JP3734566B2 - 回転電機の回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転電機の回転子に関し、特に界磁を永久磁石で構成する回転界磁式の同期電動機に適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
三相同期電動機の中には、特に小形機の場合、界磁を永久磁石で構成した回転子を有するものがある。
【0003】
この種の回転子は、当該同期電動機の始動時にこれを誘導電動機として駆動するためのかご形導体を有しており、固定子鉄心、ハウジング、エンドブラケット等で構成する固定子の内部空間にベアリングを介して回転可能に配設してある。
【0004】
図4(a)は従来技術に係るこの種の回転子の一例を示す横断面図、同図(b)はその縦断面図である。両図に示すように、この回転子は磁極の数に対応した複数個(図では4個)のブロック1aからなる回転子鉄心1と、周方向で隣接するブロック1a間に配設した永久磁石2と、各ブロック1aの内周面と回転軸3との間に配設した永久磁石4とを有している。ここで、回転子鉄心1はかご形導体5が充填されるスロットを有する扇形の電磁鋼板を軸方向に積層した断面扇形の各ブロック1aを集合させて円柱状としたものであり、アルミダイキャストによりかご形導体5と各かご形導体5を短絡するエンドリング6とを一体的に形成して永久磁石2,4とともに全体を一体化している。すなわち、回転子鉄心1に永久磁石2,4を組込んだ状態でアルミダイキャストによりかご形導体5とエンドリング6とを一体成型している。
【0005】
回転子鉄心1は複数に分割されているので、各ブロック1aをかご形導体5のみで保持するには強度的に不充分である。このため、図4(b)に示すように、軸方向に亘り適当な間隔で非磁性体の円板7を電磁鋼板の間に挿入するか、若しくは回転子の外周を他の部材で覆合して補強している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如き分割形の回転子鉄心を有する回転子では次の様な問題がある。
【0007】
1) 通常、円板7は非磁性体であるSUS304が使用されるが、これは電磁鋼板の3〜5倍と高価であるためコストの高騰を招来する。
【0008】
2) 軸方向に亘り電磁鋼板と非磁性材の円板7とを交互に積層しているので、磁路としては機能しない円板7の存在により同一トルクを発生させるための鉄心長が長くなる。
【0009】
3) 電磁鋼板と非磁性材の円板7とを交互に積層するために、この積層に要する工数が大となる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、特別な補強部材を用いることなく回転に伴なう遠心力に対する充分な耐力を有するとともに、簡単な構造で永久磁石の劣化も防止し得る回転電機の回転子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の構成は次の点を特徴とする。
【0012】
1) 外周側の周方向に亘りかご形導体を充填するための多数のスロットを有する円板状部材である電磁鋼板の薄板を軸方向に積層するとともに、遠心力に抗するよう、前記スロットに繋がる輪郭部分の間隙を介して打抜き成形した楔状の係止部を有する回転子鉄心と、
回転子鉄心の径方向の磁束を発生して周方向に関し複数個の磁極を形成するように回転子鉄心の内周側でこの回転子鉄心に一体的に埋設した永久磁石と、
永久磁石の両端面に当接してこの永久磁石を隠蔽するよう回転子鉄心の両端面にそれぞれ当接させて固定した非磁性体である端板と、
上記係止部の輪郭部分の間隙も同時に充填するアルミダイキャストにより上記スロット中に形成するかご形導体及び同様にアルミダイキャストによりかご形導体と同時に一体的に形成するエンドリングとを有すること。
2) 永久磁石は希土類磁石で形成したことを特徴とする上記1)に記載する回転電機の回転子であること。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の第1の実施の形態を示す図で、同図(a)は同図(c)のA−A線断面図、同図(b)は同図(c)のB−B線断面図、同図(c)は縦断面図である。これらのうち、図1(a)に示すように、回転子鉄心11の構成要素となる円板状の部材の薄板である電磁鋼板12は、外周側の周方向に亘りかご形導体13を充填するための多数のスロット12a及び内周側の周方向に亘り永久磁石14を挿入するための複数個(図では4個)のスロット12bをそれぞれ有するとともに、周方向に亘り等間隔に複数個(図では4個)の磁路の狭窄部12cを形成してある。かかる電磁鋼板12は、図1(b)に特に明確に示すように、磁性体で形成した回転軸15の軸方向に亘り積層してあり、かかる電磁鋼板12の集合体である回転子鉄心11を構成している。
【0017】
誘導電動機として起動するためのかご形導体13はアルミダイキャストによりアルミニウムをスロット12aに充填することによりエンドリング18とともに同時に一体的に形成してある。
【0018】
永久磁石14は、上記狭窄部12cにおいて磁気飽和するとともに、回転子鉄心11の径方向の磁束を発生して周方向に関し複数個(図では4個)の磁極を形成するようにスロット12bに挿入して固着してある。この永久磁石14は磁気特性に優れる希土類磁石で好適に構成することができる。
【0019】
端板16は、電磁鋼板12と同径の非磁性体で形成した円板状の薄板部材で、スロット12aに対応して同位置に形成したスロット16aを有するとともに、永久磁石14の両端面に当接してこの永久磁石14を隠蔽するよう回転子鉄心11の両端面にそれぞれ当接して固定してある。したがって、スロット12aの部分ではかご形導体13が貫通してエンドリング18に連結されている。すなわち、かご形導体13及びエンドリング18のアルミダイキャスト時には回転子鉄心11に永久磁石14を挿入するとともに端板16を回転子鉄心11の両端面に当接させた状態でこれを行なう。このとき端板16は永久磁石14がアルミニウムと直接接触するのを防止し、このときのアルミニウムの熱(400〜500℃)による永久磁石14の特性劣化を防止するように構成してある。かかる構成は、熱による劣化を受け易い希土類磁石の永久磁石14を使用した場合に特に有用である。
【0020】
かかる本形態によれば電磁鋼板12が円板状の部材であるため、回転時の遠心力に対する充分な強度を保持することができ、従来技術において必要とした補強のための円板7(図4参照)を除去できる。
【0021】
また、磁極間の分割は、隣接する磁極間の狭窄部12cにより行なうことができ、永久磁石14は端板16で保護することができる。
【0022】
ここで端板16は回転子鉄心11の押え部材として機能するとともに、永久磁石14の保護部材として機能する部材であるため、図1(d)に示す端板17のように、最低限度永久磁石14を隠蔽し得る径Lを有していれば良い。
【0023】
図2は本発明の第2の実施の形態を示す図で、同図(a)は同図(c)のC−C線断面図、同図(b)は同図(c)のD−D線断面図、同図(c)は縦断面図である。これらのうち、図2(a)に示すように、本形態における電磁鋼板22は、円板状の部材の薄板であり、外周側の周方向に亘りかご形導体23を充填するための多数のスロット22a及び内周側の周方向に亘り永久磁石24を挿入するための複数個(図では4個)のスロット22bをそれぞれ有するとともに、遠心力に抗するよう輪郭部分の間隙を介して打抜き成形した楔状の係止部22cを有している。かかる電磁鋼板22は、図2(b)に特に明確に示すように、磁性体で形成した回転軸25の軸方向に亘り積層してあり、かかる電磁鋼板22の集合体である回転子鉄心21を構成している。
【0024】
誘導電動機として起動するためのかご形導体23はアルミダイキャストによりアルミニウムをスロット22aに充填することによりエンドリング28とともに同時に一体的に形成してある。このとき、回転子鉄心21のスロット22bには永久磁石24を挿入した状態でアルミダイキャストを行なう。このため、係止部22cの輪郭部分の間隙にも非磁性体のアルミニウムが充填される。
【0025】
かくして係止部22cにより隣接する磁極間が分割された複数個(図では4個)の磁極が構成される。また、回転に伴ない回転子鉄心21に作用する遠心力に抗して係止部22cが他の部分を係止することにより充分な強度を確保する。
【0026】
端板26は、第1の形態と同様に電磁鋼板22と同径の非磁性体で形成した円板状の薄板部材で、スロット22aに対応して同位置に形成したスロット26aを有するとともに、永久磁石24の両端面に当接してこの永久磁石24を隠蔽するよう回転子鉄心21の両端面にそれぞれ当接して固定してある。したがって、スロット22aの部分ではかご形導体23が貫通してエンドリング28に連結されている。
【0027】
端板26の機能は第1の形態における端板16(図1参照)と全く同様である。また、本形態においても端板26の代わりに端板17(図1(d)参照)と同様の端板27(図2(d)参照)を用いても良い。
【0028】
本形態においても第1の形態と同様の作用・効果を得る。
【0029】
図3は本発明の第3の実施の形態を示す横断面図である。本形態では非磁性体のアルミスペーサ39を有する点が第1の形態と異なるだけで基本的な思想はこれと同一である。すなわち、磁性体の回転軸35の外周面には同一内径の永久磁石34とアルミスペーサ39とが周方向に亘り交互に配設してある。このとき、アルミスペーサ39の外径は永久磁石34の外径よりも大きく構成してある。この結果、回転子鉄心31を構成する電磁鋼板32のうち、アルミスペーサ39とスロット32aとの間がスロット32bに配設した永久磁石34とスロット32aとの間に較べ相対的な狭窄部32cとなり、この部分で磁気飽和する。したがって、第1の形態と同様のかご形導体33を有する回転子を形成することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上実施の形態とともに具体的に説明したように、本発明によれば補強部材を要することなく遠心力に対する充分な強度を確保し得るばかりでなく永久磁石の熱的な劣化も防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す図で、(a)は(c)のA−A線断面図、(b)は(c)のB−B線断面図、(c)は縦断面図、(d)は端板の他の形態を示す平面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示す図で、(a)は(c)のC−C線断面図、(b)は(c)のD−D線断面図、(c)は縦断面図、(d)は端板の他の形態を示す平面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態を示す横断面図である。
【図4】従来技術を示す図で、(a)は横断面図、(b)は縦断面図である。
【符号の説明】
11,21,31 回転子鉄心
12,22,32 電磁鋼板
12a,12b,22a,22b,32a,32b スロット
12c,32c 狭窄部
22c 係止部
13,23,33 かご形導体
14,24,34 永久磁石
15,25,35 回転軸
16,17,26,27 端板
18,28 エンドリング
Claims (2)
- 外周側の周方向に亘りかご形導体を充填するための多数のスロットを有する円板状部材である電磁鋼板の薄板を軸方向に積層するとともに、遠心力に抗するよう、前記スロットに繋がる輪郭部分の間隙を介して打抜き成形した楔状の係止部を有する回転子鉄心と、
回転子鉄心の径方向の磁束を発生して周方向に関し複数個の磁極を形成するように回転子鉄心の内周側でこの回転子鉄心に一体的に埋設した永久磁石と、
永久磁石の両端面に当接してこの永久磁石を隠蔽するよう回転子鉄心の両端面にそれぞれ当接させて固定した非磁性体である端板と、
上記係止部の輪郭部分の間隙も同時に充填するアルミダイキャストにより上記スロット中に形成するかご形導体及び同様にアルミダイキャストによりかご形導体と同時に一体的に形成するエンドリングとを有することを特徴とする回転電機の回転子。 - 永久磁石は希土類磁石で形成したことを特徴とする[請求項1]に記載する回転電機の回転子。
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