JP3733694B2 - プログラム式電子ミシン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プログラム式電子ミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、事前に作製された縫製プログラムに従って、布送り機構や縫針駆動機構の動作を自動制御するプログラム式電子ミシンが知られている。
この種のプログラム式電子ミシンは、動作モードとして、実際に縫製を行うための縫製モードの他に、縫製プログラムを作製するためのプログラム作製モードを備えている。そして、このプログラム作製モードにおいて、例えば、利用者がキー入力装置などを使って、縫い方の種類(例えば、直線縫い、曲線縫い、千鳥縫いなど)、いくつかの針落点(例えば、縫製開始点および縫製終了点、必要に応じて中間点)、あるいは縫目のピッチなど、始点から終点に至る縫製経路を特定するのに必要な諸条件を指定すると、それらの諸条件に基づいて、縫製時に必要な縫製プログラムが作製される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなプログラム式電子ミシンを使って、例えば、布の外周部を全周にわたって縫製するなど、環状に閉じた縫製経路を描くように縫製を行う場合、縫い始め部分と縫い終り部分とが重なるように縫製を行うことがある。このような縫い始め部分と縫い終り部分の重ね縫いを行うと、縫い始め部分と縫い終り部分が相互に補強されることになる。
【0004】
しかしながら、上記のような重ね縫いを行うには、縫製プログラムを作製する際に、例えば、縫い始め部分の縫製経路の位置を正確に把握した上で、その縫製経路上に重なるような点を、縫い終り部分の針落点として正確に指定しなければならないため、そのような作業を行っていたのでは、縫製プログラムの作製に手間がかかり、きわめて面倒であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、縫い始め部分と縫い終り部分が重なるような縫製プログラムを、きわめて簡単に作製することのできるプログラム式電子ミシンを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段、および発明の効果】
上述の目的を達成するために、本発明は、請求項1記載の通り、
縫製経路の始点から終点に至るまでのステッチ形成位置を示すステッチデータが前記始点から終点に至る順序で含まれた縫製プログラムに従って、縫製時の動作が制御されるプログラム式電子ミシンにおいて、
利用者が指定したステッチデータ数、または、利用者が指定したパラメータから算出されるステッチデータ数のいずれかと、環状に閉じた縫製経路を縫製するためのステッチデータを含む第1の縫製プログラムとに基づいて、前記第1の縫製プログラムに含まれたステッチデータの内、前記始点から所定の針落点に至るまでの前記ステッチデータ数分のステッチデータを、末尾のステッチデータの後に複写する、もしくは、所定の針落点から前記終点に至るまでの前記ステッチデータ数分のステッチデータを、先頭のステッチデータの前に複写することにより、縫い始めおよび縫い終りの重ね縫いが行われる第2の縫製プログラムを作製する重ね縫いデータ作製手段
を備えたことを特徴とする。
【0007】
このプログラム式電子ミシンにおいて、上記第1,第2の縫製プログラムは、少なくとも、縫製経路の始点から終点に至るまでのステッチ形成位置を示すステッチデータが前記始点から終点に至る順序で含まれているものであるが、当然、これらのステッチデータ以外に、縫製速度の変更や糸切りの実行など、各種制御を実行するのに必要な制御データ、その他のデータ等が、縫製プログラム中の適当な位置に含まれていてもよい。
【0008】
また、上記ステッチデータは、ステッチ形成位置を示すものであるが、ステッチ形成位置を示す手法としては、例えば、縫製対象となる布上の特定位置に原点を設定し、その原点からの距離に相当する値で布上の位置を示す絶対座標値を用いても、縫針の直下を常に原点に設定し、その原点からの距離に相当する値で布上の位置を示す相対座標値を用いてもよい。
【0009】
また、重ね縫いデータ作製手段は、始点から所定の針落点に至るまでのステッチデータを、末尾のステッチデータの後に複写しても、所定の針落点から終点に至るまでのステッチデータを、先頭のステッチデータの前に複写してもよいが、これらは全く同じ縫製プログラムになる訳ではなく、重ね縫いが行われる部分の位置が、若干異なるものとなる。
【0010】
このように構成されたプログラム式電子ミシンによれば、重ね縫いデータ作製手段は、利用者が指定したステッチデータ数、または、利用者が指定したパラメータから算出されるステッチデータ数のいずれかと、環状に閉じた縫製経路を縫製するためのステッチデータを含む第1の縫製プログラムとに基づいて、前記第1の縫製プログラム中のステッチデータの内、始点から所定の針落点に至るまでの前記ステッチデータ数分のステッチデータを、末尾のステッチデータの後に複写するか、もしくは、所定の針落点から前記終点に至るまでの前記ステッチデータ数分のステッチデータを、先頭のステッチデータの前に複写して、第2の縫製プログラムを作製する。そのため、このような第2の縫製プログラムに従って縫製を行えば、縫い始め部分と縫い終り部分の重ね縫いが行われることになる。
【0011】
したがって、縫い始め部分と縫い終り部分が重なるような第2の縫製プログラムを作製するに当たって、例えば、利用者が、縫い始め部分の縫製経路の位置を考慮しつつ、縫い終り部分の針落点を指定するといった面倒な作業を行わなくてもよくなり、第2の縫製プログラムをきわめて簡単に作製することができる。
【0012】
ところで、上記のようにステッチデータの複写を行うに当たって、いくつ分のステッチデータを複写するかは、あらかじめ定められていても構わないが、例えば、請求項2記載のプログラム式電子ミシンのように、
前記重ね縫いデータ作製手段が複写するステッチデータの数を、数値によって指定可能な針数指定手段
を備えていると、
針数指定手段によって数値で指定された数分だけ、重ね縫いデータ作製手段がステッチデータを複写するので、どの程度の量の重ね縫いを行うかを、針数指定手段での指定によって自由に設定することができる。
【0013】
また、請求項3記載のプログラム式電子ミシンのように、
縫製経路上の重ね縫いを行うべき範囲の長さを、数値によって指定可能な長さ指定手段と、
該長さ指定手段により指定された縫製経路の長さ、および針落点間のピッチに基づいて、前記重ね縫いデータ作製手段が複写するステッチデータの数を算出する第1の針数算出手段と
を備えていると、
長さ指定手段により指定された縫製経路の長さ、および針落点間のピッチに基づいて、第1の針数算出手段がステッチデータの数を算出し、その数分だけ、重ね縫いデータ作製手段がステッチデータを複写するので、どの程度の量の重ね縫いを行うかを、重ね縫いを行うべき範囲の長さによって自由に設定することができる。
【0014】
さらに、請求項4記載のプログラム式電子ミシンのように、
円または円弧状の縫製経路上の重ね縫いを行うべき範囲に対応する中心角を、数値によって指定可能な中心角指定手段と、
該中心角指定手段により指定された中心角、前記円または円弧状の縫製経路の半径、および針落点間のピッチに基づいて、前記重ね縫いデータ作製手段が複写するステッチデータの数を算出する第2の針数算出手段と
を備えていると、
中心角指定手段により指定された中心角、円または円弧状の縫製経路の半径、および針落点間のピッチに基づいて、第2の針数算出手段がステッチデータの数を算出し、その数分だけ、重ね縫いデータ作製手段がステッチデータを複写するので、どの程度の量の重ね縫いを行うかを、重ね縫いを行うべき範囲の中心角の大きさにて自由に設定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
図1に示すように、プログラム式電子ミシン1(以下、単にミシン1ともいう)は、ミシンテーブル3の上面側に配置されたベッド部5、およびアーム部6を備えている。
【0016】
上記ベッド部5の上面前部には、針板7が固定され、その針板7の上には、布押え装置8が設けられている。布押え装置8は、縫製対象となる布を保持しつつ、その布を前後左右に移動させるもので、図2に詳細に示すように、針板7上を前後左右に移動可能な送り板10と、送り板10上に設けられた押え腕11と、その押え腕11の前端部に昇降可能に取り付けられた布押え板12などから構成されている。布押え板12は、常時はバネにより付勢されて上昇し、送り板10から離れた位置にあるが、アーム部6に取り付けられた押えソレノイド14によって付勢され時には、送り板10に接触する位置まで下降して、送り板10との間に布Cを狭持することができる。
【0017】
一方、上記アーム部6には、上下に往復移動する針棒16が設けられ、針棒16の下端には縫針18が装着されている。
また、図1に示したように、ミシンテーブル3の上面側には、利用者によって操作される操作パネル20が立設され、さらに、この操作パネル20とは別に、利用者によって操作されるプログラマー22が、ケーブル24を介して接続されている。
【0018】
操作パネル20は、ミシン1に対して固定されたもので、主にミシン1に対する各種指令を入力する際に操作される。
一方、プログラマー22は、ミシン1から脱着して、他のミシンにも装着可能なもので、主に縫製プログラムに関連する操作を行う際に操作される。このプログラマー22は、図3に示すように、多数のキーを有するキー入力装置によって構成された操作部26を備え、操作部26のキーの内、「?」、「F」、「M]、「C]、「LI」の各キーには、操作可能な場合等に点灯するLED27も配設されている。また、プログラマー22は、ドットマトリクス方式にて最大で横248×縦60ドットの画像を表示可能な液晶ディスプレイ装置28(以下、LCD28という)を備え、このLCD28の画面上に任意の文字や図形等を表示可能になっている。
【0019】
さらに、図1に示したように、ミシンテーブル3の一側面には、制御装置等を内蔵する筐体30が配設されている。この筐体30には、フレキシブルディスク装置32(以下、FDD32という)なども備え付けられ、利用者が作製した縫製プログラムを、磁気記憶媒体に記録して保存することができる。また、ミシンテーブル3の下方には、縫製動作の開始/終了、および布押え板12の上昇/下降の切替操作を行うためのペダルスイッチ34が配置されている。
【0020】
次に、このプログラム式電子ミシン1の制御系について説明する。
このプログラム式電子ミシン1の制御系は、図4に示すように、互いに独立した2つの制御系40、60によって構成され、さらに両者が相互に通信可能に構成されている。
【0021】
一方の制御系40は、ミシン本体側の制御系であり、周知のCPU41を中心にして、ROM42、RAM43、操作部45、LED47、通信部50、ブザー52、X軸モータ54、Y軸モータ55、ミシンモータ56、および上記FDD32などから構成されている。
【0022】
これらの内、CPU41は、ミシン1全体の動作を制御するものである。ROM42には、CPU41が実行する各種制御プログラム等が記憶され、RAM43には、CPU41の動作時に一時的に各種データ等が記憶される。このRAM43には、その一部に縫製プログラムを格納するための記憶領域が確保されており、縫製動作時には、このRAM43に格納された縫製プログラムを、CPU41が参照して縫製処理を行う。
【0023】
操作部45は、多数のキーを有するキー入力装置によって構成され、LED47とともに、上記操作パネル20上に配置されている。LED47は、各種状態表示や警告表示用のものである。ブザー52は、動作中あるいは各種エラー発生等の情報をブザー音で報知するものである。また、X軸モータ54、およびY軸モータ55は、それぞれ上述の布押え装置8(図2参照)を左右方向、および前後方向に移動させるもので、ミシンモータ56は、上述の針棒16や図示しない釜等を含む縫製機構を駆動するものである。
【0024】
また、もう一方の制御系60は、プログラマー22の制御系であり、周知のCPU61を中心にして、ROM62、RAM63、上記操作部26、上記LED27、通信部70、ブザー72、上記LCD28、およびバックライト75などを配して構成されている。
【0025】
これらの内、CPU61は、プログラマー22全体の動作を制御するものである。ROM62には、CPU61が実行する各種制御プログラム等が記憶され、RAM63には、CPU61の動作時に一時的に各種データ等が記憶される。このRAM63にも、その一部に縫製プログラムを格納するための記憶領域が確保されている。但し、RAM63の記憶領域は、縫製プログラムを一時的に保存するために確保されたもので、CPU61は、ミシン本体側の制御系40から伝送されてくる縫製プログラムを通信部70を介して受信して、RAM63に格納したり、逆に、RAM63に格納された縫製プログラムを読み出して、通信部70を介してミシン本体側の制御系40へ送信することはできるが、RAM63に記憶された縫製プログラムを参照しながら縫製処理が行われることはない。なお、プログラマー22の電源スイッチをOFFにした状態でも、RAM63には電力が供給されるように構成されているため、プログラマー22の電源スイッチをOFFにしても、RAM63に格納された縫製プログラムが失われることはない。
【0026】
また、ブザー72は、動作中あるいは各種エラー発生等の情報をブザー音で報知するものである。また、バックライト75は、LCD28の明暗差を大きくするために、LCD28の背面側から光を照射するものである。
さらに、各制御系が備える通信部50、70は、データを相互にシリアル伝送するためのインターフェイス装置であり、通信部50と通信部70の間に、上述のケーブル24を介在させて、双方の制御系40、60が互いに通信可能に接続されている。
【0027】
なお、図4には明示していないが、ROM42、RAM43、および通信部50は、バスを介してCPU41に直接接続され、一方、操作部45、LED47、ブザー52、X軸モータ54、Y軸モータ55、ミシンモータ56、およびFDD32などは、いずれも、それぞれ専用のインターフェイス装置(ドライバ回路等)に接続され、それらのインターフェイス装置がバスを介してCPU41に接続されている。また、ROM62、RAM63、および通信部70は、バスを介してCPU61に直接接続され、一方、操作部26、LED27、ブザー72、LCD28、およびバックライト75などは、いずれも、それぞれ専用のインターフェイス装置に接続され、それらのインターフェイス装置がバスを介してCPU61に接続されている。
【0028】
次に、上記のように構成されたプログラム式電子ミシン1における縫製プログラム作製処理について、重ね縫いデータ作製処理を中心にして、図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、本処理は、プログラマー22の操作部26から所定形式のコマンドが入力されると開始されるが、より詳しくは、入力されたコマンドに相当するデータ列が、プログラマー22からミシン本体側に伝送され、そのデータ列が所定の縫製プログラムの作製を指令するデータ列であるとCPU41が解釈すると、CPU41が本処理を開始する。
【0029】
本処理を開始すると、CPU41は、まず、環状に閉じた縫製経路を描くような縫製プログラムを、RAM43に確保された縫製プログラム格納領域内に作製する(S102)。
ここでは、図6(a)に示すような縫製プログラムP1(本発明でいう第1の縫製プログラムに相当)が作製される。この縫製プログラムP1は、縫製経路の始点から終点に至るまでのステッチ形成位置を示すステッチデータD1〜Dnが、始点から終点に至る順序で含まれているもので、本実施形態において、これらのステッチデータDi(i=1〜n)は、i番目の針落点を原点とするi+1番目の針落点の相対座標となっている。ちなみに、実際の縫製時には、まず、縫製開始時の縫針18の直下が1番目の針落点となり、1番目の針落点でステッチを形成した後は、その針落点を原点としてステッチデータD1が示す相対位置へ移動すると、そこが2番目の針落点となり、以後は、最新の針落点を原点として、順にステッチデータD2〜Dnが示す相対位置への移動と、ステッチの形成を繰り返し、最後のステッチデータDnが示す相対位置へ移動すると、その位置が1番目の針落点にほぼ一致する位置となり、そこで最終のステッチを形成することにより、環状に閉じた縫製経路が描かれることになる。
【0030】
上記ステッチデータD1〜Dnの具体的な値を算出する処理は、縫製経路の具体的な形状によって変わる。いくつかの具体例を簡単に説明すると、例えば、方形を描くような縫製経路であれば、対角の頂点となる2点の位置と縫目のピッチを利用者が指定すれば、必要なステッチ形成位置を算出することができる。また、円形を描くような縫製経路であれば、円の中心点の位置、円の半径、および縫目のピッチを利用者が指定するか、円の軌跡が通過する3点の位置と縫目のピッチを利用者が指定すれば、必要なステッチ形成位置を算出することができる。この他にも、直線や曲線を組み合わせて、環状に閉じた縫製経路を作製することができる。但し、これらの各処理はいずれもこの種のミシンにおいて公知の技術であり、また、本発明の要部ではないので、個々の処理についての詳細な説明は省略する。
【0031】
また、S102の処理でいう「縫製プログラムの作製」は、縫製プログラムを新規に作製するといった狭い意味に限られるものではない。例えば、あらかじめ磁気記憶媒体にステッチデータD1〜Dnを含む縫製プログラムP1が記憶させてあれば、S102の処理として、FDD32から縫製プログラムP1を読み込む処理を行ってもよい。
【0032】
さて、S102の処理により、RAM43内に縫製プログラムP1が作製されたら、コピー回数カウンタmに1をセットし(S104)、重ね縫い針数nに利用者が指定する値をセットする(S106)。
この重ね縫い針数nは、利用者によって任意に指定される値であり、本処理の場合は、本処理を開始する契機となったコマンド中において、重ね縫い針数が数字で指定されているので、このコマンドを構成するデータ列中から、重ね縫い針数nにセットする値を取得する。具体例を交えて説明すれば、例えば、プログラマー22の操作部26から、コマンドとして、「20*LI(但し、*は0〜9)」と入力されると、そのコマンドをCPU41が解釈して本処理を開始するとともに、S102においては、上記コマンドが指示するとおり、3点指定円の縫製プログラム(円の軌跡が通過する3点の位置と縫目のピッチを利用者が指定して作製される縫製プログラム)が作製され、その後、S106においては、上記コマンド中の「*」に指定された値が重ね縫い針数nにセットされる。なお、このようなコマンド中で指定する方法以外には、例えば、S106の処理に先だって、利用者に対して重ね縫い針数nの入力を要求する処理を加えても、重ね縫い針数nにセットすべき値を取得することができる。
【0033】
そして、コピー回数カウンタmと重ね縫い針数nとを比較し(S108)、コピー回数カウンタmの値が重ね縫い針数nの値を超えていなければ(S108:NO)、コピー回数カウンタmの値に基づいてm針目のステッチデータDmを、末尾のステッチデータの後にコピーする(S110)。最初は、コピー回数カウンタmの値が1なので、1針目のステッチデータD1を、末尾のステッチデータDnの後にコピーすることになり、そのコピー後は、ステッチデータD1が末尾となる。そして、コピー回数カウンタmに1を加算して(S112)、S108の処理へと戻り、以後は、コピー回数カウンタmの値が重ね縫い針数nの値を超えるまで、S108〜S112の処理を繰り返す。これにより、処理を繰り返した回数分だけ、縫製プログラムの末尾にステッチデータが付加されてゆく。なお、以上S108〜S112の処理を繰り返した結果、コピー回数カウンタmの値が重ね縫い針数nの値を超えたら(S108:YES)、本処理を終了する。
【0034】
以上の処理により、例えば、利用者が重ね縫い針数として3を指定した場合であれば、図6(a)に示す縫製プログラムP1に基づいて、図6(b)に示す縫製プログラムP2(本発明でいう第2の縫製プログラムに相当)が作製される。この縫製プログラムP2は、先頭から3つ分のステッチデータD1〜D3が、初期状態において末尾にあったステッチデータDnの後に付加されたものとなっている。そのため、ステッチデータDnの示すステッチ形成位置(すなわち、1番目の針落点)でステッチを形成した後、さらに、ステッチデータD1〜D3に基づいて、3ステッチを形成するので、第1針落点〜第4針落点間において重ね縫いが行われることになる。なお、重ね縫いの必要がない場合は、重ね縫い針数として0を指定すればよい。
【0035】
このように、このプログラム式電子ミシン1によれば、重ね縫いを行うべき旨を利用者がコマンドの中で指定するだけで、一部のステッチデータがコピーされ、重ね縫いを行うのに必要なステッチデータが縫製プログラム中に自動的に作製される。したがって、利用者が、縫い始め部分の縫製経路の位置を考慮しつつ、縫い終り部分の針落点を指定するといった面倒な作業を行わなくてもよくなり、縫製プログラムをきわめて簡単に作製することができる。
【0036】
また、重ね縫いを行うべきステッチ数は、利用者がコマンド中において数値で指定できるので、どの程度の量の重ね縫いを行うかを、利用者が自由に設定することができる。
ところで、上記処理においては、重ね縫いを行うべき針数を利用者が任意に指定できたが、針数が同じでも縫目のピッチが変われば、重ね縫いが行われる範囲の長さは変わってしまうので、特定の長さ範囲を重ね縫いしたいような場合には、針数を指定する代わりに、重ね縫いを行うべき範囲の長さを指定できる方がよい。
【0037】
そこで、次に、重ね縫いを行うべき範囲を長さで指定可能な処理について、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
本処理を開始すると、CPU41は、まず、環状に閉じた縫製経路を描くような縫製プログラムを、RAM43に確保された縫製プログラム格納領域内に作製する(S202)。そして、コピー回数カウンタmに1をセットし(S204)、長さ累積カウンタsに0をセットし(S205)、重ね縫い長さLに利用者が指定する長さをセットする(S206)。
【0038】
この重ね縫い長さLは、前述の処理における重ね縫い針数nのセット値と同様に、利用者によって任意に指定される値であり、例えば、本処理を開始する契機となったコマンド中において数字で指定されている。
そして、長さ累積カウンタsと重ね縫い長さLとを比較し(S208)、長さ累積カウンタsの値が重ね縫い長さLの値より小さければ(S208:NO)、コピー回数カウンタmの値に基づいてm針目のステッチデータDmを、末尾のステッチデータの後にコピーする(S210)。そして、コピー回数カウンタmに1を加算して(S212)、長さ累積カウンタsに縫目のピッチpを加算する(S214)。なお、S214の処理で使われる縫目のピッチpは、S202の処理で縫製プログラムを新規に作製する場合は、通常、その作製処理中に指定され、また、S202の処理で縫製プログラムをFDD34から読み込む場合には、FDD34から読み込まれるデータ中に含まれている。
【0039】
こうしてS214の処理を終えたら、以後は、S208の処理へと戻り、長さ累積カウンタsの値が重ね縫い長さLの値以上になるまで、S208〜S214の処理を繰り返す。これにより、処理を繰り返した回数分だけ、縫製プログラムの末尾にステッチデータが付加されてゆく。なお、以上S208〜S214の処理を繰り返した結果、長さ累積カウンタsの値が重ね縫い長さLの値以上になったら(S208:YES)、本処理を終了する。
【0040】
以上のような処理によれば、前述の処理と同様に、縫製プログラムをきわめて簡単に作製することができるという効果があり、特に、重ね縫いを行うべき範囲の長さを数値で指定すればよいので、縫目のピッチを考慮しなくても、特定の範囲に重ね縫いを施すことができる。
【0041】
以上、2通りの重ね縫いデータの作製処理について説明したが、さらに、円または円弧状の縫製経路については、重ね縫いを行うべき範囲を、その範囲に対応する中心角で指定できるとよい。
そこで、次に、重ね縫いを行うべき範囲を、その範囲に対応する中心角で指定可能な処理について、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
本処理を開始すると、CPU41は、まず、円または円弧状の縫製経路を描くような縫製プログラムを、RAM43に確保された縫製プログラム格納領域内に作製する(S302)。そして、コピー回数カウンタmに1をセットし(S304)、角度累積カウンタaに0をセットし(S305)、重ね縫い角度Aに利用者が指定する長さをセットする(S306)。
【0043】
この重ね縫い角度Aは、前述の処理における重ね縫い針数n、または重ね縫い長さLのセット値と同様に、利用者によって任意に指定される値であり、例えば、本処理を開始する契機となったコマンド中において数字で指定されている。
また、1針分の縫目に対応する中心角bを算出する(S307)。より詳しく説明すると、縫目のピッチpは、前述の処理でも説明したように、S302の処理で縫製プログラムを新規に作製する場合は、通常、その作製処理中に指定され、また、S302の処理で縫製プログラムをFDD34から読み込む場合には、FDD34から読み込まれるデータ中に含まれている。また、半径rの円(または円弧)の場合、360゜分の円周の長さは2πrである。これらのことから、360゜分の円周を構成するステッチデータの総数Nは、下記数式1によって求めることができる。
【0044】
【数1】
N = 2πr / p
そして、360゜分の円周を上記総数Nのステッチデータで構成しているのであれば、1針分の縫目に対応する中心角bは、下記数式2によって求めることができる。
【0045】
【数2】
b = 360 / N
こうして1針分の縫目に対応する中心角bを求めたら、続いて、角度累積カウンタaと重ね縫い角度Aとを比較し(S308)、角度累積カウンタaの値が重ね縫い角度Aの値より小さければ(S308:NO)、コピー回数カウンタmの値に基づいてm針目のステッチデータDmを、末尾のステッチデータの後にコピーする(S310)。そして、コピー回数カウンタmに1を加算して(S312)、角度累積カウンタaに1針分の中心角bを加算する(S314)。以後は、S308の処理へと戻り、角度累積カウンタaの値が重ね縫い角度Aの値以上になるまで、S308〜S314の処理を繰り返す。これにより、処理を繰り返した回数分だけ、縫製プログラムの末尾にステッチデータが付加されてゆく。なお、以上S308〜S314の処理を繰り返した結果、角度累積カウンタaの値が重ね縫い角度Aの値以上になったら(S308:YES)、本処理を終了する。
【0046】
以上のような処理でも、前述の2つの処理と同様に、縫製プログラムをきわめて簡単に作製することができるという効果があり、特に、重ね縫いを行うべき範囲に対応する中心角を数値で指定すればよいので、縫目のピッチや円弧の長さを考慮しなくても、特定の範囲に重ね縫いを施すことができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態については上記のもの以外にも種々の具体的形態が考えられる。
例えば、上記3通りの処理の説明では、いずれも縫製プログラム中に含まれるステッチデータの内、先頭側のデータを順に末尾へとコピーする旨の説明を行ったが、末尾側のデータを順に先頭へコピーしてもよい。また、先頭から末尾へコピーする場合と、末尾から先頭へコピーする場合とでは、重ね縫いが施される範囲に違いが生じるので、これらのいずれか一方だけを採用しなくても、双方を採用して、いずれの方法でコピーするかを、利用者が任意に選択できるように構成してもよい。
【0048】
また、上記説明において例示した縫製プログラム(図6参照)は、説明を簡潔にする都合上、ステッチデータのみで構成されたものを図示したが、ステッチデータ以外の各種制御データが、縫製プログラム中に含まれていてもよいことはもちろんである。但し、ステッチデータ以外の各種制御データが縫製プログラム中に含まれている場合に、上記ステッチデータのコピーを行うに当たっては、次にコピーする候補となっているデータが、ステッチデータ等のコピーすべきデータであるか否かをチェックし、コピーすべきデータであればコピー、そうでなければそのデータをスキップして、次のデータのチェックに移行するといった処理を加える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態として例示したプログラム式電子ミシンの全体の斜視図である。
【図2】 上記プログラム式電子ミシンの布押え装置付近の斜視図である。
【図3】 上記プログラム式電子ミシンが備えるプログラマーの正面図である。
【図4】 上記プログラム式電子ミシンの制御系のブロック図である。
【図5】 縫製プログラム作製処理の第1の例を示すフローチャートである。
【図6】 縫製プログラムのデータ構造を示す図であり、(a)は重ね縫いデータ作製前の状態、(b)は重ね縫いデータ作製後の状態を示す。
【図7】 縫製プログラム作製処理の第2の例を示すフローチャートである。
【図8】 縫製プログラム作製処理の第3の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1・・・プログラム式電子ミシン、3・・・ミシンテーブル、5・・・ベッド部、6・・・アーム部、7・・・針板、8・・・布押え装置、10・・・送り板、11・・・押え腕、12・・・布押え板、14・・・押えソレノイド、16・・・針棒、18・・・縫針、20・・・操作パネル、22・・・プログラマー、24・・・ケーブル、26・・・操作部、27・・・LED、28・・・液晶ディスプレイ装置、30・・・筐体、32・・・フレキシブルディスク装置、34・・・ペダルスイッチ、40・・・ミシン本体側の制御系、60・・・プログラマー側の制御系、41,61・・・CPU、42,62・・・ROM、43,63・・・RAM、45・・・操作部、47・・・LED、50,70・・・通信部、52,72・・・ブザー、54・・・X軸モータ、55・・・Y軸モータ、56・・・ミシンモータ、75・・・バックライト。
Claims (4)
- 縫製経路の始点から終点に至るまでのステッチ形成位置を示すステッチデータが前記始点から終点に至る順序で含まれた縫製プログラムに従って、縫製時の動作が制御されるプログラム式電子ミシンにおいて、
利用者が指定したステッチデータ数、または、利用者が指定したパラメータから算出されるステッチデータ数のいずれかと、環状に閉じた縫製経路を縫製するためのステッチデータを含む第1の縫製プログラムとに基づいて、前記第1の縫製プログラムに含まれたステッチデータの内、前記始点から所定の針落点に至るまでの前記ステッチデータ数分のステッチデータを、末尾のステッチデータの後に複写する、もしくは、所定の針落点から前記終点に至るまでの前記ステッチデータ数分のステッチデータを、先頭のステッチデータの前に複写することにより、縫い始めおよび縫い終りの重ね縫いが行われる第2の縫製プログラムを作製する重ね縫いデータ作製手段
を備えたことを特徴とするプログラム式電子ミシン。 - 請求項1記載のプログラム式電子ミシンにおいて、
前記重ね縫いデータ作製手段が複写するステッチデータの数を、数値によって指定可能な針数指定手段
を備えたことを特徴とするプログラム式電子ミシン。 - 請求項1または請求項2記載のプログラム式電子ミシンにおいて、
縫製経路上の重ね縫いを行うべき範囲の長さを、数値によって指定可能な長さ指定手段と、
該長さ指定手段により指定された縫製経路の長さ、および針落点間のピッチに基づいて、前記重ね縫いデータ作製手段が複写するステッチデータの数を算出する第1の針数算出手段と
を備えたことを特徴とするプログラム式電子ミシン。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプログラム式電子ミシンにおいて、
円または円弧状の縫製経路上の重ね縫いを行うべき範囲に対応する中心角を、数値によって指定可能な中心角指定手段と、
該中心角指定手段により指定された中心角、前記円または円弧状の縫製経路の半径、および針落点間のピッチに基づいて、前記重ね縫いデータ作製手段が複写するステッチデータの数を算出する第2の針数算出手段と
を備えたことを特徴とするプログラム式電子ミシン。
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