JP3730913B2 - 直流機とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネットを有した直流機及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来では、自動車ワイパモータは、ブラシを有する直流モータが採用されている。この中では、3ブラシモータ、所謂第3のブラシを用いたモータがある。この種のモータは、モータの回転速度を変える目的でその第3のブラシが用いられている。その主な原理としては、使用する磁束を減少させることによってモータの回転速度を高くするものである。具体的には、設置位置の異なるブラシを設けておき、電機子コイルの通電範囲をブラシの選択(組み合わせ)により変えることで簡単に実現していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の構成はモータの通常運転(低速仕様)において、高速用のブラシ(第3のブラシ)が隣り合う整流子片を跨ぐ毎に、該ブラシ(第3のブラシ)により短絡される電機子コイル中に発生している誘導起電力により通電方向と逆向きに大きな電流が瞬間的に流れる。図11において、ピークA2,B2は、その電機子コイル中に流れるコイル電流の瞬間変化を示している。これにより、ブラシで火花放電が発生することから、電気雑音やブラシ摩耗を引き起こし、所謂第3のブラシによる整流障害を引き起こす。そこで、モータの駆動回路に雑音防止ためのコイル(インダクター)やコンデンサ等を複数組み合わせて対応していた。これは、モータの部品点数及びコストの低減を図る上の問題点となった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、マグネットの磁束分布を変えることで、所謂第3のブラシによる整流障害を取り除くことができ、部品点数及びコストの低減を図ることができる直流機とその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、等角度間隔に設けた複数のティースを有する電機子コアに電機子コイルを巻装し前記電機子コイルがコンミュテータに結線される電機子と、前記電機子を挟んで対向配置される一対のマグネットと、前記電機子の中心軸に対して対向位置に配置され、前記コンミュテータのセグメントに接触する第1及び第2のブラシと、該第1及び第2のブラシの対向位置から所定角度をなして配置され、前記セグメントに接触する少なくとも1つの第3のブラシとを備えた直流機において、前記一対のマグネット中の1つのマグネットには、磁束急変部を設け、その磁束急変部は、前記電機子が前記第1のブラシと第2のブラシにて給電され回転する状態で、前記第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡し始めるとき、当該両セグメントに結線した電機子コイルが巻装される複数のティースの回転方向側第1番目ティースのティースバー回転方向先端が該磁束急変部にさしかかるようになる場所に設けられているとともに、第3のブラシが両セグメントを短絡する期間となる回転方向角度に対応する幅にて形成されていることを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、等角度間隔に設けた複数のティースを有する電機子コアに電機子コイルを巻装し前記電機子コイルがコンミュテータに結線される電機子と、前記電機子を挟んで対向配置される一対のマグネットと、前記電機子の中心軸に対して対向位置に配置され、前記コンミュテータのセグメントに接触する第1及び第2のブラシと、該第1及び第2のブラシの対向位置から所定角度をなして配置され、前記セグメントに接触する少なくとも1つの第3のブラシとを備えた直流機において、前記一対のマグネット中の1つのマグネットには、磁束急変部を設け、その磁束急変部は、前記電機子が前記第1のブラシと第2のブラシにて給電され回転する状態で、前記第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡し始めるとき、当該両セグメントに結線した電機子コイルが巻装される複数のティースの回転方向逆側第1番目ティースのティースバー回転方向後端が該磁束急変部にさしかかるようになる場所に設けられているとともに、第3のブラシが両セグメントを短絡する期間となる回転方向角度に対応する幅にて形成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の直流機において、前記磁束急変部は、隣接するマグネットの他の部分と逆方向の磁束を発生する逆磁束部であることを要旨とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の直流機において、前記磁束急変部の回転方向幅のほぼ中央位置は、逆磁束の最大点となるようにしたことを要旨とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1に記載の直流機の製造方法であって、前記マグネット全体に同一方向の磁界を与える第1着磁工程と、前記マグネットの所定部分に対して磁束急変部を形成するように前記第1着磁工程の着磁方向と逆方向の磁界を与える第2着磁工程とを備えたことを特徴とすることを要旨とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の直流機の製造方法において、前記磁束急変部の回転方向幅のほぼ中央位置は逆磁束の最大点となるよう前記第2着磁工程にて該磁束急変部のみに対して逆方向の磁界を与えるようにしたことを要旨とする。
【0011】
(作用)
請求項1〜4に記載の発明によれば、第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡する瞬間に磁束が急変することから、従来に比べて電機子コイル内に発生する誘導起電力が押さえられ逆向きの激しい電流変化は起きない。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡する瞬間に磁束方向が反転することから、従来に比べて電機子コイル内に発生する誘導起電力が確実に押さえられ逆向きの激しい電流変化は起きない。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、電機子コイル内に発生する誘導起電力が更に押さえられることから、直流機の電気雑音やブラシ摩耗の低減を図る効果はより大きくなる。
【0014】
請求項5及び6に記載の発明によれば、簡単な方法で逆磁束部を形成することができることから、直流機のコストの低減を更に図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
以下、本発明を直流機としての直流モータ(例えばワイパモータ)に具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。図1は、直流機としてのワイパモータ1の概略構造を示す部分断面図である。
【0016】
図1に示すように、ワイパモータ1は、マグネット2,3、電機子4、コンミテータ5及び複数のブラシ6〜8を有している。
詳述すると、本実施形態のワイパモータ1は、2極の直流モータであって、モータハウジングヨーク9内において、N極及びS極を形成する2つのマグネット2,3が電機子4を挟んで対向配置されている。電機子4は、電機子コア10とそのコア10に巻装される電機子コイル11とを有し、直流電流の供給により回転駆動する。
【0017】
電機子コア10には、複数のティース10aが形成されており、そのうちのn個のティース10aの周囲に電機子コイル11が巻き付けられている。なお、本実施形態では、ティース10aの個数は12個であり、そのティース10aが、電機子4の周方向に30°毎に形成されている。つまり、隣り合うティース10aは、その中心線のなす角(モータ電機子スロット角)θが30°(=360°/12)となるように形成されている。また、図示を省略しているが、複数の電機子コイル11が5つのティース10a毎に同様に巻き付けられている。つまり、巻線の巻装方式は分布巻である。
【0018】
コンミテータ5は、電機子4の一端に配設され、複数のセグメント12を有して構成されている。本実施形態では、12個のセグメント12が周方向に30°毎に設けられている。図1に示すように、前記5つのティース10aに巻装された電機子コイル11は該5つのティース10aと略対向する側の2つのセグメント12(例えばセグメント12a,12b)に結線している。
【0019】
また、複数のブラシ6〜8は、コンミテータ5に摺接するように付勢された状態で配設されている。本実施形態では、3つのブラシ6〜8が配設されている。その中で、図1に示すように、第1及び第2のブラシとしての第1及び第2ブラシ6,7は、180°離れた(対向する)関係に配設され、第3のブラシとしての第3ブラシ8は、第1ブラシ6と所定の角度δをなすように配設されている。本実施形態では、角度δは第1ブラシ6から回転方向になす鋭角となるように設定されている。さらに、ブラシ6〜8は、それぞれの端子6a〜8aを介して直流電源回路13に接続されている。
【0020】
詳述すると、直流電源回路13は、直流電源14と切り替えスイッチ15を備えて、ブラシ6,8は、それぞれ端子6a,8a及び切り替えスイッチ15を介して直流電源14のプラス電極に接続されている。第2ブラシ7は、端子7aを介して直流電源14のマイナス電極に接続されている。つまり、運転状況によって切り替えスイッチ15を切り替えてブラシ6,7を介してモータ1に給電させるか又はブラシ7,8を介してモータ1に給電させるかを選択する。
【0021】
本実施形態では、通常運転(低速仕様)の場合、ブラシ6,7を介してモータ1に給電させるよう切り替えスイッチ15を切り替え、高速運転の場合、ブラシ7,8を介してモータ1に給電させるよう切り替えスイッチ15を切り替えるようにしている。つまり、ブラシ6,7は、低速回転である第1ポジションに配置され、ブラシ7,8は、高速回転である第2ポジションに配置されている。
【0022】
そして、切り替えスイッチ15の切替によって、直流電源14から供給される直流電流が、ブラシ6,7又はブラシ7,8とコンミテータ5のセグメント12を経て電機子コイル11に流れる。これによって、電機子4が時計回り方向(図中、X矢印方向)に回転する。
【0023】
前記マグネット2,3は、所定長さ(例えば図1に示すように、前記モータ電機子スロット角度θの整数倍となる開角度(4θ=120°)に対応した長さ)にて互いに電機子4の中心軸に対して点対称となるように形成されている。
【0024】
マグネット2には、図1及び図2に2点鎖線で示すように、磁束急変部としての逆磁束部2aが設けられている。この逆磁束部2aは、図2に磁束分布曲線Pで示すように、隣接するマグネット2の他の部分と逆方向の磁束(図2にP1で示す部分)を有するように形成されている。本実施形態では、逆磁束部2aは、マグネット2の回転方向側端部に近い所定場所に設けられている。この所定場所は、図1に示すように、第3ブラシ8が電機子4の回転中に両セグメント12a,12bを短絡し始めるとき、当該両セグメント12a,12bに結線した前記電機子コイル11が巻装される5つのティース10aの回転方向側第1番目ティース10aのティースバー回転方向先端が該逆磁束部2aにさしかかるようになる場所に設定されている。また、図1に示すように、逆磁束部2aは、第3ブラシ8が両セグメント12a,12bを短絡する期間となる回転方向の角度θ1に対応する幅にて形成されている。
【0025】
図3は、ブラシ6,7にて給電する状態(通常運転)で第3ブラシ8が隣り合う両セグメント12を短絡するとき、当該両セグメント12に結線した電機子コイル11に流れる電流の変化を示している。本実施形態では、図1に示すように、ブラシ6,7にて給電する状態(通常運転)で電機子4が時計回り方向に回転する場合、第3ブラシ8が隣り合う両セグメント12を短絡し始めるとき、当該両セグメント12に結線した電機子コイル11が巻装される5つのティース10aの回転方向側第1番目ティース10aのティースバー回転方向先端が前記逆磁束部2aにさしかかる。言い換えれば、通常運転中に、電機子コイル11が巻装される5つのティース10aの回転方向側第1番目ティース10aのティースバー回転方向先端が前記逆磁束部2aにさしかかるとき、該電機子コイル11が結線した両セグメント12は第3ブラシ8により短絡し始める。ブラシ6,7にて給電するモータ1の通常運転において、第3ブラシ8が隣り合う両セグメント12a,12bを短絡するとき、両セグメント12a,12bに結線した電機子コイル11が巻装されるティース10aは逆方向の磁束を有する逆磁束部2aにさしかかることから、従来に比べて電機子コイル11内に発生する誘導起電力が押さえられる。これにより、図3に示すように、電機子コイル11内に流れるコイル電流ではピークA1及びピークB1が表したが、図7にピークA2、ピークB2で示した従来のような逆向きの激しい電流変化は起きない。
【0026】
次に、マグネット2,3の着磁方法について図4及び図5に従って説明する。なお、本実施形態では、マグネット2,3の着磁は、マグネット2,3全体を均一に着磁させる第1着磁工程と、マグネット2の局部を着磁させる第2着磁工程にて行うようにしている。
【0027】
「第1着磁工程」
図4に示すように、第1着磁工程において、前記マグネット2,3は、メイン着磁装置20にて着磁される。詳述すると、メイン着磁装置20は、第1及び第2着磁ヨーク21,22を備えている。第1及び第2着磁ヨーク21,22は、先端面が前記モータハウジングヨーク9の外周面の円弧半径よりやや大きな円弧半径を有して円弧状に形成されている。また、第1着磁ヨーク21と第2着磁ヨーク22は、対向配置されたマグネット2,3の位置と対応してモータハウジングヨーク9の外部から同マグネット2,3をカバー(内在)するように対向配置されている。さらに、第1着磁ヨーク21には第1コイル23を巻き付け、第2着磁ヨーク22には第2コイル24を巻き付けている。
【0028】
そして、前記第1及び第2コイル23,24には、図4に示す方向(+から−)に電流を流す。すると、第1着磁ヨーク21と第2着磁ヨーク22との間に位置されたマグネット2,3は、同一方向の均一な磁界にかけられて着磁される。このときのマグネット2,3内の磁束分布を図4に示すように同方向且つ均一となる。
【0029】
「第2着磁工程」
図5に示すように、第2着磁工程において、マグネット2は、サブ着磁装置30にて局所的に着磁される。詳述すると、サブ着磁装置30は、先端面が前記モータハウジングヨーク9の外周面の円弧半径よりやや大きな円弧半径を有するサブ着磁ヨーク31が設けられている。サブ着磁ヨーク31の先端は、前記第3ブラシ8が両セグメント12a,12bを短絡する期間となる回転方向の角度θ1に対応する幅にて形成されている。また、サブ着磁ヨーク31は、図5に示すように、逆磁束部2aを形成すべくマグネット2の所定位置と対応してモータハウジングヨーク9の外部から配置されている。さらに、サブ着磁ヨーク31には、サブコイル32を巻き付けている。
【0030】
そして、前記サブコイル32には、図5に示す方向(+から−)に電流を流す。すると、マグネット2は、その逆磁束部2aを形成すべく所定位置と対応した部分が第1着磁工程の磁界方向と逆方向の磁界にかけられて着磁される。これにより、マグネット2には、マグネット2全体の磁束と逆方向の磁束を有する逆磁束部2aが形成される。しかも、逆磁束部2aは、サブ着磁ヨーク31の先端と同じ角度幅、つまり、前記第3ブラシ8が両セグメント12a,12bを短絡する期間となる回転方向の角度θ1に対応する幅にて形成される。
【0031】
以上記述したように、本実施の形態によれば、下記のような特徴を有する。
(1) マグネット2には、逆磁束部2aが設けられている。この逆磁束部2aは、第3ブラシ8が電機子4の回転中に両セグメント12a,12bを短絡し始めるとき、当該両セグメント12a,12bに結線した前記電機子コイル11が巻装される5つのティース10aの回転方向側第1番目ティース10aのティースバー回転方向先端が該逆磁束部2aにさしかかるようになる場所に設けた。また、逆磁束部2aは、第3ブラシ8が両セグメント12a,12bを短絡する期間となる回転方向角度θ1に対応する幅にて形成した。
【0032】
従って、第3ブラシ8が隣り合う両セグメント12を短絡する瞬間に磁束方向が反転することから、従来に比べて電機子コイル11内に発生する誘導起電力が押さえられ逆向きの激しい電流変化は起きない。
【0033】
その結果、第3ブラシ8での火花放電が防止され、モータ1の電気雑音やブラシ摩耗の低減を図ることができる。これにより、モータ1の駆動回路に雑音防止ためのコイル(インダクター)やコンデンサ等を複数組み合わせる必要がなくなり、モータ1の部品点数及びコストの低減を図ることができる。
【0034】
(2) マグネット2に逆磁束部2aを設けることにより第3ブラシによる整流障害を低減することができるため、製造も容易でコスト的にも有利である。
(3) マグネット2,3は、該マグネット2,3全体に同一方向の磁界を与える第1着磁工程と、マグネット2の所定部分に対して逆磁束部2aを形成するように第1着磁工程の着磁方向と逆方向の磁界を与える第2着磁工程とを用いて着磁させた。
【0035】
従って、簡単な方法で逆磁束部2aを形成することができる。モータ1のコストの低減を図ることができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施実施を図面に従って説明する。図6は、本実施形態の直流モータ41の概略構造を示す部分断面図である。
【0036】
図6に示すように、直流モータ41は、マグネット42,43、電機子44、コンミテータ45及び複数のブラシ46〜48を有している。
詳述すると、本実施形態の直流モータ41は、2極の直流モータであって、モータハウジングヨーク49内において、N極及びS極を形成する2つのマグネット42,43が電機子44を挟んで対向配置されている。電機子44は、電機子コア50とそのコア50に巻装される電機子コイル51とを有し、直流電流の供給により回転駆動する。
【0037】
電機子コア50には、複数のティース50aが形成されており、そのうちのn個のティース50aの周囲に電機子コイル51が巻き付けられている。なお、本実施形態では、ティース50aの個数は12個であり、そのティース50aが、電機子44の周方向に30°毎に形成されている。つまり、隣り合うティース50aは、その中心線のなす角(モータ電機子スロット角)θが30°(=360°/12)となるように形成されている。また、図示を省略しているが、複数の電機子コイル51が5つのティース50a毎に同様に巻き付けられている。つまり、巻線の巻装方式は分布巻である。
【0038】
コンミテータ45は、電機子44の一端に配設され、複数のセグメント52を有して構成されている。本実施形態では、12個のセグメント52が周方向に30°毎に設けられている。前記5つのティース50aに巻装された電機子コイル51は該5つのティース50a側の2つのセグメント52(例えばセグメント52a,52b)に結線している。
【0039】
また、複数のブラシ46〜48は、コンミテータ45に摺接するように付勢された状態で配設されている。本実施形態では、3つのブラシ46〜48が配設されている。その中で、第1及び第2のブラシとしての第1及び第2ブラシ46,47は、180°離れた(対向する)関係に配設され、第3のブラシとしての第3ブラシ48は、第2ブラシ47と所定の角度δ1をなすように配設されている。さらに、図示しないが、ブラシ46〜48は、それぞれの端子を介して直流電源回路に接続されている。
【0040】
前記マグネット42,43は、所定長さ(例えば図6に示すように、前記モータ電機子スロット角度θの整数倍となる開角度(5θ=150°)に対応した長さ)にて互いに電機子44の中心軸に対して点対称となるように形成されている。
【0041】
マグネット42には、磁束急変部としての逆磁束部42aが設けられている。この逆磁束部42aは、隣接するマグネット42の他の部分と逆方向の磁束を有するように形成されている。本実施形態では、逆磁束部42aは、マグネット42の回転方向逆側端部に近い所定場所に設けられている。この所定場所は、第3ブラシ48が電機子44の回転中に両セグメント52a,52bを短絡し始めるとき、当該両セグメント52a,52bに結線した前記電機子コイル51が巻装される5つのティース50aの回転方向側第1番目ティース50aのティースバー回転方向先端が該逆磁束部42aにさしかかるようになる場所に設定されている。また、逆磁束部42aは、第3ブラシ48が両セグメント52a,52bを短絡する期間となる回転方向の角度θ1に対応する幅にて形成されている。
【0042】
図7は、電機子44が図6で示すA(0°)位置からB(180°)位置へ回転する間に、電機子コイル51に発生する誘起電圧の変化を示している。本実施形態では、通常運転中に、電機子コイル51が巻装される5つのティース50aの回転方向側第1番目ティース50aのティースバー回転方向先端が前記逆磁束部42aにさしかかるとき、該電機子コイル51が結線した両セグメント52は第3ブラシ48により短絡し始める。つまり、電機子44は図6で示すA(0°)位置からB(180°)位置へ回転する間に約90°回転した位置に第3ブラシ48が隣り合う両セグメント52a,52bを短絡し始める。これに対応して、図7に示すように、電機子44が図4で示すA(0°)位置からB(180°)位置へ回転する間に約90°回転したとき、電機子コイル51内に発生する誘起電圧がほぼゼロになる。
【0043】
以上記述したように、本実施の形態によれば、第1の実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
(第3の実施形態)
以下、本発明を具体化した第3の実施実施を図面に従って説明する。図8は、本実施形態の直流モータ61の概略構造を示す部分断面図である。なお、本実施形態は、第2の実施形態とは、逆磁束部を設けたマグネットが異なるという点が相違するため、説明の便宜上、同じ直流モータの構成についての詳細な説明を省略し、相違する部分のみ詳しく説明する。
【0044】
図8に示すように、第3のブラシとしての第3ブラシ68に対して該ブラシ68の回転方向逆側に位置するマグネット63には、磁束急変部としての逆磁束部63aが設けられている。この逆磁束部63aは、隣接するマグネット63の他の部分と逆方向の磁束を有するように形成されている。本実施形態では、逆磁束部63aは、マグネット63の回転方向側端部に近い所定場所に設けられている。この所定場所は、第3ブラシ68が電機子64の回転中に両セグメント72a,72bを短絡し始めるとき、当該両セグメント72a,72bに結線した電機子コイル71が巻装される5つのティース70aの回転方向逆側第1番目ティース70aのティースバー回転方向後端が該逆磁束部63aにさしかかるようになる場所に設定されている。また、逆磁束部63aは、第3ブラシ68が両セグメント72a,72bを短絡する期間となる回転方向の角度θ1に対応する幅にて形成されている。
【0045】
図9は、電機子64が図8で示すA(0°)位置からB(180°)位置へ回転する間に、電機子コイル71に発生する誘起電圧の変化を示している。本実施形態では、ブラシ66,67にて給電するモータ61の通常運転において、両セグメント72a,72bに結線した電機子コイル71が巻装される5つのティース70aの回転方向逆側第1番目ティース70aのティースバー回転方向後端が逆磁束部63aにさしかかるとき、第3ブラシ68が隣り合う両セグメント72a,72bを短絡し始める。つまり、電機子64は図8で示すA(0°)位置からB(180°)位置へ回転する間に約90°回転した位置に第3ブラシ68が隣り合う両セグメント72a,72bを短絡し始める。これに対応して、図9に示すように、電機子64が図8で示すA(0°)位置からB(180°)位置へ回転する間に約90°回転したとき、電機子コイル71内に発生する誘起電圧がほぼゼロになる。
【0046】
従って、本実施の形態によれば、第1及び2の実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
尚、上記各実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
【0047】
○上記第1の実施形態では、第3ブラシ8は第1ブラシ6と回転方向側の鋭角をなすように配置され、逆磁束部2aはマグネット2の回転方向側端部に近い位置に設けられて実施した。これに対して、第3ブラシ8を第1ブラシ6と回転方向側の鈍角をなすように配置し、逆磁束部2aをマグネット2の回転方向逆側端部に近い位置に設けて実施してもよい。また、図示しないが、第3ブラシ8を第1ブラシ6と反回転方向側の鈍角又は鈍角をなすように配置し、逆磁束部を、マグネット3に設けて実施してもよい。この場合、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、第2及び第3の実施形態も同様な思想で変更してもよい。
【0048】
○上記各実施形態では、逆磁束部2a(42a,63a)の逆磁束の最大点は、第3ブラシ8(48,68)が両セグメント12a,12b(52a,52b,72a,72b)を短絡する期間のほぼ終了位置に位置するようにした。これに対して、図示しないが、逆磁束部の逆磁束の最大点を、第3ブラシが両セグメントを短絡する期間のほぼ中央位置に位置するようにしてもよい。この場合、上記各実施形態の効果に加えて、電機子コイル内に発生する誘導起電力が更に押さえられることから、モータの電気雑音やブラシ摩耗の低減を図る効果はより大きくなる。
【0049】
○上記第1の実施形態において、マグネット82には、図10に示すような磁束急変部としての逆磁束部82aを形成して実施してもよい。詳述すると、この磁束変化部82aは、図10に磁束分布曲線Pで示すように、隣接するマグネット82の他の部分と同方向の弱い磁束(図10にP2で示す部分)を有するように形成されている。この場合、上記第1の実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
【0050】
○第1の実施形態のマグネットは、モータ電機子スロット角度θの整数倍となる開角度(4θ=120°)に対応した長さ以外の長さにて形成してもよい。第2及び第3の実施形態のマグネットは、モータ電機子スロット角度θの整数倍となる開角度(5θ=150°)に対応した長さ以外の長さにて形成してもよい。
【0051】
○第3のブラシを複数個設けて実施してもよい。
○本発明をティースが12個以外の複数個設けられたモータに具体化して実施してもよい。同一電機子コイルが巻装されるティースを5個以外のn個にて実施してもよい。
【0052】
○第1の実施形態では、直流機としてワイパモータ1に具体化したが、直流機としてワイパモータ1以外のその他のモータに具体化してもよい。
次に上記各実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0053】
(1)等角度間隔に設けた複数のティースを有する電機子コアに電機子コイルを巻装し前記電機子コイルがコンミュテータに結線される電機子と、前記電機子を挟んで対向配置される一対のマグネットと、前記電機子の中心軸に対して対向位置に配置され、前記コンミュテータのセグメントに接触する第1及び第2のブラシと、該第1及び第2のブラシの対向位置から所定角度をなして配置され、前記セグメントに接触する少なくとも1つの第3のブラシとを備えたワイパモータにおいて、前記一対のマグネット中の1つのマグネットには、磁束急変部を設け、その磁束急変部は、前記電機子が前記第1のブラシと第2ブラシにて給電され回転する状態で、前記第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡し始めるとき、当該両セグメントに結線した電機子コイルが巻装される複数のティースの回転方向側第1番目ティースのティースバー回転方向先端が該磁束急変部にさしかかるようになる場所に設けられているとともに、第3のブラシが両セグメントを短絡する期間となる回転方向角度に対応する幅にて形成されていることを特徴とするワイパモータ。
【0054】
従って、第3のブラシによる整流障害を取り除くことができ、ワイパモータの部品点数及びコストの低減を図ることができる。
(2)請求項1乃至4のいずれか1に記載の直流機を構成するマグネットの着磁方法であって、前記マグネット全体に同一方向の磁界を与える第1着磁工程と、前記マグネットの所定部分に対して磁束急変部を形成するように前記第1着磁工程の着磁方向と逆方向の磁界を与える第2着磁工程とを備えたことを特徴とするマグネットの着磁方法。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によれば、第3のブラシによる整流障害を取り除くことができ、直流機の部品点数及びコストの低減を図ることができる。
【0056】
請求項5及び6に記載の発明によれば、直流機のコストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態の直流モータの概略構成を示す部分断面図。
【図2】 第1の実施形態のマグネットの磁束分布を示す説明図。
【図3】 第1の実施形態の電機子コイル内に流れるコイル電流の変化を示すグラフ。
【図4】 マグネットの着磁方法の第1着磁工程を示す説明図。
【図5】 マグネットの着磁方法の第2着磁工程を示す説明図。
【図6】 第2の実施形態の直流モータの概略構成を示す部分断面図。
【図7】 第2の実施形態の電機子コイル内に発生する誘起電圧の変化を示すグラフ。
【図8】 第3の実施形態の直流モータの概略構成を示す部分断面図。
【図9】 第3の実施形態の電機子コイル内に発生する誘起電圧の変化を示すグラフ。
【図10】別例のマグネットの磁束分布を示す説明図。
【図11】従来の電機子コイル内に流れるコイル電流の変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1,41,61…直流機としての直流モータ、2,3,42,43,62,63,82…マグネット、2a,42a,63a,82a…磁束急変部としての逆磁束部、4,44,64…電機子、5,45,65…コンミテータ、6,46,66…第1のブラシとしての第1ブラシ、7,47,67…第2のブラシとしての第2ブラシ、8,48,68…第3のブラシとしての第3ブラシ、10,50,70…電機子コア、10a,50a,70a…ティース、11,51,71…電機子コイル、12,52,72…セグメント。

Claims (6)

  1. 等角度間隔に設けた複数のティースを有する電機子コアに電機子コイルを巻装し前記電機子コイルがコンミュテータに結線される電機子と、前記電機子を挟んで対向配置される一対のマグネットと、前記電機子の中心軸に対して対向位置に配置され、前記コンミュテータのセグメントに接触する第1及び第2のブラシと、該第1及び第2のブラシの対向位置から所定角度をなして配置され、前記セグメントに接触する少なくとも1つの第3のブラシとを備えた直流機において、
    前記一対のマグネット中の1つのマグネットには、磁束急変部を設け、その磁束急変部は、前記電機子が前記第1のブラシと第2のブラシにて給電され回転する状態で、前記第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡し始めるとき、当該両セグメントに結線した電機子コイルが巻装される複数のティースの回転方向側第1番目ティースのティースバー回転方向先端が該磁束急変部にさしかかるようになる場所に設けられているとともに、第3のブラシが両セグメントを短絡する期間となる回転方向角度に対応する幅にて形成されていることを特徴とする直流機。
  2. 等角度間隔に設けた複数のティースを有する電機子コアに電機子コイルを巻装し前記電機子コイルがコンミュテータに結線される電機子と、前記電機子を挟んで対向配置される一対のマグネットと、前記電機子の中心軸に対して対向位置に配置され、前記コンミュテータのセグメントに接触する第1及び第2のブラシと、該第1及び第2のブラシの対向位置から所定角度をなして配置され、前記セグメントに接触する少なくとも1つの第3のブラシとを備えた直流機において、
    前記一対のマグネット中の1つのマグネットには、磁束急変部を設け、その磁束急変部は、前記電機子が前記第1のブラシと第2のブラシにて給電され回転する状態で、前記第3のブラシが隣り合う両セグメントを短絡し始めるとき、当該両セグメントに結線した電機子コイルが巻装される複数のティースの回転方向逆側第1番目ティースのティースバー回転方向後端が該磁束急変部にさしかかるようになる場所に設けられているとともに、第3のブラシが両セグメントを短絡する期間となる回転方向角度に対応する幅にて形成されていることを特徴とする直流機。
  3. 請求項1又は2に記載の直流機において、
    前記磁束急変部は、隣接するマグネットの他の部分と逆方向の磁束を発生する逆磁束部であることを特徴とする直流機。
  4. 請求項3に記載の直流機において、
    前記磁束急変部の回転方向幅のほぼ中央位置は、逆磁束の最大点となるようにしたことを特徴とする直流機。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1に記載の直流機の製造方法であって、
    前記マグネット全体に同一方向の磁界を与える第1着磁工程と、前記マグネットの所定部分に対して磁束急変部を形成するように前記第1着磁工程の着磁方向と逆方向の磁界を与える第2着磁工程とを備えたことを特徴とする直流機の製造方法。
  6. 請求項5に記載の直流機の製造方法において、
    前記磁束急変部の回転方向幅のほぼ中央位置は逆磁束の最大点となるよう前記第2着磁工程にて該磁束急変部のみに対して逆方向の磁界を与えるようにしたことを特徴とする直流機の製造方法。
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