JP3737577B2 - カメラ用シャッタ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セット作動を電動で行うようにした小型化に適するカメラ用シャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近は、カメラの小型化と電動化に対する要請が一段と大きくなり、それに応えるべく種々の提案が行われ且つ実施されている。そのうち、電動化に関しては、フィルムの巻き上げ作動をモータによって自動的に行うようになったほか、撮影レンズもモータによって動かし、焦点調節を自動的に行うようになってきた。また、シャッタ装置についても電動化が進められ、そのセット作動は、上記したフィルムの巻き上げ作動に連動し、同一のモータによって行われるのが普通になってきた。また、シャッタ装置のレリーズ作動についても、カメラのレリーズボタンを押した後、自動焦点調節が終了した信号によって、電磁石やプランジャを働かせて行うようにしたものが実施されている。
【0003】
また、シャッタ装置には、フォーカルプレンシャッタとレンズシャッタとがあり、フォーカルプレンシャッタは、一般に、露光作動時に、先羽根が露光用開口を開き、後羽根が露光用開口を閉じるようになっているが、レンズシャッタにも同じように機能する先羽根と後羽根とを備えたものがある。このように先羽根と後羽根とを備えたシャッタ装置を電動でセットする場合には、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材との両方に関係するセット部材を設け、そのセット部材を、フィルムの巻き上げに連動して初期位置からセット位置まで作動させることにより、上記の各駆動部材をセット位置へ作動させるようにしているのが普通である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように小型化に対する要求も極めて強いものがあり、特にIX240カートリッジフィルム(アドバンストフォトシステムフィルム)の出現によって一段と拍車がかかってきた。ところが、そのような要求に応えて小型化する場合には、上記した電動装置の駆動源として用いられているモータ,電磁石,プランジャ等を如何に小型化してスペース効率を良くするかが大きなポイントになるが、それらの電磁部品は、小型化するには限度があり、また、ある程度以上に小型化しようとすると、かえってコストが高くなるという問題点がある。
【0005】
また、シャッタ装置のセットを、フィルムの巻き上げ用モータに連動させて行うようにする場合、機械的な連動機構が必要であるため、スペース上の問題は勿論のこととして、カメラ内におけるシャッタ装置の配置関係に制約を受けてしまうという問題点がある。更に、上記したセット部材は、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材との両方をセットする必要があるので、シャッタ装置内における配置が自ずから決定されてしまい、また、このようなセット部材は比較的大きな部品であることから、全体の小型化を図る場合のネックとなっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記した電磁部品やセット部材を設ける必要がなく、形状記憶合金をセット作動の駆動源として用いることによりカメラの小型化が図れるようにしたカメラ用シャッタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明におけるカメラ用シャッタは、露光用開口部を有する地板と、往復作動が可能であって露光作動時に先羽根用駆動ばねによってセット位置から作動され先羽根に前記露光用開口部を開かせる先羽根用駆動部材と、電圧の印加が断たれたとき前記先羽根用駆動部材を前記先羽根用駆動ばねに抗してセット位置に作動させレリーズの初期段階において電圧が印加されたとき前記先羽根用駆動部材を露光作動可能状態とする第1形状記憶合金と、レリーズの初期段階で前記先羽根用駆動部材をセット位置で吸引保持し露光時間制御回路からの信号に応じて該保持力を解除する先羽根用電磁石と、往復作動が可能であって露光作動時に後羽根用駆動ばねによってセット位置から作動され後羽根に前記露光用開口部を閉じさせる後羽根用駆動部材と、電圧の印加が断たれたとき前記後羽根用駆動部材を前記後羽根用駆動ばねに抗してセット位置に作動させレリーズの初期段階において電圧が印加されたとき前記後羽根用駆動部材を露光作動可能状態とするる第2形状記憶合金と、レリーズの初期段階で前記後羽根用駆動部材をセット位置で吸引保持し露光時間制御回路からの信号に応じて該保持力を解除する後羽根用電磁石とを備えている。
【0008】
また、本発明のカメラ用シャッタにおいては、好ましくは、前記第1形状記憶合金に対する電圧の印加が断たれてから所定時間後に前記第2形状記憶合金に対する電圧の印加が断たれるようにする。
また、本発明のカメラ用シャッタにおいては、好ましくは、前記第1形状記憶合金と前記第2形状記憶合金のうち少なくとも一方は、その一端が前記地板に取り付けられ、他端が前記駆動部材の一方に取り付けられているようにする。
また、本発明のカメラ用シャッタにおいては、好ましくは、前記第1形状記憶合金と前記第2形状記憶合金のうち少なくとも一方は、その両端が前記地板に取り付けられ、その両端間が前記駆動部材の一方に掛けられているようにする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図3に示した実施例で説明する。また、実施例に示した一部の構成について二つの変形例を図4及び図5を用いて説明する。尚、図1は実施例の撮影終了直後におけるセット前状態を示す平面図であり、図2はセット後の状態を示す平面図である。図3は実施例の作動を説明するためのタイミングチャートである。また、図4及び図5は各々実施例の一部の変形例を説明するための部分側面図である。
【0010】
先ず、実施例の構成から説明するが、本実施例は、本発明をフォーカルプレンシャッタに適用したものである。合成樹脂製のシャッタ地板1には、周知のように略中央部に露光用開口部1aが形成されているが、図面上では、その左方の一部だけが示されている。このシャッタ地板1の背面側には、周知のように、所定の間隔を空けて、図示していない中間板とカバー板が順に取り付けられている。中間板とカバー板にも上記開口部1aと類似の形状の開口部が形成されており、それらの三つの開口部の合成によってシャッタ装置としての露光用開口が決められている。そして、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板の間には先羽根が配置され、中間板とカバー板の間には後羽根が配置されている。
【0011】
このシャッタ地板1の表面側には軸1b,1cが立設されている。これらの軸1b,1cはシャッタ地板1の背面側にも突き出ていて、その部分は細く形成されている。周知であるため図示していないが、本実施例における先羽根及び後羽根は、夫々、シャッタ地板1の背面側に枢着された二つのアームに複数の分割羽根を枢支した構成をしていて、夫々の一方のアーム(以下、主アームという)は、軸1bと軸1cに枢着されている。また、シャッタ地板1には、貫通した円弧状の孔1d,1eが形成されている。
【0012】
シャッタ地板1の表面側において、軸1b,1cには、合成樹脂製の先羽根用駆動部材2,後羽根用駆動部材3が回転可能に取り付けられている。これらの駆動部材2,3には、夫々、作動ピン2a,3a、取付部2b,3bが設けられている。このうち作動ピン2a,3aは、円弧状の孔1d,1eを貫通して、先羽根及び後羽根の各主アームに形成された孔に嵌合している。そのため、先羽根用駆動部材2が反時計方向へ回転したときには、作動ピン2aは主アームを反時計方向へ作動させて分割羽根を展開させ、逆に時計方向へ回転したときには、作動ピン2aは主アームを時計方向へ作動させて分割羽根を重畳させるようになっている。他方、後羽根用駆動部材3が反時計方向へ回転したときには、作動ピン3aは主アームを反時計方向へ作動させて分割羽根を重畳させ、作動ピン3aが主アームを時計方向へ作動させたときには分割羽根を展開させるようになっている。
【0013】
また、各駆動部材2,3の取付部2b,3bは、図1において手前側に隆起したようにして形成されており、夫々、鉄片部材4,5を取り付けているが、その具体的な取り付け構成を明示するために、図1及び図2においてはその部分を断面で示してある。鉄片部材4,5は、電磁石に吸着される鉄片部4a,5aと、該取付部2b,3bに形成された孔に緩く嵌合している軸部4b,5bと、更には鍔部4c,5cとで構成されており、該軸部4b,5bの軸方向へ移動し得るようになっている。そして、該鉄片部4a,5aと該取付部2b,3bとの間には圧縮ばね6,7が介在しており、該鍔部4c,5cが取付部2b,3bに接触するように付勢している。また、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3は、夫々、先羽根用駆動ばね8と後羽根用駆動ばね9によって時計方向へ回転するように付勢されており、各駆動ばね8,9の一端は上記した取付部2b,3bの根元に掛けられ、他端はシャッタ地板1に設けられたばね掛け1f,1gに掛けられている。
【0014】
更に、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3には、夫々、ワイヤ状の形状記憶合金10,11の一端が取り付けられており、それらの他端はシャッタ地板1に取り付けられている。夫々の取り付け方は同じであって、夫々の端部を止め具12,13、及び14,15に巻き込むようにしてかしめ止めし、それらの止め具12,13,14,15をビス16,17,18,19によって固定している。これらの形状記憶合金10,11は、その両端に電圧を印加すると、その長さが伸長し、冷却すると元へ戻る性質を有している。従って、図示していないが、本実施例においては、リード線が形状記憶合金10,11と一緒に止め具12,13,14,15にかしめ止めされている。そして、形状記憶合金10の伸縮は、シャッタ地板1に設けられた柱1h,ばね掛け1fをガイドとして行われ、形状記憶合金11の伸縮は、シャッタ地板1に設けられた柱1i,1jをガイドとして行われる。尚、柱1iの先端が後羽根用駆動部材3に接することのないように両者間に所定の空間が設けられていることは言うまでもない。
【0015】
周知であるため図示していないが、シャッタ地板1の表面側には、該シャッタ地板1と平行になるようにして取付け板(上地板と称されることもある)が取り付けられている。そして、その下面、即ちシャッタ地板1側の面には先羽根用電磁石20と後羽根用電磁石21とが取り付けられている。そのため、図1及び図2には、それらの電磁石20,21を一点鎖線で示してある。本実施例における電磁石20,21は、鉄芯部材20a,21aが、夫々二つの磁極部で鉄片部材4,5を吸着するようにするためにU字形をしており、各々一方の磁極部にコイル20b,21bを巻回した構成をしている。しかしながら、鉄芯部材20a,21aは、各々の二つの磁極部が、シャッタ地板1に対して垂直となるように配置されているので、図面上には各々一方の磁極部だけが見えている。
【0016】
次に、図3も参照しながら本実施例の作動を説明する。図1は、撮影終了直後の状態を示している。従って、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3とは、各駆動ばね8,9によって露光作動を完了した状態にあり、撮影者は、未だカメラのレリーズボタンを押したままの状態である。この状態においては、図示していない先羽根の各分割羽根は重畳して露光用開口部1aの下方位置に格納されており、後羽根の分割羽根は展開して露光用開口部1aを覆っている。また、形状記憶合金10,11(図3においてはSMA1,SMA2)には夫々通電されており、夫々伸長状態となっている。尚、このように形状記憶合金10,11が伸長した状態においては、形状記憶合金10,11が柱1h,1i,1j及びばね掛け1fから外れる可能性もあるが、その心配がある場合には、例えば柱1h,1i,1jやばね掛け1fを予め太めにし、その横腹に貫通孔を形成し、形状記憶合金10,11をそれらの孔に通しておくようにすれば問題ない。
【0017】
このような状態において、レリーズボタンの押下げ力を解除すると、電源スイッチSWがオフになり、一方では、先ず形状記憶合金10に対する通電が断たれ、所定の遅延時間後に形状記憶合金11に対する通電が断たれる。他方、電源スイッチSWがオフになると、その信号でフィルムの巻上げ用のモータMoに電力が供給され、フィルムの巻上げ作動が行われる。そのため、形状記憶合金10に対する通電が断たれると、該形状記憶合金10は収縮して短くなり、先羽根用駆動部材2を先羽根用駆動ばね8に抗して反時計方向へ回転させる。そして、周知のように、先羽根のスリット形成羽根が後羽根のスリット形成羽根に一部重なった段階で、形状記憶合金11に対する通電も断たれ、後羽根用駆動部材3も後羽根用駆動ばね9に抗して反時計方向へ回転される。
【0018】
その後、先羽根と後羽根は、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3によって同時に作動されて行き、先羽根は分割羽根を展開させて露光用開口部1aを覆い、後羽根は分割羽根を重畳させて露光用開口部1aの上方に格納される。図2はそのようにして行われたシャッタのセット状態を示しており、この状態においては、圧縮ばね6,7が圧縮され、鉄片部材4,5の鉄片部4a,5aが鉄芯部材20a,21aに接触していることになる。そして、この状態は、次の撮影まで、形状記憶合金10,11のみによって保たれるので、従来のように、各駆動部材2,3をセット位置に保持するのに役立っていたセット部材や係止部材が不必要となっている。他方、この状態に達するのと前後して、フィルムの巻上げも終了し、周知のようにしてモータMoが自動的に停止する。尚、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3のセット作動は、形状記憶合金10,11の収縮時の長さに依存して停止するようにしても差し支えないが、実際には、夫々にストッパを設け、該ストッパに当接して停止するようにするのが好ましい。
【0019】
次に、レリーズ作動について説明する。カメラのレリーズボタンを押すと、その初期段階で電源スイッチSWが閉じ、測光回路と測距回路が働くと共に先羽根用電磁石20と後羽根用電磁石21の両コイル20b,21bに通電され、鉄芯部材20a,21aが励磁される。そのため、各鉄片部材4,5の、鉄片部4a,5aは鉄芯部材20a,21aに磁気的に吸着保持される。また、その保持力が充分得られた段階で、二つの形状記憶合金10,11(図3におけるSMA1,SMA2)に通電される。従って、各形状記憶合金10,11は伸長し、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3を、露光作動の可能状態とする。
【0020】
尚、この状態においては、各形状記憶合金10,11は弛むことになるが、その問題を解決する一つの方法としては、図2に一点鎖線で示すように、シャッタ地板1の軸1k,1mにテンショナー22,23を回転可能に取り付けることが考えられる。このテンショナー22,23は、ばね24,25によって付勢されているので、形状記憶合金10,11が伸長すると回転し、ピン22a,23aによって形状記憶合金10,11を押し、常に緊張状態を保つことになる。また、その他の方法としては、シャッタ地板1の表面に溝を形成し、形状記憶合金10,11をその溝の中に配置し、弛んだときに溝の外に出ないようにすることも考えられる。
【0021】
このような状態において、撮影者は、周知の表示装置によって撮影条件の適否等を確認することができる。そして、もしも撮影を止めたい場合には、レリーズボタンの押し下げを解除すると、先ず、形状記憶合金10,11への通電が断たれて短くなり、上記したテンショナー22,23を設けている場合には、それらをばね24,25に抗して回転させる。そして、次に、コイル20b,21bに対する通電を断つことになる。他方、この段階で撮影を行うと判断した場合には、更にレリーズボタンを押すことになる。そうすると、測距結果に基づいてレンズの繰り出し作動が行われ、その作動停止信号に連動して露光時間制御回路が働くようになる。
【0022】
露光時間制御回路は、先ず、先羽根用電磁石20のコイル20bに対する通電を断つ。それによって、先羽根用駆動部材2は、先羽根用駆動ばね8の強い力によって時計方向へ急速に回転し、作動ピン2aによって先羽根の主アームを時計方向へ作動させる。そのため、先羽根を構成する複数の分割羽根は下方へ重畳されてゆき、露光用開口部1aを開いていく。他方、この過程において、先羽根用駆動部材2は、形状記憶合金10を引っ張るので、上記したテンショナー22を設けている場合には、ばね24に抗して回転させることになる。そして、先羽根が露光用開口部1aを開き終わった直後に、作動ピン2aが孔1dの下端縁に衝突し、図示していない手段によってバウンドを防止されて停止する。
【0023】
先羽根用電磁石20のコイル20aに対する通電が断たれてから、測光結果に対応した所定時間後に、後羽根用電磁石21のコイル21bに対する通電が断たれる。そのため、後羽根用駆動ばね9の強い付勢力によって、後羽根用駆動部材3が時計方向へ急速に回転し、作動ピン3aが、後羽根の主アームを時計方向へ作動させる。その結果、後羽根を構成する複数の分割羽根は下方へ展開されてゆき、露光用開口部1aを閉じていく。その間、後羽根用駆動部材3は、形状記憶合金11を引っ張るので、上記の場合と同様に、テンショナー23を設けている場合には、ばね25に抗して回転させることになる。そして、後羽根が露光用開口部1aを閉じ終わった直後に、作動ピン3aが孔1eの下端縁に衝突し、停止する。そのときの状態が、図1に示した状態である。
【0024】
次に、上記の実施例における一部の変形例を図4及び図5を用いて説明する。上記の実施例においては、形状記憶合金10の一端はシャッタ地板1に取り付けられ、他端は先羽根用駆動部材2に取り付けられている。しかし、このように構成すると、先羽根用駆動部材2に取り付けられた端部は、常に先羽根用駆動部材2と共に作動することになる。従って、止め具12にリード線を取り付け電気的に接続するようにした場合には、リード線がその都度振り回されることになる。狭いカメラ内においてこのような動きをさせることは好ましいことではなく、断線や漏電の原因にもなりかねない。そこで、図4及び図5には、夫々、形状記憶合金10の両端ともシャッタ地板1に取り付け、先羽根用駆動部材2には、その中間部を掛け渡すだけにした場合の例を示している。
【0025】
先ず、図4に示した変形例は、実施例における先羽根用駆動部材2に、シャッタ地板1の表面に向けて円柱形の軸部2cを設けたものである。この軸部2cには径方向に貫通した孔2dが形成され、両方の出口には面取り部が形成されている。そして、形状記憶合金10は、その孔2dに挿通されている。また、図5に示した変形例は、図4に示した変形例と同様に、先羽根用駆動部材2に、シャッタ地板1の表面に向けて円柱形の軸部2eを設けているが、その円周部には環状溝2fが形成され、そこに形状記憶合金10の略中間部が掛けられている。尚、これらのような形状記憶合金の掛け渡し方は、形状記憶合金11についても採用できることは言うまでもない。
【0026】
また、上記の実施例においては、各形状記憶合金をワイヤ状のものとして説明したが、帯状の形状記憶合金であっても差し支えない。また、上記の実施例は、本発明をフォーカルプレンシャッタに適用した場合の実施例であるが、本発明は、先羽根即ち開き用の羽根と、後羽根即ち閉じ用の羽根とを、個別に設けているタイプのレンズシャッタにも適用できることは言うまでもない。但し、その場合には、セット作動のとき、先に、後羽根用駆動部材がセットされ、露光用開口を後羽根によって閉じてから、先羽根用駆動部材のセット作動を開始させる必要がある。また、その場合、各羽根は、夫々1枚であってもよいし複数枚であっても構わない。
【0027】
【発明の効果】
上記のように、本発明は、シャッタ装置を電動でセットするのに、従来のようにフィルム巻き上げ装置に連動させず、形状記憶合金によって行うようにしたので、フィルム巻き上げ装置との機械的連動機構が不要となり、且つ、従来、先羽根駆動部材と後羽根駆動部材とを同時にセットするために必要だったセット部材が不要になり、また、カメラの不使用時において先羽根駆動部材と後羽根駆動部材とをセット状態に保つための部材も特に設ける必要がないので、スペース的に非常に有利となり、シャッタ装置、ひいてはカメラの小型化に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の平面図であり、撮影終了直後におけるセット前状態を示している。
【図2】本発明の実施例の平面図であり、セット後の状態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例の作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施例における一部の変形例を示す部分側面図である。
【図5】本発明の実施例における一部の他の変形例を示す部分側面図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 露光用開口部
1b,1c,1k,1m 軸
1d,1e,2d 孔
1f,1g ばね掛け
1h,1i,1j 柱
2 先羽根用駆動部材
2a,3a 作動ピン
2b,3b 取付部
2c,2e,4b,5b 軸部
2f 環状溝
3 後羽根用駆動部材
4,5 鉄片部材
4a,5a 鉄片部
4c,5c 鍔部
6,7 圧縮ばね
8 先羽根用駆動ばね
9 後羽根用駆動ばね
10,11 形状記憶合金
12,13,14,15 止め具
16,17,18,19 ビス
20 先羽根用電磁石
20a,21a 鉄芯部材
20b,21b コイル
21 後羽根用電磁石
22,23 テンショナー
22a,23a ピン
24,25 ばね
【発明の属する技術分野】
本発明は、セット作動を電動で行うようにした小型化に適するカメラ用シャッタに関する。
【0002】
【従来の技術】
最近は、カメラの小型化と電動化に対する要請が一段と大きくなり、それに応えるべく種々の提案が行われ且つ実施されている。そのうち、電動化に関しては、フィルムの巻き上げ作動をモータによって自動的に行うようになったほか、撮影レンズもモータによって動かし、焦点調節を自動的に行うようになってきた。また、シャッタ装置についても電動化が進められ、そのセット作動は、上記したフィルムの巻き上げ作動に連動し、同一のモータによって行われるのが普通になってきた。また、シャッタ装置のレリーズ作動についても、カメラのレリーズボタンを押した後、自動焦点調節が終了した信号によって、電磁石やプランジャを働かせて行うようにしたものが実施されている。
【0003】
また、シャッタ装置には、フォーカルプレンシャッタとレンズシャッタとがあり、フォーカルプレンシャッタは、一般に、露光作動時に、先羽根が露光用開口を開き、後羽根が露光用開口を閉じるようになっているが、レンズシャッタにも同じように機能する先羽根と後羽根とを備えたものがある。このように先羽根と後羽根とを備えたシャッタ装置を電動でセットする場合には、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材との両方に関係するセット部材を設け、そのセット部材を、フィルムの巻き上げに連動して初期位置からセット位置まで作動させることにより、上記の各駆動部材をセット位置へ作動させるようにしているのが普通である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したように小型化に対する要求も極めて強いものがあり、特にIX240カートリッジフィルム(アドバンストフォトシステムフィルム)の出現によって一段と拍車がかかってきた。ところが、そのような要求に応えて小型化する場合には、上記した電動装置の駆動源として用いられているモータ,電磁石,プランジャ等を如何に小型化してスペース効率を良くするかが大きなポイントになるが、それらの電磁部品は、小型化するには限度があり、また、ある程度以上に小型化しようとすると、かえってコストが高くなるという問題点がある。
【0005】
また、シャッタ装置のセットを、フィルムの巻き上げ用モータに連動させて行うようにする場合、機械的な連動機構が必要であるため、スペース上の問題は勿論のこととして、カメラ内におけるシャッタ装置の配置関係に制約を受けてしまうという問題点がある。更に、上記したセット部材は、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材との両方をセットする必要があるので、シャッタ装置内における配置が自ずから決定されてしまい、また、このようなセット部材は比較的大きな部品であることから、全体の小型化を図る場合のネックとなっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、上記した電磁部品やセット部材を設ける必要がなく、形状記憶合金をセット作動の駆動源として用いることによりカメラの小型化が図れるようにしたカメラ用シャッタを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明におけるカメラ用シャッタは、露光用開口部を有する地板と、往復作動が可能であって露光作動時に先羽根用駆動ばねによってセット位置から作動され先羽根に前記露光用開口部を開かせる先羽根用駆動部材と、電圧の印加が断たれたとき前記先羽根用駆動部材を前記先羽根用駆動ばねに抗してセット位置に作動させレリーズの初期段階において電圧が印加されたとき前記先羽根用駆動部材を露光作動可能状態とする第1形状記憶合金と、レリーズの初期段階で前記先羽根用駆動部材をセット位置で吸引保持し露光時間制御回路からの信号に応じて該保持力を解除する先羽根用電磁石と、往復作動が可能であって露光作動時に後羽根用駆動ばねによってセット位置から作動され後羽根に前記露光用開口部を閉じさせる後羽根用駆動部材と、電圧の印加が断たれたとき前記後羽根用駆動部材を前記後羽根用駆動ばねに抗してセット位置に作動させレリーズの初期段階において電圧が印加されたとき前記後羽根用駆動部材を露光作動可能状態とするる第2形状記憶合金と、レリーズの初期段階で前記後羽根用駆動部材をセット位置で吸引保持し露光時間制御回路からの信号に応じて該保持力を解除する後羽根用電磁石とを備えている。
【0008】
また、本発明のカメラ用シャッタにおいては、好ましくは、前記第1形状記憶合金に対する電圧の印加が断たれてから所定時間後に前記第2形状記憶合金に対する電圧の印加が断たれるようにする。
また、本発明のカメラ用シャッタにおいては、好ましくは、前記第1形状記憶合金と前記第2形状記憶合金のうち少なくとも一方は、その一端が前記地板に取り付けられ、他端が前記駆動部材の一方に取り付けられているようにする。
また、本発明のカメラ用シャッタにおいては、好ましくは、前記第1形状記憶合金と前記第2形状記憶合金のうち少なくとも一方は、その両端が前記地板に取り付けられ、その両端間が前記駆動部材の一方に掛けられているようにする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1〜図3に示した実施例で説明する。また、実施例に示した一部の構成について二つの変形例を図4及び図5を用いて説明する。尚、図1は実施例の撮影終了直後におけるセット前状態を示す平面図であり、図2はセット後の状態を示す平面図である。図3は実施例の作動を説明するためのタイミングチャートである。また、図4及び図5は各々実施例の一部の変形例を説明するための部分側面図である。
【0010】
先ず、実施例の構成から説明するが、本実施例は、本発明をフォーカルプレンシャッタに適用したものである。合成樹脂製のシャッタ地板1には、周知のように略中央部に露光用開口部1aが形成されているが、図面上では、その左方の一部だけが示されている。このシャッタ地板1の背面側には、周知のように、所定の間隔を空けて、図示していない中間板とカバー板が順に取り付けられている。中間板とカバー板にも上記開口部1aと類似の形状の開口部が形成されており、それらの三つの開口部の合成によってシャッタ装置としての露光用開口が決められている。そして、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板の間には先羽根が配置され、中間板とカバー板の間には後羽根が配置されている。
【0011】
このシャッタ地板1の表面側には軸1b,1cが立設されている。これらの軸1b,1cはシャッタ地板1の背面側にも突き出ていて、その部分は細く形成されている。周知であるため図示していないが、本実施例における先羽根及び後羽根は、夫々、シャッタ地板1の背面側に枢着された二つのアームに複数の分割羽根を枢支した構成をしていて、夫々の一方のアーム(以下、主アームという)は、軸1bと軸1cに枢着されている。また、シャッタ地板1には、貫通した円弧状の孔1d,1eが形成されている。
【0012】
シャッタ地板1の表面側において、軸1b,1cには、合成樹脂製の先羽根用駆動部材2,後羽根用駆動部材3が回転可能に取り付けられている。これらの駆動部材2,3には、夫々、作動ピン2a,3a、取付部2b,3bが設けられている。このうち作動ピン2a,3aは、円弧状の孔1d,1eを貫通して、先羽根及び後羽根の各主アームに形成された孔に嵌合している。そのため、先羽根用駆動部材2が反時計方向へ回転したときには、作動ピン2aは主アームを反時計方向へ作動させて分割羽根を展開させ、逆に時計方向へ回転したときには、作動ピン2aは主アームを時計方向へ作動させて分割羽根を重畳させるようになっている。他方、後羽根用駆動部材3が反時計方向へ回転したときには、作動ピン3aは主アームを反時計方向へ作動させて分割羽根を重畳させ、作動ピン3aが主アームを時計方向へ作動させたときには分割羽根を展開させるようになっている。
【0013】
また、各駆動部材2,3の取付部2b,3bは、図1において手前側に隆起したようにして形成されており、夫々、鉄片部材4,5を取り付けているが、その具体的な取り付け構成を明示するために、図1及び図2においてはその部分を断面で示してある。鉄片部材4,5は、電磁石に吸着される鉄片部4a,5aと、該取付部2b,3bに形成された孔に緩く嵌合している軸部4b,5bと、更には鍔部4c,5cとで構成されており、該軸部4b,5bの軸方向へ移動し得るようになっている。そして、該鉄片部4a,5aと該取付部2b,3bとの間には圧縮ばね6,7が介在しており、該鍔部4c,5cが取付部2b,3bに接触するように付勢している。また、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3は、夫々、先羽根用駆動ばね8と後羽根用駆動ばね9によって時計方向へ回転するように付勢されており、各駆動ばね8,9の一端は上記した取付部2b,3bの根元に掛けられ、他端はシャッタ地板1に設けられたばね掛け1f,1gに掛けられている。
【0014】
更に、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3には、夫々、ワイヤ状の形状記憶合金10,11の一端が取り付けられており、それらの他端はシャッタ地板1に取り付けられている。夫々の取り付け方は同じであって、夫々の端部を止め具12,13、及び14,15に巻き込むようにしてかしめ止めし、それらの止め具12,13,14,15をビス16,17,18,19によって固定している。これらの形状記憶合金10,11は、その両端に電圧を印加すると、その長さが伸長し、冷却すると元へ戻る性質を有している。従って、図示していないが、本実施例においては、リード線が形状記憶合金10,11と一緒に止め具12,13,14,15にかしめ止めされている。そして、形状記憶合金10の伸縮は、シャッタ地板1に設けられた柱1h,ばね掛け1fをガイドとして行われ、形状記憶合金11の伸縮は、シャッタ地板1に設けられた柱1i,1jをガイドとして行われる。尚、柱1iの先端が後羽根用駆動部材3に接することのないように両者間に所定の空間が設けられていることは言うまでもない。
【0015】
周知であるため図示していないが、シャッタ地板1の表面側には、該シャッタ地板1と平行になるようにして取付け板(上地板と称されることもある)が取り付けられている。そして、その下面、即ちシャッタ地板1側の面には先羽根用電磁石20と後羽根用電磁石21とが取り付けられている。そのため、図1及び図2には、それらの電磁石20,21を一点鎖線で示してある。本実施例における電磁石20,21は、鉄芯部材20a,21aが、夫々二つの磁極部で鉄片部材4,5を吸着するようにするためにU字形をしており、各々一方の磁極部にコイル20b,21bを巻回した構成をしている。しかしながら、鉄芯部材20a,21aは、各々の二つの磁極部が、シャッタ地板1に対して垂直となるように配置されているので、図面上には各々一方の磁極部だけが見えている。
【0016】
次に、図3も参照しながら本実施例の作動を説明する。図1は、撮影終了直後の状態を示している。従って、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3とは、各駆動ばね8,9によって露光作動を完了した状態にあり、撮影者は、未だカメラのレリーズボタンを押したままの状態である。この状態においては、図示していない先羽根の各分割羽根は重畳して露光用開口部1aの下方位置に格納されており、後羽根の分割羽根は展開して露光用開口部1aを覆っている。また、形状記憶合金10,11(図3においてはSMA1,SMA2)には夫々通電されており、夫々伸長状態となっている。尚、このように形状記憶合金10,11が伸長した状態においては、形状記憶合金10,11が柱1h,1i,1j及びばね掛け1fから外れる可能性もあるが、その心配がある場合には、例えば柱1h,1i,1jやばね掛け1fを予め太めにし、その横腹に貫通孔を形成し、形状記憶合金10,11をそれらの孔に通しておくようにすれば問題ない。
【0017】
このような状態において、レリーズボタンの押下げ力を解除すると、電源スイッチSWがオフになり、一方では、先ず形状記憶合金10に対する通電が断たれ、所定の遅延時間後に形状記憶合金11に対する通電が断たれる。他方、電源スイッチSWがオフになると、その信号でフィルムの巻上げ用のモータMoに電力が供給され、フィルムの巻上げ作動が行われる。そのため、形状記憶合金10に対する通電が断たれると、該形状記憶合金10は収縮して短くなり、先羽根用駆動部材2を先羽根用駆動ばね8に抗して反時計方向へ回転させる。そして、周知のように、先羽根のスリット形成羽根が後羽根のスリット形成羽根に一部重なった段階で、形状記憶合金11に対する通電も断たれ、後羽根用駆動部材3も後羽根用駆動ばね9に抗して反時計方向へ回転される。
【0018】
その後、先羽根と後羽根は、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3によって同時に作動されて行き、先羽根は分割羽根を展開させて露光用開口部1aを覆い、後羽根は分割羽根を重畳させて露光用開口部1aの上方に格納される。図2はそのようにして行われたシャッタのセット状態を示しており、この状態においては、圧縮ばね6,7が圧縮され、鉄片部材4,5の鉄片部4a,5aが鉄芯部材20a,21aに接触していることになる。そして、この状態は、次の撮影まで、形状記憶合金10,11のみによって保たれるので、従来のように、各駆動部材2,3をセット位置に保持するのに役立っていたセット部材や係止部材が不必要となっている。他方、この状態に達するのと前後して、フィルムの巻上げも終了し、周知のようにしてモータMoが自動的に停止する。尚、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3のセット作動は、形状記憶合金10,11の収縮時の長さに依存して停止するようにしても差し支えないが、実際には、夫々にストッパを設け、該ストッパに当接して停止するようにするのが好ましい。
【0019】
次に、レリーズ作動について説明する。カメラのレリーズボタンを押すと、その初期段階で電源スイッチSWが閉じ、測光回路と測距回路が働くと共に先羽根用電磁石20と後羽根用電磁石21の両コイル20b,21bに通電され、鉄芯部材20a,21aが励磁される。そのため、各鉄片部材4,5の、鉄片部4a,5aは鉄芯部材20a,21aに磁気的に吸着保持される。また、その保持力が充分得られた段階で、二つの形状記憶合金10,11(図3におけるSMA1,SMA2)に通電される。従って、各形状記憶合金10,11は伸長し、先羽根用駆動部材2と後羽根用駆動部材3を、露光作動の可能状態とする。
【0020】
尚、この状態においては、各形状記憶合金10,11は弛むことになるが、その問題を解決する一つの方法としては、図2に一点鎖線で示すように、シャッタ地板1の軸1k,1mにテンショナー22,23を回転可能に取り付けることが考えられる。このテンショナー22,23は、ばね24,25によって付勢されているので、形状記憶合金10,11が伸長すると回転し、ピン22a,23aによって形状記憶合金10,11を押し、常に緊張状態を保つことになる。また、その他の方法としては、シャッタ地板1の表面に溝を形成し、形状記憶合金10,11をその溝の中に配置し、弛んだときに溝の外に出ないようにすることも考えられる。
【0021】
このような状態において、撮影者は、周知の表示装置によって撮影条件の適否等を確認することができる。そして、もしも撮影を止めたい場合には、レリーズボタンの押し下げを解除すると、先ず、形状記憶合金10,11への通電が断たれて短くなり、上記したテンショナー22,23を設けている場合には、それらをばね24,25に抗して回転させる。そして、次に、コイル20b,21bに対する通電を断つことになる。他方、この段階で撮影を行うと判断した場合には、更にレリーズボタンを押すことになる。そうすると、測距結果に基づいてレンズの繰り出し作動が行われ、その作動停止信号に連動して露光時間制御回路が働くようになる。
【0022】
露光時間制御回路は、先ず、先羽根用電磁石20のコイル20bに対する通電を断つ。それによって、先羽根用駆動部材2は、先羽根用駆動ばね8の強い力によって時計方向へ急速に回転し、作動ピン2aによって先羽根の主アームを時計方向へ作動させる。そのため、先羽根を構成する複数の分割羽根は下方へ重畳されてゆき、露光用開口部1aを開いていく。他方、この過程において、先羽根用駆動部材2は、形状記憶合金10を引っ張るので、上記したテンショナー22を設けている場合には、ばね24に抗して回転させることになる。そして、先羽根が露光用開口部1aを開き終わった直後に、作動ピン2aが孔1dの下端縁に衝突し、図示していない手段によってバウンドを防止されて停止する。
【0023】
先羽根用電磁石20のコイル20aに対する通電が断たれてから、測光結果に対応した所定時間後に、後羽根用電磁石21のコイル21bに対する通電が断たれる。そのため、後羽根用駆動ばね9の強い付勢力によって、後羽根用駆動部材3が時計方向へ急速に回転し、作動ピン3aが、後羽根の主アームを時計方向へ作動させる。その結果、後羽根を構成する複数の分割羽根は下方へ展開されてゆき、露光用開口部1aを閉じていく。その間、後羽根用駆動部材3は、形状記憶合金11を引っ張るので、上記の場合と同様に、テンショナー23を設けている場合には、ばね25に抗して回転させることになる。そして、後羽根が露光用開口部1aを閉じ終わった直後に、作動ピン3aが孔1eの下端縁に衝突し、停止する。そのときの状態が、図1に示した状態である。
【0024】
次に、上記の実施例における一部の変形例を図4及び図5を用いて説明する。上記の実施例においては、形状記憶合金10の一端はシャッタ地板1に取り付けられ、他端は先羽根用駆動部材2に取り付けられている。しかし、このように構成すると、先羽根用駆動部材2に取り付けられた端部は、常に先羽根用駆動部材2と共に作動することになる。従って、止め具12にリード線を取り付け電気的に接続するようにした場合には、リード線がその都度振り回されることになる。狭いカメラ内においてこのような動きをさせることは好ましいことではなく、断線や漏電の原因にもなりかねない。そこで、図4及び図5には、夫々、形状記憶合金10の両端ともシャッタ地板1に取り付け、先羽根用駆動部材2には、その中間部を掛け渡すだけにした場合の例を示している。
【0025】
先ず、図4に示した変形例は、実施例における先羽根用駆動部材2に、シャッタ地板1の表面に向けて円柱形の軸部2cを設けたものである。この軸部2cには径方向に貫通した孔2dが形成され、両方の出口には面取り部が形成されている。そして、形状記憶合金10は、その孔2dに挿通されている。また、図5に示した変形例は、図4に示した変形例と同様に、先羽根用駆動部材2に、シャッタ地板1の表面に向けて円柱形の軸部2eを設けているが、その円周部には環状溝2fが形成され、そこに形状記憶合金10の略中間部が掛けられている。尚、これらのような形状記憶合金の掛け渡し方は、形状記憶合金11についても採用できることは言うまでもない。
【0026】
また、上記の実施例においては、各形状記憶合金をワイヤ状のものとして説明したが、帯状の形状記憶合金であっても差し支えない。また、上記の実施例は、本発明をフォーカルプレンシャッタに適用した場合の実施例であるが、本発明は、先羽根即ち開き用の羽根と、後羽根即ち閉じ用の羽根とを、個別に設けているタイプのレンズシャッタにも適用できることは言うまでもない。但し、その場合には、セット作動のとき、先に、後羽根用駆動部材がセットされ、露光用開口を後羽根によって閉じてから、先羽根用駆動部材のセット作動を開始させる必要がある。また、その場合、各羽根は、夫々1枚であってもよいし複数枚であっても構わない。
【0027】
【発明の効果】
上記のように、本発明は、シャッタ装置を電動でセットするのに、従来のようにフィルム巻き上げ装置に連動させず、形状記憶合金によって行うようにしたので、フィルム巻き上げ装置との機械的連動機構が不要となり、且つ、従来、先羽根駆動部材と後羽根駆動部材とを同時にセットするために必要だったセット部材が不要になり、また、カメラの不使用時において先羽根駆動部材と後羽根駆動部材とをセット状態に保つための部材も特に設ける必要がないので、スペース的に非常に有利となり、シャッタ装置、ひいてはカメラの小型化に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の平面図であり、撮影終了直後におけるセット前状態を示している。
【図2】本発明の実施例の平面図であり、セット後の状態を示す平面図である。
【図3】本発明の実施例の作動を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の実施例における一部の変形例を示す部分側面図である。
【図5】本発明の実施例における一部の他の変形例を示す部分側面図である。
【符号の説明】
1 シャッタ地板
1a 露光用開口部
1b,1c,1k,1m 軸
1d,1e,2d 孔
1f,1g ばね掛け
1h,1i,1j 柱
2 先羽根用駆動部材
2a,3a 作動ピン
2b,3b 取付部
2c,2e,4b,5b 軸部
2f 環状溝
3 後羽根用駆動部材
4,5 鉄片部材
4a,5a 鉄片部
4c,5c 鍔部
6,7 圧縮ばね
8 先羽根用駆動ばね
9 後羽根用駆動ばね
10,11 形状記憶合金
12,13,14,15 止め具
16,17,18,19 ビス
20 先羽根用電磁石
20a,21a 鉄芯部材
20b,21b コイル
21 後羽根用電磁石
22,23 テンショナー
22a,23a ピン
24,25 ばね
Claims (4)
- 露光用開口部を有する地板と、往復作動が可能であって露光作動時に先羽根用駆動ばねによってセット位置から作動され先羽根に前記露光用開口部を開かせる先羽根用駆動部材と、電圧の印加が断たれたとき前記先羽根用駆動部材を前記先羽根用駆動ばねに抗してセット位置に作動させレリーズの初期段階において電圧が印加されたとき前記先羽根用駆動部材を露光作動可能状態とする第1形状記憶合金と、レリーズの初期段階で前記先羽根用駆動部材をセット位置で吸引保持し露光時間制御回路からの信号に応じて該保持力を解除する先羽根用電磁石と、往復作動が可能であって露光作動時に後羽根用駆動ばねによってセット位置から作動され後羽根に前記露光用開口部を閉じさせる後羽根用駆動部材と、電圧の印加が断たれたとき前記後羽根用駆動部材を前記後羽根用駆動ばねに抗してセット位置に作動させレリーズの初期段階において電圧が印加されたとき前記後羽根用駆動部材を露光作動可能状態とするる第2形状記憶合金と、レリーズの初期段階で前記後羽根用駆動部材をセット位置で吸引保持し露光時間制御回路からの信号に応じて該保持力を解除する後羽根用電磁石とを備えていることを特徴とするカメラ用シャッタ。
- 前記第1形状記憶合金に対する電圧の印加が断たれてから所定時間後に前記第2形状記憶合金に対する電圧の印加が断たれるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用シャッタ。
- 前記第1形状記憶合金と前記第2形状記憶合金のうち少なくとも一方は、その一端が前記地板に取り付けられ、他端が前記駆動部材の一方に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用シャッタ。
- 前記第1形状記憶合金と前記第2形状記憶合金のうち少なくとも一方は、その両端が前記地板に取り付けられ、その両端間が前記駆動部材の一方に掛けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用シャッタ。
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