JP3742505B2 - ポリエステルおよびそれからなる中空成形容器 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、ポリエステルおよびこのポリエステルを含有するポリエステル組成物からなる中空成形容器に関し、さらに詳しくは、本発明は飲料などを充填する用途に適した、ガスバリア性、透明性、耐熱性及び耐圧性にすぐれた中空成形容器を成形しうるポリエステルおよびこのポリエステルを含有するポリエステル組成物から形成された中空成形容器に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
近年、炭酸飲料、ジュース、天然水、酒、各種飲用茶などの飲料用中空成形容器の素材として種々のプラスチック素材が用いられている。これらのプラスチック素材のうちポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルは、成形時の透明性、ガスバリア性、耐熱性および機械的強度に優れているため多く採用されている。
【0003】
各種飲料が容器に充填された後、消費者に飲用されるまでには通常かなりの期間が経過する。このため、 ガスバリア性が充分でない中空成形容器では、外部からの酸素透過や、内部からの二酸化酸素の散逸などにより内容物が変質するという問題があった。
【0004】
また、 各種飲料の中空成形容器への充填は、飲料が加熱滅菌処理された高温の状態で行なわれる場合が多い。このとき、中空成形容器が変形、収縮、膨張および白濁を起こさないように、中空成形容器には耐熱性が要求される。
【0005】
さらに、飲料を高温で充填したのち、中空成形容器を密栓して室温まで冷却すると、中空成形容器内部が減圧状態になる。このようなときに、容器胴部に凹みなどの変形を起こしたり、変形によって自立性をも損なったりしないよう、中空成形容器には充分な耐圧性が要求される。
【0006】
またさらに飲料用中空成形容器には、これらの特性のほかに透明性を兼ね備えることが強く要求される。
【0007】
ポリエステル樹脂の熱安定性を向上させることを目的として、特開平4−261423号公報および特開平4−59822号公報には、特定のコモノマーユニットの少量を芳香族ジカルボン酸基に導入することが提案されている。しかしながら、特開平4−261423号公報のポリエステル樹脂は、コモノマーユニットの導入率が、芳香族ジカルボン酸基に対し0.1〜30モル%と少ないものであった。また、特開平4−59822号公報におけるコモノマーユニットの導入率は、0.01〜7モル%とさらに少ないものであった。さらにこれらの公報には、ガスバリア性、耐圧性および透明性の全ての特性のバランスのよいポリエステルについては全く開示されていなかった。
【0008】
【発明の目的】
本発明は、中空成形容器の成形時に、ガスバリア性、耐熱性、耐圧性および透明性に優れた中空成形容器を得ることができるポリエステルを提供することを目的としている。
【0009】
また、本発明は、このようなポリエステルを含有する組成物を用いて製造される、ガスバリア性、耐熱性、耐圧性および透明性に優れた中空成形容器を提供することを目的とする。
【0010】
【発明の概要】
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる成分単位(a)と、
【0011】
【化5】
【0012】
ジオールから導かれる成分単位(b)
【0013】
【化6】
【0014】
からなる次式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルであって、
【0015】
【化7】
【0016】
成分単位(a)が、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−スルホンビス安息香酸、4,4’−スルフィドビス安息香酸、4,4’−オキシビス安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸および炭素数3〜12の脂環族ジカルボン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1 種類のジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる成分単位であり、
成分単位(b)が、
下記式(2)
【0017】
【化8】
【0018】
で表される構造を有するジオール単位40〜100モル%(ただし、上記式(2)において、−O−R3 −O−は、ナフタレンジオールの残基が80〜100モル%と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールの残基を0〜20モル%の量で有し、かつ、ナフタレンジオールの残基との合計量が100モル%である)、
炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールから導かれる単位が0〜60モル%(ただし、式(2)で表される構造を有するジオールと他のジオールとの合計が、100モル%である)とからなり、
式(2)において、n1およびn2がそれぞれ2〜12の整数であり、
25℃の1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶液中で測定した極限粘度[η]が0.4dl/g以上であり、
DSCで測定したガラス転移温度が75℃以上であることを特徴としている。
【0019】
さらに本発明のポリエステルは、成分単位(a)の90モル%以上が、テレフタル酸および/またはその誘導体から導かれる単位であり、成分単位(b)が、式(2)で表される構造を有するジオール単位45〜95モル%と、エチレングリコールから導かれる単位5〜55モル%とからなり、
−O−R3 −O−を誘導するジオールの80モル%以上が、2,6−ナフタレンジオールであることが好ましい。
【0020】
また、本発明のポリエステルを含有するポリエステル組成物を用いて、ガスバリア性、耐熱性、耐圧性および透明性に優れた中空成形容器を得ることができる。
【0021】
【発明の具体的説明】
以下、本発明のポリエステルおよびそれからなる中空成形容器について具体的に説明する。なお、本明細書では、ジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる成分単位をジカルボン酸残基、ジオールから誘導される成分単位をジオール残基という場合がある。
【0022】
<ポリエステル>
本発明のポリエステルは、ジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる成分単位(a)と、
【0023】
【化9】
【0024】
ジオールから導かれる成分単位(b)
【0025】
【化10】
【0026】
からなる次式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルであって、ジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる前記特定の成分単位(a)と、ジオールから導かれる前記特定の成分単位(b)からなる式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステルである。
【0027】
【化11】
【0028】
成分単位(a)は、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−スルホンビス安息香酸、4,4’−スルフィドビス安息香酸、4,4’オキシビス安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、炭素数2〜12の脂肪族ジカルボン酸および炭素数3〜12の脂環族ジカルボン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1 種類のジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる成分単位であり、成分単位(a)の90モル%以上が、テレフタル酸および/またはその誘導体から導かれる単位であることが特に好ましい。
【0029】
成分単位(b)は、 下記式(2)
【0030】
【化12】
【0031】
で表される構造を有するジオール単位40〜100モル%、好ましくは45〜95モル%と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールから導かれる単位が0〜60モル%、好ましくは5〜55モル%とからなる。
【0032】
さらに、式(2)において、−O−R3 −O−は、ナフタレンジオールの残基が80〜100モル%と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールの残基(他のジオール残基)が0〜20モル%である。ここで、ナフタレンジオールの残基と他のジオール残基との合計は100モル%である。
【0033】
また、式(2)において、n1およびn2はそれぞれ2〜12の整数である。
【0034】
ナフタレンジオールの例としては、2,6−ナフタレンジオール、2,7−ナフタレンジオール、1,4−ナフタレンジオール、1,5−ナフタレンジオールなどを挙げることができる。特に、得られるポリエステルから形成される成形体のガスバリア性及び耐熱性を向上させる点で、2,6−ナフタレンジオールが特に好ましい。2,6−ナフタレンジオールの−OH基は対角に位置するため、これを用いた場合には得られるポリエステルの構造が直線状になり、成形時の結晶化度が高くなるためガスバリア性及び耐熱性が向上するものと考えられる。
【0035】
式(2)における、n1およびn2は、それぞれ独立に2〜12の整数である。特に、n1およびn2が、それぞれ独立に2〜4であるポリエステルは、高い耐熱性を示し、これを用いて得られる成形体は高い耐熱性を示す。中でもn1およびn2がそれぞれ2であるポリエステルが経済的に特に好ましい。
【0036】
また、ナフタレンジオールの残基以外の−O−R3 −O−(他のジオール残基)としては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールの残基が挙げられる。本発明のポリエステル中の−O−R3 −O−全量中、これらの量は0〜20モル%であることが好ましい。なお、上記の量は、−O−R3 −O−の全量を100モル%としたときの量である。
【0037】
また、式(2)で表される構造を有するジオール単位以外の成分単位(b)を導くジオールとしては、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールが挙げられ、成分単位(b)のうち0〜60モル%、好ましくは5〜55モル%が上記ジオールから誘導される。これらのジオールの中では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの炭素数2〜12の脂肪族ジオールおよび炭素数3〜12の脂環族ジオールが、共重合性が良好なため好ましく、この中でも、エチレングリコールが特に好ましい。
【0038】
本発明のポリエステルは、特に好ましくは、成分単位(a)のうち90モル%以上がテレフタル酸および/またはその誘導体から導かれる単位であり、成分単位(b)のうち、式(2)で表されるジオール単位が45〜95モル%およびエチレングリコールから導かれる単位が5〜55モル%であることが好ましく、さらに式(2)において−O−R3 −O−が、2,6−ナフタレンジオールの残基であり、式(2)におけるn1およびn2が2であるものを式(1)のR2 のうち80モル%以上含有することが好ましい。
【0039】
さらに本発明のポリエステルは、本発明のポリエステルの特性が損なわれない範囲であれば、分子内に3個以上のカルボキシル基を有する多官能カルボン酸類および/またはその誘導体から導かれる単位を含有していてもよく、また、分子内に3個以上のヒドロキシル基を有する多官能ジオールから導かれる単位を含有していてもよい。こうした多官能性化合物の例としては、トリメシン酸、無水ピロメリット酸などの多官能カルボン酸類、グリセリン、1,1,1−トリメチロールメタン、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンおよびペンタエルスリトールなどの多官能ジオール類が挙げられる。
【0040】
本発明のポリエステルは、25℃の1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶液中で測定した極限粘度[η]が0.4dl/g以上、さらに0.5〜1.5dl/gであることが好ましく、0.6〜1.2dl/gであることが特に好ましい。このような極限粘度[η]をもつポリエステルから形成された成形体は、ガスバリア性、耐圧性、耐熱性に優れている。
【0041】
また、本発明のポリエステルは、示差走査型熱量計(DSC、昇温速度10℃/分)で測定したガラス転移温度が75℃以上であり、80℃以上であることがより好ましい。
【0042】
さらに、充填する飲料の品質保持の上で、酸素及び二酸化炭素のガスバリア性が高いことが好ましく、ポリエステルの酸素透過係数(cc・mm/m2 ・day・atm)が6以下、好ましくは4以下であるの望ましく、二酸化炭素透過係数(cc・mm/m2 ・day・atm)が24以下、好ましくは16以下であるのが望ましい。
【0043】
また、特に飲料を充填する中空成型容器は、透明であることが好ましく、中空体のヘイズ値が通常は5%以下、好ましくは3%以下である。
【0044】
上記のようなポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートなどの通常のポリエステルを製造するのに一般的に採用されているいずれの方法に準じて製造してもよく、その中でも溶融重縮合により製造する方法が経済的に好ましい。
【0045】
溶融重縮合の方法としては、まず、所定のジカルボン酸または、その低級アルコールエステルからなるジカルボン酸原料と、下記式(2’)に表されるジオールを主体とするジオール原料とをエステル化反応またはエステル交換反応させて、低重合体を製造してから、減圧下に溶融重縮合する方法が挙げられる。
【0046】
【化13】
【0047】
(ただし、上記式(2’)において、−O−R3 −O−は、ナフタレンジオールの残基が80〜100モル%と、炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールの残基を0〜20モル%の量で有し、かつ、ナフタレンジオールの残基との合計量が100モル%であり、n1およびn2がそれぞれ2〜12の整数である)
【0048】
エステル化反応の方法としては、所定のジカルボン酸原料と、式(2’)に表されるジオールを主体とするジオール原料とを、通常180〜240℃の温度で加圧下のもとで脱水縮合させ、低重合体を得る方法が挙げられる。
【0049】
エステル交換反応の方法としては、所定のジカルボン酸の低級アルコールエステルからなるジカルボン酸原料と、式(2’)に表されるジオールを主体とするジオール原料とを、通常180〜240℃の温度で酢酸マンガンなどの触媒存在下にエステル交換させ、低重合体を得る方法が挙げられる。
【0050】
また、式(2’)の構造を有しないジオールと所定のジカルボン酸とからなる低重合体と、式(2’)に表されるジオールとを、通常180〜260℃の温度で、式(2’)の構造を有しないジオールを留出させながら、酢酸マンガンなどの触媒存在下にエステル交換させ、所定の低重合体を得る方法も挙げられる。
【0051】
いずれの場合においても、ジカルボン酸成分に対し、2倍当量程度のジオール成分を反応させ、低重合体を製造することが、重縮合速度、重合度の点から好ましい。また、ここで用いられるジオール成分のうち、ジカルボン酸の1倍当量程度のジオール成分は、沸点が250℃以下であることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどが例示できる。
【0052】
次に、この低重合体を二酸化ゲルマニウム、三酸化アンチモンなどの重合触媒の存在下に、たとえば260〜290℃の温度範囲で1Torr以下の減圧下にてジオールを留出させながら溶融重縮合を行う。重合時間は、通常は0.5〜8時間、好ましくは0.5〜5時間である。
【0053】
このとき製造しようとするポリエステルの組成は、仕込んだモノマーの比および製造条件により決定されるが、上述のように、ジオールを留出させながら重縮合を行う方法で製造した場合には、たとえば、ジオール成分として式(2’)に表されるジオールと、より沸点の低いエチレングリコールのようなジオールとを組み合わせて用いると、沸点の低いジオールが、優先的に留出するため、仕込んだジカルボン酸原料に対する式(2’)に表されるジオール原料の割合はほぼ保持され、目的とする組成のポリエステルを製造することが可能となる。
【0054】
また、このようにして得られた本発明のポリエステル樹脂に対し、さらに、固相重合を行うこともできる。固相重合の方法としては、公知の方法を用いることができ、たとえば、常圧あるいは減圧不活性気体雰囲気下で通常150〜230℃、好ましくは170〜220℃の温度範囲に通常1〜100時間、好ましくは3〜30時間保持することにより固相重合する方法が挙げられる。固相重合を行うことで、ポリエステル樹脂の分子量を増大させたり、樹脂中の熱分解生成物であるアセトアルデヒド量を低減したりすることができる。固相重合を行ったポリエステル樹脂を用いて中空成形容器を成形すると、得られる中空成形容器の強度が向上し、内容物の風味を損なわないなどの効果を有するため好ましい。
【0055】
本発明のポリエステルには、触媒、安定剤、着色防止剤などを必要に応じて適宜配合することができる。各種の触媒の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、スズ、コバルト、チタン、アンチモンおよびゲルマニウムなどの金属化合物が挙げられる。また、安定剤や着色剤の例としては、トリメチルリン酸およびジフェニルリン酸などのリン酸エステル化合物、リン酸、亜リン酸、亜リン酸エステル化合物およびヒンダードフェノール化合物などが挙げられる。さらに、必要に応じて、紫外線吸収剤や帯電防止剤などのほかの添加剤や、タルク等の充填剤を含有させてもよい。
【0056】
<中空成形容器>
図1に本発明の中空成形容器の例を示す。
たとえばこのような形状を有する本発明のポリエステルからなる中空成形容器は、一般に行われている種々の方法で製造することができる。
【0057】
たとえば、本発明のポリエステルを溶融し、溶融可塑化したポリエステルをダイヘッドからスクリュー回転、ブランジャ押出、アキュムレーターなどの成形機を用いて、パリソン(プリフォーム)を押出成形し、ついで中空成形容器形状を付与すべき凹型を備えた分割金型でパリソンを挟持し、続いて加熱したパリソンに空気などの加圧流体を圧入してパリソンを拡張させるインジェクションブロー成型により本発明の中空成形容器を得ることができる。
【0058】
また、本発明のポリエステルからパリソンを成形した後、該パリソンを通常6〜15倍の面積延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率との積)で延伸ブロー成形することによっても得ることができる。
【0059】
この場合のパリソンも、射出成形、押出成形などの従来公知の方法によって製造することができる。本発明では、この延伸ブロー成形に先立ってパリソン口頚部を加熱結晶化させてもよく、延伸ブロー成形後に得られた中空成形容器の口頚部を加熱結晶化させてもよい。
【0060】
パリソンから延伸中空成形容器を成形する際には、パリソンを直接金型中で加熱し、ブロー流体を圧入して上記面積延伸倍率で延伸ブローし、中空成形容器に成形することができる。また、パリソンを延伸ブローして一旦中空成形容器を形成し、これを冷却した後、上記金型に装填しながら加熱下に延伸ブロー成形することにより、目的の形状の中空成形容器を成形してもよい。ブロー用流体としては、空気、窒素、水蒸気、水などが挙げられ、このうち空気を用いることが好ましい。
【0061】
本発明では、このようにして得られた中空成形容器にヒートセット処理を施してもよい。ヒートセットは、得られた中空成形体を通常100〜200℃、好ましくは110〜170℃の金型温度で、通常1秒間以上、好ましくは3秒間以上、上記金型中で保持することにより行うことができる。このように中空成形容器をヒートセットすることによって、密度を向上させることができ、耐圧性などの強度をより増大させた中空成形容器を得ることができる。
【0062】
なお、本発明においては、インジェクションブロー成形または延伸ブロー成形、さらに必要によりヒートセットを行った中空成形容器は、冷却してから金型から取り出される。ここで採用される冷却方法としては、中空成形容器の内部に、たとえば冷却されたガスを吹込むことにより、中空成形容器の内側から外側(外表面)に向かって冷却する「内部冷却法」を用いるのが好ましい。このように内側(中空部)から中空成形容器を冷却すると、変形、収縮等を起こさずに中空成形容器を金型から取出すことができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明に係るポリエステルは、ガスバリア性、耐熱性、透明性及び耐圧性に優れるため、中空成形容器、包装用フィルムなどに幅広く用いることができる。特に加熱飲料を充填しても変形を生じにくく、長期保存においても内容物の風味を損ないにくい中空成形容器を得ることができる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
<測定方法>
[極限粘度[η]]
25℃で、1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶液中で極限粘度[η]を測定した。
【0066】
[ポリエステルのガラス転移温度[Tg]]
ガラス転移温度[Tg]は、 示差走査型熱量計(DSC;パーキンエルマー社製)を用いて測定した。ポリエステル樹脂組成物のペレットから切り出した試料をサンプルパンに10mg秤量し、 He雰囲気中、 昇温速度320℃/分にて室温から290℃まで昇温し290℃で10分間保持した後、降温速度320℃/分にて30℃まで急冷し30℃で10分間保持し、次いで昇温速度10℃/分にて290℃まで昇温し、ガラス転移温度を測定した。
【0067】
[酸素及び二酸化炭素ガスバリア性]
加熱温度280℃、冷却温度0℃でポリエステル樹脂組成物の圧縮成形を行ない、厚さ100μmのフィルムを得た。 ついで、ガス透過率測定装置GMP−205(ジーエルサイエンス(株)製)を用いて、このフィルムの酸素及び二酸化炭素透過係数を25℃で測定した。
【0068】
[透明性(中空成形体外観)]
ASTM D1003の方法により、中空成形体側面のヘイズ値(白色光の光線乱反射率)を測定した。
【0069】
中空成形体がボトルである場合には、1.5リットルのボトルの、下(底部側)から83mmの高さのボトル側面のヘイズ値(白色光の光線乱反射率)を測定した。
【0070】
[耐熱耐圧性]
中空成形容器に90℃の飲料を充填し、密封した後室温に戻した時の中空成形容器の変形を充填前のものと比較評価(目視判断)した。
【0071】
○ … 中空成形容器胴部に変形が認められない。
× … 中空成形容器胴部に変形が認められる。
【0072】
【実施例1】
原料として、ジメチルテレフタレート1941.9g、2,6ナフタレンジオールエチレンオキサイド(EO)付加物(EO付加量:ナフタレンジオール1モルに対し2モル)1241.4gおよびエチレングリコール931.1gと、触媒として酢酸マンガン4水和物0.64gとを、撹拌装置、留出管を装備した反応器に仕込んだ。留出管は、真空ポンプと減圧調整器からなる真空装置に接続されており、蒸発物を留去可能な構造となっている。
【0073】
まず、反応器を充分に窒素置換した後、常圧窒素雰囲気下にて、190℃で1時間、ついで200℃で2時間撹拌し、メタノールを留去しながらエステル交換反応を行なった。室温まで冷却した後、得られた固体に二酸化ゲルマニウム0.26gをエチレングリコール13gとともに添加し、充分に窒素置換した。そして常圧窒素気流下220℃で固体を溶融させ、5℃/分の昇温速度で260℃まで昇温させた後、1時間かけて1Torrまでの減圧及び280℃までの昇温を行い、その条件を保持したまま2時間重縮合を行った。
【0074】
重縮合反応後、反応系内に窒素ガスを導入して常圧に戻し、反応容器から重合体を取り出し、ペレット化した。
【0075】
このペレットについてNMRで分析したところ、酸の残基のうちテレフタル酸残基が100モル%、ジオール残基のうち2,6ナフタレンジオールEO化物残基が48.7モル%、エチレングリコール残基が49.9モル%、その他のジオール残基が1.4モル%であった。
【0076】
このペレットを70℃で14時間減圧乾燥した。この重合体の極限粘度は0. 71dl/gであり、このポリエステルをフィルムとした時の酸素透過係数及び二酸化炭素透過係数は、それぞれ3. 5(cc・mm/m2 ・day・atm)および12. 1(cc・mm/m2 ・day・atm)であった。これらの結果をまとめて表1に示す。
【0077】
更に、上記の重合体を先端部にスクリューを備えた射出成形機に導入し、スクリュー圧縮比=1. 5、成形温度=275℃、成形サイクル=33秒の条件で金型に押出して、パリソンを成形した。
【0078】
次いで、パリソンの口頚部を180℃で加熱して結晶化させた後、射出成形機に付設した赤外線ヒーターで、プリフォームの胴部中央部の表面温度が100〜110℃となるように加熱し、成形機で延伸ブロー成形して、面積延伸倍率=11倍で図1に示すような容量500mlの二軸延伸中空成形容器を成形した。
【0079】
延伸時、150℃に加熱したブロー金型にボトルを5秒間接触させることによりヒートセット処理を行ない、中空成形容器を100℃以下に冷却した金型より取り出した。延伸サイクルは60秒であった。
【0080】
得られた中空成形容器について、極限粘度[η]、ガラス転移温度、酸素及び二酸化炭素透過係数、ヘイズ値および耐熱耐圧性について評価試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0081】
【実施例2】
実施例1において、原料をジメチルテレフタレート1941.9g、2,6ナフタレンジオールEO付加物(EO付加量:ナフタレンジオール1モルに対し2モル)1862.1gおよびエチレングリコール775.9gに変えた以外は同様にして、ポリエステルを得た。これより、実施例1と同様にして中空成形容器を成形し、評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0082】
【実施例3】
実施例1において、原料をジメチルテレフタレート1941.9g、2,7ナフタレンジオールEO付加物(EO付加量:ナフタレンジオール1モルに対し2モル)1241.4gおよびエチレングリコール931.1gに変えた以外は同様にして、ポリエステルを得た。これより、実施例1と同様にして中空成形容器を成形し、評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0083】
【比較例1】
実施例1において、原料をジメチルテレフタレートを1941.9gおよびエチレングリコール1241.4gに変えた以外は同様にして、ポリエステルを得た。これより、実施例1 と同様にして中空成形容器を成形し、評価試験を行った。結果を表1 に示す。
【0084】
【比較例2】
実施例1において、原料をジメチルテレフタレート1941.9g、2,6ナフタレンジオールEO付加物(EO付加量:ナフタレンジオール1モルに対し2モル)620.7gおよびエチレングリコール1086.2gと変えた以外は同様にして、ポリエステルを得た。これより、実施例1と同様にして中空成形容器を成形し、評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0085】
本比較例では、結晶性が低下したため、耐熱耐圧性が劣った。
【0086】
【表1】
【0087】
上記実施例で示すように、本発明のポリエステルは、ガスバリア性、耐熱性、耐圧性及び透明性のいずれにも優れており、また、これを用いた中空成形容器はガスバリア性、耐熱性、耐圧性及び透明性のいずれの特性も良く、しかも、これらの特性のバランスが良好であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るポリエステル製中空成形容器の一例を表す概略側面図である。
【符号の説明】
1… 中空成形容器
2… 口頚部
3… 上肩部
4… 胴部
5… 底部
Claims (3)
- ジカルボン酸および/またはその誘導体から導かれる成分単位(a)と、
成分単位(b)が、
下記式(2)
炭素数2〜12の脂肪族ジオール、炭素数3〜12の脂環族ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、4,4’−オキシビスヒドロキシフェニルおよび4,4’−スルフィドビスヒドロキシフェニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種類のジオールから導かれる単位が0〜60モル%(ただし、式(2)で表される構造を有するジオールと他のジオールとの合計が、100モル%である)とからなり、
式(2)において、n1およびn2がそれぞれ2〜12の整数であり、
25℃の1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(重量比)の混合溶液中で測定した極限粘度[η]が0.4dl/g以上であり、
DSCで測定したガラス転移温度が75℃以上であることを特徴とするポリエステル。 - 成分単位(a)の90モル%以上が、テレフタル酸および/またはその誘導体から導かれる単位であり、成分単位(b)が、式(2)で表される構造を有するジオール単位45〜95モル%と、エチレングリコールから導かれる単位5〜55モル%とからなり、
−O−R3 −O−を誘導するジオールの80モル%以上が、2,6−ナフタレンジオールであることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル。 - 請求項1〜2のいずれかに記載のポリエステルを含有するポリエステル組成物からなる中空成形容器。
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JP12599798A JP3742505B2 (ja) | 1998-05-08 | 1998-05-08 | ポリエステルおよびそれからなる中空成形容器 |
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JPH11322912A JPH11322912A (ja) | 1999-11-26 |
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-
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- 1998-05-08 JP JP12599798A patent/JP3742505B2/ja not_active Expired - Lifetime
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