JP3730320B2 - 液晶表示パネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を用いた液晶表示パネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示パネルは、薄くて軽量であるとともに低電圧で駆動できて消費電力が少ないという長所があり、各種電子機器に広く使用されている。
特に、近年、TFT(Thin Film Transistor)等の能動素子が画素毎に設けられたアクティブマトリクス方式の液晶表示パネルは、表示品質の点でもCRT(Cathode-Ray Tube)に匹敵するほど優れたものが得られるようになり、携帯テレビやパーソナルコンピュータ等のディスプレイにも使用されている。
【0003】
一般的に、液晶表示パネルは2枚の透明基板の間に正の誘電率異方性を有する液晶組成物を封入した構造を有している。それらの透明基板の相互に対向する2つの面(対向面)のうち、一方の面側には対向電極及び配向膜等が形成され、また他方の面側にはアクティブマトリクス回路、画素電極及び配向膜等が形成されている。さらに、各透明基板の対向面と反対側の面には、それぞれ偏光板が貼り付けられている。これらの2枚の偏光板は、例えば偏光板の偏光軸が互いに直交するように配置され、これによれば、電界をかけない状態では光を透過し、電界を印加した状態では遮光するモード、すなわちノーマリーホワイトモードとなる。その反対に、2枚の偏光板の偏光軸が平行な場合には、ノーマリーブラックモードとなる。
【0004】
また、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を用いた電圧制御複屈折型液晶表示パネルや、二色性色素を混合したゲスト・ホスト型液晶表示パネルが開発されており、近年、負の誘電率異方性を持つ液晶組成物をTN(Twisted Nematic )型液晶表示パネルに適用されることも検討されている。この種の液晶表示パネルは垂直配向液晶表示パネルといわれ、正の誘電率異方性を有する液晶組成物を用いた通常のTN型液晶表示パネルに比べてコントラストが優れているという利点がある。
【0005】
図6(a),(b)は、垂直配向液晶表示パネルの構造を示す模式図である。なお、図中31は液晶層中の液晶分子を示す。
この垂直配向液晶表示パネルは、対向配置された一対の透明基板41,51と、基板41,51間に封入された液晶層と、基板41,51の各外面に配置された偏光板42,52とにより構成されている。偏光板42,52は、それらの偏光軸が上から見て相互に直交するように配置されている。なお、液晶層は、負の誘電率異方性を有する液晶組成物により構成される。基板41,51の各対向面には、画素毎に液晶層に電界を印加するための透明電極と、該透明電極を被覆する配向膜(いずれも図示せず)が設けられている。
【0006】
このように構成された液晶表示パネルにおいて、液晶層に電界を印加していない状態では、図6(a)に示すように、液晶分子31は基板41,51に対し垂直に配向する。この状態では、一方の偏光板52を通過した光がその偏波面の方向を変えることなく他方の偏光板41に到達し、この偏光板41により遮断される。すなわち、この状態では光は液晶表示パネルを透過しない。
【0007】
一方、液晶層に電界を印加すると、図6(b)に示すように、液晶分子31が基板41,51の表面に対し水平になり、且つ一方の基板側から他方の基板側電極までの間で液晶分子31が徐々にねじれた状態で並ぶ。この状態では、一方の偏光板52を通過した光の偏波面が液晶分子31に従ってねじれ、他方の偏光板42の偏光軸と光の偏波面とが同一方向になって、光が偏光板41を透過する。すなわち、この状態では光が液晶表示パネルを透過する。
【0008】
このようにして、画素毎に光の透過率を変化させることにより、液晶表示パネルに所望の画像を表示することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の液晶表示パネルは、液晶層に電界を印加した場合に、液晶分子31のねじれが不安定になるという欠点がある。つまり、垂直配向液晶表示パネルでは、液晶分子31が基板表面に対し垂直になっているときは配向膜の表面に液晶分子31が固定されて安定している。しかし、液晶層に電界を印加すると、配向膜の表面に液晶分子31を束縛するエネルギー(アンカリングエネルギー)が小さいために、配向膜の表面に液晶分子31を固定させることが困難になる。従来は、一般的に、液晶組成物に微量(1wt%以下)のカイラル物質を添加してねじれ量(ツイスト角)を制御しているが、カイラル物質の添加量が極めて少ないのでねじれ量の制御が難しく、しかもねじれ量が温度により大きく変化してしまう。
【0010】
本発明の目的は、負の誘電率異方性を有する液晶組成物を用いた液晶表示パネルにおいて、液晶分子のねじれ量を所定のねじれ量に設定することが容易であるとともに、温度によるねじれ量の変動を抑制できる液晶表示パネルを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した課題は、相互に対向して配置された第1及び第2の透明基板と、前記第1の透明基板の対向面に設けられ、ゲートバスライン及びドレインバスラインに接続されたTFT( thin film transistor )と、前記第1の透明基板の対向面に設けられ、前記TFTのソースに接続された第1の透明電極と、前記第1の透明電極の表面上を覆う第1の配向膜と、前記第1の透明電極の両側に配置されて第1の方向に延び、前記第1の配向膜の表面上に前記第1の配向膜に実質的に平行な電界を発生する一対の第1の電界発生用電極と、前記第2の透明基板の対向面に前記第1の透明電極に対向して設けられた第2の透明電極と、前記第2の透明電極の表面上を覆う第2の配向膜と、前記第2の透明電極の両側に配置されて第2の方向に延び、前記第2の配向膜の表面上に前記第2の配向膜に実質的に平行な電界を発生する一対の第2の電界発生用電極と、負の誘電率異方性を有する液晶組成物からなり、前記第1及び第2の透明基板の間に封入された液晶層とを有することを特徴とする液晶表示パネルにより解決する。
【0012】
本発明においては、第1及び第2の透明電極の両側にそれぞれ一対の電界発生用電極を配置して、これらの電界発生用電極に電圧を印加する等の方法により、第1及び第2の配向膜の表面上に、これらの第1及び第2の配向膜の表面に対しほぼ平行な電界を発生させる。
負の誘電率異方性を持つ液晶組成物は、電界が印加されると、電界の方向に対し液晶分子の長軸を直交させて配列する性質を有する。従って、上述のように電界を発生することにより、第1及び第2の配向膜の表面上では液晶分子の向きが前記電界の方向に対し垂直な方向に固定される。そして、この状態で第1及び第2の透明電極間に電圧を印加すると、第1及び第2の配向膜の各表面上で液晶分子の向きが固定されているため、第1及び第2の配向膜の間の液晶分子のねじれ量が一定になり、温度等によるねじれ量の変化が抑制される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る液晶表示パネルを示す模式的平面図、図2は同じくその模式的断面図である。
透明基板(ガラス基板)11,21は相互に対向して配置されており、基板11の対向面(上面)には複数の透明な画素電極(第1の透明電極)13がマトリクス状に配列されている。そして、各画素電極13毎に、ソース20a,ゲート20b及びドレイン20cからなるTFT20が形成されている。画素電極13はTFT20のソース20aに接続されている。また、基板11の下面には偏光板12が配置されている。各画素電極13間には、一方向に延びるゲートバスライン15と、このゲートバスライン15上に絶縁層14を介して形成された電界発生用電極16と、前記一方向に直交する方向に延びるドレインバスライン18とが形成されている。TFT20のゲート20bはゲートバスライン15に接続され、ドレイン20cはドレインバスライン18に接続されている。また、これらの画素電極13、TFT20、ドレインバスライン18及び電界発生用電極16は、配向膜17に覆われている。この配向膜17の表面には、電界発生用電極16の延びる方向にラビング処理が施されている。
【0014】
一方、透明基板21の上には偏光板22が配置され、透明基板21の下面には、画素電極13に対向して複数の透明な対向電極(第2の透明電極)23が形成されている。これらの対向電極23の間には、電界発生用電極26が前記一方向に直交する方向に延びて形成されている。これらの画素電極23及び電界発生用電極26は配向膜27に覆われている。この配向膜27の表面は、電界発生用電極26の延びる方向にラビング処理されている。
【0015】
そして、基板11,21の間には液晶層30が封入されている。この液晶層30には負の誘電異方性を持つ液晶組成物により構成されており、1wt%以下のカイラル物質が添加されている。
図3,4は本実施の形態の液晶表示パネルの動作を示す模式図である。但し、図3,4においては、説明を容易にするために、電界発生用電極16と電界発生用電極26とを同じ向きとしているが、実際には図1に示すように、電界発生用電極16,26は上から見たときに直交するように配置されている。
【0016】
画素電極13と対向電極23との間に電圧を印加しないときは、電界発生用電極16,26にも電圧を印加しない。この状態では、図3に示すように、液晶層30中の液晶分子31はその長軸方向が基板11,21の表面に対し垂直になり、その結果、光は液晶表示パネルで遮断される。
一方、画素電極13と対向電極23との間に電圧を印加するときには、同時に電界発生用電極16,26にも電圧を印加する。この場合、下側基板11側の電界発生用電極16には画素電極13よりも+2Vだけ高い電圧を印加し、上側基板21側の電界発生用電極26には対向電極23よりも−2Vだけ高い電圧を印加する。例えば、画素電極13には+5Vの電圧を印加し、この画素電極13の両側の電界発生用電極16には+7Vの電圧を印加する。また、対向電極23は接地電位(0V)とし、電界発生用電極26には−2Vの電圧を印加する。
【0017】
そうすると、図4に示すように、配向膜17,27の表面近傍には、これらの配向膜17,27の表面にほぼ平行な電界Eが発生する。また、これらの配向膜17,27の表面は電界発生用電極16,26に平行な方向にラビング処理が施されているので、配向膜17,27の表面において、液晶層30中の液晶分子31は電界に対し垂直な方向、換言すると配向膜17,27の表面のラビング方向に並ぶ。また、液晶層30中にカイラル物質が添加されているので、このカイラル物質により液晶分子31のねじれ方向が決定される。このようにして、液晶分子31は基板表面に対し平行に、且つ一方の基板から他方の基板に向けて徐々にねじれた状態で配列する。これにより、光が液晶表示パネルを透過する。
【0018】
本実施の形態においては、電界発生用電極16,26により発生した電界により配向膜17,27の表面での液晶分子31の向きが決定され、配向膜17,27間の液晶分子31のねじれ量が一定になる。従って、温度によるねじれ量の変化が抑制されるという効果が得られる。
以下、本実施の形態の液晶表示パネル(実施例)を実際に製造し、その温度によるT−V(透過率−電圧)特性の変化を調べた結果について、従来例と比較して説明する。
【0019】
(実施例)
実施例として、図1,2に示す液晶表示パネルを製造した。画素電極13の配列ピッチは30μmである。配向膜材料としてはJALS−204(日本合成ゴム製)を使用し、これをスピンコート法により基板11,21上に塗布して配向膜17,27を形成した。その後、これらの配向膜17,27の表面を電界発生用電極16,26の延びる方向にラビング処理した。そして、電界発生用電極16,26が上から見たときに直交するようにして基板11,21を対向配置し、両者の間に液晶組成物FT−1011(チッソ社製)を注入し、液晶層30を形成した。この液晶組成物中には、パネル温度が25℃のときに画素電極13と対向電極23との間に電圧を印加すると液晶分子が90°だけツイストするように、カイラル物質を0.56wt%だけ添加した。この実施例の液晶表示パネルのセル厚(液晶層の厚さ)は6μmである。
【0020】
そして、対向電極23を接地電位(0V)とし、画素電極13に印加する電圧を変化させて、実施例の液晶表示パネルのT−V(透過率−電圧)特性を調べた。但し、電界発生用電極16には画素電極13の印加電圧よりも2Vだけ高い電圧を印加し、電界発生用電極26には−2Vの電圧を印加した。
図5(a)は横軸に画素電極13の電圧をとり、縦軸に透過率(相対値)をとって、パネル温度が25℃のときの実施例の液晶表示パネルのT−V特性を示す図、図5(b)は同じくパネル温度が10℃のときのT−V特性を示す図である。図5(a),(b)に示すように、実施例の液晶表示パネルは、パネル温度が25℃のときは印加電圧が約4Vで透過率が飽和し、それ以上印加電圧を上げても透過率は殆ど変化しなかった。また、パネル温度が10℃のきは、印加電圧が約4Vで透過率が飽和し、それ以上印加電圧を上げても透過率は殆ど変化しなかった。このように実施例の液晶表示パネルは、温度による特性の変化が小さいものであった。温度が10℃のときの実施例の液晶表示パネルの液晶分子のツイスト角を調べたところ、ツイスト角は90°であった。
【0021】
(従来例)
電界発生用電極16,26を有しないこと以外は実施例と同様の液晶表示パネルを製造し、従来例とした。
この従来例の液晶表示パネルのパネル温度が25℃のときのT−V特性を調べたところ、図5(a)と同様の特性であった。しかし、パネル温度が10℃のときのT−V特性を調べたところ、図5(c)に示すように、印加電圧が約2〜3.75Vのときにピークを示し、印加電圧が約3.75V以上になると透過率は低下してしまった。この従来例の液晶表示パネルのパネル温度が10℃のときの液晶分子のツイスト角を調べたところ、ツイスト角は140°であった。
【0022】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電界発生手段により第1及び第2の配向膜の表面上に、前記第1及び第2の配向膜の表面に対しほぼ平行な方向に電界を発生するので、負の誘電率異方性を有する液晶組成物の液晶分子が前記第1及び第2の配向膜の表面上において前記電界に直交する方向に配列する。これにより、第1及び第2の配向膜の間の液晶分子のツイスト角が一定に維持され、温度によるねじれ量の変動を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る液晶表示パネルを示す模式的平面図である。
【図2】同じくその実施の形態に係る液晶表示パネルの模式的断面図である。
【図3】本実施の形態の液晶表示パネルの動作を示す模式図であり、電圧が印加されていない状態を示す。
【図4】本実施の形態の液晶表示パネルの動作を示す模式図であり、電圧が印加されている状態を示す。
【図5】(a)は実施例の液晶表示パネルの25℃のときのT−V特性を示す図、(b)は実施例の液晶表示パネルの10℃のときのT−V特性を示す図、(c)は従来例の液晶表示パネルの10℃のときのT−V特性を示す図である。
【図6】従来の垂直配向液晶表示パネルを示す図であり、(a)は電圧が印加されていないときの状態、(b)は電圧が印加されたときの状態を示す。
【符号の説明】
11,21,41,51 透明基板
12,22,42,52 偏光板
13 画素電極
14 絶縁層
15 ゲートバスライン
16,26 電界発生用電極
17,27 配向膜
20 TFT
23 対向電極
30 液晶層
31 液晶分子
Claims (4)
- 相互に対向して配置された第1及び第2の透明基板と、
前記第1の透明基板の対向面に設けられ、ゲートバスライン及びドレインバスラインに接続されたTFT( thin film transistor )と、
前記第1の透明基板の対向面に設けられ、前記TFTのソースに接続された第1の透明電極と、
前記第1の透明電極の表面上を覆う第1の配向膜と、
前記第1の透明電極の両側に配置されて第1の方向に延び、前記第1の配向膜の表面上に前記第1の配向膜に実質的に平行な電界を発生する一対の第1の電界発生用電極と、
前記第2の透明基板の対向面に前記第1の透明電極に対向して設けられた第2の透明電極と、
前記第2の透明電極の表面上を覆う第2の配向膜と、
前記第2の透明電極の両側に配置されて第2の方向に延び、前記第2の配向膜の表面上に前記第2の配向膜に実質的に平行な電界を発生する一対の第2の電界発生用電極と、
負の誘電率異方性を有する液晶組成物からなり、前記第1及び第2の透明基板の間に封入された液晶層と
を有することを特徴とする液晶表示パネル。 - 前記第1の電界発生用電極の延びる第1の方向と前記第2の電解発生用電極の延びる第2の方向とが相互に直交する方向であることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示パネル。
- 前記第1の配向膜の表面は前記第1の電界発生用電極の延びる第1の方向にラビング処理が施され、前記第2の配向膜の表面は前記第2の電界発生用電極の延びる第2の方向にラビング処理が施されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示パネル
- 前記液晶組成物はカイラル物質を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液晶表示パネル。
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