JP3729412B2 - ミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はミシンに関し、特に複数の糸駒を装着可能な糸駒台と複数の糸調子器を備えたミシンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数種の糸で縫製する際に用いられる多針式ミシンは、一般に、縫針を複数有する針棒ケースを備え、その針棒ケースを左右方向に移動させて1つの縫針を選択し、その縫針により刺繍模様を縫製する。複数の縫針には、夫々色や太さが異なる上糸が供給され、その上糸を供給する複数の糸駒は糸駒台等に載置され、糸案内や糸調子器及び天秤などを経由して縫針の目孔に上糸が通される。
【0003】
例えば、特許文献1には、固定台枠に回動可能に枢支された可動枠に固定された横板と、その横板の中央部に横板に対して直交するように固定された支持板を有する糸立て台が開示されている。これら十字形状に固定された支持板と横板には夫々2個ずつ、計4個の糸駒が装着され、それら4個の糸駒から供給される4本の上糸は、可動枠の上端部に設けられた前記十字形状に対応する十字形状の糸導板の糸導孔に案内されて縫針に供給される。
【0004】
特許文献2には、6個若しくは5個の糸駒を載置可能な複数の細長い糸載置部材を備えたマルチミシンの糸立装置が開示されている。これら各糸駒から供給される上糸は、各糸駒を支持する糸立軸の挿通孔に通され、糸載置部材の長さ方向に沿って延びて、縫針に供給される。
【0005】
【特許文献1】
実公昭55−30920号公報(全頁, 全図)
【特許文献2】
実開昭59−70681号公報(3頁〜6頁、第1図, 第2図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般的なミシンでは、上糸は糸調子器に掛けられるが、特許文献1のミシンにおいて、糸駒と糸調子器の対応をわかりやすくするため、糸立て台に対応するように糸調子器を十字形状に配設すると、十字形状の2辺のうち、上糸が延びる方向と平行な1辺上に配設された2個の糸調子器に掛けられる2本の上糸は、互いに絡み合い、糸切れなどの問題が生じる。糸絡みを防ぐために、例えば、糸調子器を糸が延びる方向とは直交するように横方向に配設すると、各糸駒と各糸調子器との対応が判りづらく、作業者が糸調子器に糸を掛ける際に戸惑うといった問題が生じ、また、糸調子器を横方向に配設することでミシンの横幅が大きくなるといった問題も生じる。
【0007】
特許文献2のマルチミシンにおいては、糸が延びる方向と糸駒が配列されている方向が平行なため、糸駒から延びる上糸同士は絡み易く、糸切れを起こし易い。上糸同士の糸絡みを防ぐため、上糸が延びる方向とほぼ直交するように糸調子器を配設すると、各糸駒と各糸調子器との対応が判りづらく、また、ミシンの横幅が大きくなるといった問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、複数の糸駒を装着可能なミシンにおいて、各糸駒と各糸調子器の対応が容易に理解できるミシンを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載のミシンは、複数の糸駒を装着可能な糸立装置と、複数の糸調子器を備えたミシンにおいて、前記糸立装置は、複数の糸駒が装着される糸駒台を有し、前記糸駒台は、平面視にてミシンの前方若しくは後方に向かって開くV字形に配置され、前記複数の糸調子器は、糸駒台の配置と同じ方向に向かって開くV字形に配置されているものである。
【0010】
このミシンによれば、作業者は、V字形に配置された糸駒台に装着された夫々の糸駒から上糸を引き出し、糸駒台と同じ方向に向かって開くV字形に配置された複数の糸調子器に上糸を掛け、縫針の目孔に上糸を通し、縫針に上糸を供給する。
【0011】
請求項2に記載のミシンは、請求項1に記載のミシンにおいて、前記糸立装置は、支持台と、1対の糸駒台と、1対の糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、1対の糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸を備え、前記1対の糸駒台を平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置に切り替え可能に構成したものである。このミシンによれば、複数の糸駒を装着可能な1対の糸駒台を、水平面上で枢支軸の周りに回動させて、平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置とに切替える。
【0012】
請求項3に記載のミシンは、請求項2のミシンにおいて、前記1対の糸駒台の上方に位置する1対の糸案内バーであって、1対の糸駒台の位置切替えに対応するように位置切替え可能な1対の糸案内バーと、これら糸案内バーの一端部が回動可能に連結された上下に伸縮可能な脚柱部材とを有する糸案内機構を設けたものである。このミシンによれば、作業者は、糸駒から引き出した上糸をV字形の使用位置に位置する糸駒台に対応したV字形で糸駒台の上方に位置する1対の糸案内バーに掛けた後、糸調子器に上糸を掛ける。
【0013】
請求項4に記載のミシンは、請求項2又は3に記載のミシンにおいて、前記1対の糸駒台が使用位置のときのV字形は、ミシン後方に向かって開くV字形である。このミシンによれば、収納位置に位置する糸駒台を枢支軸を軸心として水平面上を回動させると、ミシン後方に向かって開くV字形に配置される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施の形態は、6種類の刺繍糸で刺繍縫製可能な多針式ミシンに本発明を適用した場合の一例である。尚、図1に矢印で示す方向を作業者が位置する前方とし、作業者から見て左右を左右とする。
【0015】
図1, 図2に示すように、多針式ミシンMは、多針式ミシンMを支持する支持部1と、その支持部1から立設する脚柱部2と、脚柱部2の上端部から前方に延びるアーム部3と、左右方向に移動可能にアーム部3の先端に装着された針棒ケース4と、アーム部3の中央部の右側に設けられ図1に示す収納位置と図2に示す操作位置とに切換え可能な操作パネル5と、脚柱部2の下端部から前方に延びるシリンダベッド部6と、脚柱部2の下端部に設けられ左右方向に延びる刺繍枠移動機構7と、アーム部3の後半部の上面に設けられ複数の糸駒11a〜11fが装着可能な糸立装置8と、針棒ケース4の上端部から後方に延びる糸調子部9と、糸案内機構10等を備えている。
【0016】
針棒ケース4には、6本の針棒(図示略)が設けられ、針棒ケース4が左右に移動することで、6本の針棒のうち1本が選択され、その選択された針棒には、脚柱部2に設けられたミシンモータ(図示略)の駆動力が、アーム部3に設けられた針棒上下駆動機構(図示略)等を介して伝達されて、上糸T1〜T6の何れかが目孔に通された縫針12と共に上下駆動され、ミシンモータにより回転駆動するシリンダベッド部6の糸輪捕捉器(図示略)との協動により、刺繍枠移動機構7に支持された刺繍枠(図示略)に装着された加工布に縫目が形成される。
【0017】
次に、糸立装置8について説明する。糸立装置8は、縫針12に上糸T1〜T6を供給する複数の糸駒11a〜11fを装着可能に構成されている。図3, 図4に示すように、糸立装置8は、略矩形の板状に形成されて多針式ミシンMのアーム部3に3本のビス15で固定されている支持台16と、6個の糸駒11a〜11fを装着可能な1対の糸駒台17, 18と、1対の糸駒台17, 18を支持台16に連結可能なリンク機構22であって1対の糸駒台17, 18を使用位置と収納位置とに夫々固定可能なリンク機構22と、1対の糸駒台17, 18の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する1対の枢支軸19, 20と、糸駒台17, 18に立設された6本の糸駒棒21などを備えている。
【0018】
糸駒台17, 18は、図2, 図4に示すように、平面視にて多針式ミシンMの後方へ向かって開くV字形に配列された使用位置と、図1, 図3に示すように、この使用位置から閉じて多針式ミシンMの前後方向とほぼ平行に並べた収納位置とに切り替え可能に構成されている。糸駒台17, 18は、共に合成樹脂製の同一構造であり、図3の収納位置において、左側の糸駒台18は右側の糸駒台17を水平面上で180度回転させて取り付けたものなので、構造については右側の糸駒台17についてのみ説明する。
【0019】
図3〜図6に示すように、糸駒台17は、糸駒台本体30と、平面視にて糸駒台本体30の上面と同じ形状であって糸駒台本体30の上面に載置される板部材31と、各糸駒棒21に対応する位置に装着される円板部材38とを有する。糸駒台本体30には、収納位置にて前後方向に長い略小判状の上面部32と、その上面部32の外周部から下方に形成された外周部33とを有し、上面部32には、糸駒棒21が嵌入される3つの棒穴34が形成されている。
【0020】
糸駒台本体30の一端付近部と他端付近部には、糸駒台17, 18を同一構造の部品で構成するために、上下方向に貫通状態に形成され枢支軸19, 20を連結するための1対の枢支軸用連結穴35a, 35bと、下方から連結軸46, 47が挿通されてリンク部材40, 41の一端部を連結する1対のリンク用連結穴36a, 36bが設けられている。
【0021】
一端付近部に形成されているリンク用連結穴36aには、連結されたリンク部材40, 41の高さを変えるためのスペーサ37が上端部の内周側に一体形成され、リンク部材40, 41が干渉するのを防いでいる。同じ構造の連結軸46, 47により糸駒台17, 18とリンク部材40, 41とを連結するため、他端付近部に形成されたリンク用連結穴36bの周壁部36fの下端部から上端部までの長さと、リンク用連結穴36aの周壁部36eの下端部からスペーサ37の下端部までの長さが同じ長さに構成され、更に、1対のリンク用連結穴36a, 36bの周壁部36e, 36fには、連結軸46, 47を固定するピン53, 56が挿通されるピン穴36c, 36dであって左右方向に連通されたピン穴36c, 36dがリンク用連結穴36a, 36bの下端部から同じ高さの位置に形成されている。
【0022】
リンク機構22は、一端部が糸駒台17の他端付近部に夫々連結された1対のリンク部材40, 41と、これらリンク部材40, 41の他端側部分に夫々形成された1対のスリット42, 43と、これらスリット42, 43の交差部に共通に挿通された締結軸部材44を介して1対のリンク部材40, 41の他端側部分を支持台16に解除可能に締結する締結部材45と、リンク部材40, 41と糸駒台17, 18とを連結する連結軸46, 47などを有する。
【0023】
締結部材45は、リンク部材40, 41のスリット42, 43に挿通される締結軸部材44が雄ネジに形成されており、その締結軸部材44の下端部は支持台16のネジ穴48に螺合されている。締結軸部材44の上端部には、締結軸部材44よりやや大径の軸部49が形成され、その軸部49の上端部にはツマミ50が設けられている。締結部材45は、ツマミ50を所定方向に回すことで、締結部材45を下方に移動させ、軸部49の下端部と支持台16との間でリンク部材40, 41を押圧して固定し、また、前記所定方向とは逆方向にツマミ50を回すことで、締結部材45を上方に移動させて、リンク部材40, 41の締結固定を解除可能に構成されている。尚、軸部49、リンク部材40, 41、支持台16の夫々の間には、リンク部材40, 41を円滑に移動させるために、ワッシャ(図示略)が夫々装着されている。
【0024】
図7に示すように、右側の糸駒台17の糸駒台本体30とリンク部材40との連結は、下方から連結軸46をリンク部材40の連結穴51、糸駒台本体30のリンク用連結穴36bの順に挿通し、連結軸46の高さ方向の中央部に形成されたピン穴52とリンク用連結穴36bに形成されたピン穴36dを一致させ、そのピン穴36d, 52にピン53を挿通させて、連結軸46を糸駒台本体30に対しては固定し且つリンク部材40に対しては回動可能に連結する。
【0025】
図8に示すように、左側の糸駒台18の糸駒台本体30とリンク部材41との連結も、リンク部材41の連結穴54、糸駒台本体30のスペーサ37が形成されたリンク用連結穴36aの順に連結軸47を挿通し、連結軸47のピン穴55とリンク用連結穴36aのピン穴36cとにピン56を貫通させて連結している。尚、連結軸46, 47は、同一の構造であり、ピン穴52, 55も同じ位置に形成されている。
【0026】
リンク部材40, 41とリンク用連結穴36a, 36bの周壁部36e, 36fとの間には振動防止のためのワッシャ57と波座金58が装着され、リンク部材40, 41と連結軸46, 47の頭部との間には、Eリング59が嵌入されている。
【0027】
図6〜図8に示すように、左側のリンク部材41が挿通されるリンク用連結穴36aには、スペーサ37が形成されているため、装着された左側のリンク部材41は、右側のリンク部材40よりも下方に位置することになり、糸駒台17, 18を使用位置から収納位置に切り換える場合に、リンク部材40, 41同士の干渉を防ぐことができる。
【0028】
枢支軸19は、糸駒台本体30に形成された枢支軸用連結穴35aに上部から嵌入され、その枢支軸19の下端部に設けられたネジ部60は支持台16を貫通し、支持台16の下面でナット61がネジ部60に螺合し、糸駒台17を支持台16に対して回動可能に連結している。枢支軸19の頭部と枢支軸用連結穴35aの段部との間には、ワッシャ62と波座金63が装着され、多針式ミシンMの振動を吸収している。
【0029】
糸駒棒21の下端部には、フック部65が形成され、このフック部65を糸駒台本体30の棒穴34に貫通させて、支持台16の下面でフック部65が係合している。フック部65の上部には、フランジ部66が形成され、糸駒棒21のガタツキを防いでいる。
【0030】
次に、糸駒台17, 18を、図1, 図3に示すように、リンク機構22が支持台16の側方からはみ出さないように収納され糸駒台17, 18を平行に並べた収納位置から、図2, 図4に示す平面視にてV字形に開いた使用位置へ切換える方法について説明する。まず、収納位置に固定された糸駒台17, 18の固定を解除するため、締結部材45のツマミ50を所定方向に回し、次に、固定解除された糸駒台17, 18を枢支軸19, 20の周りを回動させると、リンク部材40, 41が一端部で糸駒台17, 18を支持しつつ、リンク部材40, 41に形成されたスリット42, 43が締結軸部材44にガイドされて摺動する。糸駒台17, 18が使用位置まで切換えられたら、再度、締結部材45により締結固定する。
【0031】
糸案内機構10は、1対の糸駒台17, 18の上方に位置する1対の糸案内バー70, 71であって、1対の糸駒台17, 18の位置切換えに対応するように位置切換え可能な1対の糸案内バー70, 71と、これら糸案内バー70, 71の一端部が回動可能に連結され、3段式のテレスコピック構造で上下に伸縮可能な1対の脚柱部材72, 73と、支持台16にビス74で固定され、脚柱部材72, 73を固定する為のベース部材75とを有する。
【0032】
左右1対の糸案内バー70, 71は同じ構造であるので、右側の糸案内バー70について説明すると、糸案内バー70は縦断面が逆T字状に形成され、糸案内バー70の長さ方向には等間隔で上糸T1〜T3を上部から嵌入可能な3つの糸案内凹部76a, 76b, 76c(糸案内バー71においては76d, 76e, 76f)が形成されている。
【0033】
糸案内機構10を収納するときは、図5の仮想線で示すように脚柱部材72, 73を収容し且つ図3に示すように各糸案内バー70, 71が多針式ミシンMの長さ方向に平行に並ぶように収納する。糸案内機構10を使用するときは、図5の実線で示すように脚柱部材72, 73を伸長し且つ図4に示すように糸案内バー70, 71を糸駒台17, 18のV字形に対応するようにV字形に開いて使用する。尚、糸案内バー70, 71は、糸駒11a〜11fを糸駒台17, 18に載置した状態で収納する際には、脚柱部材72, 73を伸長させた状態か、若しくは脚柱部材72, 73を1段だけ収納した状態のまま収納してもよい。
【0034】
糸調子部9は、針棒ケース4の上端部から後方に延びる糸調子台80に6個の糸調子器81a〜81fが、糸立装置8の糸駒台17, 18の使用位置のV字形状に対応するように、後方に向かって開くV字形に配置されている。糸調子台80の後端部には、糸案内バー70, 71を経由した各上糸T1〜T6が掛けられる6個の副糸調子器82a〜82fが横一列に配設されている。糸調子台80には、糸調子器81a〜81fに掛けられた上糸T1〜T6が掛けられて糸絡みを防止するための複数の糸案内ピン83が立設されている。
【0035】
糸調子器81a〜81fについて、図9を参照して簡単に説明する。尚、糸調子器81a〜81fは、同じ構成であるので、糸調子器81aについてのみ説明する。この糸調子器81aは、上下方向に亙って延びる軸部材90と、上糸T1が一巻き巻回されたロータリー皿91と、調節機構92と、軸部材90の下端部に外嵌された糸取りバネ93と、糸調子台80にビス94aで固定された本体部材94等で構成されている。調節機構92は、ロータリー皿91を上方から付勢し且つその付勢力を調整することでロータリー皿91の回転抵抗を調節するためのものであって、糸調子皿95と、その糸調子皿95の上端部に内嵌された調節ダイヤル96と、調節ダイヤル96の雄ネジ部96aの下端部に当接されたバネ受け部材97を介して糸調子皿95を下方へ付勢するコイルバネ98等で構成されている。
【0036】
調節ダイヤル96は、上端部の内側に形成された雌ネジ部96aが軸部材90の上端部に形成された雄ネジ部90aに螺合されており、調節ダイヤル96を回転させて、軸部材90に対して上下方向に相対移動させることで、コイルバネ98の付勢力を調節し、ロータリー皿91の回転抵抗力を調節することが可能に構成されている。ロータリー皿91は、上方からは糸調子皿95を介してコイルバネ98により付勢され、その付勢による回転抵抗力をロータリー皿91に巻回された上糸T1に作用させる。
【0037】
次に上糸T1〜T6の糸掛け作業について説明する。収納位置に位置する糸駒台17, 18に6個の糸駒11a〜11fを装着した作業者は、まず、糸案内機構10の脚柱部材72, 73を上方に伸長させ、糸案内バー70, 71を後方に向かって開くV字形に位置切換えし、次に、糸駒11a〜11fが装着された糸駒台17, 18も後方に向かって開くV字形の使用位置に位置切換えする。次に、各糸駒11a〜11fから上糸T1〜T6を上方に引き出し、夫々を対応する糸案内バー70, 71の糸案内凹部76a〜76fに後方の上方から嵌入し、次に、夫々に対応する副糸調子器82a〜82fに掛け、次に、夫々に対応する糸調子器81a〜81fに一巻き巻回し、次に、糸案内ピン83に掛け、その後、天秤84などを経由させて縫針12の目孔に糸通しする。
【0038】
例えば、図2, 図4に示すように、糸駒11cの上糸T3を作業者が糸掛けする場合には、まず、上方に上糸T3を引き出して糸案内バー70の糸案内凹部76cに嵌入し、その上糸T3を副糸調子器82cに掛けて、次に、糸調子器81cに一巻き巻回し、次に、その糸調子器81cの前方に位置する糸案内ピン83に掛けた後、天秤84などを経由させて縫針12の目孔に糸通しする。尚、この糸掛け作業の作業手順は一例であり、適宜変更可能である。
【0039】
以上説明した実施の形態の作用及び効果を説明する。6個の糸調子器81a〜81fと使用位置にある糸駒台17, 18に装着された糸駒11a〜11fが、共に後方に向かって開くV字形に配置されているため、糸調子器81a〜81fと糸駒11a〜11fの対応が容易に理解でき、作業者は糸駒11a〜11fから引き出した上糸T1〜T6の糸掛けを容易に行うことができる。糸駒台17, 18は使用位置においても、V字形に配置されているため、多針式ミシンMの横幅を小さくしつつ、上糸T1〜T6の糸絡みを防止し、糸切れを防いでいる。
【0040】
糸駒台17, 18は、図2, 図4に示すようにV字形に配置された使用位置から、図1, 図3に示すように糸駒台17, 18が互いに平行に並べた収納位置に切換え可能なため、多針式ミシンMを、更に、コンパクトにすることができる。糸駒台17, 18を収納位置から使用位置に位置切換えすると、後方にある糸駒11c, 11fなどが作業者側に接近することになるので、作業者は糸駒11c, 11fの上糸T3, T6などの糸掛け作業を簡単化することができる。糸案内機構10の糸案内バー70, 71は、糸調子器81a〜81f及び使用位置の糸駒11a〜11fが配置されているように後方に向かって開くV字形に切換え可能に構成されているため、上糸T1〜T6の糸掛け作業を、更に、簡単化することができ、同時に、糸絡みを防ぐことができる。
【0041】
以上説明した実施の形態を部分的に変更した変更の形態について説明する。
【0042】
1)上記実施の形態において、糸駒台17, 18は、使用位置と収納位置に切替え可能に構成されているが、糸駒台を常にV字形に固定してもよい。
【0043】
2)上記実施の形態において、糸案内機構10は、糸案内バー70, 71が回動可能に且つ脚柱部材72, 73が伸縮自在に構成されていたが、糸案内バーをV字形に固定若しくは脚柱部材を伸縮不能に構成してもよい。
【0044】
3)糸駒11a〜11fは、芯を有するものでも、芯がないものでもよく、特に限定されるものではない。
【0045】
4)使用位置にある糸駒台は、後方に向かって開くV字形のみならず、前方に向かって開くV字形に配置してもよい。このように構成する場合には、糸調子器も同様に、前方に向かって開くV字形に配置する。
【0046】
本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施の形態に種々の変更を付加して実施することができ、本発明は、それらの変更形態をも包含するものである。
【0047】
【発明の効果】
請求項1に記載のミシンによれば、夫々の糸調子器と夫々の糸駒台に装着された糸駒との対応が容易に理解できるため、作業者は糸駒から引き出した上糸の糸掛けを容易に行うことができる。糸駒台及び糸調子器がV字形に配置されているため、ミシンの横幅を小さくしつつ、上糸同士の糸絡みを防止し、糸切れを防いでいる。
【0048】
請求項2に記載のミシンによれば、1対の糸駒台がV字形に開いた使用位置から平行に並べた収納位置に切替え可能なため、更に、ミシンをコンパクトにすることができる。その他、請求項1と同様の効果を奏することができる。
【0049】
請求項3に記載のミシンによれば、糸案内バーがV字形の糸駒台と対応するように上方に位置するので、作業者が糸案内バーに容易に糸掛けでき、上糸同士の糸絡みを防止することができる。1対の糸案内バーは、脚柱部材の周りを回動させて、脚柱部材を短縮することでコンパクトに収納することができる。その他、請求項2と同様の効果を奏することができる。
【0050】
請求項4に記載のミシンによれば、収納位置に位置するときに後方にある糸駒が、糸駒台の回動により前方に移動するため、作業者は糸駒から上糸を容易に引き出すことができる。その他、請求項2又は3と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る多針式ミシンの全体図である。
【図2】糸立装置が使用位置にあるときの多針式ミシンの全体図である。
【図3】糸立装置が収納位置にあるときの平面図である。
【図4】糸立装置が使用位置にあるときの平面図である。
【図5】刺繍ミシンの右側面図である。
【図6】図3のVI−VI線の一部拡大断面図である。
【図7】図6の一部拡大概略図である。
【図8】左方側面視の図6相当図である。
【図9】糸調子器の部分断面図である。
【符号の説明】
M 多針式ミシン
8 糸立装置
10 糸案内機構
11a〜11f 糸駒
16 支持台
17, 18 糸駒台
19, 20 枢支軸
22 リンク機構
70, 71 糸案内バー
72, 73 脚柱部材
81a〜81f 糸調子器

Claims (4)

  1. 複数の糸駒を装着可能な糸立装置と、複数の糸調子器を備えたミシンにおいて、
    前記糸立装置は、複数の糸駒が装着される糸駒台を有し、
    前記糸駒台は、平面視にてミシンの前方若しくは後方に向かって開くV字形に配置され、
    前記複数の糸調子器は、糸駒台の配置と同じ方向に向かって開くV字形に配置されていることを特徴とするミシン。
  2. 前記糸立装置は、支持台と、1対の糸駒台と、1対の糸駒台を支持台に連結可能なリンク機構と、1対の糸駒台の一端付近部を支持台に水平面内で回動可能に連結する枢支軸を備え、
    前記1対の糸駒台を平面視にてV字形に開いた使用位置と、この使用位置から閉じてほぼ平行に並べた収納位置に切り替え可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のミシン。
  3. 前記1対の糸駒台の上方に位置する1対の糸案内バーであって、1対の糸駒台の位置切替えに対応するように位置切替え可能な1対の糸案内バーと、これら糸案内バーの一端部が回動可能に連結された上下に伸縮可能な脚柱部材とを有する糸案内機構を設けたことを特徴とする請求項2に記載のミシン。
  4. 前記1対の糸駒台が使用位置のときのV字形は、ミシン後方に向かって開くV字形であることを特徴とする請求項2又は3に記載のミシン。
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