JP3729411B2 - ミシン及び糸立装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はミシン及び糸立装置に関し、特に、糸駒台が収納可能なミシン及び糸立装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数種の糸で縫製する際に用いられる多針式ミシンは、一般に、縫針を複数有する針棒ケースを備え、その針棒ケースを左右方向に移動させて1つの縫針を選択し、その縫針により刺繍模様を縫製する。複数の縫針には、夫々色や太さが異なる上糸が供給され、その上糸を供給する複数の糸駒は糸駒台等に載置され、糸案内や糸調子器及び天秤などを経由して縫針の目孔に上糸が通される。
【0003】
例えば、特許文献1の糸立台は、夫々複数の糸駒を載置可能な長短2つの糸巻支持台を備え、夫々の糸巻支持台の一端をミシンテーブルに垂直に設置された共通の支柱で支持し、長い糸巻支持台の他端のみを脚部材によりミシンテーブルに固定している。
【0004】
特許文献2の糸立は、2本の糸立棒が垂直に立設された糸立台が、支持板から水平方向に延びる支え軸によりミシン機枠に対して回動可能に枢支され、また、支え軸が支持する位置とは異なる位置で位置決め腕によりミシン機枠に支持されている。この糸立台は、位置決め穴に嵌合している位置決め腕を抜くことで、支え軸を軸として鉛直面で回動可能に構成されている。
【0005】
特許文献3には、4本の糸立部が直線状に配設された糸巻立台の下面部に3つの嵌合凹部を等間隔に一直線状に形成し、その糸巻立台を支持する支持台に嵌合凹部と同じ間隔で2つの嵌合突起が形成され、糸巻立台の3つの嵌合凹部のうち後側の2つの嵌合凹部に支持台の嵌合突起を嵌合させることで糸巻立台を格納位置に配置し、前側の2つの嵌合凹部に支持台の嵌合突起に嵌合させることで糸巻立台を使用位置に配置可能な糸巻台が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
実開平5−21874号公報(6頁〜9頁、図1, 図2)
【特許文献2】
実公昭51−50094号公報(1頁, 2頁、第1図〜第3図)
【特許文献3】
実公昭60−38468号公報(1頁, 2頁、第1図〜第8図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特許文献1の糸立台は、長い糸巻支持台がミシンテーブルに固定されているため、常に、糸立台のために大きなスペースが必要となり、また、レイアウトの自由度が限定される。この糸立台の短い糸巻支持台は、一端を支柱で支持されているが、他端が支持されておらず、多数の糸駒を載置すると不安定になるため、載置可能な糸駒の数に限りがある。この短い糸巻支持台を支柱に対して回動可能に構成し、短い糸巻支持台を長い糸巻支持台に重ねるように収納可能に構成した場合、糸巻支持台を収納する際に、糸巻支持台に載置されている糸駒を取り外す必要があり、非常に無駄な労力を必要とする。
【0008】
特許文献2の糸立は、糸立台が鉛直面内で支え軸の周りを回動するため、多数の糸駒を必要とするミシンにこの糸立台を適用すると、糸立台を回動させる際に、全ての糸駒を作業者が支持しつつ回動させるので、非常に大きな力で糸立台を支持する必要があり、作業者への負荷が大きい。また、糸駒が糸立台から落ちることもあり、糸駒が破損若しくはばらけることもある。
【0009】
特許文献3の糸巻立台は、糸巻台を一度取り外した後、ミシンに対して前後方向に移動させて、再度糸巻台を装着するため、糸巻台の位置の切り換えに無駄な労力と時間が必要となる。糸巻台を移動させる際、作業者が糸巻台を把持して移動させるので、全ての糸駒及び糸巻台を作業者が支えなければならないため、作業者への負担が大きい。
【0010】
本発明の目的は、コンパクトに収納可能な糸立装置及びその糸立装置を備えたミシンを提供すること、容易に収納可能な糸立装置を及びその糸立装置を備えたミシンを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のミシンは、複数の糸駒を装着可能な糸立装置を備えたミシンにおいて、前記糸立装置は、支持台と、複数の糸駒を夫々装着可能な1対の糸駒台と、1対の糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、1対の糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸とを備え、前記1対の糸駒台を平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成し、前記リンク機構を介して1対の糸駒台を使用位置と収納位置とに夫々固定可能に構成したものである。
【0012】
このミシンによれば、1対の糸駒台を平面視にてV字形に開き縫針に上糸を供給可能な使用位置から、リンク機構により糸駒台を支持台に連結した状態で、夫々の糸駒台を水平面上で枢支軸の周りを回動させて、1対の糸駒台を閉じて平行に並べたコンパクトな収納位置に切り替えることができる。そして、使用位置及び収納位置の夫々の位置において、リンク機構を介して糸駒台を固定する。
【0013】
請求項2に記載のミシンは、請求項1に記載のミシンにおいて、前記リンク機構は、1対の糸駒台が収納位置にあるとき支持台から側方へはみ出さない状態に収容されるものである。このミシンによれば、糸駒台を収納位置に切り替えると、リンク部材が支持台の側方からはみ出さない状態に収容される。
【0014】
請求項3に記載のミシンは、請求項1又は2に記載のミシンにおいて、前記リンク機構は、一端部が糸駒台の他端付近部に夫々連結された1対のリンク部材と、これらリンク部材の他端側部分に夫々形成された1対のスリットと、これらスリットの交差部に共通に挿通された締結軸部材を介して1対のリンク部材の他端側部分を支持台に解除可能に締結する締結部材とを備えたものである。
【0015】
このミシンによれば、締結部材が、夫々のリンク部材の他端側部分に形成されたスリットの交差部に共通に挿通された締結軸部材を介してリンク部材の他端側部分を解除可能に締結し、糸駒台を使用位置若しくは収納位置に固定する。
【0016】
請求項4に記載のミシンは、請求項1〜3の何れかに記載のミシンにおいて、前記1対の糸駒台が使用位置のときのV字形は、ミシン後方に向かって開くV字形である。このミシンによれば、収納位置から使用位置に切り替えられる場合、ミシンの後方側が開くように糸駒台が枢支軸の周りを回動し、使用位置においては、ミシンの後方に向かって開くV字形になる。
【0017】
請求項5に記載のミシンは、請求項1〜4の何れかに記載のミシンにおいて、前記1対の糸駒台を同一構造の部品で構成する為に、各糸駒台の前記一端付近部と他端付近部とに枢支軸を連結する枢支軸用連結穴を設けたものである。このミシンによれば、一方の糸駒台は一端付近部に設けられた枢支軸用連結穴に枢支軸を連結し、他方の糸駒台は他端付近部に設けられた枢支軸用連結穴に枢支軸を連結することで、1対の糸駒台を同一構造の糸駒台で構成する。
【0018】
請求項6に記載のミシンは、請求項5に記載のミシンにおいて、前記1対の糸駒台を同一構造の部品で構成する為に、各糸駒台の前記一端付近部と他端付近部とに前記リンク部材の一端部を連結するリンク用連結穴を設けたものである。このミシンによれば、一方の糸駒台は一端付近部に設けられたリンク用連結穴にリンク部材の一端部を連結し、他方の糸駒台は他端付近部に設けられたリンク用連結穴にリンク部材を連結することで、1対の糸駒台を同一構造の糸駒台で構成する。
【0019】
請求項7に記載のミシンは、請求項1〜6の何れかに記載のミシンにおいて、前記1対の糸駒台の上方に位置する1対の糸案内バーであって、1対の糸駒台の位置切り替えに対応するように位置切り替え可能な1対の糸案内バーと、これら糸案内バーの一端部が回動可能に連結された上下に伸縮可能な脚柱部材とを有する糸案内機構を設けたものである。
【0020】
このミシンによれば、糸案内バーを回動させて位置切換えし、脚柱部材を糸案内バーと共に上下に伸縮させることで、糸案内バーを糸駒台から延びる上糸を案内可能な位置とコンパクトに収納された位置とに切り替える。
【0021】
請求項8に記載のミシンは、複数の糸駒を装着可能な糸立装置を備えたミシンにおいて、前記糸立装置は、支持台と、複数の糸駒を夫々装着可能な糸駒台と、糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸とを備え、前記糸駒台を平面視にてミシンにおける前後方向と交差する使用位置と、この使用位置から閉じて前記前後方向とほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成し、前記リンク機構を介して糸駒台を使用位置と収納位置とに夫々固定可能に構成したものである。
【0022】
このミシンによれば、糸駒台を平面視にてミシンにおける前後方向と交差する使用位置から枢支軸の周りに回動させて、糸駒台を閉じてミシンの前後方向とほぼ平行に並べた収納位置とに切り替えることができる。そして、使用位置及び収納位置の夫々の位置において、リンク機構を介して糸駒台を固定する。
【0023】
請求項9に記載の糸立装置は、複数の糸駒を装着可能な糸立装置において、支持台と、複数の糸駒を夫々装着可能な1対の糸駒台と、1対の糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、1対の糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸とを備え、前記1対の糸駒台を平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成し、前記リンク機構を介して1対の糸駒台を使用位置と収納位置とに夫々固定可能に構成したものである。この糸立装置によれば、請求項1に記載のミシンとほぼ同様の作用を得る。
【0024】
請求項10に記載の糸立装置は、請求項9に記載の糸立装置において、前記リンク機構は、一端部が糸駒台の他端付近部に夫々連結された1対のリンク部材と、これらリンク部材の他端側部分に夫々形成された1対のスリットと、これらスリットの交差部に共通に挿通された締結軸部材を介して1対のリンク部材の他端側部分を支持台に解除可能に締結する締結部材とを備えたものである。この糸立装置によれば、請求項3に記載のミシンとほぼ同様の作用を得る。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態は、6種類の刺繍糸で刺繍縫製可能な多針式ミシンに本発明を適用した場合の一例である。尚、図1に矢印で示す方向を作業者が位置する前方とし、作業者から見て左右を左右とする。
【0026】
図1, 図2に示すように、多針式ミシンMは、多針式ミシンMを支持する支持部1と、その支持部1から立設する脚柱部2と、脚柱部2の上端部から前方に延びるアーム部3と、左右方向に移動可能にアーム部3の先端に装着された針棒ケース4と、アーム部3の中央部の右側に設けられ図1に示す収納位置と図2に示す操作位置とに切換え可能な操作パネル5と、脚柱部2の下端部から前方に延びるシリンダベッド部6と、脚柱部2の下端部に設けられ左右方向に延びる刺繍枠移動機構7と、アーム部3の後半部の上面に設けられ複数の糸駒11が装着可能な糸立装置8と、針棒ケース4の上端部から後方に延びる糸調子部9と、糸案内機構10等を備えている。
【0027】
針棒ケース4には、6本の針棒(図示略)が設けられ、針棒ケース4が左右に移動することで、6本の針棒のうち1本が選択され、その選択された針棒には、脚柱部2に設けられたミシンモータ(図示略)の駆動力が、アーム部3に設けられた針棒上下駆動機構(図示略)等を介して伝達されて、上糸T1〜T6の何れかが目孔に通された縫針12と共に上下駆動され、ミシンモータにより回転駆動するシリンダベッド部6の糸輪捕捉器(図示略)との協動により、刺繍枠移動機構7に支持された刺繍枠(図示略)に装着された加工布に縫目が形成される。
【0028】
次に、糸立装置8について説明する。糸立装置8は、縫針12に上糸T1〜T6を供給する複数の糸駒11を装着可能に構成されている。図3, 図4に示すように、糸立装置8は、略矩形の板状に形成されて多針式ミシンMのアーム部3に3本のビス15で固定されている支持台16と、6個の糸駒11を装着可能な1対の糸駒台17, 18と、1対の糸駒台17, 18を支持台16に連結可能なリンク機構22であって1対の糸駒台17, 18を使用位置と収納位置とに夫々固定可能なリンク機構22と、1対の糸駒台17, 18の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する1対の枢支軸19, 20と、糸駒台17, 18に立設された6本の糸駒棒21などを備えている。
【0029】
糸駒台17, 18は、図2, 図4に示すように、平面視にて多針式ミシンMの後方へ向かって開くV字形に配列された使用位置と、図1, 図3に示すように、この使用位置から閉じて多針式ミシンMの前後方向とほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成されている。糸駒台17, 18は、共に合成樹脂製の同一構造であり、図3の収納位置において、左側の糸駒台18は右側の糸駒台17を水平面上で180度回転させて取り付けたものなので、構造については右側の糸駒台17についてのみ説明する。
【0030】
図3〜図6に示すように、糸駒台17は、糸駒台本体30と、平面視にて糸駒台本体30の上面と同じ形状であって糸駒台本体30の上面に載置される板部材31と、各糸駒棒21に対応する位置に装着される円板部材38とを有する。糸駒台本体30には、収納位置にて前後方向に長い略小判状の上面部32と、その上面部32の外周部から下方に形成された外周部33とを有し、上面部32には、糸駒棒21が嵌入される3つの棒穴34が形成されている。
【0031】
糸駒台本体30の一端付近部と他端付近部には、糸駒台17, 18を同一構造の部品で構成するために、上下方向に貫通状態に形成され枢支軸19, 20を連結するための1対の枢支軸用連結穴35a, 35bと、下方から連結軸46, 47が挿通されてリンク部材40, 41の一端部を連結する1対のリンク用連結穴36a, 36bが設けられている。
【0032】
一端付近部に形成されているリンク用連結穴36aには、連結されたリンク部材40, 41の高さを変えるためのスペーサ37が上端部の内周側に一体形成され、リンク部材40, 41が干渉するのを防いでいる。同じ構造の連結軸46, 47により糸駒台17, 18とリンク部材40, 41とを連結するため、他端付近部に形成されたリンク用連結穴36bの周壁部36fの下端部から上端部までの長さと、リンク用連結穴36aの周壁部36eの下端部からスペーサ37の下端部までの長さが同じ長さに構成され、更に、1対のリンク用連結穴36a, 36bの周壁部36e, 36fには、連結軸46, 47を固定するピン53, 56が挿通されるピン穴36c, 36dであって左右方向に連通されたピン穴36c, 36dがリンク用連結穴36a, 36bの下端部から同じ高さの位置に形成されている。
【0033】
リンク機構22は、一端部が糸駒台17の他端付近部に夫々連結された1対のリンク部材40, 41と、これらリンク部材40, 41の他端側部分に夫々形成された1対のスリット42, 43と、これらスリット42, 43の交差部に共通に挿通された締結軸部材44を介して1対のリンク部材40, 41の他端側部分を支持台16に解除可能に締結する締結部材45と、リンク部材40, 41と糸駒台17, 18とを連結する連結軸46, 47などを有する。
【0034】
締結部材45は、リンク部材40, 41のスリット42, 43に挿通される締結軸部材44が雄ネジに形成されており、その締結軸部材44の下端部は支持台16のネジ穴48に螺合されている。締結軸部材44の上端部には、締結軸部材44よりやや大径の軸部49が形成され、その軸部49の上端部にはツマミ50が設けられている。締結部材45は、ツマミ50を所定方向に回すことで、締結部材45を下方に移動させ、軸部49の下端部と支持台16との間でリンク部材40, 41を押圧して固定し、また、前記所定方向とは逆方向にツマミ50を回すことで、締結部材45を上方に移動させて、リンク部材40, 41の締結固定を解除可能に構成されている。尚、軸部49、リンク部材40, 41、支持台16の夫々の間には、リンク部材40, 41を円滑に移動させるために、ワッシャ(図示略)が夫々装着されている。
【0035】
図7に示すように、右側の糸駒台17の糸駒台本体30とリンク部材40との連結は、下方から連結軸46をリンク部材40の連結穴51、糸駒台本体30のリンク用連結穴36bの順に挿通し、連結軸46の高さ方向の中央部に形成されたピン穴52とリンク用連結穴36bに形成されたピン穴36dを一致させ、そのピン穴36d, 52にピン53を挿通させて、連結軸46を糸駒台本体30に対しては固定し且つリンク部材40に対しては回動可能に連結する。
【0036】
図8に示すように、左側の糸駒台18の糸駒台本体30とリンク部材41との連結も、リンク部材41の連結穴54、糸駒台本体30のスペーサ37が形成されたリンク用連結穴36aの順に連結軸47を挿通し、連結軸47のピン穴55とリンク用連結穴36aのピン穴36cとにピン56を貫通させて連結している。尚、連結軸46, 47は、同一の構造であり、ピン穴52, 55も同じ位置に形成されている。
【0037】
リンク部材40, 41とリンク用連結穴36a, 36bの周壁部36e, 36fとの間には振動防止のためのワッシャ57と波座金58が装着され、リンク部材40, 41と連結軸46, 47の頭部との間には、Eリング59が嵌入されている。
【0038】
図6〜図8に示すように、左側のリンク部材41が挿通されるリンク用連結穴36aには、スペーサ37が形成されているため、装着された左側のリンク部材41は、右側のリンク部材40よりも下方に位置することになり、糸駒台17, 18を使用位置から収納位置に切り換える場合に、リンク部材40, 41同士の干渉を防ぐことができる。
【0039】
枢支軸19は、糸駒台本体30に形成された枢支軸用連結穴35aに上部から嵌入され、その枢支軸19の下端部に設けられたネジ部60は支持台16を貫通し、支持台16の下面でナット61がネジ部60に螺合し、糸駒台17を支持台16に対して回動可能に連結している。枢支軸19の頭部と枢支軸用連結穴35aの段部との間には、ワッシャ62と波座金63が装着され、多針式ミシンMの振動を吸収している。
【0040】
糸駒棒21の下端部には、フック部65が形成され、このフック部65を糸駒台本体30の棒穴34に貫通させて、支持台16の下面でフック部65が係合している。フック部65の上部には、フランジ部66が形成され、糸駒棒21のガタツキを防いでいる。
【0041】
次に、糸駒台17, 18を、図1, 図3に示すように、リンク機構22が支持台16の側方からはみ出さないように収納され糸駒台17, 18を平行に並べた収納位置から、図2, 図4に示す平面視にてV字形に開いた使用位置へ切換える方法について説明する。まず、収納位置に固定された糸駒台17, 18の固定を解除するため、締結部材45のツマミ50を所定方向に回し、次に、固定解除された糸駒台17, 18を枢支軸19, 20の周りを回動させると、リンク部材40, 41が一端部で糸駒台17, 18を支持しつつ、リンク部材40, 41に形成されたスリット42, 43が締結軸部材44にガイドされて摺動する。糸駒台17, 18が使用位置まで切換えられたら、再度、締結部材45により締結固定する。
【0042】
糸案内機構10は、1対の糸駒台17, 18の上方に位置する1対の糸案内バー70, 71であって、1対の糸駒台17, 18の位置切換えに対応するように位置切換え可能な1対の糸案内バー70, 71と、これら糸案内バー70, 71の一端部が回動可能に連結され、3段式のテレスコピック構造で上下に伸縮可能な1対の脚柱部材72, 73と、支持台16にビス74で固定され、脚柱部材72, 73を固定する為のベース部材75とを有する。
【0043】
左右1対の糸案内バー70, 71は同じ構造であるので、右側の糸案内バー70について説明すると、糸案内バー70は縦断面が逆T字状に形成され、糸案内バー70の長さ方向には等間隔で上糸T1〜T3を上部から嵌入可能な3つの糸案内凹部76a, 76b, 76c(糸案内バー71においては76d, 76e, 76f)が形成されている。
【0044】
糸案内機構10を収納するときは、図5の仮想線で示すように脚柱部材72, 73を収容し且つ図3に示すように各糸案内バー70, 71が多針式ミシンMの長さ方向に平行に並ぶように収納する。糸案内機構10を使用するときは、図5の実線で示すように脚柱部材72, 73を伸長し且つ図4に示すように糸案内バー70, 71を糸駒台17, 18のV字形に対応するようにV字形に開いて使用する。尚、糸案内バー70, 71は、糸駒11a〜11fを糸駒台17, 18に載置した状態で収納する際には、脚柱部材72, 73を伸長させた状態か、若しくは脚柱部材72, 73を1段だけ収納した状態のまま収納してもよい。
【0045】
糸調子部9は、針棒ケース4の上端部から後方に延びる糸調子台80に6個の糸調子器81a〜81fが、糸立装置8の糸駒台17, 18の使用位置のV字形状に対応するように配設されている。糸調子台80の後端部には、糸案内バー70, 71を経由した各上糸T1〜T6が掛けられる6個の副糸調子器82a〜82fが横一列に配設されている。糸調子台80には、糸調子器81a〜81fに掛けられた上糸T1〜T6が掛けられて糸絡みを防止するための複数の糸案内ピン83が立設されている。
【0046】
次に、上糸T1〜T6の経路を説明する。糸駒11a〜11fの夫々の上糸T1〜T6は、まず上方に延ばされて糸案内バー70, 71の糸案内凹部76a〜76fに夫々掛けられ、次に、夫々に対応する糸調子部9の副糸調子器82a〜82fに掛けられ、次に、夫々に対応する糸調子器81a〜81fに掛けられ、次に、糸案内ピン83に掛けられ、その後、天秤84等を経由して縫針12の目孔に通される。
【0047】
次に、本実施の形態の作用及び効果を説明する。多針式ミシンMは、糸駒台17, 18をリンク部材40, 41で支持しつつ水平面上で回動させて使用位置と収納位置とに亙って切り替えるので、糸駒11a〜11fの重さは枢支軸19, 20及びリンク部材40, 41を介して支持台に作用するため、6個の糸駒11a〜11fを糸駒台17, 18に載置しても、作業者への負担が少なく、位置を容易に切り替えることができる。糸駒台17, 18は、使用位置においても枢支軸19, 20及びリンク部材40, 41を介して支持台16に支持され、また、リンク部材40, 41を締結部材45により締結して強固に固定されるので、多針式ミシンMの振動に対しても強く構成されており、糸駒台17, 18が安定した状態を維持できる。糸駒台17, 18は、収納位置においては平行に並んだ状態になるため、糸駒台17, 18に糸駒11a〜11fを装着させた状態で使用位置と収納位置との切り替えが可能になり、作業者は糸駒11a〜11fの装着の労力を削減することができ、更に、上糸T1〜T6を糸案内機構10、天秤84、縫針12の目孔に再び通し直す労力を省くことができる。
【0048】
糸駒台17, 18が収納位置に位置する状態において、リンク部材40, 41は支持台16上に収容されるため、糸立装置8が非常にコンパクトに収納される。使用位置では、糸駒台17, 18は後方に向かって開くV字形であるため、収納位置において後方に位置する糸駒11が作業者の方へと接近することになり、作業者は糸駒11の上糸T1〜T6を引き出して、縫針12の目孔まで通す糸通しを簡単に行うことができる。
【0049】
各糸駒台17, 18は、1対の枢支軸用連結穴35a, 35bと、1対のリンク用連結穴36a, 36bとを備え、一方のリンク用連結穴36a, 36bにはスペーサ37を設けることでリンク部材40, 41の高さを異ならせ、1対の糸駒台17, 18を同一構造の部品で構成することができるため、製造コストを削減することができる。多針式ミシンMは、糸案内機構10をも収納可能に構成しているので、多針式ミシンMを更にコンパクトにすることができる。
【0050】
次に、本発明の一部を変更した変更形態について説明する。
1)図9, 図10に示すように、糸駒台を1体だけ糸立装置に設けてもよい。この糸立装置8Aは、支持台16Aと、3個の糸駒を装着可能な糸駒台17Aと、糸駒台17Aの一端付近部と支持台16Aに水平面内で回動可能に連結する枢支軸19Aと、スリット42Aが形成されたリンク部材40Aと締結部材45Aと連結軸46Aを有し糸駒台17Aを支持台16Aに連結可能なリンク機構22Aとを備えている。
【0051】
この糸立装置8Aは、図9に示すように収納位置においては、平面視にて糸駒台17Aが多針式ミシンMの前後方向とほぼ平行に位置し、この収納位置に位置する糸駒台17Aを枢支軸19Aの周りに回動させると、糸駒台17Aは連結軸46Aを介して連結されたリンク部材40Aに支持されつつ、図10に示す、多針式ミシンMの前後方向と糸駒台17Aが交差する使用位置にまで回動する。尚、糸駒台17Aが回動する状態において、締結部材45Aがスリット42A内で摺動しつつリンク部材40Aと支持台16Aとの連結を保持する。また、締結部材45Aは、使用位置及び収納位置において糸駒台30Aを固定可能に構成されている。。
【0052】
2)上述した糸立装置8は、1対の糸駒台17, 18を同一構造のもので構成したが、同一構造でなくてもよく、左右夫々異なる糸駒台で構成してもよい。
【0053】
3)上述した糸立装置8は、1対の枢支軸19, 20を設けているが、共通の枢支軸で糸駒台を枢支してもよい。このように構成する場合には、両方の糸駒台の枢支軸に枢支される個所を内側に突出させて、その枢支される個所のみが重なるようにすることが望ましい。
【0054】
4)上述した実施の形態においては、アーム部3の上部に糸立装置8を設けたが、糸立装置を別体にし、机の上などに直接載置してもよい。
【0055】
本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。
【0056】
【発明の効果】
請求項1に記載のミシンによれば、糸駒台をリンク部材で支持しつつ水平面上で回動させて使用位置と収納位置とに亙って切り替えるので、糸駒の重さは枢支軸及びリンク部材を介して支持台に作用するので、多数の糸駒を糸駒台に載置しても、作業者への負担が少なく、位置を容易に切り替えることができる。糸駒台は、使用位置においても枢支軸及びリンク部材を介して支持台に支持されているので、多数の糸駒を載置した状態で縫製を行っても、糸駒台が安定した状態で支持される。糸駒台は、収納位置においては平行に並んだ状態になるため、糸駒台に糸駒を装着した状態で使用位置と収納位置の切り替えが可能になり、作業者は糸駒の装着の労力を削減することができ、更に、上糸を糸案内、天秤、縫針の目孔に再び通し直す労力を省くこともできる。糸駒台を使用位置と収納位置に固定することで、ミシンが振動した際に、糸駒台が位置ずれすることを防ぐことができる。
【0057】
請求項2に記載のミシンは、糸駒台を収納位置に切り替えた際に、糸立装置が非常にコンパクトに収容される。その他、請求項1と同様の効果を奏することができる。
【0058】
請求項3に記載のミシンは、リンク部材を締結部材により締結し、糸駒台を固定するので、糸駒台を強固に固定することができ、それに伴い、ミシンの振動に対して糸立装置が非常に強い構成になっている。その他、請求項1又は2と同様の効果を奏することができる。
【0059】
請求項4に記載のミシンは、複数の糸駒の内、ミシンの後方に位置する糸駒が作業者の方へ接近するので、作業者は糸駒、特に後方に位置する糸駒の上糸を引き出して、縫針の目孔まで通す糸通しを簡単に行うことができる。その他、請求項1〜3の何れかと同様の効果を奏することができる。
【0060】
請求項5に記載のミシンは、1対の糸駒台を同じ構造の糸駒台で構成することで、製造コストを削減することができる。その他、請求項1〜4と同様の効果を奏することができる。
【0061】
請求項6に記載のミシンは、1対の糸駒台を同じ構造の糸駒台で構成することで、部品点数を削減し、製造コストを削減することができる。その他、請求項5と同様の効果を奏することができる。
【0062】
請求項7に記載のミシンは、糸案内機構をもコンパクトに収納することで、ミシン全体を更にコンパクトに収納することができる。その他、請求項1〜6と同様の効果を奏することができる。
【0063】
請求項8に記載のミシンは、糸駒台をリンク部材で支持しつつ水平面上で回動させて使用位置と収納位置とに亙って切り替えるので、糸駒の重さは枢支軸及びリンク部材を介して支持台に作用するので、多数の糸駒を糸駒台に載置しても、作業者への負担が少なく、位置を容易に切り替えることができる。糸駒台は、使用位置においても枢支軸及びリンク部材を介して支持台に支持されているので、多数の糸駒を載置した状態で縫製を行っても、糸駒台が安定した状態で支持される。糸駒台は、水平面上で回動されるので、糸駒台に糸駒を装着させた状態で収納位置に切れ替えることができ、作業者は糸駒の装着の労力を削減することができ、更に、上糸を糸案内、天秤、縫針の目孔に再び通し直す労力を省くこともできる。糸駒台を使用位置と収納位置に固定することで、ミシンが振動した際に、糸駒台が位置ずれすることを防ぐことができる。
【0064】
請求項9に記載の糸立装置は、請求項1に記載のミシンとほぼ同様の効果を奏することができる。
【0065】
請求項10に記載の糸立装置は、請求項3に記載のミシンとほぼ同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る多針式ミシンの全体図である。
【図2】糸立装置が使用位置にあるときの多針式ミシンの全体図である。
【図3】糸立装置が収納位置にあるときの平面図である。
【図4】糸立装置が使用位置にあるときの平面図である。
【図5】図3におけるV −V 線の縦断面図である。
【図6】図5の一部拡大図である。
【図7】図6の一部拡大概略図である。
【図8】左方側面視の図6相当図である。
【図9】変更の形態に係る糸立装置の平面概略図である。
【図10】糸立装置が使用位置にある図9相当図である。
【符号の説明】
M 多針式ミシン
T1〜T6 上糸
8, 8A 糸立装置
10 糸案内機構
11a〜11f 糸駒
16, 16A 支持台
17, 18, 17A 糸駒台
19, 20, 19A 枢支軸
22, 22A リンク機構<
35a, 35b 枢支軸用連結穴
36a, 36b リンク用連結穴
40, 41, 40A リンク部材
42, 43, 42A スリット
44 締結軸部材
45, 45A 締結部材
70, 71 糸案内バー
72, 73 脚柱部材

Claims (10)

  1. 複数の糸駒を装着可能な糸立装置を備えたミシンにおいて、
    前記糸立装置は、支持台と、複数の糸駒を夫々装着可能な1対の糸駒台と、1対の糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、1対の糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸とを備え、
    前記1対の糸駒台を平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成し、
    前記リンク機構を介して1対の糸駒台を使用位置と収納位置とに夫々固定可能に構成したことを特徴とするミシン。
  2. 前記リンク機構は、1対の糸駒台が収納位置にあるとき支持台から側方へはみ出さない状態に収容されることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
  3. 前記リンク機構は、一端部が糸駒台の他端付近部に夫々連結された1対のリンク部材と、これらリンク部材の他端側部分に夫々形成された1対のスリットと、これらスリットの交差部に共通に挿通された締結軸部材を介して1対のリンク部材の他端側部分を支持台に解除可能に締結する締結部材とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
  4. 前記1対の糸駒台が使用位置のときのV字形は、ミシン後方に向かって開くV字形であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のミシン。
  5. 前記1対の糸駒台を同一構造の部品で構成する為に、各糸駒台の前記一端付近部と他端付近部とに枢支軸を連結する枢支軸用連結穴を設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のミシン。
  6. 前記1対の糸駒台を同一構造の部品で構成する為に、各糸駒台の前記一端付近部と他端付近部とに前記リンク部材の一端部を連結するリンク用連結穴を設けたことを特徴とする請求項5に記載のミシン。
  7. 前記1対の糸駒台の上方に位置する1対の糸案内バーであって、1対の糸駒台の位置切り替えに対応するように位置切り替え可能な1対の糸案内バーと、これら糸案内バーの一端部が回動可能に連結された上下に伸縮可能な脚柱部材とを有する糸案内機構を設けたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のミシン。
  8. 複数の糸駒を装着可能な糸立装置を備えたミシンにおいて、
    前記糸立装置は、支持台と、複数の糸駒を夫々装着可能な糸駒台と、糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸とを備え、
    前記糸駒台を平面視にてミシンにおける前後方向と交差する使用位置と、この使用位置から閉じて前記前後方向とほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成し、
    前記リンク機構を介して糸駒台を使用位置と収納位置とに夫々固定可能に構成したことを特徴とするミシン。
  9. 複数の糸駒を装着可能な糸立装置において、
    支持台と、複数の糸駒を夫々装着可能な1対の糸駒台と、1対の糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、1対の糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸とを備え、
    前記1対の糸駒台を平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成し、
    前記リンク機構を介して1対の糸駒台を使用位置と収納位置とに夫々固定可能に構成したことを特徴とする糸立装置。
  10. 前記リンク機構は、一端部が糸駒台の他端付近部に夫々連結された1対のリンク部材と、これらリンク部材の他端側部分に夫々形成された1対のスリットと、これらスリットの交差部に共通に挿通された締結軸部材を介して1対のリンク部材の他端側部分を支持台に解除可能に締結する締結部材とを備えたことを特徴とする請求項9に記載の糸立装置。
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