JP3736196B2 - イオン注入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、複数のフィラメントを有するイオン源から引き出したイオンビームを基体に照射してイオン注入を行うイオン注入装置に関し、より具体的には、イオン源から引き出すイオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御する手段の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のイオン注入装置の従来例を図8に示す。このイオン注入装置は、イオンドーピング装置(または非質量分離型イオン注入装置)とも呼ばれるものであり、イオン源2から引き出した大面積のイオンビーム12を、質量分離器を通すことなくそのまま基体14に照射して、当該基体14にイオン注入を行うよう構成されている。イオン注入時は、必要に応じて、基体14をイオンビーム照射領域内で、例えば紙面の表裏方向に、機械的に走査しても良い。基体14は、例えばガラス基板、半導体基板等である。
【0003】
このイオン源2は、バケット型イオン源(または多極磁場型イオン源)とも呼ばれるものであり、プラズマ生成容器4内に複数(例えば三つ)のフィラメント6を設けており、この各フィラメント6とプラズマ生成容器4との間でアーク放電を生じさせてイオン源ガスを電離させてプラズマ8を生成し、このプラズマ8から、引出し電極系10によって、上記イオンビーム12を引き出す構成をしている。多極磁場形成用の磁石の図示は省略している。
【0004】
上記各フィラメント6には、この例ではフィラメント電源16がそれぞれ接続されており、この各フィラメント電源16から各フィラメント6に対して、各フィラメント6を加熱するフィラメント電流IFを互いに独立して流すことができる。
【0005】
イオン源2から引き出すイオンビーム12のビーム電流を所定の値に制御するために、このイオン注入装置は、更に、イオンビーム12を受けてそのビーム電流を当該イオンビーム12に交差する面内における複数位置において計測するものであってフィラメント6の数よりも多い複数(例えば24個)のビーム電流計測器18と、この各ビーム電流計測器18で計測したビーム電流IBの平均値を求めて、当該平均値が設定値に近づくように各フィラメント6に流すフィラメント電流IFを互いに同じ量だけ増減させる制御を行う制御装置20とを備えている。
【0006】
各ビーム電流計測器18は、例えばファラデーカップから成り、イオンビーム12の照射領域内に例えば一列に配置されている。なお、ビーム電流計測器18によるイオンビーム12の計測時には、基体14はイオンビーム12を遮らない位置に移動させておくものとする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記イオン注入装置では、各フィラメント6に流すフィラメント電流IFの比率を、イオンビーム12の均一性が良くなるように予め設定しておいて運転している。
【0008】
しかし、各フィラメント6の経時変化の仕方は互いに異なるのが常であるので、各フィラメント6に流すフィラメント電流IFを互いに同じ量だけ増減させる上記制御装置20を用いたのでは、フィラメント6の経時変化に伴って、イオンビーム12の均一性が悪化するという課題がある。
【0009】
また、特開平3−134937号公報には、フィラメントと同数のビーム電流計測器を設けておき、各ビーム電流計測器で計測するビーム電流が設定値になるように、各フィラメントに流すフィラメント電流をそれぞれ制御する技術が記載されている。
【0010】
しかしこの公報に記載の技術では、各設定値を互いに同一にすればイオンビームの均一化が可能なように見えるけれども、実際は、一つのフィラメントに流すフィラメント電流の制御が他のフィラメント付近のプラズマ密度に影響を及ぼし、ひいては他のビーム電流計測器で計測するビーム電流にまで影響を及ぼすので、即ちフィラメント電流の制御が互いに影響を及ぼし合って、一の計測点のビーム電流を所定値に制御しようとすると他の計測点のビーム電流が所定値から外れ、この外れた他の計測点のビーム電流を所定値に制御しようとすると折角所定値に制御した一の計測点のビーム電流が所定値から外れるというように、制御がハンチングを起こして収束しなくなるという深刻な課題がある。
【0011】
そこでこの発明は、図8に示したようなイオン注入装置を改良して、そのイオン源から引き出すイオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができるようにすることを主たる目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るイオン注入装置の一つは、前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、全ビーム電流計測器による全計測値の中から最大値および最小値を探し、その最大値および最小値が属するグループをそれぞれ決定し、最大値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えていることを特徴としている(請求項1)。
【0013】
上記電流値制御ルーチンによって、イオン源から引き出すイオンビームのビーム電流の平均値が設定値に近づく方向に制御される。
【0014】
一方、上記均一性制御ルーチンによって、ビーム電流の最大値が属するグループのビーム電流が減少させられ、かつ最小値が属するグループのビーム電流が増加させられるので、ビーム電流の均一性が良くなる方向に制御される。
【0015】
上記制御装置は、このような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行うので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0016】
前記均一性制御ルーチンにおいて、前記最大値と前記最小値との差を求めて当該差の大きさを複数段階(例えば大、中、小)に分け、前記フィラメント電流を増減させる量をこの各段階に応じて異ならせる制御を行うようにしても良い(請求項2)。そのようにすれば、差の大きい所ほどフィラメント電流を大きく増減させて速くビーム電流を増減させることができるので、ビーム電流の均一性を速く良くすることができる。
【0017】
前記均一性制御ルーチンにおいて、前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値がその設定値に対する所定の停止範囲内にあり、かつ当該平均値が当該設定値よりも大きいときは前記最小値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の増加動作を禁止し、当該平均値が当該設定値よりも小さいときは前記最大値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の減少動作を禁止する制御を行うようにしても良い(請求項3)。そのようにすれば、均一性制御ルーチンにおいて、ビーム電流の平均値がふらつき始めて停止範囲から外れることを確実に抑制することができるので、ビーム電流をより安定にかつより速く、設定値に制御することができる。
【0018】
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、各グループ内における計測ビーム電流の平均値をそれぞれ演算し、最大平均値および最小平均値を有するグループをそれぞれ決定し、最大平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンを採用しても良い(請求項4)。このような均一性制御ルーチンを採用することにより、仮に複数のビーム電流計測器による複数のビーム電流計測値の中に少数の特異値やノイズが含まれていても、グループごとの平均値に基づいて制御するので、上記特異値やノイズによる影響を小さく抑えてビーム電流を制御することができる。
【0019】
前記均一性制御ルーチンにおいて、前記最大平均値と前記最小平均値との差を求めて当該差の大きさを複数段階(例えば大、中、小)に分け、前記フィラメント電流を増減させる量をこの各段階に応じて異ならせる制御を行うようにしても良い(請求項5)。そのようにすれば、差の大きい所ほどフィラメント電流を大きく増減させて速くビーム電流を増減させることができるので、ビーム電流の均一性を速く良くすることができる。
【0020】
前記均一性制御ルーチンにおいて、前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値がその設定値に対する所定の停止範囲内にあり、かつ当該平均値が当該設定値よりも大きいときは前記最小平均値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の増加動作を禁止し、当該平均値が当該設定値よりも小さいときは前記最大平均値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の減少動作を禁止する制御を行うようにしても良い(請求項6)。そのようにすれば、均一性制御ルーチンにおいて、ビーム電流の平均値がふらつき始めて停止範囲から外れることを確実に抑制することができるので、ビーム電流をより安定にかつより速く、設定値に制御することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明に係るイオン注入装置の一例を示す図である。図8に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。
【0022】
このイオン注入装置は、従来の制御装置20に代わるものとして、次のような制御装置22を備えている。
【0023】
制御装置22は、前記各ビーム電流計測器18で計測したイオンビームIBに基づいて、前記各フィラメント電源16から前記各フィラメント6に流すフィラメント電流IFを制御するものであり、以下に詳述するような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行うものである。
【0024】
電流値制御ルーチンの一例を図2に示す。また、制御の前後におけるビームプロファイルの概略例を図7に示し、以下の説明においてはこの図7も参照するものとする。なお、図7中の横軸の1〜24は、24個のビーム電流計測器18の端からの番号を示している。
【0025】
まず、各ビーム電流計測器18によってイオンビーム12のビーム電流をそれぞれ計測する(ステップ30)。これによって、例えば、図7中のビームプロファイルAが得られる。次に、計測した全てのビーム電流IBの平均値AVEを演算する(ステップ31)。
【0026】
この平均値AVEが、その設定値SETに対する停止範囲STP内にあるか否かを判断する(ステップ32)。停止範囲STPは、例えば、設定値SETの±3%の範囲である。停止範囲STP内にあれば、既に平均値制御の目的は達成されているので、図3、図4、図5または図6に示す均一性制御ルーチンに進む。
【0027】
平均値AVEが停止範囲STP内にないときは、ステップ33に進んで、当該平均値AVEが上記設定値SETより大か否かを判断し、大きければステップ34に進んで全てのフィラメント6に流すフィラメント電流IFを所定量だけ減少させ、小さければステップ35に進んで全てのフィラメント6に流すフィラメント電流IFを所定量だけ増加させる。この増加または減少の量は、この例では、全てのフィラメント6に対して互いにほぼ同じ(同じを含む)量としている。このフィラメント電流IFの増減によって、各フィラメント6からの放出電子量が増減し、それによって各フィラメント6付近でのプラズマ8の密度が増減し、各フィラメント6に対応する領域から引き出されるイオンビーム12のビーム電流が増減する。
【0028】
上記電流値制御ルーチンによって、イオン源2から引き出すイオンビーム12のビーム電流の平均値AVEが設定値SETに近づく方向に制御される。これによって、例えば、図7中のビームプロファイルBが得られる。この状態では、未だ均一性制御ルーチンを実行していないので、ビームプロファイルBは、元のビームプロファイルAと似た形状をしており、当該ビームプロファイルAをほぼ平行移動させたようなものである。
【0029】
続いて、例えば図3に示す例のような均一性制御ルーチンに進む。
【0030】
ここでは、上記24個のビーム電流計測器18(計測点)を上記フィラメント6の数すなわち三つにグループ分けする(ステップ36)。具体的には、図7中に示すように、1番目から8番目までのビーム電流計測器18をグループ1とし、9番目から16番目までのビーム電流計測器18をグループ2とし、17番目から24番目までのビーム電流計測器18をグループ3とする。
【0031】
そして、全てのビーム電流計測器18による全ての計測値の中から最大値MAXおよび最小値MINを探し(ステップ37)、その最大値MAXおよび最小値MINが属するグループをそれぞれ決定する(ステップ38)。図7の例では、グループ1に最大値MAXが属しており、グループ3に最小値MINが属している。
【0032】
そして、最大値MAXが属するグループ1に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFを所定量だけ減少させ(ステップ39)、最小値MINが属するグループ3に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFを所定量だけ増加させる(ステップ40)。これによって、グループ1のビーム電流が減り、グループ3のビーム電流が増える。
【0033】
この均一性制御ルーチンによって、上記ビームプロファイルBの最大値MAXが属するグループ1のビーム電流が減少させられ、最小値MINが属するグループ3のビーム電流が増加させられるので、ビーム電流の均一性が良くなる方向に制御される。これによって、例えば図7中に示すビームプロファイルCが得られる。
【0034】
なお、ビーム電流の均一性は、例えば、全計測点中のビーム電流の最大値MAXと最小値MINとを用いて、(MAX−MIN)/(MAX+MIN)で定義することができる。
【0035】
上記電流値制御ルーチンおよび均一性制御ルーチンは、少なくとも1回ずつ行うものとし、複数回ずつ行っても良い。何回行うかは予め制御装置22に設定しておけば良い。そしてこの所定回数を繰り返したか否かをステップ41で判断し、繰り返しが完了すれば制御は終了し、繰り返しが未完了であれば電流値制御ルーチンの初め(ステップ30)に戻って上記制御が繰り返される。
【0036】
このイオン注入装置によれば、制御装置22によって、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行うので、フィラメント6の経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビーム12のビーム電流を所定の値に(即ち設定値SETに)、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0037】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、先の公報に示した従来技術の場合と違って、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0038】
上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを複数回ずつ繰り返すようにすれば、イオンビーム12のビーム電流をより高精度で所定値に制御することができると共に、均一性もより高めることができる。
【0039】
上記均一性制御ルーチンにおいて、上記最大値MAXと最小値MINとの差(即ち|MAX−MIN|)を求めて、この差の大きさを複数段階(例えばある一定の値を基準にして大、中、小の3段階)に分け、ステップ39および40においてフィラメント電流IFを増減させる量を、この各段階に応じて異ならせる制御を行うようにしても良い。即ち、差の大、中、小に応じて、フィラメント電流IFの増減量も、ある一定の値を基準にして大、中、小にするようにしても良い。
【0040】
そのようにすれば、差の大きい所ほどフィラメント電流IFを大きく増減させて速くビーム電流を増減させることができるので、ビーム電流の均一性を速く良くすることができる。
【0041】
また、上記均一性制御ルーチンにおいて、次のような制約を設けても良い。即ち、図7を参照して、前記平均値AVEがその設定値SETに対する停止範囲STP内にある場合において、▲1▼当該平均値AVEが設定値SETよりも大きいときは、前記最小値MINが属するグループ(グループ3)に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFの増加動作を禁止し、▲2▼当該平均値AVEが設定値SETよりも小さいときは、前記最大値MAXが属するグループ(グループ1)に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFの減少動作を禁止するようにしても良い。
【0042】
上記▲1▼のときは、仮にグループ3に対応するフィラメント6のフィラメント電流IFの増加動作を許容すると、その増加によって、平均値AVEが増加して設定値SETから離れる方向に向かう可能性がある。逆に上記▲2▼のときは、仮にグループ1に属するフィラメント6のフィラメント電流IFの減少動作を許容すると、その減少によって、平均値AVEが減少して設定値SETから離れる方向に向かう可能性がある。仮にそのようなことが起こると、平均値AVEがふらつき始める可能性がある。従って、上記のような制約を設けておけば、それを防止して、均一性制御ルーチンにおいて、ビーム電流の平均値AVEがふらつき始めて停止範囲STPから外れることを確実に抑制することができるので、ビーム電流をより安定にかつより速く、設定値SETに制御することができる。
【0043】
上記のような制約を設けた均一性制御ルーチンの例を図4に示す。図3の例とは、ステップ42〜45を追加した点が異なる。即ち、ステップ42において上記平均値AVEが上記停止範囲STP内か否かを判断し、停止範囲STP内にある場合はステップ43において平均値AVEが設定値SETより大きいか否かを更に判断し、大きいときはステップ44に進んで最大値MAXが属するグループ1に対応するフィラメント6のフィラメント電流IFを減少させる制御のみを行い(即ちステップ40に相当する動作は禁止し)、小さいときはステップ45に進んで最小値MINが属するグループ3に対応するフィラメント6のフィラメント電流IFを増加させる制御のみを行う(即ちステップ39に相当する動作は禁止する)ようにしている。
【0044】
均一性制御ルーチンの更に他の例を図5および図6にそれぞれ示す。
【0045】
図5の均一性制御ルーチンは、図3の均一性制御ルーチンに相当するものであり、それとの相違点を主体に説明する。この図5の均一性制御ルーチンでは、前述した各グループ1〜3内における計測ビーム電流の平均値をそれぞれ演算し(ステップ47)、最大平均値を有するグループ(図7の例ではグループ1)および最小平均値を有するグループ(図7の例ではグループ3)をそれぞれ決定し(ステップ48)、最大平均値を有するグループ1に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFを減少させ(ステップ49)、最小平均値を有するグループ3に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFを増加させる(ステップ50)。
【0046】
このような均一性制御ルーチンを採用することにより、仮に複数のビーム電流計測器18による複数のビーム電流計測値の中に少数の特異値やノイズが含まれていても、グループごとの平均値に基づいて制御するので、上記特異値やノイズによる影響を小さく抑えてビーム電流を制御することができる。換言すれば、単発的な特異点やノイズがあったとしても、それに全体の制御が引きずられることを防止して、イオンビーム全体のビーム電流をより正しく制御することができる。
【0047】
この図5の均一性制御ルーチンにおいても、図3の例の場合と同様に、最大平均値と最小平均値との差を求めて当該差の大きさを複数段階に分け、フィラメント電流IFを増減させる量をこの各段階に応じて異ならせるようにしても良い。そのようにすれば、差の大きい所ほどフィラメント電流IFを大きく増減させて速くビーム電流を増減させることができるので、ビーム電流の均一性を速く良くすることができる。
【0048】
更に、図4の例の場合と同様に、図5の均一性制御ルーチンに図6に示す例のようにステップ52〜55を追加して、全ビーム電流の前記平均値AVEがその設定値SETに対する停止範囲STP内にある場合において、▲1▼当該平均値AVEが設定値SETよりも大きいときは、前記最小平均値が属するグループ3に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFの増加動作を禁止し、▲2▼当該平均値AVEが設定値SETよりも小さいときは、前記最大平均値が属するグループ1に対応するフィラメント6に流すフィラメント電流IFの減少動作を禁止するようにしても良い。
【0049】
そのようにすれば、均一性制御ルーチンにおいて、ビーム電流の平均値AVEがふらつき始めて停止範囲STPから外れることを確実に抑制することができるので、ビーム電流をより安定にかつより速く、設定値SETに制御することができる。
【0050】
なお、上記複数のフィラメント電源16は、必ずしも別個のものである必要はなく、それらを一つにまとめて、各フィラメント6に互いに独立してフィラメント電流IFを流すことのできる一つのフィラメント電源としても良い。
【0051】
また、上記ビーム電流計測器18の数は、例えばフィラメント6の数の2以上の整数倍であるが、必ずしも整数倍でなくても良い。また、各グループ内に属させるビーム電流計測器18の数は、必ずしも同数ずつにする必要はない。よりきめ細かく制御したいグループ内のビーム電流計測器18の数を他より増やしても良い。
【0052】
制御装置22による上記例のような制御は、制御方法として着目すれば、イオン注入装置の制御方法、イオン源の制御方法またはイオンビーム電流の自動制御方法と言うこともできる。
【0053】
【発明の効果】
この発明は、上記のとおり構成されているので、次のような効果を奏する。
【0054】
請求項1記載の発明によれば、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えているので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0055】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0056】
請求項2記載の発明によれば、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えているので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0057】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0058】
更に、均一性制御ルーチンにおいて、差の大きい所ほどフィラメント電流を大きく増減させて速くビーム電流を増減させることができるので、ビーム電流の均一性を速く良くすることができる。
【0059】
請求項3記載の発明によれば、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えているので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0060】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0061】
更に、均一性制御ルーチンにおいて、ビーム電流の平均値がふらつき始めて停止範囲から外れることを確実に抑制することができるので、ビーム電流をより安定にかつより速く、設定値に制御することができる。
【0062】
請求項4記載の発明によれば、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えているので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0063】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0064】
更に、仮に複数のビーム電流計測器による複数のビーム電流計測値の中に少数の特異値やノイズが含まれていても、グループごとの平均値に基づいて制御するので、上記特異値やノイズによる影響を小さく抑えてビーム電流を制御することができる。
【0065】
請求項5記載の発明によれば、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えているので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0066】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0067】
更に、仮に複数のビーム電流計測器による複数のビーム電流計測値の中に少数の特異値やノイズが含まれていても、グループごとの平均値に基づいて制御するので、上記特異値やノイズによる影響を小さく抑えてビーム電流を制御することができる。
【0068】
更に、均一性制御ルーチンにおいて、差の大きい所ほどフィラメント電流を大きく増減させて速くビーム電流を増減させることができるので、ビーム電流の均一性を速く良くすることができる。
【0069】
請求項6記載の発明によれば、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとを少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えているので、フィラメントの経時変化等による均一性の悪化を防いで、イオンビームのビーム電流を所定の値に、しかも均一性の良いものに制御することができる。
【0070】
しかも、上記のような電流値制御ルーチンと均一性制御ルーチンとの2段階制御によれば、制御がハンチングを起こして収束しなくなる問題も起こらず、安定した制御を行うことができる。
【0071】
更に、仮に複数のビーム電流計測器による複数のビーム電流計測値の中に少数の特異値やノイズが含まれていても、グループごとの平均値に基づいて制御するので、上記特異値やノイズによる影響を小さく抑えてビーム電流を制御することができる。
【0072】
更に、均一性制御ルーチンにおいて、ビーム電流の平均値がふらつき始めて停止範囲から外れることを確実に抑制することができるので、ビーム電流をより安定にかつより速く、設定値に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るイオン注入装置の一例を示す図である。
【図2】図1中の制御装置における電流値制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】図1中の制御装置における均一性制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】図1中の制御装置における均一性制御ルーチンの他の例を示すフローチャートである。
【図5】図1中の制御装置における均一性制御ルーチンの更に他の例を示すフローチャートである。
【図6】図1中の制御装置における均一性制御ルーチンの更に他の例を示すフローチャートである。
【図7】制御の前後におけるビームプロファイルの概略例を示す図である。
【図8】従来のイオン注入装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
2 イオン源
6 フィラメント
12 イオンビーム
16 フィラメント電源
18 ビーム電流計測器
22 制御装置
Claims (6)
- 複数のフィラメントを有するイオン源と、このイオン源の各フィラメントに互いに独立してフィラメント電流を流す1以上のフィラメント電源と、前記イオン源から引き出されたイオンビームのビーム電流を当該イオンビームに交差する面内における複数位置において計測するものであって前記フィラメントの数よりも多い複数のビーム電流計測器とを備えるイオン注入装置において、
前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、
前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、全ビーム電流計測器による全計測値の中から最大値および最小値を探し、その最大値および最小値が属するグループをそれぞれ決定し、最大値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えていることを特徴とするイオン注入装置。 - 複数のフィラメントを有するイオン源と、このイオン源の各フィラメントに互いに独立してフィラメント電流を流す1以上のフィラメント電源と、前記イオン源から引き出されたイオンビームのビーム電流を当該イオンビームに交差する面内における複数位置において計測するものであって前記フィラメントの数よりも多い複数のビーム電流計測器とを備えるイオン注入装置において、
前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、
前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、全ビーム電流計測器による全計測値の中から最大値および最小値を探し、その最大値および最小値が属するグループをそれぞれ決定し、最大値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えており、
しかも前記制御装置は、前記均一性制御ルーチンにおいて、前記最大値と前記最小値との差を求めて当該差の大きさを複数段階に分け、前記フィラメント電流を増減させる量をこの各段階に応じて異ならせる制御を行う、ことを特徴とするイオン注入装置。 - 複数のフィラメントを有するイオン源と、このイオン源の各フィラメントに互いに独立してフィラメント電流を流す1以上のフィラメント電源と、前記イオン源から引き出されたイオンビームのビーム電流を当該イオンビームに交差する面内における複数位置において計測するものであって前記フィラメントの数よりも多い複数のビーム電流計測器とを備えるイオン注入装置において、
前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、
前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、全ビーム電流計測器による全計測値の中から最大値および最小値を探し、その最大値および最小値が属するグループをそれぞれ決定し、最大値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えており、
しかも前記制御装置は、前記均一性制御ルーチンにおいて、前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値がその設定値に対する所定の停止範囲内にあり、かつ当該平均値が当該設定値よりも大きいときは前記最小値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の増加動作を禁止し、当該平均値が当該設定値よりも小さいときは前記最大値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の減少動作を禁止する制御を行う、ことを特徴とするイオン注入装置。 - 複数のフィラメントを有するイオン源と、このイオン源の各フィラメントに互いに独立してフィラメント電流を流す1以上のフィラメント電源と、前記イオン源から引き出されたイオンビームのビーム電流を当該イオンビームに交差する面内における複数位置において計測するものであって前記フィラメントの数よりも多い複数のビーム電流計測器とを備えるイオン注入装置において、
前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、
前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、各グループ内における計測ビーム電流の平均値をそれぞれ演算し、最大平均値および最小平均値を有するグループをそれぞれ決定し、最大平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えていることを特徴とするイオン注入装置。 - 複数のフィラメントを有するイオン源と、このイオン源の各フィラメントに互いに独立してフィラメント電流を流す1以上のフィラメント電源と、前記イオン源から引き出されたイオンビームのビーム電流を当該イオンビームに交差する面内における複数位置において計測するものであって前記フィラメントの数よりも多い複数のビーム電流計測器とを備えるイオン注入装置において、
前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、
前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、各グループ内における計測ビーム電流の平均値をそれぞれ演算し、最大平均値および最小平均値を有するグループをそれぞれ決定し、最大平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えており、
しかも前記制御装置は、前記均一性制御ルーチンにおいて、前記最大平均値と前記最小平均値との差を求めて当該差の大きさを複数段階に分け、前記フィラメント電流を増減させる量をこの各段階に応じて異ならせる制御を行う、ことを特徴とするイオン注入装置。 - 複数のフィラメントを有するイオン源と、このイオン源の各フィラメントに互いに独立してフィラメント電流を流す1以上のフィラメント電源と、前記イオン源から引き出されたイオンビームのビーム電流を当該イオンビームに交差する面内における複数位置において計測するものであって前記フィラメントの数よりも多い複数のビーム電流計測器とを備えるイオン注入装置において、
前記ビーム電流計測器で計測したビーム電流に基づいて前記フィラメント電源から前記各フィラメントに流すフィラメント電流を制御する制御装置であって、
前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値を演算して当該平均値が設定値に近づくように前記各フィラメントに流すフィラメント電流を互いにほぼ同じ量だけ増減させる電流値制御ルーチンと、
前記複数のビーム電流計測器を前記フィラメントの数にグループ分けし、各グループ内における計測ビーム電流の平均値をそれぞれ演算し、最大平均値および最小平均値を有するグループをそれぞれ決定し、最大平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を減少させ、かつ最小平均値を有するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流を増加させる均一性制御ルーチンとを、少なくとも1回ずつ行う制御装置を備えており、
しかも前記制御装置は、前記均一性制御ルーチンにおいて、前記複数のビーム電流計測器で計測した全ビーム電流の平均値がその設定値に対する所定の停止範囲内にあり、かつ当該平均値が当該設定値よりも大きいときは前記最小平均値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の増加動作を禁止し、当該平均値が当該設定値よりも小さいときは前記最大平均値が属するグループに対応するフィラメントに流すフィラメント電流の減少動作を禁止する制御を行う、ことを特徴とするイオン注入装置。
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