JP3744776B2 - カラメル風味を呈する食品素材粉末の製造方法 - Google Patents

カラメル風味を呈する食品素材粉末の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好なカラメル風味を呈する食品素材粉末を製造する方法に関するものであり、更に詳しくは、本発明は、糖類と乳製品を原料とし、これらをメイラード反応させて得られる食品素材粉末の製造方法であって、各種飲食品の原材料として使用した際に、各種飲食品に効果的にカラメル風味を付与し得る食品素材粉末を製造する方法に関するものである。
本発明において、「一次乳製品」及び「二次乳製品」とは、次のように定義されるものである。即ち、一般に、乳又は乳製品は、乳を直接利用するものと、微生物や酵素を利用して得るものとに分類される。前者としては、牛乳、濃縮乳、全粉乳類、クリーム、バター、脱脂乳、脱脂粉乳類等の、主として理化学的操作(乳化、殺菌、濃縮、乾燥、凍結など)によって得られる乳製品が例示され、後者としては、発酵乳、チーズ、発酵バター、発酵クリーム、乳酸菌飲料等の、主として微生物、発酵によって得られる乳製品が例示される(山内邦男等編、「ミルク総合事典」、第3〜4ページ、株式会社朝倉書店、1998年5月1日)。本発明においては、「一次乳製品」とは前者を意味するもの、即ち微生物や酵素を利用せず、乳を直接利用するものとして、また、「二次乳製品」とは後者を意味するものとして定義する。尚、本発明において、「固形分比率」とは、調乳液中の固形分全体に対する比率を意味しており、また、本発明において、百分率は、特に断りのない限り重量による値である。
【0002】
【従来の技術】
従来、カラメル風味を呈する飲食品が数多く市販されており、市場においても一つの流行になりつつある。また、一般の飲食品に対し、風味上のコクを高めるために、軽いカラメル風味を付与することもある。一般に、飲食品にカラメル風味を付与する簡便な方法としては、例えば、カラメル香料、カラメル着色料を混合する方法がある。しかしながら、飲食品に香料、着色料を配合した場合は、その飲食品の商品の包装には、原材料名として「香料」、「着色料」等と表記する必要があり、一般消費者に対するイメージという点では、必ずしも理想的とは言い難い。従って、飲食品にカラメル風味を付与するためには、香料、着色料等ではなく、専用の食品素材が使用されることも多い。このような食品素材は、一般には、粉末の形状であれば、保存性が良く、取り扱いも簡便になるため望ましいとされている。
【0003】
一般に、飲食品にカラメル風味を付与するための食品素材(以下、単に「食品素材」と記載することがある。)を製造する場合は、その食品素材の原料を加熱して褐変させる工程を含んでいるが、この工程は、通常は、糖類とアミノ酸とを反応させて褐変させるメイラード反応を利用するものである。このようなメイラード反応は、蔗糖、ブドウ糖等の糖類と、アミノ酸とを反応させるものであるが、後者のアミノ酸としては、乳又は乳製品が使用されることが多く、特に、乳又は乳製品であれば、香りが高く、風味の点で優れた食品素材が得られる利点がある。従来、このように糖類と乳製品とをメイラード反応させて食品素材を得る技術としては、糖類や、乳又は乳製品を配合して調乳液を調製し、このように調製した調乳液を加熱してメイラード反応を起させる、という手順が一般的であった。
尚、ここで言う「調乳液」とは、乳又は乳製品を配合した溶液の総称である。
【0004】
そして、従来は、このような調乳液を調製する際の手順によって、次の(I)及び(II)の技術が知られていた。
(I)糖類と乳製品とをそのまま混合して調乳液を調製する技術
(II)糖類を予め加熱してカラメル化し、このカラメルと乳製品とを混合して調乳液を調製する技術
前記従来技術(I)としては、例えば、(a)特公昭50−2742号公報、(b)特許第2632639号公報、特開平8−256680号公報、特開平10−84867号公報等、及び(c)特表平11−501215号公報、に開示された技術が知られている。また、前記(II)の技術としては、例えば、(d)特公昭54−27423号公報、に開示された技術が知られている。
【0005】
前記(I)の技術において、前記(a)は、乳製品に糖類を加えて調乳液を調製し、加熱して褐変させ、次いで、結晶核となる粉糖を添加して砂状塊物質を析出させ、これを粉砕して粉末状の食品素材粉末を得る技術であり、また、前記(b)は、練乳、又は練乳の加工品(乳糖を分解したもの、乳糖含量を調製したもの)を調乳液として調製し、これを加熱して褐変させる技術であり、更に、前記(c)は、ミルク蛋白質、糖類、脂肪等を含む調乳液を調製し、密閉タンクにおいて均質化、脱水し、褐変させる技術である。また、前記(II)の技術において、前記(d)は、糖類を加熱して予めカラメル化しておき、このカラメルにチーズを加えて調乳液を調製し、100〜130℃で加熱し褐変させる技術であり、このような調乳液を噴霧乾燥することも開示されている。
以上の従来技術において、従来技術(I)は、乳製品として一次乳製品を使用するものであり、従来技術(II)は、乳製品として二次乳製品を使用するものである。
【0006】
しかしながら、前記従来技術(I)では、糖類をそのまま混合した調乳液を加熱・褐変させるものであるため、メイラード反応の速度が迅速とはいえず、強力なカラメル風味を呈する食品素材を得ることが困難であった。このため、前記従来技術(I)によって得られた食品素材は、飲食品にカラメル風味を付与する目的については、効果が乏しくなるという問題があった。このような問題点を回避するために、例えば、前記(b)の技術においては、褐変促進剤、乳糖分解酵素等を添加したり、乳糖含量を適当に調整する等、結局、複雑な工程を採用することが推奨されており、余分な工程の増加とともに、ランニングコストが増大するという問題もあった。また、前記(I)の技術では、調乳液を加熱してメイラード反応により褐変させる際に、乳製品中の乳糖と乳蛋白質とが強く反応し、調乳液が増粘しやすくなるという問題があった。尚、「増粘」とは、調製乳の粘度が高くなることを意味する。
【0007】
このように調製乳が増粘した場合は、調乳液を流動物として取り扱うことが困難となり、乾燥して粉末化することが困難となる問題があった。このために、粉末化するためには、例えば、前記(a)の技術のように、結晶核となる粉糖を添加し、砂状塊物質を析出させ、これを粉砕するというように、極めて煩雑かつ歩留まりの悪い方法を採用するしかなかった。また、調乳液に乳糖が析出しやすいことから、安定した調製乳の製造が困難であり、このため、例えば、(b)の技術においては、予め乳糖を分解することが推奨されており、やはり工程が複雑化し、ランニングコストが増大する傾向にあった。要するに、前記従来技術(I)は、調乳液が不安定になるとともに、調乳液を粉末化することが困難であり、特に、噴霧乾燥法のように安価で効率が良い乾燥方法を採用することが困難であったため、得られた食品素材は、コスト、保存性、取り扱いの簡便性という点で理想的とは言い難いものであった。
【0008】
一方、前記(II)の技術においては、糖類を予め加熱してカラメル化しておき、これに乳製品を加えて調乳液を調製するものであるが、この場合の乳製品には二次乳製品が使用される。一般に、二次乳製品は、乳又は乳製品を発酵、酵素分解等を行ったものであるため、乳蛋白質が分解された状態となっており、前記従来技術(I)のように調乳液が増粘したり、乳糖が析出したりすることは抑制される。しかしながら、二次乳製品を使用している以上、前記従来技術(II)によって得られた食品素材は、特殊な風味を呈する食品素材であり、飲食品に対して純粋にカラメル風味を付与したいという目的には不向きであった。また、一般に、糖類の含有量が多い液体を噴霧乾燥した場合は、乾燥装置の内壁面に粉末が付着する等の問題が生じ、このため糖類の含有量が多い液体は噴霧乾燥法を採用することは困難とされていた。従って、食品素材の分野においても、従来は、噴霧乾燥粉末を得るための調乳液の糖類の含有量は、固形分比率で20%以下に設定することが常識であった。実際、前記(d)の技術においては、カラメルは、風味付け程度の量しか添加されず、その添加量は、固形分比率で1〜3%程度でしかない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、カラメル風味を呈する食品素材粉末を製造する技術を開発することを目標として鋭意研究を行った結果、従来技術(I)のように乳製品として二次乳製品ではなく一次乳製品を採用した場合であっても、前記従来技術(II)のように糖類を一旦カラメル化した上で調乳液に配合する方法を採用すれば、調乳液の増粘や乳糖の析出が緩和され、工業的に充分な安定度をもって調乳液の噴霧乾燥が可能であり、しかも糖類の含有量を20%以上にすることも可能であるという事実を発見し、更に研究を重ねて、本発明を完成させた。
本発明の目的は、カラメル風味を呈する食品素材粉末の新しい製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、飲食品に配合することにより効果的にカラメル風味を付与できる食品素材であって、粉末状で取り扱いが簡便で保存性が良く、一次乳製品を原料としていながらも、製造コストが安価な噴霧乾燥法を採用することができる、食品素材粉末の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明は、糖類を加熱してカラメル化し、得られたカラメルに一次乳製品を混合して調乳液を調製し、調製した調乳液を加熱して褐変させ、冷却し、噴霧乾燥し、噴霧乾燥粉末を取得することを特徴とするカラメル風味を呈する食品素材粉末の製造方法、である。
また、本発明は、上記方法において、糖類を固形分比率で20%(重量)以上含有する調乳液を調製すること、固形分の濃度が30%(重量)以上の調乳液を調製して、調乳液を実質的に濃縮せずに噴霧乾燥すること、及び、練乳を固形分比率で30%(重量)以上含有する調乳液を調製すること、を望ましい態様としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の食品素材粉末の製造方法は、予め糖類を加熱し、カラメル化しておくことを第一の特徴とする。本発明で使用する糖類としては、加熱によって焦げて良好なカラメルを形成するものであれば、いかなるものでも採用することができる。例えば、通常のブドウ糖、蔗糖、糖液、糖蜜、果糖等の他、サツマイモ、切り干しイモ等のでんぷん類を糖化したもの等を採用することができる。しかしながら、後記するメイラード反応を迅速に行うためには、糖類としては、単糖類及び/又は二糖類を採用することが好ましい。このような単糖類としては、ブドウ糖、果糖、ガラクトース等を例示することができ、二糖類としては、乳糖、蔗糖、麦芽糖等を例示することができる。即ち、これらの糖類のうち、1種類又2種類以上を選択して配合する。このような糖類を、加熱し、カラメル化する。この際の加熱の温度は、200℃以上の温度、好適には230℃以上の温度であることが望ましい。このような糖類の加熱・カラメル化は、開放された空間で行うことが望ましい。その理由は、適度に水分を蒸発させながら煮詰めていくことが好ましいためである。
【0012】
このように開放された空間で加熱する手段としては、例えば、上部が開口した鍋形状の金属製容器、金属製タンク等を例示することができる。この場合の加熱の方式は、いかなるものでも良く、例えば、当該容器、タンク等を二重ジャケットで構成し、この二重ジャケットの中に熱媒を通過させて加熱する方式が例示できる。しかしながら、糖類がカラメル化する際の香ばしい風味を強く得るためには、糖類を攪拌しながら直火で加熱する方式が最も望ましい。加熱を終了させるタイミングは、適宜、糖類が好ましくカラメル化した段階で終了させれば良く、最終的に食品素材粉末に求められる風味に応じて適宜決定すれば良い。
【0013】
次いで、このようにして得られたカラメルに一次乳製品を混合して調乳液を調製する。即ち、本発明では、乳製品原料として「一次乳製品」を採用することを第二の特徴としている。一般に、原料として一次乳製品を採用した場合は、調乳液が増粘しやすくなるため、粉末化が困難となり、また、乳糖が析出しやすく、安定した製造が難しくなるとされていた。このため、従来は、調乳液を噴霧乾燥する場合には、原料として一次乳製品が採用されることはなく、例えば、前記従来技術(d)のように、専ら、二次乳製品が採用されていた。本発明は、このような従来技術の常識に反して、一次乳製品を採用した上で、噴霧乾燥を行う点を大きな特徴としている。尚、ここで、一次乳製品は、前記(b)の技術のように、乳糖を分解する等の処理を行わないものであることが好ましい。これは、自然な風味の食品素材を得るためである。一次乳製品としては、例えば、練乳の他、全乳、脱脂乳、粉乳を水又は湯で還元した還元乳等、種々のものを採用することができる。
【0014】
以上のような一次乳製品を前記カラメルに配合して調乳液を調製するが、調製の際には、適当に水、湯等の水分を添加して固形分濃度を調整しても良い。また、カラメル以外に、別に糖類を配合することも可能であり、例えば、一次乳製品として加糖練乳を採用しても良い。また、更に、一次乳製品以外にも所望の種々の副原料を配合しても良いことはいうまでもない。ただし、商品価値を上げるためには、調乳液は糖類と一次乳製のみで調製し、できるだけ香料、着色料等は配合しないことが好ましい。次いで、このように調製した調乳液を、加熱してメイラード反応を起こさせ、褐変させる。加熱温度は、80℃〜150℃程度で30分〜180分程度行うことが好ましい。尚、この「褐変」は、メイラード反応による褐変である。このような加熱を行う手段はいかなるものでも良く、公知の加熱装置を用いることができる。この加熱装置は、特に、大気圧以上に加圧した状態で加熱する装置であっても良いが、大気に開放された状態で加熱する装置であっても良い。また、連続式の装置でも良く、回分式の装置でも良い。
【0015】
調乳液をメイラード反応によって褐変させた後は、常法で冷却するが、この場合の冷却手段も、いかなるものであっても良い。冷却した調乳液は、噴霧乾燥する。本発明では、原料として一次乳製品を採用しているが、糖類の大部分をカラメル化した上で調乳液に配合するため、調乳液の増粘の度合いが抑制され、しかも、乳糖の結晶の析出も軽減され、安定して噴霧乾燥することができる。尚、噴霧乾燥とは、調乳液を微粒化し、微粒化した液滴を熱風により乾燥する乾燥技術である。
以上のような噴霧乾燥を行った後の粉末を取得すれば、良好なカラメル風味を呈する食品素材粉末を得ることができる。尚、以上の工程の間には、調乳液を適宜殺菌する工程を挿入しても良い。本発明の方法は、調乳液が、糖類を固形分比率で20重量%以上含有することを望ましい態様とする。なお、ここで言う糖類には、一次乳製品に含有されている乳糖は包含されない。
【0016】
前記のように、従来は、調乳液を噴霧乾燥する場合には、噴霧乾燥機の内壁に粉末が付着しやすくなるために、糖類の配合量を上げることができなかったが、本発明では、糖類のうちの全て又は大部分を予めカラメル化して配合するため、噴霧乾燥するにもかかわらず、糖類の配合量を、調乳液の固形分比率で20%以上にまで上げることが可能である。また、本発明では、糖類のうちの全て又は大部分を予めカラメル化して配合するため、例えば、糖類が調乳液全体の40%未満、更には30%未満の低い含有量しか配合されてなくても、充分に調乳液を褐変させることが可能であり、このような糖類の低い含有量であっても、カラメル風味の豊かな食品素材粉末を得ることが可能である。この場合、調乳液に配合されるべき糖類のうち、糖類全体の40%を予めカラメル化することが好ましい。また、本発明の方法は、固形分の濃度が30%以上の調乳液を調製し、かつ、調乳液を実質的に濃縮せずに噴霧乾燥することを望ましい態様としている。ここに、「実質的に濃縮せずに」とは、人為的な濃縮操作を行わないという意味である。人為的な濃縮操作とは、本来の濃縮の目的である省エネルギーの効果が生じる程度まで濃縮する行為を意味しており、結局、自然に起こる水分の蒸発や、省エネルギー効果が出ない程度の軽微な濃縮操作は、本発明においては「濃縮」することには該当しない。
【0017】
このように、本発明の望ましい態様では、予め、調乳液を、固形分が高い状態で調製し、実質的に濃縮せずに噴霧乾燥を行う。このため、噴霧乾燥する前の調乳液が、増粘する危険性が更に少なくなり、安定した噴霧乾燥を行うことができる。尚、調乳液の固形分濃度は、60%を超えないことが好ましい。また、本発明の方法では、一次乳製品として練乳を採用し、これを固形分比率で30%(重量)以上含有する調乳液を調製することを望ましい態様とする。前記(b)の技術では、安定した調乳液の製造を行うために、乳糖を分解することが推奨されているが、本発明の方法では、練乳を使用することを望ましい態様とする。この場合の練乳とは、無糖練乳、無糖脱脂練乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳等であり、その他、これらと成分組成及び物理的性質の面で類似した乳製品をも包含する。このように、本発明の方法において、練乳を使用することによって、練乳の風味が豊かな食品素材粉末を得ることができ、本発明の効果を最も享受することができる。尚、この場合、好適には、練乳としては、全脂加糖練乳及び/又は脱脂加糖練乳を採用することが望ましい。「全脂加糖練乳」とは、糖を加えた乳を濃縮したものであり、「脱脂加糖練乳」とは、糖を加えた脱脂乳を濃縮したものであるが、これらの原料を採用すれば、調乳液にカラメル以外の糖類を添加することになり、調乳液の調製が容易である。
以上説明した本発明の方法によって得られる、カラメル風味を呈する食品素材は、各種飲食品の風味付け、例えば、冷菓、菓子類の香りづけや、パン類、デザート類に対してアーモンド等の風味付けをすること、コーヒー飲料の風味付け等、に好適に利用することができる。
【0018】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
糖類として、ビートグラニュー糖(北海製糖社製)を使用し、これを銅製の鍋に投入し、ガスバーナーで直火で加熱して焦がし、カラメルを得た。
次に、全脂練乳(日本製乳社製)41.3重量部を二重ジャケット式タンクに投入し、これに、全粉乳(日本製乳社製)28.6重量部、脱脂粉乳(日本製乳社製)16.7重量部、及び前記のカラメル13.4重量部を加え、二重ジャケット式タンクのジャケットに温湯を流して加熱しながら攪拌し、溶解し、調乳液を得た。得られた調乳液の固形分の濃度は30%であった。
この調乳液を回分式のパスチャライザーに移送し、95℃の温度で2時間ほど維持したところ、調乳液はメイラード反応により褐変し、カラメル風味を呈する状態となった。
褐変した調乳液を50℃まで冷却し、次いで、圧力式ノズルを有する噴霧乾燥機に通液し、熱風温度165℃、室温95℃、排気温度85℃、水分蒸発量100kg/hの条件で噴霧乾燥して、カラメル風味を呈する良好な性状の食品素材粉末を得た。
得られた食品素材粉末を、バニラソフトクリームのトッピング材料として使用したところ、非常に良好なカラメル風味を呈するソフトクリームとなった。
【0019】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明は、カラメル風味を呈する食品素材粉末の製造方法に係るものであり、本発明の方法によれば、1)粉末状で取り扱いが簡便で保存性が良く、飲食品に配合することにより効果的にカラメル風味を付与できる食品素材粉末を得ることができる、2)また、一次乳製品を原料としていながらも、噴霧乾燥法を採用することができ、製造コストが安価である、3)しかも、乳糖を分解する操作等の複雑な工程も必要としない、4)また、噴霧乾燥粉末でありながら糖類の含有量が高い食品素材粉末を得ることができる、5)更に、飲食品に対し、香料、着色料等の補助的な添加物を使用せずにカラメル風味を強力に付与できる食品素材粉末を製造することができる、等の格別の効果が奏される。

Claims (4)

  1. 糖類を加熱してカラメル化し、得られたカラメルに一次乳製品を混合して調乳液を調製し、調製した調乳液を加熱して褐変させ、冷却し、噴霧乾燥し、噴霧乾燥粉末を取得することを特徴とするカラメル風味を呈する食品素材粉末の製造方法。
  2. 糖類を固形分比率で20%(重量)以上含有する調乳液を調製する請求項1に記載の食品素材粉末の製造方法。
  3. 固形分の濃度が30%(重量)以上の調乳液を調製して、調乳液を実質的に濃縮せずに噴霧乾燥する請求項1又は請求項2に記載の食品素材粉末の製造方法。
  4. 練乳を固形分比率で30%(重量)以上含有する調乳液を調製する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の食品素材粉末の製造方法。
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