JP3735401B2 - 放射線モニタ - Google Patents

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JP3735401B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子力関連施設において放射能汚染の有無を監視するために使用されるダスト放射線モニタ、表面汚染モニタ、体表面モニタ、ランドリモニタ等の放射線モニタに係り、特に自然放射能の影響を補正する機能を備えた放射線モニタに関する。
【0002】
【従来の技術】
ダスト放射線モニタは、空気中の塵埃をサンプリングし、塵埃から放出される放射線を放射線検出器で検出し、その放射線レベルと警報設定値とを比較判定することにより放射能汚染の有無を監視する装置である。
【0003】
図12はダスト放射線モニタの構成例を示している。
ダスト放射線モニタは、チャンバー1内に施設内の各所で採集したサンプリングガスを導入し、サンプリングガスに含まれている塵埃をチャンバー1内のガス通路に設置したフィルタ2にて捕集する。フィルタ2に対向配置したβ線用の放射線検出器3で塵埃から放出される放射線を検出する。放射線検出器3は、β線用のシンチレータ8とフォトマル9との組み合わせで構成されている。β線が入射することにより発光したシンチレータ8が放つ光を、フォトマル9で電気信号に変換して検出信号として出力する。その検出信号をプリアンプ4で増幅し、弁別回路5で不必要な信号を除去してから計数器6に入力する。この計数器6の計数値をデータ処理部7に入力し、計数値を放射線レベルに変換して警報設定値と比較判定する。
【0004】
また、体表面モニタは、被測定者の周囲に大面積の放射線検出器を配置し、被測定者の衣服から放出される放射線を大面積放射線検出器で検出し、その放射線レベルと警報設定値とを比較判定することにより放射能汚染の有無を監視する機器である。
【0005】
図13は体表面モニタの構成例を示している。
体表面モニタは、モニタ本体11内の測定空間を形成する内面(被測定者からみて、前面、背面、下面など)に大面積の放射線検出器12を配置している。放射線検出器12は、放射線検出器12の検出面全体を覆う大きな面積をカバーするために大面積のβ線用のシンチレータ8と、複数のフォトマル9,9′との組み合わせで構成されている。検出器毎にフォトマル9,9′から出力される検出信号をプリアンプ4,4′、弁別回路5,5′を経由して同時計数回路13に入力し、同時計数回路13の出力を計数器6で計数してデータ処理部7へ入力している。
【0006】
ところで、自然界には天然の放射性物質が存在している。天然に存在する核種(以下、「天然放射性核種」と呼ぶ)で代表的なものにラドンがある。ラドンは希ガスの状態となって自然界に存在するため、施設内のあらゆる場所に浮遊している可能性がある。この核種が崩壊して娘核種に変わり、さらに孫核種へ崩壊する過程でα線、β線が放出される。
【0007】
したがって、天然放射性核種が崩壊する際に放出するα線、β線が放射線モニタの測定値に影響を与える可能性がある。そのため、従来は警報が出された後に自然放射能の影響がどの程度のものであったか評価する必要があった。
【0008】
図14は上記したような各種放射線モニタにおける自然放射能の影響評価の流れを示すフローチャートである。
β線について測定して警報設定レベルを越える値が検出された場合は警報を出力する。放射線管理者は、警報が出されると自然放射能による影響を評価する。先ず、測定対象のサンプルを採集して核種分析を行う。その分析結果から自然放射能の大小を判定し、自然放射能が小さい場合には放射能汚染があると判定し、自然放射能が大きい場合には警報は自然放射能による影響であると判断し放射能汚染は無いものとする。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のダスト放射線モニタは、天然放射性核種が塵埃と共にフィルタに捕集されてβ線を放出するため、あたかも測定対象とする放射性核種(人工汚染核種)が存在するかのような計数値を示し、しかもこの値が大きく変動するため(通常値の10倍程度まで)測定誤差が増大する要因となっていた。また、警報が出された場合は、自然界に存在する核種の崩壊による自然放射能の影響を評価しなければ最終的な放射能汚染の有無を判断することができなかった。
【0010】
また、体表面モニタは、ラドンの娘核種がプラスに帯電し、被測定者の衣服がマイナスに帯電することから、ラドンの娘核種が被測定者の衣服に付着する可能性がある。衣服に付着したラドンの娘核種がβ線を放出するため、あたかも測定対象とする人工汚染核種が存在するかのような計数値を示し測定誤差の要因となる。したがって、測定誤差による誤判定を回避するためには自然放射能の影響を評価しなければならなかった。
【0011】
本発明は、以上のような実情に鑑みてなされたもので、測定値から自然界に存在するラドンの影響を補正することができ、自然放射能の影響を別途評価しなくても正確に放射能汚染の有無を判断できる放射線モニタを提供することを目的とする。
【0012】
【発明を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために以下のような手段を講じた。
本発明は、被検体から放出される放射線を検出して放射能汚染の有無を判定する放射線モニタにおいて、α線とβ線を検出する放射線検出器と、この放射線検出器の検出面の一部に設けられたα線を検知しない非検知エリアと、被検体がα線とβ線の双方を検出可能な検出面に対向するときの前記放射線検出器の検出信号と被検体が前記非検知エリアに対向するときの前記放射線検出器の検出信号との差および非検知エリアとそれ以外の検出面との面積比率に応じた係数とから被検体からのα線とβ線の測定値を求める演算手段と、この演算手段で求めた被検体からのα線の測定値と天然放射性核種が放出するα線とβ線の放出比率とから被検体の測定時に天然放射性核種が放出したβ線の値を求め、演算手段で求めたβ線の測定値を天然放射性核種が放出したβ線の値で補正して汚染判定に使用する補正処理手段とを備える。
【0019】
本発明の放射線モニタによれば、被検体の汚染測定を実施する前に、放射線検出器の非検知エリアを除く検出面で天然放射性核種が放出するα線及びβ線の双方を検出して演算手段に入力すると共に、非検知エリアで天然放射性核種が放出するβ線を検出して演算手段に入力することにより、その2つの測定値と検知エリアと非検知エリアの面積比率に応じた係数とから天然放射性核種が放出するα線とβ線の放出比率を求めることができる。
【0020】
また、被検体に対する放射能測定では、放射線検出器の非検知エリアを除く検出面で被検体から放出されるα線とβ線が測定され、放射線検出器の非検知エリアで被検体から放出されるβ線のみが測定され、それぞれの測定値が演算手段に入力されて被検体から放出されるα線が計算される。そして、補正処理手段にて放出比率とα線の測定値とからβ線の測定値に含まれている天然放射性核種によるβ線の値が求められ、β線の測定値から天然放射性核種によるβ線の値が差し引かれて真のβ線の測定値が得られる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の放射線モニタをダスト放射線モニタに適用した第1の実施形態を示している。なお、前述した図12に示すダスト放射線モニタと同一機能の部分には同一符号を付している。
【0028】
このダスト放射線モニタ10は、施設内の各所でサンプリングしたサンプリングガスが導入されるチャンバー内のガス通路を横切るようにして自動巻取可能なフィルタ2が設置され、ガス通路から巻き取られたフィルタ2のダスト付着面に対向するようにしてβ線及びα線の双方を検出可能な放射線検出器20が設置されている。
【0029】
放射線検出器20は、α線の入射に伴って発光するα線用シンチレータ21と、β線の入射に伴って発光するβ線用シンチレータ8と、各シンチレータ8,21の発光により生じた光を電気信号に変換するフォトマル9とから構成されている。
【0030】
放射線検出器20の出力端子にプリアンプ4を接続し、プリアンプ4の出力端子に互いに異なる弁別レベルが設定された弁別回路5a,5bを並列接続している。一方の弁別回路5aは、α線の検出信号を除去すること無くβ線の検出信号を除去可能な弁別レベルaが設定されている。もう一方の弁別回路5bは、β線及びα線の検出信号を検出可能で、かつβ線の検出信号よりも低レベルの不必要な信号を除去可能な弁別レベルbが設定されている。したがって、弁別回路5aからはα線の検出信号のみが抽出され、弁別回路5bからはα線及びβ線の検出信号が抽出される。
【0031】
弁別回路5a,5bの出力段には、計数器6a,6bがそれぞれ接続されている。これら計数器5a,5bの出力をデータ処理部22に入力するようにしている。データ処理部22は、α線とβ線の放出割合を使用してβ線の測定値を補正する機能を備えている。
【0032】
以上のように構成されたダスト放射線モニタによる測定動作について図3を参照して説明する。
実際の汚染測定によるモニタリングに先立ち、自然界に存在するラドン等の天然放射性核種が放出するα線及びβ線の放出割合を測定する。そのため、ダスト放射線モニタ10にサンプリングガスを導入する以前に、放射線検出器20及び弁別回路5a,5b等からなる測定系を動作させる。この結果、弁別回路5aでは図2(a)に示すように弁別レベルaによりα線による検出信号のみが通過して計数器6aで計数され、弁別回路5bでは図2(a)に示すように弁別レベルbによりα線及びβ線による信号が通過して計数器6bで計数される。データ処理部22には、図2(a)に示すように計数器6aからα線の計数値(イ)が入力し、計数器6bからα線及びβ線の計数値(イ+ロ)が入力する。
【0033】
ここで、ラドン等のα線及びβ線を放出している天然放射性核種は、放射平衡に達しているのでα線とβ線との放出割合が一定である。図2(c)は天然放射性核種から放出されるα線とβ線の放射線量が増大した場合を示している。同図に示すように、放射線量が増大した場合であっても、ロ/イ=ロ′′/イ′′の関係が維持されα線とβ線との放出割合は一定に保たれている。一方、原子力施設で生成される人工汚染核種は、α線を放出しないβ線放出核種である。
【0034】
したがって、フィルタ2にて捕集した人工汚染核種から放出されたα線とβ線を分離測定し、α線の測定値から自然放射能のβ線測定値を算出し、β線の測定値から自然放射能のβ線測定値を差し引くことにより人工汚染核種によるβ線の測定値を算出することができる。
【0035】
データ処理部22では、天然放射性核種によるα線とβ線との放出割合を求めるために、カウンタ6bの出力(α線の測定値(イ))からカウンタ6aの出力(α線及びβ線の測定値(ロ))を引くことにより、β線の測定値(=イ−ロ)を求める。そして、α線の測定値(イ)とβ線の測定値(イ−ロ)との比=(イ)/(イ−ロ)を求める。このようにして求めたα線とβ線との比=(イ)/(イ−ロ)、又はα線とβ線とを掛け合わせた値=(イ)×(イ−ロ)を記憶しておく。
【0036】
次に、ダスト放射線モニタ10にサンプリングガスを導入し、ガス通路に設置したフィルタ2で一定期間ダストを捕集して放射能汚染を測定する。フィルタ2に捕集されたダストから放出される放射線を放射線検出器20で測定する。
【0037】
このとき、弁別回路5aでは天然放射性核種によるα線の測定値(イ′)が取り出され、弁別回路5bでは天然放射性核種によるα線の測定値(イ′)とβ線の測定値(ロ′)と人工汚染核種によるβ線の測定値(ハ)とが取り出される。したがって、データ処理部22ではカウンタ6bの出力(イ′+ロ′+ハ)からカウンタ6aの出力(イ′)を引いて天然放射性核種によるβ線の測定値と人工汚染核種によるβ線の測定値とからなる値(ロ′+ハ)を求める。
【0038】
また、α線の測定値(イ′)に上記測定にて取得したα線/β線=(イ)/(イ−ロ)を掛け合わせて、天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を算出する。そして、天然放射性核種及び人工汚染核種によるβ線測定値(ロ′+ハ)から天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を差し引いて、人工汚染核種によるβ線測定値(ハ)を求める。この結果、天然放射性核種によるβ線の影響が排除された人工汚染核種によるβ線測定値(ハ)のみによる測定値(ロ′)が取得されたことになる。
【0039】
このように本実施形態によれば、天然放射性核種によるα線とβ線との放出割合を求め、捕集したダストから放出される放射線をα線とβ線にそれぞれ合わせて弁別レベルを設定した2つの測定系で測定し、α線とβ線との放出割合を使ってα線の測定値(イ′)から天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を算出し、天然放射性核種及び人工汚染核種によるβ線測定値(ロ′+ハ)から天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を差し引いて、人工汚染核種によるβ線測定値(ハ)を求めるようにしたので、天然放射性核種によるβ線の影響を排除し測定誤差の少ないβ線測定値を取得することができ、信頼性の高い汚染判定を実現できる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の放射線モニタをダスト放射線モニタに適用した第2の実施形態について説明する。
【0041】
図4は、第2の実施形態に係るダスト放射線モニタの部分的な構成を示している。尚、前述した図1又は図12に示すダスト放射線モニタと同一機能の部分には同一符号を付している。
【0042】
このダスト放射線モニタは、ダストを捕集するフィルタ2とこれに対向配置される放射線検出器20との間にα線を遮蔽可能なα線遮蔽膜31を挿脱可能に構成している。α線遮蔽膜31の挿脱操作は遮蔽膜移動装置32によって行う。
【0043】
放射線検出器20の出力段には、図12に示すダスト放射線モニタと同様に、プリアンプ4、弁別回路5、計数器6からなる1つの測定系が接続され、計数器6の出力をデータ処理部22′が取り込むように構成している。弁別回路5は、第1の実施形態における弁別レベルbと同一の弁別レベル、すなわちα線及びβ線の測定信号の双方を通過させる弁別レベルを設定する。データ処理部22′は、後述する処理手順に従うことにより計数器6の出力から天然放射性核種によるβ線の影響を排除したβ線測定値を取得する。
【0044】
以上のように構成されたダスト放射線モニタによる測定動作について図6を参照して説明する。
実際の汚染測定によるモニタリングに先立ち、天然放射性核種が放出するα線及びβ線の放出割合を測定する。そのため、ダスト放射線モニタにサンプリングガスを導入する以前に、図4(a)に示すように遮蔽膜移動装置32を操作してα線遮蔽膜31を放射線検出器20に入射するα線を遮蔽しない位置まで退避させた状態で測定系を動作させる。この結果、弁別回路5では図5(a)(遮蔽膜無し)に示すように弁別レベルbによりα線及びβ線の検出信号が通過して計数器6で計数される。次に、図4(b)に示すように遮蔽膜移動装置32を操作してα線遮蔽膜31を放射線検出器20に入射するα線を遮蔽し得る位置まで挿入させた状態で測定する。この結果、弁別回路5では図5(a)(遮蔽膜有り)に示すようにα線による測定値(イ)が除去されβ線による測定値(ロ)のみが通過して計数器6で計数される。
【0045】
データ処理部22′では、図5(a)に示すような2種類の測定値(ロ+イ)及び(ロ)を取り込み、β線及びα線の測定値(ロ+イ)からβ線の測定値(ロ)を差し引いてα線の測定値(イ)を求める。この2つの測定値からβ線の測定値(ロ)とα線の測定値(イ)との比=(ロ)/(イ)を求めて記憶する。この計算値が天然放射性核種によるβ線とα線との放出割合となる。
【0046】
次に、ダスト放射線モニタにサンプリングガスを導入し、ガス通路に設置したフィルタ2で一定期間ダストを捕集して放射能汚染を測定する。フィルタ2に捕集されたダストから放出される放射線を、α線遮蔽膜31が放射線検出器20の検出面を遮蔽しない状態にて、放射線検出器20で測定する。この結果、図5(b)(α線遮蔽膜無し)に示すように、計数器6では天然放射性核種によるα線の測定値(イ′)と、天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)と、人工汚染核種によるβ線の測定値(ハ)とからなる検出信号が計数される。データ処理部22′ではこの計数値(イ′+ロ′+ハ)を記憶する。
【0047】
次に、遮蔽膜移動装置32を操作してα線遮蔽膜31を放射線検出器20とフィルタ2との間に挿入した図4(b)に示すような状態で測定する。この結果、図5(b)(α線遮蔽膜有り)に示すように、計数器6では天然放射性核種によるα線の測定値(イ′)が含まれない、天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)と、人工汚染核種によるβ線の測定値(ハ)とからなる検出信号が計数される。データ処理部22′ではこの計数値(ロ′+ハ)を記憶する。
【0048】
上記2つの状態の測定が終了したら、計数値(イ′+ロ′+ハ)から計数値(ロ′+ハ)を差し引いて、天然放射性核種によるα線の測定値(イ′)を求める。この求めた測定値(イ′)に、既に求めているβ線とα線との比=(ロ)/(イ)を掛け合わせて、天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を求める。そして、計数値(ロ′+ハ)から天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を減算することにより、人工汚染核種によるβ線の測定値(ハ)を求める。
【0049】
このように本実施形態によれば、放射線検出器20とフィルタ2との間に挿脱可能にα線遮蔽膜31を備え、天然放射性核種による放射線の測定、及び捕集ダストによる放射線の測定の双方についてα線を遮蔽した状態と非遮蔽状態の2つの状態で測定を実施するようにしたので、データ処理部22′での補正演算処理により計数値(ロ′+ハ)から天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)を取り除くことができ、信頼性の高い汚染判定を実現できる。しかも、本実施形態では測定系が1系統となるため測定系統の簡素化を図ることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、本発明の放射線モニタをダスト放射線モニタに適用した第3の実施形態について説明する。
【0051】
図7は、第3の実施形態に係るダスト放射線モニタの部分的な構成を示している。尚、前述した第2の実施形態に係るモニタと同一機能の部分には同一符号を使用して説明する。
【0052】
このダスト放射線モニタは、α線及びβ線の双方を検出可能な放射線検出器20の検出面の一部にフィルタ34を取り付けてα線を検知しないエリアを形成している。図7(a)に示すように、フィルタ2はガス通路上に配置された領域に集塵ダストが付着する。フィルタ2が所定方向へ所定量移動したところで、放射線検出器20の検出面においてα線を検知しないエリア以外の領域と、フィルタ2における集塵ダストが付着していない領域とが一致するように、α線非検知エリアを形成するフィルタ34を放射線検出器20の検出面におけるフィルタ2移動方向の端部側に設けている。
【0053】
放射線検出器20の出力段には、図12に示すダスト放射線モニタと同様に、プリアンプ4、弁別回路5、計数器6からなる1つの測定系が接続され、計数器6の出力をデータ処理部22′′が取り込むように構成している。弁別回路5は、第1の実施形態における弁別レベルbと同一の弁別レベル、すなわちα線及びβ線の測定信号の双方を通過させる弁別レベルを設定する。
【0054】
データ処理部22′′は、後述する処理手順に従うことにより計数器6の出力から天然放射性核種によるβ線の影響を排除したβ線測定値を取得する。
以上のように構成されたダスト放射線モニタによる測定動作について図9を参照して説明する。
【0055】
実際の汚染測定によるモニタリングに先立ち、天然放射性核種が放出するα線及びβ線の放出割合を測定する。そのため、ダスト放射線モニタにサンプリングガスを導入する前に、フィルタ2にダストを集塵しない状態で天然放射性核種によるα線及びβ線をフィルタ34以外の検出領域(L1)で検出する。この計数値は図8(a)に示すような状態で検出され、α線及びβ線による測定値(イ+ロ)がデータ処理部22′に保存される。
【0056】
次に、フィルタ2を矢印方向へ所定距離移動した後、フィルタ34が取り付けられた検出領域(L2)で天然放射性核種によるβ線を検出する。この計数値は図8(b)に示すような状態で検出され、β線による測定値(k・ロ)がデータ処理部22′に保存される。係数kは、検出領域(L1)と検出領域(L2)の面積の差による検出効率の差を考慮した係数である。
【0057】
データ処理部22′では、α線及びβ線による測定値(イ+ロ)からβ線による測定値(k・ロ)を係数kで除算した値((k・ロ)/k)を減算してα線による測定値(イ)を求める。これにより天然放射性核種から放出されたβ線及びα線による計数値がそれぞれ取得されたことになる。そしてβ線とα線の比=(ロ/イ)を求めて保存する。
【0058】
次に、ダスト放射線モニタにサンプリングガスを導入し、ガス通路に設置したフィルタ2で一定期間ダストを捕集して放射能汚染を測定する。フィルタ2に捕集されたダストから放出される放射線を、放射線検出器20の検出領域(L1)で検出する。この結果、図8(a)に示すように計数器6では天然放射性核種によるα線の測定値(イ′)と、天然放射性核種によるβ線の測定値(ロ′)と、人工汚染核種によるβ線の測定値(ハ)とからなる検出信号が計数される。データ処理部22′ではこの計数値(イ′+ロ′+ハ)を記憶する。
【0059】
次に、フィルタ2を移動して放射線検出器20の検出領域(L1)に対向していた領域を放射線検出器20の検出領域(L2)に対向する位置まできたところで停止する。この状態で同じ領域を放射線検出器20の検出領域(L2)で測定する。検出領域(L2)はα線を遮蔽するフィルタ34が取り付けられているので、天然放射性核種によるβ線の値(k・ロ′)と人工汚染核種によるβ線の値(k・ハ)とからなる計数値(=k(ロ′+ハ))が得られる。
【0060】
データ処理部22′では、計数値(イ′+ロ′+ハ)からk(ロ′+ハ)/kを減算して天然放射性核種によるα線の計数値(イ′)を算出する。α線の計数値(イ′)に上記測定で取得した放出割合(ロ/イ)を掛けて天然放射性核種によるβ線の計数値(ロ′)を算出する。そして計数値(ロ′+ハ)から計数値(ロ′)を減算して、人工汚染核種によるβ線の計数値(ハ)を取得する。
【0061】
このように本実施形態によれば、放射線検出器20の検出面の一部にα線を遮蔽するフィルタ34を設けてα線を検知しないエリアを形成し、α線及びβ線の双方を検出可能な検出領域(L1)とβ線のみを検出可能な検出領域(L2)の両方で放射線測定を行い、天然放射性核種によるα線とβ線の放出割合を求め、放出割合を利用して天然放射性核種によるβ線の値を求めるようにしたので、データ処理部22′′での補正演算処理により天然放射性核種によるβ線の影響を取り除くことができ、信頼性の高い汚染判定を実現できる。
【0062】
なお、図10に示すようにα線に反応するα線用シンチレータ21′をフィルタ34に相当する領域に設けるようにすれば、図7に示す放射線検出器20に代えて図10に示す放射線検出器20′を利用することができる。
【0063】
(第4の実施形態)
次に、本発明の放射線モニタを体表面モニタに適用した実施形態について説明する。
【0064】
図11は第4の実施形態に係る体表面モニタの構成を示している。なお、前述した図13に示す体表面モニタと同一機能の部分には同一符号を付している。
この体表面モニタ40は、モニタ本体内の測定空間を形成する内面(被測定者からみて、前面、背面、下面など)に複数のβ線を検出可能な大面積放射線検出器12と、α線及びβ線の双方を検出可能な大面積放射線検出器41とを配置している。放射線検出器41は、図11(b)に示すようにβ線用のシンチレータ8と、α線用のシンチレータ42と、複数のフォトマル9,9′との組合わせで構成されている。検出器毎にフォトマル9,9′から出力される検出信号を増幅するプリアンプ4,4′の出力段に、それぞれ2つの弁別回路5a,5bと弁別回路5a′,5b′が接続されている。弁別回路5a、5a′には、図2に示すような弁別レベルaを設定し、弁別回路5b、5b′には、図2に示すような弁別レベルbを設定する。弁別レベルaを設定した弁別回路5a、5a′の出力は同時計数回路13aを経由して計数器6aに入力される。また、弁別レベルbを設定した弁別回路5b、5b′の出力は同時計数回路13bを経由して計数器6bに入力される。計数器6a,6bの出力はデータ処理部43に入力する。
【0065】
なお、β線用の大面積放射線検出器12の出力段には、図13に示す体表面モニタと同様に、プリアンプ4,4′、弁別回路5,5′、同時計数回路13、計数器6からなる測定系が接続されている。
【0066】
以上のように構成された体表面モニタでは、α線及びβ線を検出可能な大面積放射線検出器41のβ線用シンチレータ8でβ線が検出され、α線用シンチレータ42でα線が検出される。複数のフォトマル9,9′でα線及びβ線による発光を検出して電気信号に変換し、弁別回路5a,5a′でα線の検出信号を抽出すると共に、弁別回路5b,5b′でα線及びβ線の検出信号を抽出する。そして弁別回路5a,5a′で取り出されたα線の検出信号が同時計数回路13aを経由して計数器6aで計数される。また、弁別回路5b,5b′で取り出されたα線及びβ線の検出信号が同時計数回路13bを経由して計数器6bで計数される。
【0067】
データ処理部43では、実際に体表面汚染測定を行う前に、被測定者が測定室内に入らない状態で、前述した第1の実施形態と同様に計数器6a,6bの出力から天然放射性核種によるα線とβ線の放出割合を求める。
【0068】
次に、測定室内に被測定者が入った状態で計数器6a,6bの出力と上記求めたα線とβ線の放出割合とから第1の実施形態と同様にして天然放射性核種によるβ線の増加分を求める。そして、計数器6bによる計数値から人工汚染核種によるβ線の増加分を減算し、さらに計数器6aによる計数値を減算して人工汚染核種によるβ線の計数値を算出する。また、他のβ線用の大面積放射線検出器12の出力に対しても上記計算した天然放射性核種によるβ線の増加分を減算して人工汚染核種によるβ線の計数値を算出する。
【0069】
このように本実施形態によれば、体表面モニタにおいても前述した第1の実施形態と同様に天然放射性核種によるβ線の影響を排除でき、信頼性の高い汚染モニタリングが可能である。
【0070】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第2の実施形態,第3の実施形態と同様の補正演算処理機能を体表面モニタ、ランドリモニタ等に持たせることができる。又は、被測定物の表面汚染を大面積の放射線検出器で測定する表面汚染モニタに第1の実施形態〜第3の実施形態と同様の補正演算処理機能を持たせるようにしても良い。
【0071】
【発明の効果】
以上詳記したように本発明によれば、測定値から自然界に存在するラドンの影響を補正することができ、自然放射能の影響を別途評価しなくても正確に放射能汚染の有無を判断できる放射線モニタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るダスト放射線モニタ及び放射線検出器の構成図である。
【図2】第1の実施形態に係るダスト放射線モニタにおける各動作状態でのα線及びβ線の計数値と弁別レベルとを示す図である。
【図3】第1の実施形態に係るダスト放射線モニタの動作内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るダスト放射線モニタの部分的な構成を示す図である。
【図5】
Figure 0003735401
【図6】第2の実施形態に係るダスト放射線モニタの動作内容を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るダスト放射線モニタの部分的な構成を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係るダスト放射線モニタにおける各動作状態でのα線及びβ線の計数値と弁別レベルとを示す図である。
【図9】第3の実施形態に係るダスト放射線モニタの動作内容を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施形態に係るダスト放射線モニタの放射線検出器部分の変形例を示す図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る体表面モニタの構成図である。
【図12】従来のダスト放射線モニタ及び放射線検出器の構成図である。
【図13】従来の体表面モニタの構成図である。
【図14】放射線モニタの判定動作及び汚染評価のためフローチャートである。
【符号の説明】
2…フィルタム、4…プリアンプ、5a,5b…弁別回路、6a,6b…計数器、8…β線用シンチレータ、9…フォトマル、10…ダスト放射線モニタ、20…放射線検出器、21…α線用シンチレータ、22,22′,43…データ処理部。

Claims (1)

  1. 被検体から放出される放射線を検出して放射能汚染の有無を判定する放射線モニタにおいて、
    α線とβ線を検出する放射線検出器と、この放射線検出器の検出面の一部に設けられたα線を検知しない非検知エリアと、被検体がα線とβ線の双方を検出可能な検出面に対向するときの前記放射線検出器の検出信号と被検体が前記非検知エリアに対向するときの前記放射線検出器の検出信号との差および非検知エリアとそれ以外の検出面との面積比率に応じた係数とから被検体からのα線とβ線の測定値を求める演算手段と、この演算手段で求めた被検体からのα線の測定値と天然放射性核種が放出するα線とβ線の放出比率とから被検体の測定時に天然放射性核種が放出したβ線の値を求め、演算手段で求めたβ線の測定値を天然放射性核種が放出したβ線の値で補正して汚染判定に使用する補正処理手段とを具備したことを特徴とする放射線モニタ。
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