JP3736797B2 - 高温クリームはんだ用組成物およびインダクタ - Google Patents

高温クリームはんだ用組成物およびインダクタ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Pbを含まない高温クリームはんだ用組成物に係り、特にリフロー前に予めはんだ付けされ、リフロー時に溶け出さないような組成を有する高温クリームはんだ用組成物およびその組成物をコイル端末と端子との接続に用いたインダクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント基板等に搭載される電子部品には、その内部においてはんだが用いられているものがある。例えば図1(A)、(B)に示すような線状のコイル1を有するインダクタにおいては、予めドラムコア4に巻かれたコイル1の端末と端子2とを、ドラムコア4の端部のフランジ6において高温はんだ3により固着しておき、このインダクタを、低温はんだであるクリームはんだを塗布したプリント基板上に搭載し、これをリフロー炉に通してプリント基板と端子2とを他の部品と共に同時に低温はんだによりはんだ付けすることが行われる。
【0003】
従来、リフローで使用するはんだとして、一般的には融点が183℃程度のSn−37Pb(Pbが37質量%含まれるSnとの合金)からなる共晶はんだ(クリームはんだ)を使用し、また、電子部品の内部に使用するはんだとしては、高温はんだとして、固相線と液相線の範囲が270〜305℃(溶け始めが270℃で305℃では液状となることを意味する)程度のSn−90Pbが使用されてきた。
【0004】
しかしながらPbは有毒であることから、環境汚染を防止する意味において、使用を避けることが推奨されている。このような意味において、現在、プリント基板に電子部品を搭載してはんだ付けするため、一般的にはリフロー用として融点が約220℃程度のSn−3.5Ag−0.75Cuからなるはんだが使用され、リフロー炉として240〜260℃位の温度範囲のものが使用されている。
【0005】
これに対し、電子部品の内部に使用される高温はんだとしては、Sn−Cu系合金を使用し、Cuの含有率を増加させると融点が上がることから、Cuの含有率を上げることが検討されている。例えば、Cuの含有率を11質量%とした場合、227℃位から一部溶融し、380℃位では完全に液状になる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図1のインダクタの場合、ドラムコア4はコイル1が巻かれて筒状のスリーブコア5内に挿入され、ドラムコア4のフランジ6の端面凹部において、端子2とコイル1の端末との継線部分であるはんだ付け部にクリームはんだである高温はんだ3を塗布しておき、このはんだ付け部にレーザを照射して、コイル1の端末の被膜を溶かすと同時にはんだ付けしている。また、この高温はんだ3によるはんだ付け部は、コイル1の端末と端子2とのはんだ付け後に塗布されて硬化される樹脂7により密封される。この樹脂7は端子2やドラムコア4の固定の役目とはんだ付け部の保護の役目を果たす。
【0007】
このようなインダクタにおいて、前記高温はんだ3として前記Sn−11Cuの組成のものを使用したこのインダクタをプリント基板に搭載してはんだ付けするために、240〜260℃位の温度範囲のリフロー炉に通すと、はんだ3の一部が図1の3aのように溶け出し、端子2の表面部分に溶出して固化してしまう。このようなはんだ3の溶出は、端子2のコイル1の端末とのはんだ付け部の信頼性を損ない、かつ電子部品の熱の上昇によって再度高温はんだ3が溶融する虞も生じる上、外観も悪くするという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み、Pbを含まない高温はんだを使用した電子部品をプリント基板にはんだ付けする場合、リフロー時に電子部品内部のはんだが溶出する虞のない組成の高温クリームはんだ用組成物およびその組成物をコイル端末と端子との接続に用いたインダクタを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の高温クリームはんだ用組成物は、平均粒径が10〜20μmの粉末状をなす第1金属成分と第2金属成分とからなり、
第1金属成分は融点が261〜600℃の範囲内のSn−Cu系合金であり
第2金属成分はCuまたはCu−Sn合金でなり、
前記第1金属成分に対する第2金属成分の添加量は、質量比で第1金属成分1に対し第2金属成分が0.2〜4.0の範囲内であり、
加熱により第1金属成分中に第2金属成分が拡散して融点が261℃〜1100℃となる
ことを特徴とする。
【0010】
請求項2の高温クリームはんだ用組成物は、平均粒径が10〜20μmの粉末状をなす第1金属成分と第2金属成分とからなり、
第1金属成分は融点が261〜600℃の範囲内のSn−Cu−Sb系合金であり
第2金属成分はCuでなり、
前記第1金属成分に対する第2金属成分の添加量は、質量比で第1金属成分1に対し第2金属成分が0.2〜4.0の範囲内であり、
加熱により第1金属成分中に第2金属成分が拡散して融点が261℃〜1100℃となる
ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の高温クリームはんだ用組成物は、請求項1に記載された高温クリームはんだ用組成物において、
前記第1金属成分のCuの含有率は1.5〜60質量%の範囲内であり、残部はSnおよび不可避的不純物からなる
ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の高温クリームはんだ用組成物は、請求項2に記載された高温クリームはんだ用組成物において、
前記第1金属成分のCuの含有率は1〜20質量%、Sbの含有率は10〜40質量%の範囲内であり、残部はSnおよび不可避的不純物からなる
ことを特徴とする。
【0013】
請求項5のインダクタは、コアの両端にフランジを有し、フランジに端子を取付け、前記コアに巻かれたコイルの端末を前記フランジ端面において前記端子に高温はんだにより固着するインダクタであって、
前記高温はんだとして請求項1から4までのいずれかの高温クリームはんだ用組成物を用いた
ことを特徴とする。
【0014】
本発明において、Sn−Cu系合金を第1金属成分に用いた場合、Cuの含有率を1.5質量%以上に設定することにより、融点(液状態となる温度)を261℃以上とすることができる。第1金属成分は、加熱により流動状態となる部分であり、第2金属成分は融点が高いことにより、第1金属成分が流動性を帯びたときにその流動性を阻む骨材としての作用をなすことにより、リフロー時における溶出を阻むものである。
【0015】
ただし、第2金属成分としては第1金属成分と相溶性があるものが用いられ、第2金属成分の一部も第1金属成分と溶融するため、この高温はんだを溶融させた際に、第2金属成分が第1金属成分に拡散して一部溶融し、再度リフローにより加熱した状態では融点が前記の範囲に上昇するために、リフロー時における高温はんだの溶出を阻む作用も果たす。
【0016】
Sn−Cu系合金を第1金属成分に用いた場合、Cuの含有率を60質量%以下とすることにより、融点を600℃程度以下に抑えることができる。この600℃は、この合金を粉末として製造する場合、製造可能な上限温度と把握される温度である。また、Sn−Cu−Sb系合金を第1金属成分に用いる場合、融点を前記範囲内に抑えるには、前述のように、Cuの含有率は1〜20質量%、Sbの含有率は10〜40質量%の範囲内とする。
【0017】
ここで第1金属成分の融点を261℃以上とする理由は、近年におけるリフロー時のPbフリーのリフローの温度が最高で260℃程度に設定されるためである。
【0018】
はんだ粉末の粒径は、通常、63μm以下であり、第2金属成分の粒径も63μm以下とすることが好ましい。第2金属成分の平均粒径は10〜20μmであることがさらに好ましい。平均粒径が10μm未満であると、第1金属成分が流動性を持った際にその流動性を阻む作用が低下する。また、20μmを超えると、はんだ付け後においてはんだ層に粒子状に残留する第2金属成分の粒径が大きいために、第1金属成分への拡散性が低下することになる。また、両者の拡散性を良好にするには、粒子を球形とすることが好ましい。
【0019】
また、前記第2金属成分が骨材として流動性を低下させる役目を果たすためには、第1金属成分に対する第2金属成分の添加比は、1:0.2以上であることが好ましく、また、融点を前記温度以下に抑えるには、前記比は1:4.0以下であることが好ましい。
【0020】
本発明により実現される高温はんだは、前記第1金属成分と第2金属成分の各粉末にロジン、溶剤等を加えて混合することによりクリームはんだとして構成され、はんだごてやレーザ照射等による加熱によって溶融される。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明において、使用する第1金属成分のはんだ粉末として例えば表1に示すものが使用できる。
【0022】
【表1】
Figure 0003736797
【0023】
(実施例1)
第1金属成分として平均粒径が10〜20μm程度のSn−11Cu、第2金属成分として平均粒径が20μm程度のCuを用い、第1金属成分に対し第2金属成分を質量比で1:0.4になるように加え、さらにロジン、溶剤を加えて混合することによりクリームはんだとした。このクリームはんだを図1に示した高温はんだ3として用い、レーザ照射によって溶融固化させ、熱硬化併用型UV樹脂7ではんだ3によるコイル1の端末と端子2とのはんだ付け部を覆い、紫外線照射により樹脂7の表面を硬化させ、その後、130℃の加熱炉により樹脂7を内部まで硬化させた。
【0024】
(実施例2)
第1金属成分として平均粒径が10〜20μm程度のSn−11Cu、第2金属成分として平均粒径が20μm程度のSn−70Cuを用い、第1金属成分に対し第2金属成分を質量比で1:0.4になるように加え、さらにロジン、溶剤を加えて混合することによりクリームはんだとした。このクリームはんだを前記と同様にレーザ照射によって溶融固化させ、熱硬化併用型UV樹脂7ではんだ付け部を覆った。
【0025】
このようにして作成したインダクタをプリント基板にはんだ付けするため、クリームはんだを塗布したプリント基板上に搭載し、260℃のリフロー炉に通した。その結果を表2に示す。表2において、サンプル5、11がそれぞれ前記実施例1、2に相当する。これらの実施例においては、図1に示した溶出はんだ3aは生じなかった。
【0026】
また、表2に示すように、第2金属成分を含まない場合(サンプル13〜15)や第2金属成分の添加量を種々に変えたものについてサンプルを作成した。その結果、第2金属成分を含まない場合にはリフロー時のはんだの溶出量は大となった。また、第2金属成分の添加量が10%(第1金属成分100質量%に対する第2金属成分の質量%)の場合には、リフロー時のはんだの溶出が大であったが、第2金属成分の質量%が20%質量ないし400質量%においてはリフロー時の溶出を小さく抑えるかあるいは溶出を無くすることができた。また、第1金属成分がSn−Cu−Sbの合金の場合にも、リフロー時における溶出量を小さく抑えることができた。
【0027】
本発明は、リフロー前にはんだ付けするインダクタ以外の種々の電子部品の高温はんだ付け部に使用することができる。
【0028】
【表2】
Figure 0003736797
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、はんだの主母材である合金の使用温度をほとんど上昇させることなく、継線部分等のはんだ付けができ、かつ240〜260℃のリフロー炉使用の場合においても、高温はんだの再溶融による溶出を阻止することができるから、電子部品における継線部分等の高温はんだ付け部分のはんだ付けにとってきわめて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明によるはんだを適用するインダクタの部分断面側面図、(B)はその端面図である。
【符号の説明】
1:コイル、2:端子、3:はんだ、3a:溶出部、4:ドラムコア、5:スリーブコア、6:フランジ、7:樹脂

Claims (5)

  1. 平均粒径が10〜20μmの粉末状をなす第1金属成分と第2金属成分とからなり、
    第1金属成分は融点が261〜600℃の範囲内のSn−Cu系合金であり
    第2金属成分はCuまたはCu−Sn合金でなり、
    前記第1金属成分に対する第2金属成分の添加量は、質量比で第1金属成分1に対し第2金属成分が0.2〜4.0の範囲内であり、
    加熱により第1金属成分中に第2金属成分が拡散して融点が261℃〜1100℃となる
    ことを特徴とする高温クリームはんだ用組成物。
  2. 平均粒径が10〜20μmの粉末状をなす第1金属成分と第2金属成分とからなり、
    第1金属成分は融点が261〜600℃の範囲内のSn−Cu−Sb系合金であり
    第2金属成分はCuでなり、
    前記第1金属成分に対する第2金属成分の添加量は、質量比で第1金属成分1に対し第2金属成分が0.2〜4.0の範囲内であり、
    加熱により第1金属成分中に第2金属成分が拡散して融点が261℃〜1100℃となる
    ことを特徴とする高温クリームはんだ用組成物。
  3. 請求項1に記載された高温クリームはんだ用組成物において、
    前記第1金属成分のCuの含有率は1.5〜60質量%の範囲内であり、残部はSnおよび不可避的不純物からなる
    ことを特徴とする高温クリームはんだ用組成物。
  4. 請求項2に記載された高温クリームはんだ用組成物において、
    前記第1金属成分のCuの含有率は1〜20質量%、Sbの含有率は10〜40質量%の範囲内であり、残部はSnおよび不可避的不純物からなる
    ことを特徴とする高温クリームはんだ用組成物。
  5. コアの両端にフランジを有し、フランジに端子を取付け、前記コアに巻かれたコイルの端末を前記フランジ端面において前記端子に高温はんだにより固着するインダクタであって、
    前記高温はんだとして請求項1から4までのいずれかの高温クリームはんだ用組成物を用いた
    ことを特徴とするインダクタ。
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