JP3876108B2 - エンジンのクランク室換気通路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのクランク室換気通路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヘッドカバーで閉じられた動弁カム室とオイルパンで閉じられたクランク室との間を互いに連通させる貫通孔をシリンダヘッド及びシリンダブロックに設けると共に、その先端がオイルパン内に到達するオイルレベルゲージを、ヘッドカバーに設けられた挿入口から貫通孔に挿入するようにしてなるエンジンが、特開平10−159531号公報に開示されている。これによると、オイルレベルゲージの挿入孔を、ピストンの往復動に基因するクランク室内の圧力脈動を緩和するためのクランク室換気通路として利用可能なので、エンジンの製造工数を低減し得る。
【0003】
他方、クランク室には、シリンダとピストンとの隙間から燃焼ガスが漏れるが、この未燃焼成分を含む所謂ブローバイガスの掃気効率を高めるため、一般に吸気通路におけるスロットル弁の上流側からクランク室内に新気を導入するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記の如く動弁カム室とクランク室(オイルパン内の油面上空間)との間を直接的に連通させると、クランク室(オイルパン)内に流出してきたブローバイガスが吸気通路内の負圧によって通気通路内に吸引される際に、潤滑油が混入した動弁カム室内のガスも同時に吸引されてしまう。このことは、クランク室の換気効率の低下に繋がるために別個に換気通路を設ける必要が生じるなど、構造の複雑化を招く上、ブローバイガス還元通路に設けられるオイルセパレータが動弁カム室からのガス内の潤滑油をも除去し得る容量が必要となるなど、エンジンの小型化を阻害する一因となり得るので好ましいことではなかった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、オイルレベルゲージの挿通孔をクランク室換気通路として利用しても、クランク室の換気効率が低下せず、しかも動弁カム室からの潤滑油が混入したガスがブローバイガス還元通路へ流入することを抑制し得るエンジンのクランク室換気通路を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明においては、ヘッドカバー(1)で閉じられた動弁カム室(2)とオイルパン(11)で閉じられたクランク室(12)との間を互いに連通させる貫通孔(13)をシリンダヘッド(4)及びシリンダブロック(7)に設けると共に、その先端が前記オイルパン内に到達するオイルレベルゲージ(15)を前記ヘッドカバーに設けられた挿入口(26)から前記貫通孔に挿入するようにしてなるエンジンのクランク室換気通路において、吸気通路におけるスロットル弁の下流側と前記貫通孔の中間部との間を連通させる通気通路(17)を設け、前記貫通孔における前記通気通路が開口する位置よりも前記動弁カム室側の部分に、前記動弁カム室側からの通気量を制限するための断面積狭窄部を設けることとした。
【0007】
これによれば、吸気系へのブローバイガス還元通路の断面積を確保した上で、動弁カム室側からの通気量を低減し得るので、オイルレベルゲージの挿入孔とクランク室換気通路とを兼用することによるエンジンの製造工数の低減効果を損なわずに、しかもエンジンの小型化を阻害せずに、動弁カム室からの潤滑油がブローバイガス中に混入すること、及びクランク室の換気効率が低下することを抑制し得る。
【0008】
特に、オイルレベルゲージに一体的に設けられた拡径部(23)によって断面積狭窄部を形成するものとすれば、通気量制限部の適正断面積を容易に設定することができる。また、拡径部を、オイルレベルゲージの軸上に合成樹脂材でモールド成型されたものとすれば、製作性を低下させずに済むうえ、複数の部材にまたがって形成された貫通孔の途中に段差ができても、合成樹脂製の拡径部がガイドとなるので、オイルレベルゲージの挿入に支障を来さずに済む。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図示の直列4気筒エンジンを参照して本発明の適用例を詳細に説明する。
【0010】
このエンジンEは、図1〜図3に示す通り、ヘッドカバー1で覆われた動弁カム室2と、吸気通路3並びに図示されていない排気通路が側面に開口したシリンダヘッド4と、シリンダ5及び軸受壁6を内設してなるシリンダブロック7と、クランク軸8を支持するベアリングキャップ9を一体形成してなるクランクケースロワ10と、潤滑油を貯容するオイルパン11とからなっている。
【0011】
シリンダヘッド4、シリンダブロック7、及びクランクケースロワ10には、動弁カム室2と、シリンダブロック7の下部およびクランクケースロワ10で画成されたクランク室12との間を互いに連通させる貫通孔13と、一端を吸気経路におけるスロットル弁の上流側に連結され(吸気経路との連結部は不図示)、他端をクランク室12に開口させた新気通路14とが内設されている。これら貫通孔13並びに新気通路14は、鋳抜き孔とドリル孔とを適宜に組み合わせて開けられている。また貫通孔13には、その先端がオイルパン11内に到達するオイルレベルゲージ15が、ヘッドカバー1に設けられた挿入口26を介して挿入されている。
【0012】
貫通孔13におけるシリンダブロック7に形成された部分の中間部は、シリンダブロック7の側面に形成されたオイルセパレート室16に対し、通気通路17を介して連結されている。
【0013】
オイルセパレート室16は、シリンダブロック7に鋳抜きにて形成され、その側方の開口面が、吸気マニホルドに一体形成されたチャンバ部材18で閉じられている。またオイルセパレート室16は、その最下底部に設けられたドレン孔19を介し、シリンダヘッド4、シリンダブロック7、及びクランクケースロワ10のクランク軸方向の一端面に接合されたチェーンカバー20の内側を経てオイルパン11の内側に連通されている。
【0014】
チャンバ部材18には、ブローバイガスの還流量を制御するPCVバルブ21を介してスロットル弁(不図示)の下流側へとオイルセパレート室16を連通させるための通路22が設けられている。
【0015】
このエンジンEにあっては、クランク室12、つまりオイルパン11の油面上空間内のブローバイガスは、新気通路14からクランク室12に流入した新気と共に、オイルレベルゲージ挿入孔を兼ねる貫通孔13の下部および通気通路17を経てオイルセパレート室16に流れ込み、しかしてPCVバルブ21を経て吸気経路のスロットル弁下流側に流れ込む。ここでブローバイガス中から分離された潤滑油は、ドレン孔19からオイルパン11内へと戻される。
【0016】
さて、オイルレベルゲージ15が挿入された貫通孔13をクランク室換気通路として用いると、シリンダブロック7内で発生したブローバイガスが吸気通路内の負圧によって通気通路17内に吸引される際に、動弁カム室2側の潤滑油および未燃焼成分を含むガスも同時に吸引されるため、クランク室12の換気効率が低下すると共にブローバイガス中への潤滑油の混入量も増大しがちとなる。そこで本発明においては、図4に示すように、オイルレベルゲージ15の適所に拡径部23を設けることにより、貫通孔13における動弁カム室2側へ通じる部分の断面積を狭くするものとした。これにより、動弁カム室2側からの通気量を減らし、ブローバイガス中への潤滑油の混入および換気効率低下の抑制を図っている。
【0017】
オイルレベルゲージ15は、丸棒材からなるスティック部24の上下各端に適宜な長さに渡って潰した平坦部25a・25bを形成し、ヘッドカバー1に設けられた挿入口26に対する嵌合部27とつまみ28とを上端側の平坦部25aにインサートモールドにて一体形成すると共に、潤滑油が付着するゲージ部として下端側の平坦部25bを用いるようにしてある。
【0018】
嵌合部27には、Oリング29が装着されており、ヘッドカバー1の挿入口26に嵌着した際にオイル漏れが生じないようにしてある。
【0019】
拡径部23は、スティック部24のシリンダヘッド4に挿通される部分に、合成樹脂材でプラグ状にモールド形成されている。なお、スティック部24の拡径部23が設けられる部分に孔30をあけたり(図5参照)、くびれ31を設けたり(図6参照)すれば、モールド成形された拡径部23がスティック部24から脱落することを防止し得る。また、拡径部23とつまみ28とを近接配置することにより、金型の大型化を招かずに両部分を同時に成形することが可能である。
【0020】
拡径部23は、合成樹脂材で形成されているので、オイルレベルゲージ15の着脱時にシリンダヘッド4に傷がつくおそれを皆無にできる。またよしんば拡径部23が損傷しても、オイルレベルゲージ15は容易に交換できるので、修理費用などの負担は極めて軽くて済む。しかも貫通孔13は一般に複数の部材にまたがって形成されるが、その途中に段差ができても、合成樹脂材でプラグ状に形成された拡径部23がガイドとなるので、オイルレベルゲージ15の挿入容易性を損なわずに済む。
【0021】
貫通孔13におけるシリンダヘッド4に設けられる部分は、上面からの鋳抜き孔の底を、下面からのドリル孔で抜いて貫通させているが、これらの鋳抜き孔とドリル孔との接続部には、その加工方法の違いにより生じる孔径差に基因する段差が生じる。このような段差が生じた鋳抜き孔とドリル孔との接続部に拡径部23の位置を合致させるものとすれば、より一層容易に断面積を狭くすることができ、絞り効果をより一層高めることができる。
【0022】
貫通孔13の断面積を狭窄する手段としては、要はオイルレベルゲージ15を挿通させた上で動弁カム室2側からの通気量を制限することができれば良いので、スティック部24自体の通気通路17の上方に位置する部分にいかなる形状の拡径部を設けても良いし、また貫通孔13自体の通気通路17との連結部より上方部分に縮径部を設けても良い。
【0023】
【発明の効果】
このように本発明によれば、オイルレベルゲージを挿通させる貫通孔をクランクケース換気通路として利用しても何ら支障を生じないので、エンジンの製造工数の増大を招かずに、且つエンジンの小型化を阻害せずに、動弁カム室からの潤滑油がブローバイガス中に混入すること、及び換気効率が低下することを抑制する上に多大な効果を奏することができる。特に、オイルレベルゲージに拡径部を一体的に設けることで断面積を狭窄することにより、通気量制限のための適正断面積の設定を容易化することができ、オイルレベルゲージの軸上に拡径部を合成樹脂材でモールド成型することにより、オイルレベルゲージの製作性と挿入容易性とを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたエンジンの一側面図
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図
【図3】図1におけるIII−III線に沿う断面図
【図4】オイルレベルゲージ単体の側面図
【図5】オイルレベルゲージの拡径部の一実施例を示す要部拡大図
【図6】オイルレベルゲージの拡径部の別の実施例を示す要部拡大図
【符号の説明】
1 ヘッドカバー
2 動弁カム室
11 オイルパン
12 クランク室
13 貫通孔
15 オイルレベルゲージ
17 通気通路
23 拡径部
26 挿入口
Claims (3)
- ヘッドカバーで閉じられた動弁カム室とオイルパンで閉じられたクランク室との間を互いに連通させる貫通孔をシリンダヘッド及びシリンダブロックに設けると共に、その先端が前記オイルパン内に到達するオイルレベルゲージを、前記ヘッドカバーに設けられた挿入口から前記貫通孔に挿入するようにしてなるエンジンのクランク室換気通路であって、
吸気通路におけるスロットル弁の下流側と前記貫通孔の中間部との間を連通させる通気通路を設け、
前記貫通孔における前記通気通路が開口する位置よりも前記動弁カム室側の部分に、前記動弁カム室側からの通気量を制限するための断面積狭窄部を設けたことを特徴とするエンジンのクランク室換気通路。 - 前記断面積狭窄部が、前記オイルレベルゲージに一体的に設けられた拡径部によって形成されることを特徴とする請求項1に記載のエンジンのクランク室換気通路。
- 前記拡径部が、前記オイルレベルゲージの軸上に合成樹脂材でモールド成型されていることを特徴とする請求項2に記載のエンジンのクランク室換気通路。
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