JP3734967B2 - パネル間の面出し部材及び該部材を用いた地下壁排水構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパネル間の面出し部材及び該部材を用いた地下壁排水構造に関し、さらに詳しくは、例えば、コンクリート躯体による地下壁によって地下空間を画定した地下構造において、地下の土の界面から染み出してくる地下水がコンクリート躯体を通って屋内側に流出するのを、コンクリート躯体の屋内側に排水パネルを配置することにより防止するようにした地下壁排水構造などにおいて、基板としてのコンクリート躯体に排水パネルの配置するときの、面出し(すなわち、複数のパネル間の平準化)を容易に行うことができるようにしたパネル間の面出し部材、及び該部材を用いた地下壁排水構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリート躯体による地下壁によって地下空間を画定された地下構造などにおいては、地下の土の界面から染みだしてくる地下水がコンクリート躯体のクラックなどを通って屋内側に流出する現象が生じる。
このため従来は、二重壁構造によりコンクリート躯体と屋内内壁との間に排水用空間を設け、コンクリート躯体を通って屋内側に流出する地下水を前記排水用空間に集め、そこから下方に流出して排水するようにした地下壁排水構造が用いられてきた。
【0003】
しかし、上述のごとき地下壁排水構造においては、コンクリート躯体と屋内内壁との間の排水用空間を構成する二重壁構造が必要であり、このため施工法が複雑なものとなり、また排水用空間というデッドスペースが生じ、空間の有効利用率が低下する。
本出願人は、従来の地下壁排水構造における上述のような問題点を解決し、大きいデッドスペースを必要とすることなく地下水の排水が行われるようにする地下壁排水構造を提供することを目的として、地下壁をなすコンクリート躯体の屋内側壁面に、一方の面に凹状の排水用縦溝が形成された独立気泡の発泡材料からなるパネル本体の前記一方の面に透水性シートが取り付けられている地下壁用排水パネルが、前記透水性シート側の面がコンクリート躯体の屋内側壁面に接する状態で装着されていることを特徴とする地下壁排水構造を提案した(実公平8−6117号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、例えば上記のような改良された地下壁排水構造において、コンクリート躯体の表面に排水パネルを配置するときのように、基板上に複数枚のパネルを配置する場合に、各パネル同志の面出しを容易に行うことができるようにしたパネル間の面出し部材を提供するものである。
本発明は、また、上記の地下壁排水構造をさらに改良しようとするものであり、隣接する排水パネル間の継ぎ目部分である接合部から地下水が屋内側に染み出していくことをより確実に防止することができ、かつ、施工が容易な地下壁排水構造を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明によるパネル間の面出し部材は、基板上に複数枚のパネルを一定の間隔(隙間)を置いて配置する場合に用いるパネル間の面出し部材であって、該面出し部材は、パネル下面支持部材と該パネル下面支持部材に螺合するパネル上面圧接部材とから構成され、前記パネル下面支持部材は、隣接するパネルとパネルとの間隔(隙間)に入り込まない大きさとされた基部と、前記基部に立設された支柱であって、前記間隔を通過できる太さであり、面出ししようとするパネルの厚みよりも短い長さであり、かつ、その先端にはネジが形成された支柱とを有し、前記パネル上面圧接部材は、裏面が平坦面でありかつ前記隣接するパネルとパネルとの間隔(隙間)に入り込まない大きさであるキャップ部材と、該キャップ部材の裏面から下方に垂設するネジ杆とを有していることを特徴とする。
【0006】
広い面積の基板に対して、複数枚のパネルを一定の間隔(隙間)を置いて配置する場合は、各パネルの側壁面を密着させた状態で配置する場合と比較して、すべてのパネルの面出しを行うこと、すなちわ、すべてのパネルの表面を均一な平坦面として配置することは、容易でない。特に、基板とパネル裏面との接着が不十分な場合や、バネルに反りや捻れが生じやすいような場合には、そうである。
【0007】
本発明によるパネル間の面出し部材は、一定の間隔を置いて配置される2枚、3枚、あるいは4枚のパネル同志の互いに近接する角部の裏面側に、一個の前記下面支持部材の基部の上に各角部が同時に載るようにして配置される。そして、その状態で、パネル上面圧接部材が下面支持部材の支柱にねじ込まれる。反りや捻れにより、各隣接するパネルの角部同志の高さにズレがあっても、パネル上面圧接部材であるキャップ部材の裏面により、各角部は次第に押し下げられていき、最後には、各パネルの表面は均一な平坦面とされ、面出しされる。同じことが面出しを必要されるすべてのパネル角部集合部で行われ、多数枚のパネルは全体として基板上で平準化される。
【0008】
基板と各パネルとの接着が堅固となり、剥離などが生じなくなった時点で、パネル上面圧接部材を取り外す。それにより、基板上にパネル全面が平坦面とされた構造体が得られる。
面出ししようとするパネルが、パネル本体とその表面に積層される表面材とからなり、パネル本体の周囲の側壁面における該表面材を積層した側には切り込みが形成されているようなパネルに対して面出しを行う場合には、パネル下面支持部材の支柱に、該切り込みに入り込むことのできかつ上面は平坦面とされた第2の基部が形成されたものを用いることは効果的である。その際に、該第2の基部の上面の高さは、面出しされた時点で、表面材の裏面が衝接する高さとされる。
【0009】
好ましい態様において、前記第2の基部の上面には、前記隣接するパネルとパネルとの間隔(隙間)に入り込む大きさの突起が形成される。このような突起を設けることにより、隣接するパネルを一定の間隔をおいて保持することが容易化するとともに、隣接するパネルを一定の間隔をおいて連結するための連結具を用いるような場合に、その連結具の位置決めを行うことも可能となる。
【0010】
本発明は、また、上記のパネル間の面出し部材を用いて構築された構築物の一例として、前記基板が地下壁をなすコンクリート躯体であり、前記パネルが一方の面に凹状の排水用溝が形成された発泡材料からなるパネル本体に、前記排水用溝が形成された側の面に透水性シートが取り付けられている排水パネルであり、前記地下壁をなすコンクリート躯体の屋内面側に、前記複数の排水パネルが、適宜の連結具を介して、前記コンクリート躯体の屋内面側にその透水性シートを接するようにして、かつ、隣接する排水パネルの対向する側壁面と側壁面の間に一定の間隔を置いた状態で配置されており、隣接する排水パネルの角部が集まる位置には、前記面出し部材のパネル下面支持部材が配置され、前記パネル上面圧接部材により各排水パネルの角部近傍を表面側から同時に押圧して、各排水パネル同志の面出しが行われて、隣接する排水パネル同志がほぼ同一平面となるように調整されていることを特徴とする地下壁排水構造、を開示する。
【0011】
通常、上記のような地下壁排水構造を作るには、セパレータなどを用いて2枚の型枠を地中に併設してコンクリート打設用の空間を形成し、そこにコンクリートが打設されてコンクリート躯体が形成される。その際に、型枠の一方として、前記のような排水パネルを複数枚平面的に配置したものが用いられ、打設コンクリートの固化により、排水パネルはコンクリート躯体と一体化される。
【0012】
型枠を地中に併設する段階で、隣接する排水パネルの対向する側壁面と側壁面の間に一定の間隔を置いた状態で複数の排水パネルを配置し保持すること、及び、複数の排水パネルの表面をほぼ同じ面に面出しすることは容易でなく、また、間隔を保持するために用いる適宜の連結具を所定の位置に確保しておくことも容易でない。このことは、コンクリート打設後もコンクリートが固化する間では同様である。
【0013】
そのような不都合は、前記したパネル間の面出し部材を、例えば、型枠の組み立て時に用い、前記のようにして複数の排水パネルを組み付けることにより容易に解消される。打設したコンクリートが固化して排水パネルとコンクリート躯体とが一体化した後に、前記パネル上面圧接部材は取り外し、好ましくはその位置にシーリング材を充填することにより、本発明による地下壁排水構造は完成する。
【0014】
好ましい態様における地下壁排水構造においては、前記排水パネルは表面材を積層しており、前記パネル本体の周囲の側壁面における該表面材を積層した側には切り込みが形成されており、前記切り込み内に、前記パネル下面支持部材の支柱に形成した第2の基部が入り込んでおり、その平坦な上面で、前記表面材の裏面を支持していることを特徴とする。
【0015】
本発明による地下壁排水構造において、隣接する排水パネルをその対向する側壁面と側壁面の間に一定の間隔を置いた状態で配置するのに用いる前記連結具の形状に特に制限はないが、少なくとも先端縁をU字状の折り返し部とした長尺状の仕切り板を備えたものを用いることは好ましい態様であり、その場合には、前記隣接する排水パネル同志は、一方の排水パネルの側壁面が前記連結具の前記折り返し部と反対側において仕切り板に接するようにして配置され、他方の排水パネルの側壁面は前記連結具の前記折り返し部に衝接して配置される。それにより、隣接する排水パネルの対向する側壁面と側壁面の間には、U字状の折り返し部により屋内側は閉塞された連続した空間が形成され、該空間は通水路として機能する。
【0016】
本発明による地下壁排水構造では、地下壁をなすコンクリート躯体から屋内側に染み出てくる地下水は、透水性シートを透過してパネル本体に形成した凹状の排水用溝に入り込み、そこから、前記した屋内側は閉鎖された連続した空間内に流入し、そこから、所定の排水路に流出する。そのために、隣接する排水パネル間の継ぎ目部分である接合部から地下水が屋内側に染み出していくことを確実に防止することができる。
【0017】
好ましい態様において、前記排水パネルは表面材を積層しており、前記パネル本体の周囲の側壁面における該表面材を積層した側には切り込みが形成されており、前記切り込み内に、前記パネル下面支持部材の支柱に形成した第2の基部が入り込んでおり、その平坦な上面で、前記表面材の裏面を支持していることを特徴とする。
前記表面材は任意であるが、不燃性板部材を接着などの手段によって積層することは好ましい。不燃性板部材としては、石膏ボード、繊維強化セメント板、金属板などが挙げられ、これらを複合した複合板も使用することもできる。
【0018】
本発明による排水パネルのパネル本体に使用する発泡材料に特に制限はないが、独立気泡で吸水量が小さい理由から、スチレン系樹脂の発泡体が好ましい。スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体の単独重合体はもちろん、これらの共重合体であってもよい。スチレン系単量体にはスチレンのほか、メチルスチレン、エチルスチレンなどのスチレン誘導体を含んでもよい。また、共重合体はスチレン系単量体を50重量%以上含み、その余が他の単量体からなるものであってもよく、他の単量体としては、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、無水マレイン酸などを挙げることができる。その他、スチレン系樹脂は、さらに単独重合体又は共重合体に他の樹脂を混合して得られたブレンド物をも含んでいる。他の樹脂としては、ポリエチレン、合成ゴムなどを挙げることができる。ブレンド物は、その中でポリスチレンが50重量%以上を占めていることが好ましい。
【0019】
本発明による透水性シートとしては、透水性を有する素材であれば使用することが可能であるが、特に、耐アルカリ性のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は、レーヨンなどの不織布により構成される場合には、コンクリート躯体より屋内側へ流出する地下水に対して十分な耐腐食性を付与できるので、長期にわたりその目的を達成することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明によるパネル間の面出し部材の一形態を示す斜視図であり、図2はそれを用いて基板に貼り付けられたパネルの面出しを行う態様を説明する図である。
【0021】
この面出し部材70は、方形状の底板71とそこに垂設される支柱73とからなるパネル下面支持部材としてのベース部材77と、パネル上面圧接部材としてのキャップ部材78とから構成され、前記支柱73の先端にはネジ穴76が切られており、キャップ部材78の裏面には該ネジ穴76に螺合するネジ杆79が垂設されている。また、キャップ部材78の裏面は平坦面とされている。
なお、前記ベース部材77及びキャップ部材78の大きさは、後記するように、隣接するパネル30aとパネル30aとの間隔(隙間)Spに入り込まない大きさであり、支柱73は前記間隔(隙間)Spを通過できる太さであるとともに、面出ししようとするパネル30の厚みよりも短い長さとされている。
【0022】
図2において、20aは例えば石膏ボードや合板のような板状の基板であり、該基板20aの表面に合成樹脂発泡体のような材料からなるパネル30aを所要の間隔(隙間)Spを置いて多数枚配置する場合を例にとり、前記面出し部材70の使用方法を説明する。このような例において、多数のパネル30aは基板20aに接着剤により接着されるが、接着剤が未硬化の段階では接着力は十分でなく、個々のパネル30aの反りや捻れにより、角部cの浮き上がりが往々にして起こりうる。また、場合によっては、パネル30の位置ずれも起こりうる。
それに対する対策として、前記角部cが集合する場所近傍において、基板20aに穴20bを開け、該穴20bを通して裏面側からベース部材77の支柱73を突き出た状態とし、そのネジ穴76にキャップ部材78のネジ杆79を螺合して締め付ける。
【0023】
締め付けにより、4枚(辺にあっては、2枚)のパネルの角部cはキャップ部材78の平坦な裏面により同時に押し付けられていき、図3aに示すように、裏面が基板20aに接した状態で安定する。それにより、連接するパネルの平準化が図られるとともに、その状態をしばらく保持することにより、接着剤の硬化も進行する。硬化後、キャップ部材78を(及び、可能な場合にはベース部材77をも)取り外す。それにより、多数枚のパネル30a全体が基板20aに実質的に平坦面をなして(面出しして)配置されることとなり、図3bに示すように、必要に応じて適宜の表面化粧材40aなどを表面に容易にかつ確実に貼り付けることが可能となる。
【0024】
次に、本発明による面出し部材の好適な使用態様として、図4に示すような地下壁排水構造における排水パネル30の面出しに用いる場合を、地下壁排水構造とともに説明する。図4において、10は土を、15はその土の界面を、20は地下壁をなすコンクリート躯体をそれぞれ示しており、該コンクリート躯体20は本発明でいう「基板」に相当するものであり、その屋内面側には後記する排水パネル30が排水パネル連結具60及び面出し部材170(ともに、図1には示されない)を用いて連結配置されている。
【0025】
図5、図6は、用いる排水パネル30を示しており、この例で、排水パネル30は、コンクリート躯体20に対して上下方向となる縦方向の凹状の排水用溝34と横方向の凹状の排水用溝35とが形成された発泡倍率約20〜60倍の発泡ポリスチレン製のパネル本体32と、該パネル本体32の前記排水用溝34,35が形成された側の面に取り付けられた透水性シート36と、該パネル本体32の反対側の面に取り付けられた石膏ボードのような不燃性板材である表面材40とからなり、全体として一辺の長さが990mm程度のほぼ正方形をなしている。そして、パネル本体32の4周の側壁面における前記表面材40を積層した側には、全周に亘って20mm程度の切り込み37が形成されている。
【0026】
パネル本体32は30mm程度の厚みであり、排水用溝34及び排水用溝35とは、それぞれ複数であって、所定間隔を有して平行に設けられる。そして、排水用溝34と排水用溝35とはお互いに90゜の角度で交叉している。この例において、各排水用溝34、35は、幅15mm、深さ10mm程度であり、50mm〜70mm程度の間隔で配置されているが、このような寸法は、すべてパネルの使用環境に応じて適宜決定するものである。
【0027】
透水性シート36は、接着剤などのような適宜の接合手段により取り付けることができる。透水性シート36は、好ましくは、数mm程度の一様な厚さを有し、耐アルカリ性のポリエステルの短繊維からなる不織布が使用される。
上記の排水パネル30は、透水性シート36がコンクリート躯体20の屋内面側に接合するように配置され、透水性シート36がコンクリート躯体20の屋内側面とパネル本体32との間に層状に存在することにより、コンクリート躯体20より屋内側へ流出する地下水は透水性シート36に浸透し、この地下水は、透水性シート36よりパネル本体32に設けられた排水用溝34,35に染み出し、そのから下方に流れていく。
【0028】
図7は、多数枚の上記の排水パネル30をコンクリート躯体20に配置した場合での屋内側から見た状態を模式的に示すものであり、隣接する排水パネル30、30同志は、その対向する側壁面と側壁面との間に、排水パネル連結具60(図7には示されない)及び面出し部材170を介在させて連接されている。
図8は、用いられる排水パネル連結具60を示す斜視図である。連結具は60は排水パネル30の一辺の長さよりもやや短い長さのものであり、この例において、連結具60は塩化ビニールの押し出し成形品であり、全長は955mm程度である。そして、横幅50mm程度である基板61の一方側には仕切り板62を、他方の側には突出片63を垂設している。
【0029】
仕切り板62の先端側はU字状の折り返し部64とされており、該折り返し部64の頂部と前記基板61との距離は、前記排水パネル30のパネル本体32の厚みよりもやや大きくされている(この例では34mm)。また、U字状の折り返し部64の折り返し部分の長さは14mm程度とされ、その折り返し部下縁は外側に向けた尖鋭な突縁65とされている。さらに、仕切り板62の前記基板61に近接した部分には多数の貫通穴66が形成されている。
【0030】
前記仕切り板62の前記U字状の折り返し部64とは反対側には平板状の押さえ板67が前記長尺状の基板61と平行に形成されている。この押さえ板67と前記基板61との距離は、その間に、排水パネル30のパネル本体32の前記切り込み37が形成された側壁部分が入り込む程度の距離とされる(この例では26mm)。また、押さえ板67の横幅は、パネル本体32の側壁面に形成した前記切り込み37内に収容される幅とされる(この例では15mm)。
前記突出片63は16mm程度の幅の平板であり、長手方向に多数の切り欠き68を有している。また、基板61におけるU字状の折り返し部64が位置する側の側縁は上方(U字状の折り返し部64側)向けた尖鋭な突縁69とされている。
【0031】
次に、上記の連結具60を用いて排水パネル30を連結配置する態様を説明する。図9は、図7におけるIX−IX線での断面図であり、上下方向に位置する2枚の排水パネル30、30の水平方向での連接状態を示している。また、図10は、図7におけるX−X線での断面図であり、左右方向に位置する2枚の排水パネル30、30の垂直方向での連接状態を示している。図9と図10とを見ればわかるように、本発明における地下壁排水構造では、排水パネル同志の接続態様は、水平方向及び垂直方向とも、向きが異なるだけで同じ接続態様とされる。
施工に当たっては、通常どおり、縦端太、横端太あるいはセバレータなどを用いて2枚の型枠を所定間隔を置いてセットし、地下壁となるコンクリート躯体のための打ち込み空間を形成する。その一方の型枠として、多数枚の前記排水パネル30が連結具60及び後記する面出し部材170を用いて連結配置される。
【0032】
先ず、下段に1枚の排水パネル30(30A)を、その透水性シート36側がコンクリート打設用の空間側となるようにしてセットし、その上方側壁面に前記連結具60を取り付ける。その際に、図9に示すように、連結具60は前記U字状の折り返し部64が上側面となるようにし、押さえ板67がパネル本体32の側壁面に形成した切り込み37内に入り込むようにして、押さえ板67と基板61との間に、パネル本体32の周側壁の先端部分を嵌入させる。同時に、当該排水パネル30の一方の垂直方向の側壁面にも、同様にして連結具60を取り付ける。その際に、図10に示すように、連結具60は前記U字状の折り返し部64が外側となるようにして垂直に立て、押さえ板67と基板61との間に、パネル本体32の垂直方向の周側壁の先端部分を嵌入させる。それにより、当該排水パネル30Aは上辺と一方の側辺とが位置決めされた状態で型枠の一部として組み付けられる。
【0033】
次に、横方向にもう1枚の排水パネル30(30B)を取り付ける。その際に、図10に示すように、取り付けようとする排水パネル30Bの垂直方向の一方の側壁面を連結具60のU字状の折り返し部64に衝接するようにして配置する。それにより、左右2枚の排水パネル30A、30Bの間には、両側は対向する側壁面と側壁面とに規制され、底面(コンクリート躯体側)は連結具60の基板61に規制され、上面(屋内側)は連結具60のU字状の折り返し部64に規制された垂直方向の空間Saが形成される。
【0034】
そして、U字状の折り返し部64の下縁は外側に向けた尖鋭な突縁65とされており、その部分がパネル本体32に食い込むことにより、また、基板61のU字状の折り返し部64が位置する側の側縁は上方向けた尖鋭な突縁69とされており、その部分が透水性シート36に食い込むことにより、当該排水パネル30の連結具60側の側壁面はある程度の位置決めがなされる。
【0035】
さらに、排水パネル30A及び30Bの上方向に、それぞれもう1枚の排水パネル30(30C、30D)を取り付ける。その際に、図9に示すように、取り付けようとする排水パネル30C、30Dの下端の側壁面を連結具60のU字状の折り返し部64に衝接するようにして配置する。それにより、上下2枚の排水パネル30A、30C及び30B、30Dの間には、前記と同様に4つの面が規制された水平方向の空間Sbが形成される。
【0036】
また、U字状の折り返し部64の尖鋭な突縁65がパネル本体32に食い込むことにより、また、基板61の尖鋭な突縁69が透水性シート36に食い込むことにより、当該排水パネル30の連結具60側の側壁面もある程度の位置決めはなされる。
以下、同様にして横方向及び上方向に排水パネル30を組み付けていくと、各排水パネル間の垂直方向の空間Saはすべて連続した垂直方向の空間を形成し、また、各排水パネル間の各水平方向の空間Sbも連続した水平方向の空間を形成する。
【0037】
前記したように、この例において、各連結具60の長さは排水パネル30の一辺の長さよりもやや短いものとされている。そのために、図7でPaで示すような、隣接する排水パネル30の角部cが集まる位置(例えば、前記4枚の排水パネル30A、30B、30C、30Dの角部cが集まる箇所)の近傍では連結具60が存在しないこととなり、その近傍での前記空間Sは、底面(コンクリート躯体側)と上面(屋内側)が開放した状態となる。
【0038】
また、各排水パネル30は、前記のように2つの側壁部は連結具60の押さえ板67と基板61との間に嵌入した状態で保持されるが、残りの2つの側壁部は、U字状の折り返し部64の尖鋭な突縁65と基板61の尖鋭な突縁69とが食い込むことによる位置決めであり、姿勢保持が十分とは言い難い。そのために、隣接する排水バネル同志の側壁部の高さにずれが出てくることが起こりうる。
【0039】
上記の不都合を解消する部材として、本発明にいう面出し部材170が用いられる。図11に示すように、この面出し部材170は、底板171(基部)と上板172(第2の基部)と、両者をつなぐ支柱173とからなるパネル下面支持部材としてのベース部材177と、パネル上面圧接部材としてのキャップ部材178とから基本的に構成されている。
【0040】
前記ベース部材177の底板171及び上板172の大きさは、前記した隣接する排水パネル30の角部cが集まる位置での連結具60が存在しない領域(図7でPaで示す近辺の領域)をカバーできる大きさとされ、また、上板172は、排水パネル30のパネル本体32に形成した前記切り込み37に収容されうる大きさとされる。また、底板171及び上板172との間の距離は、その間に、排水パネル30のパネル本体32の前記切り込み37が形成された側壁部分が入り込む距離とされる。
【0041】
さらに、この例において、上板172には4個の突起物174a、174b、175a、175bが形成されており、突起物174aと174bは180゜対向して位置しており、突起物175aと175bはそれらと90゜位相をずらして180゜対向して位置している。そして、一方の突起物175aと175bの対は、指先で押し出すことにより容易に折損できる状態に成形されている。
前記支柱173の先端にはネジ76が切られており、図1に示した面出し部材70の場合と同様のキャップ部材78のネジ杆79が螺合するようにされている。
【0042】
図12及び図13は、図7でのXII−XII線による断面図であり、面出し部材170のベース部材177に対して前記キャップ部材78を締め付けた状態(図12)と取り外した状態(図13)を示している(なお、図12及び図13では図示を明瞭にするために、連結具60は示されない)。前記のように、この面出し部材170は、型枠組立時に、前記排水パネル30の角部が集まる位置Paに取り付けられる。その際に、図示のように、底板171が最もコンクリート打設空間側となるようにして取り付け、同時に、上板172が前記切り込み37内に入り込むようにする。また、前記上板172に形成した突起物174a、174b、175a、175bが隣接する排水パネル30、30の間に形成される隙間に入り込むようにする。これにより、隣接する排水パネル同志の距離(間隔)は確保されるとともに、連結具60の位置決めもされ、また、前記した空間Sa,Sbの連結具60が存在しないことにより開放している底面(コンクリート躯体側)と上面(屋内側)とは閉鎖される。
【0043】
ベース部材177を取り付けた後で、支柱173に前記キャップ部材78をネジ込む。図12に示すように、ネジ込みによって、各排水パネル30(例えば、排水パネル30A、30B、30C、30D)の角部cの近傍は表面側から同時に押さえ付けられていき、最後には、上板172の上面とキャップ部材178の裏面との間に等しく押さえつけられる。それにより、隣接する排水パネル30同志の平面性が確保される。
【0044】
上記のようにして、排水パネル30,連結具60,面出し部材170を組み付けて型枠施工が終了した後で、コンクリート打設用空間にコンクリートを打設し硬化させる。図示されるように、連結具60の裏面に設けた突出片63が打設コンクリートと一体化して、排水パネル30,連結具60,面出し部材170は堅固に地下壁としてのコンクリート躯体20と一体化される。その後、縦端太、横端太あるいはセバレータなどを取り外し、また、前記キャップ部材178も取り外す。最後に、前記連結具60のU字状の折り返し部64の上面と前記面出し部材170の上板172の部分、すなわち、隣接する排水用シート30の間の表面側に形成される隙間(パネル目地部分)にシーリング材(不図示)を打ち込むことにより、本発明による地下壁排水構造は完成する。
【0045】
この地下壁排水構造にあっては、隣接する排水パネル30,30の対向する側壁面と側壁面の間に形成される連続した空間Sa,Sbは、通水路としての機能を積極的に果たすようになり、そのために、隣接する排水パネル間の継ぎ目部分である接合部から地下水が屋内側に染み出していくことは確実に防止される。また、面出し部材170を用いることにより、隣接する排水パネル同志の平面性を容易に確保するとができる。
【0046】
図11に示す面出し部材170において、4枚の排水パネル30の角部cが上板172の上に等しく載置される場合には、キャップ部材178の押し付け力は4枚の排水パネル30にほぼ等しく作用し、面出しは適性に行われる。しかし、図7でPxとして示すような端の部分では、排水パネル30は2枚しか存在せず、キャップ部材178の締め付けによる押し付け力が偏寄して適正な面出しが行われない場合が生じる。そのような場合には、上板172に設けた4個の突起物174a、174b、175a、175bのうち、一方の突起物対175a、175bを指先で押し倒して折損させた後、該折損部分が図7で上下方向となるようにして、前記場所Pxにベース部材177を取り付ける。上下方向の突起物対175a、175bが存在しないことから、その分だけベース部材177を排水シート30側(図7で左方向)に送り込むことができ、その位置でキャップ部材178を締め付けることにより、安定した押し付け力を生じさせることが可能となる。
【0047】
上記の説明は、本発明の好ましい実施の形態の説明であって、他に多くの変形例が存在する。連結具60の仕切り板62に形成した多数の貫通孔66は、連結具60を水平方向に配置する場合での上下方向の地下水の流れを良好にするために設けるものであり、垂直方向に配置する連結具60には必ずしも設ける必要はない。また、傾斜を付けて連結具60を配置することが可能な場合には、水平方向に配置する連結具であっても貫通孔は不要である。
【0048】
連結具60の裏面に形成する突出片63も必須でなく省略可能である。備える場合でも、平板状に限らず、先端が湾曲するような形状のものでもよい。それにより、一層しっかりした組み付けが可能となる。排水パネルに表面材を一体に積層することも必須でなく、施工現場で後作業として積層するようにしてもよい。
また、上記の例において、排水パネルを正方形状としたのは、水平方向及び垂直方向の配置する連結具を統一した長さとするために便利であるからであって、施工環境によっては、長方形状であってもよく、また、施工現場で適宜の形状に裁断して用いてもよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明によるパネル間の面出し部材を用いることにより、基板に配置した多数枚のパネルの面出し(平準化)を容易に行うことができる。
また、本発明によるパネル間の面出し部材を用いた地下壁排水構造では、コンクリート躯体に貼り付けた排水パネルの面出し(平準化)を容易に行うことができるとともに、地下壁をなすコンクリート躯体から屋内側に染み出てくる地下水は、透水性シートを透過してパネル本体に形成した凹状の排水用溝に入り込み、そこから、隣接する排水パネルの対向する側壁面と側壁面の間に形成される連続した空間を通して積極的に流されるので、隣接する排水パネル間の継ぎ目部分である接合部から地下水が屋内側に染み出していくことは確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による面出し部材の一形態を示す斜視図。
【図2】図1に示した面出し部材を用いて基板に取り付けたパネルの面出しを行う状態を説明する図。
【図3】上下方向に位置する2枚のパネルの水平方向での連接状態を示す図。
【図4】本発明による排水パネルを使用した地下壁排水構造の断面を概念的に示す図。
【図5】排水パネルの斜視図。
【図6】排水パネルを上方から見た図。
【図7】多数枚の排水パネルをコンクリート躯体に配置した状態を屋内側から見て模式的に示す図。
【図8】連結具の一例を示す斜視図。
【図9】図7におけるIX−IX線での断面図であり、上下方向に位置する2枚の排水パネルの水平方向での連接状態を示す。
【図10】図7におけるX−X線での断面図であり、左右方向に位置する2枚の排水パネルの垂直方向での連接状態を示す。
【図11】本発明による面出し部材の他の形態を示す斜視図。
【図12】図7でのXII−XII線による断面図であり、面出し部材のキャップ部材を締め付けた状態を示す。
【図13】図7でのXII−XII線による断面図であり、キャップ部材を取り外した状態を示す。
【符号の説明】
10…土、15…土の界面、20…地下壁をなすコンクリート躯体、30…排水パネル、32…パネル本体、34,35…凹状の排水用溝、36…透水性シート、40…表面材、60…連結具、61…基部、62…先端縁をU字状の折り返し部とした長尺状の仕切り板、64…U字状の折り返し部、63…突出片、Sa,Sb…通水路としての空間、Sp…パネルとパネルとの間隔(隙間)、70,170…面出し部材、71,171…底板、172…上板、73,173…支柱、77,177…パネル下面支持部材、78…キャップ部材(パネル上面圧接部材)、79…ネジ杆
Claims (7)
- 地下壁排水構造において、地下壁をなすコンクリート躯体に一方の面に凹状の排水用溝が形成された発泡材料からなるパネル本体に前記排水用溝が形成された側の面に透水性シートが取り付けられている複数枚の排水パネルを一定の間隔を置いて配置する場合に用いる排水パネル間の面出し部材であって、
前記面出し部材は、排水パネル下面支持部材と該排水パネル下面支持部材に螺合する排水パネル上面圧接部材とから構成され、
前記排水パネル下面支持部材は、前記排水パネルと排水パネルとの間隔に入り込まない大きさである基部と、前記基部から立設する支柱であって、前記間隔を通過できる太さであり、面出ししようとする排水パネルの厚みよりも短い長さであり、かつ、その先端にはネジが形成された支柱とを有し、
前記排水パネル上面圧接部材は、裏面が平坦面でありかつ前記排水パネルと排水パネルとの間隔に入り込まない大きさであるキャップ部材と、該キャップ部材の裏面から下方に垂設するネジ杆とを有していることを特徴とする排水パネル面出し部材。
材。 - 面出ししようとする排水パネルは周囲の側壁面に切り込みを有するものであり、前記排水パネル下面支持部材の前記支柱には、前記切り込みに入り込むことのできる第2の基部が形成されており、該第2の基部の上面は平坦面とされていることを特徴とする請求項1記載の排水パネル面出し部材。
- 前記第2の基部の上面には、前記排水パネルと排水パネルとの間隔に入り込む大きさの突起が形成されていることを特徴とする請求項2記載の排水パネル面出し部材。
- 前記突起は前記支柱を中心として90度の位相角で4個形成されており、少なくとも180度の位相角にある2個の突起は折り取り可能とされていることを特徴とする請求項3記載の排水パネル面出し部材。
- 請求項1ないし4いずれか記載の排水パネル面出し部材を用いて構築された地下壁排水構造であって、前記地下壁をなすコンクリート躯体の屋内面側に、前記複数の排水パネルが、適宜の連結具を介して、前記コンクリート躯体の屋内面側にその透水性シートを接するようにして、かつ、隣接する排水パネルの対向する側壁面と側壁面の間に一定の間隔を置いた状態で配置されており、隣接する排水パネルの角部が集まる位置には、前記面出し部材のパネル下面支持部材が配置され、前記パネル上面圧接部材により各排水パネルの該角部近傍を表面側から同時に押圧して、各排水パネル同志の面出しが行われて、隣接する排水パネル同志がほぼ同一平面となるように調整されていることを特徴とする地下壁排水構造。
- 面出し後に前記パネル上面圧接部材は取り外され、その位置にシーリング材が充填されていることを特徴とする請求項5記載の地下壁排水構造。
- 前記排水パネルは表面材を積層しており、前記パネル本体の周囲の側壁面における該表面材を積層した側には切り込みが形成されており、前記切り込み内に、前記パネル下面支持部材の支柱に形成した第2の基部が入り込んでおり、その平坦な上面で、前記表面材の裏面を支持していることを特徴とする請求項5又は6記載の地下壁排水構造。
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