JP3739942B2 - 低熱収縮フイルムおよびそれを支持体とする熱現像写真感光材料 - Google Patents
低熱収縮フイルムおよびそれを支持体とする熱現像写真感光材料 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低熱収縮フィルムおよびそれを支持体とする熱現像写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀写真感光材料は、撮影後現像液を用いて複雑な処理をするため、一部のユーザーには利用できなかった。
そのため、米国特許3152904号明細書、米国特許3457075号明細書、特公昭43−4921号公報、特公昭43−4924号公報等に記載されているような80〜150℃の熱による現像方法(以下熱現像と略することがある)を用いた写真感材が提唱されている。
しかし、印刷用感材にこの方式の感材を用いた場合、熱現像中に発生する寸法変化のために、画像の歪みや4版(青、緑、赤、墨)の色ズレが発生した。これを解決するために、特開平8−211547号公報に開示されている低張力で熱処理する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法では熱現像直後、即ち熱現像後3時間以内に寸法が変化し、色ズレが発生するという問題があった。これは短時間で露光・現像・焼き付けを行なう新聞用途において問題であり、解決が望まれていた。
従って、本発明は寸法安定性にすぐれた低熱収縮フィルムおよびそれを支持体とする熱現像写真感光材料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
これらの課題は、下記の手段によって達成された。
[1]熱現像に相当する115℃での熱処理直後の下記1式に従う寸法変化(ΔL ( % ) )が、MD方向、TD方向とも0%以上+0.05%以下であり、該熱処理前後の下記2式に従う寸法変化(δ ( % ) )がMD方向、TD方向とも−0.04%以上+0.04%以下であり、0.3 kg/cm 2 以上15 kg/cm 2 以下の張力で、135℃以上200℃以下で20秒以上5分以下の低張力熱処理が施されており、かつフィルムの両面に35℃以上140℃以下で、35℃の場合12時間〜1週間、140℃の場合0.1分〜1時間の範囲内で熱処理された防湿層を有する芳香族ポリエステルから成ることを特徴とする低熱収縮フィルム。
ΔL ( % ) =100×(L 120 −L 3 )/L 3 (1式)
(1式中、ΔLは熱現像(熱処理に相当する)直後の寸法変化を表し、L 120 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に120分放置後の寸法を表し、L 3 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に3分放置後の寸法を表す。)
δ ( % ) =100×(Lf−Ld)/Lf (2式)
(2式中、Lfは25℃55%RHで1日調湿した熱現像前の平衡寸度を表し、Ldは115℃で30秒熱現像後25℃55%RHで1日調湿した平衡寸度を表す。)
[2]飽和吸湿量の1/2到達時間が1時間以上100時間以下である[1]項に記載の低熱収縮フィルム。
[3]前記防湿層の水蒸気透過係数が0以上1×10 -8 ( cm 3 (STP) ・ cm -1 ・ sec -1 ・ cmHg -1 )以下であることを特徴とする[1]又は[2]項に記載の低熱収縮フィルム。
[4]該防湿層がポリ弗化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンまたはポリビニルアルコールからなることを特徴とする[3]項に記載の低熱収縮フィルム。
[5]該防湿層がポリ塩化ビニリデンの場合、前記ポリマーの結晶性に由来する1043cm -1 の吸光度(I(c))と非晶性に由来する1069cm -1 の吸光度(I(a))の比I(c)/I(a)が1.2以上2.5以下であることを特徴とする[4]項に記載の低熱収縮フィルム。
[6]115℃での熱現像直後の下記1式に従う寸法変化(ΔL ( % ) )が、MD方向、TD方向とも0%以上+0.05%以下であり、該熱現像前後の下記2式に従う寸法変化(δ ( % ) )がMD方向、TD方向とも−0.04%以上+0.04%以下であり、0.3 kg/cm 2 以上15 kg/cm 2 以下の張力で、135℃以上200℃以下で20秒以上5分以下の低張力熱処理が施されており、かつフィルムの両面に35℃以上140℃以下で、35℃の場合12時間〜1週間、140℃の場合0.1分〜1時間の範囲内で熱処理された防湿層を有する低熱収縮フィルムを有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
ΔL ( % ) =100×(L 120 −L 3 )/L 3 (1式)
(1式中、ΔLは熱現像(熱処理に相当する)直後の寸法変化を表し、L 120 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に120分放置後の寸法を表し、L 3 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に3分放置後の寸法を表す。)
δ ( % ) =100×(Lf−Ld)/Lf (2式)
(2式中、Lfは25℃55%RHで1日調湿した熱現像前の平衡寸度を表し、Ldは115℃で30秒熱現像後25℃55%RHで1日調湿した平衡寸度を表す。)
[7][1]〜[5]のいずれか1項に記載の低熱収縮フィルムを支持体として用いることを特徴とする[6]項に記載の熱現像写真感光材料。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の低熱収縮フィルムとは、熱現像(熱処理に相当する)直後の寸法変化がMD(縦方向)、TD(横方向)とも0%以上+0.05%以下、より好ましくは0%以上+0.04%以下、さらに好ましくは0%以上+0.03%以下である。また本発明の熱現像写真感光材料とは、熱現像直後の寸法変化が、MD方向、TD方向とも0%以上+0.05%以下、より好ましくは0%以上+0.04%以下、さらに好ましくは0%以上+0.03%以下である。本発明でいう熱現像直後の寸法変化(ΔL)とは、1式で求めた値である。なお、「+」は経時で寸法が伸びることを意味する。
ΔL(%)=100×(L120−L3)/L3 (1式)
ΔL ;熱現像(熱処理に相当する)直後の寸法変化
L120 ;熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に120分 放置後の寸法
L3 ;熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に3分放置 後の寸法
【0006】
我々は鋭意研究の結果、この熱現像直後の寸法変化が下記機構で起こることを解明し本発明に至った。
▲1▼熱現像中に支持体用フィルム中の水分が揮発する。
▲2▼室温に放置する間に水分が再吸着し、それに対応してフィルムが伸張する。
(この水分の吸着にはPETフィルムの場合1〜5時間を要し、この間に寸法変化が発生する)
本発明においては、下記メカニズムの合理性につき検討した。
(1)熱現像中に発生する水分の揮発を抑制する。
(2)熱現像後の吸湿を速やかに終了させる。
そして、本発明の支持体および感光材料の熱現像前後の寸法変化はMD、TDとも−0.04%以上+0.04%以下、より好ましくは−0.03%以上+0.04%以下、さらに好ましくは−0.02%以上+0.03%以下であることである。ここで云う熱現像前後の寸法変化率(δ)とは2式で示した求められる。
δ(%)=100×(Lf−Ld)/Lf (2式)
Lf;25℃55%RHで1日調湿した熱現像前の平衡寸度
Ld;115℃で30秒熱現像後、25℃55%RHで1日調湿した平衡寸度
【0007】
その結果、本発明は熱現像(熱処理)中に発生する水分の揮発が抑制されたフィルムにより達成された。すなわち、フィルム上に水分の揮発を防ぐ防湿層(バリア層)を両面に設け、水蒸気透過係数が0以上1×10-8(cm3(STP)・cm-1・sec -1・cmHg-1)以下、より好ましくは0以上5×10-9(cm3(STP)・cm-1・sec -1・cmHg-1)以下、さらに好ましくは0以上3×10-9(cm3(STP)・cm-1・sec -1・cmHg-1)以下の防湿層を設けることにより本発明の課題が達成された。この結果、熱現像後の吸水速度が低下し、飽和吸湿量の1/2到達時間が1時間以上100時間以下、より好ましくは1時間30分以上50時間以下、さらに好ましくは2時間以上20時間以下となる。なお、「飽和吸湿量の1/2到達時間」とは、25℃20%RHで調湿したサンプルを25℃75%RHに移し、20%RHの平衡寸法から70%RHの平衡寸法に達する過程で、これらの寸法の平均寸法に到達する所要時間である。防湿層の素材として下記のようなポリ弗化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0008】
【0009】
これらの内#1〜#11の有機化合物はフィルムの両面に塗設するのが好ましく、好ましい厚みは片面1μm以上10μm未満、より好ましくは1.2μm以上7μm以下、さらに好ましくは1.5μm以上4μm以下である。これらの化合物のうち、より好ましいのが#1、#6、#3、#8、#11であり、さらに好ましいのが#1,#6である。
これらの化合物は溶剤に溶解したものを塗設しても良く、あるいは水中に分散させたラテックスにした後塗布しても良い。さらに基材フィルム上に共押出ししても良い。これらの化合物は単独で用いても良く、2種以上のものを積層あるいは混合して用いても良い。さらに、易滑性付与のためにSiO2 、TiO2 、BaSO4 、CaCO3 、タルク、カオリン等の微粒子や、導電性付与のために、結晶性金酸化物(例えばZnO、TiO2 、SnO2 等)又はその複合酸化物微粒子を添加しても良い。また染料を固体で分散することも好ましい。
【0010】
#12〜18の無機化合物は真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法(真空法)で設けても良く、少量のバインダーと混合して設ける方法(バインダー法)も好ましい。真空法の場合、生産性の観点から真空蒸着法が好ましい。これらの化合物の中で、透明性の観点から特に#12が好ましい。さらに#12の場合、特開平8−224795号公報に記載のアルカリ土類金属の弗化物やマグネシウム酸化物を併せて蒸着するとさらにバリアー性が向上して好ましい。
これらの蒸着層は単層であっても良く、2種以上の化合物を積層しても良い。これらの層の好ましい厚みは、片面10nm以上1000nm以下、より好ましくは20nm以上800nm以下、さらに好ましくは30nm以上500nm以下である。バインダー法の場合、#12〜18の無機化合物をバインダーに対し体積比で0.1%以上100%以下、より好ましくは0.5%以上50%以下、さらに好ましくは1.0%以上30%以下混合して塗布する。
【0011】
バインダーは高分子材料であればよく、より好ましくはポリエステル系ポリマー(PET、PEN等)、ポリアミド系ポリマー(ナイロン、ゼラチン等)、ポリビニル系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、シンジオタクトックおよびアタクチックおよびアイソタクチックポリスチレン等)、セルロース誘導体(硝酸セルロース、酢酸セルロース等)、ポリカーボネイト、ポリオレフィン系ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム等)等があげられる。
これらの内、ゼラチン、ポリオレフィン、塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴムが特に好ましい。バインダー法の場合、バインダーと#12〜18の無機化合物を有機溶剤と混合して支持体上に塗布してもよく、ラテックス分散したバインダー水溶液に混合してフィルム上に塗布しても良い。また、高温で熔融したバインダー中にこれらの無機化合物を混練した後共押出ししても良い。バインダー法の場合、無機化合物間の隙間を少なくするためカレンダーリングすることが好ましい。
さらにこれらの無機化合物層と上記#1〜10の有機化合物層を併せて用いてもよい。
【0012】
これらの防湿層層を載せる基材となるフィルムは熱可塑性樹脂が好ましく、力学強度、熱寸法安定性、透明性から特に好ましいのがポリエステル樹脂である。さらに好ましいのが芳香族ポリエステル樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等を挙げることができる。これらのフィルムの厚みは50μm以上500μm以下が好ましく、75μm以上300μm以下がさらに好ましく、90μm以上200μm以下がさらに好ましい。
これらの層を付与する前にフィルム表面を、グロー放電処理(例えば特開平8−194286)、コロナ処理(例えば特公昭48−5043号)、紫外線処理(例えば特公昭43−2603号)や火炎処理を行なうのも密着を上げる上で好ましい。
このようなバリアー層を付与することで熱現像中に揮発する水分量を少なくできる上、熱現像後の吸湿速度も抑制する効果がある。この結果、熱現像後の急激な吸湿による寸法変化が無くなり、4版熱現像した後の時間差に起因する寸法変化をも小さくできる効果も有する。
【0013】
本発明の低熱収縮フィルムを支持体として感材(感材に使用するときは支持体と呼ぶことにする。)を作成するが、感光層塗設に先だって感光層の反対側にバック層(BC層)、感光層側に下塗層を付与するのが好ましい。これらの層は直接支持体に塗布しても良く、支持体にグロー放電処理(例えば特開平8−194286)、コロナ処理(例えば特公昭48−5043号)、紫外線処理(例えば特公昭43−2603号)や火炎処理を行った後塗布することも好ましい。
【0014】
重層下塗層を設ける場合、第1層では、例えば、塩化ビニル、ブタジエン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体、エポキシ樹脂、ゼラチン、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニルなどが用いられる。また必要に応じて、トリアジン系、エポキシ系、メラミン系、ブロックイソシアネートを含むイソシアネート系、アジリジン系、オキサザリン系等の架橋剤、コロイダルシリカ等の無機粒子、界面活性剤、増粘剤、染料、防腐剤などを添加してもよい。また下塗第2層では主にゼラチンが用いられる。
【0015】
単層の下塗り層を設ける場合、多くは支持体を膨潤させ、下塗りポリマーと界面混合させる事によって良好な接着性を得る方法が多く用いられる。この下塗りポリマーとしては、ゼラチン、ゼラチン誘導体、ガゼイン、寒天、アルギン酸ソーダ、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、無水マレイン酸共重合体などの水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロースエステル、塩化ビニル含有共重合体、アクリル酸エステル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体、酢酸ビニル含有共重合体等のラテックスポリマー、などが用いられる。
【0016】
バック面の耐傷性付与、すべり性付与、カ−ル補償、帯電防止能の付与等のためにバック層を塗設することが好ましい。バック層は親水性コロイドをバインダーとしてもよく、疎水性ポリマーをバインダーとしてもよい。
親水性ポリマーとして最も好ましいものはゼラチンである。親水性ポリマーを用いる場合、より強固な密着性を付与するために、感光層と同じ下塗を行った上にバック層を塗設することも好ましい。
疎水性ポリマー層のバインダーとしてはポリメチルメタクリレート、エチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルポリマー、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、スチレン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ブタジエン等のゴム系ポリマーなどが用いられる。この層は1層でも2層以上でもよい。
【0017】
バック層あるいは/および下塗層には必要に応じてマット剤、すべり剤、帯電調整剤、界面活性剤、架橋剤を添加してもよい。
帯電調整剤として導電性の結晶性金酸化物又はその複合酸化物微粒子を添加して表面抵抗率を1012以下にすることも好ましい。導電性の結晶性酸化物又はその複合酸化物の微粒子としては体積抵抗率が107 Ωcm以下、より好ましくは105 Ωcm以下のものが望ましい。またその粒子サイズは0.01〜0.7μm、特に0.02〜0.5μmであることが望ましい。
【0018】
これらの導電性の結晶性金属酸化物あるいは複合酸化物の微粒子の製造方法については特開昭56−143430号公報の明細書に詳細に記載されている。即ち、第1に金属酸化物微粒子で暁成により作製し、導電性を向上させる異種原子の存在下で熱処理する方法、第2に焼成により金属酸化物微粒子を製造するときに導電性を向上させる為の異種原子を共存させる方法、第3に焼成により金属微粒子を製造する際に雰囲気中の酸素濃度を下げて、酸素欠陥を導入する方法等が容易である。金属原子を含む例としてはZnOに対してAl、In等、TiO2 に対してはNb、Ta等、SnO2 に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等があげられる。異種原子の添加量は0.01〜30mol%の範囲が好ましいが0.1〜10mol%であれば特に好ましい。これらのうちSbを添加したSnO2 複合金属酸化物微粒子が最も好ましい。
【0019】
またハレーション防止、セーフライト安全性向上、表裏判別性向上などの目的で、染色された非感光性親水性コロイド層(以降染色層と表わす)を設けてもよい。中でも染料を固体のまま分散する方法が好ましい。
このようなバック層は、1層でも多層でもよく、各層の厚みは0.02〜10μm、より好ましくは0.1〜7μmの範囲が好ましく、これらの層の全厚みは0〜5μmが好ましい。
【0020】
さらに支持体を低張力で熱処理する。これにより熱現像前後の支持体の寸法変化をMD方向、TD方向とも−0.04%以上+0.04%以下、より好ましくは−0.03%以上+0.04%以下、さらに好ましくは−0.02%以上+0.03%以下にすることができる。このような低張力熱処理は135℃以上200℃以下、より好ましくは145℃以上180℃以下、さらに好ましくは155℃以上170℃以下で、20秒以上5分以下、より好ましくは30秒以上4分以下、さらに好ましくは40秒以上3分以下で実施するのが好ましい。さらに熱処理を行っている時の張力を0.3kg/cm2以上15kg/cm2以下、より好ましくは0.5kg/cm2以上8kg/cm2以下、さらに好ましくは0.8kg/cm2以上3kg/cm2以下で実施するのが好ましい。この熱処理は支持体製膜後から感光層塗設前のどこで実施しても良いが、バック層及び下塗層塗設後、感光層塗設前の間に実施するのが最も好ましい。バック層下塗層塗設後に熱処理を実施することで支持体中に存在するオリゴマーの表面析出を抑制でき、熱処理に伴うヘーズの上昇を抑えることができる。
【0021】
さらに本発明では防湿層のバリアー性を向上させるため低温で熱処理(防湿層低温処理)する。好ましい熱処理温度は35℃〜140℃、より好ましくは40℃〜130℃、さらに好ましくは45℃〜120℃であり、熱処理時間は35℃の場合12時間〜1週間が好ましく、より好ましくは16時間〜4日間、さらに好ましくは20時間〜2日間である。140℃の場合0.1分から1時間が好ましく、0.2分から20分がより好ましく、0.4分から5分がさらに好ましい。このような熱処理は、搬送しながら実施しても良く、またロールに巻き取った後実施しても良い。ただしこの熱処理の後150℃を越える温度に曝されると防湿層のバリアー性が逆に低下するため、上述の低張力熱処理の後に実施するのが好ましい。
【0022】
とくに、ポリ塩化ビニリデンをバリアー層とする場合、このような熱処理により結晶化度が高くなり、バリアー性が向上する。これはATR−IR(全反射赤外分光法)を用い下記条件で測定できる。
すなわち、結晶性に由来する1043cm-1の吸光度(I(c))と非晶性に由来する1069cm-1の吸光度(I(a))の比I(c)/I(a)を1.2以上2.5以下にするのが好ましく、1.3以上2.3以下がより好ましく、1.4以上2.0以下が最も好ましい。
ATR−IR測定はKRS−5結晶板を用い、入射角60度で50回積算して測定する。1210cm-1と920cm-1の間を直線で結び、これをベースラインとして1043cm-1と1069cm-1の吸光度を求める。
【0023】
このようにして得た支持体上に熱現像写真感光層を塗設することで本発明の感光材料、即ち熱現像直後の寸法変化が、MD方向、TD方向とも0%以上+0.05%以下であり、熱現像前後の寸法変化がMD方向、TD方向とも−0.04%以上+0.04%以下であることを特徴とする請求項6に記載の熱現像写真感光材料を作ることができる。熱現像写真感光層は、特開平5−224371号公報や特開平10−10676号公報等に記載のものを用いることができる。即ち、感光層はバインダー中にハロゲン化銀、有機酸銀等を添加して形成される。バインダーとして、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(SBR)、ポリアクリレート系重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリメタクリレート系重合体のラテックスを挙げることができる。これらの分子量(Mw)は5千〜100万が好ましく、1万〜20万がより好ましい。
【0024】
より具体的には、アクリル樹脂系としてセビアンA−4635,46583,4601(ダイセル化学工業製)、Nipol Lx811,814,824,820,857(日本ゼオン製)、ゴム系樹脂としてLACSTAR7310K,3307B,4700H,7132C(大日本インキ化学製)、Nipol Lx416,410,438c,2507(日本ゼオン製)、オレフィン樹脂としてケミパールS120,SA100(三井石油化学製)が挙げられる。これらは単独で用いても良く、混合して用いてもよい。これらのラテックス中の固形分濃度は10%以上80%以下、より好ましくは20%以上70%以下であることがより好ましい。
またゼラチン、水溶性ポリエステル(例えばスルホイソフタル酸を共重合したPET)、ポリビニルピロリドン、デンプン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、キチン、キトサン等の水溶性ポリマーを用いることも好ましい。これらの分子量(Mw)は5千〜100万が好ましく、1万〜20万がより好ましい。これらは単独で用いても良く、混合して用いてもよい。
【0025】
さらに感光層には有機酸銀塩を添加することが好ましい。好ましい有機酸銀塩は炭素数10〜30の脂肪族カルボン酸が好ましく、より好ましくはベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀、オレイン酸銀、ラウリン酸銀、カプロン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、マレイン酸銀、フマル酸銀、リノール酸銀、酪酸銀、酒石酸銀等を挙げることができるが、なかでも好ましいのがベヘン酸銀である。
これらの有機酸銀は分散し塗布するのが好ましいく、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、アクリル酸の共重合体、マレイン酸共重合体、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン等のポリマー、特開昭52−92716、WO88/047974記載のアニオン系界面活性剤や公知のアニオン、ノニオン、カチオン界面活性剤を使用するのも好ましい。
【0026】
感光層中には感光性ハロゲン化銀を用いる。例えばリサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、米国特許3,700,458号に記載のものを使用することができる。有機酸銀塩1モルに対し0.01〜0.5モル用いるのが好ましい。必要に応じてロジウム、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウム、コバルト、水銀、鉄から選ばれる金属の錯体を少なくとも一種類を、銀1モルに対し1nモル〜10mモル含有するのがより好ましい。さらに、硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法を用いることもできる。
さらに造核剤を添加するのが好ましい。造核剤として、アミン誘導体、オニウム塩、ジスルフィド誘導体、ヒドロキシメチル誘導体、ヒドロキサム誘導体、アシルヒドラジド誘導体、アクリロニトリル誘導体、水素供与体を挙げることができるが、なかでも好ましいのが下式に示すような構造を持つヒドラジン系誘導体である。
【0027】
R2−NA1−NA2 −(G1)m1−R1
式中R2 は脂肪族基、芳香族基またはヘテロ基を表し、R1 は水素原子またはブロック基を示し、G1 は−CO−、−COCO−、−C=S−、−SO2−、−SO−、−PO(R3 )基(R3 はR1 に定義した基と同じ範囲から選ばれ、R1 と異なっても良い)、またはイミノメチレン基を表す。A1 、A2 はともに水素原子、あるいは一方が水素原子で他方が置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基、または置換もしくは無置換のアシル基を示す。m1 は0または1であり、m1が0のときR1は脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基を表す。
【0028】
さらにシアニン色素、メロシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、ホロホーラーシアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等の増感色素を用いることも好ましい。
また、カブリ防止剤としてチアゾニウム塩、アザインデン、ウラゾール、水銀塩、有機ハロゲン化合物等を用いることができる。
現像を制御するためにメルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物を用いるのも好ましい。感光層中に還元剤を添加するのも好まい。
感光層中にアンチハレーションの目的で染料や顔料を用いることも好ましく、ピラゾロアゾール染料、アントラキノン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、オキソノール染料、カルボシアニン染料、スチリル染料、トルフェニルメタン染料、インドアニリン染料、インドフェノール染料、フタロシアニン等が挙げられる。これらは感光層に添加しても良く、バック層に添加してもよい。
これらの感光層の厚みの和は5μm以上25μm以下、8μm以上20μm以下が好ましい。
【0029】
本発明には他の各種の写真用添加剤が使用できるが、いずれもRDに記載されており、関連する箇所を下に示した。
【0030】
以下に本発明で用いた測定法について述べる。
(1)熱現像直後の寸法変化
5cm幅×25cm長に幅方向(TD)、長手方向(MD)にサンプルを切り出し、20cm間隔の孔を開ける。これを115℃に加熱したヒートブロックに30秒接触させ無張力下で熱現像する。これを25℃60%RH下で寸法変化を測定する。即ち熱現像後3分後の寸法(L3とする)と熱現像後120分後の寸法(L60とする)をピンゲージを用いて測り、下記式に従い熱現像直後の寸法変化を求める。
熱現像直後の寸法変化(%)=100×(L120−L3)/L3
【0031】
(2)熱現像前後の寸法変化
5cm幅×25cm長にMD、TDにサンプルを切り出し、25℃60%RH下に24時間調湿した後、20cm間隔の孔を開け、孔の間隔をピンゲージを用い測長する(この長さをL(f)とする)。これを115℃に加熱したヒートブロックに30秒接触させ無張力下で熱現像する。これを25℃60%RH下に24時間調湿した後、孔の間隔をピンゲージを用い測長する(この長さをL(d)とする)。これから下記式に従い熱現像前後の寸法変化を求める。
熱現像前後の寸法変化(%)=100×{L(d)−L(f)}/L(f)
【0032】
(3)飽和吸湿量の1/2到達所要時間
5cm幅×25cm長にMD、TDにサンプルを切り出し、25℃20%RH下に24時間調湿した後、20cm間隔の孔を開け、孔の間隔をピンゲージを用い測長する(この長さをLとする)。これを25℃70%RHの部屋に移す。この時から30分間隔で孔の間隔を測長する。経時で寸法は伸び、一定値に収斂する。この長さをL’とする。(L+L’)/2の長さに到達するのに要する時間を内挿して求め「飽和吸湿量の1/2到達時間」とする。
(4)水蒸気透過係数
サンプルフィルムで隔てた2つの容器を真空にし、一次側に92%RHの水蒸気を導入する。フィルムを透過し二次側に出てきた水蒸気量を、25℃において真空計を用いて計測する。これを経時で測定し、縦軸に二次側水蒸気圧(cmHg)、横軸に時間(秒)をとり透過曲線を作成する。この透過曲線の直線部の勾配から下記式に従い水蒸気透過係数を求める。
水蒸気透過係数(cm3(STP)・cm-1・sec -1・cmHg-1)=(Δp/Δt)×(V/760)×(l/p・a)
Δp/Δt:透過曲線の直線部の勾配
V:二次側の容積(cm3 )
l:フィルムの厚み(cm)
p:一次側の水上気圧(cmHg)
a:フィルムの厚さ(cm)
【0033】
【実施例】
以下に実施例を示すが、発明の趣旨を超えない限り、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例−1
(1)フィルムの作製(以下支持体と呼ぶ)
(1-1)支持体−1〜6の作成
▲1▼PETの重合
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(極限粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(重量比)中25℃で測定)のPETを得た。これをDSCを用いて10mgのサンプルを窒素気流中20℃/分で昇温しながら測定したところTg=70℃、Tm=255℃であった。
▲2▼PETの製膜
ペレット化した130℃で4時間乾燥した後、300℃で溶融後T型ダイから押し出したあと急冷し、熱固定後の膜厚が120μmになるよな厚みの未延伸フィルムを作成した。
これを、100℃で3.3倍にMD方向に延伸した後、110℃で4.0倍に横延伸した。この後240℃で90秒熱固定した後、235℃でTD方向に0%、3%弛緩させた後巻き取った。
【0034】
▲3▼塩化ビニリデン層・下塗層の塗工
PET支持体の両面に塩化ビニリデンラテックス(PVdC:旭化成(株)製L551B)を水で1/2に希釈したものを表1の厚みになるようにワイヤーバーを用いて塗布し120℃で2分乾燥した。この片面(感光層塗布側)に下記組成の下塗層の水溶液をワイヤーバーを用いて乾燥膜厚が0.14μmとなるように塗布し、180℃で3分間乾燥した。
ゼラチン 0.9g
メチルセルロース 0.1g
(メトローズSM15 置換度1.79〜1.83)
酢酸(濃度99%) 0.02ml
蒸留水 99ml
【0035】
▲4▼バック第1層(導電性層)
下記組成の導電性素材を含むアクリルラテックス水分散液を、乾燥膜厚が0.04μmになるように下塗面の反対側に塗布し180℃で30秒乾燥し、表面電気抵抗が106Ωの支持体を作成した。
アクリル樹脂水分散液 2.0重量部
(ジュリマーET410、固形分20重量%、日本純薬(株)製)
酸化スズ−酸化アンチモン複合金属酸化物水分散物 18.1重量部
(平均粒径0.1μm、17重量%)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 0.1重量部
これに蒸留水を加えて100重量部となるように調製した。
【0036】
▲5▼バック第2層(発色・マット層)
バック第1層の上に下記組成の塗布液を、塗布乾燥後の660nm光学濃度が0.7になるように塗設した。
【0037】
(発色剤分散物Aの調製)
酢酸エチル35gに対して、下記化合物1を2.5g平均粒径5μmの架橋PMMA微粒子1g添加して攪拌した。この液に予め溶解したポリビニルアルコール10重量%溶液50gを添加して5分間ホモジナイザーで分散した。その後、酢酸エチルを脱溶媒により除き、その後、水で希釈して発色剤分散物を調製した。
【0038】
【化1】
【0039】
▲6▼バック第3層(ポリオレフィン層:すべり層)
下記組成のポリオレフィンラテックス水分散液を、乾燥膜厚が0.15μmになるように発色層の上に塗布した。これを185℃で3分間乾燥した。
ポリオレフィン 3.0重量部
(ケミパールS−120、27重量%、三井石油化学(株)製)
コロイダルシリカ 2.0重量部
(スノーテックスC、日産化学(株)製)
エポキシ化合物 0.3重量部
(デナコールEX−614B、ナガセ化成(株)製)
蒸留水を加えて合計が100重量部になるように調製
【0040】
【表1】
【0041】
(1-2)フィルム−7(以下支持体とよぶ)の作成
支持体−1と同様にして製膜したPET支持体の両面に特開平8−224795号の実施例1記載のシリカ層をスパッタリング法で形成した。この片面(感光層塗布側)上に支持体−1と同様にして塩化ビニリデン層、下塗層を形成した。この反対面に支持体1と同様にしてバック第1層〜第3層を塗工した。
(1-3)支持体−8、9(以下支持体とよぶ)の作成
支持体−1と同様にして製膜したPET支持体の両面に下記組成の雲母分散液−1、2を表1の乾燥膜厚になるように塗布した。これを115℃で3分間乾燥した。
雲母分散液−1
塩化ビニリデンラテックス 20重量部
(旭化成(株)製L551B)
合成雲母粉末水分散物 15重量部
(平均粒径0.1μm、20重量%)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 0.1重量部
これに蒸留水を加えて100重量部となるように調製した。
【0042】
雲母分散液−2
ゼラチン 5重量部
合成雲母粉末水分散物 2.5重量部
(平均粒径0.1μm、5重量%)
ポリオキシエチレンフェニルエーテル 0.1重量部
これに蒸留水を加えて100重量部となるように調製した。
この片面(感光層塗布側)上に支持体−1と同様にして下塗層を形成した。この反対面に支持体1と同様にしてバック第1層〜第3層を塗工した。雲母分散液−1を塗布したものを支持体8、雲母分散液−2を塗布したものを支持体9とした。
(1-4)支持体−10(以下支持体とよぶ)の作成
支持体−1と同様にして製膜したPET支持体の両面にポリビニルアルコール樹脂分散液(PVOH:クラレ(株)製PVA117)を表1の乾燥膜厚になるように塗布した。これを115℃で3分間乾燥した。
この片面(感光層塗布側)上に支持体−1と同様にして下塗層を形成した。この反対面に支持体1と同様にしてバック第1層〜第3層を塗工した。
【0043】
(1-4)支持体−11(以下支持体とよぶ)の作成
支持体−1と同様にして重合したPETとポリエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:クラレ(株)製エバールEP101)をマルチマニホールドダイを用いて、300℃で共押しだしした。これを急冷した後、100℃で3.3倍にMD延伸した後、110℃で4.0倍に横延伸した。この後240℃で90秒熱固定した後、235℃でTD方向に0%、3%弛緩させた後巻き取った。このようにして120μmのPETの両側に表1に示した厚みのEVOHを積層した支持体を得た。この片面(感光層塗布側)上に支持体−1と同様にして塩化ビニリデン層、下塗層を形成した。この反対面に支持体1と同様にしてバック第1層〜第3層を塗工した。
(1-5)支持体−12(以下支持体とよぶ)の作成
支持体−1と同様にして重合したPETと特開平8−160565実施例1に従って重合したポリエチレンナフタレート(PEN)をマルチマニホールドダイを用いて、300℃で共押しだしした。これを急冷した後、130℃で3.3倍にMD延伸した後、135℃で4.0倍に横延伸した。この後240℃で90秒熱固定した後、235℃でTD方向に0%、3%弛緩させた後巻き取った。このようにして120μmのPETの両側に表1に示した厚みのPENを積層した支持体を得た。この片面(感光層塗布側)上に支持体−1と同様にして塩化ビニリデン層、下塗層を形成した。この反対面に支持体1と同様にしてバック第1層〜第3層を塗工した。
【0044】
(2)低張力熱処理
熱現像前後の寸法変化を小さくするために、下塗、バック層塗設後に表1に示した条件で低張力熱処理を実施した。なお、いずれの水準も張力1.0kg/cm2で搬送しながら実施した。
(3)防湿層低温処理
防湿性を高めるために、低張力熱処理後の支持体に対し表1に示した条件で熱処理を実施した。
(4)支持体の評価
このようにして得た支持体に対し上記の方法に従って熱現像直後の寸法変化、熱現像前後の寸法変化、飽和吸湿量の1/2到達時間を測定し、結果を表1に示した。
(5)感材の作成
上述の方法で得た支持体の下塗層側に下記感光層を塗設した。
【0045】
(5-1) SBR系感光層
(ハロゲン化銀粒子Aの調製)
水700mlにフタル化ゼラチン22gおよび臭化カリウム30mgを溶解して、温度40℃にてpHを5.0に合わせた後、硝酸銀18.6gを含む水溶液159mlと臭化カリウムを含む水溶液をpAgを7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で10分間かけて添加した。K3 〔IrCl6 ]3-を8×10-6モル/リットルと臭化カリウムを1モル/リットルで含む水溶液をpAgを7.7に保ちながらコントロールダブルジェット法で30分間かけて添加した。その後pH5.9、pAg8.0に調製した。
得られた粒子は、平均粒子サイズ0.07μm、投影面積直径の変動係数8%、(100)面積率86%の立方体粒子であった。
上記のハロゲン化銀粒子Cを温度60℃に昇温して、銀1モル当たり8.5×10-5モルのチオ硫酸ナトリウム、1.1×10-5モルの2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルジフェニルスルフィンセレニド、2×10-6モルのテルル化合物1、3.3×10-6モルの塩化金酸、2.3×10-4モルのチオシアン酸を添加して、120分間熟成した。その後、温度を50℃にして8×10-4モルの増感色素Cを撹拌しながら添加し、更に3.5×10-2モルの沃化カリウムを添加して30分間撹拌し、30℃に急冷却してハロゲン化銀の調製を完了した。
【0046】
【化2】
【0047】
(有機酸銀微結晶分散物の調製)
ベヘン酸40g、ステアリン酸7.3g、蒸留水500mlを90℃で15分間混合し、激しく撹拌しながら1N−NaOH水溶液187mlを15分間かけて添加し、1N−硝酸水溶液61mlを添加して50℃に降温した。次に、1N−硝酸水溶液124mlを添加してそのまま30分間撹拌した。その後、吸引濾過で固形分を濾過し、濾水の伝導度が30μS/cmになるまで固形分を水洗した。こうして得られた固形分は、乾燥させないでウェットケーキとして取扱い、乾燥固形分34.8g相当のウェットケーキに対して、ポリビニルアルコール12g及び水150mlを添加し、良く混合してスラリーとした。平均直径0.5mmのジルコニアビーズ840gを用意してスラリーと一緒にベッセルに入れ、分散機(1/4G−サンドグラインダーミル:アイメックス(株)社製)にて5時間分散し、体積加重平均1.5μmの有機酸銀微結晶分散物を得た。粒子サイズの測定は、Malvern Insutruments Ltd.製 Master SaizerXにて行った。
【0048】
(素材固体微粒子分散物の調製)
テトラクロロフタル酸、4−メチルフタル酸、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,5,5−トリメチルヘキサン、フタラジン、トリブロモメチルスルフォニルベンゼンについて固体微粒子分散物を調製した。
テトラクロロフタル酸に対して、ヒドロキシプロピルセルロース0.81gと水94.2mlとを添加して良く撹拌してスラリーとして10時間放置した。その後、平均直径0.5mmのジルコニアビーズを100mlとスラリーとを一緒にベッセルに入れて有機酸銀微結晶分散物の調製に用いたものとおなじ型の分散機で5時間分散してテトラクロロフタル酸の固体微結晶分散物を得た。固体微粒子の粒子サイズは70wt%が1.0μmであった。
【0049】
(乳剤層塗布液の調製)
先に調製した有機酸銀微結晶分散物に対して下記の組成物を添加して、乳剤塗布液を調製した。
有機酸微結晶分散物 1モル
ハロゲン粒子 A 0.05モル
バインダー、SBRラテックス
(LACSTAR 3307B 大日本インキ化学工業(株)) 430g
現像用素材:
テトラクロロフタル酸 5g
1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)
−3,5,5−トリメチルヘキサン 98g
フタラジン 9.2g
トリブロモメチルフェノルスルホン 12g
4−メチルフタル酸 7g
ヒドラジン造核剤 5.0×10-3mol/Ag 1mol
【0050】
(乳剤保護層塗布液の調製)
イナートゼラチンに対して、下記の各組成物を添加して乳化保護層塗布液を調製した。
イナートゼラチン 10g
界面活性剤 A 0.26g
界面活性剤 B 0.09g
マット剤(平均粒径3μmのPMMA) 1g
1,2−(ビスビニルスルホンアセトアミド)エタン 0.3g
水 64g
【0051】
【化3】
【0052】
(6)感材の包装
感材を25℃において表2に記載の湿度で平衡調湿にした後、包装した。
(7)感材の評価
このようにして得た支持体に対し上記の方法に従って熱現像直後の寸法変化、熱現像前後の寸法変化を測定し、結果を表2に示した。さらに、これらの感材にスキャナーを用い一辺が60cmの正方形を書き込み115℃で30秒熱現像した。これを2時間25℃60%RH下に置いたものと、同じパターンを書き込み同様に熱現像した直後のものとを重ね合わせ、版のズレをルーペで確認した。
特開平8−211547の実施例1に従って調製した比較例−1に対し、本発明は良好な寸法安定性を達成した。
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
本発明により、寸法安定性にすぐれた低熱収縮支持体および熱現像写真感光材料を提供できる。
Claims (7)
- 熱現像に相当する115℃での熱処理直後の下記1式に従う寸法変化(ΔL ( % ) )が、MD方向、TD方向とも0%以上+0.05%以下であり、該熱処理前後の下記2式に従う寸法変化(δ ( % ) )がMD方向、TD方向とも−0.04%以上+0.04%以下であり、0.3 kg/cm 2 以上15 kg/cm 2 以下の張力で、135℃以上200℃以下で20秒以上5分以下の低張力熱処理が施されており、かつフィルムの両面に35℃以上140℃以下で、35℃の場合12時間〜1週間、140℃の場合0.1分〜1時間の範囲内で熱処理された防湿層を有する芳香族ポリエステルから成ることを特徴とする低熱収縮フィルム。
ΔL ( % ) =100×(L 120 −L 3 )/L 3 (1式)
(1式中、ΔLは熱現像(熱処理に相当する)直後の寸法変化を表し、L 120 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に120分放置後の寸法を表し、L 3 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に3分放置後の寸法を表す。)
δ ( % ) =100×(Lf−Ld)/Lf (2式)
(2式中、Lfは25℃55%RHで1日調湿した熱現像前の平衡寸度を表し、Ldは115℃で30秒熱現像後25℃55%RHで1日調湿した平衡寸度を表す。) - 飽和吸湿量の1/2到達時間が1時間以上100時間以下である請求項1に記載の低熱収縮フィルム。
- 前記防湿層の水蒸気透過係数が0以上1×10-8(cm3(STP)・cm-1・sec-1・cmHg-1)以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低熱収縮フィルム。
- 該防湿層がポリ弗化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンまたはポリビニルアルコールからなることを特徴とする請求項3に記載の低熱収縮フィルム。
- 該防湿層がポリ塩化ビニリデンの場合、前記ポリマーの結晶性に由来する1043cm-1の吸光度(I(c))と非晶性に由来する1069cm-1の吸光度(I(a))の比I(c)/I(a)が1.2以上2.5以下であることを特徴とする請求項4に記載の低熱収縮フィルム。
- 115℃での熱現像直後の下記1式に従う寸法変化(ΔL ( % ) )が、MD方向、TD方向とも0%以上+0.05%以下であり、該熱現像前後の下記2式に従う寸法変化(δ ( % ) )がMD方向、TD方向とも−0.04%以上+0.04%以下であり、0.3 kg/cm 2 以上15 kg/cm 2 以下の張力で、135℃以上200℃以下で20秒以上5分以下の低張力熱処理が施されており、かつフィルムの両面に35℃以上140℃以下で、35℃の場合12時間〜1週間、140℃の場合0.1分〜1時間の範囲内で熱処理された防湿層を有する低熱収縮フィルムを有することを特徴とする熱現像写真感光材料。
ΔL ( % ) =100×(L 120 −L 3 )/L 3 (1式)
(1式中、ΔLは熱現像(熱処理に相当する)直後の寸法変化を表し、L 120 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に120分放置後の寸法を表し、L 3 は熱現像(115℃30秒)後25℃75%RH下に3分放置後の寸法を表す。)
δ ( % ) =100×(Lf−Ld)/Lf (2式)
(2式中、Lfは25℃55%RHで1日調湿した熱現像前の平衡寸度を表し、Ldは115℃で30秒熱現像後25℃55%RHで1日調湿した平衡寸度を表す。) - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の低熱収縮フィルムを支持体として用いることを特徴とする請求項6に記載の熱現像写真感光材料。
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