JP3730733B2 - 細長化獣毛繊維およびその製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、延伸処理により細長化された獣毛繊維の製法、およびそれを利用して得られる繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
合成繊維は、紡出後延伸して繊維を細長化させている。この延伸の目的は繊維を細くするためのみでなく、分子を配向せしめ、その強度を向上させる事が主たる目的である。紡出した繊維は連続しており、その点で延伸は容易である。
【0003】
最近、趣味の多様化に伴って、細番手の獣毛を用いた衣類の需要が伸びている。しかしながら細番手の獣毛は従来天然のものに依存するしかなく、しかも細番手の獣毛は産毛量が極端に少なく、非常に高価であり、これを安価に供給しうる技術が望まれていた。
【0004】
一般的な太番手の獣毛を用いてこれを細長化するためには、例えば、獣毛繊維表面を溶解するか、獣毛を延伸することが考えられるが、前者は獣毛の持つ風合いや、特性、あるいは強度を本質的に損なう場合があるため、細くする限度があり、特殊な場合しか用いえない。
【0005】
一方、後者の方法は獣毛が合成繊維と異なり、平均繊維長、たとえばメリノー種は通常、50〜90mmであり、これを工業的規模で延伸することは最近まで困難であった。最近、開示される技術として特許出願公表公報平成5ー500989が挙げられる。この技術によればプーリー間の駆動速度差およびプーリー全体を繊維軸と直角方向に回転させてスライバーに仮撚りをかけながら延伸するもので、この高度な仮撚りにより短繊維を把持しスリップを防止し延伸することが特徴である。また、特許出願公開公報平成7ー3556に開示される技術によれば、複数のニップロールを用いダイレクトに短繊維を把持し多段的に延伸することが特徴である。細長化(変形固定)のための主な化学的メカニズムは、羊毛繊維の分子間に存在するジスルフィド結合(架橋結合)を還元切断しその後、蒸気や酸化剤により酸化させて再架橋するものであり、いわゆる羊毛繊維の「セット」として利用されるもので両者大差ない。したがって、特開平7ー3556に開示されるように、細長化後(たとえば糸、編み物、織物の状態で)に元の長さに戻すことによりバルキーな糸やあるいはストレッチ性の高い織物を製造できる利点を有している。しかしながら一方、細長化のために羊毛繊維は極めて高いストレスがかかっていて、細長化状態を完全に維持するためには工程中発現する−SH基を常に封鎖しておく必要がある。つまり細長化後に再びジスルフィド結合の還元・酸化反応を伴うセットを行えない。さらにアルカリ浴中など著しく繊維の膨潤を促進する条件下においても細長化を完全に維持することは困難である。
【0006】
また、細長化により羊毛繊維内のジスルフィド結合は極度に配向されるようでセット性が高く、特に織物のプリーツ性を向上するメリットを有するが、逆に防シワ性およびハイグラルエキスパンジョン(HE)はレギュラーの羊毛繊維を用いた場合に比べて大きく性能を低下させる欠点を有している。織物の風合いにおいても羊毛繊維本来のハリ/コシ感はかなり低下している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
延伸により細長化された獣毛繊維において、上記問題点を解消することにある。すなはち、細長化状態を維持し、通常の獣毛繊維製品の製造条件で加工でき、獣毛本来の物性およびハリ/コシを有する繊維製品およびその製法を提供することにある。
【0008】
本発明で用いる獣毛繊維は、羊毛、アルパカ、モヘア、アンゴラ、キャメル等が例示されるが、これに限定されるものでない。以下獣毛繊維を代表して羊毛繊維と称することもある。
【0009】
【課題を解決する手段】
羊毛繊維におけるジスルフィド結合(架橋結合)の意義は、極性溶媒に溶解しない、横方向には限られた膨潤しかしない。比較的湿強度が強い、可逆的な架橋結合でありセット性があるなど天然蛋白質繊維としての特色そのものである。しかしながら、延伸により細長化された羊毛繊維において、元来有するジスルフィド結合のみにより形状を維持することはその取り扱いをデリケ−トにし、その後の加工条件を限定させることとなる。
これは、延伸により繊維軸方向に極度に高いストレスが生じているためと考えられる。このため、セット加工に利用する軽い還元処理および洗浄のための弱アルカリ性浴中での処理は、細長化を維持できず一般に行えない。さらに、細長化により分子間および分子内に存在するジスルフィド結合は高度に配向されるようで羊毛繊維本来の物性あるいは風合いを変化させている。
【0010】
この問題を解決するため、本発明では羊毛繊維分子間に化学的に安定な新しい架橋結合を導入することにある。しかもジスルフィド結合は羊毛繊維のセット性に大きく関与するためそれ以外の架橋結合の導入が重要である。繊維分子間にこのような架橋結合を導入する方法は、羊毛繊維のほかセルロース系繊維においても詳しく検討されすでに公知であるが、延伸により細長化された羊毛繊維に適用された例はこれまで見あたらず、鋭意検討した結果達成されたものである。
【0011】
考えられる架橋剤として、アルデヒド RCHO(誘導体としてN−メチロール化合物を含む)、アセタール RCHCOR’、エポキシ化合物
【0012】
【化1】
Figure 0003730733
活性ビニル化合物 R(CH=CH2 2 、アジリジル化合物
【0013】
【化2】
Figure 0003730733
ポリカルボン酸、R(COOH)2 、その酸塩化物 R(COCl)2 、イソシアネート R(NCO)2
第4級アンモニウム化合物
【0014】
【化3】
Figure 0003730733
などが挙げられる。
【0015】
なお、上記化学式1〜3で用いるR、R’は、芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基を示す。RとR’とは同一であってもよく異なってもよい。
【0016】
芳香族炭化水素基の場合は、ベンゼン環、または、ナフタレン環に、メチル基および/または水酸基の結合した化合物であり、脂肪族炭化水素基の場合は、
CnH2n、またはCnH2n+1(nは正の整数)である。化合物によって一概にはいえないが、nは多くとも18までであり、通常1〜5、好ましくは1から3である。
【0017】
しかしながら、水系で処理が可能であること、安全性が高いこと、架橋導入にあたり羊毛繊維にダメージを与えないことなどを考慮すると水溶性エポキシ化合物が好ましい。すなわち、本発明で好ましく用いることができるエポキシ化合物は、
【0018】
【化4】
Figure 0003730733
で例示される化学構造を有するものである。この中で特に好ましいエポキシ化合物はジグリシジルエーテルおよびRが−O−(CHCHO)n−でn=1〜5のものである。
【0019】
また、上記化合物はアルカリ剤の存在下で浴中の処理により繊維分子間に架橋を形成させることも可能であるが、上述したように本発明の場合好ましくない。本発明では酸性側で行うことを必須とするが、上記化合物は酸性触媒を用いてパティング、乾燥、熱処理により架橋導入が可能であり問題はない。さらに上記化合物は自己縮合性が低いため、風合いの硬化は最低限に留められる。このことは、紡績工程上のトラブルも無くスライバーなど原綿で加工できることを意味している。
【0020】
エポキシ化合物による新しい架橋の導入は公知の方法で行える。水あるいはイソプロピルアルコール水溶液媒体に上記エポキシ化合物と酸性触媒を添加し、繊維に付与、乾燥、熱処理を行えばよい。延伸により細長化された羊毛繊維に均一に付与されればよく、繊維は原理的にスライバー、糸、編み物、織物、といかなる形状であってもよい。ただし浴中で架橋処理が完了しないため、一般的にスライバーおよび布帛での加工が行いやすい。付与方法もスプレー、パティング、など幅広く採用できる。スライバーでの処理においては公知(たとえば特開平7ー3556)の延伸装置に連続してバスを設けディップ、ニップを行ってもよい。また、延伸後独立してバックワッシャーによる処理でもよい。布帛での処理の場合、通常のパディング処理が好都合である。また一般的に本加工は染色前に行うことがベターである。(染色時の細長化維持が良好)。
【0021】
用いるエポキシ化合物の量は、触媒の種類、細長化羊毛繊維および織物等の性状により一概にいえないが、細長化羊毛繊維100gあたりエポキシ等量を考慮して0.01モル以上、好ましくは0.01〜0.2モル使用すればよい。熱処理条件も、用いる触媒の種類により異なるが一般的に110〜150℃、3〜10分間であり150℃以上になると羊毛繊維は黄変して好ましくない。
【0022】
以上の架橋処理を施した細長化羊毛繊維からなる製品は、ファインで柔らかく、羊毛本来のハリ、コシを有している。
【0023】
以下実施例にて詳細に説明する。
【0024】
実施例1
平均繊維直径20.97μm、繊維長(平均74mm、最長143mm)の紡績用純毛スライバーを、ロータリーギルを用いて密度約18g/mのスライバーを調整した。この調整スライバーを図1の延伸装置を用い、ニップ圧160Kg、供給速度30cm/minで延伸した。湿潤用液体として、重亜硫酸ソーダ30g/l およびモノエタノールアミン2g/l を含む水溶液(20%水酸化ナトリウムでpH8.0に調整)を80℃に加熱した。
【0025】
延伸装置の仕様は以下の通りである。ボトムローラー:24段、ステンレス製、直径20mm、働き幅200mm、凹部幅2mm、凸部幅1.45mm、深さ1mm。このボトムローラー24段の内12段までを湿潤液に浸漬した。ボトムローラー(1,2);(3,4);(5,6);(7,8);(9,10);(11,12)の各組合わせ間の軸間距離はそれぞれ28mmであり、各一対ずつ同速度で回転させた。延伸はボトムローラー(2,3);(4,5);(6,7);(8,9)間で行い、これらの軸間距離はそれぞれ24mmとした。回転速度はボトムローラー1で0.8rpm であり、(2,3);・・・・・・・・(12,13)までの各速度比を前後に比して1.05倍ずつ6段階に増加した。ボトムロラー14から24までは同じく延伸しながら固定化する工程であり、蒸気圧2kg/cm 2 で加熱する。
【0026】
ボトムローラー(14,15);(16,17);(18,19);(20,21);(22,23)各間の速度比はそれぞれ1.15倍、1.10倍、1.10倍、1.05倍、および1.02倍であり、この間で1.49倍延伸することになる。
【0027】
トップローラーは硬度80のゴム製であり、直径は50mmで各ロール間隔は軸間52mmであった。
【0028】
延伸後、固定化を行うため浴A(81)、浴B(82)、浴C(83)、浴D(84)で化学処理を行った。浴A,Bに過酸化水素3%を80℃に加熱して用い、浴Cで40℃の水で水洗した。浴Dに水溶性エポキシ化合物(デナコールEXー850、ナガセ化成工業製)を20%(w/v)、酸性触媒として過塩素酸マグネシウム2.0%(w/v)、および安定剤として酢酸亜鉛0.2%(w/v)を常温でパディング処理した。その時のピックアップ率は70%であった。
【0029】
このようにして得られた延伸処理スライバーを80℃で風乾させた。風乾後、エポキシ化合物を反応させるため130で℃10分間キュアリング処理を行った。その後、バックワッシャで未反応のエポキシ化合物を洗浄し、80℃で乾燥を行った。
【0030】
得られたスライバーの単繊維の平均直径(平均繊度)は17.43μmで平均繊維長(JIS L1083 5.2 Hauteur 方式)は93.0mm、最長部分は233mmであった。
【0031】
このスライバーを用いて、通常の工程で紡績して、紡績糸(メートル番手1/48 Z480)を得た。90℃で25分間の糸蒸しを行い、上撚りS280で双糸加工したのち、さらに90℃で25分間の糸蒸しを行った。この紡績糸は極めて光沢のあるメリヤス糸となった。
【0032】
上記の紡績糸をJIS L−1095 7.24A法により、熱水収縮率を測定した。さらにアルカリ性水溶液(ソーダ灰でpH10)および還元剤を添加した水溶液(重亜硫酸ソーダ30g/l )を用いて20分間のボイル後、縮率を上記熱水収縮率と同様に測定した。
また、それぞれ縮率測定後の平均繊度も測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
さらに、上記のメリヤス糸を250gの綛にし、含金染料を用い通常の綛染めで赤色に染色した。この糸を用いてセーター(天竺編み ゲージ12G−2P)を作成した。セーターは非常にやわらかく、ドレープを有しながら羊毛繊維本来のふくらみも有していた。
【0034】
比較例1
実施例1と同じロットの未処理スライバを同様に延伸処理した。ただし、固定化条件を浴A,BおよびCは同様であるが、浴Dは常温の水を用い、水溶性エポキシ化合物を使用しなかった。
【0035】
この延伸スライバー(平均繊度17.41μm、平均繊維長92.8mm)で実施例1と同様の糸を紡績し、同様の収縮試験を行った。その結果を表1に示す。 さらに、上記のメリヤス糸で実施例1と同様に赤色のセーターを作製した。なお、染色は実施例1と同時同浴で行った。
【0036】
ドレープ性を有しているものの羊毛繊維本来のふくらみは有していなかった。また、実施例1に比べて赤色は淡かった。
【0037】
表1より、水溶性エポキシ化合物を使用した実施例1においては、水、アルカリ水溶液、および、還元剤を添加した水溶液、のいずれの条件の縮率でもほとんど収縮せず、繊度的にも大きな変化は見られなかった。しかしながら、比較例1は、アルカリ性水溶液および還元剤を添加した水溶液で大きく収縮していた。また、繊度的にも大きな数値となり、細長化は実施例1と比較して不安定といえる。
【0038】
したがって、本発明は細長化が安定であるため、アルカリ性水溶液および還元剤を添加した水溶液を用いた工程でも不安が生じない。たとえば、精練工程におけるアルカリ剤の使用が可能である。また、染色工程でのトラブルにおいて還元剤による脱色もある程度可能となり細長化に影響することもなく、再染色も可能となる。
【0039】
実施例2
平均繊維直径19.49μm、平均繊維長66.5mm、細長部分134.1mmの紡績用純毛スライバーを、比較例1と同様に延伸処理を行った。この延伸スライバー(平均繊維直径16.24μm、平均繊維長90.4mm、細長部分204.8mm)を用いて織物用紡績糸(2/72、Z760×S800)を得た。
【0040】
この紡績糸を経糸および緯糸として用い2/1ギャバ(経糸密度42本/cm,緯糸密度24本/cm、目付310g/m )を作製し、通常の工程でロープ洗絨および連続煮絨を行った。乾燥後、水溶性エポキシ化合物(デナコールEXー810、ナガセ化成工業製)を10%(w/v)酸性触媒として、ホウ弗化亜鉛0.8%(w/v)および安定剤として酢酸亜鉛0.1%(w/v)を1ディップ1ニップでパディング処理を行った。そのときのピックアップ率は70%であった。乾燥後130℃で5分間のキュアリングを行った。処理後、サーキュラー染色機を用い、70℃で10分間洗浄液(ペレテックスNC・57、ミヨシ油脂株式会社)0.3g/l でソーピングを行った。改液水洗後、クロム染料で通常の染色を行い、
紺色に染めた。染色後通常の仕上げ工程を行い、
織物製品を得た。得られた製品はやわらかく、ドレープを有しながら羊毛製品本来のふくらみ、ハリ、コシという触感を有していた。この織物製品のハイグラルエキスパンション(IWS法)、防しわ性試験(IWS法)、引張協力(JIS 1096 6.12 ラベルドストリップ法)および引裂強力(JIS 1096 6.15 D法)を測定した。その結果を表2に示す。
【0041】
比較例2
実施例2と同じロットの未処理スライバーを同様に延伸処理した。この延伸スライバーを用い、実施例2と同様の糸を紡績し、同様の織物を作製した。この織物を実施例2と同様の工程を通し、織物製品を得た。ただし、水溶性エポキシ化合物の処理は行わなかった。なお染色は実施例1と同時同浴で行った。得られた製品は、やわらかく、ドレープ性を有していたが、羊毛製品本来のふくらみ、ハリ、コシ、という触感は有していなかった。
【0042】
この織物製品に実施例2と同様の試験を行った。その結果を表2に示す。
【0043】
比較例3
実施例2と同じロットの未処理ウールを用い、延伸処理せずに比較例2と同様の糸を得た。得られた糸を用い、比較例2と同様の織物製品を作製した。なお染色は実施例2、比較例2と同時同浴で行った。得られた織物製品は、ハリ、コシ感は羊毛繊維製品本来の風合いを有していたが、やわらかさ、およびドレープ性については実施例2、比較例2に遠く及ばなかった。
実施例2、比較例2と同様に織物物性を表2に示す。
【0044】
表2から明らかなように、本発明の実施例1で得られた織物製品は、比較例2より、ハイグラルエキスパンション、防シワ性および引裂強力に優れていることが分かる。
【0045】
また、実施例2、比較例2、および比較例3の織物製品の染料吸着量は、下記の順であった。
【0046】
(淡)比較例2<比較例3<実施例2(濃)
この結果より、実施例2は染料コスト的に有利であり、染斑および染色堅牢度についても比較例3と比べて全く問題はなかった。
【0047】
実施例4
平均繊維直径25.66μm、繊維長平均80.6mm、最長繊維161.3mmのモヘヤスライバーを比較例1と同様に延伸処理を行った。この延伸スライバー(平均繊維直径22.21μm、繊維長平均102.4mm、最長繊維部分291.3mm)を用いて織物用紡績糸(1/40 Z540)を得た。
【0048】
この織物用紡績糸を緯糸に用い、経糸には比較例3の2/72糸を用いて、平織の生地織物(経糸密度23本/cm、緯糸密度23本/cm 、目付210g/m )を制作した。通常の工程でロープ洗絨および連続洗絨を行った。乾燥後、水溶性エポキシ化合物(デナコールEX−313、ナガセ化成工業製)を10%(w/v)、酸性触媒としてホウフッ化マグネシウム1.0%(w/v)、および安定剤として、酢酸亜鉛0.1%(w/v)、を1ディップ1ニップでパディング処理を行った。そのときのピックアップ率は70%であった。乾燥後130℃で5分間のキュアリングを行った。サーキュラー染色機を用い70℃で10分間洗浄剤(ペレテックスNC−57、ミヨシ油脂株式会社)0、3g/l でソーピングを行った。改液水洗後クロム染料で黒色に染色し、通常の方法で仕上工程を行い、黒色の織物製品を得た。得られた製品は、通常の羊毛/モヘア製品と比較し、より黒く、フォーマル用ブラックとしても充分利用できるレベルであった。
【0049】
モヘア繊維を延伸処理し、水溶性エポキシ化合物で架橋することにより、今までにない、やわらかさ、ドレープ性、および光沢を有した織物製品を得ることができた。
【0050】
実施例5
実施例1で得られた細長化羊毛繊維のスライバーを常套の方法にてトップ染機で茶色に染めた。染料はクロム染料を用い、98℃30分間処理した。
【0051】
染色後の平均繊度は、17.41μmで、染色前と変化はみられなかった。
【0052】
比較例4
比較例1で得られた細長化羊毛繊維のスライバーを実施例5と同様にトップ染機で茶色に染めた。染色後の平均繊度は、18.83μmで染色前と比較すると大きな数値となり、明らかに収縮していることが分かった。
【0053】
実施例5と比較例4とを較べると、比較例4(比較例1で得られた細長化羊毛スライバー)では、無緊張状態で激しく湿熱が加えられるトップ染工程において繊維が収縮し細長化を固定できていない。一方、本発明の実施例5(実施例1で得られた細長化のスライバー)ではトップ染によっても繊度的に変化が見られないことから、細長化が固定されており安定であることがわかる。
【0054】
実施例6
実施例1と同じロットの未処理スライバーを同様に延伸した。ただし、湿潤用液体として、チオグリコール酸3%(w/w)(20%水酸化ナトリウムでpH8.0に調整)を80℃に加熱して用いた。
【0055】
延伸後の固定化は実施例1と同様の処理を行った。得られたスライバーの平均繊度は17.46μmで、平均繊維長は92.2mm、最長部分は241mmであった。このスライバーを用いて、実施例1と同様の糸を紡績し、同様の収縮試験を行った。その結果を表3に示す。
【0056】
比較例5
実施例6と同じロットの未処理スライバーを同様に延伸処理した。ただし、延伸後の固定化では、比較例1と同様エポキシ化合物を使用しなかった。この延伸スライバー(平均繊度17.41μm平均繊維長91.8mm)で、実施例6と同様の糸を紡績し、同様の収縮試験を行った。その結果を表3に示す。
【0057】
表3より、湿潤用液体が異なる細長化羊毛繊維についても、本発明は、細長化が安定していることが分かる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によると、細長化状態を維持し、通常の獣毛繊維製品の製造条件で加工でき、獣毛本来の物性およびハリ/コシを有する繊維製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる延伸装置および処理浴の概要図
【符号の説明】
(1)〜(24) ボトムローラー
(31)〜(42) トップローラー
(50) 浸漬槽
(60) 湿潤用液体
(70) 獣毛繊維スライバー
(81)〜(84) 化学処理浴A〜D
【表1】
Figure 0003730733
【表2】
Figure 0003730733
【表3】
Figure 0003730733

Claims (4)

  1. 獣毛を延伸した後、架橋剤により延伸を固定したことを特徴とする細長化獣毛繊維。
  2. 獣毛を延伸した後、架橋剤を用いて固定することを特徴とする細長化獣毛繊維の製造法。
  3. 架橋剤がアルデヒト、アセタール、エポキシ化合物、活性ビニル化合物、アジリジル化合物、ポリカルボン酸化合物、ポリカルボン酸化合物の酸塩化物、イソシアネート化合物、第4級アンモニュウム化合物である請求項1記載の細長化獣毛繊維の製造法。
  4. 架橋剤が水溶性エポキシ化合物である、請求項1記載の細長化獣毛繊維の製造法。
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