JP3741890B2 - エンジンのヘッドカバー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのヘッドカバーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヘッドカバーの裏面に突設されたリブと、ヘッドカバーの裏面との間に隙間をあけて設けられたプレートとによりブリーザ室を形成したエンジンのヘッドカバーとして、実公昭61−40888号公報や実公昭63−37464号公報に開示されているものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ブリーザ室にあっては、迷路状になっていることが好ましく、上記したような構造によればリブの形状や配置により迷路を形成することができるが、ヘッドカバー内にカムなどが受容されているエンジンにあっては回転するカムなどによりオイルが跳ね上げられ、特に高回転型エンジンではより一層大量に跳ね上げられるため、その跳ね上げられたオイルがブリーザ室内に直接的に入り込むことを防ぐ必要がある。
【0004】
しかしながら、上記したように跳ね上げられたオイルを阻止するためには別個の部品を取り付けることで対応可能であるが、ヘッドカバーにその部品取付部を特別に形成する必要があるなど、製造コストが高騰化するという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、簡単な構造で、ヘッドカバーに設けたブリーザ室内へのオイル浸入を極力阻止すると共に低廉化し得るエンジンのヘッドカバーを実現するために、本発明に於いては、ヘッドカバー(1)の裏面に突設されたリブ(4)と前記リブ(4)に固着されたプレート(6)とにより、前記ヘッドカバー(1)の裏面側の空間に新気及びブローバイガスを通すための新気側ブリーザ室(5a)及びブローバイガス側ブリーザ室(5b)を形成したエンジンのヘッドカバーであって、前記ヘッドカバー(1)の側壁内面と前記リブ(4)と前記プレート(6)とにより前記ブリーザ室(5a・5b)及び動弁室(2d)間のガス流路となる連通路(9)が形成され、前記リブ(4)の一部を切り欠いて前記各ブリーザ室(5a・5b)と前記連通路(9)とを連通する各開口部(4a)が形成されていると共に、前記連通路(9)にガスが流れる時にオイル分離が行われるように、前記連通路(9)の途中に、カムまたはロッカーシャフトを保持するホルダ部材(2)が前記プレート(6)の対応する部分との間に隙間を有して横切っているものとした。
【0006】
これによれば、ヘッドカバー内に受容されている部材を用いてガス流路を迷路状に形成することができ、別部品などを用いる必要がない。しかも、前記開口部に至るガス流路の途中にホルダ部材が横切っているので、ヘッドカバーをホルダ部材に近接できて、エンジンの小型化に寄与する。
【0007】
また、ヘッドカバー(1)の裏面に突設されたリブ(4)と前記リブ(4)に固着されたプレート(6)とにより、前記ヘッドカバー(1)の裏面側の空間に新気及びブローバイガスを通すための新気側ブリーザ室(5a)及びブローバイガス側ブリーザ室(5b)を形成したエンジンのヘッドカバーであって、前記ヘッドカバー(1)の側壁内面と前記リブ(4)と前記プレート(6)とにより前記ブリーザ室(5a)及び動弁室(2d)間のガス流路となる連通路(9)が形成され、前記リブ(4)の前記ヘッドカバー(1)の側壁内面に対峙している一部を切り欠いて前記各ブリーザ室(5a・5b)と前記連通路(9)とを連通する各開口部(4a)が形成されていると共に、前記連通路(9)が、前記ヘッドカバー(1)のカム軸(2g)に沿う側壁内面と前記プレート(6)の主面よりシリンダヘッド側に曲折されたL字状脚片(6b)との間に画定されていると良い。
【0008】
これによれば、ブローバイガスの流れがヘッドカバーの上下方向(シリンダ軸線方向)ではなく横方向(カム軸方向)になるため、カムなどで跳ね上げられたオイルが直接的にガス流路内を進むことがなく、ブリーザ室へのオイル浸入を防止できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明が適用されたエンジンのヘッドカバー内を一部示す縦断面図であり、図2は図1の矢印II線から見たヘッドカバーの内部形状を示す裏面図である。
【0011】
本エンジンにおけるヘッドカバー1内には、カムシャフト2g及びロッカーシャフト2hを保持するべくアッパカムホルダ2a及びロアカムホルダ2bを積み重ねてなるホルダ部材としてのカムホルダ2が受容されている。カムホルダ2は、シリンダヘッド2c上に固定ボルト3により固定されている。
【0012】
ヘッドカバー1の裏面には、図2に良く示されるように、ヘッドカバー鋳造時に一体に形成された複数のリブ4が配設されていると共に、それらリブ4と協働してヘッドカバー裏面側の空間に新気側ブリーザ室5a・ブローバイガス側ブリーザ室5bを形成するべく図の想像線に示されるようにプレート6が固着されている。
【0013】
またヘッドカバー1には、新気側ブリーザ室5aに連通する新気取り入れ口7と、ブローバイガス側ブリーザ室5bに連通するブローバイガス排出口8とが設けられている。新気取り入れ口7から流入した空気は、図の矢印Aで示されるように新気側ブリーザ室5a内を通り、矢印Bに示されるようにヘッドカバー1の側壁内面に向けて開口するようにリブ4の一部を除去して形成された開口部4aを介して、ヘッドカバー1の側壁内面とリブ4との間のガス流路としての連通路9を構成する一方の連通路9aに出て、動弁室2d内に再入される。一方、動弁室2d内のブローバイガスは連通路9を構成する他方の連通路9b内に入り、矢印Cに示されるようにブローバイガス側ブリーザ室5b内に入り、ブローバイガス排出口8に取り付けられたPCV弁(図示せず)を介して図示されないエアクリーナ下流側に送られる。
【0014】
開口部4aにはプレート6のヘッドカバー裏面側に固着された凹状のオイルトラップ6aが開口部4aの幅一杯に収まるように形成されかつ開口部4aを貫通するように設けられている。これにより、各ブリーザ室5a・5bと連通路9との間のガスの流れは、オイルトラップ6aの凹部を通って行われる。また、プレート6の連通路9側におけるヘッドカバー1への固定は、プレート6の主面よりシリンダヘッド側(図1の下方)に曲折されたL字状脚片6bの延出端部をヘッドカバー1に一体突設されたボス部1aにボルト止めにより行われており、その脚片6bとヘッドカバー1の対向側壁との間に上記連通路9が画定されている。
【0015】
また、図2の矢印III線により示された部分の拡大図である図3に示されるように、連通路9のカム軸の軸線方向(図3の上下方向)については、カムホルダ2の端部が突入して遮断されているが、組み付け上若干の隙間を有している。これにより、連通路9内に入ろうとするブローバイガスの流れ(図3の矢印D)はカムホルダ2に衝当しかつ迂回するようになるため、ブローバイガス中のオイル分離が好適に行われる。しかも、開口部4aに至る連通路9(ガス流路)の途中にカムホルダ(ホルダ部材)2が横切っているので、ヘッドカバー1をカムホルダに近接できて、エンジンの小型化に寄与する。
【0016】
本発明によれば、上記各ブリーザ室5a・5bと連通路9との間が迷路状になっており、その構造を図3の矢印IV−IV線・V−V線・VI−VI線・VII−VII線・VIII−VIII線に沿ってそれぞれ見た図4・図5・図6・図7・図8を参照して以下に示す。
【0017】
図4に示される部分では、カムホルダ2のカム軸方向両端面に合わせるように、ヘッドカバー1の側壁とそれに平行するリブ4との間を直交する向きのクロスリブ4bが設けられており、そのクロスリブ4bの下端縁とプレート6との隙間が極力狭くされており、カムホルダ2の固定ボルト3の頭部によりガスの直接的な流れが遮られるので、点描模様のハッチングで示されているよう極めて狭い開口エリア10a以外は迷路状にガスが流れることになる。
【0018】
図5に示される部分では、カムホルダ2により邪魔されることがないため、クロスリブ4aの下方と脚片6bとの間の比較的広い開口エリア10bをガスが流れることになる。ただし、動弁室2d内に開口される前記開口エリア10bと対峙してカムホルダ(ホルダ部材)2が設けられているので、オイル分離効果が大幅に向上する。図6に示される部分では、クロスリブ4bによる邪魔はなくなっているが、脚片6bを固定するためのボス部1aがヘッドカバー1内に突設されているため、リブ4・脚片6b・ボス部1aにより画定される縦長の開口エリア10cをガスが流れる。
【0019】
図7に示される部分では、リブ4及び脚片6bとヘッドカバー1の側壁との間に画定されかつオイルトラップ6aにより遮断された部分を除いた比較的広い開口エリア10dをガスが流れる。そして、図8に示される部分では、オイルトラップ6aを設けた部分であるが、そのオイルトラップ6a及びリブ4を取り除かれた開口部4aを介して、ブリーザ室5aと連通路9とが連通する広い開口エリア10eをガスが流れることになる。
【0020】
このように、カムホルダ2と開口4aとの間の狭い範囲で複雑な迷路が構成されていることから、ブローバイガスが流れる際には種々の障害物に衝当することになり、オイル分離が好適に行われ、ブリーザ室5a・5b内にオイルが入り込むことを極力防止し得る。本発明が適用されたプレート6にあっては、シリンダブロックに対峙する主面(底面)にオイル落とし用の孔を設ける必要がなく、そのようにすることにより、カムなどにより跳ね上げられたオイルがオイル落とし用孔からブリーザ室5a・5b内に入ることがない。
【0021】
なお、高回転時におけるクランク室内圧が高い場合にはブローバイガスが逆流して新気取り入れ口7から出るようになるが、その場合にあっても上記したようにブリーザ室5aに入る前にオイル分離が確実に行われるため、何ら問題がない。また、シリンダヘッド2cとロアカムホルダ(ロッカーシャフトホルダ)2bとが分割されており、ヘッドカバー1の側面下端部にてシール2eを保持するべく設けられた保持部2fをシリンダヘッド2cの上面まで延出させたので、カムシャフト2g側方すなわちアッパカムホルダ2aとヘッドカバー1との間にプレート6のL字状脚片6b(ブリーザ室5a・5bの動弁室2d内開口エリア)をコンパクトに設けることが可能である。
【0022】
なお、本ヘッドカバー1には、図9に示されるようにエンジンオイルの量を点検するためのレベルゲージ11が取り付けられている。本レベルゲージ11にあっては、把持部12と、把持部12に一体化された胴部13と、胴部13から図10に示されるようにオイルパン14内に至る弾性棒状体15とからなる。取り付け時に差し込むためのカラー16が、図9に示されるようにヘッドカバー1に圧入固定されて設けられている。
【0023】
このように、ヘッドカバー1に差し込み口を設けていることから、レベルゲージ11全体の長さが長くなるため、倒れ易くなるが、その倒れを防止するべく、胴部13の上半部を円柱状に形成しかつ上下2箇所に互いに間隔をおいてOリング17が嵌装されている。これにより密閉性が確保される。
【0024】
また、胴部13の下半部には、絞り部13aとその先(図に於ける下側)に拡径された膨出部13bとを設けている。また、カラー16の下部には、胴部13のOリング17装着部を挿入する部分に対して若干小径にした小径部16aが形成されており、その小径部16aに膨出部13bが圧入感をもって挿入されるようになっている。このようにして、レベルゲージ11の倒れが膨出部13bにより防止される。
【0025】
なお、小径部16aを設けそこに膨出部13bを圧入するようにしたのは、倒れを防止するべく比較的長くなり易い胴部13の挿入方向先端部を案内し易くすると共に、小径部16aに膨出部13bが挿入された際の圧入感により確実な装着を確認でき、挿入性を向上するためである。カラー16の上端部には、ラッパ状に拡径された拡径部16bが形成されているので、カラー16の取り付け時の位置決めになると共に、レベルゲージの挿入性を大幅に向上している。
【0026】
また、弾性棒状体15の点検用目盛を設けた先端部15aの上方近傍に、弾性棒状体15の軸線に対して両側方に曲折してなる波形部15bが設けられている。このようにすることにより、レベルゲージ11を引き抜く際に、シリンダブロック17などに設けたレベルゲージ挿通孔17aの壁面には波形部15bが摺接するのみで、先端部15aが接触することを防止できるため、先端部15aに付着しているオイルが取り除かれることがない。レベルゲージ11の把持部12がヘッドカバー1の上面に位置しているので、レベルゲージ11の着脱作業が容易である。
【0027】
【発明の効果】
このように本発明によれば、ヘッドカバー内に受容されている部材を用いてガス流路を迷路状に形成することができ、別部品などを用いる必要がないため、簡単な構造で迷路を形成でき、ヘッドカバーにブリーザ室を形成する構造を低廉化し得る。また、ガス流路をカム軸方向にすることにより、カムなどで跳ね上げられたオイルが直接的にガス流路内を進むことがなく、ブリーザ室へのオイル浸入を防止できると共に、ヘッドカバーのリブ成形も複雑になることがなく、簡単な構造で迷路を構成できる。このようにして高回転・高出力エンジンにおけるコンパクト化が可能であり、ヘッドカバーに設けたブリーザ室構造においても、高いオイル分離能力を有するブリーザシステムを構築することができる。また、同構造により、ブリーザ室容積を低減することが可能なため、より一層コンパクト化し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたエンジンのヘッドカバー内を一部示す縦断面図
【図2】図1の矢印II線から見たヘッドカバーの内部形状を示す裏面図
【図3】図2の矢印III線により示された部分の拡大図。
【図4】図3の矢印IV−IV線に沿って見た要部拡大断面図。
【図5】図3のV−V線に沿って見た要部拡大断面図。
【図6】図3のにVI−VI線沿って見た要部拡大断面図。
【図7】図3のVII−VII線に沿って見た要部拡大断面図。
【図8】図3のVIII−VIII線に沿って見た要部拡大断面図。
【図9】図2の矢印IX−IX線に沿って見たレベルゲージの装着状態を示す図。
【図10】レベルゲージの全体を示す図。
【符号の説明】
1 ヘッドカバー
2 ホルダ部材(カムホルダ)
4 リブ
4a 開口部
5a・5b ブリーザ室
6 プレート
9 ガス流路(連通路)
Claims (2)
- ヘッドカバーの裏面に突設されたリブと前記リブに固着されたプレートとにより、前記ヘッドカバーの裏面側の空間に新気及びブローバイガスを通すための新気側ブリーザ室及びブローバイガス側ブリーザ室を形成したエンジンのヘッドカバーであって、
前記ヘッドカバーの側壁内面と前記リブと前記プレートとにより前記ブリーザ室及び動弁室間のガス流路となる連通路が形成され、前記リブの一部を切り欠いて前記各ブリーザ室と前記連通路とを連通する各開口部が形成されていると共に、
前記連通路にガスが流れる時にオイル分離が行われるように、前記連通路の途中に、カムまたはロッカーシャフトを保持するホルダ部材が前記プレートの対応する部分との間に隙間を有して横切っていることを特徴とするエンジンのヘッドカバー。 - ヘッドカバーの裏面に突設されたリブと前記リブに固着されたプレートとにより、前記ヘッドカバーの裏面側の空間に新気及びブローバイガスを通すための新気側ブリーザ室及びブローバイガス側ブリーザ室を形成したエンジンのヘッドカバーであって、
前記ヘッドカバーの側壁内面と前記リブと前記プレートとにより前記ブリーザ室及び動弁室間のガス流路となる連通路が形成され、前記リブの前記ヘッドカバーの側壁内面に対峙している一部を切り欠いて前記各ブリーザ室と前記連通路とを連通する各開口部が形成されていると共に、
前記連通路が、前記ヘッドカバーのカム軸に沿う側壁内面と前記プレートの主面よりシリンダヘッド側に曲折されたL字状脚片との間に画定されていることを特徴とするエンジンのヘッドカバー。
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