JP3742528B2 - フィルム用液晶ポリエステル樹脂組成物およびそのフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物に関する。更に詳しくは、ガスバリア性にすぐれたフイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物およびかかる液晶ポリエステル樹脂組成物から得られたポリエステルフイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
液晶ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのような結晶性ポリエステルと異なり、分子が剛直なため溶融状態でも絡み合いを起こさず、液晶状態を有するポリドメインを形成し、低剪断により分子鎖が流れ方向に著しく配向する挙動を示し、一般に溶融型液晶(サーモトロピック液晶)ポリマーと呼ばれている。この特異的な挙動のため、溶融流動性が極めて優れ、0.2〜0.5mm程度の薄肉成形品を容易に得ることができ、しかもこの成形品は高強度、高剛性を示すという長所を有している。しかし、異方性が極めて大きいという欠点がある。さらに制振性能も充分ではなく、成形加工温度も高いため用途が限られていた。また、液晶ポリエステルは一般に高価であることも問題であった。
【0003】
液晶ポリエステルの優れた耐熱性、機械的性質を保持し、制振性能、成形品の異方性が改良され、かつ安価な液晶ポリエステル樹脂組成物は強く市場から要望されていた。
特開昭56−115357号公報には、溶融加工可能な重合体と異方性溶融体形成性重合体とを含む樹脂組成物が開示され、溶融加工可能な重合体に異方性溶融体形成性重合体を加えることにより、溶融加工可能な重合体の加工性を改良できることが記載されている。例えば、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン混合物に液晶ポリエステルを加えた例などが挙げられている。
また特開平2−97555号公報にハンダ耐熱性を向上させる目的で液晶ポリエステルに各種のポリアリーレンオキサイドを配合した樹脂組成物が記載されている。
しかしながら、一般に成形温度の高い液晶ポリエステルに、それより成形温度の低いポリフェニレンエーテルなどの非晶性高分子を配合してなる組成物は、組成物の溶融加工性は向上しても、高温での成形加工の際の配合樹脂の熱分解のために成形品の外観不良が生じるという問題があった。また、該組成物の耐熱性、機械的性質、耐衝撃性などが不充分であるという問題点があった。
また、特開昭57─40551号、特開平2─102257号公報などに液晶ポリエステルと芳香族ポリカーボネートからなる組成物が開示されているが、それらは耐熱性や機械的性質などが充分なものではなかった。
USP5216073号には液晶ポリマーにエポキシ化ゴムを配合して成るブレンドについて開示されているが、それらの耐熱性、機械的性質も充分なものではなかった。
また、特開昭58−201850号公報、特開平1−121357号公報、特開平1−193351号公報などに液晶性高分子に熱可塑性樹脂を配合してなる組成物が記載されているが、いずれも十分な物性を発現するには至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた成膜加工性、ガスバリア性を有し、かつ安価なフイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物及びかかる組成物から得られるフィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの問題点を解決するため鋭意検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は次に記す発明からなる。
(1)(A)液晶ポリエステル、および(B)(a)エチレン単位が50〜96.5重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位が0.5〜30重量%、(c)エチレン系不飽和エステル単位が0〜40重量%、好ましくは3〜40重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を含有し、成分(A)と成分(B)の比率が、成分(A)が55.0〜99.9重量%、好ましくは65.0〜99.0、成分(B)が45.0〜0.1重量%、好ましくは35.0〜1.0であるフイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物。
(ただし、(A)液晶ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるもの、異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの、または芳香族ジカルボン酸と核置換芳香族ジオールとを反応させて得られるものであり、
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位が、以下のいずれかであり、
【化8】
【化9】
芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位が、以下のいずれかであり、
【化10】
【化11】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位が、以下のいずれかである。
【化12】
(2)(A)液晶ポリエステルが、下記の繰り返し単位からなるものであることを特徴とする(1)記載のフイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物。
【化13】
(3)(A)液晶ポリエステルが、下記の繰り返し単位からなるものである(1)記載のフイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物。
【化14】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の液晶ポリエステル樹脂組成物から得られてなるフイルム。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を詳細に説明する。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の成分(A)の液晶ポリエステルは、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルである。
具体的には、
(1)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、
(2)異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸の組み合わせからなるもの、
(3)芳香族ジカルボン酸と核置換芳香族ジオールとの組み合わせからなるものなどが挙げられ、400℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。なお、これらの芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシカルボン酸の代わりに、それらのエステル形成性誘導体が使用されることもある。該液晶ポリエステルの繰返し構造単位としては下記のものが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位:
【0007】
【化15】
【0008】
【化16】
芳香族ジオールに由来する繰返し構造単位:
【0009】
【化17】
【0010】
【化18】
芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し構造単位:
【0011】
【化19】
耐熱性、機械的特性、加工性のバランスから特に好ましい液晶ポリエステルは
【0012】
【化20】
なる繰り返し構造単位を含むものであり、具体的には繰り返し構造単位の組み合わせが下記(I)〜(IV)のものである。
【0013】
【化21】
【0014】
【化22】
【0015】
【化23】
【0016】
【化24】
該液晶ポリエステル(I)、(II)、(III)、(IV)については、それぞれ、例えば特公昭47−47870号公報、特公昭63−3888号公報、特公昭63−3891号公報などに記載されている。
これらの中でさらに好ましくは(I)、(II)の組み合せが挙げられる。
【0017】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、高い耐熱性が要求される分野には成分(A)の液晶ポリエステルが、下記の繰り返し単位(a’)が30〜80モル%、繰り返し単位(b’)が0〜10モル%、繰り返し単位(c’)が10〜25モル%、繰り返し単位(d’)が10〜35モル%からなる液晶ポリエステルが好ましく使用される。
【0018】
【化25】
(式中、Arは2価の芳香族基である。)
本発明における液晶ポリエステルの対数粘度(ηinh)は、液晶ポリエステル0.1gを2,3,5,6−テトラフロロフェノール10cc中に溶解したのち、ウベローデ粘度計を使用して60℃で測定を行なう。
本発明における液晶ポリエステルの対数粘度(ηinh)は、好ましくは1.0〜8.0であり、さらに好ましくは2.0〜6.0である。
該液晶ポリエステルの対数粘度(ηinh)が上記の範囲外であると、得られる組成物の成形加工性が悪かったり、機械的性質、耐熱性が不十分であったりする場合があり、好ましくない。
【0019】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の成分(B)であるエポキシ基含有エチレン共重合体とは、(a)エチレン単位が50〜96.5重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位が0.5〜30重量%、好ましくは1〜30重量%、(c)エチレン系不飽和エステル単位が0〜40重量%、好ましくは3〜40重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体である。
本発明におけるエポキシ基含有エチレン共重合体(B)において、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および不飽和グリシジルエーテル単位を与える化合物は、それぞれ下記一般式化26、化27で表される。
【0020】
【化26】
(Rはエチレン系不飽和結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基である。)
【化27】
(Rはエチレン系不飽和結合を有する炭素数2〜18の炭化水素基であり、Xは−CH2−O−または
【化28】
である。)
具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル等が例示される。
【0021】
また、本発明におけるエポキシ基含有エチレン共重合体(B)において、(c)エチレン系不飽和エステル単位を与える化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0022】
本発明に使用するエポキシ基含有エチレン共重合体(B)としては、たとえばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位とからなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびメチルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびメチルアクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびエチルアクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0023】
また、該エポキシ基含有エチレン共重合体のメルトインデックス(以下、MFRということがある。JIS K6760、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5〜100g/10分、さらに好ましくは2〜50g/10分である。メルトインデックスはこの範囲外であってもよいが、メルトインデックスが100g/10分を越えると組成物にした時の機械的物性の点で好ましくなく、0.5g/10分未満では成分(A)の液晶ポリエステルとの相溶性が劣り好ましくない。
【0024】
本発明に使用するエポキシ基含有エチレン共重合体(B)は、曲げ剛性率が、10〜1300Kg/cm2の範囲のものが好ましく、20〜1100Kg/cm2のものがさらに好ましい。
曲げ剛性率がこの範囲外であると、組成物の成形加工性や機械的性質が不十分となる場合があり好ましくない。
【0025】
エポキシ基含有エチレン共重合体は、通常不飽和エポキシ化合物とエチレンをラジカル発生剤の存在下、500〜4000気圧、100〜300℃で適当な溶媒や連鎖移動剤の存在下または不存在下に共重合させる方法により製造される。またポリエチレンに不飽和エポキシ化合物およびラジカル発生剤を混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても作られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物における成分(A)と成分(B)の比率は、成分(A)が55.0〜99.9重量%、好ましくは65.0〜99.0重量%、成分(B)が45.0〜0.1重量%、好ましくは35.0〜1.0重量%である。
成分(A)が55.0重量%未満であると該組成物の耐熱性が低下して好ましくない。また、成分(A)が99.9重量%を超えると該組成物の異方性の改良効果が充分でない場合があり、価格的にも高価なものとなり好ましくない。
【0026】
本発明における液晶ポリエステル樹脂組成物を製造する方法に特に制限はなく、周知の方法を用いることができる。たとえば、溶液状態で各成分を混合し、溶剤を蒸発させるか、溶剤中に沈殿させる方法が挙げられる。工業的見地からみると溶融状態で各成分を混練する方法が好ましい。溶融混練には一般に使用されている一軸または二軸の押出機、各種のニーダー等の混練装置を用いることができる。特に二軸の高混練機が好ましい。
溶融混練に際しては、混練装置のシリンダー設定温度は200〜360℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは230〜350℃である。
【0027】
混練に際しては、各成分は予めタンブラーもしくはヘンシェルミキサーのような装置で各成分を均一に混合してもよいし、必要な場合には混合を省き、混練装置にそれぞれ別個に定量供給する方法も用いることができる。
【0028】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を成膜加工することにより、耐熱性の優れたガスバリアフィルムを得ることができる。
該組成物の流動開始温度は、成分(A)の液晶ポリエステルの流動開始温度より高いことが好ましい。該組成物の流動開始温度が液晶ポリエステルの流動開始温度より低いと組成物の機械的性質が低下する場合があり好ましくない。
【0029】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物のうち、異方性溶融相を形成し始める温度(流動開始温度)において、せん断速度100SEC-1もしくは1000SEC-1の少なくとも一方、好ましくは両方のせん断速度で測定した溶融粘度(粘度1という。)と流動開始温度より20℃高い温度において流動開始温度での測定と同じせん断速度で測定した溶融粘度(粘度2という。)との比(粘度2/粘度1)の値が0.1〜0.7である液晶ポリエステル樹脂組成物がフィルム化に好ましく用いられる。また、その比の値が0.1〜0.5である液晶ポリエステル樹脂組成物がさらに好ましく用いられる。溶融粘度比が上記の範囲外であると成膜加工が困難であったり、得られたフィルムの引張強度の異方性の改良効果が充分でない場合があり好ましくない。
ここで、流動開始温度は4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重100Kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度である。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は常法によって成膜加工することができる。
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は成膜加工性に優れ、得られたフィルムのガスバリア性が良好である理由は必ずしも明らかではないが、液晶ポリエステルとエポキシ基含有エチレン共重合体との間で化学反応が生じ、そのため液晶ポリエステルとエポキシ基含有エチレン共重合体との相溶性が向上したためと考えられる。
【0030】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物においては、所望により無機充填剤が用いられる。このような無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ、石膏、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカ、チタン酸カリウム繊維等が例示される。
【0031】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物に、必要に応じて、さらに、有機充填剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、無機または有機系着色剤、防錆剤、架橋剤、発泡剤、蛍光剤、表面平滑剤、表面光沢改良剤、フッ素樹脂などの離型改良剤などの各種の添加剤を製造工程中あるいはその後の加工工程において添加することができる。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、本発明はこれらに限定されることはない。
(1)物性の測定方法
流動開始温度:島津社製高化式フローテスターCFT−500型で測定した。すなわち、4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重100Kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度を測定した。
溶融粘度:溶融粘度は東洋精機社製キャピログラフ1Bで、ダイ径0.5mmで、せん断速度100SEC-1、1000SEC-1で測定を行なった。
引張強度、荷重たわみ温度(TDUL):ASTM4号引張ダンベル、TDUL測定用試験片(127mm長×12.7mm幅×6.4mm厚)を成形し、それぞれASTM D638、ASTM D648に準じて引張強度、TDUL(荷重18.6kg)を測定した。
アイゾット衝撃強度:試験片(6.4mm厚)についてノッチ無でJIS K7110にしたがい、室温および−40℃で測定した。
【0033】
制振性:制振性は、デュポン(社)製粘弾性測定装置DMA型を使用し、各射出成形品を共鳴周波数測定方式により、窒素雰囲気下、5℃/minで昇温して粘弾性測定を行ない、損失正接(tanδ)が高いものを制振性良好と判定した。
薄肉物性:肉厚0.5mm、長さ75mm、ネック部の幅5mmの金型を用いて所定の成形温度、金型温度で組成物の射出成形を行なった。得られたダンベル試験片を用いて引張試験を行ない、伸び率と引張強度を求めた。
薄肉流動長:肉厚0.3mm、長さ46mm、幅5mmの矩形を有する4個取りの金型を用いて本発明の組成物を340℃で一定の射出条件のもとで充填した時の4つの矩形における長さ方向の流動長を測定し、その平均値で表した。
ウェルド部強度、非ウェルド部強度:本発明の組成物から図1に示す試験片を成形した。この試験片は厚み3mm、外寸64mm、内寸38mmであった。これから図1に示すウェルドラインを含む斜線部(64×13mm)を切り出し、スパン間距離40mm、曲げ速度2mm/分で曲げ強度を測定した。
また、同一形状の試験片から非ウェルド部(64×13mm)を切り出し、同様にして曲げ強度を測定した。
ハンダ耐熱温度:厚みが0.8mmのJIS1(1/2)号ダンベルを成形し、錫60%と鉛40%とからなる260℃のハンダ浴に浸潰し、同温度で60秒間保持した後取り出し、外観を観察する。その後、該ハンダ浴を10℃ずつ昇温させ同様の試験を行ない、同試験片が発泡または変形を生じない最高温度を求めた。例えば、310℃で初めて発泡または変形を生じた場合のハンダ耐熱温度は300℃である。
(ii)フィルム物性
フィルム外観:得られた組成物フィルムを肉眼で観察し以下の基準で評価した。
○ 外観良好で色むらは認められない。
△ 色むらが認められる。
酸素ガス透過率:JIS K7126 A法(差圧法)に従って温度20℃で酸素ガスを用いて測定した。
水蒸気透過率:JIS Z0208(カップ法)に従って、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定した。なお酸素ガス透過率、水蒸気透過率は膜厚みを25μmに換算して求めた。
【0034】
(2)成分(A)の液晶ポリエステル
(i)p−アセトキシ安息香酸10.8kg(60モル)、テレフタル酸2.49kg(15モル)、イソフタル酸0.83kg(5モル)および4,4’−ジアセトキシジフェニル5.45kg(20.2モル)を櫛型撹拌翼をもつ重合槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら昇温し330℃で1時間重合させた。この間に副生する酢酸を除去しながら、強力な撹拌下で重合させた。その後、系を徐々に冷却し、200℃で得られたポリマーを系外へ取出した。この得られたポリマーを細川ミクロン(株)製のハンマーミルで粉砕し、2.5mm以下の粒子とした。これを更にロータリーキルン中で窒素ガス雰囲気下に280℃で3時間処理することによって、流動温度が324℃の粒子状の下記の繰り返し構造単位からなる全芳香族ポリエステルを得た。以下該液晶ポリエステルをA−1と略記する。このポリマーは加圧下で340℃以上で光学異方性を示した。また、ηinh=2.5であった。液晶ポリエステルA−1の繰り返し構造単位は、次の通りである。
【0035】
【化29】
【0036】
(ii)p−ヒドロキシ安息香酸16.6kg(12.1モル)と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸8.4kg(4.5モル)および無水酢酸18.6kg(18.2モル)を櫛型撹拌翼付きの重合槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら昇温し、320℃で1時間、そしてさらに2.0torrの減圧下に320℃で1時間重合させた。この間に、副生する酢酸を系外へ留出し続けた。その後、系を除々に冷却し、180℃で得られたポリマーを系外へ取出した。
この得られたポリマーを前記の(i)と同様に粉砕したあと、ロータリーキルン中で窒素ガス雰囲気下に240℃で5時間処理することによって、流動温度が270℃の粒子状の下記の繰り返し単位からなる全芳香族ポリエステルを得た。以下該液晶ポリエステルをA−2と略記する。このポリマーは加圧下で280℃以上で光学異方性を示した。また、ηinh=5.1であった。
液晶ポリエステルA−2の繰り返し構造単位の比率は次の通りである。
【0037】
【化30】
【0038】
(3)成分(B)のエポキシ基含有エチレン共重合体成分(B)として使用した該共重合体は以下のものである。
略称 B−1 住友化学工業(株)製 商品名 ボンドファースト 7L、
組成 エチレン/グリシジルメタクリレート/メチルアクリレート=67/3/30、
MFR(190℃、2.16kg荷重)=9g/10分。
曲げ剛性率=60Kg/cm2。
略称 B−2 住友化学工業(株)製 商品名 ボンドファースト 2C、
組成 エチレン/グリシジルメタクリレート=94/6、
MFR(190℃、2.16kg荷重)=3g/10分。
曲げ剛性率=1000Kg/cm2。
略称 B−3 住友化学工業(株)製 商品名 ボンドファースト 20B、
組成 エチレン/グリシジルメタクリレート/酢酸ビニル=83/12/5、
MFR(190℃、2.16kg荷重)=20g/10分。
曲げ剛性率=430Kg/cm2。
【0039】
実施例1〜5、比較例1〜2
表1の組成で各成分を安定剤とともにヘンシェルミキサーで混合したのち、池貝鉄工(株)製PCM−30型二軸押出機を用いてシリンダー設定温度327℃で組成物を混練し、日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型射出成形機を用いて、成形温度347℃、金型温度80℃で射出成形した成形品について前記の要領で物性測定を行なった。得られた結果を表1〜表3に示す。
上記の方法で得られた組成物を、Tダイを備えた田辺プラスチックス(株)製VS20−20型単軸押出機を使用してシリンダー設定温度350〜360℃、スクリュー回転数80rpmでスリット幅10cm、スリット間隔0.7mmのTダイから押出し、長手方向に4m/minで巻き取って、厚さ20〜50μmのフィルムを得た。
このフィルムの物性測定結果を表1〜表3に示す。
【0040】
実施例6〜7、比較例3
表4の組成で各成分を安定剤とともにヘンシェルミキサーで混合したのち、池貝鉄工(株)製PCM−30型二軸押出機を用いてシリンダー設定温度257℃で組成物を混練し、日精樹脂工業(株)製PS40E5ASE型射出成形機を用いて、成形温度258℃、金型温度60℃で射出成形した成形品について前記の要領で物性測定を行なった。得られた結果を表4〜表6に示す。
上記の方法で得られた組成物を押出機のシリンダー設定温度を280〜310℃とした以外は前記の実施例1〜5と同様にしてフィルムを作製、その物性測定を行なった。得られた結果を表4〜表6に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】
【発明の効果】
本発明のフイルム用液晶ポリエステル樹脂組成物は、成膜加工性、ガスバリア性を有しかつ安価なものである。該樹脂組成物は、このような特性を生かして各種フイルム、シート、チューブ、積層物に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウェルド部強度、非ウェルド部強度測定用の試験片の形状を示す図。
【符号の説明】
1.ウェルドライン。
2.切り出し部。
3.ゲート。
Claims (10)
- (A)液晶ポリエステル、および(B)(a)エチレン単位が50〜96.5重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位が0.5〜30重量%、(c)エチレン系不飽和エステル単位が0〜40重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体を含有し、成分(A)と成分(B)の比率が、成分(A)が55.0〜99.9重量%、成分(B)が45.0〜0.1重量%であり、得られるフィルムの酸素ガス透過率(JIS K7126 A法(差圧法)に従って温度20℃で酸素ガスを用いて測定し、膜厚みを25μmに換算して求めた値)が0.4cc/m 2 ・24hr・atm以下であるか、または得られるフィルムの水蒸気透過率(JIS Z0208(カップ法)に従って、温度40℃、相対湿度90%条件で測定し、膜厚みを25μmに換算して求めた値)が0.5g/m 2 ・24hr・atm以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム用液晶ポリエステル樹脂組成物。
(ただし、(A)液晶ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを反応させて得られるもの、異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させて得られるもの、または芳香族ジカルボン酸と核置換芳香族ジオールとを反応させて得られるものであり、
芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位が、以下のいずれかであり、
- (B)エポキシ基含有エチレン共重合体が、(a)エチレン単位が50〜96.5重量%、(b)不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位が0.5〜30重量%、(c)エチレン系不飽和エステル単位が3〜40重量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体であることを特徴とする請求項1記載の組成物。
- (A)液晶ポリエステルと(B)エポキシ基含有エチレン共重合体の比率が、成分(A)が65.0〜99.0重量%、成分(B)が1.0〜35.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
- (A)液晶ポリエステルの対数粘度(ηinh )が、1.0〜8.0の範囲のものである請求項1又は2記載の組成物。
- (B)エポキシ基含有エチレン共重合体が、曲げ剛性率が10〜1300kg/cm2の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
- 液晶ポリエステル樹脂組成物が、流動開始温度において、せん断速度100SEC-1もしくは1000SEC-1の少なくとも一方のせん断速度で測定した溶融粘度(粘度1という。)と、流動開始温度より20℃高い温度において流動開始温度での測定と同じせん断速度で測定した溶融粘度(粘度2という。)との比(粘度2/粘度1)の値が0.1〜0.7であることを特徴とする請求項1又は2記載の組成物(ただし、流動開始温度とは4℃/分の昇温速度で加熱された樹脂を荷重100Kgf/cm2のもとで、内径1mm、長さ10mmのノズルから押し出すときに、溶融粘度が48000ポイズを示す温度である。)。
- 液晶ポリエステル樹脂組成物の流動開始温度が、その成分(A)の液晶ポリエステルの流動開始温度より高いことを特徴とする請求項1又は2記載の組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の組成物から得られ、酸素ガス透過率(JIS K7126 A法(差圧法)に従って温度20℃で酸素ガスを用いて測定し、膜厚みを25μmに換算して求めた値)が0.4cc/m 2 ・24hr・atm以下であるか、または水蒸気透過率(JIS Z0208(カップ法)に従って、温度40℃、相対湿度90%条件で測定し、膜厚みを25μmに換算して求めた値)が0.5g/m 2 ・24hr・atm以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
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