JP3739993B2 - 作業車の変速装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はトラクタ等の作業車の、走行系変速機構及びPTO系変速機構を備えてなる変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、高低切換装置と、後進段を含む3段の多段変速機構とを直列に連結した走行系変速機構、及び、2段のPTO系変速機構で構成される作業車の変速装置は公知とされている。例えば、実開昭63−166836号公報の技術である。該技術において、多段変速機構が後進段を含むレバーガイドと、PTO系変速機構のレバーガイドとを座席の一側におき機体の前後に配置していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような構成であると、多段変速機構が後進段を含むためそのレバーガイドはH型となり、前後方向だけでなく側方へも回動するので、操作性が劣っていた。また、PTO系変速機構の速度段数を増やすとレバーガイドは座席の後方へ延長するしかなく、操作性が悪くなってしまうのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような課題を解決するために、次のような手段を用いるものである。
請求項1においては、多段変速機構BとPTO変速装置Aとをストレートギアチェンジ式に構成し、該多段変速機構Bの多段変速レバー14を案内するためのレバーガイド20aと、PTO系変速装置AのPTO変速レバー15を案内するためのレバーガイド20bとを、座席の一側で、機体前後方向に沿って、且つ、互いに直線でかつ並列になるように配置し、変速途中にニュートラル位置を設け、ミッションケース4内に、PTO変速軸29とPTOカウンター軸34とを互いに平行に架設して備え、PTOカウンター軸34にはクラッチ25の出力を入力しており、該PTOカウンター軸34に軸方向の間隔を有して、PTO系変速装置Aの変速ギアを備え、該変速ギアに対して、前後方向に沿って直線形状のレバーガイド20b内でPTO変速レバー15を回動することにより、動力を伝達する入切自在のシフトギア32を、前記PTO変速軸29上に摺動自在に備え、前記多段変速機構Bのレバーガイド20aの後端より後方に、PTO系変速装置Aのレバーガイド20bの中立域が位置するものである。
【0005】
請求項2においては、シフトギア32は2連構成であり、該シフトギア32を軸方向一方側から他方側に摺動させるとき、PTO変速装置は、正回転3段と、1つのニュートラル位置と、逆回転1段を備え、ニュートラル位置は2つの正回転段の途中に設定し、その一方の正回転段を境にしてニュートラル位置の反対側に逆回転段を設定したものである。
【0006】
請求項3においては、PTO変速軸29はクラッチ25の出力軸である入力軸26と軸心延長上に架設されており、該PTO変速軸29は前記入力軸26と同芯で相対回転自在に支持され、該入力軸26とPTO変速軸29に平行してPTOカウンター軸34を配置し、該PTO変速軸29とPTOカウンター軸34との間に前記PTO系変速機構を構成したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明の一実施例を図面に従って説明する。
図1はトラクタの平面図、図2はPTO変速レバーのレバーガイドと多段変速レバーのレバーガイドの平面図、図3は変速装置全体のスケルトン図、図4はミッションケース側面断面図、図5はPTO系変速機構の断面図、図6は多段変速機構の断面図である。
【0008】
作業車としてトラクタは図1に示すように、ボンネット1内にエンジンEを収納して、該エンジンEの駆動力によって、後述するミッションケース4内の変速装置を介して後輪3及び前輪2、PTO軸6が駆動される。前記ボンネット1の後部上にハンドル5を設け、該ハンドル5の側部の左右にコラムシフト式の前後進切換レバー7とアクセルレバー8を突出している。また、座席10の右側のフエンダー11R上にポジションコントロールレバー12とデプスコントロールレバー13が配設され、座席10の左側のフエンダー11L上に、PTO変速レバー15と多段変速レバー14が配設され、座席10前下部にフロアシフト式に構成した高低切換レバー16と前輪駆動入/切レバー17が配設されている。
【0009】
前記フエンダー11L上の多段変速レバー14とPTO変速レバー15は図2に示すように、ガイド板20に、前後方向に沿って直線状のレバーガイド20a及び、20bが平行に、かつ、前後に位置をずらせて開口され、該レバーガイド20a及び、20bより多段変速レバー14とPTO変速レバー15がそれぞれ突出されている。PTO変速レバー15のレバーガイド20bには逆転側へ容易にシフトできないように、逆転シフト防止手段が設けられており、バネ21の付勢力によりピン22をレバーガイド20b内へ突出してPTO変速レバー15が逆転位置「R」にシフトできないよう牽制し、ピン22を引っ張ることにより牽制を解除して逆転位置「R」へシフトできるようにしている。尚、本実施例では、多段変速レバー14は4段変速であって2速と3速の間にニュートラル位置を設け、PTO変速レバー15は正回転3段と逆回転1段を設けた実施例を示しているが、1速、2速等の変速段数及び位置は限定するものではない。
【0010】
図3、図4において、ミッションケース4内に設けられるトランスミッションの構成を説明すると、ミッションケース4内に入力軸26、第一PTOカウンター軸34、第二伝動軸41、第三伝動軸49、第四伝動軸56が平行に横架され、入力軸26にメインクラッチ25を介してエンジンEからの動力が伝達される。該第一PTOカウンター軸34と第二伝動軸41との間の後側寄りに前後進切換機構Cが次のように構成されている。即ち、第一PTOカウンター軸34には前進用変速ギア35と後進用変速ギア39を設け、第二伝動軸41には前記前進用変速ギア35と噛み合う遊転歯車43、及び、前記後進用変速ギア39と中間歯車40を介して噛み合う遊転歯車42を設けている。その遊転歯車42、43の間の第二伝動軸41上に、該軸41に対して相対回転不能で、且つ、軸方向摺動自在なコーン式同期クラッチのクラッチスライダ44を配置して、前記前後進切換レバー7のシフト操作によりクラッチスライダ44がいずれか一方の逆転歯車42、43を第二伝動軸41に係合することで、正逆転の動力が第二伝動軸41に伝達されるように構成している。
【0011】
また、前記第二伝動軸41と第三伝動軸49の間の前側寄りに前記高低切換機構Dが次のように構成されている。即ち第二伝動軸41には低速用遊転歯車45と高速用遊転歯車46を設け、第三伝動軸49には前記低速用遊転歯車45と噛み合う固定歯車50、及び、前記高速用遊転歯車46と噛み合う固定歯車51を設けている。その遊転歯車45、46の間の第二伝動軸41上に、該軸41に対して相対回転不能で、且つ、軸方向摺動自在なクラッチスライダ47を配置して前記高低切換レバー16のシフト操作によってクラッチスライダ47がいずれか一方の遊転歯車45、46を第二伝達軸41に係合することで高低速の動力が第三伝動軸49に伝達されるように構成している。
【0012】
また、前記第三伝動軸49と第四伝動軸56の間に多段変速機構Bを次のように構成している。即ち、第三伝動軸49には紙面右方より順に、2速用固定歯車55、1速用固定歯車54、4速用固定歯車53、3速用固定歯車52を設けている。そして第四伝動軸56には、前記したそれぞれの固定歯車55、54、53、52と噛み合う遊転歯車60、59、58、57を設けている。前記遊転歯車59、58の間の第四伝動軸56上に、該軸56に対して相対回転不能で、且つ、軸方向摺動自在なクラッチスライダ61を配置して、前記の多段変速レバー14のシフト操作により該クラッチスライダ61は直線的に摺動されてクラッチスライダ61が前記4つの遊転歯車59、60、57、58の内いずれか一つを第四伝動軸56に係合することで1速から4速までの動力が第四伝動軸56に伝達されるようにし、ストレートギアチェンジ式の多段変速機構Bが構成されている。これら前後進切換機構Cと高低切換機構Dと多段変速機構Bとは直列に連結されて走行系変速機構がミッションケース4内で構成されている。
【0013】
また、前記第一PTOカウンター軸34に平行するPTO変速軸29が前記入力軸26の軸端に相対回転自在に横架され、前記第一PTOカウンター軸34とPTO変速軸29との間にPTO系変速機構Aが次のように構成されている。即ち、第一PTOカウンター軸34には、前記固定歯車35が兼務する正転2速用固定歯車、及び、正転1速用変速ギア36、逆転用変速ギア38を設け、PTO変速軸29には前記正転2速用固定歯車35と噛み合う遊転歯車30、正転1速用変速ギア36と噛み合う遊転歯車31及び、前記逆転用変速ギア38と中間歯車33を介して噛み合う遊転歯車27を設け、PTO変速軸29の端部には前記入力軸26と一体回転する係合歯26bを相対回転可能に配置している。その遊転歯車36、27の間のPTO変速軸29上に、該軸29に対して相対回転不能で、且つ、軸方向摺動自在なシフトギア32を配置して、PTO変速レバー15の回動によりシフトギア32が摺動されてシフトギア32が前記遊転歯車30、31、27及び係合歯26bの内いずれか一つをPTO変速軸29に係合することで正転1速、2速、3速および逆転の動力がPTO変速軸29に伝達されるようにし、ストレートチェンジ式のPTO系変速機構Aが構成されている。
【0014】
前記のPTO系変速機構の詳細は図5に示すように、入力軸26の後部に入力歯車26aとPTO用の係合歯26bが刻設され、該入力歯車26aと係合歯26bの間に前記遊転歯車27が設置されている。また、入力軸26後端の中心部に凹部を形成してPTO変速軸29の前端が回転自在に嵌合され、該PTO変速軸29上にはスプライン部29aが形成されている。スプライン部29aの一側に前記係合歯26bを隣接させてある。前記した遊転歯車30にはボス部が設けられて該ボス部の端部に係合歯30aが刻設され、前記スプライン部29aに隣接させている。また、前記遊転歯車30のボス部上に前記の遊転歯車31を設置させている。前記遊転歯車27、31にはそれぞれ係合歯27a、31aを刻設してある。前記スプライン部29aには、前記係合歯26b、30aに噛合可能な内歯32a及び、前記係合歯27a、31aに噛合可能な外歯32b、32cを有する前記シフトギア32を軸方向摺動自在に嵌合してある。
【0015】
そして、前記入力歯車26aは第一PTOカウンター軸34上の歯車37と噛合してエンジン動力を第一PTOカウンター軸34に伝達している。前記PTO変速レバー15を直線的にシフト操作してシフトギア32を摺動させて、内歯32aを係合歯30aに噛合させると、入力軸26の入力歯車26aから歯車37→第一PTOカウンター軸34→歯車35→歯車30→シフトギア32→スプライン部29a→PTO変速軸29に動力が伝えられ、PTO変速「正転1速」とされる。
【0016】
同様にシフトギア32の外歯32cを係合歯31aに噛合させると、入力歯車26aから歯車37→第一PTOカウンター軸34→歯車36→歯車31→シフトギア32→スプライン部29a→PTO変速軸29と伝えられてPTO変速「正転2速」とされる。同様にシフトギア32の内歯32aを係合歯26bに噛合させると、入力軸26よりシフトギア32を介してPTO変速軸29と伝えられてPTO変速「正転3速」とされる。同様にシフトギア32の外歯32bを係合歯27aに噛合させると、入力歯車26aから歯車37→第一PTOカウンター軸34→歯車38→中間歯車33→歯車27→シフトギア32→スプライン部29a→PTO変速軸29と伝えられてPTO変速「逆転(R)」とされるのである。
【0017】
前記した多段変速機構の詳細は、図6に示すように、第四伝動軸56上にスプラインカラー56aを相対回転不能に固設してあり、該スプラインカラー56aの一側および他側には、前記遊転歯車57、60のボス部端に刻設した係合歯57a、60aを隣接させている。そして、前記遊転歯車57、60のそれぞれのボス部上に前記した遊転歯車58、59を設置させている。前記遊転歯車58、59にはそれぞれ係合歯58a、59aを刻設してある。前記スプラインカラー56aには、前記係合歯57a、60aに噛合可能な内歯61a及び、前記係合歯58a、59aに噛合可能な外歯61b、61cを有する前記クラッチスライダ61を軸方向摺動自在に嵌合してある。
【0018】
従って、前記多段変速レバー14を直線的にシフト操作することによりクラッチスライダ61を摺動して、外歯61cを係合歯59aに噛合させると、第三伝動軸49→歯車54→歯車59→クラッチスライダ61→スプラインカラー56a→第四伝動軸56と伝えられ、「1速」が得られる。同様に、内歯61aを係合歯60aに噛合させると、第三伝動軸49→歯車55→歯車60→クラッチスライダ61→スプラインカラー56a→第四伝動軸56と伝えられ、「2速」が得られる。同様に、内歯61aを係合歯57bに噛合させると、第三伝動軸49→歯車52→歯車57→クラッチスライダ61→スプラインカラー56a→第四伝動軸56と伝えられ、「3速」が得られる。同様に、外歯61cを係合歯58bに噛合させると、第三伝動軸49→歯車53→歯車58→クラッチスライダ61→スプラインカラー56a→第四伝動軸56と伝えられ、「4速」が得られる。
【0019】
このようにして第四伝動軸56に伝えられた動力は図3に示すように、第四伝動軸56前端に形成したスプライン56bからユニバーサルジョイント62を介して前輪駆動入力軸63と連結され、該前輪駆動入力軸63より前記前輪駆動入/切レバー17の回動によって摺動されるクラッチスライダ64、歯車66を介して前デフケースDFの入力軸65に伝えられて、前輪2を駆動できるようにしている。また、前記第四伝動軸56後端にはピニオン56cが形成されて、後デフ装置DRのリングギア67と噛合され、該後デフ装置DRを介して後輪3が駆動されるのである。68はデフロック装置、69はブレーキである。
【0020】
このように構成することにより、PTO系変速機構をストレートギアチェンジ式としてコンパクトにまとめながら多段化が実現され、変速装置全体がコンパクト化される。
【0021】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成したので次のような効果を奏するものである。
即ち、PTO系変速機構をコンパクトにまとめながら多段化が実現され、変速装置全体がコンパクト化される。更に、実施例に示したように逆転段を設けると操作性向上に加え、作業性の上で使い勝手が良くなる。その場合、逆転防止手段をPTO変速レバーのレバーガイドに設けておくことでストレートチェンジ式であっても誤操作は防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 トラクタの平面図である。
【図2】 PTO変速レバーのレバーガイドと多段変速レバーのレバーガイドの平面図である。
【図3】 変速装置全体のスケルトン図である。
【図4】 ミッションケース側面断面図である。
【図5】 PTO系変速機構の断面図である。
【図6】 多段変速機構の断面図である。
【符号の説明】
A PTO系変速機構
B 多段変速機構
C 前後進切換機構
D 高低切換機構
4 ミッションケース
10 座席
14 多段変速レバー
15 PTO変速レバー
20a,20b レバーガイド
25 前段のクラッチ
29 PTO変速軸
32 シフトギア
34 PTOカウンター軸
35 前進用変速ギア
36 正転1速用変速ギア
38 逆転用変速ギア
39 後進用変速ギア
61 クラッチスライダ
Claims (3)
- 多段変速機構BとPTO変速装置Aとをストレートギアチェンジ式に構成し、該多段変速機構Bの多段変速レバー14を案内するためのレバーガイド20aと、PTO系変速装置AのPTO変速レバー15を案内するためのレバーガイド20bとを、座席の一側で、機体前後方向に沿って、且つ、互いに直線でかつ並列になるように配置し、変速途中にニュートラル位置を設け、ミッションケース4内に、PTO変速軸29とPTOカウンター軸34とを互いに平行に架設して備え、PTOカウンター軸34にはクラッチ25の出力を入力しており、該PTOカウンター軸34に軸方向の間隔を有して、PTO系変速装置Aの変速ギアを備え、該変速ギアに対して、前後方向に沿って直線形状のレバーガイド20b内でPTO変速レバー15を回動することにより、動力を伝達する入切自在のシフトギア32を、前記PTO変速軸29上に摺動自在に備え、前記多段変速機構Bのレバーガイド20aの後端より後方に、PTO系変速装置Aのレバーガイド20bの中立域が位置することを特徴とする作業車の変速装置。
- シフトギア32は2連構成であり、該シフトギア32を軸方向一方側から他方側に摺動させるとき、PTO変速装置は、正回転3段と、1つのニュートラル位置と、逆回転1段を備え、ニュートラル位置は2つの正回転段の途中に設定し、その一方の正回転段を境にしてニュートラル位置の反対側に逆回転段を設定したことを特徴とする請求項1記載の作業車の変速装置。
- PTO変速軸29はクラッチ25の出力軸である入力軸26と軸心延長上に架設されており、該PTO変速軸29は前記入力軸26と同芯で相対回転自在に支持され、該入力軸26とPTO変速軸29に平行してPTOカウンター軸34を配置し、該PTO変速軸29とPTOカウンター軸34との間に前記PTO系変速機構を構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車の変速装置。
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