本願の実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタについて、図を参照しながら以下に説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同じ符号を付しており、対応する各構成部のサイズと縮尺はそれぞれ独立している。例えば、構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズと縮尺が異なっている場合もある。また、アルファ線用放射性ダストモニタの構成は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるアルファ線用放射性ダストモニタを示す構成図である。本実施の形態によるアルファ線用放射性ダストモニタ100は、検出部1と、遮蔽容器2と、サンプリング部3と、ポンプ4と、表示部8と、放射線分析部20などを備えている。ポンプ4は、サンプリング部3のろ紙3aへ、放射性ダストを捕集するために設けられている。検出部1は、サンプリング部3のろ紙3aにて捕集された放射性ダストから放出される放射線を検出する。遮蔽容器2は、検出部1とサンプリング部3を格納するとともに、アルファ線用放射性ダストモニタの外部から飛来する自然放射線を遮蔽するために設けられている。
遮蔽容器2(アルファ線用放射性ダストモニタ100)の内部には、サンプリングした空気の流れる流路が形成されている。流路の一方には、ポンプ4が接続されている。このポンプ4を作動させることによって、流路の他方側に設けられた吸気口31から、外部の空気が流路内に導入される。遮蔽容器2に吸入された空気は、サンプリング部3のろ紙3aを通過し、ポンプ4を通って排気口32より排気される。
このとき、遮蔽容器2の内側に配置されているろ紙3aには、吸入された空気中に含まれる放射性ダストが捕集される。放射線分析部20は、検出部1の出力を分析するために設けられている。表示部8は、放射線分析部20の分析結果を表示するために設けられている。遮蔽容器2は、高い放射線遮蔽能力を有する材料、例えば、鉛、鉄などで構成されている。遮蔽容器2の内側には、銅などで構成されるシールドを設けてもよい。
同図に示すように、放射線分析部20は、波形整形部5、波高分析部6、放射能濃度演算部10、応答関数データベース11等を備えている。波形整形部5は、例えば、波形整形器、増幅器等で構成されている。また、波高分析部6は、例えば、多重波高分析器等で構成されている。また、放射能濃度演算部10は、例えば、単一または複数のマイクロプロセッサで構成されている。また、応答関数データベース11は、例えば、マイクロプロセッサに接続されたメモリ等で構成されている。
図2は、実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタ100を示すハードウェア構成図である。処理回路81が専用のハードウェアである場合、処理回路は例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。ディスプレイ83は、放射線分析部20の分析結果を表示するために設けられており、例えば、液晶ディスプレイ等で構成されていて、表示部8が該当する。
処理回路81がCPU(Central Processing Unit;マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータなどともいう)の場合、放射線分析部20の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ82に格納される。CPU(処理回路)は、メモリ82に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、アルファ線用放射性ダストモニタ100は、処理回路により実行される時に、各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ82を備える。
また、これらのプログラムは、放射線分析部20の手順と方法を、コンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ82とは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read‐Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
なお、放射線分析部20の各機能について、一部の専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。例えば、波形整形部については専用のハードウェアとしての処理回路でその機能を実現し、波高分析部については処理回路がメモリに格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
図3は、検出部1の構成を示している。遮蔽容器2は、内側に中空部2aを有する。検出部1は、遮蔽容器2が有する中空部2aに設置されている。サンプリング部3が有するろ紙3aに捕集された放射性ダストから放出される放射線が検出部1に入射すると、検出部1はパルス信号を出力する。本実施の形態では、検出部1(放射線検出器)として、シンチレータ1a(放射線検出部)と、光電子増倍管1b(シンチレーション検出部)を使用する。光電子増倍管1bには高圧電源1cから高電圧が供給されている。シンチレータ1aは、放射線が入射し、放射線が構成物質にエネルギーを付与することにより蛍光を放出する。光電子増倍管1bは、シンチレータ1aが発生した蛍光を、電気信号、例えばパルス信号に変換して出力する。
次に、アルファ線用放射性ダストモニタ100の動作について説明する。サンプリング部3のろ紙3aによって捕集された放射性ダストから、アルファ線が放出される。検出部1にこのアルファ線(放射線)が入射すると、シンチレータ1aにおいて、固有の波長を持つ蛍光が発生する。発生した蛍光は、光電子増倍管1bの光電面で電子に変換される。検出部1は、アルファ線がシンチレータ1aに付与したエネルギーに比例した波高のパルス信号を出力する。波形整形部5は、検出部1より出力されたパルス信号に対し、あらかじめ設定された増幅率での増幅と、後段の回路に適した形への整形などを行う。
波高分析部6は、波形整形部5の出力を基に、波高分析を行う。波形整形部5によって増幅されたパルス信号のうち、例えば、ピーク値が所定値以上のパルス信号について、このピーク値をAD変換(Analog to Digital 変換)する。波高分析部6は、AD変換をしたピーク値に相当するチャンネルに対して、1カウント加算する。この動作を各パルス信号に対して施すことにより、波高分析部6は、パルス信号の波高分布を得る。抽出されたパルス信号の波高分布は、波高分析部6が有するメモリに格納される。
波高分析部6の出力は、放射能濃度演算部10に入力される。放射能濃度演算部10では、波高分析部6の出力を基にして、放射能分析を実施する。一般に、放射能分析では放射性核種が放出する放射線のエネルギーを活用している。放射性核種が複数の放射線を放出する場合は、放射線の放出数の比率が放射性核種に固有であることを利用している。すなわち、測定された放射線の波高分布から、エネルギー毎に放出される放射線の数を算出する。
図4は、放射性物質の同定に関わる説明図のうち、ラドン(トロン)の娘核種に関するアルファ線スペクトルデータを表しているイメージ図である。このアルファ線スペクトルデータにおいて、横軸は波高値で値付けされたエネルギー(チャンネル番号)を表示したものであり、縦軸はチャンネルに対応した計数値を対数表示したものである。Po-214のスペクトルデータにおけるテール、Po-212のスペクトルデータにおけるテール、Po-218のスペクトルデータにおけるテール、及び、Bi-212のスペクトルデータにおけるテールは、互いに重なっている。
さらに、Po-214のテール、Po-212のテール、Po-218のテール、およびBi-212のテールは、ウラン(U-238とU-234)とプルトニウム(Pu-239)の測定対象領域に重なってきている。すなわち、測定対象領域の計数に、測定対象外となるラドン(トロン)の娘核種の計数が含まれた状態となっている。よって、このラドン(トロン)の娘核種の影響を除去することにより測定対象の正確な測定ができる。
図5は、単一エネルギーのアルファ線を検出部1で測定した場合に得られる波高分布の例を示す模式図である。同図に示すように、波高分析部6が抽出した波高分布は、ある核種に関するアルファ線の垂直入射に相当するエネルギー値で急激に立ち上がったピークを有する。さらに、この波高分布は、低エネルギー側にテールを持つ連続分布として検出される。エネルギー分解能を向上させる目的で、実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタ100では、アルファ線の検出効率をあらかじめ算出する。
この検出効率は、あるエネルギーのアルファ線が検出部1に入射した場合における波高分布にて検出される確率を指している。そのうえで、検出された計数値を、検出効率、及び、検出時間で除することで測定対象から単位時間あたりに放出される放射性ダスト由来のアルファ線の本数が得られる。さらに、得られたアルファ線の本数を放出分岐比で除することで、測定対象に含まれる放射性ダストの放射能強度が得られる。
上記のように放射能分析する場合、分析可能な放射線の最小エネルギーは、放射線検出器のエネルギー分解能に左右される。エネルギー分解能が低いと、波高分布にて現れる放射線のピーク幅が広がる。このとき、複数の放射線ピークが重なり、1つのピークとして検出され、結果として分析精度が低下する。そこで、本実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタでは、エネルギー分解能を向上させる目的で、放射能濃度演算部10において、信号復元演算を利用する。
実施の形態に関わる放射能濃度演算部10は、放射能分析する際に、信号復元演算を実施する。信号復元演算の例として、逆問題解法の一種であるアンフォールディング法が知られている。アンフォールディング法とは、あらかじめ測定対象である放射線に対して、放射線検出器の応答関数を一定のエネルギー間隔で算出するとともに、算出した応答関数を用いたアンフォールディング演算を行い、検出器に入射した放射線のエネルギースペクトルを算出する方法である。
アンフォールディング法は、応答関数を算出するために、検出器と測定対象の位置関係、およびその間にある物体の密度等が不変であることが望ましい。アルファ線用放射性ダストモニタ100においては、検出器と測定対象(ろ紙3a)との位置関係が固定であり、検出器と測定対象(ろ紙3a)の間にある空気も密度が不変であると考えられる。このため、アルファ線用放射性ダストモニタは、信号復元演算を適用し、解析する装置として非常に適している。
図6は、実施の形態に関わる、数式(1)から数式(4)を示している。応答関数データベース11は、検出部1の種類、検出部1とろ紙3a(サンプリング部3)との位置関係、および検出部1に入射する放射線のエネルギー、に対応した応答関数Kを格納している。放射能濃度演算部10は、応答関数データベース11から呼び出した応答関数Kを用いて、波高分析部6にて抽出された波高分布Mに対し、信号復元演算を実施し、放射能分布Sを算出する。応答関数Kは、検出部1と放射線の相互作用を表している。
次に、同図を参照して、信号復元演算について詳細に説明する。放射線は、それぞれ固有のエネルギーを持っている。検出部1に入射した放射線は、検出部1と様々な相互作用を起こす過程でエネルギー損失を起こす。その際、検出部1に全エネルギーを落とさずに検出部の外へ出て行く放射線が存在するため、測定結果は、波高分布を持つことになる。すなわち、応答関数K、波高分布M、および放射能分布Sの関係は、数式(1)で表されることになる。ゆえに、検出部1に入射した放射能分布Sを求める場合は、数式(1)の逆変換を、数式(2)のように行う。
数式(2)を解くことにより、波高分布Mから、放射線と検出部1との相互作用などによる影響が取り除かれる。また、放射線のエネルギー情報のみを含む放射能分布Sの情報(エネルギースペクトル)を抽出することもできる。なお、入射する放射性核種がN種類あった場合、抽出される波高分布Mは、数式(3)のように放射性核種毎の放射能強度を加重積算した結果に相当する。なお、放射能分布Sを算出する信号復元演算には、アンフォールディング法等の方法を用いることが出来る。
放射能濃度演算部10では、上記方法により、放射性核種毎の放射能強度が算出される。各放射性核種の放射能濃度Wは、各放射性核種の放射線放出率R、ポンプ4の流量Q、放射性核種のダスト捕集時間Tを用いることにより、数式(4)のように算出できる。通常、検出部1によって検出された放射線には、監視対象の放射性ダストからの計数の他に、自然放射性核種による計数が含まれている。したがって、波高分析部6で求められた波高分布Mは、監視対象の放射性ダストに含まれる各核種(アルファ線)の影響の和となっている。
図7は、アルファ線用放射性ダストモニタ100が放射能濃度を算出する手順を示しているフロー図である。まず、サンプリング部3のろ紙3aによって、放射性ダストを捕集する(ステップST01)。放射性ダストからは、アルファ線が放出されている。このアルファ線(放射線)が検出部1に入射すると、シンチレータ1aにおいて、固有の波長を持つ蛍光が発生する。発生した蛍光は、光電子増倍管1bの光電面で電子に変換される。検出部1は、アルファ線がシンチレータ1aに付与したエネルギーに比例した波高のパルス信号を検出する(ステップST02)。波形整形部5は、検出部1より出力されたパルス信号に対し、あらかじめ設定された増幅率での増幅と、後段の回路に適した形への整形などを行う(ステップST03)。
波高分析部6は、波形整形部5の出力を基に、波高分析を行う。波形整形部5によって増幅されたパルス信号のうち、例えば、ピーク値が所定値以上のパルス信号について、このピーク値をAD変換(Analog to Digital 変換)する。波高分析部6は、AD変換をしたピーク値に相当するチャンネルに対して、1カウント加算する。この動作を各パルス信号に対して施すことにより、波高分析部6は、パルス信号の波高分布を得る(ステップST04)。抽出されたパルス信号の波高分布は、波高分析部6が有するメモリに格納される。波高分析部6の出力は、放射能濃度演算部10に入力される。放射能濃度演算部10では、波高分析部6の出力を基にして、放射能分析を実施する。
放射能分析では放射性核種が放出する放射線のエネルギーを活用している。放射性核種が複数の放射線を放出する場合は、放射線の放出数の比率が放射性核種に固有であることを利用している。すなわち、測定された放射線の波高分布から、エネルギー毎に放出される放射線の数を算出する。具体的には、放射能濃度演算部10は、波高分析部6で抽出された波高分布に対して、応答関数データベース11に保管されている応答関数Kを用いて(ステップST05)、信号復元演算を実施する(ステップST06)。検出部に入射した放射線のエネルギースペクトルを抽出し、この抽出されたエネルギースペクトルを基に検出部に入射した放射線の放射能濃度を算出する(ステップST07)。
表示部8は、放射能濃度演算部10が算出した放射能濃度を表示する(ステップST08)。本実施の形態においては、放射能濃度演算部10にて、波高分析部6で求められた波高分布Mから信号復元演算により放射能分布Sを算出している。この結果、各核種の影響を分離することができるため、高精度に検出された放射線に対応する放射性核種の同定を実施し、放射性核種毎に放射能濃度を算出することができる。
本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、測定点の空気をサンプリングして空気中に含まれる放射性ダストを、ろ紙に捕集するサンプリング部と、サンプリング部に捕集された放射性ダストから放出された放射線を検出しパルス信号を出力する放射線の検出部と、検出部に入射するバックグラウンド放射線を遮蔽・減衰させるための遮蔽容器と、検出部から出力されたパルス信号を後段の回路に適した形に増幅、整形等をする波形整形部と、パルス信号の波高を測定し、パルス信号をその波高値に対応するチャンネルに割り当てて計数して波高分布としてメモリに格納する波高分析部と、波高分析結果を基に信号復元演算を実施し、放射能濃度を求める放射能濃度演算部と、信号復元演算に用いる応答関数を保管する応答関数データベースと、演算結果を表示する表示部とを有することを特徴とする。
また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、放射能濃度演算部における信号復元演算として、アンフォールディング演算を適用していることを特徴とする。本方法によれば自然放射性核種の影響をリアルタイムに取り除くことができるため、放射性ダストの放射能濃度のリアルタイム測定ができる。放射能分布から放射能濃度を算出しているため、波高分布にウィンドウをかけて対象放射性核種の計数を求める方法に比べて高精度な放射能濃度測定を実現できる。
また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、1つの検出部で測定できるため、他核種の影響を補正するために別の検出器を使用する必要がなく、構成が簡素であり、コンパクトかつ軽量な放射性ダストモニタを実現できる。また、本方法は、波高分布すべてのデータを用いて放射能濃度を算出するため、波高分布にウィンドウをかけて計数を求める方法に比べ、高効率な測定であるため、短時間で低放射能測定を実現できる。
したがって、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、内側にろ紙が配置されている遮蔽容器と、前記遮蔽容器の内側に配置されている検出部と、前記遮蔽容器に空気を流入するポンプと、前記検出部から出力されたパルス信号を増幅する波形整形部と、前記波形整形部で増幅されたパルス信号から波高分布を抽出する波高分析部と、前記検出部と前記ろ紙との位置関係に対応した応答関数を保管する応答関数データベースと、前記波高分析部で抽出された波高分布に対して、前記応答関数を用いた信号復元演算を実施して放射能分布を求め、この求められた放射能分布と、放射線放出率と、流量と、ダスト捕集時間とから前記遮蔽容器に流入した空気の放射能濃度を算出する放射能濃度演算部と、前記放射能濃度演算部が算出した放射能濃度を表示する表示部と、を備えているものである。
実施の形態2.
図8は、実施の形態2によるアルファ線用放射性ダストモニタの構成図である。本実施の形態によるアルファ線用放射性ダストモニタ100は、検出部1と、遮蔽容器2と、サンプリング部3と、ポンプ4と、表示部8と、放射線分析部20などを備えている。ポンプ4は、サンプリング部3のろ紙3aへ、放射性ダストを捕集するために設けられている。検出部1は、サンプリング部3のろ紙3aにて捕集された放射性ダストから放出されたアルファ線を検出する。
遮蔽容器2は、検出部1とサンプリング部3を格納するとともに、自然放射線を遮蔽するために設けられている。放射線分析部20は、検出部1の出力を分析するために設けられている。表示部8は、放射線分析部20の分析結果を表示するために設けられており、例えば、液晶ディスプレイ等で構成されている。遮蔽容器2は、高い放射線遮蔽能力を有する材料、例えば、鉛、鉄などで構成されている。遮蔽容器2の内側には、銅などで構成されるシールドを設けてもよい。
同図に示すように、放射線分析部20は、波形整形部5、波高分析部6、放射能濃度演算部10、応答関数データベース11等を備えている。波形整形部5は、例えば、波形整形器、増幅器等で構成されている。また、波高分析部6は、例えば、多重波高分析器等で構成されている。また、放射能濃度演算部10は、例えば、単一または複数のマイクロプロセッサで構成されている。また、応答関数データベース11は、例えばマイクロプロセッサに接続されたメモリ等で構成されている。
本実施の形態では、サンプリングした空気の流れる流路の途中に、流量計40を備えている。放射性ダストの放射能濃度を精度よく測定するためには、吸引した空気の量を正確に測定する必要がある。吸引した空気の量は、一般的に、ポンプ4の流量Qと放射性核種のダスト捕集時間Tの積として求められる。よって吸引した空気の量の精度は、ポンプ4の流量Qに依存する。
ポンプ4は、ターボ型、容積型、特殊型などの種類が知られている。ポンプ4の特徴は、種類によって大きく異なる。また、ポンプ4は、負荷によって流量が変動し、定量性が低い場合がある。ポンプ4の流量Qが変動している場合に、流量Qを固定値として放射能濃度を算出すると、放射能濃度の精度が大きく低下する。
このため、本実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、空気をサンプリングする流路の途中に流量計40を備え、放射能濃度演算部にて流量計の測定データを基に空気の流量を補正して放射能濃度を算出することを特徴とする。流量計40を備えていて、測定時間中の流量は、放射能濃度演算部10に出力する。放射能濃度演算部10は、そのデータを基に流量を補正して放射能濃度を算出する。このことで、ポンプ4の流量変動による影響を取り除かれ、高精度な放射能濃度測定が実現できる。
また、本実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、ろ紙を有するサンプリング部と、内側に中空部を有する遮蔽容器と、遮蔽容器が有する中空部に設置され、サンプリング部が有するろ紙に捕集された放射性物質から放出される放射線が入射するとパルス信号を出力する検出部と、検出部から出力されたパルス信号を増幅する波形整形部と、波形整形部で増幅されたパルス信号から波高分布を抽出する波高分析部と、信号復元演算に用いる応答関数を保管する応答関数データベースと、波高分析部で抽出された波高分布に対して、応答関数データベースに保管されている応答関数を用いて、信号復元演算を実施して、検出部に入射した放射線のエネルギースペクトルを抽出し、この抽出されたエネルギースペクトルを基に検出部に入射した放射線の放射能濃度を算出する放射能濃度演算部と、放射能濃度演算部が算出した放射能濃度を表示する表示部と、を備えている。
実施の形態3.
図9は、実施の形態3によるアルファ線用放射性ダストモニタの構成図である。本実施の形態によるアルファ線用放射性ダストモニタ100は、検出部1と、遮蔽容器2と、サンプリング部3と、ポンプ4と、表示部8と、放射線分析部20などを備えている。ポンプ4は、サンプリング部3のろ紙3aへ、放射性ダストを捕集するために設けられている。検出部1は、サンプリング部3のろ紙3aにて捕集された放射性ダストから放出されたアルファ線を検出する。
遮蔽容器2は、検出部1とサンプリング部3を格納するとともに、自然放射線を遮蔽するために設けられている。放射線分析部20は、検出部1の出力を分析するために設けられている。表示部8は、放射線分析部20の分析結果を表示するために設けられており、例えば、液晶ディスプレイ等で構成されている。遮蔽容器2は、高い放射線遮蔽能力を有する材料、例えば、鉛、鉄などで構成されている。遮蔽容器2の内側には、銅などで構成されるシールドを設けてもよい。
同図に示すように、放射線分析部20は、波形整形部5、波高分析部6、放射能濃度演算部10、応答関数データベース11等を備えている。波形整形部5は、例えば、波形整形器、増幅器等で構成されている。また、波高分析部6は、例えば、多重波高分析器等で構成されている。また、放射能濃度演算部10は、例えば、単一または複数のマイクロプロセッサで構成されている。また、応答関数データベース11は、例えばマイクロプロセッサに接続されたメモリ等で構成されている。
本実施の形態では、検出部1として、放射線検出器とキャリア収集部を含むものを使用する。放射線検出器は、放射線が入射しエネルギーを付与することにより電荷キャリアを発生する。キャリア収集部は、発生した電荷キャリアを収集する。本性質を有する検出部として、例えば、検出部1に半導体検出器等を使用することができる。以下では検出部として半導体検出器を使用する場合の例について説明する。その他の構成については前実施の形態と同様である。
図10に示すように、半導体検出器50は、キャリア収集部として、接合された陽極51と陰極52とを有する。陽極51と陰極52は、それぞれ、n型半導体とp型半導体で構成されている。陽極51及び陰極52を構成する半導体として、例えば、Ge、Si、CdTe、CZT(CdZnTe)などを用いることができる。陽極51と陰極52との間に逆バイアス電圧を印加すると、陽極51と陰極52との間に、キャリア発生部となる空乏層53が生じる。
サンプリング部3のろ紙3aに捕集された放射性ダストから放出された放射線が、半導体検出器50の空乏層53に入射すると、放射線の電離作用により電子と正孔のペアが生じる。発生した電子及び正孔は、逆バイアス電圧によって、それぞれ陽極51と陰極52に移動して収集される。そして、放射線が空乏層53に付与したエネルギーに比例した波高のパルス信号が出力される。以降の動作は前実施の形態と同様である。
本実施の形態のように、放射線検出器に半導体検出器を適用することにより、検出器に対し高電圧を印加する必要がなくなるため、装置の安全性が向上する。また放射線検出器として、一般にエネルギー分解能に優れた半導体検出器を使用することによって、信号復元演算によるエネルギー分解能を高めることができるので放射線の分析精度をさらに向上させることができる。したがって、本実施の形態に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、信号復元演算に加え検出部として、半導体検出器を適用していることを特徴とする。
実施の形態4.
図11は、実施の形態4によるアルファ線用放射性ダストモニタの構成図である。本実施の形態によるアルファ線用放射性ダストモニタ100は、検出部1と、遮蔽容器2と、サンプリング部3と、ポンプ4と、表示部8と、放射線分析部20などを備えている。ポンプ4は、サンプリング部3のろ紙3aへ放射性ダストを捕集するために設けられている。検出部1は、サンプリング部3のろ紙3aにて捕集された放射性ダストから放出されたアルファ線を検出する。
遮蔽容器2は、検出部1とサンプリング部3を格納するとともに、自然放射線を遮蔽するために設けられている。放射線分析部20は、検出部1の出力を分析するために設けられている。表示部8は、放射線分析部20の分析結果を表示するために設けられており、例えば、液晶ディスプレイ等で構成されている。遮蔽容器2は、高い放射線遮蔽能力を有する材料、例えば、鉛、鉄などで構成されている。遮蔽容器2の内側には、銅などで構成されるシールドを設けてもよい。
同図に示すように、放射線分析部20は、波形整形部5、波高分析部6、放射能濃度演算部10、応答関数データベース11、テール傾き演算部60、最適応答関数決定部70等を備えている。波形整形部5は、例えば、波形整形器、増幅器等で構成されている。また、波高分析部6は、例えば、多重波高分析器等で構成されている。また、放射能濃度演算部10は、例えば、単一または複数のマイクロプロセッサで構成されている。
また、応答関数データベース11は、例えば、マイクロプロセッサに接続されたメモリ等で構成されている。本実施の形態では、放射線分析部20は、テール傾き演算部60、最適応答関数決定部70を備えている。高精度な測定を実現するためには、実測の波高分布と応答関数データベース11に格納している応答関数の差異を可能な限り小さくする必要がある。テール傾き演算部60、および最適応答関数決定部70は、処理回路81が実行する。
図12は、放射性物質の同定に関わる説明図のうち、ラドン(トロン)の娘核種に関するアルファ線スペクトルデータを表しているイメージ図である。このアルファ線スペクトルデータにおいて、横軸はエネルギー(チャンネル番号)を表示したものであり、縦軸はチャンネルに対応した計数値を対数表示したものである。Po-214のスペクトルデータにおけるテール、Po-212のスペクトルデータにおけるテール、Po-218のスペクトルデータにおけるテール、及びBi-212のスペクトルデータにおけるテールを示している。
実線のアルファ線スペクトルと点線のアルファ線スペクトルは、異なる時点での測定イメージであり、異なる時点での低エネルギー側のテールの傾きには違いが見られる。これらの違いは、ラドン(トロン)由来のダストが捕集される、ろ紙の深さに起因する。ラドン(トロン)由来のダストが、ろ紙の表面で捕集されるとテールの傾きは大きくなり、ろ紙の内部で捕集されるとテールの傾きは小さくなる。
テール傾き演算部60では、このアルファ線スペクトルにおけるテールの傾きを求め、このテールの傾き情報を最適応答関数決定部70に送る。最適応答関数決定部70ではテールの傾きからラドン(トロン)由来のダストの捕集深さを推定し、応答関数データベース11に保管されている各深さの応答関数の中から最適なものを決定する。放射能濃度演算部10は、最適応答関数決定部70で決定された応答関数を基に放射能濃度を演算する。
すなわち、応答関数データベース11に保管する各深さの応答関数について、深さの種類を細かく準備すれば、より最適な応答関数を選択することが可能となる。したがって、本実施の形態に関わる放射性ダストモニタは、テールの傾きを求めるテール傾き演算部と、テールの傾きからラドン(トロン)由来のダストの捕集深さを求め、捕集深さに応じて最適な応答関数を求める最適応答関数決定部を有することを特徴とする。
図13は、アルファ線用放射性ダストモニタ100が放射能濃度を算出する手順を示しているフロー図である。まず、サンプリング部3のろ紙3aによって、放射性ダストを捕集する(ステップST01)。放射性ダストからは、アルファ線が放出されている。このアルファ線(放射線)が検出部1に入射すると、シンチレータ1aにおいて、固有の波長を持つ蛍光が発生する。発生した蛍光は、光電子増倍管1bの光電面で電子に変換される。検出部1は、アルファ線がシンチレータ1aに付与したエネルギーに比例した波高のパルス信号を検出する(ステップST02)。波形整形部5は、検出部1より出力されたパルス信号に対し、あらかじめ設定された増幅率での増幅と、後段の回路に適した形への整形などを行う(ステップST03)。
波高分析部6は、波形整形部5の出力を基に、波高分析を行う。波形整形部5によって増幅されたパルス信号のうち、例えば、ピーク値が所定値以上のパルス信号について、このピーク値をAD変換(Analog to Digital 変換)する。波高分析部6は、AD変換をしたピーク値に相当するチャンネルに対して、1カウント加算する。この動作を各パルス信号に対して施すことにより、波高分析部6は、パルス信号の波高分布を得る(ステップST04)。抽出されたパルス信号の波高分布は、波高分析部6が有するメモリに格納される。波高分析部6の出力は、放射能濃度演算部10に入力される。放射能濃度演算部10では、波高分析部6の出力を基にして、放射能分析を実施する。
放射能分析では放射性核種が放出する放射線のエネルギーを活用している。放射性核種が複数の放射線を放出する場合は、放射線の放出数の比率が放射性核種に固有であることを利用している。すなわち、測定された放射線の波高分布から、エネルギー毎に放出される放射線の数を算出する。具体的には、放射能濃度演算部10は、波高分析部6で抽出された波高分布に対して、応答関数データベース11に保管されている応答関数Kを用いて(ステップST05)、信号復元演算を実施する(ステップST06)。検出部に入射した放射線のエネルギースペクトルを抽出し、この抽出されたエネルギースペクトルを基に検出部に入射した放射線の放射能濃度を算出する(ステップST07)。
このとき、テール傾き演算部60では、このアルファ線スペクトルにおけるテールの傾きを求め、このテールの傾き情報を最適応答関数決定部70に送る(ステップST10)。最適応答関数決定部70ではテールの傾きからラドン(トロン)由来のダストの捕集深さを推定し、応答関数データベース11に保管されている各深さの応答関数の中から最適なものを決定する(ステップST11)。表示部8は、放射能濃度演算部10が算出した放射能濃度を表示する(ステップST08)。本実施の形態においては、放射能濃度演算部10にて、波高分析部6で求められた波高分布Mから信号復元演算により放射能分布Sを算出している。この結果、各核種の影響を分離することができるため、高精度に検出された放射線に対応する放射性核種の同定を実施し、放射性核種毎に放射能濃度を算出することができる。
本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、測定点の空気をサンプリングして空気中に含まれる放射性ダストを吸着材に捕集するサンプリング部と、サンプリング部に捕集された放射性ダストから放出されるアルファ線を検出しパルス信号を出力する放射線の検出部と、検出部に入射するバックグラウンド放射線を遮蔽・減衰させるための遮蔽容器と、検出部から出力されたパルス信号を後段の回路に適した形に増幅、整形等をする波形整形部と、パルス信号の波高を測定し、パルス信号をその波高値に対応するチャンネルに割り当てて計数して波高分布としてメモリに格納する波高分析部と、演算結果を表示する表示部を備えた放射性ダストモニタにおいて、波高分析結果を基に信号復元演算を実施し、放射能濃度を求める放射能濃度演算部と、信号復元演算に用いる応答関数を保管する応答関数データベースとを設けることにより、波高分布に対し信号復元演算を適用して、放射能分析を実施することにより放射性ダストの放射能濃度を得ることが出来るようになる。本方法により、他核種の影響の取り除き等の課題を解決できる。
また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタでは、前記応答関数データベースに保管されている応答関数は、前記検出部と前記ろ紙との位置関係に対応していることを特徴とするものである。また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタでは、前記放射能濃度演算部は、アンフォールディング法を用いて信号復元演算を行うことを特徴とするものである。また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタでは、前記検出部は、シンチレータを有していることを特徴とするものである。
また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタでは、前記検出部は、半導体検出器を有していることを特徴とするものである。また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、空気をサンプリングする流路に設置された流量計をさらに備えており、前記放射能濃度演算部は、放射能濃度を算出する際に、この流量計の測定データを基に空気の流量を補正することを特徴とするものである。
また、本願に関わるアルファ線用放射性ダストモニタは、前記波高分析部が抽出した波高分布に対して、テールの傾きを求めるテール傾き演算部と、前記テール傾き演算部が求めたテールの傾きを基にして、ダストが捕集されたろ紙の深さを推定し、最適な応答関数を決定する最適応答関数決定部と、をさらに備えていることを特徴とするものである。以上の説明では、本願の実施の形態について説明したが、本願は前記実施の形態に限定されるものではなく、種々の処理変更を行うことが可能である。
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。