JP7378377B2 - 放射線分析装置およびダストモニタ装置 - Google Patents

放射線分析装置およびダストモニタ装置 Download PDF

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Description

本願は、放射線分析装置およびダストモニタ装置に関するものである。
福島第一原子力発電所の事故により広大な領域に放射性物質が降り注いだ。降り注いだ代表的な放射性核種としてはセシウム137、セシウム134が挙げられるが、放射性ストロンチウムも一定量が放出され降り注いでおり、その中でもストロンチウム90が被ばくの評価において特に重要な放射性核種となるが、大気中の放射性物質からストロンチウムを特定して測定することは実質上困難である。即ち、ストロンチウム90はβ線のみを放出する核種であり核種ごとに固有のエネルギ値を有さないため、他のβ線放出核種から区別することが困難である。そのため、一般的にストロンチウム90は、β線を放出する複数の放射性核種が混在した全β核種として観測されることが多い。このため、ストロンチウム90は核種が特定できない由来不明なβ線放出核種として扱われることになり、放射性物質を管理する管理基準が厳しくなる。また、大気中のストロンチウムは呼吸による内部被ばくが想定され生物学的半減期が長いことを考えるとさらに管理基準は厳しくなる。このため、迅速にストロンチウムを特定して放射能を評価する必要がある。
既存のストロンチウムを評価する技術として、例えば以下に示すような、放射線分析装置としての放射性物質の測定装置が開示されている。
即ち、既存の放射性物質の測定装置は、β線計数率、γ線計数率、β線およびγ線の同時計数率から、全β線放出率を絶対測定する。測定装置は、γ線スペクトル情報からサムピーク法によりセシウム134の放射能を絶対測定し、求めたセシウム134の放射能とγ線検出器の感度曲線からセシウム137のγ線に対する感度を推定し、セシウム137の光電ピーク計数率から放射能を測定する。測定装置は、既に求めてあるセシウム134の放射能とセシウム137の放射能に対応するβ線検出率を求め、既に求めてある全β線放出率からセシウム134のβ線放出率とセシウム137のβ線放出率を引き算し、ストロンチウムのβ線放出率を求め放射能を測定する(例えば、特許文献1参照)。
特開2013-210317号公報
上記のような放射線分析装置としての既存の放射性物質の測定装置は、セシウム137はβ線とγ線の放出が同期しなく、セシウム134のβ線とγ線の放出が同期するという差異を利用して、β線検出器とγ線検出器の各出力に加えて両検出器の同時計測出力を測定している。そして、セシウム137とセシウム134を区別しながらγ線に対する感度であるγ線計数率を求め、それぞれの放射能を推定する。セシウム137とセシウム134はβ線も一定の割合で放出されることが予めわかっていることから、その割合からセシウム137およびセシウム134が放出するそれぞれのβ線放射能が定まるため、これを全β線放射能から引き算し、その結果をストロンチウム90の放射能とする。
しかしながらこのような既存の放射性物質の測定装置は、ストロンチウム90の特定はできるものの、γ線放出核種がセシウム137、セシウム134に予め想定されている特殊な測定環境である必要があった。そのため、セシウム137、セシウム134以外のγ線放出核種が測定環境に存在する場合に、精度良くストロンチム90の評価を行えないという課題があった。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、精度良くストロンチウムを評価できる放射線分析装置およびダストモニタ装置を提供することを目的とする。
本願に開示される放射線分析装置は、
放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
前記第1演算において、
設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
前記イットリウムからのβ線の、少なくとも前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状を示すスペクトルデータが予め記録され、
記録された前記スペクトルデータと、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布と、を照合する照合判定を行い、
前記照合判定における判定が不一致である場合は、前記第1値未満の前記第1エネルギ分布のエネルギ帯域における放射線の計数から、設定される減算値を減算する除去演算を行う、
ものである。
また、本願に開示される放射線分析装置は、
放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
前記第1演算において、
設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
前記イットリウムからのβ線の、少なくとも前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状を示すスペクトルデータが、前記イットリウムの放射線強度、あるいは前記検出部の設置条件の少なくとも一方に応じて、予め複数記録され、
記録された複数の前記スペクトルデータの形状と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、を照合する照合判定を行い
前記照合判定における判定が不一致である場合は、前記第1値未満の前記第1エネルギ分布のエネルギ帯域における放射線の計数から、設定される減算値を減算する除去演算を行う、
ものである。
また、本願に開示される放射線分析装置は、
放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
前記第1演算において、
設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
前記イットリウムからの前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、少なくとも前記イットリウムからのβ線のエネルギ値ごとの計数を、前記第1エネルギ分布のエネルギ値ごとの計数から減算し、
該減算された前記第1エネルギ分布に対して、前記検出部の応答関数を用いた信号復元演算を行うことにより前記放射性物質から放出される前記放射線であるγ線の、エネルギ値ごとの分布を示す第2エネルギ分布を導出して、前記放射性物質の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質の放射線強度を演算する、
ものである。
また、本願に開示される放射線分析装置は、
放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
前記第1演算において、
設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
前記検出部は、
入射される前記放射線を検出するセンサ部と、前記放射線であるβ線が透過する厚みに調整された壁部を有して前記センサ部を収容するケース部と、を備え、
前記検出部の前記センサ部は、一台構成である、
ものである。
また、本願に開示されるダストモニタ装置は、
上記のように構成された放射線分析装置と、
集塵濾紙に大気中の前記放射性物質を集塵する集塵機構部と、を備え、
前記放射線分析装置の前記検出部は、集塵された前記集塵濾紙の前記放射性物質から放出される放射線を検出する、
ものである。
本願に開示される放射線分析装置およびダストモニタ装置によれば、精度良くストロンチウムを評価できる放射線分析装置およびダストモニタ装置が得られる。
実施の形態1による放射線分析装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態1による放射線分析装置に適用される検出器の構造を示す断面図である。 実施の形態1による放射線分析装置の多重波高分析器の出力である波高スペクトルの例を示す図である。 実施の形態1による放射線分析装置のデータベースに予め記録されたスペクトルデータを示す図である。 実施の形態2による放射線分析装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態3による放射線分析装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態3による放射線分析装置の多重波高分析器の出力である波高スペクトルの例を示す図である。 実施の形態3による放射線分析装置の多重波高分析器の出力である波高スペクトルの例を示す図である。 実施の形態3による放射線分析装置の波高スペクトルに対して応答関数を用いた逆問題演算を適用することで変換されたエネルギースペクトルの例を示す図である。 実施の形態4による放射線分析装置の概略構成を示すブロック図である。 実施の形態4による放射線分析装置の多重波高分析器の出力である波高スペクトルの例を示す図である。 実施の形態5による放射線分析装置を備えたダストモニタ装置の概略構成を示す図である。 実施の形態1から実施の形態5による放射線分析装置の演算部のハードウエアの概略構成の一例を示す図である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による放射線分析装置100の概略構成を示すブロック図である。
図2は、図1に示した放射線分析装置100に適用される検出器1の構造を示す断面図である。
放射線分析装置100は、放射性物質からの放射線、特に放射性物質としてのストロンチウム90からの放射線をモニタリングして評価する装置である。
図1に示すように、放射線分析装置100は、検出部としての検出器1と、アナログ回路2と、多重波高分析器(Multi Channel Analyzer:MCA)3と、演算部50と、表示器4とを備える。
検出器1は、測定対象である放射性物質から放出される放射線が入射されると、入射放射線のエネルギ値に対応する波高を有する、検出信号としての電気パルス信号Pを出力する。
アナログ回路2は、検出器1が出力した電気パルス信号Pの信号レベルを増幅すると共に、電気パルス信号Pを後段の回路に適した形にパルス波形整形する。
多重波高分析器3は、アナログ回路2からの電気パルス信号Pを、その波高に基づいた値のデジタル値にAD(Analog to Digital)変換する。そして多重波高分析器3は、各電気パルス信号Pを、そのデジタル値の大きさに相当するエネルギ範囲を有する各チャンネル(エネルギ弁別段)にそれぞれ弁別して、各チャンネルの電気パルス信号Pの数を計数する。こうして、多重波高分析器3は、各電気パルス信号Pのエネルギ値(波高値)ごとの計数を示す第1エネルギ分布としての波高スペクトルMを生成して出力する。
演算部50は、スペクトル比較器51と、データベース59とを備える。
スペクトル比較器51は、その制御の詳細は後述するが、多重波高分析器3が出力した波高スペクトルMと、データベース59内に予め記録されたスペクトルデータDとに基づいて、イットリウム90の放射能を特定する。イットリウム90の放射能を特定できれば、イットリウム90はストロンチウム90の100%娘核種であり、ストロンチウム90と放射平衡にあるため、ストロンチウム90の放射能も特定できることになる。
こうしてスペクトル比較器51は、波高スペクトルMのうち、イットリウム90に相当する量を算出し、この算出結果からストロンチウム90に相当する量を算出して、その放射線強度の評価を行う。
表示器4は、スペクトル比較器51が算出した算出結果を表示する。
以下、検出器1の構成について説明する。
一般に放射線分析装置は、放射線核種がそれぞれ固有のエネルギ値を有するγ線に対して評価を行うものであり、放射線を検出する検出器にはタリウム活性化よう化ナトリウムシンチレータ(NaI)という放射線センサがよく選定される。しかしながらストロンチウム90およびイットリウム90は、β線のみを放出する放射性核種であり、β線は飛程が短く、NaI放射線センサのように強い潮解性を示す検出器では、湿分からの保護のために設けられている結晶ケースによって、β線が結晶内に到達できなくなる。このためストロンチウム90およびイットリウム90の核種同定は困難である。そこで、本実施の形態では、ストロンチウム90およびイットリウム90から放出されるβ線を測定できる構成を有する検出器1を導入する。
図2に示すように検出器1は、放射線センサ1Sと、光電子倍増管1Aと、ケース部としての検出器ケース1Cとを備える。
放射線センサ1Sは、放射線の入射によりその入射エネルギを吸収して光を発生させる。
光電子倍増管1Aは、発生した光を電気信号に変換して、放射線が放射線センサ1Sに付与したエネルギ値に対応する波高を有する電気パルス信号Pを生成して出力する。
検出器ケース1Cは、壁部としての側壁1C1と、底壁1C2とを有して、放射線センサ1Sおよび光電子倍増管1Aを収容する。
ここで、放射線センサに対してNaI放射線センサのように潮解性のあるセンサを選定すると放射線センサの周囲にも結晶ケースが必要となり、検出器ケースと二重構造になる。またNaI放射線センサの結晶ケースの厚みおよび材質は、JIS規格(JISZ4321:放射線測定用タリウム活性化よう化ナトリウムシンチレータ)により決められており、ストロンチウム90およびイットリウム90の検出のために修正することはできない。このため放射線センサ1Sには、結晶ケースの必要のない結晶を選定する。
結晶ケースが不要な放射線センサ1Sの例としては、タリウム活性化よう化セシウムシンチレータ(CsI(Tl))、ガドリニウムアルミニウムガリウムガーネット(GAGG)等多数存在する。
さらに、検出器ケースの材料選定を考慮した上で可能な限り検出器ケースの厚みを薄くすることで、ストロンチウム90およびイットリウム90が放出するβ線が検出器ケースを透過できるように構成できる。本実施の形態の検出器ケース1Cは、ストロンチウム90およびイットリウム90が放出するβ線が透過可能なように、側壁1C1および底壁1C2の厚みXが調整されている。このように、放射線センサ1Sに用いるセンサの種類の選定と、検出器ケース1Cの壁部の厚みXの調整とを行うことで、検出器1は、ストロンチウム90およびイットリウム90が放出するβ線を検出できる。
なお、検出器ケース1Cの厚みXを可能な限り薄くすることに限定するものではない。ストロンチウム90およびイットリウム90が放出するβ線のみを精度よく検出するためには、ストロンチウム90およびイットリウム90以外が放出するβ線を除去することができればなお良い。そのため、ストロンチウム90およびイットリウム90以外が放出する比較的低エネルギのβ線を除去できるように、検出器ケース1Cの厚みXを調整することも可能である。
次に、演算部50において行われる放射線評価の制御の詳細について説明する。
図3は、図1に示した多重波高分析器3の出力である波高スペクトルMの例を示す図である。
図4は、図1に示したデータベース59内に予め記録されたスペクトルデータDを示す図である。
図2に示した検出器1を適用すると、多重波高分析器3は、図3に示すように、γ線とβ線の計数を含んだ波高スペクトルMを出力する。ここで、図3に示す第1値としての第1波高値Edよりも高いエネルギ帯域である第1エネルギ帯域Ehiにおいて、斜線により示した分布が現れる。これはイットリウム90からのβ線を検出したことにより見られる分布である。
β線を放出する放射性核種は種々存在するが、イットリウム90は他のβ線放出核種よりも放出するβ線の最大エネルギ値が特徴的に高い。そのため、測定環境にイットリウム90が存在すると、その存在は、第1波高値Edより高い第1エネルギ帯域Ehiにおける計数として示される。
ここで、第1波高値Edは、γ線放出核種からのγ線のエネルギ分布の最大値となるように設定される。本実施の形態では、第1波高値Edは、セシウム137、セシウム134等の原発起因のγ線の最大エネルギ値よりも高く、自然界に顕著に存在する核種のうち比較的大きなエネルギ値のγ線を放出するγ線放出核種であるカリウム40のエネルギ値である1.46MeVとする。実際には、この1.46MeVに対して分布マージンを確保して、第1波高値Edは、1.7~1.8MeVに設定される。
このような第1波高値Edの値の設定を行うことで、第1波高値Edより高いエネルギ帯域における計数は、γ線放出核種からのγ線の計数と、イットリウム以外のβ線放出核種からのβ線との計数を除いた、イットリウム90からのβ線の計数を示すことになる。
図3に示した斜線部のスペクトル形状は、イットリウム90からのβ線の高エネルギ側におけるスペクトルの特徴的な形状を示している。
データベース59には、既知の放射能を設定したシミュレーション、標準線源の照射による実験等により得られる、図4に示すようなイットリウム90およびストロンチウム90の波高スペクトル形状が、スペクトルデータDとして予め記録されている。この図4に示すイットリウム90およびストロンチウム90の波高スペクトルの形状は、例えば放射能の強さ、測定条件に応じて複数記録されている。
スペクトル比較器51は、多重波高分析器3からの波高スペクトルMが入力されると、この入力された波高スペクトルMの第1エネルギ帯域Ehiにおける形状と、スペクトルデータDに記録されているイットリウム90の波高スペクトルの第1エネルギ帯域Ehiにおける形状とを照合する照合判定を行う。
スペクトル比較器51は、入力された波高スペクトルMの第1エネルギ帯域Ehiの形状が、スペクトルデータD内に記録された複数の波高スペクトルの形状のうちの一つと一致すると、検出器1により検出された第1エネルギ帯域Ehiにおける放射線を放出する放射性物質が、イットリウム90であると同定する。
この場合、スペクトル比較器51は、照合判定において一致したスペクトルデータD内の波高スペクトル形状に基づき、検出されたイットリウム90の放射能量を演算する第1演算を行う。
この第1演算では、例えば、スペクトルデータD内に記録される波高スペクトルの形状のデータを規格化しておき、該規格化スペクトルに相当するイットリウム90の放射能量を既知として記録しておけばよい。
あるいは、第1演算において、一致したスペクトルデータD内の波高スペクトル形状に基づき、検出されたイットリウム90の第1波高値Ed未満の第2エネルギ帯域Elowにおける波高スペクトル形状を推定し、この推定した形状に基づいて導出されるイットリウム90の放射能量を演算してもよい。
あるいは、第1演算において、入力された波高スペクトルMに対して特定の比率を乗じることにより、入力された波高スペクトルMが、記録された波高スペクトル形状と一致する場合には、スペクトル比較器51は、この形状一致に必要な比率を、上記既知のイットリウム90の放射能量に乗じることによりイットリウム90の放射能量を特定してもよい。
以上のように、スペクトル比較器51は、第1演算において、ストロンチウム90の娘核種であるイットリウム90から放出されるβ線の波高スペクトルMの形状に基づいて、波高スペクトルMのうちストロンチウム90に相当する量を算出する第1演算を行う。
なお、照合判定において不一致と判定される場合は、スペクトル比較器51は、上記第1演算を行わない処理としてよい。第1波高値Edを超えた第1エネルギ帯域Ehiに存在する計数は、すべてイットリウム90に起因する放射線となるわけではなく、ごくわずかながら、天然核種、高エネルギの宇宙線、等による計数が存在する場合がある。イットリウム90でないこのような宇宙線は放射線の計数自体が少ない。そのため、イットリウム90以外のβ線放出核種からの放射線の計数では、図3に示す第1波高値Ed以上の斜線部に分布形状を形成できない。この場合、スペクトル比較器51は、照合判定によりイットリウム90、ストロンチウム90が存在しないと判定できる。
なお、上記第1波高値Edは、自然界に顕著に存在する核種のうち比較的大きなエネルギ値のγ線放出核種であるカリウム40のエネルギ値に設定したが、セシウム134、137からの放射線による影響が主であると想定出来る環境等においては、第1波高値Edは、セシウム134の放射線エネルギーを超える値に設定してもよい。
上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行う、
ものである。
検出器を用いて導出される波高スペクトルは、検出器と放射性物質との位置関係、検出器の設置環境等の変化により、その波高スペクトル形状が変化する場合がある。本実施の形態の演算部は、このように、イットリウム90から放出されるβ線の波高スペクトルの形状に基づいて、ストロンチウム90の放射線を演算する第1演算を行う。
これにより、検出器の設置環境等の影響を受けることなく、高精度のストロンチウム90の評価が行える。また、放射線の最大エネルギ値が特徴的に高いイットリウム90に基づいた評価を行うため、セシウム137、セシウム134以外のγ線放出核種が測定環境に存在する場合においても、精度良くストロンチウム90の評価を行える。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、前記第1演算において、
設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算する、
ものである。
このように、演算部は、設定された第1値以上の第1エネルギ帯域におけるイットリウムからのβ線の波高スペクトル形状に基づいて第1演算を行う。そのため、例えば、設定される第1値の値を適宜調整することで、他のγ線放出核種、β線放出核種からの放射線の影響をより受けない設定での放射線の評価が可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記検出部は、
入射される前記放射線を検出するセンサ部と、前記放射線であるβ線が透過する厚みに調整された壁部を有して前記センサ部を収容するケース部と、を備える、
ものである。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記検出部の前記センサ部は、一台構成である、
ものである。
このように、検出部は、検出器ケースの壁部の厚みの調整を行うことで、ストロンチウム90およびイットリウム90が放出するβ線を検出できる。更に、放射線を検出するセンサ部は、一台で構成される。このような構成とすることで、同じ放射線センサにより、γ線とβ線との両方の放射線を、同地点、且つ同時刻に測定可能となる。
前述のように、波高スペクトルは、放射性物質と、検出器との位置関係によりその形状が変化する場合がある。そのため、例えば、γ線検出器と、β線検出器とをそれぞれ独立して設けて設置すると、同地点にてγ線とβ線とを検出できない。この場合、それぞれ導出されるβ線の計数と、γ線の計数とを用いた演算を行う場合に、ズレが生じ、精度よい放射線強度の演算が行えない場合がある。本実施の形態では、このように、同地点にてγ線とβ線とを検出することで、それぞれの放射線の計数の精度よい相関関係を確保して、精度良い放射線強度の演算が可能となる。
また例えば、それぞれ独立したγ線検出器とβ線検出器とを用いる場合において同地点での放射線検出を実現しようとした場合、γ線検出器で測定した後に、γ線検出器を取り除いてその地点にβ線検出器に新たに設置する検出方法が考えられるが、この場合も、時間差による測定値のずれの影響が生じる場合がある。本実施の形態の検出器は、γ線とβ線とを同時に、連続的にリアルタイムで測定するため、時間差によるズレによる影響がそれぞれの計数値に生じることを防止でき、更に精度よい放射線強度の分析が可能になると共に、測定時間を短縮できる。
また、例えば、ストロンチウム90と放射平衡状態にあるイットリウム90から放出されるβ線エネルギーが非常に高いことを利用して、物質の透過能力の差異により分離測定する透過能差分測定法では、イットリウム90の低エネルギー領域における放射線の計数を用いないため、一般に簡便な検知は可能であるが定量測定には向かない。
また、化学分離により放射性セシウムから放射性ストロンチウムを選択的に取り出して液体シンチレーション測定またはチェレンコフ光測定を行う化学分離法では、試料中のセシウムとストロンチウムを分離するために化学処理作業を必要とし、手間と時間がかかるので迅速な測定には向かない。これに対して本実施の形態の放射線分析装置は、このように、化学分離を一切行わず、定量測定と迅速な測定を可能にするものである。
本願に開示される放射線分析装置によれば、β線放出核種であるストロンチウム90、イットリウム90およびγ線放出核種であるセシウム137またはセシウム134等をリアルタイムで特定して定量測定することが可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、
前記イットリウムからのβ線の、少なくとも前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状を示すスペクトルデータが予め記録され、
記録された前記スペクトルデータと、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布と、を照合する照合判定を行う
ものである。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記スペクトルデータは、
前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状、である、
このように、イットリウム90の波高スペクトル形状を示すスペクトルデータが予め記録されているため、照合判定において、迅速に精度良くイットリウム90の存在判定を行える。また、記録されたスペクトルデータの波高スペクトル形状に基づいたストロンチウム90の放射線評価を行えるため、検出器と放射性物質との位置関係、検出器の設置環境に依らない、精度良い放射線強度の評価が可能になる。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、前記照合判定において、
記録された前記スペクトルデータにより示される前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、が一致する場合に、
前記スペクトルデータにより示される前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布に基づいて前記第1演算を行う、
ものである。
このように、演算部は、記録されたスペクトルデータにより示される波高スペクトルの形状と、入射された放射性物質からの放射線の波高スペクトルの形状とを照合する照合判定を行い、当該判定結果が一致する場合に第1演算を行う。これにより、ストロンチウム90の存在が確認される場合にのみ放射線強度の演算を行うため、精度良い放射線強度の演算が可能になる。また、例えば、ストロンチウム90の存在がある場合でも、ストロンチウム90以外の他のβ線放出核種の放射線の影響が多い場合には、形状不一致となるため、この場合に第1演算を行わない制御とすることで、精度良い放射線強度の演算が可能になる。
実施の形態2.
以下、本実施の形態2の放射線分析装置200について、実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図5は、実施の形態2による放射線分析装置200の概略構成を示すブロック図である。
本実施の形態の放射線分析装置200は、実施の形態1に示した放射線分析装置100とは演算部250の構成が異なる。本実施の形態の演算部250は、グロスカウンタ252と、β線カウンタ253と、CPU254とを備える。
実施の形態1と同様に、多重波高分析器3は、図3に示した波高スペクトルMを生成して出力する。出力された波高スペクトルMは、演算部250のグロスカウンタ252とβ線カウンタ253とに入力される。
β線カウンタ253は、入力された波高スペクトルMに基づき、図3に示した第1波高値Ed以上の第1エネルギ帯域Ehiにおける斜線部のβ線の計数の総数を算出して、CPU254に対して出力する。
グロスカウンタ252は、波高スペクトルMの全エネルギ領域におけるγ線とβ線とを含む放射線の計数の総数を算出して、CPU254に対して出力する。
ここで、データベース59に記録されているスペクトルデータDには、第1エネルギ帯域Ehiにおける斜線部β線の放射線の計数の総数Vaが予め記録されている。
この総数Vaは、既知の放射能を設定したシミュレーション、標準線源の照射による実験等により得られるストロンチウム90の波高スペクトル形状に基づいて導出されており、放射能の強さ、測定条件に応じて複数の総数Vaが記録されている。
更に、スペクトルデータDには、この第1エネルギ帯域Ehiにおけるβ線の総数Vaに対応する、第2エネルギ帯域Elowにおけるβ線の総数Vbが、当該Vaに対応付けられて記録されている。この総数Vbも上記シミュレーション等により得られる。
CPU254は、入射された放射線の波高スペクトルMに基づきβ線カウンタ253が計数した第1エネルギ帯域Ehiにおけるβ線の計数の総数と、スペクトルデータD内に予め記録されている波高スペクトルMの第1エネルギ帯域Ehiにおけるβ線の計数の総数Vaと、を照合する照合判定を行う。そしてCPU254は、この照合判定が一致すると、検出器1により検出された第1エネルギ帯域Ehiにおける放射線を放出する放射性物質がイットリウム90であると同定する。
この場合、CPU254は、第1演算において、照合判定において一致したスペクトルデータD内のβ線の総数Vaに基づいて、第2エネルギ帯域Elowに現れるβ線の計数の総数、即ちイットリウム90のβ線のうち波高値が第1波高値Ed以下の総数Vbを、スペクトルデータDに基づき導出する。そして、CPU254は、第1波高値Ed以上および第1波高値Ed未満のイットリウム90のβ線の計数の総数から、ストロンチウム90のβ線の計数を導出する。
このように、β線カウンタ253により波高値が第1波高値Ed以上の第1エネルギ帯域Ehiにおける放射線の計数をカウントすれば、ストロンチウム90およびイットリウム90のβ線の総カウントが判明することになる。
また、CPU254は、グロスカウンタ252によりカウントされた、入射された放射線の波高スペクトルMの全エネルギ領域におけるγ線とβ線とを含む放射線の計数の総数から、上記算出したストロンチウム90およびイットリウム90の計数の総数を減算することにより、γ線放射性核種からのγ線の計数のみを算出することもできる。
以上のように、β線の総数Va、Vbのみを記録しておき、照合判定において数値照合のみを行う。これにより、実施の形態1の図4に示した波高スペクトル形状を示すスペクトルデータを記録しておく構成に比較して、演算部250における演算処理の負荷低減、装置の簡素化を得られる。さらには、データベース59の容量低減効果も得られる。
なお、上記第1演算において、例えば、β線カウンタ253が計数した入射された放射線の第1エネルギ帯域Ehiにおける計数の総数に対して特定の比率を乗じることにより、β線カウンタ253がカウントした計数が、記録された総数Vbと一致する場合には、CPU254は、例えば、以下のようなデータベース59内に記録された比rを用いて第1演算を行ってもよい。
即ち、イットリウム90の波高スペクトル形状が既知であると、イットリウム90の第1波高値Ed以上の第1エネルギ帯域Ehiでの計数値(Va1とする)と、第1波高値Ed未満の第2エネルギ帯域Elowでの計数値(Vb1とする)との、両者の比(r=Vb1/Va1)は一定となる。第1波高値Ed以上の計数値Va1を全てイットリウム90起因とみなせば、その比rからイットリウム90の全体の計数値(=Va1+Vb1=Va1×(1+r))が判る。
上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、前記第1演算において、
前記第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づき導出される、前記第1エネルギ帯域におけるβ線の放射線の計数の総数に基づいて、前記第1未満の第2エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の放射線の計数の総数を導出して、前記ストロンチウムの放射線強度を演算する、
ものである。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記スペクトルデータは、
前記イットリウムからのβ線の第1エネルギ分布の形状に基づき導出された放射線の計数の総数、
であるものである。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
記録された前記スペクトルデータにより示される前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状から導出された前記第1エネルギ帯域における放射線の計数の総数と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における放射線の計数の総数と、が一致する場合に、
前記スペクトルデータにより示される前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布に基づいて前記第1演算を行う、
ものである。
このように、既知の放射能を設定したシミュレーション、標準線源の照射による実験等により得られるストロンチウム90のβ線の総数Va、Vbを記録しておき、この総数に基づき、照合判定、あるいは、第1演算を行う。これにより、CPUにおける演算処理の負荷低減、装置の簡素化、データベースの容量低減効果を得られる。
実施の形態3.
以下、本実施の形態3の放射線分析装置300について、実施の形態1と異なる部分を中心に図を用いて説明する。実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図6は、実施の形態3による放射線分析装置300の概略構成を示すブロック図である。
図7は、多重波高分析器3の出力である波高スペクトルMの例を示す図である。本図7において、イットリウム90、ストロンチウム90からのβ線の分を、破線により示す。
図8は、図7に示した波高スペクトルMから、ストロンチウム90とイットリウム90の分布を差し引いた波高スペクトルを示す図である。
本実施の形態の放射線分析装置300は、実施の形態1に示した放射線分析装置300と演算部350の構成が異なる。本実施の形態の演算部350は、実施の形態1と同様のスペクトル比較器51と、新たに逆問題演算部355とを備える。また、データベース59内には、実施の形態1と同様のスペクトルデータDと、新たに応答関数Rとが記録されている。
スペクトル比較器51は、実施の形態1と同様に、多重波高分析器3の出力の波高スペクトルMからイットリウム90の波高スペクトル形状を照合してストロンチウム90およびイットリウム90に相当するβ線放射能を算出する。更に、スペクトル比較器51は、図7に示す多重波高分析器3の出力の波高スペクトルMから、算出されたストロンチウム90およびイットリウム90からのβ線の計数を差し引いて、図8に示すようにγ線のみのエネルギ値ごとの計数を示す波高スペクトルMを生成する。
図8に示すように、イットリウム90からのβ線のエネルギ値ごとの計数が、波高スペクトルMにおけるエネルギ値ごとの計数からそれぞれ減算されている。生成された波高スペクトルMは、後段の逆問題演算部355に向けて出力される。
逆問題演算部355は、検出器1に関する応答関数Rをデータベース59内から読み出し、その応答関数Rを用いて波高スペクトルMに対して逆問題演算を実施する。つまり、Mを第1波高スペクトル、Rを応答関数、Sを放射線の相互作用による影響が排除されたエネルギースペクトルである第2波高スペクトルとして、下記の(式1)が成立するところ、応答関数Rは一般に可換群を形成するので逆元が存在する。よって、逆問題演算部355は、この(式1)の逆変換となる下記の(式2)を計算することで、第2エネルギ分布としてのエネルギースペクトルSを抽出する。なお、“R^-1”は応答関数の逆元を示す。
M=R・S ・・・(式1)
S=(R^-1)・M ・・・(式2)
ここで、Mで表す波高スペクトルMおよびSで表すエネルギースペクトルをそれぞれベクトル表記、つまりチャンネル数に応じた計数をベクトル成分として表すと、応答関数Rおよび応答関数の逆元R^-1はそれぞれ行列、逆行列と称することができる。
そして、逐次近似法(参考文献:文部科学省,放射能測定法シリーズ20「空間γ線スペクトル測定法」,(1990)付録2)によりフィードバック的操作を行い、予めシミュレーションにより算出された応答関数Rを用いて、放射線を計測して得られる波高スペクトルMからエネルギースペクトルSを詳細化していき、目的のエネルギースペクトルSを求めることができる。
逐次近似法を適用すると、(式2)のエネルギースペクトルSの求め方が以下のようになる。エネルギースペクトルSの初期値として測定値Mをそのまま代入して、
Figure 0007378377000001
次に、下記(式4)、(式5)をフィードバック的に繰り返し、S^(m+1)/S^(m)が収束するまで繰り返す。
Figure 0007378377000002
Figure 0007378377000003
以上のように求めたエネルギースペクトルSに含まれる情報は、放射性核種の種類を示すものである。
上記(式2)を解くことにより、Mで表される波高スペクトルから、放射線のエネルギー情報のみを含むSで表されるエネルギースペクトルを抽出することができる。つまり、導出されたエネルギースペクトルSでは、検出器1および放射性物質の周辺構造物等による相互作用による影響、および、検出器1にかかわる統計的なバラつきによる影響が排除されている。よって、上記(式2)を解くことにより、放射線のエネルギー情報を正確に知ることができ、検出された放射線を放出した放射性物質の同定の精度が向上する。
図8に示すように、上記逆問題演算を適用される前の波高スペクトルMでは、E1、E2で示す位置においてγ線の全吸収ピークの形状が現れており、エネルギーE1、E2をもつ2種類のγ線が検出器1に入射したことを示している。
しかしながら、この波高スペクトルMのままでは、全吸収ピークは横方向の波高値に広がりをもっており、さらに、E1、E2のそれぞれの位置の左側には、連続的になだらかな起伏で示されるコンプトン散乱部分が存在する。このコンプトン散乱部分は、入射放射線のエネルギがコンプトン散乱の影響により一部損失することにより生じる部分である。通常、核種分析および放射線強度の評価は、エネルギーピーク部分のE1、E2における計数のみから求められ、コンプトン散乱領域における計数は放射線の核種同定に利用出来ないため使用されない。そのため、このような波高スペクトルMに基づいた放射性物質の評価を行うと、分析精度が低下し、γ線を放出する放射線核種を正確に特定できない問題がある。しかしながら逆問題演算が該問題を解決する。
図9は、波高スペクトルMに対して上記の応答関数Rを用いた逆問題演算を適用することで変換されたエネルギースペクトルSの例を示す図である。
図9に示すように、逆問題演算により波高スペクトルMに見られたコンプトン散乱および全吸収ピークの広がりが無くなり、分析精度が向上する。
なお、図9は、エネルギーE1、E2を持つ2種類の放射性物質からの放射線のみが入射した場合を示したが、1種類もしくは3種類以上のエネルギーが入射した場合にもカウントを示すようになる。
図示されるE1のカウント数101a、E2のカウント数101bのように、エネルギー別に得られるカウント数に対して核種毎に定める放出率等の係数を乗じることで、求めるべき放射能量を得られる。
上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、
前記イットリウムからの前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、少なくとも前記イットリウムからのβ線のエネルギ値ごとの計数を、前記第1エネルギ分布のエネルギ値ごとの計数から減算し、
該減算された前記第1エネルギ分布に対して、前記検出部の応答関数を用いた信号復元演算を行うことにより前記放射性物質から放出される前記放射線であるγ線の、エネルギ値ごとの分布を示す第2エネルギ分布を導出して、前記放射性物質の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質の放射線強度を演算する、
ものである。
このように、スペクトル比較器は、少なくともイットリウム90からのβ線のエネルギ値ごとの計数を、波高スペクトルのエネルギ値ごとの計数から減算する。そして、イットリウム90からのβ線の計数を除いたγ線の波高スペクトルに対して信号復元演算を行うことで、放射性核種の同定の精度と放射線強度の評価とを更に向上できる。
実施の形態4.
以下、本実施の形態4の放射線分析装置400について、実施の形態1、2、3と異なる部分を中心に図を用いて説明する。実施の形態1、2、3と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図10は、実施の形態4による放射線分析装置400の概略構成を示すブロック図である。
図11は、本実施の形態4による多重波高分析器3の出力である波高スペクトルMの例を示す図である。
本実施の形態の放射線分析装置400は、実施の形態1に示した放射線分析装置100と演算部450の構成が異なる。本実施の形態の演算部450は、実施の形態2に示したβ線カウンタ253と、CPU254と、実施の形態3に示した逆問題演算部355とを備えた構成である。
本実施の形態では、演算部450は、波高分布Mにおける放射線の計数から、設定される減算値Dを減算する除去演算を行う。この除去演算は、γ線放出核種以外の放射性物質であって、イットリウム90以外のβ線放出核種である第1放射性物質において、当該第1放射性物質からのβ線の計数を、波高スペクトルMから除去するものである。
以下、この除去演算の詳細について説明する。
実施の形態1と同様に、多重波高分析器3は、図3に示した波高スペクトルMを生成して出力する。出力された波高スペクトルMは、演算部450のβ線カウンタ253に入力される。図11において、実施の形態1の第1波高値Edと同様の値に設定される第1値としての第1波高値Edaと、この第1波高値Edaよりも高い値の、第2値としての第2波高値Edbと、を示す。本実施の形態では、この第2波高値Edbは、イットリウム90の最大エネルギ値に設定される。
ここで、図11に示すように、第2波高値Edbよりも高い第3エネルギ帯域Ehi2において放射線が計数されている。第1波高値Edaは、実施の形態1と同様に自然界に顕著に存在する核種のうち比較的大きなエネルギ値のγ線を放出する放射性核種にエネルギ値に設定されており、更に、第2波高値Edbは、前述のようにイットリウム90の最大エネルギ値に設定されている。よって、この第2波高値Edb以上の第3エネルギ帯域Ehi2における計数は、γ線放出核種以外の放射性物質であって、且つ、イットリウム90以外のβ線放出核種である第1放射性物質が存在することを示す。
β線カウンタ253は、入力された波高スペクトルMに基づき、図11に示す第1波高値Eda以上の第1エネルギ帯域Ehiにおける斜線部のβ線の計数の総数を算出して、CPU254に対して出力する。当該計数結果を用いて、上記実施の形態2と同様に、後段のCPU254にてストロンチウム90およびイットリウム90の計数の総数を算出する第1演算を行う。同時にCPU254は、図11の波高スペクトルMの第1波高値Edaにおける計数N1を減算値Dとして設定する。そしてCPU254は、当該減算値Dである計数N1を、波高スペクトルMの全エネルギー領域に渡り減算する除去演算を行う。この除去演算により、およそ図8に示した、γ線のエネルギ値ごとの計数を示す波高スペクトルMが得られる。
このようにして得られた波高スペクトルMは、イットリウム90からのβ線の計数と、イットリウム90以外の第1放射性物質からのβ線の計数とを除いたものとなる。その後、逆問題演算部355は、実施の形態3と同様にこの波高スペクトルMに対して逆問題解法を適用して、γ線放出核種を弁別すると共に、その放射能量を得る。
なお演算部450は、上記除去演算を行う前に、照合判定を行ってもよい。即ち、上記除去演算を行う前に、β線カウンタ253が計数した第1エネルギ帯域Ehiにおけるβ線の計数の総数と、スペクトルデータD内に予め記録されているイットリウム90の第1エネルギ帯域Ehiにおけるβ線の計数の総数Vaと、を照合する照合判定を行う。
この場合、イットリウム90以外のβ線放出核種からの放射線が計数されるため、照合判定は不一致となる。演算部450は、この照合判定が不一致となった場合にのみ上記除去演算を行う制御とすれば、イットリウム90以外のβ線放出核種が存在することを確認した場合にのみこのβ線放出核種の影響を除く除去演算を行うことになる。そのため、精度良いγ線放出核種の弁別と放射能量の演算が可能になる。
また演算部450は、実施の形態1に示したようなスペクトル比較器51を備えた構成としてもよい。この場合、演算部450は、上記照合判定を、第1波高値Eda以上の斜線部における波高スペクトルの形状比較により行ってもよい。
なお、上記では、除去演算における減算値Dとして、波高スペクトルMの第1波高値Edaにおける計数N1を減算値Dとして設定した。即ち、イットリウム90からのβ線の計数と、イットリウム90以外の第1放射性物質からのβ線の計数とを波高スペクトルMから除いた。しかしながら減算値Dは、これに限定するものではなく、例えば、第2波高値Edbにおける計数N2を減算値Dとして設定してもよい。そしてこの計数N2を第2値波高値Edb未満のエネルギ帯域における放射線の各エネルギー値ごとの計数から減算してもよい。この場合、第1放射性物質からのβ線の計数のみを除いた波高スペクトルMが得られる。
第2波高値Edbにおける計数N2を減算値Dとして設定する制御は、例えば、第1放射性物質の核種が未知の場合に適用することができる。即ち、第2波高値Edb未満のエネルギ帯域における第1放射性物質の波高スペクトルが未知であるため、第2波高値Edb未満のエネルギ帯域における第1放射性物質の計数が計数N2と同値と仮定して、この計数N2を減算している。
また、第1放射性物質の波高スペクトルが、予め、シミュレーション、実験などにおいて既知である場合は、以下のように減算値Dを設定してもよい。
即ち、CPU254は、第2値Edb以上の第3エネルギ帯域Ehi2における波高スペクトル形状、あるいはこの波高スペクトル形状から予め導出された第3エネルギ帯域Ehi2における放射線の計数の総数、の少なくとも一方に基づいて、第2値Edb未満のエネルギ帯域における第1放射性物質からのβ線の計数を導出する。そして、この導出された計数を減算値Dとして設定してもよい。
また上記では、除去演算を、ストロンチウム90の放射性強度を演算する第1演算の後であって、逆問題演算を行う前に行う例を示した。しかしながらこれに限定するものではなく、除去演算をストロンチウム90の放射性強度を演算する第1演算の前に行ってもよい。これにより、第1放射性物質からのβ線の計数を波高スペクトルMから除いて、精度良いイットリウム90およびストロンチウム90の放射性強度の演算が可能となる。
上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、
前記照合判定における判定が不一致である場合は、前記第1エネルギ分布のエネルギ帯域における放射線の計数から、設定される減算値を減算する除去演算を行う、
ものである。
演算部は、前記照合判定における判定が不一致である場合は、イットリウム90以外の放射線による計数が存在すると仮定して、波高スペクトルから設定される減算値を減算する。これにより、イットリウム90以外の放射線による計数を取り除いて、精度よい放射線の評価が行える。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、
前記イットリウムの最大エネルギ値である第2値が記録され、前記第1値は該第2値未満の値に設定され、
前記第2値以上の第3エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状、あるいは該第1エネルギ分布により導出された前記第3エネルギ帯域における放射線の計数の総数、の少なくとも一方に基づいて、前記第3エネルギ帯域の放射線を放出する前記放射性物質としての第1放射性物質からのβ線の、前記第2値未満のエネルギ帯域における計数を導出して、該導出された計数を前記減算値として設定する、
ものである。
このように、第2値以上の第3エネルギ帯域における第1放射性物質の波高スペクトルに基づき、第2値未満のエネルギ帯域における第1放射性物質の計数を導出し、この計数を第2値未満のエネルギ帯域における波高スペクトルの計数から減算することで、イットリウム90の最大エネルギ値未満のエネルギ帯域から、第1放射性物質からのβ線の計数を減算して、精度良い第1演算、逆問題演算が可能となる。
また、上記のように構成された本実施の形態の放射線分析装置は、
前記演算部は、
前記第1値あるいは前記第2値における放射線の計数値を、前記減算値として設定し、設定された該減算値を、前記第2値未満のエネルギ帯域における放射線の各エネルギー値ごとの計数から減算する、
ものである。
このように、波高スペクトルから第1値における計数N1を減算することで、第1放射性物質の計数とイットリウム90の計数とを除去でき、精度良いγ線の放射線評価が行える。
また、波高スペクトルから第2値における計数N2を減算することで、第1放射性物質の計数を除去でき、精度良いイットリウム90およびストロンチウム90の放射線評価と、その後のγ線の放射線評価が行える。
また、本実施の形態のように妨害核種となる第1放射性物質からのβ線エネルギが、測定対象となるイットリウム90よりも十分高い場合、第2波高値Edbを、イットリウム90が放出するベータ線の最大エネルギ値である2.28MeVとすることで、第1放射性物質による影響の多くを排除でき、S/N比の高い測定精度を確保できる。なお、実際は測定装置起因による誤差により波高スペクトルがずれる可能性がある。そのため、第2波高値Edbは、得られた波高スペクトルの形状に基づき設定されたマージンを有してその値が調整されてもよい。
一方で、第1放射性物質からのβ線エネルギが、測定対象とするイットリウム90よりもわずかに高い場合では、上記の場合よりもS/N比が悪化する恐れがある。そのため、検出器1までのエネルギ減衰を考慮し、到達できるベータ線の最大エネルギー等、予め第2波高値Edbを低エネルギー側へ補正することで、S/N比の改善を図ることができる。
また、実施の形態3に示した第1波高値Ed、本実施の形態の第1波高値Eda、の値は、検出器構造に起因するγ線の最大付与エネルギ及び妨害核種である第1放射性物質の影響を考慮し、測定精度が最も得られる第1波高値Edaを決定することとする。例えば、第1波高値Edaは、γ線のみのスペクトルの最大エネルギ値、または現れる極大のエネルギーピークの高エネルギー側のピーク端とする。これにより、β線成分減算後の波高スペクトルにおいてγ線のみのスペクトルを抽出する精度の向上を図ることができる。
実施の形態5.
以下、本実施の形態5のダストモニタ装置1000について説明する。
図10は、実施の形態1から実施の形態4に示した放射線分析装置100、200、300、400に対して、集塵機構部としてのダストサンプラ60に適用したダストモニタ装置1000の概略構成を示すブロック図である。
ダストサンプラ60は、試料導入管61、集塵部62、ろ紙63と、を備える。
試料導入管61により測定対象の放射性物質が含まれる大気を取り込み、集塵部62に測定対象を集塵する。集塵部62に設置されたろ紙63に放射性物質を含む測定対象物が捕集される。集塵中の大気の流れは集塵部62の下流部に設けた図示しない真空ポンプにて引き込まれる。
大気の流れは集塵部62と図示しない真空ポンプの間に設置される図示しない流量計で管理され、集塵部62を通過した大気の体積を流量計の流量の時間的積算により求められる。前記実施の形態1から実施の形態4の放射能分析装置にて算出される放射性核種毎の放射能は、図示しない流量計の積算流量から得られる体積で除することにより、単位体積に含まれている放射能濃度として算出することができる。
図12に示す通り、前記実施の形態1から実施の形態4の放射能分析装置の検出器1はろ紙63にて集塵された放射性物質を含む測定対象物に近接して設置される。そのため、測定対象物に含まれる放射性物質を高効率で検出することができ、高精度の放射能分析装置を搭載したダストモニタを得ることができる。
なお、図12に示すろ紙63は固定ろ紙でも長尺ろ紙でもよく、長尺ろ紙の場合は、ろ紙巻取り部材およびモータ等からなる自動ろ紙送り機構を導入して、自動でろ紙交換を行うものであってもよい。
上記のように構成された本実施の形態のダストモニタ装置は、
前記実施の形態1から実施の形態4の放射線分析装置と、
集塵濾紙に大気中の前記放射性物質を集塵する集塵機構部と、を備え、
前記放射線分析装置の前記検出部は、集塵された前記集塵濾紙の前記放射性物質から放出される放射線を検出する、
ものである。
これにより、集塵された放射性物質の放射線評価を高精度で行える。更に、このような放射性物質が一箇所に集塵され、集塵機構、集塵ろ紙がある場合に検出器を複数設置することが難しい構成のダストモニタにおいても、検出器の放射線センサを一台構成として、同地点、同時にγ線とβ線とを検出することで、更に精度よく放射線強度を演算できる。
なお、上記実施の形態1から4にて示した演算部は、ハードウエアの一例を図13に示すように、プロセッサと記憶装置とから構成される。プロセッサは、実施の形態1では、演算部50のスペクトル比較器51に相当し、記憶装置はデータベース59に相当する。
記憶装置は図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを備える。
また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を備えてもよい。プロセッサ51は、記憶装置59から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ51にプログラムが入力される。また、プロセッサ51は、演算結果等のデータを記憶装置59の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
1 検出器(検出部)、1C1 側壁(壁部)、1C2 底壁(壁部)、
M 波高スペクトル(第1エネルギ分布)、S エネルギ分布(第2エネルギ分布)、
50,250,350,450 検出部、
100,200,300,400 放射線分析装置、1000 ダストモニタ装置。

Claims (20)

  1. 放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
    前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
    前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
    前記演算部は、
    前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
    前記第1演算において、
    設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
    前記イットリウムからのβ線の、少なくとも前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状を示すスペクトルデータが予め記録され、
    記録された前記スペクトルデータと、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布と、を照合する照合判定を行い、
    前記照合判定における判定が不一致である場合は、前記第1値未満の前記第1エネルギ分布のエネルギ帯域における放射線の計数から、設定される減算値を減算する除去演算を行う、
    放射線分析装置。
  2. 放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
    前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
    前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
    前記演算部は、
    前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
    前記第1演算において、
    設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
    前記イットリウムからのβ線の、少なくとも前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状を示すスペクトルデータが、前記イットリウムの放射線強度、あるいは前記検出部の設置条件の少なくとも一方に応じて、予め複数記録され、
    記録された複数の前記スペクトルデータの形状と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、を照合する照合判定を行い、
    前記照合判定における判定が不一致である場合は、前記第1値未満の前記第1エネルギ分布のエネルギ帯域における放射線の計数から、設定される減算値を減算する除去演算を行う、
    放射線分析装置。
  3. 前記演算部は、
    前記イットリウムの最大エネルギ値である第2値が記録され、前記第1値は該第2値未満の値に設定され、
    前記第2値以上の第3エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状、あるいは該第1エネルギ分布により導出された前記第3エネルギ帯域における放射線の計数の総数、の少なくとも一方に基づいて、前記第3エネルギ帯域の放射線を放出する前記放射性物質としての第1放射性物質からのβ線の、前記第2値未満のエネルギ帯域における計数を導出して、該導出された計数を前記減算値として設定する、
    請求項1または請求項2に記載の放射線分析装置。
  4. 前記演算部は、
    前記第1値あるいは前記イットリウムの最大エネルギ値である第2値における放射線の計数値を、前記減算値として設定し、設定された該減算値を、前記第2値未満のエネルギ帯域における放射線の各エネルギー値ごとの計数から減算する、
    請求項1または請求項2に記載の放射線分析装置。
  5. 前記スペクトルデータは、
    前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状、あるいは前記イットリウムからのβ線の第1エネルギ分布の形状に基づき導出された放射線の計数の総数、の少なくとも一方である、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の放射線分析装置。
  6. 前記演算部は、前記照合判定において、
    記録された前記スペクトルデータにより示される前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、が一致する場合、あるいは、
    記録された前記スペクトルデータにより示される前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状から導出された前記第1エネルギ帯域における放射線の計数の総数と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における放射線の計数の総数と、が一致する場合に、
    前記スペクトルデータにより示される前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布に基づいて前記第1演算を行う、
    請求項5に記載の放射線分析装置。
  7. 前記演算部は、
    前記イットリウムからの前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、少なくとも前記イットリウムからのβ線のエネルギ値ごとの計数を、前記第1エネルギ分布のエネルギ値ごとの計数から減算し、
    該減算された前記第1エネルギ分布に対して、前記検出部の応答関数を用いた信号復元演算を行うことにより前記放射性物質から放出される前記放射線であるγ線の、エネルギ値ごとの分布を示す第2エネルギ分布を導出して、前記放射性物質の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質の放射線強度を演算する、
    請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の放射線分析装置。
  8. 放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
    前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
    前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
    前記演算部は、
    前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
    前記第1演算において、
    設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
    前記イットリウムからの前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、少なくとも前記イットリウムからのβ線のエネルギ値ごとの計数を、前記第1エネルギ分布のエネルギ値ごとの計数から減算し、
    該減算された前記第1エネルギ分布に対して、前記検出部の応答関数を用いた信号復元演算を行うことにより前記放射性物質から放出される前記放射線であるγ線の、エネルギ値ごとの分布を示す第2エネルギ分布を導出して、前記放射性物質の核種を弁別すると共に、弁別された該放射性物質の放射線強度を演算する、
    放射線分析装置。
  9. 前記演算部は、
    前記イットリウムからのβ線の、少なくとも前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状を示すスペクトルデータが予め記録され、
    記録された前記スペクトルデータと、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布と、を照合する照合判定を行う
    請求項8に記載の放射線分析装置。
  10. 前記スペクトルデータは、
    前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状、あるいは前記イットリウムからのβ線の第1エネルギ分布の形状に基づき導出された放射線の計数の総数、の少なくとも一方である、
    請求項9に記載の放射線分析装置。
  11. 前記演算部は、前記照合判定において、
    記録された前記スペクトルデータにより示される前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状と、が一致する場合、あるいは、
    記録された前記スペクトルデータにより示される前記第1エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状から導出された前記第1エネルギ帯域における放射線の計数の総数と、入射された前記放射性物質からの放射線の前記第1エネルギ帯域における放射線の計数の総数と、が一致する場合に、
    前記スペクトルデータにより示される前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布に基づいて前記第1演算を行う、
    請求項10に記載の放射線分析装置。
  12. 前記演算部は、
    前記照合判定における判定が不一致である場合は、前記第1値未満の前記第1エネルギ分布のエネルギ帯域における放射線の計数から、設定される減算値を減算する除去演算を行う、
    請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の放射線分析装置。
  13. 前記演算部は、
    前記イットリウムの最大エネルギ値である第2値が記録され、前記第1値は該第2値未満の値に設定され、
    前記第2値以上の第3エネルギ帯域における前記第1エネルギ分布の形状、あるいは該第1エネルギ分布により導出された前記第3エネルギ帯域における放射線の計数の総数、の少なくとも一方に基づいて、前記第3エネルギ帯域の放射線を放出する前記放射性物質としての第1放射性物質からのβ線の、前記第2値未満のエネルギ帯域における計数を導出して、該導出された計数を前記減算値として設定する、
    請求項12に記載の放射線分析装置。
  14. 前記演算部は、
    前記第1値あるいは前記イットリウムの最大エネルギ値である第2値における放射線の計数値を、前記減算値として設定し、設定された該減算値を、前記第2値未満のエネルギ帯域における放射線の各エネルギー値ごとの計数から減算する、
    請求項12に記載の放射線分析装置。
  15. 前記検出部は、
    入射される前記放射線を検出するセンサ部と、前記放射線であるβ線が透過する厚みに調整された壁部を有して前記センサ部を収容するケース部と、を備える、
    請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の放射線分析装置。
  16. 前記演算部は、前記第1演算において、
    前記第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づき導出される、前記第1エネルギ帯域におけるβ線の放射線の計数の総数に基づいて、前記第1値未満の第2エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の放射線の計数の総数を導出して、前記ストロンチウムの放射線強度を演算する、
    請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の放射線分析装置
  17. 前記第1値は、セシウム134の放射線エネルギーを超える値、に設定される、
    請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の放射線分析装置。
  18. 前記第1値は、カリウム40の放射線エネルギーを超える値、あるいは、前記第1エネルギ分布における複数のエネルギーピークの内、最もエネルギ値の高いエネルギーピークにおけるエネルギ値、に設定される、
    請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の放射線分析装置。
  19. 放射性物質から放出される放射線が入射されると入射放射線のエネルギに対応する検出信号を出力する検出部と、
    前記検出信号のエネルギ値ごとの計数を示す第1エネルギ分布を導出する分析部と、
    前記第1エネルギ分布に基づいて、前記放射性物質の放射能強度を演算する演算部と、を備え、
    前記演算部は、
    前記放射性物質としてのストロンチウムの娘核種であるイットリウムから放出される前記放射線であるβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線を演算する第1演算を行い、
    前記第1演算において、
    設定された第1値以上の第1エネルギ帯域における前記イットリウムからのβ線の前記第1エネルギ分布の形状に基づいて、前記ストロンチウムの放射線強度を演算し、
    前記検出部は、
    入射される前記放射線を検出するセンサ部と、前記放射線であるβ線が透過する厚みに調整された壁部を有して前記センサ部を収容するケース部と、を備え、
    前記検出部の前記センサ部は、一台構成である、
    放射線分析装置。
  20. 請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の放射線分析装置と、
    集塵濾紙に大気中の前記放射性物質を集塵する集塵機構部と、を備え、
    前記放射線分析装置の前記検出部は、集塵された前記集塵濾紙の前記放射性物質から放出される放射線を検出する、
    ダストモニタ装置。
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