JP3735577B2 - 軸受ホルダおよびその射出成形方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、VTR等のキャプスタンモータの出力回転軸を軸受を介して回転自在に支持している射出成形品からなる軸受ホルダに関するものである。また、本発明は、このような軸受ホルダの射出成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
VTRキャプスタンモータ等においては、その出力回転軸を軸受部材を介して回転自在に支持した軸受ホルダを備え、この軸受ホルダの外周面にモータロータが取付けられた構造のものが知られている。例えば、本願人の出願である実開平2−41646号公報には、このような軸受ホルダを備えた形式のVTRキャプスタンモータが開示されている。
【0003】
この公開公報に開示されている軸受ホルダでは、その一方の軸端部分に形成されている外方に広がっている鍔部に対して、そこに開けた貫通ねじ孔を利用して、ねじによってモータのステータコアが固定されている。また、この軸受ホルダの中心孔内には一対の軸受メタルを介してシャフトが回転自在に支持されている。
【0004】
この形式の軸受ホルダとしては射出成形法による成形品が多く使用されている。このような軸受ホルダの成形は、成形金型のキャビティにおける軸受ホルダの外周面を規定する部分に配置した複数のゲートから、当該キャビティ内に成形材料を射出することによって成形される。例えば、3点ピンゲートを採用して成形材料を射出している。
【0005】
また、軸受ホルダの軸孔を成形するために、成形金型内に、軸線方向に2分割可能な金型コアを配置している。脱型後に、軸受ホルダの両側の軸端からこれらの金型コアが引き抜かれる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように成形される軸受ホルダにおいては、上記の公開実用新案公報に開示されているように、両側の軸端部分において軸孔を規定している外周壁の壁厚が異なっているのが普通である。このように肉厚が異なっていると、射出した成形材料が硬化する過程で両側の軸端部分でひけ量が異なってしまい、成形精度が不十分になるおそれがある。この結果、成形後の軸受ホルダの軸孔の内径真円度や円筒度の精度が目標とする精度に満たないおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、従来に比べて精度良く成形できる構成を備えた軸受ホルダを提案することにある。また、本発明の課題は、従来に比べて精度良く軸受ホルダを成形することの可能な軸受ホルダの射出成形方法を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明は、出力回転軸の軸孔を備え、当該軸孔の内周面に保持した軸受部材を介して前記出力回転軸を回転自在に支持する射出成形品である軸受ホルダにおいて、
軸受ホルダの軸線方向における一端側に位置する出力側軸端と、他端側に位置する反出力側軸端とを有し、
前記反出力側軸端には環状の突出部分が形成されており、
この環状の突出部分には前記軸線方向の厚さが薄い薄肉部分と、当該薄肉部分に比べて前記軸線方向の厚さが厚い厚肉部分とが含まれており、
前記軸受部材には、前記軸孔の前記出力側軸端の側の軸端開口から圧入された第1の軸受部材と、前記反出力側軸端の側の軸端開口から圧入された第2の軸受部材とが含まれており、
前記反出力側軸端の側には、前記軸孔と同心状に環状の肉盗みが形成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の軸受ホルダでは、環状の突出部分が形成されているために他方の出力側軸端部分よりも肉厚が厚くなっている反出力側軸端部分に環状の肉盗みを形成してあるので、出力側軸端と反出力側軸端の軸孔周りの肉厚を実質的に等しくすることができ、従って、成形材料が硬化する過程で両側の軸端部分でのひけ量をほぼ等しくすることができる。この結果、得られる軸受ホルダの軸孔の円筒度、真円度の精度の低下を防止できる。
【0010】
また、肉厚の厚い側の軸端部分は、環状の肉盗みによって剛性が低くなっている。よって、軸受部材の圧入は困難ではなく、他方の薄肉の出力側軸端の側と同様に行なうことができる。
【0011】
ここで、反出力側軸端の側に形成されている環状の突出部分は、前述の公開実用新案公報に開示の軸受ホルダにおけるように、一般にモータのステータコアなどをねじ止めするための部分等として利用される。従って、本発明の軸受ホルダの典型的な例では、前記記環状の突出部分における前記薄肉部分には、前記軸線方向に平行に延びる貫通孔を形成し、前記厚肉部分には、前記軸線方向に平行に延びていると共に前記出力側軸端の側に開口している盲孔を形成した構成とされる。この場合、前記環状の肉盗みは、前記貫通孔および前記盲孔と、前記軸孔との間の位置に形成すればよい。
【0012】
また、前記環状の肉盗みの深さ寸法は、前記第2の軸受部材が圧入される軸線方向の深さに相当する寸法とすることが望ましい。
【0013】
次に、本発明は上記構成の軸受ホルダの射出成形方法であって、当該軸受ホルダに対応する成形型キャビティ内に、前記軸孔の内周面形状に対応するテーパ付き外周面を備えた成形型コアを配置し、前記軸受ホルダの軸端を規定する前記キャビティの部分から当該キャビティ内に向けて成形材料を軸線方向に射出することを特徴としている。
【0014】
本発明においては、成形型キャビティ内に対してその軸端側から成形材料を射出している。すなわち、センタゲート方式を採用している。このように成形材料を射出した場合には、従来におけるキャビティ外周側からピンゲート方式により成形材料の射出を行なう場合に比べて、得られる軸受ホルダの軸孔の真円度および円筒度の精度を改善できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1および図2には、本発明を適用したVTRキャプスタンモータの軸受ホルダの例を示してある。これらの図において、図1は軸受ホルダに出力回転軸が装着された状態の概略断面図であり、図2(A)乃至(D)は軸受ホルダのみを示す図である。
【0017】
軸受ホルダ1は、その中心に軸孔2を備え、全体として円筒形状をしている。この軸受ホルダ1において、一方の軸端3が出力側軸端であり、他方の側の軸端4が反出力側軸端である。この軸孔2には、両側の軸端開口から同一形状のリング状の軸受部材5、6が圧入されている。そして、これらの軸受部材5、6を回転自在の状態で出力回転軸7が貫通している。
【0018】
ここで、反出力側軸端4には環状の突出部分4Aが形成されており、従って、出力側軸端3における軸孔外周壁の厚さt13よりも格段に肉厚となっている。この環状の突出部分4Aは、軸線方向の厚さが薄い薄肉部分4Bが形成されていると共に、当該薄肉部分4Bに比べて軸線方向の厚さが厚い厚肉部分4Cが円周方向に向けて一定の角度間隔で3箇所形成されている。また、薄肉部分4Bにはここを軸線方向に貫通している貫通孔4Dが一定の角度間隔で3箇所に形成されており、各厚肉部分4Cには、出力側軸端3の側に開口している軸線方向に延びる盲孔4Eが形成されている。
【0019】
次に、軸孔2の内周面21は、出力側軸端3の側の軸孔内径D3に比べて反出力側軸端4の軸孔内径D4が僅かに小さくなるように、軸線方向に向けて僅かにテーパが付いた形状に成形されている。また、反出力側軸端4の側には、同心状に環状の肉盗み11が形成されている。この肉盗み11は、突出部分4Aにおいて、貫通孔4Dおよび盲孔4Eよりも内側の位置に形成されている。すなわち、これらの孔と軸孔2の間に位置している。この肉盗み11によって、反出力側軸端4の軸孔外周壁12の厚さt12は、出力側軸端3の軸孔外周壁13の厚さt13よりも薄くなっている。
【0020】
図3(A)には、本例の軸受ホルダ1の射出成形に使用する成形金型の縦断面を示してある。軸受ホルダ1を成形するためのキャビティ100は、分割金型である上型101および下型102を閉じることにより区画形成される。上型101および下型102はそれぞれダイ103、104に固定されている。これらのダイ103および104は不図示の型締め機構によって駆動されて、型締め、型開きの動作が行なわれる。
【0021】
本例では、上型101の側に軸受ホルダ1の反出力側軸端4に対応する型面が形成され、他方の下側102には、それ以外の軸受けホルダ1の部分の型面が形成されている。キャビティ100の内部には、その軸線方向に向けて、軸受ホルダ1の軸孔2を成形するための成形型コアとしてのセンタピン110がインサートされている。このセンタピン110の上型側の軸端面には、センタゲートであるフィルムゲート120が同軸状態に当接している。
【0022】
図3(B)に示すように、このフィルムゲート120は、射出口121が円形外周面に沿って形成されており、その幅は約0.1mmから約1.5mmである。この射出口121から、成形材料が、キャビティ100の内部に向けて当該キャビティの軸線方向に射出される。
【0023】
再び、図3(A)を参照して説明すると、フィルムゲート120の射出口121の外周側において、上型型面には、軸線方向に向けて突出した円環状の突起140が形成されている。この突起140は、軸受ホルダ1の反出力側軸端4の部分に環状の肉盗み11を形成するためのものである。
【0024】
センタピン110の外周面111と、突起140の内周面141の間隔は、軸受ホルダ1の反出力側軸端部分の軸孔外周壁12の肉厚t12に対応している。同様に、下型の側における軸受ホルダ1の出力側軸端3の外周壁13に対応するセンタピン外周面111と下型型面部分113の間隔は、当該外周壁13の肉厚t13に対応している。
【0025】
さらに、センタピン110は、軸孔内周面21に対応して、上型101の側から下型102の側に向けて外径が太くなるように、軸線方向に沿ってテーパを付けてある。すなわち、抜き勾配を付けてある。
【0026】
このように、センタピン110をインサートした状態で上型101および下型102を型締めして、フィルムゲート120の射出口121から成形材料をキャビティ100内に射出する。成形材料はキャビティ内を軸線方向に向けて流れて、その内部を充填する。センタゲート方式により成形材料を射出しているので、従来のようなピンゲート方式を採用する場合に比べて、成形された軸受ホルダ1の軸孔2の真円度および円筒度を改善できる。
【0027】
キャビティ内に射出した成形材料が十分に硬化した後に脱型作業を行なう。この作業においては、成形品から引き抜く必要のあるセンタピン110は、抜き勾配が付いている。したがって、図3(A)において矢印で示す方向にセンタピン110を引き抜けば、換言すると、センタピン110をその太い軸端側から引き抜けば、成形品からセンタピン110を簡単に引き抜くことができる。また、このように抜き勾配が付いているので、引抜き時に成形品の軸孔2の内周面21を傷付けてしまうこともない。
【0028】
次に、図4(A)に示すように、得られた成形品1Aにはゲート部分1Bが一体成形された状態にある。この成形品1Aは、例えば、図4(B)に示すように、ダイ151に乗せて、軸孔2に通したパンチ152によって切り取る。この結果、図2に示す形状の軸受ホルダ1を得ることができる。
【0029】
ここで、このようなゲートカット後に、その切断部分にバリが多少残る可能性がある。そこで、本例では、成形される軸受ホルダ1の反出力側軸端4の側にフィルムゲート120を設けてある。この理由は、軸受ホルダ1において、軸受性能に対する寄与率が、軸受ホルダの出力側軸端3よりも反出力側軸端4の側の方が小さいためである。
【0030】
また、本例では、図4(A)から分かるように、フィルムゲート120の射出口121が、軸受ホルダ1の反出力側軸端4の外壁部分12の内周縁に丁度面するように、設置してある。このようにすれば、ゲートカット時において、外壁部分12の内周縁の部分がゲートカット時に一緒に切り取られる。このために、軸孔2の内周面21にバリが残ることがない。これに対して、例えば、図4(C)に示すように、ゲート射出口121が軸孔2の内周面21に位置している場合には、ゲートカット後において、内周面21に内側に向けて突出したバリが残るおそれがある。このようなバリが残ると、軸受部材6(図1参照)の圧入部分の寸法精度を確保できなくなる。この場合には、更に、バリ取りのための別加工を行なう必要ができてしまう。
【0031】
なお、このようにして成形された軸受ホルダ1において、そこに形成される環状の肉盗み11の厚さは例えば0.5mm以上であり、その深さは軸受部材6(図1参照)が圧入される軸線方向の深さに相当する長さ、例えば3mm以上必要である。
【0032】
成形された軸受ホルダ1は、図1に示すように、その軸端両側から軸受部材5、6が圧入されて、出力回転軸7を回転自在に支持した状態に設置される。ここで、軸受ホルダ1では、その軸孔内周面21には軸線方向にテーパが付いている。したがって、軸孔2の反出力側軸端4の側の内径D4が、他方の出力側軸端3の側の内径D3よりも小さくなっている。
【0033】
したがって、軸孔2内に両側の軸端3、4から圧入するリング状の軸受部材5、6の圧入代は、内径の小さい軸端4の側が大きくなる。しかし、この軸端4の側に形成した環状の肉盗み11によってその部分の剛性が低くなっている。よって、軸受部材6の圧入は困難ではなく、他方の側と同様に行なうことができる。また、軸受部材5、6を圧入した後の軸孔内径は両側の軸端部分でほぼ同一に仕上がる。
【0034】
表1には、本発明によって成形した軸受ホルダ1と、従来の成形法によって成形した軸受ホルダの寸法精度の比較結果の例を示してある。この表に示すように、軸孔の同軸度、内径真円度は誤差が約半分に減少した。また、軸孔の円筒度も改善されたことが分かる。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の軸受ホルダでは、出力側軸端部分よりも肉厚が厚くなっている環状の突出部分が形成されている反出力側軸端部分に環状の肉盗みを形成してあるので、出力側軸端と反出力側軸端の軸孔周りの肉厚を実質的に等しくすることができ、従って、成形材料が硬化する過程で両側の軸端部分でのひけ量をほぼ等しくすることができる。この結果、得られる軸受ホルダの軸孔の円筒度、真円度の精度の低下を防止できる。
【0037】
また、肉厚が厚くなっている反出力側軸端の軸孔外周壁部分は、環状の肉盗みによって剛性が低くなっている。よって、軸受部材の圧入を他方の肉厚の薄い出力側軸端部分と同様に容易に行なうことができる。
【0038】
次に、本発明の軸受ホルダの射出成形方法では、成形型キャビティ内に対してその軸端側から成形材料を射出している。すなわち、センタゲート方式を採用している。このように成形材料を射出した場合には、従来におけるキャビティ外周側からピンゲート方式により成形材料の射出を行なう場合に比べて、得られる軸受ホルダの軸孔の真円度および円筒度の精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したVTRキャプスタンモータ等に使用する軸受ホルダの縦断面図である。
【図2】(A)ないし(D)は、それぞれ、図1の軸受ホルダを示す出力側軸端の端面図、側面図、反出力側軸端の端面図および縦断面図である。
【図3】(A)は図1の軸受ホルダの射出成形に用いる成形金型の概略縦断面図、(B)はそのフィルムゲートの部分を取り出して示す説明図である。
【図4】(A)は成形品に形成されているゲート部分を示す説明図、(B)はゲート部分の切断を示す説明図、(C)はゲート部分を軸孔内周面に形成したときに弊害を示すために説明図である。
【符号の説明】
1 軸受ホルダ
2 軸孔
21 軸孔内周面
3 出力側軸端
D3 出力側軸端の外壁部分の厚み
4 反出力側軸端
4A 環状の突出部分
4B 薄肉部分
4C 厚肉部分
4D 貫通孔
4E 盲孔
D4 反出力側軸端の外壁部分の厚み
5、6 軸受部材
7 出力回転軸
11 環状の肉盗み
12 反出力側軸端の外壁部分
t12 反出力側軸端の外壁部分の厚み
13 出力側軸端部分の外壁部分
t13 出力側軸端部分の外壁部分の厚み
100 成形金型
110 センタピン
120 フィルムゲート
Claims (4)
- 出力回転軸の軸孔を備え、当該軸孔の内周面に保持した軸受部材を介して前記出力回転軸を回転自在に支持する射出成形品である軸受ホルダであって、
軸受ホルダの軸線方向における一端側に位置する出力側軸端と、他端側に位置する反出力側軸端とを有し、
前記反出力側軸端には環状の突出部分が形成されており、
この環状の突出部分には前記軸線方向の厚さが薄い薄肉部分と、当該薄肉部分に比べて前記軸線方向の厚さが厚い厚肉部分とが含まれており、
前記軸受部材には、前記軸孔の前記出力側軸端の側の軸端開口から圧入された第1の軸受部材と、前記反出力側軸端の側の軸端開口から圧入された第2の軸受部材とが含まれており、
前記反出力側軸端の側には、前記軸孔と同心状に環状の肉盗みが形成されていることを特徴とする軸受ホルダ。 - 請求項1において、
前記環状の突出部分における前記薄肉部分には、前記軸線方向に平行に延びる貫通孔が形成され、前記厚肉部分には、前記軸線方向に平行に延びていると共に前記出力側軸端の側に開口している盲孔が形成されており、
前記環状の肉盗みは、前記貫通孔および前記盲孔と、前記軸孔との間の位置に形成されていることを特徴とする軸受けホルダ。 - 請求項1または2において、
前記環状の肉盗みの深さ寸法は、前記第2の軸受部材が圧入される軸線方向の深さに相当することを特徴とする軸受ホルダ。 - 請求項1に記載の軸受ホルダの射出成形方法であって、
当該軸受ホルダに対応する成形型キャビティ内に、前記軸孔の内周面形状に対応するテーパ付き外周面を備えた成形型コアを配置し、前記軸受ホルダの軸端を規定する前記キャビティの部分から当該キャビティ内に向けて成形材料を軸線方向に射出することを特徴とする軸受ホルダの射出成形方法。
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