JP3733654B2 - 潤滑剤含有ポリマによる潤滑リニアガイド装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リニアガイド装置に係り、特に、その構成部品であるスライダ内を転動する多数の転動体に対して長期にわたり潤滑剤を自動的に供給することを可能とした潤滑剤含有ポリマによる潤滑方式のリニアガイド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般的に使用されるリニアガイド装置としては、例えば図10に示すように、外面に軌道溝3を有して軸方向に延びる案内レール1と、その案内レール1を跨いで組み付けられたスライダ2を備えたものが知られている。スライダ2はスライダ本体2Aとその両端部に取り付けられたエンドキャップ2Bとからなり、スライダ本体2Aは両袖部4の内側面に案内レール1の軌道溝3に対向する軌道溝が形成されるとともに、袖部肉厚部を軸方向に貫通する転動体戻し路を有している。一方、エンドキャップ2Bは、スライダ本体2Aの軌道溝とこれに平行な転動体戻し路とを連通させる湾曲路を有しており、それらの軌道溝と転動体戻し路と両端の湾曲路とで転動体の循環回路が形成されている。その転動体の循環回路内には転動体である多数の鋼球が装填されている。
【0003】
案内レール1に組み付けたスライダ2は、対向する両軌道溝内の転動体の転動を介して案内レールに沿い滑らかに移動し、その移動中、転動体は案内レールの軌道溝の溝面,スライダの負荷軌道溝の溝面,湾曲路の内面,転動体戻し路内面等に転がり接触しつつ転動して、スライダ内の転動体循環路を循環する。
【0004】
なお、図11に示すように、スライダ2には、防塵のために両端にサイドシール5、下面にアンダーシール6が装着されている。
また、スライダ2の内部には、グリースニップル7からグリースや潤滑油が充填されて、転動する転動体の潤滑が行われる。
【0005】
しかしながら、このように潤滑油またはグリースをそのまま直接に用いる潤滑方式のリニアガイド装置では、特に高温環境で使用されるような場合に、スライダ内に充填されているそれら潤滑剤が流動して外部に流出してしまうため消耗が早く、短期間に補給を繰り返さなければならない。また、異物の多い環境中での使用の場合、一例を挙げると木屑やパウダー状の異物中では、充填された潤滑剤が異物により油分を吸い取られてしまい潤滑不良をまねくおそれがある。
【0006】
この点を改善するため、本出願人は先に、リニアガイドのサイドシールやアンダーシールの少なくともリップ部を潤滑剤含有のゴム又は合成樹脂(潤滑剤含有ポリマ)により形成したリニアガイドのシール装置を提案している(特開平6−346919号公報参照)。この従来例では、リニアガイド装置のシール部の案内レールの表面と接触する部分すなわちシールリップ部を潤滑剤含有のゴム又は合成樹脂で構成し、このリップ部から長期間にわたって連続的にしみだす潤滑剤を自動的に軌道溝及び転動体に供給するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の潤滑剤含有ポリマ部材によるリニアガイド装置の潤滑は、シールのリップ部のみを潤滑剤含有のゴム又は合成樹脂で形成するのではなく、リニアガイドの他の構成部品、例えばエンドキャップ,リターンガイド等を潤滑剤含有ポリマで形成することも考えられる。しかしその場合には以下のような未解決の課題がある。
【0008】
▲1▼ 潤滑剤含有ポリマ部材は、潤滑剤を多量に含有しているので、合成樹脂・金属等の従来の夫々の部材の材質に比べて硬さ・強度等がかなり低くなっており、そのまま使用すると長期の使用によって破損、亀裂などが生じ易く、その結果リターンガイド等の本来の機能を果たすことが困難となる。
【0009】
▲2▼ 強度向上を目的として金属製などの補強部材を用いることが考えられるが、潤滑剤含有ポリマに含まれる多量の油分のために補強部材との接合が難しく、たとえ接合できたとしても剥離し易く、長期の使用に耐えることができない。
【0010】
そこで、本発明は、このような従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、潤滑剤含有ポリマ部材であるにもかかわらず補強部材と強固に接合され、使用時の破損や亀裂等が生じにくく、且つ各々の潤滑剤含有ポリマ部材からスライダ内部の転動体に対して、長期にわたり安定して潤滑剤を自動的に供給できる長寿命の潤滑剤含有ポリマによる潤滑リニアガイド装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る潤滑剤含有ポリマによる潤滑リニアガイド装置は、外面に軸方向の軌道溝を有する案内レールと、その案内レールに組み付けられるとともに前記軌道溝に対向する負荷軌道溝及びこの負荷軌道溝の両端部に湾曲路を介して連結された転動体戻し路を有するスライダと、前記湾曲路及び転動体戻し路を経て循環可能にスライダに装填された多数の転動体とを備えたリニアガイド装置において、少なくとも一面がポリオレフィン系合成樹脂からなる補強材とポリオレフィン系ポリマ及び潤滑剤からなる潤滑剤含有ポリマとを当該潤滑剤含有ポリマが前記ポリオレフィン系合成樹脂側となるように一体成形して接合した潤滑剤含有ポリマ部材を、前記補強材と前記潤滑剤含有ポリマとが前記転動体に接触するように前記スライダに配設したことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記潤滑剤含有ポリマ部材は、スライダの前記転動体戻し路を形成する孔に挿入して用いるチューブであって、転動体戻し路と潤滑剤の供給源とを兼ねたものとすることができる。
【0013】
また、前記潤滑剤含有ポリマ部材は、スライダの前記転動体戻し路の内壁の一部を構成すると共に潤滑剤の供給源を兼ねたものとすることもできる。
また、前記潤滑剤含有ポリマ部材は、スライダの前記湾曲路の一部を構成すると共に潤滑剤の供給源を兼ねたものとすることができる。
【0014】
また、前記潤滑剤含有ポリマ部材は、スライダの両端に取り付けられるエンドキャップであって、転動体の循環と潤滑剤の供給との両機能を兼ねたものとすることができる。
【0015】
以下に、本発明の潤滑剤含有ポリマ部材について詳しく説明する。
【0016】
本発明のリニアガイド装置に使用する潤滑剤含有ポリマ部材は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン,ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリα−オレフィン系ポリマの群から選定したポリマに、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステル・トリメリット酸エステルのようなエステル油等の何れかを混合して加熱溶融した後、所定の型に注入して加圧しながら冷却固化させて成形したものであり、予め酸化防止剤,錆止め剤,摩耗防止剤,あわ消し剤,極圧剤等の各種の添加剤を加えたものでもよい。
【0017】
上記ポリマの群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、1×103 〜5×106 の範囲におよんでいる。その中で、平均分子量1×103 〜1×105 という比較的低分子量のものと、1×106 〜5×106 という超高分子量のものとを、単独もしくは必要に応じて混合して用いる。
【0018】
上記ポリα−オレフィン系ポリマと潤滑剤との混合比率は、全重量に対してポリα−オレフィン系ポリマが20〜70重量%好ましくは20〜50重量%、潤滑剤は残余の量、即ち80〜30重量%好ましくは80〜50重量%である。潤滑剤を50重量%以上とした方が潤滑剤の供給量が多くなるので好ましい。ポリα−オレフィン系ポリマが20重量%未満では、リニアガイド装置に使用する部材に必要な機械的強度が不足する。一方、ポリα−オレフィン系ポリマが70重量%を越えると残余の潤滑剤の量が30重量%未満となり、潤滑剤の供給量が不足して潤滑不良を起こし易い。
【0019】
本発明の潤滑剤含有ポリマ部材の機械的強度を向上させるため、上述のポリα−オレフィン系ポリマに、以下のような熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を添加したものでもよい。
【0020】
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド,ポリカーボネート,ポリブチレンテレフタレート,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルスルホン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリアミドイミド,ポリスチレン,ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0021】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂,フェノール樹脂,ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0022】
これらの樹脂は、単独または混合して用いても良い。
更に、ポリオレフィン系ポリマーとそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えてあっても良い。
【0023】
また、本発明のリニアガイド装置における各部材の補強材としては、鋼,アルミニウム等の芯部にポリオレフィン系合成樹脂を被覆したもの、又は同様の芯部にポリオレフィン系合成樹脂製部材を接着材等で接着したもの、又はポリオレフィン系合成樹脂からなる板のみからなるものを用いる。それらのポリオレフィン系合成樹脂としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリメチルペンテン等が用いられる。
【0024】
更に、本発明のリニアガイド装置を構成する各部材において、補強材のポリオレフィン系合成樹脂側の面と潤滑材含有ポリマ部材との接合方法の具体例は、以下のとおりである。
【0025】
先ず、射出成形機にセットされた適当な温度に保持された所定の金型のキャビティ中に補強板のポリオレフィン系合成樹脂面を有する金属製芯金を挿入して固定する。その後、射出成形機によって、金型キャビティ内に、潤滑剤含有ポリマを可塑化(溶解)したものを注入し、冷却固化させてキャビティ形状に形成する。これにより、補強材のポリオレフィン系合成樹脂と同種材料であるポリオレフィン系ポリマからなる潤滑剤含有ポリマとが容易に且つ強固に一体化されて本発明の各部材が成形される。因みに、補強剤を例えば金属やナイロンのようにポリオレフィン系ポリマとは異種の材料で形成した場合には、両者は良好に接合されず容易に剥離してしまう。
【0026】
本発明の潤滑剤含有ポリマによる潤滑リニアガイド装置は、転動体に接触させてスライダに配設した潤滑剤含有ポリマ部材から潤滑剤が経時的に徐々にしみ出して、転動する転動体の面に均一に供給される。そのため、たとえ高温の悪環境にあっても長期間にわたって安定した潤滑が行われる。
【0027】
スライダの転動体戻し路の全部あるいは一部を潤滑剤含有ポリマ部材で形成すると、スライダの移動に伴って転動体戻し路を転動しつつ循環する転動体が当該転動体戻し路を通過する際に、潤滑剤含有ポリマ部材からしみ出した潤滑剤が自動的に転動体に供給される。
【0028】
また、スライダの湾曲路の構成部材を潤滑剤含有ポリマ部材で形成すると、スライダの移動に伴って湾曲路を経て転動しつつ循環する転動体が、転動体戻し路を経て当該湾曲路を通過し負荷軌道溝に移る際に、潤滑剤含有ポリマ部材からしみ出した潤滑剤が自動的に転動体に供給される。
【0029】
また、スライダの両端に取り付けられるエンドキャップを潤滑剤含有ポリマ部材で形成すると、転動体がエンドキャップの湾曲路を移動する際に、潤滑剤含有ポリマ部材からなるエンドキャップからしみ出した潤滑剤が自動的に転動体に供給される。
【0031】
また、補強材と潤滑剤含有ポリマとの接合は、補強材の一面に形成されたポリオレフィン系合成樹脂に潤滑剤含有ポリマの可塑化物を射出する際、両材料が同種であるので、その接合が強固になされる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、従来と同一ないし相当部分には同一の符号を付してある。
【0033】
まず、本実施形態におけるリニアガイド装置の全体構造について、図1〜図6を参照して説明する。
図1、図2において、横断面角形の案内レール1上に横断面形状がほぼコ字形のスライダ2が軸方向に相対移動可能に跨架されている。スライダ2はスライダ本体2Aの軸方向の両端部にエンドキャップ2Bを着脱可能に固着してある。案内レール1の上面1aと両側面1bが交叉する稜線部には、断面ほぼ1/4円弧形状の凹溝が軌道溝13として軸方向に長く形成されている。また、案内レールの両側面1bの中間位置には、断面ほぼ半円形の軸方向に長い軌道溝3が設けられている。
【0034】
一方、スライダ2の本体2Aの両袖部4の内側のコーナ部には、案内レール1の軌道溝13に対向する断面ほぼ半円形の負荷軌道溝18が形成され、スライダ袖部4の内側面の中央部には案内レール1の軌道溝3に対向する断面ほぼ半円形の負荷軌道溝19が形成されている。
【0035】
上記の案内レールの軌道溝13とスライダの負荷軌道溝18とで負荷転動体転動路21が構成され、案内レールの軌道溝3とスライダの負荷軌道溝19とで負荷転動体転動路22が構成されている。
【0036】
また、スライダ本体2Aの袖部4の上部肉厚に、負荷軌道溝18に平行な軸方向の断面円形の貫通孔からなる転動体戻し路23が形成され、袖部4の下部肉厚内に、軌道溝3に平行する同様の軸方向貫通孔からなる転動体戻し路24が形成されている。
【0037】
エンドキャップ2Bは、合成樹脂材の射出成形品で、断面ほぼコ字状に形成されている。そして、スライダ本体2Aとの接合面(裏面)には、図3に示すように、両袖部に斜めに傾斜した半円状の上凹部31と下凹部32が上下に形成されるとともに、各半円状の凹部31,32の中心部を横断して半円柱状の凹溝33が設けてある。その半円柱状の凹溝33には、図4、図5に示す半円筒状のリターンガイド35が嵌合される。このリターンガイド35の外径面の中央部には、転動体Bの案内面となる断面円弧状の凹溝36が半円状に形成され、リターンガイド35の内径側の凹部37は潤滑剤通路であり、その凹部37から外径側の凹溝36に抜ける貫通孔37Aが給油孔として形成されている。
【0038】
この実施形態のリターンガイド35は合成樹脂材の射出成形品である。
このようなリターンガイド35を半円状の凹部31,32に組み込むことにより、エンドキャップ2Bの裏面に断面円形の半ドーナツ状の湾曲路38が上下二段に形成される。そのエンドキャップ2Bをスライダ本体2Aに取り付けて、湾曲路38で、スライダ本体2Aの負荷軌道溝18と転動体戻し路23とを連通させる(図6参照)。下段の負荷軌道溝19と転動体戻し路24も同様に連通させる。
【0039】
上記の負荷軌道溝18(19),転動体戻し路23(24)及び湾曲路38で構成される転動体無限循環経路に、多数の転動体Bが転動自在に挿入されている。
【0040】
また、エンドキャップ2Bの表側の給油ニップル7から注入された潤滑剤が、エンドキャップ2B裏面の給油溝49を通りリターンガイド35の内径側の凹部37から給油孔37Aを経て、湾曲路38内へ送り込まれるようにしてある。
【0041】
続いて、上記の全体構造を有する本発明のリニアガイド装置の部分構造の実施形態について説明する。
図7は、本発明における第1の実施形態としてのスライダ本体2Aを示したものである。
【0042】
この第1の実施形態は、スライダ本体2Aの斜視図である図7(a)に示す転動体戻し路23,24を通常より大径にするとともに、各転動体戻し路23,24内に潤滑剤含有ポリマ部材からなり内径が転動体Bの直径より僅かに大きい転動体循環チューブ50をそれぞれ挿入している。
【0043】
この転動体循環チューブ50は、図7(b)に示すように、円筒体の円周面に所定間隔を保って軸方向に延長し且つ内外周面を貫通する複数の長孔51を穿設した円筒籠状のポリエチレン製の補強材52と、その長孔51内に一体に接合された複数の潤滑剤含有ポリマ53とでなる潤滑剤含有ポリマ部材として構成されている。この潤滑剤含有ポリマ部材は、まず、予め射出成形された補強材52を射出成形機に保持された所定の金型中にセットし、この金型内に可塑化された潤滑剤含有ポリマを射出して冷却することにより、補強材52と潤滑剤含有ポリマ53とが一体化されて接合されている。
【0044】
ここで、潤滑剤含有ポリマ53の組成は、パラフィン系鉱油(日本石油(株)製FBKRO100)75wt%、低分子量ポリエチレン(三菱油化(株)製PZ50U)16wt%、超高分子量ポリエチレン(三井石油化学(株)ミペロンXM220)9wt%に設定されている。
【0045】
このようにして、補強材52と潤滑剤含有ポリマ53とを一体化したことから、潤滑剤含有ポリマ部材は強度が大となり破損しにくい。しかも、補強材52と潤滑剤含有ポリマ53との接合が容易で且つ剥離しにくく長期の使用に耐え得るものとなる。
【0046】
次に上記第1の実施形態の動作を説明する。
機台に固定した案内レール1上をスライダ2が移動すると、転動体Bは負荷転動体転動路21(22)内を転動しつつスライダ2の移動方向にスライダ2より遅い速度で移動し、一端側の湾曲路38でUターンして転動体戻し路23(24)を逆方向に転動しつつ移動し、他端側の湾曲路38で逆Uターンして負荷転動体転動路21(22)内に戻る循環を繰り返す。
【0047】
こうしてリニアガイド装置が駆動されると、転動体戻し路23(24)を形成している転動体循環チューブ50からは、潤滑剤が経時的に徐々にしみ出して、当該チューブ内を転動する転動体Bへ自動的に供給され、長期間にわたり安定した潤滑が行われる。したがって、殊更に潤滑剤を外部からスライダ2に供給しないでも低トルクで良好な運転を長時間続けることができる。
【0052】
次に、本発明における第2の実施形態を図8について説明する。
この第2の実施形態は、スライダ本体2Aの軸方向両端部にそれぞれ形成されたエンドキャップ2B内における転動体循環路となる湾曲路38の一部である内壁部を構成するリターンガイド35を潤滑剤含有ポリマ部材で形成し、これを各エンドキャップ2Bの裏面における半円柱状の凹溝33に嵌合させたものである。
【0053】
このリターンガイド35は、図8に示すように、ポリエチレン80wt%、チタン酸カリウムウィスカー20wt%の組成を有する射出材料を射出成形することにより、転動体Bの案内面となる断面円弧状の凹溝36の底部に沿って凹部57aを形成した補強材57と、この補強材57を射出成形機にセットされた所定の金型内にセットした後、凹部57a内に射出成形された潤滑剤含有ポリマ58とでなる潤滑剤含有ポリマ部材として構成されている。
【0054】
ここで、潤滑剤含有ポリマ58の組成は、パラフィン系鉱油(日本石油(株)製FBKRO100)80wt%、低分子量ポリエチレン(三菱油化(株)製PZ50U)10wt%、超高分子量ポリエチレン(三井石油化学(株)ミペロンXM220)10wt%に設定されている。
【0055】
この第2の実施形態の潤滑剤含有ポリマ部材は、チタン酸カリウムウィスカーを含むポリエチレンからなる補強材57と潤滑剤含有ポリマ58とを一体成形してあるから、十分な強度を有し剥離しにくく、長時間の使用に耐え得るものとなっている。
【0056】
この第2の実施形態においても、転動体戻し路23(24)を転動してきた転動体Bが、湾曲路38でUターンされて負荷軌道溝21(22)内に戻る際に、潤滑剤含有ポリマ部材であるリターンガイド35の潤滑剤含有ポリマ58から潤滑剤が経時的に徐々にしみ出して、湾曲路38内を転動する転動体Bへ自動的に供給され、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
さらに、本発明における第3の実施形態を図9について説明する。
この第3の実施形態は、スライダ本体2Aの両端面に取り付けられるエンドキャップ2Bにおいて転動体Bとの接触面となる湾曲路38の内面の一部を潤滑剤含有ポリマ60で置き換えている。すなわち、湾曲路38の内面を形成するべくエンドキャップの裏面に設けた半円状の上凹部31と下凹部32との内壁面(転動体接触面)の一部を軸方向に部分的に切り欠いて、各凹部31,32をそれぞれ横断する断面台形のアリ溝61(入り口の溝幅Hを狭くして抜け止めしてある)を複数本設け、その溝61内に潤滑剤含有ポリマ60を充填している。即ちこの実施形態では、エンドキャップ2Bは、炭素繊維を20重量%混入したポリエチレン製の補強材62からなるエンドキャップ2Bの本体と、これを射出成形機の金型内にセットした後、各溝61にインサート成形した潤滑剤含有ポリマ60からなる潤滑剤含有ポリマ部材として構成されている。
【0058】
ここで、潤滑剤含有ポリマ60の組成は、アルキルジフェニルエーテル型合成油((株)松村石油研究所製LBX−100)70wt%、低分子量ポリエチレン(三菱油化(株)製PZ50U)21wt%、超高分子量ポリエチレン(三井石油化学(株)ミペロンXM220)9wt%に設定されている。
【0059】
この第3の実施形態の潤滑剤含有ポリマ部材は、炭素繊維を含むポリエチレンからなる補強材62と潤滑剤含有ポリマ60とを一体成形してあるから、十分な強度を有し剥離しにくく、長時間の使用に耐え得るものとなっている。
【0060】
この第3の実施形態においても、潤滑剤含有ポリマ部材の潤滑剤含有ポリマ60から潤滑剤が経時的に徐々にしみ出して湾曲路38内を転動する転動体Bへ自動的に供給され、長期間にわたり安定した潤滑が行われるから、低トルクで良好な運転を長時間続けることができるという第1,第2の各実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
なお、この第3の実施形態では、凹部31,32をそれぞれ横断するアリ溝61を各2本設けてそれぞれに潤滑剤含有ポリマ60を充填した場合を説明したが、各2本以上であってもよい。また、凹部31,32を横断する方向ではなく、凹部31,32の湾曲面に沿った方向に溝61を設けて潤滑剤含有ポリマ60を充填した構造にしてもよい。
【0067】
なお、上記各実施形態では、各部に個別に潤滑剤含有ポリマ部材を適用した場合について説明したが、これらの複数種を任意に組み合わせるようにしてもよく、さらには全ての実施形態を組み合わせるようにしてもよく、この場合にはより長期間にわたり安定した潤滑を行うことができる。
【0068】
また、本発明を適用し得るリニアガイド装置は、前記実施形態のタイプに限定されるものではなく、例えば負荷軌道溝が片側二条以上のものでもよく、また転動体がボールではなくころであっても良い。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、リニアガイド装置のスライダに、転動体に接触させて潤滑剤含有ポリマ部材を配設したため、その潤滑剤含有ポリマ部材から潤滑剤が経時的に徐々にしみ出して転動体面に自動的に供給され、その転動体の転動により転動体が接触する負荷転動体転動路にもくまなく均一に供給される。また、表面がポリオレフィン系合成樹脂からなる補強材とポリオレフィン系ポリマと潤滑剤とからなる潤滑剤含有ポリマとは同種材料であり、両者が一体成形されて接合されているので、両者が強固に接合されて互いに剥離することがない。その結果、長期間にわたり良好な潤滑が可能となって長寿命のリニアガイド装置が提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のリニアガイド装置における第1の実施形態の正面図である。
【図2】 図1のエンドキャップを取り外したものの正面図である。
【図3】 リターンガイドを除去して示すエンドキャップの背面図である。
【図4】 リターンガイドの正面図である。
【図5】 リターンガイドを装着したエンドキャップの斜視図である。
【図6】 図1のVI−VI線矢視で示す部分断面図である。
【図7】 (a)は本発明における第1の実施形態を示すスライダ本体の斜視図、(b)は転動体循環チューブの斜視図である。
【図8】 本発明における第2の実施形態を示すリターンガイドの正面図である。
【図9】 (a)は第3の実施形態を示すエンドキャップの裏面図、(b)はエンドキャップとスライダ本体との接合部の部分断面図、(c)は溝断面形状の図である。
【図10】 従来のリニアガイド装置の全体斜視図である。
【図11】 図10のリニアガイド装置の下面側を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 案内レール
2 スライダ
2B エンドキャップ(潤滑剤含有ポリマ部材)
3 軌道溝
13 軌道溝
18 負荷軌道溝
19 負荷軌道溝
23 転動体戻し路
24 転動体戻し路
35 リターンガイド(潤滑剤含有ポリマ部材)
38 湾曲路
B 転動体
50 転動体循環チューブ(潤滑剤含有ポリマ部材)
51 補強材
52 潤滑剤含有ポリマ
57 補強材
58 潤滑剤含有ポリマ
60 潤滑剤含有ポリマ
62 補強材
Claims (1)
- 外面に軸方向の軌道溝を有する案内レールと、その案内レールに組み付けられるとともに前記軌道溝に対向する負荷軌道溝及びこの負荷軌道溝の両端部に湾曲路を介して連結された転動体戻し路を有するスライダと、前記湾曲路及び転動体戻し路を経て循環可能にスライダに装填された多数の転動体とを備えたリニアガイド装置において、
少なくとも一面がポリオレフィン系合成樹脂からなる補強材とポリオレフィン系ポリマ及び潤滑剤からなる潤滑剤含有ポリマとを当該潤滑剤含有ポリマが前記ポリオレフィン系合成樹脂側となるように一体成形して接合した潤滑剤含有ポリマ部材を、前記補強材と前記潤滑剤含有ポリマとが前記転動体に接触するように前記スライダに配設したことを特徴とする潤滑剤含有ポリマによる潤滑リニアガイド装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP23049096A JP3733654B2 (ja) | 1996-08-30 | 1996-08-30 | 潤滑剤含有ポリマによる潤滑リニアガイド装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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