JP3740726B2 - 分配型燃料噴射ポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばディーゼルエンジンに適用される分配型燃料噴射ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明に類似した従来技術としては、例えば特開平7−42868号公報の「電磁弁」が開示されている。即ち、図7に示すように、燃料噴射ポンプに設けられる電磁スピル弁81は、コイル82の通電時に生じる磁力により吸引されるアーマチュア83と、同アーマチュア83に連結されたニードル弁84とを有する。また、ニードル弁84には、低圧室86とアーマチュア室85とを連通する連通路87が設けられている。そして、低圧室86にスピルされた燃料の一部は連通路87を介してアーマチュア室85に導入され、この時の燃料圧によりアーマチュア室85内に残った空気が排除されるようになっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来公報においては以下に示す問題を生ずる。即ち、近年のエンジン高出力化に伴い、燃料噴射ポンプとしての噴射量の増大化、高圧縮化が求められている。また、燃料噴射ポンプの燃料吸入量の増大やスピル燃料圧の増大により、低圧室86には大きな圧力脈動が発生する。即ち、図8に示すように、低圧室86の燃料圧は大きな圧力脈動を伴う。また、低圧室86の圧力脈動はアーマチュア室85にも伝播する。かかる場合、この圧力脈動は閉弁に抗する力としてニードル弁84に作用することとなり、同ニードル弁84の応答性を悪化させる。特に、高速運転時には、電磁スピル弁81の開閉時間が非常に短くなるため、弁体84の開閉動作が間に合わなくなり、燃料噴射量の制御精度に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0004】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、弁体(ニードル弁)の挙動を安定させ、ひいては精度の高い燃料噴射動作を実現することができる分配型燃料噴射ポンプを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、電磁弁を開状態又は閉状態とする弁体に、燃料ギャラリ圧を開弁方向に受けるための開側受圧面と、同じく燃料ギャラリ圧を閉弁方向に受けるための閉側受圧面とを設けたことをその要旨としている。特に、請求項1に記載の発明では、前記弁体の全体を前記燃料ギャラリ内に浸漬させて配置している。
【0006】
つまり、電磁弁の開弁動作に伴う燃料スピル時には、燃料ギャラリに圧力脈動が発生するが、上記の如く燃料ギャラリ圧が弁体の開側受圧面及び閉側受圧面に作用することにより、当該弁体の開弁方向及び閉弁方向の圧力バランスが保たれる。そのため、燃料ギャラリ内の圧力脈動による弁体のバウンスが早期に減衰される。また、弁体に作用する圧力バランスが安定状態で保たれることにより、弁体の開閉動作時における所要時間が短縮化できる。以上のことから、本発明では、弁体の挙動を安定させ、ひいては精度の高い燃料噴射動作を実現することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明では、絞りを介して前記燃料ギャラリに連通される低圧室と、前記電磁弁の弁体に連結され、電磁コイルの通電により電磁石に吸引されるアーマチュアとを有し、当該アーマチュアを収容するためのアーマチュア室と前記低圧室とを連通路を介して連通させている。この場合、アーマチュア室は低圧に保持されると共に同室内の圧力脈動が低減できる。その結果、アーマチュア室の圧力脈動に起因する閉弁バウンスの発生が早期に減衰できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は本発明の実施の形態における分配型燃料噴射ポンプの構成を示す。
【0009】
図3に示すように、図示しないエンジンにより駆動される燃料噴射ポンプ10の駆動軸1はベアリング2及びジャーナル3を介してポンプハウジング4に回転可能に支持されている。べーン式フィードポンプ5は駆動軸1と共に回転し、燃料タンク(図示しない)、燃料インレット6、吸入口7を介して燃料を吸入加圧すると共に、燃料ギャラリ14に燃料を送出する。べーン式フィードポンプ5の吸入口7と吐出口8とは、吐出圧力が調節されるように図示しない圧力調整弁を介して接統されている。
【0010】
分配ヘッド11の内壁にはシリンダ12が固定され、このシリンダ12の内壁には分配ロータ13が回転可能に支持されている。分配ロータ13は駆動軸1に対して一体回転可能に連結されている。シリンダ12の周囲には、ポンプハウジング4及び分配ヘッド11により画成された環状の燃料ギャラリ14が設けられている。
【0011】
また、ポンプハウジング4には、低圧室としてのカム室28が形成されており、同カム室28は絞り通路29を介して燃料ギャラリ14に連通されている。従って、後述する電磁スピル弁40の燃料スピル時において燃料ギャラリ14に圧力脈動が生じたとしても、カム室28内は低圧で且つ圧力変動の少ない状態で保持される。
【0012】
前記分配ロータ13には互いに直交する一対の摺動孔13aが形成され、各摺動孔13aにはそれぞれ一対のプランジャ20が油密状態で摺動可能に支持されている。各プランジャ20の内端面と各摺動孔13aを形成する分配ロータ13の内壁とにより燃料加圧室21が画成されている。
【0013】
各プランジャ20の外側端部にはシュー22が配設され、各シュー22にはローラ23が回転自在に保持されている。ローラ23の外側には、インナカムリング24が配設されており、同インナカムリング24の内周面にはエンジン気筒数に応じた複数のカム山を有するカム面が形成されている。従って、分配ロータ13の回転に基づいてローラ23がインナカムリング24内周面のカム面に摺動することにより、ローラ23はカム面に沿ってインナカムリング24の径方向に往復動し、この往復動がシュー22を介してプランジャ20に伝達される。この場合、プランジャ20が分配ロータ13の径方向外側に移動すると燃料加圧室21の容積が増加し、同加圧室21に燃料が吸入される。また、プランジャ20が分配ロータ13の径方向内側に移動すると燃料加圧室21の容積が減少し、同加圧室21の燃料が加圧されることとなる。インナカムリング24は、ポンプハウジング4の内壁に回動可能に支持されており、タイマ装置30により回転角が調節可能となっている。
【0014】
分配ロータ13には、前記燃料加圧室21に連通する連通路17が形成されると共に、同連通路17の一端より分岐する燃料通路15及び分配通路16が形成されている。また、シリンダ12には、エンジンの気筒数分だけ燃料圧送通路25が設けられており、各々の燃料圧送通路25は分配ロータ13の回転に伴い前記分配通路16に選択的に連通される。燃料圧送通路25は分配ヘッド11に設けられた燃料圧送通路26と常に連通しており、前記燃料加圧室21にて加圧された高圧燃料は燃料圧送通路26からデリバリバルブ27を通って図示しないインジェクタに供給される。
【0015】
駆動軸1の外周壁には、所定間隔毎に多数の突起31aを有するパルサ31が取り付けられており、インナカムリング24には突起31aの近接又は離間をパルス信号に変換し出力する回転角センサ32が固定されている。つまり、回転角センサ32が出力するパルス数を計数することにより、インナカムリング24に対する駆動軸1の回転角、即ちインナカムリング24に対する分配ロータ13の回転角を検出することができるようになっている。
【0016】
さらに、分配ヘッド11にはオーバーフローバルブ35が配設されており、同オーバーフローバルブ35は通路36を介して燃料ギャラリ14に連通している。かかる場合、電磁スピル弁40の開弁時において、スピル燃料の一部が通路36及びオーバーフローバルブ35を介して燃料タンクに還流され、燃料ギャラリ圧が減圧されるようになっている。
【0017】
次に、電磁スピル弁40の詳細な構成について図1及び図2を用いて説明する。なお、図1は図3のI−I線断面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。
【0018】
さて、本実施の形態の電磁スピル弁40は、常開弁(ノーマルオープン弁)として機能するものであって、そのソレノイド部41はポンプハウジング4に固定配置され、流量調整部42はシリンダ12を貫通するようにして配置されている。即ち、ソレノイド部41において、ソレノイドハウジング43は略円筒状をなし、ポンプハウジング4のねじ孔4aに螺着されている。また、当該ねじ孔4aの底面にはストップリング55が載置され、このストップリング55にてソレノイドハウジング43の下方縁部が受け止められている。ソレノイドハウジング43の最下部には、リフトストッパ56が配設されている。
【0019】
ソレノイドハウジング43内部にはステータ44が配設されており、同ステータ44に形成された環状のコイル挿入溝45にはコイル46が配設されている。ステータ44の中央に形成された貫通孔47には、高硬度のブッシュ48が圧入固定されており、そのブッシュ48内にはアーマチュア49に連結されたロッド50が図の上下方向に摺動可能に配設されている。
【0020】
アーマチュア49の上方には、前記ソレノイドハウジング43の内周面に密着するカバー51が配設されており、同カバー51の下面にはアーマチュア室52が形成されている。カバー51の下面中央には、アーマチュア49の可動域を規制するためのストッパ53が設けられている。前記アーマチュア49及びカバー51には、外部からの電気信号を入力するための信号入力端子54が貫通状態で配設されており、同信号入力端子54はリード線を介して前記コイル46に電気的に接続されている。図2に示すように、アーマチュア室52と前記カム室28とは連通路70を介して常に連通されている。
【0021】
一方、流量調整部42において、略円筒状をなすニードルボディ58は、シリンダ12に形成された貫通孔12aに嵌挿されており、ニードルボディ58と貫通孔12aとの間は数μm程度の微小クリアランスを有する。ここで、貫通孔12aは分配ロータ13の回転軸方向に略直交する方向に延設されている。ニードルボディ58の上端は前記リフトストッパ56に当接している。ニードルボディ58には、弁体としてのニードル弁59を摺動可能に保持するための摺動孔60が形成されており、同摺動孔60は環状に形成された高圧燃料室61に連通している。また、ニードルボディ58には、前記高圧燃料室61に連通する燃料通路62a,62bが形成されている。ニードル弁59は、前記ロッド50の下端に連結されると共に、圧縮コイルばね63により常に開弁方向(図の上方向)に付勢されている。
【0022】
ここで、前記リフトストッパ56には、複数の切欠部56aが設けられており、この切欠部56aを介してニードル弁59の上部空間(以下、ニードル弁上部室77という)には燃料ギャラリ圧が作用する。また、ニードル弁59の一部には小径部59aが設けられており、その小径部59aによりニードル弁59の下部空間(以下、ニードル弁下部室78という)が形成されている。この場合、ニードル弁下部室78は燃料通路62bを介して燃料ギャラリ14に常に連通しており、前記ニードル弁上部室77と同様に、ニードル弁下部室78にも燃料ギャラリ圧が作用するようになっている。つまり、本実施の形態では、ニードル弁59の上面59bが閉側受圧面に相当し、ニードル弁下部室78におけるニードル弁59の下面59cが開側受圧面に相当する。なお、図示の状態(非励磁状態)では、ニードル弁59がニードルボディ58の弁座58aに対して離座しており、電磁スピル弁40は開弁状態を維持する。
【0023】
図1に示すように、ニードル弁59の軸中心は分配ロータ13の軸中心と垂直な仮想平面上に存在し、ニードル弁59の軸中心及び分配ロータ13の軸中心の延長は交差していない。また、分配ロータ13を回転可能に支持するシリンダ12の内壁には環状の溝12bが設けられ、溝12bと分配ロータ13の外周壁とにより環状ギャラリ68が形成されている。さらに、シリンダ12には、前記環状ギャラリ68と前記ニードルボディ58の燃料通路62aとを連通させるための連通路69が形成されている。つまり、高圧燃料室61と燃料加圧室21とは、燃料通路62a、連通路69、環状ギャラリ68、燃料通路15及び連通路17を介して常に連通している。
【0024】
電磁スピル弁40の動作を詳述すれば、前記コイル46の消磁状態(図示の状態)では、ステータ44の上面とアーマチュア49の下面との間には所定量のエアギャップが保持され、ロッド50下部に連結されたニードル弁59は開弁位置に保持される。即ち、ニードル弁59はニードルボディ58の弁座58aに対して離座している。このとき、図1,図3に示すように、燃料ギャラリ14は、燃料通路62a,62b、高圧燃料室61、連通路69、環状ギャラリ68、燃料通路15及び連通路17を介して燃料加圧室21に連通している。
【0025】
一方、コイル46が励磁されると、アーマチュア49がステータ44に吸引され、前記エアギャップが減少する。そして、ニードル弁59は閉弁位置に移動する。即ち、ニードル弁59はニードルボディ58の弁座58aに対して着座する。このとき、燃料ギャラリ14と燃料加圧室21とは遮断される。
【0026】
また、前記ニードルボディ58の下方には、ポンプハウジング4に固着されたばね受け65が配設され、同ばね受け65とニードルボディ58の下端との間には圧縮コイルばね64が配設されている。この圧縮コイルばね64は、前記コイル46の励磁時における磁力と前記ニードル弁59を開弁位置に付勢するための圧縮コイルばね63のばね力との総和よりも大きいばね力を有する。なお、前記圧縮コイルばね63のばね室66と燃料ギャラリ14とは通路67を介して連通されている。
【0027】
さらに、ポンプハウジング4には燃料スピル時に発生する圧力脈動を減衰させるためのアキュムレータ71が配設されている。このアキュムレータ71は、ポンプハウジング4の一部に形成されたハウジング部72、燃料ギャラリ14に面するピストン73、ハウジング部72の上端に固着された蓋体74、及び両端部がそれぞれ蓋体74とピストン73とに当接する圧縮コイルばね75から構成されている。ピストン73は、ハウジング部72の内壁に対し図の上下方向に往復移動可能に支持されている。
【0028】
以下、燃料噴射ポンプ10の作動について図4のタイムチャートを参照しながら説明する。
(1)吸入行程
電磁スピル弁40のソレンイド部41に対する通電(SPV通電)がオフされている場合、圧縮コイルばね63の付勢力によりニードル弁59がニードルボディ58の弁座58aから離座している。即ち、電磁スピル弁40は閉弁位置にあり、燃料ギャラリ14と高圧燃料室61とは連通している。このとき、分配ロータ13の回転に伴いプランジャ20が分配ロータ13の径方向外側に移動することにより燃料加圧室21の容積が増大し、それにより燃料加圧室21の圧力が低下する。すると、燃料ギャラリ14に充填されていた燃料がニードル弁59と弁座58aとの間隙を通り、さらに所定の吸入通路を経て燃料加圧室21に吸入される。なお、燃料圧送通路25は分配ロータ13の外周壁により閉塞されている。この場合、燃料通路62a、連通路69、環状ギャラリ68、燃料通路15及び連通路17が燃料の吸入通路に相当する。
【0029】
(2)圧送行程
分配ロータ13がさらに回転し、所定のタイミングで電磁スピル弁40のソレノイド部41への通電がオンされると、ソレノイド部41で発生する磁力により、ニードル弁59は圧縮コイルばね63の付勢力に抗して閉弁位置に移動する。即ち、ニードル弁59がニードルボディ58の弁座58aに着座し、燃料ギャラリ14と高圧燃料室61との連通が遮断される。また、分配ロータ13がさらに回転し、ローラ23がインナカムリング24のカム山に乗り上げ、プランジャ20が径方向内側に移動し始めると、燃料加圧室21内の燃料が加圧される。燃料加圧室21で加圧された燃料が一定圧以上になり、分配通路16と燃料圧送通路25とが連通すると、燃料加圧室21内の高圧燃料が連通路17、分配通路16及び燃料圧送通路25,26を経てデリバリバルブ27からインジェクタに供給される。かかる場合、噴射圧力及び噴射率は図示の如く推移する。
【0030】
(3)スピル行程
圧送行程中に電磁スピル弁40のソレノイド部41への通電がオフされると、圧縮コイルばね63の付勢力によりニードル弁59がニードルボディ58の弁座58aから離れ、燃料ギャラリ14と高圧燃料室61とが連通する。すると、燃料加圧室21内の高圧燃料がニードル弁59と弁座58aとの間隙を通り、さらに所定のスピル通路を経て燃料ギャラリ14にスピルされる。この場合、連通路17、燃料通路15、環状ギャラリ68、連通路69及び燃料通路62aが燃料のスピル通路に相当する。つまり、本スピル通路は、前記吸入行程で述べた吸入通路と兼用していることとなる。
【0031】
燃料がスピルされると、燃料加圧室21及び燃料圧送通路26の燃料圧力が低下してデリバリバルブ27が閉弁し、それによりインジェクタへの燃料供給が終了する。即ち、燃料噴射が終了する。前記、(1)吸入行程、(2)圧送行程、(3)スピル行程を繰り返すことにより、燃料噴射量及び燃料噴射時期を精度良く制御することができる。
【0032】
以下、本実施の形態における燃料噴射ポンプ10の効果を説明する。
(a)本実施の形態では、シリンダ12の一部に設けられた貫通孔12aに、筒状のニードルボディ58を嵌挿させ、そのニードルボディ58内に往復移動可能なニードル弁59を配設した。このとき、ニードルボディ58及びニードル弁59を燃料ギャラリ14内に浸漬状態で配置し、それと共にニードル弁上部室77及びニードル弁下部室78に燃料ギャラリ14内の燃料圧が同等に作用する構成とした。
【0033】
従って、燃料スピル時において燃料の圧力脈動が発生しても、その圧力脈動がニードル弁上部室77及びニードル弁下部室78に殆ど遅れなく作用し、適切なるニードル弁59の開閉動作が保持できる。つまり、ニードル弁59が開弁方向(図の上方向)に受ける燃料圧と、閉弁方向(図の下方向)に受ける燃料圧とは同等になる。実験により求められた圧力推移を図5に示せば、ニードル弁下部室78の圧力推移(実線で示す)とニードル弁上部室77の圧力推移(破線で示す)との時間差Tは略ゼロとなる。その結果、ニードル弁59の上下方向の圧力バランスを保つことができる。
【0034】
また、ニードル弁59の開閉動作時における挙動を比較すれば、以下の利点が得られる。つまり、図6において、本案と従来技術(ニードル弁の上下圧が異なる構成)とを比較した場合、ニードル弁59の閉弁時間が短縮できる(T1<T2)。また、閉弁時のバウンスを軽減させることができる。さらに、開弁挙動を一定の状態で安定化させることができる(これに対して、従来技術では、開弁挙動が一定状態となっていない)。
【0035】
以上のことから、電磁スピル弁40の開閉動作時におけるニードル弁59の挙動を安定させ、ひいては電磁スピル弁40による噴射切れを向上させることができる。その結果、エンジン高回転域においても精度の高い燃料噴射動作が実現される。
【0036】
併せて、かかる構成によれば、閉弁時間の短縮を実現させる手立てとして、電磁石の大型化や駆動エネルギの増大化を強いられることはない。また、閉弁バウンスを早期減衰させる手立てとして、ダンパ機構等の付加的構成を設ける必要もない。その結果、燃料噴射ポンプの大型化やコストアップを招くこともない。
【0037】
(b)本実施の形態では、アーマチュア室52とカム室28とを連通路70を介して連通させるようにした。そのため、アーマチュア室52は低圧に保持されると共に同室52内の圧力脈動が低減できる。アーマチュア室52の圧力推移を図5の二点鎖線で示す。その結果、アーマチュア室52の圧力脈動に起因する閉弁バウンスの発生が早期に減衰できる。
【0038】
(c)本実施の形態では、ニードルボディ58をシリンダ12の貫通孔12aに嵌挿させるようにしたため、例えばニードルボディ58を圧入したり又はかしめ固定したりする場合とは異なり、電磁スピル弁40の締め付け固定時におけるシリンダ12の歪みが解消できる。その結果、分配ロータ13の円滑なる回転動作が実現できる。
【0039】
併せて、本実施の形態によれば、燃料加圧室21から電磁スピル弁40までの燃料通路長が短縮される。このため、燃料加圧容積が減少するのでプランジャ20による燃料加圧効率が向上する。さらに、前記燃料通路長が短縮されることによりスピル時の圧力損失が低減するので、燃料が素早くスピルされ燃料の噴射切れが向上する。
【0040】
(d)また、本実施の形態では、ニードルボディ58の下端に圧縮コイルばね64を配設したことにより、当該ニードルボディ58を電磁スピル弁40の一体構造とすることができ、ニードル弁リフト量が変動する等の不具合を招くこともない。
【0041】
(e)シリンダ12の内壁に溝12bを形成して環状ギャラリ18を設けているため、分配ロータ13に溝を形成して環状ギャラリを設ける場合に比べ、分配ロータ13の回転運動に伴うスピル燃料流れの方向性か少なくなる。このため、分配ロータ13の回転位置にかかわらず燃料が安定してスピルされる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施の形態の他に以下の形態にて具体化できる。
(1)上記実施の形態では、燃料の吸入通路とスピル通路とを共通化して構成したが、これら両通路を別個に設けるようにしてもよく、かかる構成においても本発明の目的が達成させる。
【0043】
(2)上記実施の形態では、プランジャ20のリフト開始前にソレノイド部41への通電を開始する通常の噴射量制御を行ったが、プレストローク期間を設定し、プランジャ20のリフト開始後に通電を開始するように制御内容を変更してもよい。かかる場合、ニードル弁59の開閉いずれの動作時にもその挙動が安定することにより、噴射立ち上がり及び噴射切れが鋭くなり、燃料噴射量の制御精度をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における分配型燃料噴射ポンプを示す断面図(図3のI−I線断面図)。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】分配型燃料噴射ポンプの全体を示す断面図。
【図4】燃料噴射ポンプの動作を説明するためのタイムチャート。
【図5】実施の形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図6】実施の形態の効果を説明するためのタイムチャート。
【図7】従来技術における電磁スピル弁の構成を示す断面図。
【図8】従来技術における問題点を説明するためのタイムチャート。
【符号の説明】
10…燃料噴射ポンプ(分配型燃料噴射ポンプ)、14…燃料ギャラリ、21…燃料加圧室、28…低圧室としてのカム室、29…絞り通路、40…電磁スピル弁、44…電磁石としてのステータ、46…コイル、49…アーマチュア、52…アーマチュア室、59…ニードル弁、59b…閉側受圧面としてのニードル弁の上面、59c…開側受圧面としてのニードル弁の下面、70…連通路。
Claims (2)
- 電磁弁の開弁動作に伴い燃料加圧室にて加圧された燃料を燃料ギャラリにスピルさせる分配型燃料噴射ポンプであって、
前記電磁弁を開状態又は閉状態とする弁体には、燃料ギャラリ圧を開弁方向に受けるための開側受圧面と、同じく燃料ギャラリ圧を閉弁方向に受けるための閉側受圧面とを設け、前記弁体の全体を前記燃料ギャラリ内に浸漬させて配置したことを特徴とする分配型燃料噴射ポンプ。 - 絞りを介して前記燃料ギャラリに連通される低圧室と、前記電磁弁の弁体に連結され、電磁コイルの通電により電磁石に吸引されるアーマチュアとを有し、当該アーマチュアを収容するためのアーマチュア室と前記低圧室とを連通路を介して連通させた請求項1に記載の分配型燃料噴射ポンプ。
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