JP3740884B2 - 亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物及び有機被覆鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板に対して加工性及び耐食性に優れた皮膜を形成できる被覆用組成物と、この組成物による皮膜を形成した有機被覆鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、防錆被覆鋼板には優れた耐食性が要求され、従来の冷延鋼板に代えて亜鉛系めっき鋼板などのめっき鋼板を基板とする表面処理鋼板が多く使用されている。
従来、亜鉛系めっき鋼板などのめっき鋼板の表面処理としてはクロム酸塩処理やリン酸亜鉛処理が一般に行われているが、近年ではこれらの表面処理におけるクロムの毒性が問題になっている。
【0003】
クロム酸塩処理では、処理工程でのクロム酸塩ヒュームの揮散の問題、排水処理設備に多大の費用を要すること、さらには化成処理皮膜からのクロム酸の溶出の問題などがある。また、6価クロム化合物は、IARC(International Agency for Research on Cancer Review)を初めとして多くの公的機関が人体に対する発癌性物質に指定しているように極めて有害な物質である。
【0004】
また、リン酸亜鉛処理では、通常、リン酸亜鉛処理後にクロム酸によるリンス処理を行うためクロム処理の問題があるとともに、リン酸亜鉛処理剤中の反応促進剤や金属イオンなどの排水処理、被処理金属からの金属イオンの溶出によるスラッジ処理などの問題がある。
【0005】
従来、クロム酸塩処理やリン酸亜鉛処理以外の表面処理法としては、(1)重燐酸アルミニウムを含有する水溶液で処理した後、150〜550℃の温度で加熱する表面処理方法(特公昭53−28857号公報)、(2)タンニン酸を含有する水溶液で処理する方法(特開昭51−71233号公報)などが知られており、また、(3)亜硝酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、イミダゾール、芳香族カルボン酸、界面活性剤などによる処理方法若しくはこれらを組合せた処理方法も行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記(1)の処理方法は、処理面に対して塗料を塗装した場合に塗膜の密着性が十分でなく、また、上記(2)の処理方法は耐食性が劣り、上記(3)の処理方法はいずれも高温多湿の雰囲気に暴露された場合の耐食性が劣るという問題がある。
【0007】
また、膜厚数μm以下の薄膜の皮膜を有する防錆鋼板として、特開昭58−224174号公報、特開昭60−50179号公報、特開昭60−50180号公報などに、亜鉛系めっき鋼板を基材とし、これにクロメート皮膜を形成し、さらにその上層に有機複合シリケート皮膜を形成した防錆鋼板が知られており、この防錆鋼板は加工性及び耐食性に優れた性能を有する。しかし、この防錆鋼板はクロメート皮膜を有するため、上述したようなクロムによる問題がある。また、この防錆鋼板からクロメート皮膜を除いた鋼板では十分な耐食性は得られない。
【0008】
したがって本発明の目的は、亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物であって、クロメート皮膜がなくても優れた耐食性を示し、且つ加工性及び塗料密着性にも優れた防錆鋼板を得ることができる被覆用組成物と、この被覆用組成物による皮膜を形成した有機被覆鋼板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の耐食性向上剤が結合された有機樹脂とエッチング剤となる酸とを含有する被覆用組成物によって上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の特徴とする構成は以下の通りである。
[1]有機樹脂にヒドラジン誘導体(但し、複素環構造のものを含む)が結合された皮膜形成性有機樹脂(A)と亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)とを含有する組成物であって、
前記皮膜形成性有機樹脂(A)が、エポキシ基含有樹脂(a)とヒドラジン誘導体を含有する活性水素含有剤(b)との反応生成物であり、
前記酸(B)が、弗化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、弗化硼素酸、弗化チタン酸、珪弗化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸の中から選ばれる1種又は2種以上からなり、且つその配合量が皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して0.1〜5重量部であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
【0010】
[2]上記[1]の被覆用組成物において、活性水素含有剤(b)中のヒドラジン誘導体が、活性水素を有するピラゾール化合物及び活性水素を有するトリアゾール化合物の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の被覆用組成物において、活性水素含有剤(b)中のヒドラジン誘導体の割合が10〜100モル%であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの被覆用組成物において、エポキシ基含有樹脂(a)が、下記式(1)で表わされるエポキシ樹脂であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
【化2】
【0012】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの被覆用組成物において、亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)が、弗化水素酸であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの被覆用組成物において、皮膜形成性有機樹脂(A)が、エポキシ基含有樹脂(a)とヒドラジン誘導体を含有する活性水素含有剤(b)とを50〜150℃で1〜8時間反応させて得られる反応生成物であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
[7]上記[1]〜[6]のいずれかの被覆用組成物において、硬化剤を含有することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
【0013】
[8]亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の被覆用組成物からなる付着量が0.1〜15g/m2の皮膜が形成されたことを特徴とする有機被覆鋼板。
[9]上記[8]の有機被覆鋼板において、皮膜付着量が0.2〜5g/m2であることを特徴とする有機被覆鋼板。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の組成物は、亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板を被覆するための組成物であって、特定の皮膜形成性有機樹脂(A)と亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)とを必須成分として含有するめっき鋼板被覆用組成物である。
本発明の被覆用組成物において、皮膜形成性有機樹脂(A)は、有機樹脂にヒドラジン誘導体が結合された皮膜形成能を有する有機樹脂である。
【0015】
有機樹脂中へのヒドラジン誘導体の導入方法は特に限定されるものではなく、種々の方法を採ることができ、例えば、ヒドラジン誘導体中の官能基に対して反応性を有する基を有機樹脂に持たせて両者を反応させ、有機樹脂中にヒドラジン誘導体を導入する方法、ヒドラジン誘導体中の官能基(例えば、水酸基)と有機樹脂中の官能基(例えば、水酸基)の両者に対して反応性を有する基(例えば、イソシアネート基)を複数個有する第3の化合物を介して両者を結合させ、有機樹脂中にヒドラジン誘導体を導入する方法などを挙げることができる。
【0016】
また、皮膜形成性有機樹脂(A)としては、エポキシ基含有樹脂(a)とヒドラジン誘導体を含有する活性水素含有剤(b)(以下、単に“活性水素含有剤(b)”という)との反応生成物が特に好適である。
前記エポキシ基含有樹脂(a)としては、エポキシ基を含有する樹脂であれば特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル系共重合体樹脂、エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂、及びこれらの樹脂の付加物又は縮合物が挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0017】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、若しくはこのグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂;さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性を必要とする場合には数平均分子量が1500以上、好ましくは3000〜6000であることが適当である。
【0018】
また、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピハロヒドリンとの反応生成物である下記式(1)で表わされるビスフェノールA型エポキシ樹脂が耐食性に優れていることから特に好適である。
【化3】
なお、上記化学構造式において、qは好ましくは1〜40、特に好ましくは2〜20の整数である。
このようなビスフェノールA型エポキシ樹脂は、公知の方法によって製造されたものでよい。
【0019】
前記変性エポキシ樹脂としては、前記エポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤を反応させた樹脂を挙げることができる。例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分で変性したエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0020】
前記エポキシ基含有アクリル系共重合体樹脂としては、エポキシ基を有する重合性不飽和モノマーを必須成分とし、且つアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを含有する重合性不飽和モノマー成分を、溶液重合法、エマルション重合法又は懸濁重合法などによって重合してなる樹脂を挙げることができる。
前記エポキシ基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。なお、上記をはじめとして本明細書において、「……(メタ)アクリレート」とは、「……アクリレート」又は「……メタクリレート」を意味するものとする。
【0021】
前記エポキシ基を有する重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマー成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−,iso−若しくはtert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸又はメタクリル酸のC1〜24アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、ビニルトルエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのC1〜C4アルキルエーテル化物、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0022】
また、アクリル系共重合体樹脂は、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などによって変性させた樹脂とすることもできる。
前記エポキシ基含有ポリブタジエン樹脂としては、例えば、ポリブタジエン樹脂中の重合性二重結合を酸化してエポキシ基に変化させた樹脂を挙げることができる。
【0023】
エポキシ基含有樹脂(a)としては、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂が耐食性などの点から好適であり、そのなかでも特にビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を変性した変性エポキシ樹脂が好適である。また、エポキシ基含有樹脂(a)は、エポキシ当量が400〜4000、好ましくは1000〜2000の範囲内にあることが、活性水素含有剤(b)との反応性などの点から適している。
【0024】
前記活性水素含有剤(b)は、ヒドラジン誘導体を必須成分として含有し、且つ活性水素を有する化合物又はこの化合物と他の化合物との混合物であり、上記エポキシ基含有樹脂(a)のエポキシ基と反応して皮膜形成性有機樹脂(A)を生成することができる。
この活性水素含有剤(b)は、活性水素を有するヒドラジン誘導体からなっていてもよく、また、活性水素を有するヒドラジン誘導体とその他の活性水素含有化合物との混合物であってもよい。
【0025】
前記活性水素を有するヒドラジン誘導体の具体例としては、例えば、カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドテカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジド化合物;ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなどのピラゾール化合物;1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなどのトリアゾール化合物;5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなどのテトラゾール化合物;5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなどのチアジアゾール化合物;マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなどのピリダジン化合物などを挙げることができる。また、これらのなかでも5員環又は6員環の環状構造を有し、この環状構造中に窒素原子を有する化合物が好ましく、特にピラゾール化合物、トリアゾール化合物、チアジアゾール化合物が好適である。これらのヒドラジン誘導体は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
活性水素含有剤(b)が、活性水素を有するヒドラジン誘導体とその他の活性水素含有化合物との混合物である場合における、その他の活性水素含有化合物の代表例としては、第1級又は第2級のアミン化合物、アンモニア、有機酸、塩化水素などのハロゲン化水素、アルコール類、チオール類、第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤などを挙げることができる。
【0027】
前記その他の活性水素含有化合物として使用できる第1級又は第2級のアミン化合物の代表例としては次のものを挙げることができる。
(1) ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどの1個の2級アミノ基と1個以上の1級アミノ基を含有するアミン化合物の1級アミノ基を、ケトン、アルデヒド若しくはカルボン酸と例えば100〜230℃程度の温度で加熱反応させてアルジミン、ケチミン、オキサゾリン若しくはイミダゾリンに変性した化合物;
【0028】
(2) ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジn−プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;
(3) モノエタノールアミンなどのようなモノアルカノールアミンとジアルキル(メタ)アクリルアミドとをミカエル付加反応により付加させて得られる第2級アミン含有化合物;
(4) モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノール、2−ヒドロキシ−2´(アミノプロポキシ)エチルエーテルなどのアルカノールアミンの1級アミノ基をケチミンに変性した化合物
【0029】
前記その他の活性水素含有化合物として使用できる有機酸の代表例としては、例えば、蟻酸、酢酸、トリクロロ酢酸、乳酸、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。
前記その他の活性水素含有化合物として使用できるアルコール類、チオール類の代表例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコールなどのアルコール類;メタンチオール、エタンチオール、n−プロパンチオール、ドデカンチオールなどのチオール類を挙げることができる。
【0030】
前記その他の活性水素含有化合物として使用できる、第3級アミンと酸との混合物である4級塩化剤において、第3級アミンは、それ自体ではエポキシ基と反応性を有しないが、酸との混合物とすることによって、エポキシ基と反応可能としたものである。4級塩化剤は、必要に応じて水の存在下でエポキシ基と反応し、エポキシ基含有樹脂と4級塩を形成する。4級塩化剤における酸としては、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれであってもよい。4級塩化剤における第3級アミンとしては、例えば、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミンなどの第3級アミンなどを挙げることができる。
【0031】
さらに、活性水素含有剤(b)は活性水素を有さないヒドラジン誘導体と酸との混合物であってもよく、このものはエポキシ基含有樹脂と4級塩を形成することができる。この混合物中の酸としては、酢酸、乳酸などの有機酸、塩酸などの無機酸のいずれであってもよい。活性水素を有さないヒドラジン誘導体としては、例えば、3,6−ジクロロピリダジンなどを挙げることができる。
【0032】
本発明において、活性水素含有剤(b)中におけるヒドラジン誘導体の割合は、得られる皮膜形成性有機樹脂(A)の防錆性などの点から10〜100モル%、好ましくは30〜100モル%とすることが好適である。
前記エポキシ基含有樹脂(a)と前記活性水素含有剤(b)とを、必要に応じて有機溶剤の存在下にて、50〜150℃で約1〜8時間程度反応させることによって、皮膜形成性有機樹脂(A)を得ることができる。
【0033】
前記必要に応じて配合できる有機溶剤に特に制限はなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などの種々の溶剤を使用することができるが、エポキシ基含有樹脂(a)の溶解性、皮膜形成性などの点からケトン系又はエーテル系の溶剤が特に好ましい。
【0034】
前記反応におけるエポキシ基含有樹脂(a)と活性水素含有剤(b)との配合割合は、エポキシ基含有樹脂(a)中のエポキシ基と活性水素含有剤(b)中の活性水素とが、[活性水素/エポキシ基]のモル比で0.01〜10、好ましくは0.1〜8、さらに好ましくは0.2〜4の範囲内にあることが耐食性、コストの点などから好適である。
なお、エポキシ基に対して活性水素が過剰な場合には、未反応の活性水素含有剤(b)中のヒドラジン誘導体が残存するが、このヒドラジン誘導体も耐食性の向上に寄与する。
【0035】
皮膜形成性有機樹脂(A)は、有機溶剤溶解型、有機溶剤分散型、水溶解型、水分散型のいずれであってもよい。皮膜形成性有機樹脂(A)が水溶解型又は水分散型である場合には、得られる被覆用組成物の安定性の点から、樹脂中にアミノ基、4級アンモニウム塩基などのカチオン性基を有するものであって、このカチオン性基を中和して水性化できるカチオン型樹脂;水酸基、ポリオキシエチレン基、アミド基、メチロール基などのノニオン性の親水基を有し、この親水基の働きによって水性化できるノニオン型樹脂;界面活性剤の働きによって水中に安定に分散されたエマルション樹脂などが好適に使用される。
【0036】
前記亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)としては、本発明の被覆用組成物中で安定であって、且つめっき皮膜を構成する亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸であればよく、具体的に、弗化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、弗化硼素酸、弗化チタン酸、珪弗化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸を挙げることができ、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。また、これらのなかでもエッチング効果による耐食性の向上の観点から弗化水素酸が特に好適である。
【0037】
亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)は、本発明の被覆用組成物が亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に塗布されたときに、めっき皮膜表面の亜鉛又はアルミニウムを溶解し、この溶解によって発生する亜鉛イオン又はアルミニウムイオンが、前記ヒドラジン誘導体が結合された皮膜形成性有機樹脂(A)とともに、めっき表面に耐食性に優れた強固な皮膜を形成させるものと考えられる。
【0038】
本発明の被覆用組成物における亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)の配合量は、皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部とするのがエッチング効果による耐食性の向上及び塗料安定性の向上の観点から適当である。
【0039】
本発明の被覆用組成物は、前記皮膜形成性有機樹脂(A)及び亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)を必須成分として含有するとともに、通常、有機溶剤及び/又は水からなる溶媒を含有し、さらに必要に応じてヒドラジン誘導体、硬化剤、中和剤、酸化剤、潤滑性付与剤、顔料類などを適宜含有することができる。
本発明の被覆用組成物中に必要に応じて配合される前記有機溶剤としては、前記成分(A)、(B)及びその他の成分を溶解又は分散できる、塗料用に使用できる溶剤であれば特に制限はない。
【0040】
また、前記ヒドラジン誘導体としては、前記活性水素含有剤(b)中に含まれるヒドラジン誘導体と同様のものを使用することができる。また、このヒドラジン誘導体は、前記エポキシ基含有樹脂(a)と活性水素含有剤(b)とを反応させて皮膜形成性有機樹脂(A)を得る際に、場合によって残存する未反応のヒドラジン誘導体であってもよいし、別途添加したものであってもよい。
被覆用組成物中に含まれるヒドラジン誘導体は耐食性向上に寄与する。ヒドラジン誘導体の配合量は、皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して10重量部以下、好ましくは5重量部以下であることが適当である。ヒドラジン誘導体を皮膜形成性有機樹脂100重量部に対して10重量部を超えて使用しても、さらなる耐食性の向上はほとんどなく、却って皮膜強度が低下してしまう。
【0041】
前記硬化剤としては、アミノ樹脂硬化剤、ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
前記アミノ樹脂硬化剤としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミンなどのアミノ化合物とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。前記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどが挙げられる。また、前記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものもアミノ樹脂硬化剤として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0042】
前記ポリイソシアネート化合物は、ブロック化していないもの或いはブロック化しているもののいずれでもよい。ブロック化していないポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネート類などの有機ジイソシアネート、またはこれら各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂若しくは水などとの付加物、前記の各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、イソシアネート・ビウレット体などが挙げられる。
【0043】
ブロック化したポリイソシアネート化合物は、前記ブロック化していないポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化した化合物である。イソシアネート基をブロックするブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系ブロック化剤;ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタムなどのラクタム系ブロック化剤;メタノール、エタノール、n−又はi−プロピルアルコール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系ブロック化剤;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム系ブロック化剤;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系ブロック化剤などのブロック化剤を好適に使用することができる。
【0044】
前記ブロック化していないポリイソシアネート化合物と前記ブロック化剤とを混合することによって、前記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基を容易にブロックすることができる。
上述した硬化剤は、それらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。硬化剤の配合量は特に限定されないが、通常、皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して65重量部以下、好ましくは5〜45重量部とすることが硬化性及び耐食性の観点から適当である。
硬化剤を配合することによって、本発明の被覆用組成物を熱硬化性とすることができ、得られる皮膜の強度、耐アルカリ性などを向上させることができる。
【0045】
前記中和剤は、皮膜形成性有機樹脂(A)を中和して水性化するために必要に応じて配合されるものであり、皮膜形成性有機樹脂(A)がカチオン性樹脂である場合には酢酸、乳酸、蟻酸などの酸を中和剤として使用することができる。
前記酸化剤は、亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)の作用を助ける働きを有するものであり、例えば、過酸化水素、過硼酸塩、過マンガン酸塩、亜硝酸塩、硝酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩などを挙げることができる。また、これらのなかでも耐食性の点から過酸化水素が特に好適である。
【0046】
前記潤滑性付与剤は、形成された皮膜に潤滑性を付与するために必要に応じて配合されるものであり、例えば、ポリエチレンワックスなどのポリオレフィンワックス;ラノリン、蜜ろうなどの動物系ワックス;カルナウバワックス、水ろうなどの植物系ワックス;脂肪酸エステルワックス、マイクロクリスタリンワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックスなどを挙げることができる。また、これらのなかでも平均粒子径が0.1〜10μmのポリエチレンワックスが特に好適であり、このポリエチレンワックスはカルボキシル基を導入することなどによって変性したものであってもよい。
【0047】
潤滑性付与剤を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、通常、皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して30重量部以下、好ましくは1〜25重量部とすることが適当である。潤滑性付与剤の配合量が皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して30重量部を超えると皮膜強度が低下し易くなる。潤滑性付与剤を配合することによって、本発明の被覆用組成物を潤滑防錆鋼板用途に使用することもできる。
【0048】
前記顔料類としては、例えば、タルク、クレー、硫酸バリウム、シリカなどの体質顔料;トリポリリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、塩基性珪酸鉛、縮合リン酸塩、モリブデン酸塩、ジシアナミド亜鉛、ジシアナミド鉛、イオン交換シリカ、クロム酸ストロンチウム、クロム酸カルシウム、クロム酸亜鉛、クロム酸バリウムなどの防錆顔料;チタン白、チタン黄、ベンガラ、シアニンブルー、シアニングリーン、有機赤色顔料、有機黄色顔料などの着色顔料を配合することができる。
【0049】
次に、本発明の被覆用組成物が適用されるめっき鋼板及び本発明の有機被覆鋼板について説明する。
本発明の被覆用組成物が適用される亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウムめっき鋼板としては、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、鉄−亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板(例えば、5%Al−Zn合金めっき鋼板、55%Al−Zn合金めっき鋼板に代表されるめっき鋼板)、アルミニウム合金めっき鋼板などを挙げることができる。
【0050】
本発明の有機被覆鋼板は、上述した被覆用組成物を亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に塗布し、乾燥させて皮膜を形成させたものである。
めっき鋼板面の皮膜付着量は、耐食性及び加工性の点から0.1〜15g/m2、好ましくは0.5〜5g/m2、さらに好ましくは0.5〜3g/m2とすることが適当である。
【0051】
被覆用組成物をめっき鋼板面に塗布して皮膜を形成する場合、通常、塗布量に応じて被覆用組成物の粘度を溶媒により例えば5〜100mpa・s程度の範囲内に調整し、これをロールコータ塗装、スプレー塗装、ハケ塗り塗装、液塗布後に余剰の液を絞りによって除去する絞り塗装などの塗布方法によって塗布し、加熱・乾燥させることによって皮膜を形成する。加熱・乾燥条件は、皮膜が乾燥できる条件であれば特に限定されないが、シート状の鋼板を連続的に乾燥させる場合には、通常、雰囲気温度100〜330℃(鋼板の最高到達温度では80〜240℃程度)で10〜100秒間程度加熱することが好適である。
【0052】
本発明の有機被覆鋼板は、耐食性、耐指紋性などに優れ、そのまま防錆鋼板、潤滑防錆鋼板として使用することもできるが、この表面にさらに上層塗膜を形成させることもできる。この上層塗膜を形成するための組成物は目的に応じて適宜選定すればよく、種々の塗料組成物を使用することができる。この塗料組成物としては、例えば、プライマー塗料、着色上塗り塗料などを挙げることができる。また、プライマー塗料を塗装し、さらにその上に着色上塗り塗料を塗装してもよい。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、以下の説明において、「部」及び「%」はそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
(イ)皮膜形成性有機樹脂の製造
・製造例No.1
エピコート828(油化シェルエポキシ社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:187):1870部、ビスフェノールA:912部、テトラエチレンアンモニウムブロマイド:2部及びメチルイソブチルケトン:300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して同温度で4時間反応させ、エポキシ当量:1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル:1500部を加えてから100℃に冷却し、3,5−ジメチルピラゾール(分子量:96):96部及びジn−ブチルアミン(分子量:129):129部を加え、100℃にてエポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン:205部を加えて固形分60%のピラゾール化合物変性エポキシ樹脂溶液を得た。これを製造例No.1のエポキシ樹脂溶液とする。
【0054】
・製造例No.2
エピコート1007(油化シェルエポキシ社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:2000):4000部とエチレングリコールモノブチルエーテル:2239部とを四つ口フラスコに仕込み、120℃まで昇温し、同温度で1時間保持してエポキシ樹脂を溶解させた。次いで、このエポキシ樹脂溶液を100℃に冷却し、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール(分子量:84):168部を加え、100℃にてエポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン:540部を加えて固形分60%のトリアゾール化合物変性エポキシ樹脂溶液を得た。これを製造例No.2のエポキシ樹脂溶液とする。
【0055】
・製造例No.3
イソホロンジイソシアネート(イソシアネート当量:111):222部とメチルイソブチルケトン:34部とを四つ口フラスコに仕込み、30〜40℃に保持しながらメチルエチルケトキシム(分子量:87):87部を3時間かけて滴下後、40℃に2時間保持してイソシアネート当量:309、固形分90%の部分ブロック化イソシアネートを得た。次いで、エピコート828:1496部、ビスフェノールA:684部、テトラエチルアンモニウムブロマイド:1部及びメチルイソブチルケトン:241部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して同温度で4時間反応させ、エポキシ当量:1090、固形分90%のエポキシ樹脂溶液を得た。このものに、メチルイソブチルケトン:1000部を加えてから100℃に冷却し、3−メルカプトー1,2,4−トリアゾール(分子量:101):202部を加えて100℃にてエポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、上記のようにして得た固形分90%の部分ブロック化イソシアネート:230部を加えて100℃で3時間反応させ、フリーのイソシアネート基が消失したことを確認した。このものに冷却しながらエチレングリコールモノブチルエーテル:461部を加えて固形分60%のトリアゾール化合物変性エポキシ樹脂溶液を得た。これを製造例No.3のエポキシ樹脂溶液とする。
【0056】
・製造例No.4
エピコート828:1870部、ビスフェノールA:912部、テトラエチルアンモニウムブロマイド:2部及びメチルイソブチルケトン:300部を四つ口フラスコに仕込み、140℃まで昇温して同温度で4時間反応させ、エポキシ当量:1391、固形分90%のエポキシ樹脂を得た。このものに、エチレングリコールモノブチルエーテル:1500部を加えてから100℃に冷却し、ジn−ブチルアミン:258部を加えて100℃にてエポキシ基が消失するまで6時間反応させた後、冷却しながらメチルイソブチルケトン:225部を加えて固形分60%のアミン変性エポキシ樹脂溶液を得た。これを製造例No.4のエポキシ樹脂溶液とする。
【0057】
(ロ)被覆用組成物の調整
表1に示す配合割合に従い、基体樹脂(上記(イ)の製造例No.1〜No.4で得られたエポキシ樹脂溶液)に硬化剤、触媒、顔料及びエチレングリコールモノブチルエーテル(溶剤)を加えて顔料分散を行い、次いで、組成物No.1〜No.13、No.15についてはエッチング剤及びエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、固形分20%の被覆用組成物No.1〜No.15を得た。
なお、表1中における各配合量は、基体樹脂、硬化剤及び顔料については固形分量、触媒及びエッチング剤については有効成分量を示している。
【0058】
【表1】
【0059】
表1に示す硬化剤、触媒、顔料は、それぞれ以下の通りである。
・硬化剤種
A:タケネートB−870N(商品名,武田薬品工業(株)製,イソホロンジイソシアネートのメチルエチルケトオキシムブロック体溶液,固形分約60%)
B:デスモジュールBL−3175(商品名,住友バイエルウレタン(株)製,ブロック化されたイソシアヌレート型イソシアネート化合物)
C:デュラネートFM−B80M(商品名,旭化成工業(株)製,ヘキサメチレンジイソシアネートのメチルエチルケトオキシムブロック体溶液)
D:サイメル325(商品名,三井サイテック(株)製,イミノ基含有メチルエーテル化メラミン樹脂)
【0060】
・触媒種
a:ジブチル錫ジラウレート
b:ナフテン酸コバルト
c:塩化第一錫
d:N−エチルモルホリン
・顔料種
g−1:ヒュームドシリカ微粒子
g−2:カルシウムイオン交換シリカ微粒子
g−3:トリポリリン酸アルミニウム
【0061】
(ハ)有機被覆鋼板の作成
上記(ロ)で得られた被覆用組成物No.1〜No.15を用い、下記する塗布条件(1)及び塗布条件(2)によって有機被覆鋼板の試験材を作成した。
・塗布条件(1)
板厚0.6mm、片面当たりのめっき付着量20g/m2の電気亜鉛めっき鋼板を脱脂洗浄した後、上記被覆用組成物を乾燥膜厚が3μmとなるように塗布し、30秒間焼付けでPMT(鋼板の最高到達温度)が210℃となる条件にて30秒間焼付けて有機被覆鋼板の試験材(実施例No.1〜No.15)を作成した。
得られた試験材について、耐食性及び上層塗膜の密着性の試験を行った。その結果を表2に示す。耐食性と上層塗膜の密着性の試験は下記の試験方法に従って行った。
【0062】
(a)耐食性
端面及び裏面をシールした試験材に、JIS Z 2371に規定する塩水噴霧試験を240時間実施し、120時間経過時及び240時間経過時における皮膜面の白錆発生の程度を下記基準により評価した。
5:白錆の発生が認められない
4:白錆発生面積率5%未満
3:白錆発生面積率5%以上、10%未満
2:白錆発生面積率10%以上、50%未満
1:白錆発生面積率の50%以上
【0063】
(b)上層塗膜の密着性
試験材にアミラック#1000ホワイト(商品名,関西ペイント(株)製,熱硬化型アルキド樹脂塗料,白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、130℃で20分間焼き付けて上塗り塗装板−1を得た。また別に、試験材にマジクロン#1000ホワイト(商品名,関西ペイント(株)製,熱硬化型アクリル樹脂塗料,白色)を乾燥膜厚が30μmとなるように塗装し、150℃で20分間焼き付けて上塗り塗装板−2を得た。得られた上塗り塗装板−1及び上塗り塗装板−2について、ナイフを用いて塗膜面に素地に達する縦横各11本の傷を碁盤目状に入れて1mm角のマス目を100個作成した。この碁盤目部に粘着テープを密着させて瞬時にテープを剥がした際の上層塗膜の剥離の程度を下記基準により評価した。
5:上層塗膜の剥離が全く認められない
4:上層塗膜の碁盤目の剥離が1〜2個認められる
3:上層塗膜の碁盤目の剥離が3〜10個認められる
2:上層塗膜の碁盤目の剥離が10〜29個認められる
1:上層塗膜の碁盤目の剥離が30個以上認められる
【0064】
【表2】
【0065】
・塗布条件(2)
板厚0.4mm、片面当たりのめっき付着量120g/m2の溶融亜鉛めっき鋼板を脱脂洗浄した後、上記被覆用組成物を乾燥膜厚が5μmとなるように塗装し、20秒間焼付けでPMTが210℃となる条件にて20秒間焼付け、次いで、その上層にKPカラ−1580ホワイト(商品名,関西ペイント(株)製,ポリエステル樹脂塗料,白色)を乾燥膜厚が15μmとなるように塗装し、40秒間焼付けでPMTが215℃となる条件で40秒間焼付け、上層塗膜を有する有機被覆鋼板の試験材(実施例No.16〜No.30)を作成した。得られた試験材について、上層塗膜の密着性、耐食性及び耐湿性の試験を行った。その結果を表3に示す。上層塗膜の密着性の試験方法は上記塗布条件(1)と同様とした。また、耐食性と耐湿性の試験は下記の試験方法に従って行った。
【0066】
(a)耐食性
70×150mmの大きさに切断した試験材の端面部及び裏面部をシールした後、この試験材の上部に4T折り曲げ部(塗装面を外側にして0.4mm厚のスペーサー4枚挟んで180度折り曲げ加工した部分)を設けるとともに、試験材の下部にクロスカット部を設け、この試験材についてJIS Z 2371に規定する塩水噴霧試験を1000時間実施し、4T折り曲げ部での白錆の発生程度、クロスカット部のふくれ幅の大きさ、一般部(折り曲げ加工、クロスカットのない中央部)のふくれ発生程度(括弧内に、ASTM714−87の規定によるふくれの状態を記載)を下記基準により評価した。
【0067】
[4T折り曲げ部での白錆の発生程度]
5:白錆の発生が認められない
4:白錆がわずかに発生(白錆発生面積率10%未満)
3:白錆がかなり発生(白錆発生面積率10%以上、30%未満)
2:白錆が多く発生(白錆発生面積率30%以上、50%未満)
1:白錆が著しく発生(白錆発生面積率50%以上)
【0068】
[クロスカット部のふくれ幅]
5:クロスカット部からの片側ふくれ幅が1mm未満
4:クロスカット部からの片側ふくれ幅が1mm以上、2mm未満
3:クロスカット部からの片側ふくれ幅が2mm以上、5mm未満
2:クロスカット部からの片側ふくれ幅が5mm以上、10mm未満
1:クロスカット部からの片側ふくれ幅が10mm以上
【0069】
[一般部のふくれ発生程度]
5:ふくれの発生が認められない
4:わずかにふくれの発生が認められる(8F)
3:かなりのふくれの発生が認められる(6F)
2:多くのふくれの発生が認められる(4F〜2F)
1:著しいふくれの発生が認められる(Fを超える密度のふくれ)
【0070】
(b)耐湿性
端面部及び裏面部をシールした試験材について、JIS K 5400 9.2.2に準じて耐湿試験を行った。この耐湿性試験では、耐湿試験機ボックス内の温度が49℃、相対湿度が95〜100%の条件で試験時間は1000時間とした。試験後の試験材の塗膜のふくれ発生程度(括弧内に、ASTM714−87の規定によるふくれの状態を記載)を下記基準により評価した。
5:ふくれの発生が認められない
4:わずかにふくれの発生が認められる(8F)
3:かなりのふくれの発生が認められる(6F)
2:多くのふくれの発生が認められる(4F〜2F)
1:著しいふくれの発生が認められる(Fを超える密度のふくれ)
【0071】
【表3】
【0072】
【発明の効果】
以上述べたように本発明の被覆用組成物は、亜鉛系めっき鋼板やアルミニウム系めっき鋼板に対して耐食性、加工性及び塗料密着性に優れた皮膜を形成することができ、このため従来のリン酸亜鉛処理やクロメート処理などの表面処理の代りに高耐食性皮膜形成用の処理剤と使用でき、また、表面処理兼用プライマーとしても使用することができる。
また、本発明の有機被覆鋼板は耐食性、加工性、耐指紋性などの性能に優れ、また皮膜を構成する組成物中に潤滑性付与剤を配合したものは潤滑性に優れるので、そのままで防錆鋼板や潤滑防錆鋼板として使用することができる。また、本発明の有機被覆鋼板は、上層塗膜を形成した場合に上層塗膜との密着性にも優れているため、着色塗膜を形成して使用する用途、例えば、建材、家電、自動車部品などの用途にも好適である。
Claims (9)
- 有機樹脂にヒドラジン誘導体(但し、複素環構造のものを含む)が結合された皮膜形成性有機樹脂(A)と亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)とを含有する組成物であって、
前記皮膜形成性有機樹脂(A)が、エポキシ基含有樹脂(a)とヒドラジン誘導体を含有する活性水素含有剤(b)との反応生成物であり、
前記酸(B)が、弗化水素酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、弗化硼素酸、弗化チタン酸、珪弗化水素酸、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸の中から選ばれる1種又は2種以上からなり、且つその配合量が皮膜形成性有機樹脂(A)100重量部に対して0.1〜5重量部であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。 - 活性水素含有剤(b)中のヒドラジン誘導体が、活性水素を有するピラゾール化合物及び活性水素を有するトリアゾール化合物の中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
- 活性水素含有剤(b)中のヒドラジン誘導体の割合が10〜100モル%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
- 亜鉛又はアルミニウムをエッチングできる酸(B)が、弗化水素酸であることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
- 皮膜形成性有機樹脂(A)が、エポキシ基含有樹脂(a)とヒドラジン誘導体を含有する活性水素含有剤(b)とを50〜150℃で1〜8時間反応させて得られる反応生成物であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
- 硬化剤を含有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板被覆用組成物。
- 亜鉛系めっき鋼板又はアルミニウム系めっき鋼板の表面に、請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の被覆用組成物からなる付着量が0.1〜15g/m2の皮膜が形成されたことを特徴とする有機被覆鋼板。
- 皮膜付着量が0.2〜5g/m2であることを特徴とする請求項8に記載の有機被覆鋼板。
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