合の目標車間は、図17に示すように、車頭距離(自車が1sec の間に進む距離)×比例定数Knとし、そのときの実車間に応じてレギュレータゲインKrを予め設定した値に入れ替える。
【0041】
他方、S14で単位時間内に他車の割り込みが1回もなかったと判断されるときはS16に進み、単位時間当たりの先行車の車速変化dvを算出し、S18に進んで算出した車速変化dvが5km/h未満か否か判断する。そしてS18で否定されるときは従前の制御を継続しつつプログラムを終了すると共に、S18で肯定されるときは、先行車の走行が安定、具体的には車間が安定している、より具体的には道路が空いている状況にあると判断し、S20に進んで安定収束制御を実行して可変ゲインを低減する。
【0042】
図18はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0043】
これについて説明すると、この装置では前述した通り、フィードバック制御がなされており、自車モデル入力にフィードバックゲイン(レギュレータゲイン)Krを乗じたものが相対トルクとして出力されるが、図19に示す如く、更に可変ゲインKout をレギュレータゲインKrに乗じると共に、車間安定時には可変ゲインKout を漸近的に低減させるようにした。
【0044】
これは、一つには前記したような道路が空いている状況では先行車にロバストに追従すると、運転者の疲労度が増加するからである。二つには、車間安定時には入力車間値は絶対値が低下しているため、相対的にレーザレーダ12の検出ノイズの割合が大となることの対策である。具体的には、車間が安定していると判断されるとき可変ゲインKout の値を1(初期値)から0.63程度まで経時的に低減させるようにした。
【0045】
図18フロー・チャートを参照して説明すると、S100でカウント値cが100未満か否か判断し、肯定されるときはS102に進んでカウント値をインクリメントしてS104に進み、カウント値cに係数k(0.0037程度)を乗算した積を1.0から減算して可変ゲインKout を減少補正する。
【0046】
この図18のプログラムは図15のプログラムが起動される度にループされることから、結果的に図15プログラムがループされる度に徐々に可変ゲインが低減され、それに応じてレギュレータゲインも低減される。尚、S100で否定されるときはS106に進んでカウント値を100に固定する。
【0047】
図15フロー・チャートに戻ると、S10で車間の前回値と今回値の差異が絶対値で2[m]を超えていると判断されるときは、先行車(ターゲット)が車線変更するなどしたと推定してS22に進み、再び車間今回値mn と前回値mn-1 の差異を求め、差異が0より大きいか、換言すれば先行車から離れたか、あるいは接近したか判断する。
【0048】
S22で肯定されるときはS10での判断も勘案して先行車は車線を変更したと判断し、S24に進んで車間今回値mn が100[m]未満か否か判断し、否定されるときは先行車なしと判断してS26に進んで定速度制御、いわゆるオートクルーズ制御を行う。これは、先に図13に関して説明した制御器を用いて行う。
【0049】
即ち、この装置においては図17に示すように、先行車との車間が100[m]未満のときは車間制御を行うと共に、100[m]以上のときは定速度制御を行うようにした。
【0050】
他方、図15フロー・チャートにおいてS24で車間今回値mn が100[m]未満と判断されるときはS28に進んでターゲット変更判断を行う。これは、先行車が変更されたことで先行車の値を入れ替え、制御上、旧先行車が瞬時に新先行車の位置、速度になったと誤認しないようするためで、適正に新先行車を追従させるためである。
【0051】
図20はその作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0052】
以下説明すると、S200で時間カウンタ値tをインクリメントする。時間カウンタ値は、図16の下部に示す。
【0053】
次いでS202に進んでカウンタ値が4未満か否か判断する。最初のループでは当然に肯定されてS204,S206,S208と進んでスイッチSW1,2,3をオフし、S210に進んでカウンタ値が4を超えたことが確認されるまでS200に戻る。
【0054】
これについて図16および図19を参照して説明すると、図15のS22で先行車が車線変更したと判断されるにも関わらず、S24で先行車との車間が100[m]未満と判断されるときは、例えばターゲットが新先行車などに変更したと推定される。従って、図16タイミング・チャートに制御切替時間と示す間に新先行車を追従するように制御を切り替えるようにした。
【0055】
即ち、図19ブロック図においてスイッチSW1がオンされている間は自車モデルに入力される相対トルクに基づいて操作量が決定されるが、制御切替え時間中はSW1をオフして零を入力するようにした。従って、その間はそれまでのスロットル開度が保持される。
【0056】
同様に、自車モデルにおいてもスイッチSW2をオフして零を入力(初期化)する。尚、SW3は車間入力および平均車速を入力するものであり(後述)、このスイッチは本来的にオフに設定する(その意味ではS208の動作は確認的なものである)。
【0057】
図20フロー・チャートにおいて、S202でカウンタ値が4未満ではない、即ち、4に達したと判断されるとS212に進んでカウンタ値が5未満か否か判断する。初めてS212に進んだ場合には当然に肯定されてS214,S216に進み、前記したスイッチSW2,SW3をオンする。
【0058】
次いでS210に進んでカウンタ値が4より大きいか否か判断され、ここでは否定されてS200に戻ってカウンタ値がインクリメントされて5となる。従ってS202およびS212の判断は共に否定されてS218に進み、車速(車間の1階差分値)の4周期(カウンタ値4)分の平均値が求められ、先にS216でSW3がオンされていることから、車間と共に入力される。
【0059】
次いでS220に進んでSW1がオンされて演算された相対トルク値が出力され、S222に進んでSW3をオフされ、次いでS210,S224を経てカウンタ値をリセットして終わる。
【0060】
このように、前回の先行車の影響をなくし、新先行車についてのデータに入れ替えることにより、車間および車速を新たな先行車に応じて円滑に変えることができる。換言すれば、入れ替わった新先行車を正しく追従するので、オーバーシュートやアンダーシュートを生じることがなく、安定した制御を実現することができてドライバビリティが向上する。
【0061】
尚、車速の4回分の平均値を求めて数値の精度を向上させたが、平均回数を減少させて、先行車の車速判断に要する時間を短縮させても良い。
【0062】
図15フロー・チャートに戻ると、S22で車間今回値と前回値との差が正ではない、即ち、接近していると判断されるときはS30に進んで他車の割り込みがあったものとして割込回数カウンタ値wをインクリメントし、S32に進んで車間今回値が危険車間より小さいか否か判断する。危険車間は図17に示す如く、車頭距離に比例ゲインKD を乗じて求められる。
【0063】
S32で車間今回値が危険車間より小さいと判断されるときはS34に進み、先行車と接近し過ぎていることから、スロットルモータ14のクラッチを解除し、S36に進んでエンジンブレーキを意図してシフトダウンを行う。次いでS38に進んでモデルを変更する。即ち、これらの定数ベクトルで記述される状態方程式に代入する値を変更する。尚、これはダウンしたシフト位置に対応する値を代入することで行う。
【0064】
これについて説明すると、シフトダウンすることは、スロットル開度の変化に対して車間の変化の割合が異なることを意味する。実際には前記した自車モデルは実際には等価慣性質量を除くと、シフトダウンの影響を受けるものではないが、相対トルクをトルク制御に置き換える上で遅れ系を入れているので、遅れを減らすことで、あたかもシフトダウンによってトルクが増加したと同様の効果を得ることができるからである。
【0065】
そのため、定数ベクトルをシフト位置ごとに別々に設定しておき、行先段のシフト位置(ギア位置)によって選択して代入するようにした。尚、定数ベクトルを変更すると共に、オブザーバゲインKeおよびレギュレータゲインKrも変更する。
【0066】
また、シフト位置に応じて図10のマップのトルク軸のレシオ比を変更すると共に、図21に示すように、自車速に応じてモデルを変更し、空気抵抗の線形化誤差を修正する。
【0067】
次いでS40に進んでS28と同様なターゲット変更判断を実行する。これは、ターゲットが変更した点で同様だからである。またS32で否定されたときは直ちにS40にスキップする。
【0068】
この実施の形態は上記の如く、自車モデルをフィードバック制御し、そのフィードバックゲインを用いて実車にも入力するようにした。
【0069】
また、(目標)走行トルクtrq を求める手法として概括すれば、以下のようになる。
trq =Fc(m−mt)×(1/Dc)×(m−mt)
ここで、Fc : 逆演算のノイズを抑える程度の平滑化フィルタ、Dc :自車のトルク発生から距離変化までの時間遅れを表す伝達関数、mt :目標車間、である。
【0070】
図14フロー・チャートの説明に戻ると、次いでS3に進んで車速センサ出力から自車の車速を算出し、S4に進んで走行トルク(前記した自車絶対トルクあるいは自車が現在出力している走行トルクtrqa )を算出する。これは、図4などに関して前記したように、これは運動方程式を逆算することで求める。
【0071】
次いでS5に進み、図22に示す如く、スロットル開度、より正確にはスロットル変化量dθthを算出する。これについては既に述べた。次いで、S6に進んでスロットルアクチュエータ(スロットルモータ)14の操作量THを算出する。
【0072】
図23はその算出を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【0073】
即ち、スロットル変化量dθthに対してS300でスロットルアクチュエータの応答時間遅れを表す伝達関数Dth(t) の逆伝達関数の値を求め、その値に対してS302に進んでノイズを抑える程度のフィルタFth(t) の値を求め、S304に進んでゲインマップTH(TH)(特性の図示省略)を検索して行い、アクチュエータ操作量を求める。
【0074】
具体的には、
アクチュエータ操作量TH=TH(TH)(Fth (dθth) /Dth (dθth))
で求める。
【0075】
次いでS7に進んで求めた値に基づいてアクチュエータの動作を制御する。
【0076】
この実施の形態は上記の如く、自車モデルをフィードバック制御し、そのフィードバックゲインを用いて実車にも入力するようにした。
【0077】
即ち、PID制御則を用いた従来技術でのフィードバック制御においては、偏差が発生して始めてそれを解消するように制御しているが、この実施の形態においては、将来なるであろう車間、相対車速、相対加速度、相対トルク、挙動遅れを制御に使用できるため、制御偏差が格段に減少し、制御の応答性を向上させることができる。
【0078】
また、トルクとスロットル開度は非線形な関係にあるが、それを制御モデルの系の外においたため、線形な車間制御を実現することができる。更に、自車の絶対的な走行トルクを車速から推定し、そのトルクに応じて自車の現在のスロットル開度を推定すると共に、目標相対トルクからもスロットル開度を求め、その差を求めるようにしたので、スロットル開度を最終的には絶対値で求めることがない。
【0079】
このように、一次的には絶対量として求めるが、最終的には相対的な偏差として求めるため、内部変数値として絶対値を保存することがない。また図9において、登降坂の勾配トルクを両者とも行っていないため、各々の差の出力値は、登降坂路においても正負の方向性(スロットルの開閉方向)に誤りがなく、必要なスロットル変化量をフィードバックによって補正することができる。
【0080】
このため、累積誤差の集積を考慮する必要がなく、補正手段も不要であり、センサも高精度である必要がない。このように、相対系で操作量を決定しており、実測値などから操作量を決定することがないので、登降坂などの外乱の影響を受けることが少ない。
【0081】
更に、操作量をトルクとするように構成したので、意図した制御結果を得ることができる。即ち、従来技術に見られるように操作量をスロットル開度で決定するとき、同一開度でも出力トルクが異なることが生じるが、そのような不都合がない。
【0082】
更に、上記の構成によってスロットル操作量の滑らかな変化が実現できるので、目標相対トルクによって制御することができ、先行車の加減速に対する追従性が向上する。即ち、図25に示す従来技術の制御に対して図24に示すように制御性を向上させることができる。
【0083】
図26はこの発明の第2の実施の形態を示す、図19と同様な図である。この実施の形態においては、可変ゲインKout を自車の入力側におき、Kr×Kout を自車に入力するようにした。従って、モデルへはレギュレータゲインのみを乗じた値が入力される。これによって、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
この発明に係る車両用の走行制御装置にあっては、上記の如く、自車と先行車との車間距離を検出する車間距離検出手段(レーザレーダ10)、目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段(図11など)、自車速を求め、それに車両の挙動に影響を与える因子の係数を乗じて自車が現在出力している走行トルクを算出する走行トルク算出手段(図14のS4および図11など)、前記車間距離と目標車間距離の偏差に基づいて前記走行トルクの目標変化量を算出する走行トルク目標変化量算出手段(図14のS2および図11など)、前記走行トルクと走行トルクの目標変化量と自車速に基づいて操作量を算出する操作量算出手段(図14のS5,S6および図23)、前記操作量に基づいてアクチュエータ操作量を算出するアクチュエータ操作量算出手段(図23)、および前記アクチュエータ操作量を入力されて車速を変更するアクチュエータ(スロットルアクチュエータ14)、とからなる如く構成した。
【0085】
更には、前記車両の挙動に影響を与える因子が、少なくとも等価慣性質量、転がり抵抗および空気抵抗である(図9など)如く構成した。
【0086】
更には、シフトチェンジがなされたとき、シフト位置に応じた係数Kshift を乗じて算出する如く構成した(図10)。
【0087】
尚、上記の実施の形態でシフトダウンしたときには状態方程式に代入する値を変更するようにしたが、状態方程式を変更することなく、図10に示すトルク−スロットル開度特性をギア位置(シフト位置)ごとに定めておき、行先段に対応する特性を選択してスロットル開度を定めても良い。
【0088】
更には、図10に示すトルク−スロットル開度特性をいずれかのギア位置(シフト位置)について設定しておき、他のギア位置については特性を検索して得た値に適宜な係数を掛けて補正しても良い。
【0089】
更には、図10に示す如く、トルク−スロットル開度特性をシフトチェンジ後に検索するときトルク値にシフト位置に応じた係数Kshift を乗じているが、これに限定されるものではなく、トルクコンバータのスリップ比に応じたトルク増幅係数を乗じても良い。
【0090】
尚、上記の実施の形態で目標トルクの算出には、公知のPID制御則やファジィ制御則などの制御則を用いても良い。
【0091】
更には、先行車との車間を検出する手段としてレーザレーダを用いたが、これに限られるものではなく、視覚検出手段などを用いても良い。
【0092】
更に、スロットルアクチュエータのみを用いたが、ブレーキアクチュエータを併用しても良い。また、アクチュエータは電動式に限らず、負圧式などでも良い。
【0093】
【発明の効果】
車間変化に対して応答性を向上させると共に、加減速を適正に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る車両用走行制御装置を全体的に示す説明ブロック図である。
【図2】図1の装置が用いる制御モデルの説明ブロック図である。
【図3】図1の装置が用いる制御モデルの更に別の説明ブロック図である。
【図4】図1の装置が用いる制御モデルで図3の構成を線形化したものを示す説明ブロック図である。
【図5】図1の装置が用いる制御モデル(線形状態モデル)の説明ブロック図である。
【図6】図1の装置が用いる制御モデル(線形状態モデル)の更に別の説明ブロック図である。
【図7】図1の装置が用いる制御モデル(線形状態モデル)の更に別の説明ブロック図である。
【図8】図1の装置が用いる、オブザーバを組み込んだ状態の全体モデルを示す説明ブロック図である。
【図9】図1の装置が用いる全体モデルの説明ブロック図である。
【図10】図9の中のトルク−スロットル開度の変換マップの特性を示す説明図である。
【図11】図1装置が用いる図9と同様な全体モデルの別の説明ブロック図である。
【図12】図11に示す連続的な制御系を離散系に書き直した説明ブロック図である。
【図13】図1装置が定速度走行制御に用いる構成の説明ブロック図である。
【図14】図1装置の動作を示すメインフロー・チャートである。
【図15】図14フロー・チャートの目標相対トルク算出作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図16】図15フロー・チャートの処理を説明するタイミング・チャートである。
【図17】図15フロー・チャートの危険車間などを説明する説明図である。
【図18】図15フロー・チャートの中の安定収束制御処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図19】図15フロー・チャートの処理を説明するブロック図である。
【図20】図15フロー・チャートの中のターゲット変更判断処理を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図21】図15フロー・チャートの中のシフトチェンジに伴うモデル変更特性の説明グラフ図である。
【図22】図14フロー・チャートの中のスロットル開度算出作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図23】図14フロー・チャートの中のスロットルアクチュエータ制御量算出作業を示すサブルーチン・フロー・チャートである。
【図24】図1の制御装置の制御結果を示す説明タイミング・チャートである。
【図25】従来技術の制御装置の制御結果を示す説明タイミング・チャートである。
【図26】この発明の第2の実施の形態を示す、図19に類似するブロック図である。
【符号の説明】
10 レーザレーダ(車間距離検出手段)
12 車速センサ
14 スロットルアクチュエータ(スロットルモータ)
20 制御器
Claims (4)
- a.自車と先行車との車間距離を検出する車間距離検出手段、
b.目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段、
c.自車速を求め、それに前記自車の挙動に影響を与える因子の係数を乗じて自車が現在出力している走行トルクを算出する走行トルク算出手段、
d.前記車間距離と目標車間距離の偏差に基づいて前記走行トルクの目標変化量を算出する走行トルク目標変化量算出手段、
e.前記走行トルクと走行トルクの目標変化量と自車速とに基づいてスロットル開度を算出すると共に、前記走行トルクと自車速とに基づいてスロットル開度を算出し、前記算出された2つのスロットル開度の差に基づいてスロットル開度変化量を算出するスロットル開度変化量算出手段、
f.前記スロットル開度変化量に基づいてアクチュエータ操作量を算出するアクチュエータ操作量算出手段、
および
g.前記アクチュエータ操作量を入力されて車速を変更するアクチュエータ、
からなることを特徴とする車両用走行制御装置。 - 前記自車の挙動に影響を与える因子が、少なくとも等価慣性質量、転がり抵抗および空気抵抗であることを特徴とする請求項1項記載の車両用走行制御装置。
- 前記スロットル開度変化量算出手段はシフトチェンジがなされたとき、シフト位置に応じた係数を乗じて算出することを特徴とする請求項1項または2項記載の車両用走行制御装置。
- a.自車と先行車との車間距離を検出する車間距離検出手段、
b.目標車間距離を設定する目標車間距離設定手段、
c.自車速を求め、それに前記自車の挙動に影響を与える因子の係数を乗じて自車が現在出力している走行トルクを算出する走行トルク算出手段、
d.前記車間距離と目標車間距離の偏差に基づいて前記走行トルクの目標変化量を算出する走行トルク目標変化量算出手段、
e.前記走行トルクと走行トルクの目標変化量と自車速とに基づいて操作量を算出する操作量算出手段、
f.前記操作量に基づいてアクチュエータ操作量を算出するアクチュエータ操作量算出手段、
および
g.前記アクチュエータ操作量を入力されて車速を変更するアクチュエータ、
からなると共に、前記操作量算出手段はシフトチェンジがなされたとき、シフト位置に応じた係数を乗じて算出することを特徴とする車両用走行制御装置。
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