JP3744384B2 - 電波吸収体シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電波吸収体シート、特に、電子機器から雑音電波が漏れたり、電子機器へ雑音電波が侵入するのを防止するために、電子機器相互を接続している信号ケーブルなどに取り付けて使用する電波吸収体シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、パーソナルコンピュータをはじめとして、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子機器にあっては、電子機器のロジックボードや記憶装置などの構成要素を相互に電気的に接続するために、多数の導線が電気的に相互に絶縁されて並列に配列されたフラットケーブルやフレキシブル基板が使用されている。これらフラットケーブルやフレキシブル基板のうち、電磁干渉雑音(EMI)対策の必要なものには、磁性体粉末を樹脂等に混練してシート状に成形した電波吸収体シートが貼り付けられている。
【0003】
従来、前記のような電波吸収体シートは、フラットケーブルの寸法に応じて、大きな寸法を有する母シートから切り出され、それをフラットケーブルの所望の部位に貼り付けるようにしていた。このような電波吸収体シートでは、金型による母シートの打抜き等により、電磁干渉雑音対策の必要な電子部品の部位に応じて自由な形状に加工することができるが、打抜き加工による材料の無駄が生じ、材料コストが高くなるという欠点を有していた。
【0004】
このような従来の電波吸収体シートが有している欠点を解消するため、例えば図4に示すように、母シート51に予め分離案内溝52を格子状に形成しておき、これら分離案内溝52で母シート51を分離して所望のサイズの電波吸収体シート55を得るようにしたものも一般に知られている(例えば実開平5−1293号公報参照)。母シート51の一つの主面には粘着材層53が形成され、該粘着材層53は保護シート54により保護するようにしている。そして、切り離した二つの電波吸収体シート55は、フラットケーブルの所望の部位を挟み込むようにして取り付けられる。
【0005】
また、具体的には図示しないが、フラットケーブルを上下から挟んで結束する結束具の、フラットケーブルに接する上下の内面に予め貼り付けるようにした電波吸収体シートも一般に周知である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の電波吸収体シートにあっては、次のような問題を有していた。すなわち、図4で説明したものでは、二つの電波吸収体シート55をフラットケーブルの上下面にそれぞれ貼り付けるようにしているので、電波吸収体シート55の装着のための工数が多くなるばかりでなく、例えば図5に示すように、フラットケーブル61の上下面で電波吸収体シート55相互の貼付位置にずれが生じることがある。このように、電波吸収体シート55の貼付位置がずれると、電波吸収体シート55の両端部における接合面積(図5において、符号bで示した領域の面積)が小さくなる。従って、その部分で磁気抵抗が大きくなり、フラットケーブル61の周りに発生する磁力線62の吸収効率が低下し、雑音電波の吸収効率が低下するという問題があった。また、図5において符号aで示した領域では、粘着材層53が露出し、この露出部分53aが近傍の電子部品に付着して種々のトラブルが生じるという問題があった。
【0007】
また、フラットケーブルに接する結束具の上下の内面に電波吸収体シートを貼り付けるようにしたものでは、結束具の寸法が大きくなり、電波吸収体シートや結束具の装着部位に制約を受けるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、装着状態による雑音電波の吸収効率のばらつきや低下がなく、粘着材層が露出しにくく、コンパクトで装着が容易な電波吸収体シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用】
前記目的を達成するため、本発明に係る電波吸収体シートは、電波吸収材からなる平面視で矩形形状をなす基材シートと、前記基材シートの第1の主面に設けられた粘着材層と、前記基材シートの第1の主面に対向する第2の主面にその短辺方向に設けられた破線状の折返し溝とを備え、前記折返し溝の両端部は前記基材シートの対向する二つの長辺に到達することはなく、前記折返し溝に沿って前記基材シートを前記第1の主面が内側になるように二つに折り曲げて、前記粘着材層により接着し、被挟着物を挟み込むように構成されていることを特徴とする。
【0010】
基材シートは、折返し溝に沿って二つに折り曲げられることにより、フラットケーブルやフレキシブル基板等の被挟着物を両側から挟み込むようにして貼り付けられる。折返し溝は基材シートの短辺方向に設けられているため、基材シートは完全に折り重なった状態で被挟着物に取り付けられ、閉磁路を構成する。これにより、被挟着物の周りに発生する磁力線は基材シートに効率よく吸収されるとともに、粘着材層が露出しにくくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電波吸収体シートの実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、電波吸収体シート10は電波吸収材からなる基材シート11を有している。基材シート11は、フェライトや軟磁性金属の粉末をゴムやエラストマなどと一緒に混練し、シート状に成形して適当な寸法を有する長方形状に切り出したものである。
【0013】
基材シート11の一つの主面には、破線状の折返し溝12が形成されている。折返し溝12は基材シート11の中央、言い換えると線対称位置に形成されている。折返し溝12の深さは、基材シート11の厚さd1と略等しい寸法である。折返し溝12の深さを前記のように設定することにより、折返し溝12における基材シート11の折返しが容易になる。
【0014】
さらに、本実施形態では、破線状の折返し溝12を、その両端部が基材シート11の対向する二つの長辺11a,11bとの間にそれぞれ間隔を持たせるように配置している。折返し溝12の両端がそれぞれ長辺11a,11bに接するように設けると、電波吸収体シート10が折返し溝12の端部で裂け易くなり、電波吸収体シート10を注意して取り扱う必要が生じ、装着作業が煩雑になるからである。
【0015】
また、基材シート11のいま一つの主面には粘着テープ等により粘着材層13が形成されており、該粘着材層13は保護シート14により保護されている。
【0016】
以上の構成を有する電波吸収体シート10は、以下の手順でフラットケーブル61の所望の部位に装着される。つまり、保護シート14を粘着材層13から剥がした後、例えば図2に示すように、電波吸収体シート10の左側半分をフラットケーブル61の上面に粘着材層13にて貼り付ける。次に、電波吸収体シート10の右側半分を折返し溝12に沿って、粘着材層13が内側になるように矢印A方向に折り返し、粘着材層13にてフラットケーブル61の下面に貼り付ける。折返し溝12が形成されている部分は、他の部分よりも機械的強度が弱くなっている。従って、電波吸収体シート10を、折返し溝12で容易に折り返すことができる。そして、基材シート11は、通常、折返し溝12の位置で最終的に二つに切断される。
【0017】
こうして、図3に示すように、電波吸収体シート10は、フラットケーブル61を上下両側から挟むように二つに折り曲げられ、フラットケーブル61の周りを取り囲むように装着される。このとき、図3に示すように、基材シート11は折り曲げ部分において完全に切り離された状態(ちぎれた状態)である方がよい。基材シート11が繋がっていると、上下の基材シート11に引っ張り応力が生じ、粘着材層13が剥がれやすくなり、フラットケーブル61の位置ずれが生じたりするからである。
【0018】
折返し溝12は基材シート11の線対称位置に形成されているので、基材シート11は前記折り返しによりフラットケーブル61を間にして完全に重なった状態で装着される。これにより、基材シート11はフラットケーブル61を取り囲む閉磁路を形成することになり、フラットケーブル61の周りに発生する磁力線22は基材シート11に効率よく吸収される。また、一枚の基材シート11を折り返してフラットケーブル61に装着すればよく、フラットケーブル61への装着を簡単かつ正確に行うことができ、粘着材層13が露出するのも防止される。
【0019】
ところで、粘着材層13は電波吸収材でできていないため、基材シート11によって構成されている閉磁路には、粘着材層13によるエアギャップgが形成される。そこで、粘着材層13の厚さd2は、基材シート11の厚さd1の1/10以下となるように設計することが好ましい。通常、基材シート11の厚さd1は0.1〜3.0mm(代表値:0.2mm又は0.5mm)である。従って、基材シート11の厚さd1が0.5mmのときには、粘着材層13の厚さd2は30μm程度となる。
【0020】
フェライトや軟磁性金属の粉末の透磁率は100〜1000MHzで10〜20程度である。そこで、粘着材層13の厚さd2を基材シート11の厚さd1の1/10以下とすれば、基材シート11により形成される閉磁路のエアギャップgの距離は、基材シート11の厚さd1の1/5以下となり、基材シート11をほぼ閉磁路として機能させることができる。この結果、漏れ磁束が少なくなり、基材シート11の電波吸収効率がより向上する。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更することができる。
【0022】
特に、電波吸収体シート10,20は、フラットケーブルのほか、例えばフレキシブル基板等に装着することもできる。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明からも明らかなように、本発明によれば、基材シートは、折返し溝に沿って二つに折り曲げられることにより、フラットケーブルやフレキシブル基板等の被挟着物を両側から挟み込むようにして貼り付けられる。折返し溝は基材シートの短辺方向に設けられているため、基材シートは完全に折り重なった状態で被挟着物に取り付けられ、閉磁路を構成する。これにより、基材シートは挟着物の周りに発生する磁力線を効率よく吸収することができるとともに、粘着材層が露出しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電波吸収体シートの一実施形態を示す斜視図。
【図2】 図1の電波吸収体シートをフラットケーブルへ取り付ける手順を示す斜視図。
【図3】 図1の電波吸収体シートをフラットケーブルに取り付けた状態を示す断面模式図。
【図4】 従来の電波吸収体シートの母材シートを示す斜視図。
【図5】 従来の電波吸収体シートをフラットケーブルに取り付けた状態を示す断面模式図。
【符号の説明】
10…電波吸収体シート
11…基材シート
12…折返し溝
13…粘着材層
Claims (2)
- 電波吸収材からなる平面視で矩形形状をなす基材シートと、前記基材シートの第1の主面に設けられた粘着材層と、前記基材シートの第1の主面に対向する第2の主面にその短辺方向に設けられた破線状の折返し溝とを備え、
前記折返し溝の両端部は前記基材シートの対向する二つの長辺に到達することはなく、
前記折返し溝に沿って前記基材シートを前記第1の主面が内側になるように二つに折り曲げて、前記粘着材層により接着し、被挟着物を挟み込むように構成されていること、
を特徴とする電波吸収体シート。 - 前記折返し溝は前記基材シートの第2の主面の長辺方向中央に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体シート。
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