JP3740392B2 - 分注装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は分注装置に関し、特に対象液体の物性に応じた吸引及び吐出の制御に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
分注装置は、ノズルによって容器内の液体を吸引し、1又は複数の他の容器へ液体を吐出する装置である。具体的には、液体吸引時において、ノズルが液面内に挿入され、ノズルに接続された分注ポンプ(シリンジポンプ)を吸引動作させることにより、液体の吸引がなされる。ちなみに、通常、液体吸引に伴う液面下降に応じてノズル位置も追従して下降制御される。
【0003】
分注ポンプの吸引動作完了直後において、ノズル内は依然として負圧(大気圧よりも低圧)となっており、よってノズル内の圧力が大気圧に近くなるまで、ノズル内に引き続いて液体が吸い込まれる。そして、圧力均衡が図られた時点で、ノズル内への液体の移動は停止し、吸引が完了する。この場合、分注ポンプの吸引動作完了時点から液体の吸引(移動)が実質的に完了するまでの期間(待機期間)は、それまでの吸引量及び吸引速度などに依存し、加えて、液体の物性(特に粘度)に依存する。従来装置においては、粘度が最も高い液体を想定し、そのような液体でも確実に吸引できる待機期間を前提とし、吸引後にノズルを上方へ引き上げる離液タイミングが一律に設定されていた。
【0004】
一方、吐出時においては(特に後述する空中吐出方式の場合には)、分注ポンプの吐出速度かつ吐出動作量(空中吐出終期に液切れをよくするために実行される逆転動作量を含む)が同一であっても、液体の物性(特に粘度)の違いによって、実際の吐出量に違いが生じる場合も多い。また、粘度が低ければ、吐出速度を高めた方が分注処理時間を短縮できる。しかし、従来装置においては、粘度が最も高い液体を想定して吐出条件を一律に設定していた。
【0005】
また、吐出方式としては、空中吐出方式及び液中吐出方式が知られている。前記の空中吐出方式は、吐出先容器に既に他の液体が注入されている状態において、他の液体を吐出する場合に、当該容器内の液面よりも上方で吐出を行う方式である。この方式によれば、容器内の液体がノズルチップに付着することにより生じるコンタミネーションなどの問題を防止できる。分注する液体しかノズルチップに付着していないので、再度同一液体を分注するとき、ディスポーザブルノズルチップの場合はチップの再利用ができる。ノンディスポーザブルノズルチップの場合は、ノズルの洗浄工程を省略することができる。しかし、吐出する液体の粘度が極めて高いような場合には分注精度を確保するのが難しく、あるいは、吐出速度を一般に小さくする必要がある。一方、前記の液中吐出方式は、吐出先容器内に既に他の液体が注入されている状態において、他の液体を吐出する場合に、当該容器内の液面内にノズル(の先端)を進入させて、液体を吐出する方式である。吐出前にはノズル先端が液面に触れていなくても、吐出後の液面がノズル先端より高い位置になる場合も液中吐出方式に含まれる。この方式によれば、吐出する液体の粘度が高くても、比較的円滑に吐出を行うことができ、液切れもよいという利点がある。しかし、吐出先容器内に既に他の液体が入っている場合、容器内の他の液体がノズルチップに付着し、その結果、コンタミネーションなどの問題が生じ、あるいは、ノズル洗浄などの処理が不可欠となる。
【0006】
このように、2つの吐出方式には一長一短があるが、従来装置においては、個々の装置ごとに、いずれかの方式のみが採用されている。なお、粘度測定機能をもった分注装置として、特開平5−107174号公報に記載された装置をあげることができる。但し、かかる装置は、測定された粘度に応じて動作条件の変更を行うようなものではない。
【0007】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、分注対象となった液体の物性に応じて、分注処理効率を高められるようにすることにある。
【0008】
本発明の他の目的は、分注対象となった液体の物性に応じて、その液体の吸引処理時間をできる限り削減できるようにすることにある。
【0009】
本発明の他の目的は、分注対象となった液体の物性に応じて、最適な吐出時の動作条件を設定し、これにより分注精度を向上させ、また吐出処理時間を削減できるようにすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)望ましくは、ノズルと、前記ノズルに対して配管を介して接続された分注ポンプと、前記配管に接続された圧力検出器と、前記ノズルを対象液体の液面内に進入させて対象液体の吸引を行う場合に、前記圧力検出器によって検出される前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形に基づいて、前記分注ポンプの吸引動作完了後における前記ノズルを上昇させる離液タイミングを判定する離液タイミング判定手段と、を含み、前記離液タイミング判定手段は、前記分注ポンプの動作完了後における前記圧力波形を所定のサンプリング期間ごとにサンプリングして圧力値を求め、前記所定のサンプリング期間での圧力値の差分を逐次的に演算する手段と、前記圧力値の差分が判定値よりも小さくなった場合に前記離液タイミングを決定する手段と、を含み、前記離液タイミングで前記対象液体から前記ノズルが引き上げられる。
【0011】
上記構成によれば、対象液体をノズルによって吸引する場合に、分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形から、ノズルの離液タイミングが判定される。ここで、対象液体の物性に応じて、吸引動作完了後における圧力波形は異なり、その圧力波形に応じて離液タイミングを判定すれば、対象液体の粘度に応じて最小限の吸引時間を設定できる。
【0012】
望ましくは、前記離液タイミング判定手段は、前記分注ポンプの動作完了後における前記圧力波形の勾配を演算する手段と、前記勾配が平坦化条件を満たす場合に前記離液タイミングを決定する手段と、を含む。
【0013】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、ノズルと、前記ノズルに対して配管を介して接続された分注ポンプと、前記配管に接続された圧力検出器と、前記ノズルによる対象液体の吸引時において前記圧力検出器によって検出される前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形に基づいて、前記対象液体の物性を推定する物性推定手段と、前記推定された物性に応じて前記ノズルによる対象液体の吐出時における吐出条件を設定する吐出条件設定部と、を含み、前記設定された吐出条件に従って前記対象液体が吐出される。特に、空中吐出方式又は液中吐出方式が選択される。
【0014】
上記構成によれば、対象液体の物性が異なると、それらの吸引時における、分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形が異なるため、その圧力波形に基づいて対象液体の物性が推定され、その物性に応じてふさわしい吐出条件が設定される。圧力波形から物性(特に粘度)を推定する場合、吸引初期の立ち下がり(圧力の急激な下降期間あるいはその急激な圧力低下幅)、吸引終期の立ち上がり(圧力の急激な上昇(復帰)期間)あるいはその急激な圧力上昇幅)などの特徴量を用いるようにしてもよい。
【0015】
望ましくは、前記吐出条件設定部は、前記ノズルを液面から離して吐出を行う空中吐出方式、及び、前記ノズルを液面に接触させて吐出を行う液中吐出方式のいずれかの吐出方式を選択する。望ましくは、前記吐出条件設定部は、前記空中吐出方式の場合には分注ポンプの動作速度、分注ポンプの動作量、分注ポンプの逆転動作開始タイミング、及び、分注ポンプの逆転動作量の中の少なくとも1つを決定し、前記液中吐出方式の場合には分注ポンプの動作速度、及び、分注ポンプの動作後の離液までの待機時間の少なくとも1つを決定する。
【0016】
通常は空中吐出方式を選択し、特に粘度が高いような場合に液中吐出を選択するようにしてもよい。この場合には、必要に応じて、ノズル(あるいはノズルチップ)の交換、ノズル洗浄などがなされる。一般に、粘度が低ければ吐出速度が大きくされ、粘度が高ければ吐出速度が小さくされる。これにより、分注処理速度が向上する。ここで、吐出条件には、更に空中吐出完了時点での逆転吸引動作の条件(逆転タイミング、逆転動作量など)も含まれる。
【0017】
(3)また、上記目的を達成するために、本発明は、ノズルと、前記ノズルに対して配管を介して接続された分注ポンプと、前記配管に接続された圧力検出器と、前記ノズルを対象液体の液面内に進入させて対象液体の吸引を行う場合に、前記圧力検出器によって検出される前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形に基づいて、前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力の平坦化時期を判定する平坦化時期判定手段と、前記平坦化時期に従って前記ノズルの離液タイミングを判定する離液タイミング判定手段と、前記吸引動作完了後から前記平坦化時期までの復帰期間Δtに基づいて、前記対象液体の粘度を推定する粘度推定手段と、前記推定された粘度に応じて前記対象液体の吐出条件を設定する吐出条件設定部と、を含み、前記吐出条件設定部は、前記ノズルを液面から離して吐出を行う空中吐出方式、及び、前記ノズルを液面に接触させて吐出を行う液中吐出方式のいずれかの吐出方式を選択し、前記対象液体に応じて前記離液タイミング及び前記吐出条件が適応的に設定されることを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明に係る分注装置の全体構成がブロック図として示されている。図1において、本実施形態においては、ノズル10がノズル基部14とノズルチップ12とで構成されている。ノズル基部14はパイプ状の金属などによって構成され、その下端側にはノズルチップ12の上端側が嵌合される。ノズルチップ12は樹脂などの透明部材によって構成され、上述のようにノズル基部14に対して着脱自在である。ノズルチップ12はいわゆるディスポーザブル型として使用される。
【0020】
上記のように構成されるノズル10は配管16を介して分注ポンプ18に接続されている。配管16は例えばエアチューブなどによって構成され、分注ポンプ18はシリンジ22及びその内部において進退するピストン24によって構成される。シリンジ22に対してピストン24を前進させれば、ノズル10内の圧力が高まって液体の吐出が行われ、一方、シリンジ22に対してピストン24を後退させれば、ノズル10内の圧力が低くなってすなわち負圧となって液体の吸引が行われる。
【0021】
本実施形態において、配管16には圧力センサ20が接続され、その圧力センサ20から出力された信号がセンサ信号出力回路26を介して後述する制御部32に出力されている。
【0022】
分注ポンプ18はポンプ駆動部28によって駆動され、そのポンプ駆動部28は制御部32により制御されている。ノズル搬送部30はノズル10の三次元方向の搬送を行うものであり、このノズル搬送部30も制御部32によって制御されている。
【0023】
本実施形態において、制御部32に接続された粘度テーブル34は、後述する期間Δtに従って液体の粘度を決定(推定)するためのテーブルであり、その具体例については後に図4を用いて説明する。吐出条件テーブル36は、決定された液体の粘度に従って吐出条件を設定するためのテーブルであり、その具体例については後に図5を用いて説明する。
【0024】
以上のように構成される分注装置において、ノズル10によって容器6内に収容されている液体(対象液体)100が吸引される。これが図1において符号100Aで示されている。吸引された液体100Aは他の容器8内に吐出される。この際、場合によっては、他の容器8内にはあらかじめ他の液体102が吐出されている。液体100Aの吐出方式としては、本実施形態において、上述した空中吐出方式あるいは液中吐出方式を選択することができる。
【0025】
図2には、分注ポンプの動作と圧力波形とが対応づけて示されている。図2において(A)は図1に示した分注ポンプ18の動作を示しており、その図において波形が立ち上がった部分は分注ポンプ18が吸引動作を行っている期間を示している。また、(B)に示す圧力波形は、図1に示した圧力センサ20によって観測される吸引時の圧力変化を示すものである。ここにおいて、Aは分注ポンプ18の吸引動作開始のタイミングを示し、Bは分注ポンプ18の吸引動作の終了タイミングを示し、Cは圧力波形が平坦化した復帰タイミングを示している。
【0026】
すなわち、図2(B)に示すように、ある粘度をもった液体を吸引する場合においては、その吸引動作開始の直後から圧力は急激に負圧方向に立ち下がり、その後一定の勾配をもって圧力が減少し、吸引動作終了とともに圧力が大気圧方向へ急激に上昇し、その後一定の負圧へなだらかに収束することになる。この場合において、Δtは吸引動作終了後から圧力が平坦化して復帰するまでの復帰期間を示している。
【0027】
本実施形態においては、例えば、上記の復帰期間Δtが特定され、その復帰期間Δtに基づいて吸引対象となった液体からノズルを引き上げるタイミング、すなわち離液タイミングが決定され、また、その復帰期間Δtに基づいて吸引対象となった液体の物性、特に粘度が推定されている。そして、その粘度に応じて最適な当該液体の吐出条件が設定される。
【0028】
すなわち、復帰期間Δtは吸引対象となった液体の粘度に大きく依存し、粘度が高い場合には復帰期間Δtが長くなり、粘度が低い場合には復帰期間Δtが短くなる。そこで、その復帰期間Δtによって液体の粘度を推定するものである。もちろん、その復帰期間Δtは吸引速度や吸引量などにも依存するため、それらの既知のパラメータを考慮した上で、Δtの値を参照することにより、液体の粘度を精度良く推定することが可能である。
【0029】
本実施形態においては、上記のように復帰期間Δtを参照し、それをもって粘度の推定を行っているが、液体の物性を指標する他の特徴量としては、図2に示されるように、吸引初期時における立ち下がり時の圧力減少幅bや吸引終了後における圧力の立ち上がり時点における圧力上昇幅b’などを利用することもでき、それらも粘度の関数として利用可能である。更に、複数の特徴量を組み合わせてより精度良く粘度を推定するようにしてもよい。
【0030】
上述した吸引量や吸引速度が既知であるのに対し、液体の粘度は未知であるが、従来においては想定される最も高い粘度を前提として離液タイミングなどを決定していたが、本実施形態によれば、未知の粘度を推定し、それによって最適な離液タイミングを決定できるという利点がある。また、後に詳述するように、推定された粘度に従って最適な吐出値の動作条件を設定することが可能である。
【0031】
図3には、上記の復帰期間Δtを決定するための手法の一例が示されている。図3においては吸引動作終了タイミングから復帰タイミングまでの圧力波形が部分的に示されている。この期間内においては、所定のサンプリング期間ごとに測定された圧力値の差分が演算され、その差分が所定の判定値Kよりも小さくなった時点をもって圧力が平坦化したものとして判定される。具体的には、あるタイミングTi及びTi+1の2つの隣接するタイミングにおける2つの圧力Pi及びPi+1の絶対値ΔPが演算され、そのΔPが判定値Kよりも小さくなった時点をもって復帰タイミングが決定され、これと同時に復帰期間Δtが決定される。もちろん、図3に示す手法は一例であって、これ以外にも他の手法を利用することもできる。いずれにしても、圧力波形の勾配を監視し、その勾配が平坦と見なされる条件を満たした場合に復帰タイミングを判定するのが望ましい。
【0032】
図4には、図1に示した粘度テーブル34の具体例が示されている。この粘度テーブル34はある吸引量とある吸引速度の場合に、上記の復帰期間Δtから粘度を決定するためのテーブルであり、吸引量、吸引速度、復帰期間Δtの組み合わせに応じた粘度がテーブル化されたものである。もちろん、関数形式で粘度を求めるようにしてもよい。また、吸引量や吸引速度などが常に一定であるならば、復帰期間Δtから粘度を一意に決定することもできる。
【0033】
ちなみに、このようなテーブルはあらかじめ実験などによって決定しておくのが望ましい。
【0034】
図5には、図1に示した吐出条件テーブル36の具体例が示されている。この吐出条件テーブルは上記の空中吐出に対応したものであり、吐出速度、粘度、目標分注量(吐出量)の組み合わせごとに吐出ストローク(吐出量)が対応付けられたテーブルである。このようなテーブルは、上記粘度テーブル34と同様にあらかじめ実験などによって作成しておくのが望ましい。ちなみに、吐出速度が一定であれば、それを前提として吐出条件テーブルを構成することもできるし、またテーブル構成によらずに吐出速度、粘度、目標分注量をパラメータとした関数形式によって吐出ストロークを決定するようにしてもよい。
【0035】
ちなみに、本実施形態においては、制御部32が吐出条件を決定する場合において、粘度が所定値以上である場合には、液中吐出が選択され、それ以外の場合には空中吐出が選択されている。空中吐出が選択された場合には吐出条件テーブル36に従って吐出ストローク(及び吐出速度)が決定されている。液中吐出が選択された場合には、目標分注量に応じた吐出ストロークが一意に設定され、推定された粘度に応じて吐出速度、ポンプ動作終了からノズルチップの離液までの待機時間などの吐出条件が決定されている。また、本実施形態においては、空中吐出を行う場合に、吐出完了時に分注ポンプ18の逆転動作がなされており、これによって液切れがより良好となるように制御されている。この場合においても、その逆転動作開始のタイミングやその動作量などについて上記の推定された粘度に従って決定を行うようにするのが望ましい。
【0036】
ちなみに、そのような逆転動作は微小ストロークだけ行われるものであるため、それについては粘度によらずに、固定条件としてもよい。
【0037】
次に、図6を用いて図1に示した分注装置の動作例について図1を参照しながら説明する。
【0038】
まず、S101では、吸引対象となった液体100を収容した容器6上にノズル10が位置決めされ、そのノズル10が下方に引き下ろされる。S102では、所定の液面検出を行って、液体100の液面下にノズル10の先端が例えば2mm程度進入した時点でノズル10の下降が停止される。
【0039】
S103では、分注ポンプ18の吸引動作が開始される。これによって、ノズル10内に具体的にはノズルチップ12内にその先端開口を介して液体100が吸い込まれることになる。
【0040】
この場合に、その吸い込みに伴って液面が下降するが、本実施形態においてはS104においてその液面の下降に伴うノズル10の位置の下降制御がなされる。
【0041】
S105において、所定の吸引量だけ液体100の吸引が完了したと判断された場合、分注ポンプ18の吸引動作が終了する。
【0042】
その後、S106では、図2(B)で示したように、吸引動作終了後の圧力波形の変動が監視され、圧力勾配が平坦化条件を満たすか否かが逐次的に判定される。具体的には、図3に示したように、一定期間ごとの圧力の差分値ΔPが判定値Kと比較され、その差分値ΔPが判定値Kよりも小さくなった時点で復帰タイミングと判定され、その復帰タイミングを離液タイミングとしてS107でノズル10が上方に引き上げられる。このように、圧力が所定値に復帰した時点をもって速やかにノズル10を引き上げることが可能であるので、液体の粘度に応じて最小限のノズル待機期間を設定することができ、吸引時間の削減を図ることが可能である。
【0043】
上記S107では、ノズル上昇と共に復帰期間ΔTから上述した粘度テーブル34を参照することによって液体の粘度が推定され、更にその推定された粘度に従って、吐出条件テーブル36などによって吐出条件が設定される。これは制御部32によって行われる。この場合において、吐出条件には、上述した空中吐出方式、液中吐出方式といった吐出方式の選択、空中吐出の場合は、吐出速度や吐出時のストローク量、逆転吸引動作条件など、液中吐出の場合は、吐出速度、ノズルチップ離液までの待機時間などといった諸々の条件が含まれる。
【0044】
いずれにしても、液体の粘度が既知となるので、その粘度に従った最適な吐出条件が選択されることになる。
【0045】
S108では、ノズル10が搬送され、吐出先の容器8上に位置決めされ、その後ノズル10が下方に引き下ろされる。S109では、S107で選択された吐出方式に従って、ノズル10が液面上にすなわち空中に位置決めされ、あるいはノズル10の先端が液中に位置決めされる。
【0046】
S110では、分注ポンプ18の吐出動作が開始され、その後、S111では、必要に応じて液面の上昇に伴ってノズル10が上方へ追従上昇される。もちろん、空中吐出を液面の上昇分よりもさらに上方で行う場合においては、S111の工程は不要である。
【0047】
S112では、目標分注量すなわち目標吐出量の液体が吐出されたと判断された時点をもって分注ポンプ18の吐出動作が終了される。
【0048】
S113では、液中吐出か空中吐出かに応じて、逆転吸引動作を行わせるか否かが判断される。空中吐出の場合には、ノズルチップ先端の液切れのためにS114において分注ポンプ18の動作が吸引動作に転換され、その後、S115において当該逆転吸引動作が終了する。
【0049】
S116では、ノズル10によって同一液体についての再吐出を行うか否かが判断され、そのような分注動作を続行する場合には、上記S108からの各工程が繰り返し実行され、その場合においても、S107で設定された吐出条件に従って吐出動作が行われる。
【0050】
S117では、必要に応じてノズルチップ12の交換などの処理がなされ、その後、このルーチンが終了する。そして、必要に応じてまたS101からの各工程が繰り返し実行される。上記実施形態においては、ディスポーザブル型のノズルチップ12が利用されていたが、もちろんノンディスポーザブル型のノズルを利用する場合においても上記同様の手法を適用することができる。
【0051】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、分注対象となった液体の物性に応じて分注処理効率を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る分注装置の好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】 分注ポンプの動作と圧力波形との関係を示す図である。
【図3】 圧力復帰タイミングの判定方法を示す説明図である。
【図4】 粘度テーブルの具体例を示す図である。
【図5】 吐出条件テーブルの具体例を説明するための図である。
【図6】 分注装置の動作例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ノズル、12 ノズルチップ、16 配管、18 分注ポンプ、20 圧力センサ、22 シリンジ、24 ピストン、26 センサ信号出力回路、28 ポンプ駆動部、30 ノズル搬送部、32 制御部、34 粘度テーブル、36 吐出条件テーブル。

Claims (4)

  1. ノズルと、
    前記ノズルに対して配管を介して接続された分注ポンプと、
    前記配管に接続された圧力検出器と、
    前記ノズルによる対象液体の吸引時において、前記圧力検出器によって検出される前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形に基づいて、前記対象液体の物性を推定する物性推定手段と、
    前記推定された物性に応じて前記ノズルによる対象液体の吐出時における吐出条件を設定する吐出条件設定部と、
    を含み、
    前記吐出条件設定部は、前記ノズルを液面から離して吐出を行う空中吐出方式、及び、前記ノズルを液面に接触させて吐出を行う液中吐出方式のいずれかの吐出方式を選択することを特徴とする分注装置。
  2. 請求項記載の装置において、
    前記吐出条件設定部は、前記空中吐出方式の場合には分注ポンプの動作速度、分注ポンプの動作量、分注ポンプの逆転動作開始タイミング、及び、分注ポンプの逆転動作量の中の少なくとも1つを決定し、前記液中吐出方式の場合には分注ポンプの動作速度、及び、分注ポンプの動作後の離液までの待機時間の少なくとも1つを決定することを特徴とする分注装置。
  3. 請求項記載の装置において、
    前記対象液体の吐出速度、前記対象液体の目標吐出量及び前記対象液体の物性としての粘度に基づいて前記吐出条件を設定するための吐出条件テーブルを含むことを特徴とする分注装置。
  4. ノズルと、
    前記ノズルに対して配管を介して接続された分注ポンプと、
    前記配管に接続された圧力検出器と、
    前記ノズルを対象液体の液面内に進入させて対象液体の吸引を行う場合に、前記圧力検出器によって検出される前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力波形に基づいて、前記分注ポンプの吸引動作完了後における圧力の平坦化時期を判定する平坦化時期判定手段と、
    前記平坦化時期に従って前記ノズルの離液タイミングを判定する離液タイミング判定手段と、
    前記吸引動作完了後から前記平坦化時期までの復帰期間Δtに基づいて、前記対象液体の粘度を推定する粘度推定手段と、
    前記推定された粘度に応じて前記対象液体の吐出条件を設定する吐出条件設定部と、
    を含み、
    前記吐出条件設定部は、前記ノズルを液面から離して吐出を行う空中吐出方式、及び、前記ノズルを液面に接触させて吐出を行う液中吐出方式のいずれかの吐出方式を選択し、
    前記対象液体に応じて前記離液タイミング及び前記吐出条件が適応的に設定されることを特徴とする分注装置。
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