JP2005166369A - イオン蓄積装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 イオン蓄積装置から次段の分析器へとイオンを移送する際に、イオンの初期エネルギーの変化などによる分解能やピーク位置などの分析器性能の劣化を防ぐ。
【解決手段】 イオン捕捉空間14を囲う複数の電極11,12,13の少なくとも一つにイオン捕捉用の高周波電圧を発生するためのLC共振回路40が接続されており、更にLC共振回路40にはイオン捕捉空間14からイオンを放出する際に前記高周波電圧を停止するためのスイッチ46,47と抵抗48,49とが含まれているイオン蓄積装置10において、LC共振回路40のインダクタンスL、容量C及び抵抗値Rが、臨界制動条件又はそれに近い条件を満たすように設定されている。臨界制動条件とは、例えばコイルのリアクタンスをX=ω0L=(ω0C)-1で表した場合、R=X/2となる条件である。これにより、スイッチ46,47で高周波電圧を停止した後、高周波電圧は早期に減衰し、分解能やピーク位置などの分析器の性能の劣化を防ぐことができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、イオン蓄積装置に関する。より詳細には、イオントラップ質量分析装置や、イオントラップをイオン源として利用する飛行時間質量分析装置などに関する。
イオン蓄積装置には、四重極質量フィルターのように半径方向にはイオンを閉じ込めて軸方向にはイオンのドリフトを許容するものや、三次元四重極イオントラップのように一定の空間にイオンを保持し続けるものがある。これらのイオン蓄積装置は複数の電極を有しており、各電極に適当な高周波電圧を印加することにより、電極に囲まれた内部空間(イオン捕捉空間)に四重極電場を発生させてイオンを閉じ込める。捕捉されたイオンは、質量/電荷比に応じて運動状態が異なるため、これを利用することによってイオン種の選別や分解などの操作が行われる。
また、多重極電場を発生させて、より広いイオン捕捉空間を形成し、蓄積されるイオンの総数を増加させているものもある。例えば八重極ロッドの両端にイオン反射用の電極を取り付けたイオン蓄積装置などがある。
これらのイオン蓄積装置は、それ自体が質量分析装置として機能するものもあるが、他の分析装置へイオンを供給するための前処理の装置として使用される場合もある。例えば、四重極質量分析器においては、四重極質量フィルターの前段にプレフィルターを設置して、イオン源からのイオンの導入効率を高めることが行われている。また、タンデム型四重極質量分析器においては、複数の四重極質量フィルターを接続して、多段の質量分析を行っている。四重極イオントラップ質量分析装置においては、三次元四重極イオントラップの前段に、四重極や八重極ロッドのイオンガイドを配してイオン源からのイオン導入の効率を改善している。
一方、三次元四重極イオントラップを飛行時間型質量分析器の前段に配して多段の質量分析を行う装置が提案された(非特許文献1)。この装置では、四重極イオントラップで多段の質量分析を行った後に、高分解能の飛行時間型質量分析器を用いて質量スペクトルを形成することができる。
このように、イオントラップなどのイオン蓄積装置を飛行時間質量分析器などの他の分析器の前段に配してイオンの分析を逐次処理することで、新たな特徴を生かした装置が生み出されている。しかし、イオン蓄積装置から他の分析器にイオンを移送する際に、イオン蓄積装置の動作パラメータが、次段の分析器の性能に影響を及ぼすことがある。具体的には、イオン蓄積装置でイオンを捕捉するのに使用される高周波電圧により、次段の分析器に移送する際のイオンの初期エネルギーが変化してしまう。
四重極イオントラップと飛行時間型質量分析器を組み合わせた装置を例にとると、四重極イオントラップの高周波電圧によってイオンは常に運動を続けている。イオンを飛行時間型質量分析器へと放出する時には、イオントラップの各電極にイオン引き出しに適した電圧をそれぞれ印加して、イオンを飛行時間型質量分析器へ向けて加速する。
イオン捕捉用に高周波電圧を印加していた電極にもイオンの加速に適した電圧を印加する必要があるが、LC共振回路が接続されているために、一定の電圧に固定することが困難であり、イオンの加速エネルギーを変化させてしまう。イオン捕捉用の高周波電圧は、測定する質量域に応じて適宜変化させるものであるため、イオントラップの動作条件によって飛行時間型質量分析器へ入射するイオンの加速エネルギーが変動することになる。
特許文献1には、イオントラップからのイオンの放出に先立ち、高周波電圧を減少させる、すなわち高周波電圧を停止させる方法が記述されている。これを図1により説明する。高周波電圧が印加されるリング電極11にはコイル42が接続されており、電極間の容量や図示されていない同調回路や電圧検出回路などで発生するその他の容量と合わせた全体の容量(C)と、このコイル42等によるインダクタンス(L)とにより、LC共振回路を形成している。高周波電圧が印加されるリング電極11には、さらにスイッチ46,47と、そのそれぞれにバイアス電圧を与えるための高電圧電源44,45が接続されている。
リング電極11に発生させている高周波電圧を停止する際には、二つのスイッチ46,47を同時に接続(ON)状態にし、LC共振回路の容量(C)に蓄積された電荷を急速に放電する。放電後のリング電極11の電位は、高電圧電源44,45の電圧とスイッチ46,47の内部抵抗値とにより決定される。通常、両高電圧電源44,45の電圧、及び両スイッチ46,47の内部抵抗値はそれぞれ等しくなるように設定されているので、放電後のリング電極11の電位はグランド電位になる。したがって、この後にイオンを飛行時間型質量分析器(TOFMS)30へと放出すれば、イオントラップ10の動作条件、すなわち高周波電圧の大きさに依存せずにイオンを加速することができ、よって分解能などの飛行時間型質量分析器30の特性を劣化させることがない。
米国特許第6,483,244号公報 M. G. Qian and D. M. Lubman, Analytical Chemistry, vol.67, No.7, 1995, p.234A
上記先行例においては、スイッチ46,47の内部抵抗値については特に規定されていない。スイッチ46,47の内部抵抗値をそれぞれ2Rとし、LC共振回路の容量値をCとすると、放電の時定数はRCで表されることになる。したがって、従来、LC共振回路の容量(C)に蓄積された電荷を急速に放電するために、スイッチ手段の内部抵抗値(R)をできるだけ小さくして放電の時定数(RC)を短くする対策が取られていた。
抵抗値(R)が非常に小さければ、LC共振回路の容量(C)に蓄積された電荷は短時間で放電されて、リング電極11の電圧はグランド電圧になる。しかし、実際のスイッチ46,47は、MOSFETなどの半導体素子を用いて電流を制御しているため、瞬時に大量の電荷を通すことはできない。MOSFETなどの半導体素子には最大電流値が規定されており、ゲート電圧などを制御して電流値が最大値を超えないように制御されている。内部抵抗の抵抗値(R)が下がって、スイッチ46,47の両端にかかる電圧が内部抵抗に流れる電流による電圧降下に依存しなくなると、スイッチ46,47に一定の電流が流れるだけとなり、リング電極11から見た実効的な抵抗は無限大となる。したがって、スイッチ46,47が共に接続(ON)状態であるにもかかわらず、LC共振回路の容量(C)に蓄積された電荷はスイッチ46,47を通して放電されず、高周波電圧の振動が持続することになる。
また、抵抗値(R)がある程度の大きさを持つ場合、放電に要する時間も有限であり、その間にコイル42に電流が流れる。一度コイル42に流れ出した電流は、スイッチ46,47の内部抵抗で熱エネルギーに変換されて減衰するが、抵抗値(R)が小さい場合にはかえって減衰が遅くなる。このため、イオンを飛行時間分析器30に放出する際にリング電極11の電圧がグランド電圧からずれてしまう。さらに、そのずれの大きさはスイッチ46,47を接続(ON)状態に切り替える前の高周波電圧の大きさに依存するため、飛行時間分析器30の質量スペクトルにおいて、ピークがシフトしたり、分解能が劣化するなどの問題を生じる。
このように、イオン蓄積装置10でイオンを捕捉するのに使用される高周波電圧などの動作パラメータが、イオンをイオン蓄積装置10から次段の分析器30に移送する際に、イオンの初期エネルギーの変化などによって、分解能やピーク位置などの分析器30の性能に影響を及ぼすという問題が発生する。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その手段として、次のようなイオン蓄積装置を提供する。すなわち、イオン捕捉空間を囲う複数の電極の少なくとも一つに、イオン捕捉用の高周波電圧を発生するためのLC共振回路が接続されており、さらに、前記LC共振回路には、イオン捕捉空間からイオンを放出する際に前記高周波電圧を停止するためのスイッチ手段と抵抗手段とが含まれているイオン蓄積装置において、
LC共振回路のインダクタンスL、容量C及び前記抵抗手段の抵抗値Rが、臨界制動条件、またはそれに近い条件を満たすように設定されていることを特徴とする。
本発明においては、イオン蓄積装置のLC共振回路に、イオン捕捉空間からイオンを放出する際に前記高周波電圧を停止するためのスイッチ手段と抵抗手段とが含まれている。このLC共振回路のインダクタンスL、容量C及び実効抵抗値Rが、臨界制動条件、またはそれに近い条件を満たすように設定されているため、前記スイッチ手段により高周波電圧の停止を開始した後、高周波電圧は早期に減衰し、イオン蓄積装置からイオンを放出する際(又は、次段の分析器にイオンを移送する際)に、分解能やピーク位置などの分析器の性能の劣化を防ぐことができる。
イオン蓄積装置に接続されたLC共振回路は、例えば四重極イオントラップの場合、リング電極に接続されたコイルをLとし、リング電極に接続された全ての容量の総和をCとすれば、図2に示したLとCで近似的に表される。実際にはLC共振回路を励振するための高周波駆動源が接続されている。また、コイルや配線などで発生する数10Ω程度の抵抗成分によってLCR共振回路を形成しており、これによって求まるQ値によって高周波駆動源の出力電圧と、リング電極に発生する高周波電圧の大きさの比が決まる。しかし、これらは本発明の動作原理に影響を及ぼさないので、図2においては省略してある。
リング電極に接続されたスイッチ手段Sと抵抗手段Rは、図2に示されるように、LやCと並列に接続される。スイッチ手段Sは、電気的な接続/遮断を行い、電流をON/OFFする機能を有するものであれば、具体的にはリレーのような機械式のものでも、MOSFETやアナログスイッチなどの半導体素子を用いたもの、或いはその他の原理によるもののいずれでもかまわない。また、抵抗手段Rは、接続されている抵抗器だけではなく、半導体素子のON抵抗などの実際にスイッチに含まれる内部抵抗とによって合成される実効抵抗を表すものであり、実効抵抗値Rを持つものとする。
このような配線がなされた場合、スイッチ手段Sが遮断(OFF)状態の時には、LC共振回路の部分には初期条件として印加された高周波電圧Vが維持される。初期位相は任意なので、時刻tにおける高周波電圧Vを数式1のように表す。
[数式1]
V=V0cosω0t
ここで、ω0=(LC)-1/2はLC共振回路の共振(角)周波数を表し、V0はピーク電圧値を表す。
次に、時刻t0においてスイッチ手段Sを接続(ON)状態に切り替えると、以後はLCR並列共振回路が動作することになる。コイルのリアクタンスをX=ω0L=(ω0C)-1で表すことにすると、R>X/2となる条件において、高周波電圧Vは振動的に減衰し、減衰定数は1/(2RC)となる。したがって、Rが大きくなるにしたがって減衰に時間がかかることになる。
一方、R<X/2となる条件においては2種類の減衰定数が存在し、高周波電圧VはRが小さくなるにつれて減衰の早い成分と遅い成分に分かれる。スイッチ手段Sを接続(ON)状態に切り替える時に、高周波電圧Vがピーク値(+V0または-V0)である場合には、LC共振回路のエネルギーは容量Cに蓄えられており、スイッチ手段Sを接続(ON)することによって急速に放電される。逆に高周波電圧Vが0である場合には、LC共振回路のエネルギーはコイル電流としてインダクタンスLに蓄えられており、Rが小さい分だけエネルギーの損失は小さくなり、減衰に時間がかかることになる。
したがって原理的には、Rを小さくし、高周波電圧Vがピーク値(+V0または-V0)となるタイミングでスイッチ手段Sを接続(ON)状態に切り替えるのが最も早く高周波電圧を減少させることとなる。しかし、実際にスイッチ手段Sに流せる電流値には制限があり、Rを極端に小さくすることはできない。すると、たとえ高周波電圧Vがピーク値(+V0または-V0)となるタイミングでスイッチ手段Sを接続(ON)状態に切り替えても、容量Cが放電している間にコイル電流が励起され、この電流が減衰するのに逆に長い時間がかかることになる。またそのときの電圧波形は、スイッチ手段Sを接続(ON)状態に切り替える前の高周波電圧のピーク電圧V0に比例しているため、イオン蓄積装置の動作条件としてV0を変化させた場合には、イオン放出時の高周波電圧Vの値も変化し、後段の質量分析器の特性に影響を与えてしまう。
このため、励起されたコイル電流のエネルギーを早く減衰させるために、実効抵抗値をR=X/2に増やす。この時、減衰定数はω0となる。これが共振回路における臨界制動の条件であり、任意の初期条件において、最も早く電圧を減衰させる条件である。この条件を用いれば、スイッチ手段Sを接続(ON)状態に切り替えた後に、イオンが散逸してしまう前に高周波電圧を充分に早期に減衰することができ、その後にイオンの放出を行うことによって、イオン放出前のイオン蓄積装置の動作条件を変更しても、後段の質量分析器の特性に影響を与えないようにすることが可能となる。
ちなみに、t>t0での高周波電圧の波形は以下の数式2で表される。
[数式2]
V=V0(cosω0t00(t-t0)(sinω0t0+cosω0t0))exp(-ω0(t-t0))
数式上は、sinω0t0+cosω0t0=0として、時間(t-t0)に比例する項を小さくするのが高周波電圧の値を小さくするためには良いが、実際には、イオン放出におけるイオンの初期エネルギーがイオン蓄積装置内部でのイオンの運動状態に依存するため、t0を変化させて最適な条件を見つける必要がある。
以下、本発明の一実施例であるイオン蓄積装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図3は、イオントラップ10をイオン蓄積装置として用いた質量分析装置の要部の構成図である。イオントラップ10は、一つのリング電極11と二つの対向するエンドキャップ電極12,13により構成されている。リング電極11には高周波駆動回路41によって励起された高周波電圧が印加され、一対のエンドキャップ電極12,13との間に形成される四重極電場によってイオン捕捉空間14を形成し、そこにイオンを捕捉する。エンドキャップ電極12,13にはそれぞれエンドキャップ電圧発生器15,16が接続されており、各分析ステップに応じて適当な電圧をエンドキャップ電極12,13に印加する。
例えばMALDI(Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization)イオン源20で発生させたイオンをイオントラップ10へ導入する時には、入射するイオンのエネルギーを減衰させるための電圧がエンドキャップ電極12,13に印加される。また、飛行時間質量分析器30(TOFMS, Time Of Flight Mass Spectrometer)により質量分析を行う場合には、イオン捕捉空間14からイオンを加速して飛行時間分析器30へと放出するようにエンドキャップ電極12,13に電圧が印加される。さらにまた、イオントラップ10内部でイオンの選別や解離を行わせる場合には、イオン捕捉空間14に、高周波電圧により生成されたイオン捕捉用四重極電場に重畳して、イオンの選別や励起に用いるための電場を生成するべくエンドキャップ電極12,13に所定の電圧が印加される。
リング電極11に高周波電圧を印加するためのリング電圧発生器40の一部として、リング電極11にはコイル42が接続されており、基本的にはこのコイル42と、リング電極11とエンドキャップ電極12,13との間の静電容量とで、LC共振器を形成している。厳密にいうと、それら電極11,12,13間の静電容量のみならず、高周波電圧の電圧モニタ回路(図示せず)や同調回路43、スイッチ46,47の容量、配線などの容量の総和とコイル42のインダクタンスとで共振周波数が決定される。
LC共振器の駆動方法にはトランスを用いたものなど、各種の方式が存在するが、ここではコイル42の一端を直接高周波駆動源41で駆動する方法を採用している。高周波駆動源41の駆動電圧の周波数は500kHzに固定されており、同調回路43を調整することにより、LC共振器の共振周波数を500kHz近傍に合わせ、共振による増幅を行って高周波電圧を発生させる。本実施例では、同調回路43には真空可変コンデンサを使用し、その容量を変化させることにより同調を達成している。もちろん、これ以外にも、例えばフェライトコア等を用いてコイル42のインダクタンスを変化させることにより同調を達成する構成としてもよい。
リング電極11には、さらにスイッチ46,47と抵抗48,49を介して高電圧電源44,45が図3のように接続されている。これらは、イオントラップ10へのイオン導入時の高周波電圧の立ち上げや、イオントラップ10からのイオン放出時の高周波電圧の停止に利用されている。ただし、イオン放出時に高周波電圧を停止しようとしても、実際には高周波電圧は瞬時に停止することはなく、所定の時定数で指数関数的に減衰してゆく。
ここで、イオン放出時に高周波電圧を急速に減衰させる手順を説明する。分析の過程において、イオンがイオン捕捉空間14に導入され、イオンの選別や励起、解離などの必要な処理を行った後に、イオンの放出を行う。このとき、リング電極11には、分析対象とするイオンの質量範囲に応じて、適当な大きさの高周波電圧が印加されている。そこで、スイッチ46,47を同時に接続(ON)状態に切り替えると同時に、高周波駆動源41の出力を0にする。この操作により、リング電極11は抵抗48,49を介して高電圧電源44,45に接続される。スイッチ46,47の切り替え以前に印加されていた高周波電圧は、数式2に示したように指数関数的に減衰する。次に、高周波電圧が充分に減衰したタイミングにおいて、エンドキャップ電圧発生器15,16から、エンドキャップ電極12,13に、イオン引出し用の高電圧を印加し、エンドキャップ電極13の開口部13aから質量分析器30へとイオンを加速して引き出す。本実施例では、スイッチ46,47の切り替えからおよそ3μs後に、エンドキャップに高電圧を印加してイオンの引出しを行っている。制御部50は上記のような各種の分析を実行するために、リング電圧発生器40やエンドキャップ電圧発生器15,16の動作を制御する。
本実施例においては、スイッチ46,47として、高速性の要求から半導体スイッチが使用されている。より具体的には、複数のMOSFETを直列に接続しており、これらを同時に接続/遮断(ON/OFF)することにより、所望の耐電圧を得ると同時に一個のスイッチとして機能するようにしている。また、MOSFETと直列に複数の抵抗器を接続しており、MOSFETのON抵抗とこれらの抵抗器の総和とで抵抗48,49を実現している。この回路は、見かけ上は図2と異なるが、抵抗48,49の実効抵抗値や高電圧電源44,45の電圧値を適当に選ぶことにより、直流的にはリング電極11の電位を図中の逆三角形で示したグランド電位にすることができ、さらに交流的には抵抗手段による減衰効果を得ることができるため、本質的には図2と等価である。
本実施例においては、コイル42のインダクタンスはおよそ1mHであり、同調回路43で容量Cの値を100pF前後の値に調整することによって、500kHzの高周波駆動源41の出力を増幅して所望の高周波電圧を達成できるように調整されている。500kHzにおけるコイル42のリアクタンスはおよそX=3.14kΩである。したがって、臨界制動の条件を満たすには、抵抗の実効抵抗値をR=X/2=1.57kΩとする。図3の実施例においては二つの抵抗48,49が並列に接続されているため、それぞれの抵抗の実効抵抗値が約3.14kΩになるように調整されている。但し、この抵抗値は直列に接続されている全てのMOSFETのON抵抗値を含んだ値であるので、抵抗器として取り付けられている部分の抵抗値はこの値よりも小さくなっている。
上記の一実施例においては、二つのスイッチと二つの抵抗手段により機能を実現していたが、図4に示すもう一つの実施例のように、一つのスイッチ51と一つの抵抗52を接続しても同等の機能を実現できることは明白である。また、この図においてスイッチ51と抵抗52は、先の説明の通り、電流の切り替えと、ジュール熱により抵抗手段でエネルギーを消費する機能だけを象徴的に示したものであるので、実施のスイッチング素子や抵抗器の配置の順序は、回路が臨界制動の条件を満たす範囲で入れ替わっていても差し支えない。
図5は、本発明に係るさらにもう一つの実施例である、イオントラップ10をイオン蓄積装置として用いた質量分析装置の構成図である。コイル42と直列に抵抗54が挿入されている。また、スイッチ53は、抵抗54と並列に接続されている。この実施例においては、先の実施例の場合とは反対に、イオントラップ10にイオンを蓄積して、イオンの選別や励起などの分析操作を行っている間には、スイッチ53を接続(ON)状態にしている。高周波電圧を急速に減衰させる時には、スイッチ53を遮断(OFF)状態に切り替えて、コイル42に流れる電流を抵抗54に流すようにする。この場合には、臨界制動の条件は、抵抗54の実効抵抗値をRとすると、
R=2X=2ω0L=6.28kΩ
となる。この場合も、スイッチ53を切り替えた後の高周波電圧の波形は、数式2と同様に、減衰定数ω0の減衰波形となる。
上記実施例や説明においては、説明のために回路内の一部をグランドに接続していたが、イオン蓄積装置内部の四重極電場の発生と、スイッチ手段を切り替えることによって高周波電圧を減衰させることができるかぎり、回路内のどの部分がグランドに接続されていても、あるいは、グランド電位に固定されていなくてもかまわない。
また、上記実施例においては、高周波駆動源41が直接コイル42に接続されていたが、コイルの駆動方法は、例えばトランス結合によるものでもかまわない。その場合、スイッチ手段や抵抗手段は、臨界制動の条件を満たす回路構成であれば、トランスの1次側と2次側のどちらに接続されていてもかまわない。
また、上記実施例においては抵抗手段の実効抵抗値を臨界制動の条件に設定していたが、この条件に厳密に一致していなくても、その近傍の抵抗値を有していれば、ほぼ同様の減衰定数を実現することができる。したがって、スイッチ手段の切り替え動作時からイオンを引き出すためにエンドキャップ電圧に高電圧を印加するまでの時間において、イオン捕捉空間の内部のイオンが散逸してしまう前に、充分に高周波電圧を減衰させることが可能である。よって、上記性能を満足するかぎりにおいて、抵抗手段の実効抵抗値は臨界制動の条件から多少ずれていてもかまわない。
従来方法による、イオントラップをイオン蓄積装置として用いた質量分析装置の要部の構成図。 本発明の動作原理を説明するために、装置の構成要素を単純な機能要素に簡略表示した回路の構成図。 本発明の第1の実施例である、イオントラップをイオン蓄積装置として用いた質量分析装置の要部の構成図。 本発明の第2の実施例である、イオントラップをイオン蓄積装置として用いた質量分析装置の要部の構成図。 本発明の第3の実施例である、イオントラップをイオン蓄積装置として用いた質量分析装置の要部の構成図。
符号の説明
10…イオントラップ
11…リング電極
12、13…エンドキャップ電極
13a…開口部
14…イオン捕捉空間
15、16…エンドキャップ電圧発生器
20…イオン源
30…飛行時間質量分析器
40…リング電圧発生器
41…高周波駆動源
42…コイル
43…同調回路
44,45…高電圧電源
46,47…スイッチ
48,49…抵抗
50…制御部
51…スイッチ
52…抵抗
53…スイッチ
54…抵抗

Claims (5)

  1. イオン捕捉空間を囲う複数の電極の少なくとも一つに、イオン捕捉用の高周波電圧を発生するためのLC共振回路が接続されており、さらに、前記LC共振回路には、イオン捕捉空間からイオンを放出する際に前記高周波電圧を停止するためのスイッチ手段と抵抗手段とが含まれているイオン蓄積装置において、
    LC共振回路のインダクタンスL、容量C及び実効抵抗値Rが、臨界制動条件、またはそれに近い条件を満たすように設定されていることを特徴とするイオン蓄積装置。
  2. 請求項1に記載のイオン蓄積装置において、
    前記スイッチ手段が、リレー或いは半導体素子、またはその組み合わせによって実現されていることを特徴とするイオン蓄積装置。
  3. 請求項2に記載のイオン蓄積装置において、
    LC共振回路の抵抗手段の実効抵抗値Rが、前記リレー或いは前記半導体素子、またはその組み合わせの内部抵抗とその他の抵抗器との組み合わせによって実現されていることを特徴とするイオン蓄積装置。
  4. 請求項1に記載のイオン蓄積装置において、
    前記高周波電圧を停止するために前記スイッチ手段を切り替えた際に、前記LC共振回路と前記抵抗手段とがLCR並列共振回路を形成し、さらに前記抵抗手段の実効抵抗値Rが前記LC共振回路のインダクタンスLまたは容量Cのリアクタンスの半分の値となるように調整されていることを特徴とするイオン蓄積装置。
  5. 請求項1に記載のイオン蓄積装置において、
    前記高周波電圧を停止するために前記スイッチ手段を切り替えた際に、前記LC共振回路と前記抵抗手段とがLCR直列共振回路を形成し、さらに前記抵抗手段の実効抵抗値Rが前記LC共振回路のインダクタンスLまたは容量Cのリアクタンスの2倍の値となるように調整されていることを特徴とするイオン蓄積装置。
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