JP3741097B2 - イオントラップ装置及び該装置の調整方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、3次元四重極電場を用いてイオンを捕捉(トラップ)するイオントラップ装置に関する。本発明に係るイオントラップ装置は、例えばイオントラップ質量分析装置やイオントラップをイオン源として利用する飛行時間型質量分析装置などに使用される。
【0002】
【従来の技術】
イオントラップ装置では、基本的に高周波電場と直流電場を組み合わせて形成される3次元四重極電場を用いてイオンを捕捉する。イオントラップの構成には、内面が双曲面形状を有する電極を用いて、電極に囲まれた領域内の広い範囲に亘ってイオン捕捉領域を形成するものや、円筒や円板状の電極を組み合わせて、電極に囲まれた領域の中心あたりにイオン捕捉領域を形成するもの(Cylindrical Ion Trap)などがある。これらの構成において、中央部の円筒電極はリング電極、その両側の円板状の電極はエンドキャップ電極と呼ばれており、通常は、リング電極に高周波電圧を印加することによって捕捉電場を形成する。いずれの電極構成においても、イオンの質量数(質量/電荷)に応じて、そのイオンが安定に捕捉されるか、あるいは不安定な軌道を描いて電極に衝突したり、電極の開口部から放出されてしまうかが定まる。こうしたイオントラップの理論的な説明は、非特許文献1などに詳しく記載されている。
【0003】
リング電極に高周波電圧を印加するための構成の一例としては、リング電極にコイルが接続され、そのコイルのインダクタンスと、リング電極と2つのエンドキャップ電極との間の静電容量、及びリング電極に接続された他の全ての回路要素の静電容量とでLC共振回路を形成する。この共振回路に、これを駆動する高周波駆動源(RF励振回路)を直接又は変圧器結合を通じて接続する。この構成では、高いQ値を利用して振幅を増幅し、小さな駆動電圧で以て、リング電極に大振幅の高周波電圧(以下「高周波高電圧」という)を印加することができる。こうした共振回路での電圧の増幅効果を高めるために、通常、可変コンデンサ等を含む同調回路を用いて、LC共振回路の共振周波数を駆動源の周波数に合致(この状態が共振条件を満たした状態である)させるようにしている。
【0004】
【非特許文献1】
アール・イー・マーチ(R. E. March)、 アール・ジェイ・フヘス( R. J. Hughes)著,「クァドルポール・ストレージ・マス・スペクトロメトリー(Quadrupole Storage Mass Spectrometry)」, ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ(John Wiley & Sons), 1989年, p.31−110
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、温度上昇に伴ってコイルが膨張してインダクタンスが変化したり、或いは可変コンデンサの容量が変化したりして、共振回路の共振周波数が高周波駆動源の周波数からずれる場合がある。また、リング電極に高電圧スイッチが接続されており、高周波高電圧を変化させるとそのスイッチの容量が変化して共振状態が変化する場合もある。一般には、高周波駆動源の出力電圧を調整して高周波高電圧の電圧値を一定に維持するようなフィードバック制御が行われているため、共振周波数のずれが生じても高周波高電圧の振幅は殆ど変動しない。ところが、高周波駆動源の出力波形と高周波高電圧の波形の位相にはずれが生じてしまう。イオントラップ装置で行われる様々な処理において、高周波高電圧の位相に関係した又は位相を利用した処理(例えばイオンの選別や解離など)を行う必要がある場合、通常、高周波駆動源から位相情報を取得してそれに基づいて各種のタイミングを決めているため、上述したように高周波駆動源の出力波形と高周波高電圧の波形とで位相ずれが生じた場合、意図した処理が行えなくなってしまったり、その処理の精度が充分に上がらなくなってしまったりする、という問題がある。
【0006】
一例を挙げると、高周波高電圧の電圧値を走査してイオンの質量分析を行う場合、イオンがイオントラップから放出されるタイミングは高周波高電圧の位相と関連しているので、上記のように位相ずれが生じると質量スペクトルでのピーク位置にずれが生じてしまう。また他の例として、イオントラップから飛行時間型質量分析装置へイオンを放出し質量分析を行う場合には、放出タイミングでのイオンの運動エネルギーや運動方向が高周波高電圧の位相と関連しているので、その位相にずれが生じると上記と同様に質量スペクトルでのピーク位置にずれが生じてしまう。
【0007】
こうした問題は、高周波駆動源ではなく共振・増幅後の高周波高電圧をモニタすることで直接的に位相信号を取り出し、その位相情報に基づいて処理を行うことにより、原理的には解決が可能である。しかしながら、実際には、様々に変化する高周波高電圧に対して常に正確な位相情報を取り出すのは非常に困難であって、可能であったとしてもコストが嵩み実用的でない。また、既に使用されている装置に対して後付けでこうした機能を組み込むことは、実用上不可能である。
【0008】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、高周波駆動源の出力波形と高周波高電圧の波形との位相のずれを低減し、それによって質量ピークのシフトなどの位相に関連した各種の性能の劣化を防止又は軽減することができるイオントラップ装置及び該装置の調整方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために成された第1の発明は、高周波駆動源による駆動電圧を共振回路により増幅することで発生させた高周波電圧を、イオントラップを形成する複数の電極のうちの少なくとも1つに印加するイオントラップ装置において、前記共振回路の共振周波数を調整するための同調手段を備え、その共振周波数が前記駆動電圧の周波数からずれるように前記同調手段を設定することを特徴としている。
【0010】
また、上記課題を解決するために成された第2の発明は、高周波駆動源による駆動電圧を共振回路により増幅することで発生させた高周波電圧を、イオントラップを形成する複数の電極のうちの少なくとも1つに印加するイオントラップ装置であって、前記共振回路の共振周波数を調整するための同調手段を備えたイオントラップ装置の調整方法において、前記共振周波数が前記駆動電圧の周波数からずれるように前記同調手段を調整することを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態、及び効果】
第1及び第2発明の原理を、図2に示すLCR直列共振回路のモデルを用いて簡略的に説明する。いま、イオントラップの電極などの容量の総和101をC、コイルのインダクタンス102をL、共振回路の等価抵抗103をRで表す。また、高周波駆動源100により発生する駆動電圧の角周波数をω0、共振回路の共振角周波数をωで表す。この共振回路のインピーダンスZは、
Z=R+jX
但し、X=ωL−1/(ωC)
で与えられる。ω=ω0では共振条件が成立し、X=0となる。このとき、インピーダンスZはZ=Rの最小値となるので、最も小さな駆動電圧で以て目的とする高周波高電圧を得ることができる。このときの増幅率はQ値と呼ばれ、
Q=ω0L/R
となる。一般的なイオントラップ装置では、共振器のQ値は100〜300程度の値に設定されている。
【0012】
駆動電圧をV0とすると、共振回路に流れる電流Iは、
I=V0/Z
である。イオントラップの電極間に発生する高周波高電圧VRFは容量Cに加わる電圧に相当する。容量Cのインピーダンスは、
−j/(ωC)≒−jω0L
であるから、高周波高電圧VRFは、
VRF=(−jω0L/Z)・V0
となる。従って、高周波駆動源100の出力波形と高周波高電圧波形の位相差θは、
θ=−π/2−∠Z
となる。一方、リアクタンスXを、
X=QR・(ω/ω0−ω0/ω)
と書き直すと、
tan(∠Z)=Q・(ω/ω0−ω0/ω)
となる。ωで微分することにより、角振動数の変化Δωに対する位相差θの変化Δθの関係を求めると、
Δθ≒2Q・cos2(∠Z)・(Δω/ω0)
が得られる。これは、共振条件∠Z=0からずらしてゆくことによって、同じ角振動数の変化Δωに対しても位相差の変化Δθを相対的に減少させることができることを意味している。例えば、∠Z=60°では位相差の変化Δθは∠Z=0の共振条件の場合に比較して約0.25倍に減少し、∠Z=65°では0.179倍、∠Z=70°では0.117倍と、cos2(∠Z)に従って大きく減少させることができる。
【0013】
このように第1及び第2発明に係るイオントラップ装置及び該装置の調整方法によれば、イオントラップに高周波高電圧を印加するための共振回路の共振周波数を高周波駆動源の周波数から意図的にずらすことによって、高周波高電圧を変化させたときに生じる共振周波数の変化が、高周波駆動源の出力波形と高周波高電圧波形との位相差に対して及ぼす影響を低減することできる。それによって、質量分析の際の質量ピークのシフト等、その位相差や位相変化に関連した諸性能の劣化を防止することができ、質量分析の精度や感度を高めることができる。
【0014】
また、高周波駆動源の出力波形と高周波高電圧波形との位相差を生じさせる原因が高周波高電圧の電圧値に依存している場合には、共振条件からずらす方向を適切に選択しないと共振回路での共振が安定に行われなくなる。例えば、高周波高電圧が印加されている電極に半導体素子が接続されている場合、高周波高電圧の電圧値の増加に伴って実質的な半導体素子の容量が増加し、共振回路の共振周波数は低下する。仮に同調手段で容量を減らすことによって共振周波数が高くなるように共振条件からずらされている場合、高周波高電圧の電圧値を増加させると容量が増加して共振条件に近づいてしまうため、共振回路の増幅率が増加し、正の帰還がかかって共振が不安定になる。
【0015】
従って、上述したように高周波高電圧が印加されている電極に半導体素子が接続されている場合には、例えば可変コンデンサ等の同調手段で容量を増加させるようにして、共振周波数が減少するように共振条件からずらす方向を設定することが必要である。すなわち、より一般化すれば、高周波電圧の増加に伴って共振周波数が一方向に変化する場合には、その変化と同じ方向に共振周波数がずれるように同調手段を調整することが好ましく、これによって共振を安定化して上記のような効果を確実に達成することができる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明のイオントラップ装置を用いた質量分析装置の一例として、飛行時間型質量分析装置について説明する。図1はこの質量分析装置の要部の構成図である。
【0017】
イオントラップ装置1は、1つのリング電極11と2つの互いに対向するエンドキャップ電極12、13により構成されている。リング電極11には高周波高電圧が印加され、一対のエンドキャップ電極12、13との間に形成される四重極電場によってイオン捕捉空間14を形成し、そこにイオンを捕捉する。エンドキャップ電極12、13にはそれぞれエンドキャップ電圧発生器15、16が接続されており、各分析ステップに応じた適当な電圧をエンドキャップ電極12、13に印加する。
【0018】
例えば、MALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)イオン源2で発生させたイオンをイオントラップ装置1へと導入するときは、入射するイオンの運動エネルギーを減衰させるように電圧が印加される。また、飛行時間分析器(TOF=Time Of Flight)3により質量分析を行う場合には、イオン捕捉空間14からイオンを加速して飛行時間分析器3へと放出するように電圧が印加される。更にまた、イオントラップ内でイオンの選別や解離を行わせる場合には、イオン捕捉空間14に、高周波高電圧により生成されたイオン捕捉用四重極電場に重畳して、イオンの選別や励起を行うための電場を生成するべく電圧が印加される。
【0019】
リング電極11に高周波高電圧を印加するためのリング電圧発生器4の一部として、リング電極11にはコイル42が接続されており、基本的には、このコイル42と、リング電極11とエンドキャップ電極12、13との間の静電容量(コンデンサ)とでLC共振回路を形成している。厳密に言うと、それら電極11、12、13間の静電容量のみならず、高周波高電圧の電圧モニタ回路(図示せず)や同調回路43、高電圧スイッチ46、47の容量、配線などの容量の総和とコイル42のインダクタンスとで共振周波数が決定される。
【0020】
共振回路の駆動方法には、トランスを用いたものなど各種の方法があるが、ここではコイル42の一端を直接的に高周波駆動源41で駆動する方法を採用している。高周波駆動源41で発生する駆動電圧の周波数は500kHzに固定されており、同調回路43を調整することによってLC共振回路の共振周波数を500kHz近傍に合わせ、共振による増幅を行って高周波高電圧を発生させる。本実施例では、同調回路43には真空可変コンデンサ(いわゆる真空バリコン)を使用し、その容量を変化させることにより同調を達成している。もちろん、これ以外にも、例えばフェライトコア等を用いてコイル42のインダクタンスを変化させることにより同調を達成する構成としてもよい。
【0021】
リング電極11には、更に高電圧スイッチ46、47を介して高電圧直流電源44、45が接続されている。これらはイオントラップ装置1へのイオン導入時の高周波高電圧の急速な立ち上げや、イオントラップ装置1からのイオンの放出時の高周波高電圧の急速な減衰などを行うために利用される。例えば、負極性の高周波高電圧を急速に立ち上げたい場合には、次のような手順で動作させる。
【0022】
まず負高電圧直流電源45に接続された高電圧スイッチ47を閉じ、リング電極11の電圧を負高電圧直流電源45の電圧と同じに設定する。その後すぐに高電圧スイッチ47を開く。共振回路はその後、共振周波数で発振を開始する。共振回路の発振を停止するときには、高電圧スイッチ46、47を共に閉じると同時に、高周波駆動源41の出力をゼロにする。正及び負の高電圧直流電源44、45の電圧の絶対値が同一であって、スイッチ46、47の内部抵抗が同一であるため、高周波高電圧はゼロになる。全てのイオンがイオントラップ装置1から排出された後に、両方のスイッチ46、47を開く。なお、詳しくは、特表2002−533881号公報の段落0011などに記載している。
【0023】
ここで高電圧スイッチ46、47には高速性が要求されるため、電力用MOSFET等を使用した半導体スイッチが利用される。こうした半導体スイッチに利用される半導体素子は、電圧が減少するとその容量が増加するという特性を有する。そのため、リング電極11の高周波高電圧の電圧値が変化する際、高電圧スイッチ46、47に掛かる電圧が変化すると、スイッチの容量も僅かながら変化する。通常、高電圧スイッチ46、47に掛かる電圧が減少したときの容量の増加の程度は、高電圧スイッチ46、47に掛かる電圧が増加したときの容量の減少の程度よりも大きい。そのため、リング電極11の高周波高電圧は正弦波波形で正負対称に変化するものの、平均すれば高電圧スイッチ46、47の容量は増加することになる。また、リング電極11に掛かる高周波高電圧の振幅を大きくするほど、高電圧スイッチ46、47の容量の増加も大きくなる。こうしたことから、共振回路の共振周波数が下がり、定められた共振条件からずれることになる。
【0024】
そこで、本実施例の質量分析装置では、測定に先立ってオペレータは以下のような手順で共振回路の同調回路43の調整を行うこととする。
(1)高周波高電圧の目標電圧を、低い電圧値に設定する。
(2)同調回路43の容量を増減し、(1)の目標電圧を達成しつつ高周波駆動源41の駆動電圧が最小になる条件を見つける。これが、共振回路の共振周波数が高周波駆動源41の周波数と一致し、共振回路が共振条件を満たしている状態である。図3(a)は、このときの共振回路の増幅率と周波数との関係を示す概念図である。高周波駆動源41の周波数f0と共振回路の共振周波数f1とが一致しており、共振回路の増幅率が最大になる。
(3)次いで、高周波高電圧の目標電圧を、使用する範囲の最大値に設定する。
(4)同調回路43の容量を増加させてゆく。容量の増加に伴って、共振周波数f1は図3(b)に示すように低下し、高周波駆動源41の周波数f0での増幅率は下がる。高周波高電圧は、フィードバック制御により、常に目標電圧となるように制御されている。このため、増幅率が下がった分だけ駆動電圧が増加することになる。そして、高周波駆動源41の駆動電圧が、使用可能範囲の最大の電圧値になるように調整する。このように共振条件をずらすことにより、上述したように、高周波高電圧を変化させたときの、高周波駆動源41の出力波形と高周波高電圧波形の位相差の変化を低減することができる。
【0025】
なお、上記のような同調回路43の調整は、必ずしも測定の度毎に行う必要はない。それは、一旦調整を行えば、保守や修理のための装置の分解作業や経時変化などに起因する大きな変動が生じない限り、定常的な共振条件が変化することは考えにくいからである。もちろん、オペレータが必要に応じて同調の再調整を行うことは何ら問題がない。
【0026】
上記のように同調回路43の容量を増加させることによって共振条件をずらした場合、高周波高電圧の増加に伴って高電圧スイッチ46、47の容量は増加するが、このとき共振回路の増幅率は下がるように作用するため、共振に不安定性を生じることはない。これに対し、共振条件からずらすために逆に同調回路43の容量を減少させてしまうと、図3(c)のような状態となる。その状態から高周波高電圧を大きくしたときに高電圧スイッチ46、47の容量が増加すると、共振周波数f1が下がって共振条件に近づき(図3(c)中の太線矢印の方向)、それによって共振回路の増幅率は増加する。そのため、駆動電圧が変わらなくても、高周波高電圧は更に大きくなる。すなわち、正帰還の作用により共振回路の共振が不安定になり、正常な動作が行えなくなるおそれがある。従って、同調回路43の容量を減少させるのではなく、容量を増加させることによって共振条件をずらすことが重要である。
【0027】
また、上述のように共振条件からずらすことによって高周波駆動源41の出力電圧は増加するが、これは共振回路のリアクタンスの増加によるもので、高周波駆動源41の消費電力は変化しない。なぜなら、共振条件に拘わらず、高周波高電圧の電位が等しければ高周波電流値も等しいため、等価抵抗が変化しない限り消費電力も等しいからである。
【0028】
なお、上記実施例のイオントラップ装置では、高周波高電圧を大きくしたときに共振周波数が低下するような回路構成であったが、高周波高電圧を大きくしたときに共振周波数が高くなるような別の回路構成においては、上記説明とは逆に、同調回路43の容量を減少させることによって、高周波駆動源41の駆動電圧が使用可能範囲の最大の電圧値になるように調整すればよい。
【0029】
更にまた、上記実施例は本発明の単に一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正したものも本発明に包含されることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例であるイオントラップ装置を用いた質量分析装置の全体構成図。
【図2】 本発明の原理を説明するためのLCR直列共振回路のモデルを示す図。
【図3】 共振回路の増幅率と周波数との関係を示す概念図。
【符号の説明】
1…イオントラップ装置
11…リング電極
12、13…エンドキャップ電極
14…イオン捕捉空間
15、16…エンドキャップ電圧発生器
2…MALDIイオン源
3…飛行時間分析器
4…リング電圧発生器
41…高周波駆動源
42…コイル
43…同調回路
44、45…高電圧直流電源
46、47…高電圧スイッチ
Claims (4)
- 高周波駆動源による駆動電圧を共振回路により増幅することで発生させた高周波電圧を、イオントラップを形成する複数の電極のうちの少なくとも1つに印加するイオントラップ装置において、
前記共振回路の共振周波数を調整するための同調手段を備え、その共振周波数が前記駆動電圧の周波数からずれるように前記同調手段を設定することを特徴とするイオントラップ装置。 - 前記高周波電圧の増加に伴って共振周波数が一方向に変化する場合には、その変化と同じ方向に共振周波数がずれるように前記同調手段を設定することを特徴とする請求項1に記載のイオントラップ装置。
- 高周波駆動源による駆動電圧を共振回路により増幅することで発生させた高周波電圧を、イオントラップを形成する複数の電極のうちの少なくとも1つに印加するイオントラップ装置であって、前記共振回路の共振周波数を調整するための同調手段を備えたイオントラップ装置の調整方法において、
前記共振周波数が前記駆動電圧の周波数からずれるように前記同調手段を調整することを特徴とするイオントラップ装置の調整方法。 - 前記高周波電圧の増加に伴って共振周波数が一方向に変化する場合には、その変化と同じ方向に共振周波数がずれるように前記同調手段を調整することを特徴とする請求項3に記載のイオントラップ装置の調整方法。
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