JP3732753B2 - 生分解性共重合ポリエステル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、脂肪族ポリエステルと芳香族ポリエステルとの共重合体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、ポリ乳酸単位及びp−ヒドロキシ安息香酸単位よりなる新規な生分解性共重合ポリエステル及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自然環境保護の見地から、自然環境中で分解する生分解ポリマー及びその成形品が求められ、脂肪族ポリエステル等の生分解樹脂の研究開発が活発に行われている。特に、乳酸系ポリマーは融点が170〜180℃と高く、しかも透明性に優れるため、生分解性の包装材料や成形品等の材料として大いに期待されている。
【0003】
このポリ乳酸は、生分解性を有する脂肪族系ポリエステルの中では比較的耐熱性が高いが、未だ十分とは言えず、その耐熱性向上が求められている。また、剛性に代表される機械特性の向上も強く望まれている。そこで、ポリ乳酸への芳香族系モノマー共重合が種々検討されてきた。例えば、特開平8−217865号公報にはポリ乳酸とポリエチレンテレフタレートとの共重合によってこれら物性の改善を図ることが開示されている。しかしながら、この共重合体は機械物性が幾分改善されるものの、生分解性が低下し、生分解性と剛性に両方を満足するものとは言えない。
【0004】
ところで、p−ヒドロキシ安息香酸はそれ自体が生合成されうる化合物であり、生分解性を有しつつ耐熱性、剛性を上げる観点から、その共重合が検討されている。例えば、これまでに乳酸とp−ヒドロキシ安息香酸との共重合体の製造方法としては、欧州特許出願公開EP0710684号(A2)に、ジフェニルエーテル溶媒中で乳酸モノマーをある程度高重合体にした後、p−ヒドロキシ安息香酸を加え重合度を急激に上昇させる方法が提案されている。この方法では、p−ヒドロキシ安息香酸は専ら分子鎖拡張剤として使用されており、共重合成分を意図したものとしては用いられていない。また、組成比も乳酸モノマーに対してp−ヒドロキシ安息香酸をごく少量加えた組成しか検討されておらず、反応の結果得られた共重合ポリマーの光学データ等も示されていない。さらに、この方法では、反応において溶媒としてジフェニルエーテルを用いているため、ポリマー抽出に手間がかかるほか、コスト高の原因にもなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、ポリ乳酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸とからなる新規な生分解性ポリエステル共重合体及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明者らは、乳酸のポリマー鎖中に耐熱性ポリマー、液晶性ポリマーのモノマーユニットでありなおかつ生分解性を示すp−ヒドロキシ安息香酸を共重合させることを鋭意研究した結果、特定の原料、組成を使用し、特定の重合条件を採用することで、ジフェニルエーテル等の可塑剤目的の溶媒を使用することなく、色相に優れた乳酸と芳香族ヒドロキシカルボン酸との共重合体を、工業的に安価に製造する方法を見出し、本発明を完成した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の生分解性の共重合ポリエステルは、下記式(a)で表わされる繰り返し単位
【0008】
【化7】
【0009】
及び、下記式(b)で表わされる繰り返し単位
【0010】
【化8】
【0011】
[上記式(b)中、Arは炭素数6〜20の2価の芳香族基を示す。]
から実質的になる共重合ポリエステルであって、該共重合ポリエステルにおける上記繰り返し単位(a)と上記繰り返し単位(b)とのモル比(Ma/Mb)が下記式(1)
【0012】
【数4】
60/40 ≦ Ma/Mb ≦ 93/7 ・・・(1)
[上記式(1)中、Maは乳酸の繰り返し単位(a)、Mbは芳香族ヒドロキシカルボン酸の繰り返し単位(b)の各モル数である。]
を満足し、かつ重量平均分子量が1,000以上1,000,000以下であることを特徴とする生分解性共重合ポリエステルである。
【0013】
該ポリエステルは、上記式(b)におけるArがp−フェニレン基であることが好ましく、また、上記式(a)の繰り返し単位の3個以上からなるポリ乳酸のブロックが上記式(b)の繰り返し単位の1個又は複数個を介して結合している生分解性共重合ポリエステルであることが好ましい。
また、本発明の製造方法は、下記式(A)で表わされるポリ乳酸と、
【0014】
【化9】
【0015】
[上記式(A)中の繰り返し数nは、数平均分子量から導かれる平均の繰り返し数であり、3以上15,000以下である。Yはポリ乳酸の末端基を示す。]
下記式(B)で表わされる芳香族ヒドロキシカルボン酸アリールエステルとを、
【0016】
【化10】
【0017】
[上記式(B)中のArは炭素数6〜20の2価の芳香族基を示し、Rは炭素数6〜20の1価の芳香族基を示す。]
下記式(2)
【0018】
【数5】
60/40 ≦ nMA/MB ≦ 93/7 ・・・(2)
[上記式(2)中、nMAはポリ乳酸(A)、MBは芳香族ヒドロキシカルボン酸モノアリールエステル(B)の各モル数である。なお、nMAは、実質的にはnMA={上記式(A)で表わされるポリ乳酸の重量(g)}/{繰り返し単位当りの分子量}によって導かれる値である。]
を満足するモル当量比で、触媒の存在下、加熱反応させることを特徴とする生分解性共重合ポリエステルの製造方法である。
この方法において、芳香族ヒドロキシカルボン酸アリールエステル(B)として、下記式(B’)
【0019】
【化11】
【0020】
[上記式(B’)中のRは炭素数6〜20の1価の芳香族基を示す。]
で表わされる芳香族ヒドロキシカルボン酸アリールエステルを使用することが好ましい。
【0021】
また、本発明では、ポリ乳酸(A)と芳香族ヒドロキシカルボン酸アリールエステル(B)とを反応させるに当たり、ポリ乳酸(A)の一部を下記式(A’)で表わされるラクチド
【0022】
【化12】
【0023】
に置き替え、ポリ乳酸(A)とラクチド(A’)とを芳香族ヒドロキシカルボン酸と反応させ、その際の各反応成分のモル当量比を下記式(3)
【0024】
【数6】
60/40 ≦[nMA+2MA’]/MB ≦ 93/7 ・・・(3)
[上記式(3)中、nMAはポリ乳酸(A)、MA’はラクチド(A’)、MBは芳香族ヒドロキシカルボン酸アリールエステル(B)の各モル数である。nMAは実質的にはnMA={上記式(A)で表わされるポリ乳酸の重量(g)}/{繰り返し単位当りの分子量}によって導かれる値である。]
を満足する範囲として反応させることを特徴とする上記生分解性共重合ポリエステルの製造方法を採用することも出来る。
【0025】
【発明の実施の形態】
<本発明の生分解性ポリエステル>
本発明の生分解性ポリエステルは、上に述べた通り、下記式(a)で表わされる繰り返し単位と下記式(b)で表わされる繰り返し単位とからなる新規な共重合ポリエステルである。
【0026】
【化13】
【0027】
ここで上記式(a)で表わされる脂肪族成分はポリ乳酸成分である。該ポリ乳酸成分にはD体、L体及びDL体があるが、そのいずれでもよく、またこれらの混合体でもよい。もう一方の芳香族ポリエステル成分は、上記式(b)で表わされる繰り返し単位を構成するものであり、上記式(b)中、Arは炭素数6〜20の2価の非反応性置換基を有していてもよい芳香族基を表わす。これらの芳香族基は、1個のベンゼン環又はナフタレン環を含むものでもよいが、複数のベンゼン環又はナフタレン環が直接結合したもの、あるいは、これらの環が−O−,−CO−,−S−,−SO2−,−CH2−,−C(CH3)2−等を介して結合したものでもよく、その一部にアルキレン基を含むものでもよい。
【0028】
かかる芳香族基の具体例としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4'−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4'−ビフェニレン基、4,4'−ジフェニレンスルフィド基、4,4'−ジフェニレンスルホン基、4,4'−ジフェニレンケトン基、4,4'−ジフェニレンエーテル基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、o−キシリレン基等が例示できる。なお、該芳香族基の水素原子のうち1つ又は複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。これらのうちで、生成ポリマーの耐熱性の点で、p−フェニレン基又は2,6−ナフチレン基が好ましく、特にp−フェニレン基であることが好ましい。なお、Arが2種以上の芳香族基で構成されてよく、ポリマー鎖中に2種以上の芳香族基が同時に併存してもかまわない。
【0029】
本発明の共重合ポリエステルでは、上記式(a)及び(b)の各成分が、下記式(1)
【0030】
【数7】
60/40 ≦ Ma/Mb ≦ 93/7 ・・・(1)
を満足するモル当量比で共重合していることが必要である。ここで上記式(1)中、Maは乳酸の繰り返し単位(a)、Mbは芳香族ヒドロキシカルボン酸の繰り返し単位(b)の各モル数である。Ma/Mbが60/40より小さい場合、十分な強度を持った共重合体となり得ない。一方、Ma/Mbが93/7より大きい場合、耐熱性が不十分となる。Ma/Mbの好ましい範囲は、65/35以上92/8以下、さらに好ましくは70/30以上90/10以下、特に好ましくは75/25以上92/8以下である。
【0031】
本発明の共重合ポリエステルの重量平均分子量は、1,000以上1,000,000以下である。ここで言う重量平均分子量はGPC分析によるポリスチレン換算値であり、測定法としてはサンプル20mgにテトラヒドロフラン10mlを加えて溶解して測定される値である。重量平均分子量が1,000より小さいと共重合ポリエステルの強度が不十分となり、1,000,000より大きいと成形性が低下する。本発明の共重合ポリエステルの重量平均分子量の好ましい範囲は2,000以上500,000以下、さらに好ましくは3,000以上400,000以下である。
【0032】
さらに本発明の共重合ポリエステルには、必要に応じて、各種の副次的添加物を加えていろいろな改質を行うことが出来る。副次的添加物の例としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤等その他類似のものが挙げられる。
【0033】
<本発明の生分解性共重合ポリエステルの製造方法>
本発明によれば、以下に詳述する2つの製造方法が提供される。
[1] 特定重合度のポリ乳酸と特定の芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体とを反応させる方法:
この方法では、原料(反応成分)として下記式(A)で表わされるポリ乳酸と、下記式(B)で表わされる芳香族モノヒドロキシモノカルボン酸のアリールエステルとを用いる。
【0034】
【化14】
【0035】
本発明の方法で使用する上記式(A)のポリ乳酸にはL体、D体あるいはDL体の3種の光学異性体が存在するが、それらのいずれも使用可能であり、またこれらの混合物でもよい。上記式(A)中の繰り返し数nは数平均分子量から導かれる平均の繰り返し数であり、3以上15,000以下である。nが3より小さい場合、実質的に環状構造が安定となりラクチドとなる。nが15,000より大きいものは円滑に共重合することが困難である。nの好ましい範囲は100以上10,000以下であり、さらに好ましくは1,000以上5,000以下である。なお、ポリ乳酸は−OH,−H等の通常の末端基を有するものでよい。(本発明では、上記式(A)の条件を満たすポリ乳酸を、以下「ポリ乳酸(A)」と略称することがある。)
また、上記式(B)中のArは炭素数6〜20の2価の芳香族基を表わし、Arは上記式(b)のものと同義である。かかる芳香族基の具体例としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、4,4'−イソプロピリデンジフェニレン基、4,4'−ビフェニレン基、4,4'−ジフェニレンスルフィド基、4,4'−ジフェニレンスルホン基、4,4'−ジフェニレンケトン基、4,4'−ジフェニレンエーテル基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、o−キシリレン基等が例示できる。なお、既に述べたように、該芳香族基の水素原子のうち1つ又は複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基で置換されていてもよい。これらのうちでも、生成ポリマーの耐熱性の点でp−フェニレン基、2,6−ナフチレン基が好ましく、p−フェニレン基であることが特に好ましい。ここで、Arがp−フェニレン基のとき、実質的に上記式(B)は上記式(B’)で表わすことができる。また、化合物(B)としては、上記式(B)を満足する限り2種以上の化合物を併用してもかまわない。
【0036】
上記式(B)中のRは炭素数6〜20の1価の芳香族基を表わす。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が例示できる。また、該芳香族基の水素原子のうち1つ又は複数がそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素等のハロゲン基;メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数5〜10のシクロアルキル基;フェニル基等の炭素数6〜10の芳香族基;窒素、リン、酸素、硫黄原子で置換されていてもよい。これらのうちで、フェニル基、4−クロロフェニル基が好ましく、更には、フェニル基であることが特に好ましい。またこれらは2種以上を同時に併用してもかまわない。
【0037】
すなわち、本発明で使用する上記式(B)で表わされる化合物としては、具体的にはp−ヒドロキシ安息香酸フェニルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸ナフチルエステル等を好ましい例として挙げることができ、p−ヒドロキシ安息香酸フェニルエステルが特に好ましい。(本発明では上記式(B)の化合物を、以下「芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)」と略称することがある。)
なお、上記式(B)で表わされる化合物以外の類似化合物、例えば、P−アセトキシ安息香酸の誘導体では、目的とする共重合ポリエステルは得られない。
【0038】
本発明の製造方法では、ポリ乳酸(A)及び芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)は、下記式(2)
【0039】
【数8】
60/40 ≦ nMA/MB ≦ 93/7 ・・・(2)
を満足する含有モル当量比で反応させる必要がある。ここで上記式(2)中、nMAはポリ乳酸(A)、MBは芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)の各モル数である。nMAは実質的にはnMA={ポリ乳酸(A)の重量(g)}/{繰り返し単位当りの分子量}によって導かれる値である。
【0040】
nMA/MBが60/40より小さい場合、得られる共重合ポリエステルの強度が不十分となり好ましくない。一方、nMA/MBが93/7より大きい場合、得られる共重合ポリエステルの耐熱性が不十分となり好ましくない。nMA/MBの好適な範囲は、75/25以上95/5以下、さらに好ましくは70/30以上90/10以下である。
【0041】
本発明の方法では、上記式(A)で表わされるポリ乳酸及び上記式(B)で表わされる化合物とを触媒の存在下、加熱反応させることで本発明の共重合ポリエステルを得ることができる。より具体的には、ポリ乳酸(A)と芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)との混合物を触媒存在下で加熱溶融重合反応を行う。反応温度は、特に制限はないが、140℃以上240℃以下が好ましい。140℃より低いとポリ乳酸(A)が溶融せず、240℃より高いとポリ乳酸(A)の分解が起こるため好ましくない。より好適な反応温度は170℃以上210℃以下であり、さらに好ましくは170℃以上210℃以下である。
【0042】
反応に際しては、ポリ乳酸(A)を溶融し、さらに芳香族オキシカルボン酸誘導体(B)を溶融したポリ乳酸(A)に溶解させ、混合した上で反応させることが好ましい。したがって、この場合、反応溶媒を必要としない。
【0043】
また、この重合反応において使用する触媒は特に限定されるものではないが、一般に、環状エステルの開環重合触媒、エステル交換触媒として用いられているものが使用可能であり、通常、その方が好ましい。適用な触媒としては、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム等の金属及びその誘導体が挙げられる。誘導体としては、金属アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物が望ましい。具体的には、塩化錫、オクチル酸錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、塩化鉛、塩化チタン、アルコキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウム等が挙げられ、これらの中でもオクチル酸錫が好適な触媒として挙げられる。触媒の添加量は、ポリ乳酸(A)と芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)と合計重量100重量部に対して、0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.0005〜0.3重量部、更には0.001〜0.1重量部が好ましい。
【0044】
共重合ポリエステルの分解及び着色を防ぐため、反応は乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。また、反応が十分に進行した際には高真空下で反応を行うことが望ましい。該重合反応は、バッチ、連続等公知の反応容器を用いて行うことが出来る。このようにして製造される共重合ポリエステルの重量平均分子量は、1,000以上1,000,000以下である。
[2]特定重合度のポリ乳酸とラクチドと特定の芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体とを反応させる方法:
本発明の製造方法では、上記[1]の製造方法において、ポリ乳酸(A)の一部(例えばその1〜90重量%)を下記式(A’)のラクチドに置き換え、これら両者を同時に芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体と反応することも可能である。すなわち、この方法では、下記式(A)で表されるポリ乳酸及び下記式(A’)で表わされるラクチドの混合物を、下記式(B)で表わされる芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体と反応させて共重合体を製造する。
【0045】
【化15】
【0046】
この方法で用いられるポリ乳酸(A)及び芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)は、上記[1]の製造方法において、既に述べたものと同義である。また、好ましい化合物や反応条件の例示も[1]の製造方法と実質的に同じである。
【0047】
一方、上記式(A’)で表わされるラクチドには、L体、D体あるいはDL体の3種の光学異性体が存在するがそれらのいずれも使用可能であり、またこれらの混合物でも差し支えない。(以下、上記のラクチ度をラクチド(A’)と略称することがある。)
これらの各反応成分は、下記式(6)
【0048】
【数9】
60/40 ≦[nMA+2MA’]/MB≦ 93/7 ・・・(6)
を満足するモル当量比で用いられる必要がある。[nMA+2MA’]/MBが60/40より小さい場合、十分な強度を持つ共重合体ではない。[nMA+2MA’]/MBが93/7より大きい場合、得られるポリマーは十分な耐熱性を持つ共重合体ではない。[nMA+2MA’]/MBの範囲は、好ましくは75/25以上95/5以下、さらに好ましくは70/30以上90/10である。ここで、上記式(6)中、MA、MA’、MB及びnMAは既に述べた通りである。
【0049】
以上のごとく、ポリ乳酸(A)、ラクチド(A’)及び芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)を触媒の存在下、加熱反応させることでも本発明の共重合ポリエステルを得ることができる。
【0050】
より具体的には、ポリ乳酸(A)とラクチド(A’)と芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)との混合物を、触媒存在下で、加熱溶融重合を行う。反応温度は、特に制限はないが、既に述べた上記方法[1]におけるポリ乳酸(A)と芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)との反応と実質的に同じである。また、触媒の添加量は、ポリ乳酸(A)、ラクチド(A’)及び芳香族ヒドロキシカルボン酸誘導体(B)の合計重量の100重量部に対して0.0001〜0.5重量部、好ましくは0.0005〜0.3重量部、更には0.001〜0.1重量部の範囲内が好ましい。
【0051】
反応に際し、共重合ポリエステルの分解及び着色を防ぐ目的で、反応は乾燥した不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。また、反応が十分に進行した段階では高真空下で反応を行うことが望ましい。この重合反応は、バッチ、連続等公知の反応容器を用いて行うことが出来る。このようにして製造される共重合ポリエステルの重量平均分子量は1,000以上1,000,000以下である。
【0052】
上述した両方法のいずれかで製造された本発明の共重合ポリエステルには、必要に応じて、各種の副次的添加物を加えていろいろな改質を行うことが出来る。副次的添加物の例としては、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、静電剤、離型剤、可塑剤、香料、抗菌・抗カビ剤、核形成剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤等その他類似のものが挙げられる。これらの添加時期としては、原料の仕込み時に添加してもよく、重合終了時に、反応槽内にて添加してもよく、また、得られた共重合ポリエステルにエクストルーダー等を用いて添加してもよい。該添加剤を配合する方法は、特に制限されるものではなく、従来既知の方法によって行うことが出来る。例えば、ミルロール、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、単軸あるいは二軸押出し機等を用いて良好に混合混練することができる。
【0053】
【発明の効果】
本発明に係る生分解性共重合ポリエステルは、従来の同種のポリエステルに比べて、(1)生分解性及び(2)機械的物性の点で優れており繊維、フィルム、シート、その他の成形品の材料として、従来の同種のポリエステルより実用性が大きいものである。
【0054】
また、本発明の製造方法によれば、無溶媒で上記の共重合ポリエステルを製造することができるので、コスト的に有利であり、また溶媒使用による環境問題も回避できると言う効果がある。
【0055】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによっていささかも限定されるものではない。なお、以下の実施例における各測定値は次の方法により求めた値である。
(1)重合体の重量平均分子量:GPC分析によるポリスチレン換算値、測定法としてはサンプル20mgにテトラヒドロフラン10mlを加えて溶解して測定を行った。
(2)ガラス転移温度(Tg):走査型示差熱量計(DSC)で10℃/minの昇温速度にて測定した値である。
(3)共重合体の構造:重クロロホルム溶液の1H−NMR(核磁気共鳴)スペクトル、KBr錠剤法によるIR(赤外線)スペクトルにより決定した。なお、測定装置は1H−NMRスペクトル分析では、JNR−EX270を使用し、溶媒に重クロロホルムを用いて測定した。IR−スペクトル分析には、SHIMADZU IR−470を使用し、KBr錠剤法を採用した。
【0056】
[実施例1]
ポリ乳酸「ラクティ9020」(島津製作所製)の19.44重量部を210℃にて加熱溶融させたところに、p−ヒドロキシ安息香酸フェニルエステル4.28重量部を添加し攪拌した。反応系内が均一になった後、これにオクチル酸スズを0.001重量部加えて1時間攪拌した。重合度の上昇を確認した後、真空度を0.3mmHgに設定して10分間攪拌を継続し、未反応のラクチドを留去することで、重量平均分子量7559、分子量分布(Mw/Mn)=1.99の共重合ポリエステルを得た。
【0057】
この共重合ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は60.85℃であり、融点(Tm)は観測されなかった。このポリマーの1H−NMR、IRスペクトルをそれぞれ図1及び図2に示す。
また、このサンプルを土中に埋めて分解状況を観察したところ、ほぼ6ヶ月で約70%の重量減少が観察され、良好な生分解性を示した。
【0058】
[実施例2]
ポリ乳酸「ラクティ9020」(島津製作所製)を9.72重量部及びL−ラクチド9.72重量部を210℃にて加熱溶融させたところに、p−ヒドロキシ安息香酸フェニルエステル4.28重量部を添加し攪拌した。反応系内が均一になった後オクチル酸スズを0.001重量部加え1時間攪拌した。重合度の上昇を確認した後真空度を0.3mmHgに設定し10分間攪拌を継続し未反応のラクチドを留去することで重量平均分子量6824、分子量分布(Mw/Mn)=1.85の共重合ポリエステルを得た。このポリマーのガラス転移温度(Tg)は59.21℃でありTmは観測されなかった。
また、このサンプルを土中に埋めて分解状況を観察したところ、ほぼ6ヶ月で約70%の重量現象が観察され、良好な生分解生を示した。
【0059】
[比較例1]
20.16重量部のポリ乳酸「ラクティ9020」(島津製作所製)を210℃にて加熱溶融させたところにp−アセトキシ安息香酸10.8重量部を添加し攪拌した。実施例1と同様に、反応系内が均一になった後オクチル酸スズを0.001重量部加え1時間攪拌したところ、系が白濁し、不透明な脆いポリマーが得られたのみであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の生成物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1の生成物のIRスペクトルである。
Claims (6)
- 上記式(b)におけるArがp−フェニレン基であることを特徴とする請求項1記載の生分解性共重合ポリエステル。
- 上記式(a)の繰り返し単位の3個以上からなるポリ乳酸のブロックが上記式(b)の繰り返し単位の1個又は複数個を介して結合していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生分解性共重合ポリエステル。
- 下記式(A)で表わされるポリ乳酸と、
下記式(2)
を満足するモル当量比で、触媒の存在下、加熱反応させることを特徴とする生分解性共重合ポリエステルの製造方法。
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