JP3741669B2 - 回転体の制動構造及びそれを用いた格納式アシストグリップ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転体の制動構造及びそれを用いた格納式アシストグリップに関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、格納式アシストグリップの1例として、車体パネル等の固定体に固定される1対の取付座と、これら取付座にそれぞれ脚部にて回転可能に軸支された長尺状のグリップ本体と、このグリップ本体を使用位置から格納位置に回転付勢するコイルばね等の付勢手段とを備えたものが知られている。
【0003】
そして、例えば特開2001―58535号公報に示されるように、高粘度の粘性剤が封入されたダンパ手段をグリップ本体と取付座との間に一体的に組み込んだものが提案されている。
【0004】
この提案のものでは、長さ方向両端部の脚部でそれぞれ取付座に回転可能に軸支されたグリップ本体に対し、その各脚部に、グリップ本体が格納位置にある状態で取付座の一部を収容する収容部を形成し、ダンパ手段を設ける側の取付座に、グリップ本体の長さ方向を中心軸とする有底円形状の嵌合穴と、この嵌合穴の底面に突設された嵌入部とを有する支持部を形成し、その嵌合穴内に回転可能に挿入されかつ嵌入部を嵌入させる嵌合凹部を有する嵌入軸を、収容部のグリップ本体長さ方向に対向する2つの側壁のうちの嵌合穴開放側の側壁に回転一体に係合する一方、嵌合穴の底部側の支持部に収容部の他方の側壁を相対回転に支承し、この嵌入軸の外周面と嵌合穴の内周面との間、及び嵌入部の外周面と嵌合凹部の内周面との間に粘性剤を介在させ、この粘性剤の粘性により嵌入軸つまりグリップ本体の回転に抵抗を生じさせるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記提案例のもののように、取付座の嵌合穴に嵌入軸を嵌入して組み付けるときに、例えば前もって嵌合穴に粘性剤を充填しておき、その粘性剤が充填されている嵌合穴に嵌入軸を挿入して嵌合する作業が行われる。その場合、粘性剤による制動効果(ダンパ効果)を高めるためには、上記のように嵌入軸の挿入の際、嵌合穴内周面と嵌入軸外周面との間の粘性剤充填用の隙間からエアを十分に抜いて、その隙間内に粘性剤のみが充填されるようにすることが望ましい。
【0006】
しかし、実際には、嵌入軸の挿入時に隙間からエアを確実に放出させることは難しく、制動効果を高めるのに限度がある。
【0007】
本発明の目的は、上記のように、取付座の嵌合穴にグリップ本体側の嵌入軸を挿入して組み付けられる構造の回転型の格納式アシストグリップに限らず、固定体と回転体とが互いに嵌合され、両者間の隙間に粘性剤が充填されて、回転体の回転を制動するようにした制動構造において、その構造の改良を行うことで、嵌合穴への挿入時に粘性剤充填用の隙間からのエア抜きを確実に行い得るようにし、粘性剤による良好な制動作用が発揮できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的の達成のため、この発明では、固定体と回転体との間の粘性剤充填用の隙間から粘性剤が流出するのを阻止するために設けられるシールリングの装着用の環状溝に部分的に幅の広い部分を形成して、この広幅部分でシールリングを移動可能とするとともに、このシールリングが環状溝の広幅部分で移動したときに隙間を大気側に連通させるための溝を形成して、エアを抜き出すようにした。
【0009】
具体的には、請求項1の発明では、互いに同心状に嵌合された固定体及び回転体間の隙間に粘性剤が充填され、該粘性剤により回転体の回転を制動するようにした回転体の制動構造が対象である。
【0010】
そして、上記固定体又は回転体の一方に、断面円形状の内周面を有する有底の嵌合穴が形成されている一方、上記固定体又は回転体の他方は、断面円形状の外周面を有しかつ上記嵌合穴にその開放口側から底部側に向けて挿入されていて回転体が回転可能となるように嵌合され、上記嵌合穴の内周面と上記外周面との間に、上記粘性剤を充填した隙間が形成されている。
【0011】
また、上記嵌合穴の開放口近傍位置の上記内周面又は上記外周面のうちの一方に環状溝が凹設されていて、該環状溝に上記隙間からの粘性剤の流出を阻止するようにシールリングが嵌め込まれている。
【0012】
さらに、上記環状溝の少なくとも1箇所に、上記嵌合穴に挿入される固定体又は回転体の挿入方向と反対側に上記シールリングを部分的に環状溝から相対移動可能とする拡幅部が溝幅を他の部分よりも拡げて形成されている。
【0013】
そして、上記拡幅部の底部と該拡幅部に対応する位置の環状溝の底部とに亘り互い連続するエア抜き溝が形成され、上記拡幅部の縦壁に、一端が上記エア抜き溝の拡幅部側の端部に連続する一方、他端が大気に開放されたエア放出溝が設けられている。
【0014】
上記の構成によると、固定体と回転体とを嵌合するとき、固定体又は回転体の一方の嵌合穴内の底部(奥部)に必要量の粘性剤を充填しておき、この嵌合穴内に固定体又は回転体の他方を挿入すると、この挿入した側の外周面と嵌合穴の内周面との間に粘性剤充填用の隙間が形成される。また、嵌合穴の開放口近傍位置の内周面又は該嵌合穴に挿入される固定体又は回転体の外周面の一方に環状溝が凹設され、この環状溝に嵌め込まれたシールリングにより上記粘性剤充填用の隙間が外部から封止され、その隙間からの粘性剤の流出が阻止される。そして、この状態で回転体を固定体に対し相対回転させることで、上記粘性剤充填用の隙間の粘性剤に粘性抵抗が生じ、この抵抗により回転体の回転が制動される。
【0015】
上記のように嵌合穴に固定体又は回転体を挿入する際、その挿入に伴って嵌合穴内の底部に充填されている粘性剤が挿入側の外周面との間を拡がって嵌合穴の開放口に向かい、この移動する粘性剤に押されて粘性剤充填用の隙間からエアが嵌合穴の開放口に押し出される。そして、このようにして排出されるエアは、シールリングが粘性剤充填用の隙間を閉じるまでに排出されないと、粘性剤充填用の隙間に粘性剤と共に残留することとなる。
【0016】
そのとき、上記シールリングを嵌合した環状溝に部分的に、固定体又は回転体の嵌合穴への挿入方向と反対側に拡がる拡幅部が形成されており、この拡幅部の底部と拡幅部に対応する位置の環状溝の底部とに亘り互い連続するエア抜き溝が形成され、このエア抜き溝の拡幅部側の端部に拡幅部縦壁のエア放出溝が一端で連続し、エア放出溝の他端は大気に開放されているので、上記のように固定体又は回転体の挿入の途中でシールリングが粘性剤充填用の隙間を閉じたとしても、その後、固定体又は回転体を嵌合穴内にさらに押し込むと、その隙間の内圧が増大し、この内圧の増大によりシールリングが拡幅部で部分的に固定体又は回転体の挿入方向と反対側に相対移動するように湾曲する。このシールリングの拡幅部での環状溝からの相対移動に伴い、上記エア抜き溝の環状溝側の端部が移動状態のシールリングよりも上記粘性剤充填用の隙間に開放されて連通するようになる。このことで、その粘性剤充填用の隙間にエアが残留していても、そのエアは上記粘性剤充填用の隙間に開放されたエア抜き溝に流入し、このエア抜き溝からその拡幅部側の端部に連続するエア放出溝を経て大気に放出される。よって、粘性剤充填用の隙間からエアを確実に放出して、そのエア抜きを有効に行うことができ、固定体又は回転体が嵌合穴に完全に嵌入されてシールリングにより粘性剤充填用の隙間が密封された状態では、その隙間にエア混在のない粘性剤が充填され、その粘性剤による良好な制動効果が発揮される。
【0017】
請求項2の発明は、上記請求項1の回転体の制動構造を用いた格納式アシストグリップの発明であり、この発明では、固定体は、車体に取り付けられる取付座とし、回転体は、長尺状グリップ本体の両端における脚部のうち少なくとも一方の脚部と共に回転する嵌入軸とする。こうすると、車両用の格納式アシストグリップとして、車体に取り付けられる取付座と、グリップ本体両端の脚部の少なくとも一方の脚部と共に回転する嵌入軸との間に形成される粘性剤充填用の隙間からエアを確実に放出でき、格納式アシストグリップの粘性剤による良好なダンパ効果が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図10は本発明の実施形態1に係る回転型の格納式アシストグリップGを示し、このアシストグリップGは、例えば車両における車室の側壁に車室内に臨むように取付固定される。
【0019】
上記アシストグリップGは、例えばPP(ポリプロピレン樹脂)等からなる樹脂製のグリップ本体1と、例えばPOM(ポリアセタール)等からなる第1及び第2の1対の取付座11,12とを備えてなり、このうちの第2取付座12が本発明でいう固定体を構成している。上記グリップ本体1は長尺バー状のもので、その長さ方向が車体の前後方向と略一致するように配置されている。このグリップ本体1は長さ方向両端部が同じ方向に湾曲されて略コ字状をなし、この長さ方向両端部はそれぞれ第1及び第2脚部1a,1bとされている。
【0020】
一方、図7及び図8に示すように、各取付座11,12は車室の側壁の一部を構成する取付体としての車体パネルPに表面側(車室側)から取付固定されている。この各取付座11,12の取付位置に対応する車体パネルPにはボルト挿通孔P1が貫通形成され、車体パネルPの裏面(背面)には上記ボルト挿通孔P1に対応してナットN(ウェルドナット)が溶接固定されている。
【0021】
そして、上記グリップ本体1は、その両脚部1a,1bにてそれぞれ取付座11,12に対し回転可能に軸支されており、このような両脚部1a,1bでの軸支構造により、グリップ本体1は使用位置及び格納位置の間で回転し、使用位置にあるときには、図5、図7、図8及び図10に示すようにグリップ本体1の中間部が車室内方に突出して水平面からやや斜め下方に向いた状態となる一方、格納位置にあるときには、図6に示すように、グリップ本体1が上記使用位置から略90°上向きに回転して車室側壁(車体パネルP)に沿った状態となる。
【0022】
上記グリップ本体1の各脚部1a,1bにおいて、グリップ本体1が格納位置にあるときの車室側壁の車体パネルPに対向する外面には、断面略矩形状に切り欠いてなる略半楕円形状の嵌合穴からなる収容部2が形成されている。この各収容部2の周りには、グリップ本体1の長さ方向に対向する内外側壁2a,2bと、この内外側壁2a,2bの対向方向に直交する方向に対向し、脚部1aの基部側及び先端側に位置する基部側及び先端側壁2c,2d(図7及び図8参照)とが設けられ、内外側壁2a,2b及び基部側壁2cは互いに略同じ高さであるが、先端側壁2dは、他の側壁2a〜2cに比べて低く形成されている。そして、グリップ本体1の格納位置で各収容部2内に取付座11,12の一部(取付座本体13の先端部)を収容するようになっている。
【0023】
上記グリップ本体1の第1脚部1a(図10において右側のもの)と、この第1脚部1aに対応する第1取付座11との間には、図8に示すように、グリップ本体1を使用位置から格納位置に向かうように回転付勢する付勢手段としての捩りコイルばね7が、また第2脚部1b(図10において左側のもの)と、この第2脚部1bに対応する第2取付座12との間には、図5〜図7に示すように、グリップ本体1の回転に抵抗を付与するダンパ手段24がそれぞれ設けられている。
【0024】
上記第1及び第2取付座11,12はその大半が互いに同じ構造で、一部分のみの構造が異なる。この両取付座11,12の同じ構造の部分について説明すると、図5〜図8にも示す如く、各取付座11,12は、車室側に開口する有底箱状の取付座本体13を備えている。この箱状の取付座本体13の平面視は、上記収容部2に対応する形状、つまり楕円(長円)を長径方向に2分割した略半楕円形状で、その開口周縁部には取付座本体13の開口を閉じるためのリッド14が薄肉ヒンジ14aにより一体に形成されている。取付座本体13の底壁部にはボルト挿通孔15が貫通形成されており、このボルト挿通孔15を車体パネルPのボルト挿通孔P1に一致させ、両ボルト挿通孔15,P1に取付ボルトBを挿通して、その先端部を車体パネルP裏面の上記ウェルドナットNに螺合締結することにより、各取付座11,12が車体パネルPに取付固定されている。
【0025】
尚、13aは取付座本体13の底部周りに突設されたフランジで、このフランジ13aは、車体パネルP表側のトリム材(図示せず)上にそれを覆うように配置される。
【0026】
上記両取付座11,12の異なる部分の構造について説明すると、まず、上記捩りコイルばね7側の第1取付座11においては、図8に示すように、その取付座本体13の側壁のうち格納位置にあるグリップ本体1の脚部1a先端側に位置する側壁の開口側端部に、グリップ本体1の長さ方向に延びる中空円筒状の支持部17が一体に形成されている。この支持部17の周壁には捩りコイルばね7を挿入するための矩形状の開口18が形成され、支持部17の長さ方向両端壁部にはそれぞれ軸挿通孔19,19(1つのみ図示する)が同心状に設けられている。そして、支持部17の両軸挿通孔19,19に支持軸8を挿通し、この支持軸8の両端部をそれぞれ上記グリップ本体1の第1脚部1aにおける収容部2の内外側壁2a,2bに形成した軸支持穴(図示せず)に嵌入することで、グリップ本体1の第1脚部1aを第1取付座11に支持軸8を介して回転可能に支持している。
【0027】
また、グリップ本体1の第1脚部1aにおける収容部2の先端側壁2dにはばね受部3が、また取付座11の支持部17内面の一部にもばね受部20がそれぞれ切り欠いて形成されている。そして、上記捩りコイルばね7は上記支持部17内に支持軸8の周りに配置された状態で収容され、この捩りコイルばね7の一端部は上記第1脚部1aにおけるばね受部3に、また他端部は第1取付座11の支持部17におけるばね受部20にそれぞれ係合されており、この捩りコイルばね7のばね力によりグリップ本体1を使用位置から格納位置に向かう方向(図8で反時計回り方向)に回転付勢している。
【0028】
一方、図5〜図7に示すように、上記ダンパ手段24側の第2取付座12において、その取付座本体13の側壁のうち格納位置にあるグリップ本体1の脚部1a先端側に位置する側壁の開口側端部には、グリップ本体1の長さ方向に延びる有底円筒状の支持部26が一体に形成され、この支持部26の内部には底部側に向かって小径となる略テーパ状の有底の嵌合穴28が形成され、この嵌合穴28は断面円形状の内周面を有する。嵌合穴28の開放口は上記グリップ本体1の第2脚部1bにおける収容部2の外側壁2b側に、また底部は内側壁2a側にそれぞれ位置している。また、この支持部26の外底面(嵌合穴28と反対側の面)には軸部27が嵌合穴28と同心状に一体に突設されている。尚、27aは軸部27の先端面に設けられたひけ防止用穴で、成形時の軸部27のひけを防止するためのものである。
【0029】
そして、上記グリップ本体1の第2脚部1bには、その収容部2の内外2つの側壁2a,2bのうち上記第2取付座12における支持部26の嵌合穴28の開放口に面する外側壁2bに略半楕円形状(他の形状でもよい)の係止口部4が嵌合穴28に対応してそれと同心状に貫通形成されている。一方、内側壁2aには軸支持穴5が係止口部4(嵌合穴28)と同心状に形成されており、この軸支持穴5に上記支持部26の軸部27が回転可能に嵌入されている。尚、上記とは逆に、内側壁2aに係止口部を、また外側壁2bに軸支持穴をそれぞれ設けてもよい。
【0030】
さらに、上記支持部26の嵌合穴28には例えばPOM等からなる樹脂製の嵌入軸31がその先端側を嵌合穴28の開放口側から底部側に向けて挿入されていて回転可能となるように嵌合されている。この嵌入軸31は、嵌合穴28と略同じテーパ形状でかつ断面円形状の外周面を有し、この嵌入軸31の外周面と嵌合穴28の内周面との間に略一定の粘性剤充填用隙間S(詳しくは、嵌入軸31先端部と嵌合穴28の底部との間の隙間をも含む。以下、同じ)が形成されている。そして、この嵌入軸31は嵌合穴28に対し、上記第2脚部1bにおける収容部2の外側壁2bの外側から該外側壁2bの係止口部4を挿通して嵌入され、その嵌入軸31の基端部外周面の断面形状は上記係止口部4と同じ形状に形成されていて、嵌入軸31の基端部は係止口部4に回転不能(回転一体)に係止されており、このことで、嵌入軸31は嵌合穴28の底部側に位置する先端部を自由端として回転可能に嵌合穴28に嵌入されている。
【0031】
上記嵌入軸31は、その嵌合穴28の底部側に位置する先端部が底壁部とされかつ基端部に開口を有する有底中空筒状体からなる。また、嵌入軸31の基端部における開口の周縁部には該開口を開閉するリッド32が薄肉ヒンジ33を介して回転可能に一体形成され、このリッド32の先端部には係合突起32aが形成されている一方、嵌入軸31の基端部の一部には上記リッド32先端部の係合突起32aに係合可能な係合孔37が設けられており、リッド32の係合突起32aを嵌入軸31基端部の係合孔37に係合させることで、リッド32を閉じ状態に保持する。
【0032】
上記嵌入軸31の基端部は、嵌合穴28内に嵌入される部分よりも若干薄肉の薄肉部35とされていて、その外周面には複数の係止突起36,36,…が周方向に間隔をあけて設けられており、嵌入軸31を先端側から第2取付座12の嵌合穴28内に嵌入して、その基端部の薄肉部35を係止突起36と共に外側壁2bの係止口部4を潜らせて撓み変形させながら、その係止突起36を外側壁2bの内側に位置付けることにより、嵌入軸31の基端部を係止口部4に回転不能(回転一体)に係止するようになっている。尚、この嵌入軸31の基端部の係止口部4への係止状態ではリッド32が薄肉ヒンジ33回りに回転して開閉される。
【0033】
そして、上記第2取付座12の支持部26における嵌合穴28の内周面と、この嵌合穴28内に嵌入された嵌入軸31の外周面との間の上記粘性剤充填用隙間Sには例えばシリコン等の高粘度(100000cps以上が望ましい)の液体からなる粘性剤Lが充填されている。
【0034】
また、上記嵌合穴28の開放口近傍の内周面と嵌入軸31外周面との間には上記粘性剤充填用隙間Sからの粘性剤Lの流出を阻止するOリング等からなるシールリング40が介在されている。具体的には、上記嵌入軸31の外周面において上記嵌合穴28の開放口近くの内周面に対応する部分には環状溝41が嵌入軸31の全周に亘って形成され、この環状溝41に上記シールリング40が嵌め込まれて装着されている。このシールリング40の外周面は嵌合穴28の開放口近くの内周面にあるシール面39に圧接しており、このシールリング40のシール面39との圧接により、上記第2取付座12の支持部26における嵌合穴28の内周面と嵌入軸31の外周面との間の粘性剤充填用隙間Sを封止して、その粘性剤充填用隙間Sからの粘性剤Lの流出を阻止するようにしている。
【0035】
そして、以上の第2取付座12の支持部26における嵌合穴28の内周面と嵌入軸31の外周面との間の粘性剤充填用隙間Sに充填されている粘性剤Lにより、グリップ本体1が回転するときの回転抵抗となるトルクを発生するダンパ手段24が形成されている。
【0036】
本発明の特徴として、図1及び図2に示すように、上記嵌入軸31の外周面にはその環状溝41の長さ方向(周方向)の1箇所で溝幅を拡げてなる拡幅部42が形成されている。この拡幅部42は環状溝41の一部の溝幅を嵌入軸31の挿入方向と反対側、つまり先端部から基端部側に向かう側に他の部分よりもシールリング40の外径の略2倍程度だけ円弧状に拡げたもので、その底部と環状溝41の底部とは面一に形成されており、この拡幅部42において、環状溝41に嵌装されているシールリング40を部分的に環状溝41から、嵌合穴28に挿入される嵌入軸31の挿入方向と反対側に相対移動可能として湾曲するようにしている。
【0037】
また、嵌入軸31にはエア抜き溝43が上記拡幅部42の底部と該拡幅部42に対応する位置の環状溝41の底部とに亘り互い連続するように形成されている。このエア抜き溝43は、拡幅部42の底部と環状溝41の底部とを嵌入軸31の軸線方向に沿って凹陥してなるもので、エア抜き溝43において上記環状溝41側の端部43aは環状溝41の溝幅の例えば略中央部に開口し、拡幅部42側の端部43bは該拡幅部42の縦壁42a近くまで延びている。
【0038】
そして、上記拡幅部42の縦壁42aには嵌入軸31の略半径方向に延びるエア放出溝44が設けられ、このエア放出溝44の一端(内端)は上記エア抜き溝43の拡幅部42側の端部43bに連続する一方、他端は拡幅部42よりも嵌入軸31の基端部側の外周面に開口していて大気に開放されている。
【0039】
次に、上記実施形態のアシストグリップGをグリップ本体1の第2脚部1bにおいて車体パネルPに組み付ける作業について説明すると、図9に示すように、予め、嵌入軸31の環状溝41にシールリング40を嵌装するとともに、第2取付座12における支持部26の嵌合穴28内の底部に必要量の粘性剤Lを充填しておく。このときの粘性剤Lの充填量(必要量)は、嵌入軸31の外周面と嵌合穴28の内周面との間の粘性剤充填用隙間S(上記の如く嵌入軸31の先端部と嵌合穴28の底部との間の隙間を含む)の容積よりも若干多めに設定する。こうすると、嵌入軸31を嵌合穴28内に挿入して、第2取付座12に嵌入軸31を組み付けたときに、粘性剤充填用隙間Sから粘性剤Lが少し漏れ出る程度になり、エア抜きを行いながら粘性剤充填用隙間Sに粘性剤Lが充填される。
【0040】
そして、まず、第2取付座12の軸部27先端部をグリップ本体1の第2脚部1bにおける収容部2の内側壁2aの軸支持穴5に嵌挿し、次いで、その収容部2の外側壁2bの係止口部4に上記嵌入軸31を先端側から挿通させ、その嵌入軸31を上記嵌合穴28の内部に挿入して嵌入軸31の基端部を係止口部4に係合固定する。そして、この嵌入軸31が第2取付座12の嵌合穴28内に適正位置まで完全に挿入されると、上記シールリング40の外周部が嵌合穴28の開放口近傍の内周面つまりシール面39に圧接して、このシール面39と嵌入軸31のシールリング40との間の隙間が相対回転可能に気密状に閉塞され、嵌入軸31の外周面と嵌合穴28の内周面との間の粘性剤充填用隙間Sに上記粘性剤Lが封入される。
【0041】
このようにして嵌入軸31を嵌合穴28内に挿入するとき、その挿入の開始に伴い、図3(a)及び図4(a)に示すように、粘性剤Lと共に嵌合穴28内にあるエアが嵌合穴28から押し出される。こうしたエアの排出は、図3(b)に示す如く、シールリング40が嵌合穴28の開放口近傍の内周面に当接して粘性剤充填用隙間Sを閉じるまで行われ、そのシールリング40と嵌合穴28の開放口近傍の内周面との当接までにエアが排出されないと、そのエアは粘性剤充填用隙間Sに残留することとなる。
【0042】
しかし、嵌入軸31には、上記シールリング40を嵌合した環状溝41の一部に嵌入軸31の嵌合穴28への挿入方向と反対側に拡がる拡幅部42が形成され、この拡幅部42の底部と拡幅部42に対応する位置の環状溝41の底部とに亘り互い連続するエア抜き溝43が形成され、このエア抜き溝43の拡幅部42側の端部43bに拡幅部42の縦壁42aのエア放出溝44が一端で連続し、このエア放出溝44の他端は大気に開放されているので、上記のようにシールリング40が粘性剤充填用隙間Sを閉じたとしても、その後、嵌入軸31が嵌合穴28内にさらに押し込まれると、その粘性剤充填用隙間Sの内圧が増大し、この内圧の増大により、図3(c)及び図4(b)に示すように、シールリング40が拡幅部42で部分的に嵌入軸31の挿入方向と反対側つまり基端部側に相対移動するように湾曲する(見掛け上、拡幅部42にあるシールリング40が嵌入軸31の挿入に追従せずに略停止するようになる)。このシールリング40の拡幅部42での環状溝41からの相対移動に伴い、上記エア抜き溝43の環状溝41側の端部43aが移動状態のシールリング40よりも上記粘性剤充填用隙間Sに開放されて連通するようになる。このことで、その粘性剤充填用隙間Sにエアが残留していても、そのエアは上記粘性剤充填用隙間Sに開放されたエア抜き溝43に流入し、このエア抜き溝43からその拡幅部42側の端部43bに連続するエア放出溝44を経て大気に放出される。尚、このときに、エアの排出後に粘性剤Lの一部が排出されるようにその粘性剤Lの充填量を多めに設定しておけば、エアの排出がさらに確実になる。
【0043】
このようにして粘性剤充填用隙間Sから残留エアがエア抜き溝43及びエア放出溝44により抜け出すと、そのことによって粘性剤充填用隙間Sの内圧が下がるので、図3(d)に示すように、上記拡幅部42に移動していたシールリング40の一部が拡幅部42から環状溝41に戻る。このときに嵌入軸31を嵌合穴28内で回転させれば、シールリング40の戻りがスムーズに行われる。そして、嵌入軸31が嵌合穴28内の適正位置まで完全に挿入されると、シールリング40が嵌合穴28の開放口近傍の内周面のシール面39に圧接して粘性剤充填用隙間Sに残留エアのない粘性剤が封入される。
【0044】
このようにして第2取付座12が組み付けられたアシストグリップGは、第2取付座12における取付座本体13のボルト挿通孔15に取付ボルトBを挿通して第2取付座12を車体パネルPに締結することにより、車体パネルPに組み付けられる。その後、リッド14を閉じることにより取付ボルトBを覆って隠す。
【0045】
尚、第1取付座11においても、グリップ本体1の第1脚部1aが支持軸8により回転可能に支持されるとともに、捩りコイルばね7が装着される。その後、第1取付座11は上記第2取付座12と略一緒に同様にして車体パネルPに組み付けられる。
【0046】
したがって、この実施形態のアシストグリップGにおいては、通常はグリップ本体1が捩りコイルばね7の付勢力により回転付勢されて格納位置に位置付けられており、車両の乗員がアシストグリップGを使用するとき、そのグリップ本体1を手で掴んで捩りコイルばね7の付勢力に抗して使用位置に回転させればよい。また、このアシストグリップGの使用停止時には、乗員がグリップ本体1から手を離すと、そのグリップ本体1は捩りコイルばね7の付勢力により使用位置から格納位置へ回転しながら戻る。
【0047】
このようなグリップ本体1の使用位置から格納位置への回転時(上記格納位置から使用位置への回転時にも同様のことが生じる)、グリップ本体1の第2脚部1bにおける収容部2の内側壁2aが第2取付座12の軸部27回りに、また第2脚部1bに回転不能に取り付けられている嵌入軸31が第2取付座12の嵌合穴28内でそれぞれ回転するが、そのとき、上記第2取付座12の嵌合穴28の内周面と嵌入軸31の外周面との間の粘性剤充填用隙間Sに粘性剤Lが充填されているので、この粘性剤Lの粘性により上記嵌入軸31及びグリップ本体1の回転に抵抗(制動トルク)が生じる。このことで、グリップ本体1がゆっくりと使用位置から格納位置へ回転することとなり、グリップ本体1が車体パネルPに強く当たることによる叩き音を発生させることがなく、その動きに高級感が得られる。
【0048】
また、上記のように、粘性剤充填用隙間Sからエアが確実に放出されて、そのエア抜きが有効に行われるので、上記嵌入軸31が第2取付座12の嵌合穴28に完全に挿入されてシールリング40により密封された粘性剤充填用隙間Sにエア混在のない粘性剤Lが充填されることとなり、その粘性剤Lによる良好な制動効果が発揮される。
【0049】
(実施形態2)
図11は本発明の実施形態2を示し(尚、図1〜図10と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、ダンパ手段24の構造を変えたものである。
【0050】
すなわち、この実施形態においては、グリップ本体1の第2脚部1bにおける収容部2の内外側壁2a,2bにはそれぞれグリップ本体1の長さ方向の軸孔46,47が同心状に貫通形成され、両軸孔46,47間に亘りグリップ本体1の長さ方向に延びる支持軸48が挿通され、この支持軸48は第2脚部1bに回転一体に結合されている。また、上記収容部2の外側壁2bの内面には収容部2の開口端から底部近くまでの範囲に、上記軸孔47を通ってそれと直交する方向に延びるキー溝からなる係止部49が形成されている。
【0051】
一方、第2取付座12の支持部26における嵌合穴28の底部中心には軸挿通孔50が嵌合穴28と同心状に形成され、この軸挿通孔50に上記支持軸48が回転可能に挿通されている。また、この嵌合穴28内に中実状の嵌入軸31が挿入され、この嵌入軸31の外周面と嵌合穴28の内周面との間の粘性剤充填用隙間Sに粘性剤Lが充填されている。嵌入軸31の中心部には軸挿通孔51が同心状に貫通形成され、この軸挿通孔51にも上記支持軸48が挿通支持されている。
【0052】
嵌入軸31の基端部外面には上記グリップ本体1の第2脚部1bにおける係止部49に係止する突条からなる係合部52が形成されており、この係合部52の係止部51との係合により、嵌入軸31をグリップ本体1の第2脚部1bと共に一体的に回転させるようにしている。尚、この係合部52の係止部51との係合に代え、嵌入軸31の軸挿通孔51内周面と支持軸48外周面との間の一方にキー溝を形成する一方、他方に該キー溝と係合するキーを設けて、嵌入軸31を支持軸48に回転一体にキー結合するようにしてもよい。
【0053】
そして、上記第2取付座12の支持部26における嵌合穴28の開放口近傍位置の嵌入軸31外周面に環状溝41が凹設され、この環状溝41にシールリング40が上記粘性剤充填用隙間Sからの粘性剤Lの流出を阻止するように嵌め込まれている。
【0054】
また、上記環状溝41の周方向の1箇所に拡幅部42が形成され、この拡幅部42の底部と該拡幅部42に対応する位置の環状溝41の底部とに亘り互い連続するエア抜き溝43が設けられ、拡幅部42の縦壁42aには、一端がエア抜き溝43の拡幅部42側の端部43bに連続する一方、他端が大気に開放されたエア放出溝44が形成されている。
【0055】
尚、第2取付座12の嵌合穴28の内底面と嵌入軸31の先端面との間にはOリング等からなる内側シールリング53が支持軸48の周りに位置するように配置されており、この内側シールリング53により嵌合穴28の内底面と嵌入軸31の先端面との間をシールして、粘性剤充填用隙間Sからの粘性剤Lの軸挿通孔50,51側からの流出を阻止するようにしている。
【0056】
したがって、この実施形態の場合、グリップ本体1の使用位置と格納位置との間での回転時、グリップ本体1の第2脚部1bにおける収容部2の内側壁2a及び外側壁2bが第2取付座12の支持部26に対し支持軸48と共にその回りに回転するとともに、その第2脚部1bに回転不能(回転一体)に係合されている嵌入軸31も第2取付座12の嵌合穴28内で回転し、この嵌合穴28の内周面と嵌入軸31の外周面との間の粘性剤充填用隙間Sに充填されている粘性剤Lの粘性により、上記嵌入軸31及びグリップ本体1の回転に抵抗(制動トルク)が生じる。
【0057】
そして、上記第2取付座12にグリップ本体1の第2脚部1bを組み付けるときに、例えば、予め、第2取付座12の支持部26及び嵌入軸31を第2脚部1bにおける収容部2内に収容しない状態で、支持軸48を第2取付座12の軸挿通孔50と嵌入軸31の軸挿通孔51とに亘り挿通し、内側シールリング53を装着した状態で、嵌合穴内28に粘性剤Lを充填して嵌入軸31を挿入する。この状態で支持軸48を一旦抜き(尚、この状態では粘性剤充填用隙間Sの粘性剤Lはシールリング40及び内側シールリング53により封止されているので、支持軸48を抜き取っても軸挿通孔50,51から漏出することはない)、その後に嵌入軸31及び第2取付座12の支持部26を上記第2脚部1bの収容部2内に、係合部52を係止部49に係合させながら収容し、その状態で支持軸48を第2取付座12の軸挿通孔50と嵌入軸31の軸挿通孔51と内外側壁2a,2bの軸孔46,47とに亘り挿通させればよい。
【0058】
上記のように第2取付座12の嵌合穴内28に粘性剤Lを充填して嵌入軸31を挿入する際、上記実施形態1と同様に、嵌入軸31の外周面と嵌合穴28の内周面との間の粘性剤充填用隙間Sの内圧の増大により、シールリング40が拡幅部42で部分的に嵌入軸31の挿入方向と反対側(基端部側)に相対移動して、エア抜き溝43の環状溝41側の端部が移動状態のシールリング40よりも粘性剤充填用隙間Sに連通し、粘性剤充填用隙間Sに残留しているエアがエア抜き溝43からその拡幅部42側の端部に連続するエア放出溝44を経て大気に放出される。よって、粘性剤充填用隙間Sからエアを確実に放出して、粘性剤による良好な制動効果を発揮させることができる。
【0059】
(他の実施形態)
尚、上記各実施形態では、環状溝41の周方向の1箇所に拡幅部42を設けているが、複数の拡幅部を環状溝41の周方向に間隔をあけて設けることもできる。
【0060】
また、上記各実施形態では、グリップ本体1の一方の脚部である第2脚部1bに嵌入軸31を回転一体に係合固定し、この嵌入軸31を第2取付座12の嵌合穴28に挿入するようにしているが、第1脚部1aと第1取付座11との間、及び第2脚部1bと第2取付座12との間の双方にそれぞれ上記と同様なダンパ手段を設けることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、嵌入軸31において、その第2取付座12における嵌合穴28の開放口近傍位置の外周面に環状溝41を凹設し、この環状溝41に装着されるシールリング40を嵌合穴28の内周面のシール面39に圧接させるようにしているが、逆に、嵌合穴28の開放口近傍位置の内周面に環状溝を凹設し、この環状溝に装着されるシールリングを嵌入軸31の外周面のシール面に圧接させるようにしてもよい。その場合、嵌合穴28側(第2取付座12の支持部26)に拡幅部、エア抜き溝及びエア排出溝が形成される。
【0062】
さらに、上記実施形態は、格納式アシストグリップGに適用したものであるが、本発明の制動構造は、この他、互いに同心状に嵌合された固定体及び回転体間の粘性剤充填用隙間に粘性剤が充填されていて、この粘性剤により回転体の回転を制動するようにする場合であれば適用することができる。その場合、上記実施形態と同様に、固定体に有底の嵌合穴を形成し、この嵌合穴に回転体を嵌合穴の開放口側から底部側に向けて挿入して回転可能に嵌合し、この回転体の外周面と嵌合穴の内周面との間に粘性剤充填用隙間を形成することは勿論、これとは逆に、回転体に、断面円形状の内周面を有する有底の嵌合穴を形成し、この嵌合穴に、断面円形状の外周面を有する固定体を嵌合穴の開放口側から底部側に向けて挿入して回転体が回転可能となるように嵌合し、これら回転体の嵌合穴の内周面と固定体の外周面との間に粘性剤充填用隙間を形成するようにしてもよく、同様の作用効果を奏することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明した如く、請求項1の発明の回転体の制動構造によると、固定体又は回転体の一方に嵌合穴を形成し、この嵌合穴に、固定体又は回転体の他方を挿入して回転可能に同心状に嵌合し、嵌合穴の内周面とこれに挿入される固定体又は回転体の外周面との間の隙間に粘性剤を充填し、この粘性剤充填用の隙間をシールリングで封止して粘性剤の流出を阻止し、粘性剤により回転体の回転を制動する場合に、シールリングを嵌め込むための環状溝に、シールリングの一部を環状溝から嵌合穴への固定体又は回転体の挿入方向と反対側へ相対移動可能とする拡幅部を形成し、この拡幅部の底部と環状溝の底部とに亘り互い連続するエア抜き溝を形成して、このエア抜き溝の拡幅部側の端部を、拡幅部の縦壁に設けたエア放出溝を介して大気に開放可能としたことにより、固定体又は回転体を嵌合穴内に挿入したときに、その粘性剤充填用の隙間の内圧の増大によりシールリングを拡幅部で部分的に固定体又は回転体の挿入方向と反対側に相対移動させてエア抜き溝を粘性剤充填用の隙間に連通させ、粘性剤充填用の隙間に残留したエアをエア抜き溝ないしエア放出溝を経て大気に確実に放出でき、粘性剤充填用の隙間にエア混在のない粘性剤を充填して、回転体の制動効果の向上を図ることができる。
【0064】
請求項2の発明によると、上記回転体の制動構造を格納式アシストグリップに用い、固定体は車体に取り付けられる取付座とし、回転体は、長尺状グリップ本体の両端における脚部のうち少なくとも一方の脚部と共に回転する嵌入軸としたことにより、その取付座と、グリップ本体側の嵌入軸との間に形成される粘性剤充填用の隙間からエアを確実に放出して、格納式アシストグリップの粘性剤による良好なダンパ効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図2のI−I線拡大断面図である。
【図2】嵌入軸の要部を示す斜視図である。
【図3】嵌入軸を第2取付座の嵌合穴に挿入するときに嵌合穴内から残留エアが排出される動きを示す要部拡大断面図である。
【図4】嵌入軸を第2取付座の嵌合穴に挿入するときにシールリングの移動により嵌合穴内から残留エアが排出される動きを示す正面図である。
【図5】図10のV−V線拡大断面図である。
【図6】グリップ本体が格納位置にあるときの図5相当図である。
【図7】図10のVII−VII線拡大断面図である。
【図8】図10のVIII−VIII線拡大断面図である。
【図9】嵌入軸を組み付ける状態を示す図5相当図である。
【図10】本発明の実施形態1に係る格納式アシストグリップの全体構成をグリップ本体が使用位置にある状態で示す斜視図である。
【図11】実施形態2を示す図5相当図である。
【符号の説明】
G 格納式アシストグリップ
P 車体パネル(固定体)
1 グリップ本体
7 捩りコイルばね
11 第1取付座
12 第2取付座
24 ダンパ手段
26 支持部
28 嵌合穴
31 嵌入軸
39 シール面
40 シールリング
41 環状溝
42 拡幅部
42a 縦壁
43 エア抜き溝
43a 環状溝側端部
43b 拡幅部側端部
44 エア放出溝
S 粘性剤充填用隙間
L 粘性剤

Claims (2)

  1. 互いに同心状に嵌合された固定体及び回転体間の隙間に粘性剤が充填され、該粘性剤により回転体の回転を制動するようにした制動構造であって、
    上記固定体又は回転体の一方に、断面円形状の内周面を有する有底の嵌合穴が形成されている一方、
    上記固定体又は回転体の他方は、断面円形状の外周面を有しかつ上記嵌合穴にその開放口側から底部側に向けて挿入されていて回転体が回転可能となるように嵌合され、
    上記嵌合穴の内周面と上記外周面との間に、上記粘性剤を充填した隙間が形成され、
    上記嵌合穴の開放口近傍位置の上記内周面又は上記外周面のうちの一方に環状溝が凹設されていて、該環状溝に上記隙間からの粘性剤の流出を阻止するようにシールリングが嵌め込まれ、
    上記環状溝の少なくとも1箇所に、上記嵌合穴に挿入される固定体又は回転体の挿入方向と反対側に上記シールリングを部分的に環状溝から相対移動可能とする拡幅部が溝幅を他の部分よりも拡げて形成され、
    上記拡幅部の底部と該拡幅部に対応する位置の環状溝の底部とに亘り互い連続するエア抜き溝が形成され、
    上記拡幅部の縦壁に、一端が上記エア抜き溝の拡幅部側の端部に連続する一方、他端が大気に開放されたエア放出溝が設けられていることを特徴とする回転体の制動構造。
  2. 請求項1の回転体の制動構造を用いた格納式アシストグリップであって、
    固定体は、車体に取り付けられる取付座であり、
    回転体は、長尺状グリップ本体の両端における脚部のうち少なくとも一方の脚部と共に回転する嵌入軸であることを特徴とする格納式アシストグリップ。
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